説明

インクジェット印刷法を使用する紙または紙製品の印刷適性の改善法

本発明は、水溶液中の単独の処理剤として少なくとも3mVal/gの電荷密度を有するカチオン性ポリマーの水溶液により、該カチオン性ポリマーを0.05〜5g/mの量で紙または紙製品の表面に施与して紙または紙製品を処理することにより、インクジェット印刷法を使用する印刷の際に紙または紙製品の印刷適性を改善する方法ならびに紙および紙製品のインクジェット印刷適性を改善するための前記カチオン性ポリマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン性ポリマーの水溶液により紙または紙製品を処理することにより、インクジェット印刷法を使用する印刷の際に紙および紙製品の印刷適性を改善する方法に関する。
【0002】
いわゆる「デジタル印刷法」による紙、紙に類似の材料またはテキスタイルの印刷は、印刷産業においてますます重要になっている。このデジタル印刷法にはインクジェット法ともよばれるインクジェットによる印刷法も含まれる。
【0003】
古典的な印刷法の場合、インクで処理した印刷板を紙の上に押しつける。その際、印刷インクは多くの場合、水ではなく、トルエンのような有機溶剤中に溶解している。これに対してインクジェット法の場合、ノズルから、多くの場合水中に溶解したインクの滴が印刷装置上に存在する輪郭に相応して記録材料の上に噴射される。従って記録材料、たとえば紙に対するユーザー側から、およびインクジェット印刷技術側からの要求は、古典的な印刷法の場合とは全く異なった種類のものである。しかしすべてのその他の印刷法の場合と同様に、画像に対する、ひいては使用される紙に対する要求は、どの目的のために画像が考えられているかに応じて質的に著しく変化する。写真の品質を有しているべき画像のためには相応して高価な紙を使用しなくてはならない。保存されない紙の上のきわめて簡単なニュースおよびデザインのためには、ニュースまたは画像が読めるか、または認識することができる品質の紙で十分である。これらの両方の極端な例の間に、インクジェット印刷のためのその都度の要求を満足しなくてはならない多くの種類の紙が存在する。この印刷法のために適切な高価な紙はたとえば吸水性顔料、親水性結合剤およびカチオン性ポリマーからなる被覆を有する(G.Morea−Swift、H.Jones、THE USE OF SYNTHETIC SILICAS IN COATED MEDIA FOR INK−JET PRINTING、2000 TAPPI Coating Conference and Trade Fair Proceedings、第317〜328頁を参照のこと)。まったく要求の少ないインクジェット印刷のためにはしばしば簡単なデンプンの塗布を有する自然紙が使用される。
【0004】
多くのその他の印刷法に対して、インクジェット印刷法は、使用されるインクの水溶性または水分散性に基づいて、プリントアウトが水に敏感であるという根本的な欠点を有する。このことは画像が水と接触する場合に、紙の平面での、および紙の平面に対して垂直なインク相互の、および紙への流れにつながる。この場合、不利な場合には文字はもはや読むことができず、画像はぼやけ、かつインクは紙の裏側へしみ通る。当然、プリントアウトの耐水性はすべてのユーザーにとって重要ではないが、しかしその画像が通常は水と接触しないユーザーの場合でさえ、画像の上にうっかり水滴が落ちて画像が消える場合には、および流れたインクがテーブルクロスを汚すか、または画像が濡れた指の痕跡を示す場合には、きわめてやっかいである。インクジェット印刷法により印刷され、かつ雨にさらされる紙、たとえば貼り紙または包装紙、あるいは結露水または充填された液体により濡れる可能性のある紙、たとえばボトルのラベル紙のためには、インクジェットのプリントアウトの耐水性は不可欠である。たとえば包装またはラベル上のバーコードは、水分の作用によりもはや鮮明ではなく、かつ読み取られないか、または間違って読み取られる場合、経済的な損害はきわめて高くなりうる。たとえば写真、アート印刷などのために使用されるような高品質の高価な紙をインクジェット印刷のために使用する場合、耐水性の画像が得られる。これらは、吸水性顔料、有利にはケイ酸、水溶性結合剤、有利にはポリビニルアルコール、場合により他の水溶性結合剤およびカチオン性の有機ポリマーからなる塗料により原紙を被覆することにより製造される(上記のG.Morea−Swift、H.Jones、THE USE OF SYNTHETIC SILICAS IN COATED MEDIA FOR INK−JET PRINTINGを参照のこと)。
【0005】
WO−A−03/021041から、記録材料の上に、蛍光増白剤、カチオン性ポリマーおよび溶剤を含有する混合物を施与することにより該材料の白色を高めることができることが公知である。こうして得られた記録材料は、インクジェット法により印刷することができる。これらは従来の紙よりも実質的に良好な色の再現および輪郭の鮮明さをもたらす。
【0006】
