説明

インクジェット式印刷装置及びその操作方法。

【課題】 装置を大規模化、複雑化、高コスト化することなく、被印刷物を効率的に処理することのできるインクジェット式印刷装置を提供すること。
【解決手段】 少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットと少なくとも1つのUV照射ユニットが配列された印刷装置において、被印刷物を保持する保持手段を2つ備え、各保持手段を印刷ユニット及びUV照射ユニットが配列されたX方向に移動させる搬送手段と、各保持手段の高さ方向(Y方向)の位置を調整する昇降手段をそれぞれ備え、一方の保持手段がX方向移動される際、他方の保持手段は−X方向に移動され、かつ各保持手段のそれぞれのY方向の位置が各昇降手段により調整することのできるインクジェット式印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットの印刷装置及びその操作方法に関し、特に、被印刷物を搬送する搬送機構を2つ備えることで多数の被印刷物を効率的に処理することの可能なインクジェット式印刷装置及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的、産業的にCDやDVD等の光ディスク媒体に印刷する方法としては、一般にスクリーン印刷法やオフセット印刷法などが使用されている。かかる印刷法は大量のディスクを処理することができる点で優れているが、フィルムや印刷版が必要である上、被印刷物の形状が変更されると、位置合わせや色調合わせ等をする必要があり、時間や工数がかかる上、その調整には大量のダミーディスクの使用が必要である等の問題を有していた。
【0003】
これに対して、インクジェット方式では直接被印刷物に微滴化したインクを吹き付けて印刷を行う方式のため、オフセット印刷などのようにフィルムや印刷版を作成する必要がなく、機構も単純構成とすることができ、その上、被印刷物の変更に伴う位置合わせ等の調整等も比較的容易に行うことが可能である。またコンピュータ制御されたインクジェット式印刷装置ではデジタルデータを出力することで様々な画像を即座かつ容易に印刷することができる。さらに、インクヘッド(プリンタヘッド)と被印刷物とが非接触であるため、多種多様な形状、特に球面や段面を有する被印刷物への印刷も可能である利点を有している。特に、CDやDVDの他、携帯電話のキー、ICカード、自動車のスピードメータや各種メーターのプレート、家電製品等に使用される各種成型品、各種電子部品など様々な材質、形状等を有する物品への印刷の要求があり、このような被印刷物への印刷手段としてインクジェット方式は優れている。
【0004】
しかし、かかるインクジェット方式ではインクを被印刷物に吐出し印刷する形態のため、吐出されたインクが滲んだり重なりあったりすることによる画像の品質低下を防止するため、一度のインク塗布により印刷できるドット数(ドット密度)には制限がある。このため、インク吐出とUV照射による硬化を繰り返す形態で印刷を行う必要がある。
【0005】
図4は従来のインクジェット方式の印刷装置100を示している。この装置では、2台のインクジェット式印刷ユニット102、104及びUV照射ユニット112、114を直線状に交互に配列し、領域Iのパレット108上に載置された被印刷物106をこの配列方向(該印刷ユニット102,104及びUV照射ユニット112,114が配列された方向(X方向))に該インクジェット式印刷ユニットのインクヘッドと所定間隔を隔てて移動させる搬送手段110を備えている。該搬送手段110によりX方向に移動された被印刷物106は、領域IIにおいて、印刷ユニット102に備え付けた、例えば互いに異なる色のY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のUVインク液滴を噴射させるサブヘッドにより印刷され、次にUV照射ユニット112によって各印刷されたUVインク(紫外線硬化インク)が乾燥硬化される。次に、被印刷物106は搬送手段110により領域IIIに移動され、上記と同様に印刷ユニット104の各色Y,M,C,Kのインク液滴を噴射させるサブヘッドにより印刷され、UV照射ユニット114にて印刷されたUVインクが乾燥硬化される。ここで例えば、領域II及び領域IIIの各ユニットによってそれぞれ300dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)の画像印刷が可能であれば、領域Iから領域IVへ被印刷物106を移動する間に合計で600dpiの画像が印刷可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年より高画質、高精細の画像を印刷する要求が高まっている。より高精細の画像を印刷するために、上記したインクジェット式印刷ユニット及びUV照射ユニットを更に直列に配列することで高画質、高精細の画像を印刷することが可能となるが、かかる場合には装置が複雑化、大規模化、高コスト化すると言った問題がある。特にインクジェットのインクヘッドは高額であり、インクヘッド数が増えると装置のコストが格段に増大してしまう問題がある。
