説明

インクジェット用インク、インクジェット記録方法、及びインクカートリッジ

【課題】吐出安定性と保存安定性とを高いレベルで両立することができるインクジェット用インクを提供すること。
【解決手段】少なくとも顔料と、中心骨格に4本以上のα、β−エチレン性不飽和モノマーの(共)重合鎖が結合してなるスターポリマーとを含有するインクジェット用インクであって、前記α、β−エチレン性不飽和モノマーの(共)重合鎖が、芳香族モノマーユニットを少なくとも含む第1の(共)重合鎖を2本以上と、酸モノマー及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーユニットを含む第2の(共)重合鎖を2本以上と、を有していることを特徴とするインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク、インクジェット記録方法、及びインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録に用いるインクに使用される色材は、従来、インク中の水性媒体に溶解可能な染料が中心であったが、近年では、画像の耐光性及び耐水性などの観点から顔料を使用することについての検討が進められている。また、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、星型構造を有するポリマー(スターポリマー)又は該ポリマーを含有するインクジェット用インクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−169771号公報
【特許文献2】特開2001−40256号公報
【特許文献3】特開平7−179538号公報
【特許文献4】特開平3−190911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これまでには、大型化されたインクジェット記録装置や長尺化された記録ヘッドなどにも適用できるような、従来以上に過酷な条件にも対応することができるインクジェット用インクは存在していなかった。例えば、特許文献1に具体的に記載されたスターポリマーを含むインクでは、十分な吐出安定性及び保存安定性は得られなかった。また、特許文献1に記載されたスターポリマーは、中心骨格を単離できず、また、分散ポリマーとするために必要となる構造を有するものではない。
【0005】
特許文献2に具体的に記載されたスターポリマーを含むインクを用いたところ、十分な吐出安定性及び保存安定性は得られなかった。また、特許文献2に記載された発明においては、分散ポリマーとしてスターポリマーを用いておらず、スターポリマーを添加することによるインクの定着性の向上(耐擦過性や耐マーカー性)を主たる目的としている。つまり、特許文献2に記載されたスターポリマーも、顔料の分散ポリマーとして機能するものではない。
【0006】
特許文献3に記載されたスターポリマーは、分散ポリマーとするために必要となる構造を有するものではない。なお、特許文献3の実施例6には、唯一芳香族モノマーユニットを含む2本以上の第1の(共)重合鎖と酸モノマー又はその塩の少なくとも1種のモノマーユニットを含む2本以上の第2の(共)重合鎖が中心骨格に結合したスターポリマーが記載されている。しかし、このスターポリマーをインクジェット用インクに用いても、十分な吐出安定性及び保存安定性は得られなかった。なお、このスターポリマーは、酸モノマー又はその塩の含有量が低く、酸価が低いため、分散ポリマーとして機能するものではない。また、このスターポリマーの数平均分子量は、最低でも10,000以上と大きいため、インクジェット用インクのように微粒子状態の顔料を分散する分散ポリマーとして使用するのには不向きである。
【0007】
特許文献4に具体的に記載されたスターポリマーをインクジェット用インクに用いた場合にも、十分な吐出安定性及び保存安定性は得られなかった。特許文献4に記載されたスターポリマーも、分散ポリマーとするために必要となる構造を有するものではない。すなわち、中心骨格に結合するアームの数が分散ポリマーとして作用するために十分ではなく、また、該アームの構造も分散ポリマーに適していない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来以上に過酷な条件下においても、吐出安定性と保存安定性とを高いレベルで両立することができるインクジェット用インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクジェット用インクを用いた、インクジェット記録方法、インクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも顔料と、中心骨格に4本以上のα、β−エチレン性不飽和モノマーの(共)重合鎖が結合してなるスターポリマーとを含有するインクジェット用インクであって、前記(共)重合鎖が、芳香族モノマーユニットを少なくとも含む第1の(共)重合鎖を2本以上と、酸モノマー及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーユニットを含む第2の(共)重合鎖を2本以上と、を有し、前記スターポリマーが下記式X及び下記式Yの構造を有し、かつ、下記式X中のAが前記第1の(共)重合鎖であり、下記式Y中のBが前記第2の(共)重合鎖であることを特徴とするインクジェット用インクを提供する。

