説明

インクジェット塗装装置による木質材の塗装方法

【課題】塗装する木質材の色彩と仕上がり色彩との色差が大きくて塗装が厚くなってしまうことのないインクジェット装置による木質材の塗装方法を提供する。
【解決手段】インクジェット塗装装置と、色彩の表色値を測定する表色値測定手段とを備え、前記表色値測定手段により塗装対象となる木質材の色彩の表色値を測定する表色値測定工程と、前記測定した表色値に基づいて複数種類の仕上がり色彩パターンから一つの仕上がり色彩パターンを選択する色彩パターン選択工程と、前記選択した仕上がり色彩パターンと上記表色値測定手段により測定した木質材の色彩の表色値との色差を算定する色差算定工程と、前記色差算定工程にて算定した色差に対応する塗装をインクジェット塗装装置によって行う塗装工程と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット塗装装置による木質材の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質材を塗装するのにインクジェット塗装装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に示された方法においては、塗装対象の色彩の表色値を測定する表色値測定手段を備えており、この表色値測定手段により塗装対象の色彩の表色値を測定するとともに、前記測定した表色値と、仕上がり色彩との色差分の塗装をインクジェット塗装装置によって施すことで、塗装対象を仕上がり色彩に彩色することができるものである。
【0004】
ところで、塗装対象が木質材の場合、塗装を厚くして下地が見えない隠蔽塗装とするのではなく、塗装を薄くして下地が見える塗装とすることで、素材の木目を生かして木質感を出すことができる。
【0005】
しかしながらこの場合には、木質材の色彩と仕上がり色彩との色差が大きいと、色差分の塗装を施すと塗装が厚くなって隠蔽塗装となってしまい、下地の木目が見えずに木質感を出すことができない。仕上がり色彩パターンが複数ある場合、色差が大きい仕上がり色彩パターンとなるような塗装を施すと、前記のように木質感を出すことができないうえに塗料を多く要してしまい、無駄の多いものであった。
【特許文献1】特開2000−153191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、塗装する木質材の色彩と仕上がり色彩との色差が大きくて塗装が厚くなってしまうことのないインクジェット装置による木質材の塗装方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、インクジェット塗装装置と、色彩の表色値を測定する表色値測定手段とを備え、前記表色値測定手段により塗装対象となる木質材の色彩の表色値を測定する表色値測定工程と、前記測定した表色値に基づいて複数種類の仕上がり色彩パターンから一つの仕上がり色彩パターンを選択する色彩パターン選択工程と、前記選択した仕上がり色彩パターンと上記表色値測定手段により測定した木質材の色彩の表色値との色差を算定する色差算定工程と、前記色差算定工程にて算定した色差に対応する塗装をインクジェット塗装装置によって行う塗装工程と、からなることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、木質材をその色彩との色差が小さい仕上がり色彩となるように塗装することができ、塗装が薄くて済む。
【0009】
また請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、表色値測定工程において、木質材の色彩の表色値の全面に亘る平均値を木質材の色彩の表色値とすることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、木質材の部分的なバラつきの影響を受けるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、木質材をその色彩との色差が小さい仕上がり色彩となるように塗装することができて、塗装を薄くすることができ、塗装を通して下地の木目が見えて木質感を出すことができるとともに、塗料も少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。本発明は、インクジェット塗装装置を用いて木質材を選択した仕上がり色彩となるように塗装するものである。
【0013】
インクジェット塗装装置は、詳細な説明はここでは省略するが、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色の塗料を用い、画素毎に各色の強さを調節して所望の色彩の塗装を施すもので、このような方式の塗装装置であれば特に限定されないものである。
【0014】
このインクジェット塗装装置による塗装の対象はもともとは特に限定されるものではないが、塗装対象の表面に、模様や異なる色彩を有するものに対して本発明が特に有効であり、ここでは塗装対象は木質材とする。
【0015】
塗装対象は、塗装を施すことで表面を目標となる仕上がり色彩とするのであるが、上述したように、塗装を隠蔽塗装とするのではなく、下地の表面の木目模様を生かして木質感を出すべく塗装を薄く抑えるものである。仕上がり色彩は、異なる色彩の複数パターンを設定しておくもので、本実施形態では、図2(a)に示すように丸付数字1、2、3の三パターンの仕上がり色彩パターンを設定している。