【0007】
このような状況において、従来の装置では、上記したように被印刷物106を領域Iから領域IVへ移動させる間に600dpiの画像を(領域II、IIIにおける印刷装置により各300dpiの画像印刷がなされる場合)印刷できるが、より高画質、高精細の画像が要求される場合には、被印刷物106が載置されたパレット108を領域IVから領域Iに再度戻し、その上で、領域IIおよび領域III内を再度移動させ再度印刷を行うことでより高精細、この場合1200dpiの高画質、高精細の画像を印刷していた。そして更に高精細の画像が必要な場合には、再度上記操作を繰り返すことでより高精細の画像を印刷していた。
【0008】
この場合には装置を大規模化、複雑化、高コスト化することなく高精細の画像を印刷することができるが、印刷処理が遅いという問題がある。特に、この場合、被印刷物106を領域Iから領域IVへ移動させるサイクルとサイクルの間、即ち、領域IVから領域Iへ被印刷物106が載置されたパレット108を戻す間、印刷ユニット102及び104は稼働しておらず、この間の時間が無駄となってしまう。
【0009】
しかもこの問題は上記のように高精細の画像印刷が必要でない場合であっても生し得る。例えば、被印刷物が大きい場合や装置を低コストとするためインクヘッド数の少ない装置などでは、被印刷物全体をインクヘッドがカバーできないため複数回に分けて印刷する必要がある。このような場合も上記と同様に領域Iから領域IVへ移動させる印刷サイクルを複数回繰り返す必要があり、各サイクルとサイクルの間の領域IVから領域Iへ印刷媒体を戻す操作にかかる時間により効率的な処理ができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明では、以下説明するような装置構成とすることで、このような印刷ユニット102及び104の稼働していない無駄な時間を解消して従来に比べ効率的に被印刷物を処理することのできるインクジェット式印刷装置を大規模、複雑化することなく低コストで提供するものである。
【0011】
即ち、本発明のインクジェット式印刷装置は、被印刷物を保持する第1保持手段及び第2保持手段と、該第1保持手段及び/又は第2保持手段に保持された前記被印刷物にインクを吐出して印刷する少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットと、該少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットとX方向に配列され、該インクジェット式印刷ユニットにより印刷されたインクを乾燥硬化させる少なくとも1つのUV照射ユニットと、前記第1保持手段及び前記第2保持手段をそれぞれ前記±X方向に移動する第1搬送手段及び第2搬送手段と、前記第1保持手段及び前記第2保持手段をそれぞれ高さ方向の±Y方向に昇降させる第1昇降手段及び第2昇降手段と、少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットをX及びY方向に垂直なZ方向に移動させる少なくとも1つの移動手段と、第1及び第2搬送手段並びに第1及び第2昇降手段を制御して第1保持手段及び第2保持手段のX方向及びY方向の位置を制御するとともに、前記少なくとも1つの移動手段を制御して前記少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットのZ方向の位置を制御する制御手段とを備えている。
【0012】
かかる構成とすることで、例えば、第1保持手段に保持された被印刷物が、第1搬送手段によりX方向に移動されインクジェット式印刷ユニットにより印刷又は/及びUV照射ユニットにより硬化されている間、第2保持手段に保持された被印刷物は、第2搬送手段により第1保持手段が移動されているX方向と逆の−X方向に移動させることができる。特にこの際、第1保持手段と第2保持手段の高さ方向、即ちY方向はそれぞれ第1昇降手段及び第2昇降手段により異なる位置に保持されるように制御することができ、第1保持手段及び第2保持手段を±X方向に移動する際、両者が接触することがない。