大量の、より単純な紙、たとえばオフィス用紙のためには、このような特殊な被覆は高価でありすぎ、高すぎ、かつしばしば紙の通常の加工のため、たとえばオフセット法による印刷のために、コピーのために、インクによる単純な記載のために、または鉛筆による素描および消しゴムによる図画の消去のためには不適切である。インクジェットプリンターを用いた、インターネットからの日刊紙のプリントアウトはますます流行している。このために上記の理由から、耐水性のインクジェットプリントアウトが得られる単純紙が必要とされる。
【0007】
従って本発明は十分に耐水性のインクジェット画像を生じない紙および紙製品の印刷適性を改善するという課題に基づいている。
【0008】
前記課題は本発明により、水溶液中の単独の処理剤として少なくとも3mVal/gの電荷密度を有するカチオン性ポリマーを使用し、かつ0.05〜5g/mの量で紙または紙製品の表面上に施与する場合に、カチオン性ポリマーの水溶液により紙または紙製品を処理することによってインクジェット印刷法を使用して印刷する際に紙および紙製品の印刷適性を改善する方法により解決される。
【0009】
適切な有機ポリカチオンの溶液により紙を単純に処理することのみによってその他の添加剤を使用しなくても、インクジェットプリンターにより得られる画像を耐水性にすることができることは意外であった。
【0010】
カチオン性高分子電解質として、通常、製紙分野でプロセス薬品として、たとえば固着剤として、保水剤および脱水剤として、紙強化剤として、凝集剤などとして使用されるものが考えられる。これには特にポリエチレンイミンおよびその誘導体、ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン樹脂、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、その他のポリジアリルジアルキルアンモニウム塩、ポリジアリルアルキルアンモニウム塩、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、部分的に加水分解されたポリビニルホルムアミド、ジアルキルアミノアルキルアクリレートおよび−メタクリレートのポリマーおよびコポリマー、アクリロイルアルキルトリアルキルアンモニウム塩の、およびメタクリロイルアルキルトリアルキルアンモニウム塩のポリマーおよびコポリマー、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドおよび−メタクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩の、およびメタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩のポリマーおよびコポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのコポリマー、ビニルホルムアミドのコポリマー、ビニルイミダゾールのポリマーおよびコポリマー、四級化および/または置換されたビニルイミダゾール、ビニルピリジンのポリマーおよびコポリマーが含まれる。上記のポリマーは従来技術において引用されているWO−A−03/021041、第9頁、第16行目から第21頁、第8行目に詳細に記載されている。
【0011】
ビニルアミン単位を有するポリマー、エチレンイミン単位を有するポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド単位を有するポリマー、四級化ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート単位を有するポリマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド単位を有するポリマー、エチレンジアミンまたはジエチレントリアミンが縮合されて含有されている縮合物およびエピクロロヒドリンにより架橋したポリアミドアミンの群からのポリマーが有利である。
【0012】
カチオン性ポリマーとして特に有利には20〜100%の加水分解度を有するN−ビニルホルムアミドの加水分解されたホモポリマーまたはコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよび/またはエピクロロヒドリンにより架橋したポリアミドアミン樹脂が考えられる。
【0013】
前記の高分子電解質は本発明によれば単独でも相互の任意の組み合わせとしても使用することができる。場合によりこれらは非イオン性の水溶性ポリマーと混合して使用することもできる。
【0014】
インクジェット印刷の画像の耐水性は、種々の要因、たとえば使用されるインクおよびポリカチオンにより処理される紙、ならびにポリカチオン上の正電荷の密度およびポリカチオンの分子量に依存する。ポリカチオン1グラム(アニオンを考慮しない)あたり少なくとも3ミリ当量の電荷密度(以下では常にmVal/gと記載する)ですでに良好な耐水性を観察することができる。しかし耐水性は電荷密度によって増大するので、3.5〜23mVal/gポリカチオンを上回る電荷密度が有利である。8〜約20mVal/gポリカチオンの電荷密度がとりわけ有利である。ポリカチオンの分子量もまた耐水性に影響を与える。これはたとえば少なくとも10000ダルトンであり、この場合、有利には低い分子量で電荷密度が高いようにポリマーを選択すべきである。有利には50000ダルトンを上回る、特に有利には100000ダルトンを上回るポリカチオンの分子量が有利である。