【0010】
また、本発明は、インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、使用するインクが、上記本発明のインクジェット用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジであって、インク収容部に収容されているインクが、上記本発明のインクジェット用インクであることを特徴とするインクカートリッジを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来以上に過酷な条件下においても、吐出安定性と保存安定性とを高いレベルで両立することができるインクジェット用インクを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、前記インクジェット用インクを用いた、インクジェット記録方法、インクカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】ヘッドカートリッジにインクカートリッジを装着する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の記載において、インクジェット用インクを単に「インク」ということがある。また、本発明においては、化合物が塩である場合、該化合物は水性媒体中において解離してイオンの形態として存在することがあるが、この場合も含めて便宜上「塩を含有する」と記載する。
【0015】
本発明者らが、上記で述べた従来技術の課題に対して検討を行い、本発明に至った経緯を説明する。先ず、上述したように大型化されたインクジェット記録装置や長尺化された記録ヘッドなどにも適用できるようなインクとするためには、顔料のより高い分散安定性を確保する必要がある。このためには、顔料に吸着した分散ポリマーが静電斥力と立体障害斥力とにより十分な反発力を有し、かつ、吐出ノズル付近の加熱や蒸発などによる急激な環境変化に対して、顔料に吸着しているポリマーが顔料から脱離しにくいことが必要となる。
【0016】
従来、分散ポリマーにより静電斥力や立体障害斥力をより効果的に発現させるためには、親水性セグメントと疎水性セグメントを分離したブロックポリマーやグラフトポリマーにより改善が図られてきた。ブロックポリマーに比べ、グラフトポリマーは、いずれかのセグメントを複数有する構造となっている。例えば、親水性セグメントを複数の側鎖として結合しているグラフトポリマーでは、直鎖状のブロックポリマーより、顔料表面から高密度に親水性セグメントを水系のインク媒体方向へ伸ばすことが可能となり、より高い分散安定化を図ることが可能となる。逆に側鎖が疎水性セグメントであるグラフトポリマーでは、複数の疎水性セグメントで顔料表面と吸着するため、分散ポリマーが顔料表面から脱離しづらく、高い分散安定化を図ることが可能である。
【0017】
しかし、このようなグラフトポリマーをインクに用いたとしても、近年の記録装置においては、十分に満足することはできなかった。すなわち、さらに高い顔料の分散安定性が必要であり、親水性セグメント及び疎水性セグメントをそれぞれ複数有する分散ポリマーにより、分散安定化を図る必要があった。
【0018】
そこで、本発明者らは、このような課題を解決するため、親水性セグメント及び疎水性セグメントをそれぞれ複数有するスターポリマーを、顔料を分散する分散ポリマーとしてインクに適用することに着想した。これにより、顔料に吸着した分散ポリマーが静電斥力と立体障害斥力とにより十分な反発力を有し、かつ、吸着しているポリマーが顔料から脱離しにくくなるという考えに至った。また、上記の構成に加え、本発明で使用するスターポリマーにおいて、ある中心骨格の構成を採用し、さらに該中心骨格に結合する(共)重合鎖の組成を規定することで本発明の顕著な効果、すなわち極めて優れた吐出安定性及び保存安定性を得ることができた。その理由は定かではないが、上記スターポリマーとしての基本骨格、中心骨格の構成及び(共)重合鎖の構成が相乗的に作用していると推測される。
【0019】
<インクジェット用インク>
(星形構造を有するポリマー(スターポリマー))
本発明のインクは、中心骨格に特定の(共)重合鎖が4本以上結合してなるスターポリマー及び顔料を含有してなるインクである。該スターポリマーは、第1の(共)重合鎖と第2の(共)重合鎖とが中心骨格に結合した星形構造を有するポリマー(スターポリマー)である。そして、前記第1の(共)重合鎖は、芳香族モノマーユニットを少なくとも含み、前記第2の(共)重合鎖は、酸モノマー及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(以下「酸モノマー又はその塩」という場合がある)ユニットを含む。そしてさらに、これらの第1の(共)重合鎖及び第2の(共)重合鎖が、特定の構造を有する中心骨格に対してそれぞれ2本以上結合してなる。
【0020】
本発明において「星形構造」とは、中心と、中心から放射状に外側に広がる3本以上の線とを有する構造を指す。そして、本発明においてスターポリマー(星形構造を有するポリマー)とは、中心骨格と、中心骨格から放射状に外側に広がる3本以上の(共)重合鎖とを有するポリマーを指す。また、スターポリマーであるためには、該中心骨格に3本以上の(共)重合鎖が結合してなることが必要である。なお、本発明で使用するスターポリマーの「中心骨格」とは、スターポリマーを構成する(共)重合鎖を除く部分の構造を意味する。また、本発明で使用するスターポリマーは、中心骨格自体を単離できる。単離して得られる化合物は、中心骨格を有するが、本発明ではこの中心骨格を有する化合物を「中心化合物」と呼ぶ。また、本発明で使用するスターポリマーは、顔料の分散ポリマーとして使用されるとき、調製したインクの吐出安定性及び保存安定性を高いレベルで両立させる効果を最大限に発揮することができる。
【0021】
第1の(共)重合鎖を構成するモノマーとしては、芳香族モノマーが挙げられる。このようなモノマーとしては、具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ベンジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリルアミド、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロキシエチルフタル酸、ベンジル(メタ)アクリルアミドなどのα、β−エチレン性不飽和カルボン酸の置換芳香族アルコールとのエステル化合物や置換芳香族アミンとのアミド化合物など。これらの中でも、分散安定性をより向上させるためには、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。なお、本発明においては、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を意味するものである。また、「(メタ)アクリロキシ」とは「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」の双方を意味するものである。また、「(メタ)アクリルアミド」とは「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の双方を意味するものである。
【0022】
第1の(共)重合鎖は、芳香族モノマーユニットを含むことで、顔料表面に対する吸着基として機能する。本発明においては、第1の(共)重合鎖において芳香族モノマーユニットが占める質量比率が、第1の(共)重合鎖を構成する全てのモノマーユニットを基準として、50.0質量%以上であることが好ましく、さらには70.0質量%以上であることが好ましい。また、その上限は100.0質量%以下であることが好ましい。
【0023】
第2の(共)重合鎖を構成するモノマーとしては、酸モノマー又はその塩が挙げられる。このようなモノマーとしては、具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イコタン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸などの酸性基を有するビニル化合物及びその塩。塩としては、例えば、以下のものが挙げられる。上記モノマーのカリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、各種有機アミンの4級アンモニウム塩。酸モノマー又はその塩としては、(共)重合したときのスターポリマーの水溶性が高くなるため(メタ)アクリル酸又はその塩が好ましく、塩としてはカリウム塩又はナトリウム塩が好ましい。また、メチル−、エチル−、ブチル(メタ)アクリレートなどのα、β−エチレン性不飽和カルボン酸エステルなどを用いて、(共)重合後にエステル結合を加水分解して酸性モノマー又はその塩である(メタ)アクリル酸又はその塩としてもよい。本発明においては、第2の(共)重合鎖において酸モノマーが占める質量比率が、第2の(共)重合鎖を構成する全てのモノマーを基準として、30.0質量%以上であることが好ましい。また、その上限は100.0質量%以下であることが好ましい。
【0024】
第2の(共)重合鎖は、酸モノマー又はその塩の(共)重合体であることで、静電斥力を顔料に付与し、インク中での顔料の分散安定性を高める機能を有する。本発明においては、前記第2の(共)重合鎖が、少なくともその末端、すなわち、中心骨格との結合端の反対側端部に酸モノマー又はそのユニットを有していることが好ましい。
【0025】
なお、本発明で使用するスターポリマーの(共)重合鎖を構成するモノマーとしては、本発明の目的達成を妨げない範囲で、上記に挙げた以外のモノマーも併用することができる。このようなモノマーとしては、具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類など、(メタ)アクリルアミド、モルホリン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールなどのビニル化合物など。
【0026】
スターポリマーは、上記で挙げたようなモノマーの(共)重合鎖を、中心化合物と結合させることにより合成される。該合成方法としては、例えば、Macromolecules, 37, 5179(2004)やJ. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 2006, 44 6659などに記載されるリビングアニオン重合がある。これらの場合、中心化合物は1,1−ジフェニルエチレン誘導体となる。
【0027】
本発明で使用するスターポリマーは、少なくとも下記式X及び下記式Yの両方の構造を含み、下記式X中、第1の(共)重合鎖が下記Aのように結合し、下記式Y中、第2の(共)重合鎖が下記Bのように結合していることが必要である。
【0028】