【0013】
従って、第1保持手段に保持された被印刷物がX方向に移動される間にインクジェット式印刷ユニット及びUV照射ユニットにより印刷及び硬化された後、すぐに第2保持手段に保持された被印刷物を第1保持手段と同様にX方向に移動してインクジェット式印刷ユニット及びUV照射ユニットにより印刷及び硬化することができる。そしてさらに高精細の画像印刷が必要な場合には、この第2保持手段に保持された被印刷物が印刷及び硬化処理されている間に、先ほど印刷した第1保持手段に保持された被印刷物を−X方向に移動して、第2保持手段の印刷及び硬化された後に再度この第1保持手段に保持された被印刷物をX方向に移動しながら印刷及び乾燥・硬化処理することができる。
【0014】
このように高精細の画像印刷を行うために、X方向への移動によって印刷・硬化処理された被印刷物を再度印刷・硬化処理するため−X方向へ戻す間、もう一方の保持手段に保持された被印刷物を印刷・硬化処理することができる。このため、従来のように一つの保持手段しかない印刷装置の場合と比べ本発明の印刷装置では効率的に被印刷物を処理することが可能となる。
【0015】
また特に、第1及び第2搬送手段をリニアモーターとすることによって、X方向の位置を精度よく制御することが可能となる。特にX方向の移動は画像のドット間隔(X方向のドットとドットの間隔)を決めるため高精度に制御する必要がありリニアモーターを使用することが好ましい。また同様に、インクジェット式印刷ユニット2、4のZ方向の位置を決める移動手段16、18も、印刷画像のZ方向のドット間隔を決めるためリニアモーターとすることが好ましい。一方、第1及び第2昇降手段26、28に関しては、画像のドット密度には関与しないため高精度の位置制御の必要がない。このため当該手段26、28はリニアモーター以外の駆動系、例えばシリンダ等により構成しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るインクジェット式印刷装置の第1の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明に係るインクジェット式印刷装置をX方向(被印刷物の搬送方向)及びY方向(高さ方向)に垂直なZ軸方向から見た概略図である。また、図2は本発明に係るインクジェット式印刷装置をX方向から見た概略図である。この図1及び図2に示したように、本発明のインクジェット式印刷装置1は、第1のインクジェット式印刷ユニット2と、第1のUV照射ユニット12と、第2のインクジェット式印刷ユニット4と、第2のUV照射ユニット14とがこの順にX方向に配置され、1つ又は複数の被印刷物6を真空吸着等により保持する第1保持手段8及び第2保持手段10を備えている。この第1保持手段8は第1搬送手段22により±X方向に移動させることができ、第1昇降手段26により±Y方向(X方向と垂直な高さ方向)に昇降させることができる。同様に第2保持手段10は第2搬送手段24により±X方向に移動させることができ、第2昇降手段28により±Y方向に昇降させることができる。また第1のインクジェット式印刷ユニット2及び第1のUV照射ユニット12は第1移動手段16により移動され、第2のインクジェット式印刷ユニット4及び第2のUV照射ユニット14は第2移動手段18により移動される。第1及び第2搬送手段22、24並びに第1及び第2昇降手段26、28は制御手段20により制御され、第1保持手段8及び第2保持手段10のX及びY方向の位置を制御する。また、第1及び第2移動手段16、18も制御手段20によって制御され、インクジェット式印刷ユニット2、4のZ方向の位置を制御する。
【0018】
図2は第1保持手段8及び第2保持手段10を支える本発明の支持機構の具体的構成例を示している。図に示したように、第1保持手段8は第1昇降手段26を含む第1支持部27によってΓ字型に支持され、第2保持手段10は第2昇降手段28を含む第2支持部29によって逆Γ字型(左右逆向きのΓ字型)に支持されている。また、第1支持部27及び第2支持部29はそれぞれX方向に並列に配列された別々のリニアガイド23(図1)に沿って移動する第1搬送手段22及び第2搬送手段24によってそれぞれ支持されている。さらに第1保持手段8側のΓ字型の傘の部分及び第2保持手段10側の逆Γ字型の傘の部分(第1保持手段及び第2保持手段に相当する部分)は図2に示したようにZ軸方向において互いに重なる位置(領域)を有するように配置されている。かかる構成では、被印刷物をこの重なる位置に配置することで、第1保持手段に保持された被印刷物も第2保持手段に保持され被印刷物も同様の操作(インクジェット式印刷ユニットのZ軸方向の操作)で画像を印刷することが可能となる。また、第1及び第2保持手段のX方向及びY方向への移動もそれぞれ独立して制御することが可能となる。