【0015】
本発明により使用することができるカチオン性高分子電解質の分子量はたとえば5百万ダルトンまで、有利には2百万ダルトンまでであってよい。高分子電解質の水溶液の粘度は、十分な量のポリマーが紙に浸透することができるように調節される。カチオン性ポリマーの水溶液の粘度は3000mPasを超えるべきではなく、有利には2000mPasを超えるべきではない。これは多くの場合、その都度20℃で測定して10〜1000mPasの範囲である。
【0016】
カチオン性高分子電解質の溶液による本発明による処理は製紙産業において紙の表面処理のために通例の方法により行うことができる。このために、たとえばデンプンの塗布のためにEP−A−0373276に、または塗料スリップの塗布のためにV.Nissinen、Wochenblatt fuer Papierfabrikation、2001、11/12、第794〜806頁に記載されているような、公知の塗布装置、たとえばフィルムプレス、サイズプレス、ナイフコーター、ブレードまたはエアブラシを有する種々の塗布装置、または噴霧装置を使用することができる。しかしカチオン性高分子電解質の塗布はまた、吸湿装置による紙のカレンダリングの際にも行うことができる。この場合に重要なことは、カチオン性高分子電解質は少なくとも部分的に紙に浸透し、かつ紙の表面上のみに付着して残留するのではないことである。
【0017】
本発明により紙の上に施与されるカチオン性高分子電解質の量は、広い範囲で変化することができる。その量は一般に、溶剤不含のカチオン性高分子電解質に対して、紙1mあたり0.05g〜0.5gであり、かつ有利には0.1g〜3gの範囲であり、かつ特に紙1mあたり0.5g〜2gである。
【0018】
本発明の対象はさらに、紙および紙製品のインクジェット印刷適性を改善するために、紙または紙製品の表面上にカチオン性ポリマー0.05〜5g/mの量で施与するために、少なくとも3mVal/gの電荷密度を有するカチオン性ポリマーを単独の処理剤として含有する水溶液の使用である。
【0019】
本発明によれば、カチオン性高分子電解質の水溶液を紙または紙製品の表面上に施与することによって、すべての記録材料、たとえばグラフィックアート紙、自然紙またはコート紙あるいは厚紙およびボール紙のような紙製品の印刷適性が改善される。カチオン性ポリマーの水溶液の塗布は1回もしくは数回、例えば1回〜3回、有利には1回〜2回行うことができる。多くの場合、1回の塗布は十分である。塗布は紙の片面のみでも、両面(表側と裏側)に行うこともできる。カチオン性ポリマーの水溶液は紙の上側および下側に同時に塗布することもできる。
【0020】
カチオン性ポリマーの水溶液を数回塗布する場合、これは例えばその都度紙または紙製品の上側に実施するか、または例えばコート紙の場合、裏側に、例えば原紙の上に1回、最終的な塗布の前に1回および後で1回、または前塗布の後で1回、中間塗布の後で1回および最終塗布の後で1回または最終塗布の前に1回および後に1回実施することができる。
【0021】
有利には高分子電解質の溶液を自然紙上に、またはコート紙上に、最終塗布の後で、特に有利には1回〜2回、およびとりわけ有利には1回施与する。カチオン性ポリマーの水溶液は例えばサイズプレス、フィルムプレス、噴霧装置、塗布装置またはペーパーカレンダーを用いて紙または紙製品の上に施与することができる。
【0022】
水性高分子電解質溶液を紙または紙製品の上に施与した後で、製品を有利には乾燥させて水を除去し、かつ場合によりカレンダー仕上げをする。処理した紙の乾燥は例えば乾燥シリンダー、赤外線照射装置、温風などにより行う。処理した紙の艶だし(カレンダリング)は、多くの場合、15〜100℃の温度で実施する。
【0023】
本発明により処理される紙、ボール紙または厚紙は、その都度の印刷装置を使用してインクジェット印刷法の種々の変法を用いて印刷することができる。しかしまた、これらは通常の方法、例えばオフセット印刷法、凸版印刷法またはグラビア印刷法、フレキソ印刷法またはその他のデジタル印刷法、例えばレーザー印刷法またはインジゴ印刷法で印刷することができる。これらの印刷法の場合でも耐水性の画像が得られる。
【0024】
本発明による方法は、きわめて単純な手段で、かつ高い柔軟性で、種々のインクジェット印刷法で耐水性の画像を生じ、かつさらに古典的な印刷法およびその他のデジタル印刷法により印刷することができ、かつ場合によりその他の有利な特性を有する紙を製造するという困難な課題を当業者にとって容易なものとする。
【0025】
以下の実施例におけるパーセントの記載は、質量パーセントを意味する。カチオン性ポリマーの電荷密度はコロイド滴定により測定された(D.Horn、Progr.Colloid & Polymer Sci.、第65巻、第251〜264頁(1978)を参照のこと)。
【0026】
インクジェット印刷法により得られた画像の水に対する敏感さは、特に多色のプリントアウトの場合に明らかになる。モノクロのインクジェット画像の評価のためには、いわゆる「ウィッキング」、つまり印刷されていない紙への色の流れを評価する定量的な測定法が存在する。同一の測定法は場合により「ブリージング」の評価のためにも使用される。2色の色相互の流れもこのように理解される。多色画像の場合、黄色に印刷された面への黒色の流れも測定される。