【0029】
本発明で使用するスターポリマーの具体例としては、例えば、下記式に表されるようなものが挙げられる。なお、下記式においてAは第1の(共)重合鎖を、Bは第2の(共)重合鎖をそれぞれ表している。なお、下記式中のA及びBを除いた構造が、下記式における中心骨格である。
【0030】

【0031】

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】
また、別法として、異なるリビング重合法の開始剤や停止剤となるような化合物を用いて第1の(共)重合鎖と第2の(共)重合鎖とを、異なる重合法で重合してもよい。一例としてリビングラジカル重合法とリビングカチオン重合法を組み合わせた場合に得られるスターポリマーを下記式に示す。下記式では、Aはリビングカチオン重合法により合成される(共)重合鎖を示し、Bはリビングアニオン重合法により合成される(共)重合鎖を示している。なお、下記式中のA及びBを除いた部分が、下記式における中心骨格である。
【0036】

【0037】
本発明で使用するスターポリマーは、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、1,000以上35,000以下であることが好ましい。さらには1,000以上10,000以下、特には2,000以上10,000以下であることがより好ましい。数平均分子量が1,000未満であると顔料に対するスターポリマーの吸着性能が低下し、インクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。一方、上記分子量が35,000を超えると、スターポリマーの立体障害斥力が増大し、顔料を十分に分散させることができない場合があり、インクの吐出安定性や耐乾燥性が十分に得られない場合がある。
【0038】
また、スターポリマー中の(共)重合鎖(以下、スターポリマー中の(共)重合鎖を、アームともいう)、すなわち第1の(共)重合鎖及び第2の(共)重合鎖の1本の数平均分子量は、それぞれ400以上3,000以下であることが好ましい。上記分子量が400未満であると、顔料に対するポリマーの吸着性能が低下し、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。また、上記分子量が3,000を超えると、スターポリマーの分子量も大きくなるため、顔料の分散安定性が十分に得られない場合がある。
【0039】
また、スターポリマーのポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、スターポリマーの分子量分布を算出することができる。GPCにより得られるスターポリマーの分子量分布とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwとポリスチレン換算の数平均分子量Mnとの比である。本発明で使用するスターポリマーにおいては、この比は、1.0≦(Mw/Mn)≦1.5であることが好ましい。分子量分布Mw/Mnは、原理的に1.0を下回ることはない。しかし、1.5を超えると分子量分布が広がることにより、顔料に対する吸着力が弱い低分子量のものや、顔料の立体障害斥力を増大させる高分子量のものが混在する可能性が高くなるため、顔料を分散するポリマーとしての機能が十分に得られない場合がある。
【0040】
また、スターポリマーのアームの本数は第1の(共)重合鎖及び第2の(共)重合鎖が、それぞれ2本以上存在することで第1の(共)重合鎖の顔料に対する吸着能と第2の(共)重合鎖の顔料を水性媒体中で分散安定化させる機能をより高めることが可能となる。このため第1の(共)重合鎖及び第2の(共)重合鎖を合わせて4本以上の(共)重合鎖が必要である。また、スターポリマーのアーム数の上限としては8本以下であることが好ましい。8本を超えるアームが結合しているとスターポリマーの分子量が大きくなり、顔料の分散安定性が十分に得られない場合がある。すなわち、本発明においては、スターポリマーのアームの本数が、4本以上8本以下であることが好ましい。
【0041】
本発明で使用するスターポリマーは、第1の(共)重合鎖に芳香族モノマーユニットを少なくとも含んでなる。スターポリマーにおける芳香族モノマーユニットが占める質量比率は、スターポリマー全質量を基準として、30.0質量%以上85.0質量%以下であることが好ましく、さらには45.0質量%以上85.0質量%以下であることがより好ましい。前記質量比率が30.0質量%未満であると、顔料表面に対するスターポリマーの吸着力が十分でなく、顔料インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。一方、前記質量比率が85.0質量%を超えると、スターポリマーの水溶性が低くなり、顔料の分散安定性が十分に得られない場合がある。
【0042】
本発明で使用するスターポリマーは、第2の(共)重合鎖に酸モノマー又はその塩のユニットを少なくとも含んでなる。スターポリマーにおける酸モノマー又はその塩のユニットが占める比率は、スターポリマーの酸価で表すことができる。本発明においては、スターポリマーの酸価が、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましい。上記酸価の好ましい範囲より酸価が低いとインクの保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。また、この範囲より酸価が高いと、顔料表面に対するスターポリマーの吸着力が低下し、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。
【0043】
本発明で使用するスターポリマーにおける、芳香族モノマーユニット及び酸モノマー又はその塩のユニットの合計が占める質量比率は、スターポリマー中のアームの合計の質量を基準として、45.0質量%以上100.0質量%以下であることが好ましい。前記質量比率が上記の範囲内であると、インクの保存安定性と吐出安定性とのバランスを特に好適にすることができる。
【0044】
本発明のインクは、前述したようにスターポリマー中の酸性基を中和することで生じるアニオンの静電斥力により顔料の分散安定化を図るために、インクが中性ないしはアルカリ性に調整されていることが好ましい。ただし、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、7乃至10のpH範囲とするのが好ましい。この際に使用されるpH調整剤としては、例えば、次のものが挙げられる。ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などの無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸など。上記したようなスターポリマーは、水性媒体中に分散ないしは溶解される。
【0045】
インク中のスターポリマーの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。特に、スターポリマーを顔料の分散ポリマーとして用いる場合は、インク中のスターポリマーの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。なお、分散ポリマーとしては、本発明の目的達成を妨げない範囲で、ロジン、シェラック、デンプンなどの天然樹脂や、スターポリマー以外の合成樹脂も併用することができる。その場合のスターポリマー以外の樹脂の含有量は、スターポリマーの含有量を上回らない程度とすることが好ましい。