【0019】
また本実施形態では、第1搬送手段22及び第2搬送手段24をリニアモーターで構成し、第1昇降手段26及び第2昇降手段28をシリンダにより構成し、第1移動手段16及び第2移動手段18をリニアモーターで構成する。リニアモーターは精度良く位置調整を行うことができる点で優れている。特に本発明の構成では、第1及び第2搬送手段22、24並びに第1及び第2移動手段16、18は印刷する画像の精細度を制御するため高精度の位置調整が必要であり、リニアモーターで構成するのがより好ましい。リニアモーターとしては、リニア誘導モーター、リニア同期モーター、リニア直流モーターの何れを用いても良い。
【0020】
第1保持手段8によって真空吸着等により保持される被印刷物6、例えば、CD、DVD、MD、ICカード、テレホンカード、各種プリペイドカード、携帯電話のボタンキー、各種メーター、各種成型品、各種電子部品などは、第1昇降手段26によりY方向の所定位置に保持され、第1搬送手段22により領域Iから領域II、III、IVへとX方向に移動される。第1搬送手段22により領域Iから領域IIへと移動された被印刷物6は、第1のインクジェット式印刷ユニット2に備え付けた、例えば互いに異なる色のY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のUVインク液滴を噴射させるインクヘッドにより印刷される。この際、各インクヘッドと被印刷物6の間隔は所定間隔を隔てて保持されるように昇降手段26によりY方向の位置が制御される。これはインクヘッドと被印刷物6とが接触するとインクヘッドが破損したり汚れたりするためであり、また間隔が広すぎると適切な画像の印刷が困難となるためである。各インクヘッドにより印刷された被印刷物6はUV照射ユニット12を移動する際に硬化(光化学変化による一種の乾燥硬化)される。
【0021】
次に第1保持手段8が領域IIからIIIへ移動されると、再度インクジェット式印刷ユニット4のY、M、C、Kの各インクヘッドにより第1保持手段8に保持された被印刷物6が印刷される。この際、領域IIにおいて第1のインクジェット式印刷ユニット2により印刷されたドットと重ならないように、第2移動手段(リニアモーター)によって第2のインクジェット式印刷ユニット4をZ方向に僅かにずらして印刷する。例えば、第1のインクジェット式印刷ユニット2により300dpi(ドット間隔84.7μm)の印刷がなされた場合、第2移動手段により第2のインクジェット式印刷ユニット4をZ方向に約42.3μm移動させて印刷することで合計600dpi(ドット間隔42.3μm)の印刷をすることが可能となる。このようにして印刷されたUVインクは、UV照射ユニット12により硬化される。その後保持手段8は第1搬送手段22により領域IIIから領域IVへ移動される。
【0022】
上記のように第1搬送手段22により第1保持手段8がX方向に領域Iから領域IVへ移動される間、第2保持手段10は第1保持手段8とは逆の−X方向へ第2搬送手段24により移動される。この際、第1保持手段8と第2保持手段10が互いに接触することがないように、第2昇降手段28により第2保持手段10のY方向の位置が制御される。具体的には、第1昇降手段26により第1保持手段8が印刷に好適なようにインクヘッドと所定間隔を隔てて保持される一方、第2保持手段10は、第2昇降手段28により第1保持手段8の下側(Y方向)に配置されるように(図2に示したように)Y方向の位置が制御される。
【0023】
そして、第1保持手段8が領域Iから領域IVへ移動されると、第2保持手段10は逆に領域IVから領域III、IIを通って領域Iへ移動される。
【0024】
第1保持手段8及び第2保持手段10のY方向の昇降動作は、特に限定されないが、本実施形態では、領域I及び領域IVの位置で行う。具体的には、領域Iにある保持手段は印刷に好適な位置(高さ)に調整(上昇)され、領域IVにある保持手段は他方の保持手段の高さより低くなるよう調整(下降)される。
【0025】