【0027】
しかし本発明による方法の仕上げの場合、多くの、ただしすべてではないが、インクジェットプリンターにおいて黒色は比較的耐水性であり、かつ黄色に印刷された面への流れは比較的少なく、その一方で青色、マゼンタおよびイエローは隣接する、印刷されていないか、またはその他の色の面へ流れるので、定量的な測定法は不可能であることが判明した。従って以下の実施例では、耐水性を定性的に青色、マゼンタおよびイエローの、印刷されていない面への、および相互の流れに基づいて、「きわめて良好な耐水性」のために1から、「きわめてわずかな耐水性」のために5までの主観的な評点で評価した。コート紙の場合には、同じ方法で色の流れを評価し、その際、色の純度(Farbintensitaet)および輪郭の鮮明さの低下は「画像の品質」として「きわめて良好に耐水性」について評点1から「きわめてわずかな耐水性」について評点5までを有する。
【0028】
類似の方法で下に置いた濾紙の上でのウィッキングを、「ウィッキングなし」について評点1から「著しいウィッキング」について評点5で評価した。いくつかの場合には紙の裏側を水で処理した後にインクのしみ通しもインクジェット1〜3の評点で評価した。
【0029】
使用されたカチオン性有機高分子電解質:
高分子電解質I:市販のポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(BASF社のCatiofast(R)CS)。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は7.9mVal/gであった。
【0030】
高分子電解質II:エチレンアミンでグラフトされ、かつ34のエチレンオキシド単位を有するポリエチレングリコールジクロロヒドリンエーテルにより架橋した、アジピン酸およびジエチレントリアミンからなるポリアミドアミン。DE特許第2434816の例3を参照のこと。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は10.2mVal/gであった。
【0031】
高分子電解質III:市販のポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂(BASF社のLuresin(R)KNU)。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は3.5mVal/gであった。
【0032】
高分子電解質IV(比較):約300000ダルトンの分子量を有するポリビニルホルムアミド、ここからホルミル基の10%が分離してアミノ基を形成した。pH4.5で測定されたポリカチオンの電荷密度は1.5mVal/gであった。
【0033】
高分子電解質V:約300000ダルトンの分子量を有するポリビニルホルムアミド、ここからホルミル基の30%が分離してアミノ基を形成した。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は4.8mVal/gであった。
【0034】
高分子電解質VI:約300000ダルトンの分子量を有するポリビニルホルムアミド、ここからホルミル基の50%が分離した。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は8.8mVal/gであった。
【0035】
高分子電解質VII:約300000ダルトンの分子量を有するポリビニルホルムアミド、そのうちホルミル基の75%が分離してアミノ基を形成した。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は14.4mVal/gであった。
【0036】
高分子電解質VIII:約300000ダルトンの分子量を有するポリビニルホルムアミド、ここからホルミル基の90%が分離してアミノ基を形成した。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は19.7mVal/gであった。
【0037】
高分子電解質IX:約30000ダルトンの分子量を有するポリビニルホルムアミド、ここからホルミル基の90%が分離してアミノ基を形成した。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は20.4mVal/gであった。
【0038】
高分子電解質X:ポリエチレングリコールジクロロヒドリンエーテルにより架橋し、かつギ酸で中和した高分子のポリエチレンイミン(BASF社のCatiofast(R)SF)。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は19.0mVal/gであった。
【0039】
高分子電解質XI:約45000ダルトンの分子量を有するポリビニルホルムアミド、ここからホルミル基の23%が分離してアミノ基を形成した。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は3.6mVal/gであった。