【0046】
(顔料)
本発明のインクに使用する色材は顔料であり、該顔料は上記で説明したスターポリマーにより水性媒体中に分散されてなることが特に好ましい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、さらには2.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましい。顔料としては、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましい。顔料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
ブラックの顔料としてはファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。このようなカーボンブラックは、一次粒子径が11nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50m2/g以上400m2/g以下、揮発分が0.5質量%以上10質量%以下、pH値が2乃至10などの特性を有するものを好ましい。ブラックの顔料としては、公知の市販品などを用いることができる。
【0048】
また、本発明のために新たに調製したカーボンブラックをブラックの顔料として用いることもできる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子や、チタンブラックなどをブラックの顔料として用いてもよい。
【0049】
有機顔料としては、特に制約がなく、公知の有機顔料を用いることができる。具体的には、例えば、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで示される有機顔料を用いることができる。
【0050】
(水性媒体)
本発明のインクは、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有することが好ましい。水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、さらには30.0質量%以上80.0質量%以下であることがより好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、さらには3.0質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。水溶性有機溶剤としては、インクジェット用インクに用いてもよいことが知られている公知の水溶性有機溶剤を用いることができる。
【0051】
(その他の成分)
本発明のインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤などの添加剤を適宜に添加することができる。このような添加剤のインク中における含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、さらには0.2質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
(インクの調製方法)
上記したような成分で構成される本発明のインクを調製する方法としては、以下のような方法とすることができる。初めに、少なくともスターポリマーと水とを混合した混合物に顔料を添加して混合撹拌した後、分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って顔料分散液を得る。さらに、必要に応じてこの顔料分散液に、水性媒体や上記で挙げたような適宜に選択された添加剤などを加え、撹拌して本発明のインクとする。
【0053】
なお、顔料分散液を調製する際に、本発明で使用するスターポリマーを溶解させるために塩基を添加するとインクの分散安定性をより向上させることができる。塩基としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニアなどの有機アミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩基が挙げられる。
【0054】
本発明のインクは、上記で述べたように、インクの調製に、分散処理を行って得られる顔料分散液を使用する。顔料分散液の調製の際に行う分散処理の前に、少なくともスターポリマーと水とを混合した混合物に顔料を加えてプレミキシングを行うのが効果的である。すなわち、このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を向上し、顔料表面への分散剤の吸着を促進させることができるため、好ましい。
【0055】
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、どのようなものでもよい。例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル、及び超高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。その中でも、ビーズミルや超高圧ホモジナイザーが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、スーパーアペックスミル、ナノマイザー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0056】
本発明のインクを、インクジェット記録方法に好適に使用できるようにするためには、記録ヘッドの耐インク目詰り性などの観点から、最適な粒度分布を有する顔料を用いることが好ましい。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、次の手法が挙げられる。上記で挙げたような分散機の粉砕メディアのサイズを小さくする手法、粉砕メディアの充填率を大きくする手法、処理時間を長くする手法などが挙げられる。また、粉砕後フィルタや遠心分離機などで分級する手法。超高圧ホモジナイザーの処理回数を増やしたり、処理圧力を高めたりする方法及びこれらの手法の組み合わせなどが挙げられる。
【0057】
<インクと反応液とのセット>
本発明のインクは、記録媒体上においてインクと接触した際に、インク中の顔料の平均粒径を増大させる、すなわちインク中の顔料の分散状態を不安定化させる作用を有する反応液と組み合わせて、インクと反応液とのセットとして使用することが好ましい。このようなインクと反応液とのセットを用いて記録を行うことで、画像濃度や発色性がより高い記録物を得ることができる。以下、本発明において使用する反応液について説明する。
【0058】
(反応剤)
反応液に使用する、インク中に含まれる顔料の平均粒径を増大させる、すなわちインク中の顔料の分散状態を不安定化させる作用をもつ化合物(反応剤)としては、多価金属イオンやカチオン性ポリマーが挙げられる。これらの反応剤は、インク中の顔料と反応して、顔料の平均粒径を増大させる、すなわち顔料の分散状態を不安定化させる作用を生じる。
【0059】