領域Iへ移動された第2保持手段は上記の第1保持手段と同様に、第2昇降手段28によりY方向の所定位置(高さ)に保持された状態で第2搬送手段24により領域II及び領域IIIに移動される。そして、その各々の領域で印刷、インクの硬化が繰り返された後、領域IVへ移動される。
【0026】
一方、領域IVの第1保持手段8は、第2保持手段10が領域IからIVへ移動される間に、領域IVから領域III、IIを通って領域Iへ移動される。その際、第1保持手段8のY方向の位置は、第2保持手段10と接触しないよう第1昇降手段26により制御される。具体的には、保持手段を±X方向に移動させる際に第1保持手段8が第2保持手段10の下側を通るように、第1保持手段8のY方向の位置が制御される。ここで、例えば領域II及び領域IIIにおける印刷のドット密度がそれぞれ各300dpiであるとすると、第1保持手段8に保持された被印刷物6は上記の通り領域II及び領域IIIを移動する間に合計で600dpiのドット密度で印刷されることとなる。しかしより高精細の画像印刷が必要な場合には再度印刷を繰り返す必要がある。また、被印刷物が大きい(広い)場合やインクヘッドの幅が狭い場合など、被印刷物全体を一度に印刷することができない場合などでは、複数回に分けて印刷する必要があり、このような場合にも上記の印刷サイクルを繰り返す必要がある。
【0027】
従ってこのような場合、領域Iへ戻された第1保持手段8に保持された被印刷物6は再度領域II、IIIに移動され、印刷及び乾燥硬化が繰り返されたあと、領域IVへ移動される。またこの間、上記と同様に、第2保持手段10は領域IVから領域Iへ移動される。このように、一方の保持手段に保持された被印刷物が領域Iから領域IVへ移動して印刷されるのと同時に、他方の保持手段が領域IVから領域Iへ戻されるサイクルを必要回数繰り返す。こうすることで、保持手段を領域IVから領域Iへ戻す間の時間を効率的に利用した印刷装置を構成することができる。
【0028】
なお、被印刷物が大きい場合など、複数回に分けて印刷を行う場合には、第1及び第2のインクジェット式印刷ユニット2、4のZ方向の位置を印刷サイクルごとに調整する必要がある。例えば被印刷物をZ方向に3分割(第1、第2、第3部分)して印刷する場合、1回目のサイクル(被印刷物を領域Iから領域IVへ移動させて印刷するサイクル)で、まず第1部分の領域をカバーするようにインクジェット式印刷ユニットのインクヘッド位置(Z方向)を移動手段16、18により調整して1回目のサイクルを行う。次に第2部分の領域をカバーするようにインクヘッドの位置を調整して2回目のサイクルを行う。最後に、第3部分の領域をカバーするようにインクヘッドの位置を調整して3回目のサイクルを行う。このようにすることで被印刷物全体を印刷することができる。この場合、1回目から2回目のサイクルに移る間と2回目から3回目のサイクルに移る間に、領域IVから領域Iへ被印刷物(保持手段)を−X方向に戻す操作が必要となる。しかし本発明の構成では、この操作の間にもう一方の保持手段に保持された被印刷物を印刷処理することができるため、効率的に印刷処理を行うことが可能となる。
【0029】
図3は本発明の第2の実施形態に係るインクジェット式印刷装置を示す概略図である。この図では、印刷装置を上側(Y方向)から見た場合の概略図を示している。かかる装置では、上記第1の実施形態において示したインクジェット式印刷装置と同様の構成要素を含む他、CDやDVD等のディスク(被印刷物)を複数枚保管する供給部30、ディスクに白地印刷するスクリーン印刷ユニット32、UV照射ユニット34及び印刷済みディスクを排出して保管する排出部36を備えている。
【0030】
このインクジェット式印刷装置では、まず、供給部30から印刷用ディスク(被印刷物)をVアーム31によりターンテーブル38へ順次供給する。このターンテールブル38は時計回りに回転され、供給されたディスクをスクリーン印刷ユニット32により白地印刷したあとUV照射ユニット34により乾燥硬化される。次に、白地印刷された各ディスクはVアーム33により順次パレット(a)に配列される。本実施形態ではパレットに5枚のディスクを載置している。ディスクが載置されたパレットは(a)から(b)へ順次移動され、バキュームパッドなどによってパレット(b)の各ディスクは(c)へ移される。第1保持手段8に真空吸着等により保持されたディスクは、第1の実施形態と同様X方向に領域Iから領域IVへ移動され、同様の印刷処理が行われる。領域IVへ移動されたディスクは必要に応じて領域Iへ戻され第1の実施形態と同様の印刷サイクルが繰り返される。再度の印刷が必要ない場合には、領域IVにおいて、(d)の各印刷済みの各ディスクはバキュームパッド等により吸着されパレット(e)へ移動され、次にパレットごと(e)から(f)へ移動される。そしてVアーム35によって印刷済みディスクを順次排出し、ディスクを複数枚収納可能な複数のスピンドルを備えた排出部36に印刷済みディスクが保管される。