【0040】
高分子電解質XII:ギ酸で中和した高分子のポリエチレンイミン(BASF社のCatiofast(R)PL)。pH4.5で測定したポリカチオンの電荷密度は19.8mVal/gであった。
【0041】
例1
実験室用のサイズプレス中で、コーティング紙のためのベースとして使用された、大工業的に製造した紙のシートを種々の高分子電解質の水溶液により68g/mの面積質量で処理した。サイズプレス浴中の高分子電解質の濃度および紙の上に施与した溶剤不含の高分子電解質の量は第1表に記載されている。
【0042】
紙を乾燥後に同様に第1表に記載されているインクジェットプリンターにより、黒色、白色およびカラーの文字および領域を有する画像で印刷した。印刷した紙からその都度同一の箇所でより小さいストリップを切り出し、これは再び黒色、白色およびカラーの文字および領域を有していた。画像あたり2つの異なったこれらのストリップを、水道水を含有する容器中に30秒間保持し、その際、10行間わずかに動かした。次いで白色の未処理のセルロースからなる吸い取り紙の上に置き、かつ乾燥させた。インクのブリージングおよび吸い取り紙へのウィッキングを上記のとおり、評点1〜5で評価した。その結果は第1表に記載されている。
【0043】
【表1】

【0044】
例2
炭酸カルシウム100部、デンプン6部、50%のポリマー分散液(BASF社のStyronal(R)D610)16部および少量の助剤からなる従来技術に相応する被覆を10g/m有する紙の上に、カチオン性高分子電解質の10%水溶液を手動のナイフコーターで、乾燥後に紙の上に高分子電解質1.0g/mが残留するように塗布した。紙を従来技術に相応して乾燥させ、かつカレンダリングした。その後、紙を第2表に記載したインクジェットプリンターにより、黒色、白色およびカラーの文字および領域を有する画像で印刷した。印刷した紙から、その都度同一の箇所でより小さいストリップを切り出し、これは再び黒色、白色およびカラーの文字および領域を有していた。これらのストリップを水道水を含有する容器中で30秒間保持し、その際、10秒間、わずかに動かした。次いで白色の未処理のセルロースからなる吸い取り紙の上に置き、かつ乾燥させた。水を用いた処理の後の画像の品質および紙の裏側へのインクのしみ通しを上記のとおり、評点1〜5ないしは1〜3で評価した。その結果は第2表に記載されている。
【0045】
【表2】

【0046】
例3
炭酸カルシウム100部、デンプン6部、50%のポリマー分散液(BASF社のStyronal(R)D610)16部および少量の助剤からなる従来技術に相応する被覆を10g/m有する紙の上に、第3表に記載されている、その都度カチオン性高分子電解質の10%水溶液を手動のナイフコーターで、乾燥後に紙の上に高分子電解質1.0g/mが残留するように塗布した。紙を従来技術に相応して乾燥させ、かつカレンダリングした。その後、紙を第3表に記載したインクジェットプリンターにより、黒色、白色およびカラーの文字および領域を有する画像で印刷した。印刷した紙から、その都度同一の箇所でより小さいストリップを切り出し、これは再び黒色、白色およびカラーの文字および領域を有していた。これらのストリップを水道水中で30秒間保持し、その際、10秒間、わずかに動かした。次いで白色の未処理のセルロースからなる吸い取り紙の上に置き、かつ乾燥させた。水による処理の後の画像の品質および紙の裏側へのインクのしみ通しを上記のとおり、評点1〜5ないしは1〜3で評価した。その結果は第3表に記載されている。
【0047】
【表3】

【0048】
例4
コート紙のベースとして使用された、大工業的に製造した68g/mの面積質量を有する紙の上に、第4表に記載されているカチオン性高分子電解質の10%水溶液を、乾燥後に高分子電解質2.0g/mが紙の上に残留するように手動のナイフコーターで塗布した。従来技術に相応して紙を乾燥およびカレンダリングした。
【0049】
その後、紙を第4表に記載されているインクジェットプリンターにより、黒色、白色およびカラーの文字および平面を有する画像で印刷した。印刷した紙からその都度同一の箇所でより小さいストリップを切り出し、これは再び黒色、白色およびカラーの文字および平面を有していた。該ストリップを水道水を含有する容器中で30秒間保持し、その際、10秒間わずかに動かした。次いで白色の未処理のセルロースからなる吸い取り紙の上に置き、かつ乾燥させた。色のブリージングおよび紙の裏側へのインクのしみ通しを上記のとおり、評点1〜5ないしは1〜3で評価した。その結果は第4表に記載されている。
【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または紙製品をカチオン性ポリマーの水溶液で処理することにより、インクジェット印刷法により印刷する際に、紙および紙製品の印刷適性を改善する方法において、少なくとも3mVal/gの電荷密度を有するカチオン性ポリマーを水溶液中で単独の処理剤として使用し、かつ0.05〜5g/mの量で紙または紙製品の表面上に施与することを特徴とする、インクジェット印刷法により印刷する際に紙および紙製品の印刷適性を改善する方法。
【請求項2】