多価金属イオンの具体例としては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、及びBa2+などの2価の金属イオンや、Fe3+、Al3+、Cr3+、Y3+などの3価の金属イオンが挙げられる。多価金属イオンを反応液中に含有させるためには、多価金属塩を用いる。多価金属塩とは、上記で挙げたような多価金属イオンと、該イオンに結合する陰イオンとで構成される塩のことであるが、水に可溶なものであることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl-、NO3-、I-、Br-、ClO3-、SO42-、CO32-、CH3COO-及びHCOO-などが挙げられる。反応液中の多価金属イオンの含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0060】
また、カチオン性ポリマーの具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン重合物、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミンアンモニウムクロライド縮合物、グアニジンホルムアルデヒド縮合物など。反応液中のカチオンポリマーの含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0061】
(水性媒体)
本発明で使用する反応液は、水及び水溶性有機溶剤の混合媒体である水性媒体を含有することが好ましい。水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。反応液中の水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、25.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、反応液中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましく、さらには5.0質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。反応液に使用する水溶性有機溶剤としては、反応液に用いてもよいことが知られている公知の水溶性有機溶剤を用いることができる。
【0062】
(その他の成分)
本発明において使用する反応液には、必要に応じて、さらに、界面活性剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤などの添加剤を適宜配合してもかまわない。浸透促進剤として機能する界面活性剤の選択と添加量は、記録媒体に対する反応液の浸透性を抑制するように適切に決定することが好ましい。さらに、本発明で使用する反応液は、無色であることがより好ましいが、記録媒体上でインクと接触、混合した際に、インクの色調を変えない程度の淡色のものでもよい。さらに、反応液は、25℃での粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下の範囲となるように調整されたものであることが好ましい。
【0063】
(反応液の付与方法)
本発明で使用する反応液を記録媒体に付与する方法としては、インクと同様にインクジェット記録方式を用いる方法、及びローラなどで記録媒体に塗布する方法などが挙げられる。本発明においては、記録媒体上においてインクが付与される領域を少なくとも含むように、反応液を付与することが特に好ましい。また、反応液とインクとを記録媒体に付与する順序は、どのような順序であってもよいが、反応液を先に付与した後にインクを付与することが特に好ましい。
【0064】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、使用するインクが、前記本発明のインクであることを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法で使用するインクジェット方式としては、インクに力学的エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法などがある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
【0065】
<インクジェット記録装置>
本発明のインクを用いるのに好適なインクジェット記録装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えてなり、インク収容部に収容されているインクが、前記本発明のインクであるものである。特に、記録ヘッドが、熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出するインクジェット記録装置である場合に、より顕著な効果を得ることができる。
【0066】
以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。図1は、インクジェット記録装置の斜視図である。インクジェット記録装置は、各機構の役割から、給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部、及びこれらを保護し、意匠性を持たせる外装部M7030で構成される。M2060は、給紙部を構成する給紙トレイである。また、M3160は排紙部を構成する排紙トレイである。給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部は特に限定されるものではなく、いずれのものでも使用することができる。
【0067】
(記録ヘッドの構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図2参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有する。そして、ヘッドカートリッジH1000は、キャリッジに対して着脱可能に搭載される。
【0068】
図2は、ヘッドカートリッジH1000にインクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。インクジェット記録装置は、例えば、7種のインクで画像を形成する。したがって、インクカートリッジH1900も7色分が独立に用意されている。そして、図2に示すように、それぞれのインクカートリッジは、ヘッドカートリッジH1000に対して着脱可能となっている。なお、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジにヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行うことができる。
【0069】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。さらに、インクカートリッジは記録ヘッドに対して分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもの、また、インクジェット記録装置の固定部位に設けられて、チューブなどのインク供給部材を介して記録ヘッドにインクを供給するものでもよい。また、記録ヘッドに対して、好ましい負圧を作用させるための構成をインクカートリッジに設ける場合には、以下の構成とすることができる。すなわち、インクカートリッジのインク収容部に吸収体を配置した形態、又は可撓性のインク収容袋とこれに対してその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態などとすることができる。また、インクジェット記録装置は、上記したようなシリアル型の記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断わらない限り質量基準である。