【0031】
本発明の第2の実施形態に係るインクジェット式印刷装置は、被印刷物の供給から印刷済み印刷物の収納まで全て自動で行うことが可能な装置である。本実施形態の印刷装置の場合も第1の実施形態と同様に2つの保持手段8及び10を有している。従って第1の実施形態と同様、効率的にディスク(被印刷物)の印刷処理をすることができる。即ち、一方の保持手段が印刷されている間、他方の保持手段を領域IVからIへ戻すことができ、一方の印刷が終わると直ぐに(従来のように領域IVからIへ保持手段を戻す操作にかかる時間待つことなく)他方の保持手段のディスク(被印刷物)を印刷することができる。
【0032】
この第2の実施形態では、印刷媒体の前処理としてスクリーン印刷ユニット32により白地印刷を行っているが、この構成は必要不可欠な構成ではなく必要に応じて設ければよい。また、第1及び第2の実施形態のいずれの場合も2つのインクジェット式印刷ユニット2、4と2つのUV照射ユニット12、14を交互に設けた構成としたがこれに限られるものではない。即ち各1つずつ設けた構成としても良く、この場合には低コストでかつ小型化した装置を提供できる。ただし、一度の印刷サイクルで印刷できるドット密度には制限があり、高精細の印刷を行うには印刷サイクルを複数回行う必要がある。また各3つ以上設けた構成としても良く、この場合には高コストで大型化した装置となってしまうが一度の印刷サイクルでより高精細の印刷を行うことができる。
【0033】
さらに搬送手段及び移動手段は本実施形態に示したリニアモーターに限定されるものではなく、高精度のサーボ性能を持つ駆動源を使用することもできる。また、昇降手段は本実施形態に示したシリンダに限定されるものではなく各種駆動源を使用することもできる。
【0034】
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能であることは当業者には自明である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るインクジェット式印刷装置をZ方向から見た概略図である。
【図2】本発明に係るインクジェット式印刷装置をX方向から見た概略図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るインクジェット式印刷装置を上側(Y方向)から見た概略図である。
【図4】従来のインクジェット式印刷装置の概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1、100 インクジェット式印刷装置
2 第1のインクジェット式印刷ユニット
4 第2のインクジェット式印刷ユニット
6、106 被印刷物
8 第1保持手段
10 第2保持手段
12 第1UV照射ユニット
14 第2UV照射ユニット
16 第1移動手段
18 第2移動手段
20 制御手段
22 第1搬送手段
23 リニアガイド
24 第2搬送手段
26 第1昇降手段
27 第1支持部
28 第2昇降手段
29 第2支持部
30 供給部
31、33、35 Vアーム
32 スクリーン印刷ユニット
34 UV照射ユニット
36 排出部
38 ターンテーブル
102、104 インクジェット式印刷ユニット
108 パレット
110 搬送手段
112、114 UV照射ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物を保持する第1保持手段及び第2保持手段と、
該第1保持手段及び/又は第2保持手段に保持された前記被印刷物にインクを吐出して印刷する少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットと、
該少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットとX方向に配列され、該インクジェット式印刷ユニットにより印刷されたインクを硬化させる少なくとも1つのUV照射ユニットと、
前記第1保持手段及び前記第2保持手段をそれぞれ±X方向に移動する第1搬送手段及び第2搬送手段と、
前記第1保持手段及び前記第2保持手段をそれぞれ高さ方向の±Y方向に昇降させる第1昇降手段及び第2昇降手段と、