カチオン性ポリマー中のポリカチオンの電荷密度が3.5〜23mVal/gであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
カチオン性ポリマー中のポリカチオンの電荷密度が8〜20mVal/gであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
カチオン性ポリマーのポリカチオンが少なくとも10000の分子量Mを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
カチオン性ポリマーがビニルアミン単位を有するポリマー、エチレンイミン単位を有するポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド単位を有するポリマー、四級化ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート単位を有するポリマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド単位を有するポリマー、エチレンジアミンまたはジエチレントリアミンを縮合して含有する縮合物およびエピクロロヒドリンにより架橋したポリアミドアミンの群から選択されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
カチオン性ポリマーとして、加水分解度20〜100%を有するN−ビニルホルムアミドの加水分解されたホモポリマーまたはコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドおよび/またはエピクロロヒドリンで架橋したポリアミドアミン樹脂を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
カチオン性ポリマーの水溶液をサイズプレス、フィルムプレス、噴霧装置、塗布装置またはペーパーカレンダーを用いて紙の上に施与することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により得られることを特徴とする紙。
【請求項9】
紙および紙製品のインクジェット印刷適性を改善するための、紙または紙製品の表面に、カチオン性ポリマー0.05〜5g/mの量で施与するための、単独の処理剤としての少なくとも3mVal/gの電荷密度を有するカチオン性ポリマーの水溶液の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または紙製品をカチオン性ポリマーの水溶液で処理することにより、インクジェット印刷法により印刷する際に、紙および紙製品の印刷適性を改善する方法において、カチオン性ポリマーとして、少なくとも3mVal/gの電荷密度を有するビニルアミン単位を有するポリマーを水溶液中で単独の処理剤として使用し、かつ0.05〜5g/mの量で紙または紙製品の表面上に施与することを特徴とする、インクジェット印刷法により印刷する際に紙および紙製品の印刷適性を改善する方法。
【請求項2】
ビニルアミン単位を有するポリマー中のポリカチオンの電荷密度が3.5〜23mVal/gであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ビニルアミン単位を有するポリマー中のポリカチオンの電荷密度が8〜20mVal/gであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ビニルアミン単位を有するポリマーのポリカチオンが少なくとも10000の分子量Mを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ビニルアミン単位を有するポリマーとして、加水分解度20〜100%を有するN−ビニルホルムアミドの加水分解されたホモポリマーまたはコポリマーを使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ビニルアミン単位を有するポリマーの水溶液をサイズプレス、フィルムプレス、噴霧装置、塗布装置またはペーパーカレンダーを用いて紙の上に施与することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により得られることを特徴とする紙。
【請求項8】
紙および紙製品のインクジェット印刷適性を改善するための、紙または紙製品の表面に、カチオン性ポリマー0.05〜5g/mの量で施与するための、単独の処理剤としての少なくとも3mVal/gの電荷密度を有するビニルアミン単位を有するポリマーをカチオン性ポリマーとして含有する水溶液の使用。

【公表番号】特表2006−524593(P2006−524593A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505195(P2006−505195)
【出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004159
【国際公開番号】WO2004/096566
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】