次の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
THF:テトラヒドロフラン
BzMA:ベンジルメタクリレート
BzMAm:N−ベンジルメタクリルアミド
nBMA:n−ブチルメタクリレート
tBMA:t−ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
St:スチレン
Ip:イソプレン
【0071】
DPMP:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(分子量787)
TMMP:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(分子量398)
PEMG:ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトグリコレート)(分子量432)
V−59:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(和光純薬工業製)
tBuLi:tert−ブチルリチウム
iBuLi:i−ブチルリチウム
sBuLi:sec−ブチルリチウム
PEG1,000:ポリエチレングリコール(平均分子量1,000)
AE100:アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物(川研ファインケミカル製)
【0072】
<ポリマー水溶液の調製>
(ポリマー1)
Macromolecules 37、5179、(2004)に記載されたスキーム1にしたがってポリマー1を合成した。スキーム1のA22CスターポリマーのアームA2=Cで、A2が第1の(共)重合鎖(ポリスチレン鎖)、B2が第2の(共)重合鎖となっている。
【0073】
〔第1段階:ポリマー1−aの合成〕
先ずアニオン重合法により芳香族モノマーの重合鎖ポリマー1−aを合成した。重合装置はブレークシール、真空ラインを利用した新高分子実験学2 高分子の合成・反応(1)付加系高分子の合成 高分子学会編(共立出版)の212頁図2.7のような装置を用いた。真空ポンプを作動させて減圧とした後、aのブレークシールを焼き切り重合装置内を真空とした。サンプル管IにsBuLiの10%THF溶液を、またフラスコSにTHFを入れ、それぞれのブレークシールを割ってRにsBuLiを6部、THFを100部加え、フラスコR内の温度を−78℃とした。次いでモノマーとして芳香族モノマーであるStを23部フラスコAからブレークシールを割って、フラスコRへ注入し重合反応を1時間行った。反応後、1,1−bis(3−(ジメチル,tert−ブチル−シロキシメチル)フェニル)エチレン(SPE)10%THF溶液35部をフラスコBよりブレークシールを割ってフラスコRに入れ、30分間停止反応を行った。停止反応後、LiBr−トリメチルクロロシランにより、ポリマー末端のジメチル,tert−ブチル−シロキシメチルフェニル基をブロモメチルフェニル基へと変換することで、ポリマー末端をDBPEに変換した。その後、ブレークシールを割って、得られたポリスチレン溶液を回収した。
【0074】
このようにして得られたポリマー1−aの分子量を、標準物質としてポリスチレン、溶媒としてTHFを用いて、示差屈折率検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー製)で測定した。ポリマー1−aは、数平均分子量2,200、重量平均分子量2,400、Mw/Mn=1.09であった。NMR測定により、ポリスチレン鎖は、DBPE由来のエチレン基に付加し、臭素原子は1分子当たり1原子残っていることを確認した。したがって、ポリマー1−aは、ポリマー分子鎖末端にDBPE由来の臭素原子を持つマクロ停止剤となる。
【0075】
〔第2段階:ポリマー1−bの合成〕
続いて上記と同様の装置を用いて、酸モノマーを含む(共)重合鎖ポリマー1−bを合成した。THF溶媒中で開始剤をsBuLiとして、モノマーには加水分解により酸モノマーとなるtBMAを21部フラスコAより注入した。重合反応を−78℃とし、反応時間は30分間とした。続いて、nBMAを15部フラスコBより注入した。重合反応は−78℃で重合時間を30分間とした。重合停止剤に、1−(4−(4−ブロモブチル)フェニル),1−フェニルエチレン(BPPE)10%THF溶液を70部フラスコC(不図示であるが、フラスコBと同じ形態)よりブレークシールを割ってフラスコRに入れ、30分間停止反応を行った。ブレークシールを割って、得られたポリマー1−b溶液を回収した。
【0076】
このようにして得られたポリマー1−bの分子量を、上記方法で測定したところ、数平均分子量Mnが1,800、重量平均分子量Mwは2,000で、その分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。リビング重合法で重合したため、先に重合したtBMA(後の加水分解反応によりMAA(酸モノマー)となる)が重合停止剤(後に中心骨格となる)と反対側端に共重合された(共)重合鎖が形成された。NMR測定により、BPPEの臭素原子は消失し、エチレン由来の二重結合が残っていることが確認された。
【0077】
〔第3段階:ポリマー1の合成〕
ポリマー1−aと同様の装置を用いてTHFを重合溶媒とし、開始剤として12部のsBuLi、モノマーとして42部のStを用いて、−78℃で1時間重合させ、ポリスチレンを合成した。続いてポリマー1−bの50%THF溶液54部をフラスコBからブレークシールを破って注入し、−78℃で30分間反応させ、重合したポリスチレン鎖をポリマー1−bのエチレン二重結合に付加させてマクロアニオン1を合成した。続いて、フラスコCからブレークシールを破って、マクロ停止剤であるポリマー1−aの50%THF溶液46部を注入し、ポリマー1−aの1分子中にある2つの臭素原子にマクロアニオン2分子を付加させた。反応させたポリマー1にメタノールと塩酸を加えて、反応を終了させると同時に、重合したモノマーのtBMAを加水分解して酸モノマーであるMAAとした。
【0078】
ポリマー1の分子量は数平均分子量5,000、重量平均分子量5,500でMw/Mnが1.10であった。NMR測定によりポリマー1−aの臭素原子、ポリマー1−bのエチレン性二重結合が消失していることが確認でき、第1の重合鎖であるポリスチレン鎖が3本、酸モノマー(MAA)を共重合した第2の重合鎖が2本結合したスターポリマー1を合成した。また、得られたポリマー1の酸価は118mgKOH/gであった。ポリマー1のTHF溶液にポリマー1の酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、減圧条件下にてTHFを除去し、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液1を得た。
【0079】
(ポリマー2〜5)
また、ポリマー1で使用したモノマーや重合停止剤と重合方法を用いて、アームの数平均分子量Mnを変えたポリマー2〜5を合成した。ポリマー2〜5の各物性を下記表1に示す。各ポリマー2〜5を合成するにあたっては、第1、第2の(共)重合鎖が下記表1のアームの数平均分子量Mnとなるようにモノマー量に対する重合停止剤の比率を調整した。ポリマー2〜5の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液2〜5を得た。ポリマー1〜5の各物性を下記表1にまとめて示す。
【0080】