前記少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットをX方向及びY方向に垂直なZ方向に移動させる少なくとも1つの移動手段と、
前記第1及び第2搬送手段並びに前記第1及び第2昇降手段を制御して前記第1保持手段及び第2保持手段のX方向及びY方向の位置を制御し、かつ前記少なくとも1つの移動手段を制御して前記少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットのZ方向の位置を制御する制御手段を備えたインクジェット式印刷装置。
【請求項2】
前記インクジェット式印刷ユニット及び前記UV照射ユニットをそれぞれ2つずつ備え、該インクジェット式印刷ユニット及び該UV照射ユニットがX方向に交互に配列されている請求項1に記載のインクジェット式印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記第1保持手段又は第2保持手段の一方がX方向に移動されている間、前記第1保持手段又は第2保持手段の他方が−X方向に移動するように前記第1搬送手段及び第2搬送手段を制御でき、かつ前記第1保持手段及び第2保持手段が互いに接触することなく±X方向に移動できるように、前記第1昇降手段及び第2昇降手段を制御して前記第1保持手段及び第2保持手段のY方向の位置を制御することができる請求項1又は2に記載のインクジェット式印刷装置。
【請求項4】
前記第1搬送手段に支持された前記第1昇降手段を含む第1支持部によって前記第1保持手段がΓ字型に支持され、前記第2搬送手段に支持された前記第2昇降手段を含む第2支持部によって前記第2保持手段が逆Γ字型に支持され、前記Γ字及び逆Γ字の傘の部分がZ軸方向において互いに重なる位置を有するように配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット式印刷装置。
【請求項5】
前記第1及び第2搬送手段並びに前記少なくとも1つの移動手段がリニアモーターである請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェット式印刷装置。
【請求項6】
前記被印刷物を自動で供給する供給部と、
該供給部から供給された前記被印刷媒体に下地を印刷する印刷ユニットと、
前記インクジェット式印刷ユニット及び前記UV照射ユニットによって印刷及び硬化された前記被印刷物を自動で排出して保管する排出物と、を更に備える請求項1乃至5の何れかに記載のインクジェット式印刷装置。
【請求項7】
被印刷物を保持する第1保持手段及び第2保持手段と、
該第1保持手段及び/又は第2保持手段に保持された前記被印刷物にインクを吐出して印刷する少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットと、
該少なくとも1つのインクジェット式印刷ユニットとX方向に配列され、該インクジェット式印刷ユニットにより印刷されたインクを硬化させる少なくとも1つのUV照射ユニットと、
前記第1保持手段及び前記第2保持手段をそれぞれ±X方向に移動する第1搬送手段及び第2搬送手段と、
前記第1保持手段及び前記第2保持手段をそれぞれ高さ方向の±Y方向に昇降させる第1昇降手段及び第2昇降手段と、
を少なくとも備えたインクジェット式印刷装置の操作方法において、
前記第1保持手段又は前記第2保持手段の一方に保持された前記被印刷物が、前記第1又は第2搬送手段によりX方向に移動され前記インクジェット式印刷ユニットにより印刷又は前記UV照射ユニットにより硬化されている間、前記第1保持手段又は前記第2保持手段の他方を、前記第1又は第2昇降手段により前記一方の保持手段とY方向に異なる位置に保持し、かつ前記第1又は第2搬送手段により前記一方の保持手段と逆の−X方向に移動するよう操作するインクジェット式印刷装置の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−221764(P2008−221764A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66658(P2007−66658)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(591218167)日本文化精工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】