【0016】
塗装対象は、塗装を施すことで表面を目標となる仕上がり色彩とし、この時上述したように、塗装を隠蔽塗装とするのではなく下地の表面の木目模様を生かして木質感を出すべく塗装を薄く抑えるものである。このため、塗装対象の木質材の表面の色彩と、仕上がり色彩との色差を小さくして塗装を薄くするため、木質材の表面の色彩に合わせて複数の仕上がり色彩パターンのうちから近い色彩の仕上がり色彩パターンを一つ選択し、インクジェット塗装装置によって前記色差分の塗装を施すものである。
【0017】
木質材の表面の色彩は、色彩の表色値を表色値測定手段によって測定するものである。表色値測定手段は、詳細な説明はここでは省略するが、基本的にスキャナ等と同様の機器であり、例えばRGB式のように画素毎に各色の強さを測定するもので、特に限定されないものである。本発明の塗装方法では、この表色値測定手段により木質材の色彩の表色値を測定する表色値測定工程を有し、その後で、前記工程で測定した木質材の色彩の表色値に基づいて、その木質材をどの仕上がり色彩パターンに塗装するかを選択する色彩パターン選択工程が置かれている。
【0018】
色彩パターン選択工程は、図示しないが表色値測定手段から出力される木質材の表色値情報に基づいて制御部が動作プログラムに従って選択したり、あるいは、表色値測定手段から出力される木質材の表色値情報に基づいて、作業者が判断したりする。この場合、表色値測定手段から出力される木質材の表色値情報を、色彩を示す平面上に点としてプロットする。そして、仕上がり色彩パターンの割付、すなわち、木質材の色彩がどのような範囲にある時にどの仕上がり色彩パターンを選択するか、については、木質材の色彩に近くて、塗装が一番薄くて済むあるいは下地の木質材の模様が良く見えるという観点から予め決定して割付けておく。動作プログラムによって自動的に行う場合には、動作プログラムにより木質材の表色値を割付に従って振り分けるようにし、作業者が行う場合には、図2(b)に示すように、色彩を示す平面を、属する仕上がり色彩パターン(丸付数字1、2、3)毎に領域分けしておき、プロットした木質材の表色値を表す点がどの領域に属するかを判定することで選択する。
【0019】
ここで木質材の表色値は、木質材の表面の一点あるいは数点の表色値を測定したり、一定の領域すなわち表面の一部又は全面に亘って測定することが考えられるが、いずれにしても複数の画素について測定する場合、その平均値を木質材の表色値として採用する。これにより、木質材の部分的なバラつきの影響を受けるのを防止することができる。
【0020】
そして、色彩パターン選択工程にて選択した仕上がり色彩パターンと上記表色値測定手段により測定した木質材の色彩の表色値との色差を算定する色差算定工程にて、塗装すべき色彩(つまり色差)を算定する。この場合も、図示しない制御部が自動的に動作プログラムに従って算定したり、あるいは、作業者が算定してもよい。
【0021】
そして、色差算定工程にて算定した色差に基づいて、次の塗装工程にてインクジェット塗装装置によって塗装を施す。この工程においても、図示しないが制御部が自動的に行う場合には、色彩パターン選択工程にて選択した仕上がり色彩パターンの情報と木質材の表色値の情報をインクジェット塗装装置に送信し、また作業者が行う場合には、色彩パターン選択工程にて選択した仕上がり色彩パターンの情報と木質材の表色値の情報をインクジェット塗装装置の制御部に入力する。
【0022】
以上のような本発明によれば、木質材の色彩の表色値による仕上がり色彩パターンの割付を上述したように木質材の色彩に近い色彩とすることで、木質材をその色彩との色差が小さい仕上がり色彩となるように塗装することができて、塗装を薄くすることができ、塗装を通して下地の木目が見えて木質感を出すことができるとともに、塗料も少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態のフロー図である。
【図2】(a)は仕上がり色彩パターンを示し、(b)は仕上がり色彩パターンの割付を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット塗装装置と、色彩の表色値を測定する表色値測定手段とを備え、前記表色値測定手段により塗装対象となる木質材の色彩の表色値を測定する表色値測定工程と、前記測定した表色値に基づいて複数種類の仕上がり色彩パターンから一つの仕上がり色彩パターンを選択する色彩パターン選択工程と、前記選択した仕上がり色彩パターンと上記表色値測定手段により測定した木質材の色彩の表色値との色差を算定する色差算定工程と、前記色差算定工程にて算定した色差に対応する塗装をインクジェット塗装装置によって行う塗装工程と、からなることを特徴とするインクジェット塗装装置による木質材の塗装方法。
【請求項2】
表色値測定工程において、木質材の色彩の表色値の全面に亘る平均値を木質材の色彩の表色値とすることを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗装装置による木質材の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−29925(P2008−29925A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203965(P2006−203965)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】