【0081】
(ポリマー6〜9)
アームの数をポリマー1から変えたポリマー6〜9をそれぞれ合成した。ポリマー6〜9の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液6〜9を得た。ポリマー6〜9の各物性を下記表2にまとめて示す。なお、表2には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
【0082】
(ポリマー6)
〔第1段階:ポリマー6−aの合成〕
ポリマー1−aの重合でポリスチレン鎖を重合後、SPE溶液と反応させた後、さらにBPPEの10%THF溶液35部と−78℃、30分間反応させた。ブレークシールを割って、得られたポリスチレン溶液を回収した。
【0083】
〔第2段階:ポリマー6−bの合成〕
ポリマー1−aの重合方法と同様にポリスチレンを合成した後、上記ポリマー6−aを重合停止剤として用いた。ブレークシールを割って、得られたポリスチレン溶液を回収した。ポリマー1−aと同様に、SPE由来のシラノール基をBr基に変換した。
【0084】
〔第3段階:ポリマー6の合成〕
ポリマー1−bと同様の方法でtBMAとnBMAの(共)重合鎖を重合した後、ポリマー1におけるポリマー1−aの代わりに、ポリマー6−bを重合停止剤として加えて、ポリマー6を合成した。停止反応後の操作はポリマー1に準じる。
【0085】
(ポリマー7)
Macromolecules、37、5179(2004)のスキーム3にしたがってポリマー7を合成した。
【0086】
〔第1段階:ポリマー7−aの合成〕
先ずポリマー1−bと同様の方法でtBMAとnBMAの(共)重合鎖を合成し、DBPEと反応させて、ポリマー7−aを合成した。
【0087】
〔第2段階:ポリマー7−bの合成〕
ポリマー1−aと同様の方法で、ポリスチレンを合成し、ポリマー7−aと反応させて、ポリマー7−bを合成した。
【0088】
〔第3段階:ポリマー7の合成〕
第1段階で合成したポリスチレンと第2段階で合成したポリマー7−bとを反応させ、ポリマー7を合成した。停止反応後の処理はポリマー1と同様の方法で行った。
【0089】
(ポリマー8)
〔ポリマー8−a〕
ポリマー1−bと同様の方法で、tBMAとnBMAの(共)重合鎖を合成した後、ポリマー1におけるポリマー1−aの代わりに、ポリマー6−aを重合停止剤として加え、ポリマー8−aとした。
【0090】
〔ポリマー8の合成〕
ポリマー1−aと同様の方法でポリスチレンを合成し、ポリマー8−aを重合停止剤として加え、1,1−bis(3−ブロモメチルフェニル)エチレン(DBPE)を加えて2量体化してポリマー8とした。
【0091】
(ポリマー9)
Macromolecules、37、5179(2004)のスキーム2を用いてポリマー9を合成した。
【0092】
〔ポリマー9−a〕
ポリマー1−aを合成した後、Macromolecules、37、5179(2004)のスキーム2のPS(BnBr)4にしたがってポリマー9−aを合成した。
【0093】
〔ポリマー9の合成〕
ポリマー9−aにポリマー1のマクロアニオン1を4分子反応させた。以降の操作はポリマー1と同様の方法で行った。
【0094】

【0095】
(ポリマー10〜12)
第1の重合鎖の芳香族モノマーの含有比率をポリマー7から変えたポリマー10〜12をそれぞれ合成した。ポリマー合成法はポリマー7にしたがって行い、第1の(共)重合鎖の組成、第1の(共)重合鎖及び第2の(共)重合鎖の本数並びにこれらの数平均分子量Mnを下記表3に示す通りとした。ポリマー10〜12の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液10〜12を得た。ポリマー10〜12の各物性を下記表3にまとめて示す。なお、表3には上記で合成したポリマー7の各物性についても併せて示す。
【0096】

【0097】
(ポリマー13)
ポリマー13は中心骨格との結合端の反対側端に酸モノマーが結合されていないスターポリマーである。具体的には、以下のようにしてポリマーを合成した。ポリマー1の合成法において、ポリマー1−bの2種のモノマー(tBMAとnBMA)重合順序において、nBMAを先に注入し、tBMAを後に注入する以外は、ポリマー1の重合法と同様にしてポリマー13を合成した。ポリマー13のTHF溶液に、ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液13を得た。ポリマー13の各物性を下記表4にまとめて示す。
【0098】

【0099】
(ポリマー14及び15)
ポリマー14及び15は、ポリマー全体のMw/Mnがポリマー1よりも広い場合について述べる。ポリマーの合成法については各アームの重合を行う際の開始剤sBuLiを下記表5に示すように変更した以外は、ポリマー1と同様の方法で合成した。ポリマー14及び15の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液14及び15を得た。ポリマー14及び15の各物性を下記表5にまとめて示す。なお、表5には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
【0100】

【0101】
(ポリマー16〜18)
ポリマー16〜18は、ポリマー1の芳香族モノマーであるStを変えたスターポリマーである。ポリマー16〜18は、芳香族モノマーとして、下記表6に示すモノマーを用いた以外はポリマー1と同様の方法で合成した。なお、ポリマー18で導入された芳香族モノマーは加水分解処理によりp−アセチルスチレンとなる。ポリマー16〜18の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液16〜18を得た。ポリマー16〜18の各物性を下記表6にまとめて示す。なお、表6には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
【0102】

【0103】
(ポリマー19及び20)
ポリマー19及び20は、ポリマー1の酸モノマーであるtBMA(MAA)を変えたスターポリマーである。ポリマー19及び20は、酸モノマーとなるモノマーとして、下記モノマーを用いた以外はポリマー1と同様の方法で合成した。下記表7のStの組成比はポリマー1の合成が3段階により構成されているため、各段階でのSt投入量比を括弧内に示した。前者がポリマー1−aを合成する段階でのSt量、後者がポリマー1を合成する段階でのSt量である。また、ポリマー20で導入された酸モノマーとなるモノマーは加水分解処理によりビニル安息香酸(酸モノマー)となる。ポリマー19及び20の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液19及び20を得た。ポリマー19及び20の各物性を下記表7にまとめて示す。なお、表7には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
【0104】

【0105】
(ポリマー21及び22)
ポリマー21及び22は、ポリマー9の合成方法を用いて合成されたアームが9本のスターポリマーである。モノマーの組成比は下記表8に示す通りである。ポリマー21及び22は第1の(共)重合鎖における芳香族モノマーが占める割合が50%以下で、第2の(共)重合鎖はポリマー13のようにnBMAを先に、tBMAを後に重合することで、スターポリマー末端には酸モノマーが存在しないものである。なお、重合開始剤はsBuLiからtBuLiに変更した。ポリマー21及び22の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液21及び22を得た。ポリマー21及び22の各物性を下記表8にまとめて示す。なお、表8には上記で合成したポリマー9の各物性についても併せて示す。
【0106】

【0107】
(ポリマー23及び24)
ポリマー23及び24は、ポリマー7の合成方法を用いて合成されたアームが7本のスターポリマーである。モノマーの組成比は下記表9に示す通りである。ポリマー23及び24は第1の(共)重合鎖における芳香族モノマーが占める割合が50%以下で、第2の(共)重合鎖はポリマー13のようにnBMAを先に、tBMAを後に重合することで、スターポリマー末端には酸モノマーが存在しないものである。なお、重合開始剤はsBuLiからtBuLiに変更した。ポリマー23及び24の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液23及び24を得た。ポリマー23及び24の各物性を下記表9にまとめて示す。なお、表9には上記で合成したポリマー7の各物性についても併せて示す。
【0108】

【0109】
(ポリマー25〜30)
ポリマー25〜30は、ポリマー1の酸価を変えたスターポリマーである。ポリマー25〜30は、3段階により構成されるポリマー1の合成方法において、各段階で使用するモノマーの組成を変えた以外はポリマー1と同様の方法で合成した。ポリマー25〜30の各THF溶液に、各ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液25〜30を得た。ポリマー25〜30の各物性を下記表10にまとめて示す。なお、表10には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
【0110】

【0111】
(ポリマー31)
ポリマー31は、ポリマー1のモノマーを芳香族モノマー及び酸モノマーのみに変えたスターポリマーである。ポリマー31は、3段階により構成されるポリマー1の合成方法において、各段階で使用するモノマーの組成を変えた以外はポリマー1と同様の方法で合成した。ポリマー31のTHF溶液に、ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液31を得た。ポリマー31の各物性を下記表11にまとめて示す。なお、表11には上記で合成したポリマー1の各物性についても併せて示す。
【0112】

【0113】
(ポリマー32)
ポリマー32は本発明の比較例に使用したスターポリマーであり、アームの本数が3本のものである。ポリマー1−bの合成において、tBMAとnBMAの(共)重合鎖を合成した後、重合停止剤としてBPPE溶液に代えて150部のポリマー1−aを用いて重合を停止させることにより、第1の重合鎖1本、第2の(共)重合鎖2本のポリマー32を合成した。ポリマー32のTHF溶液に、ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液32を得た。ポリマー32の各物性を下記表12にまとめて示す。
【0114】

【0115】
(ポリマー33)
ポリマー33は本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、アームを構成するモノマーがα、β−エチレン性不飽和モノマーにより構成されておらず、さらにスターポリマーを構成する(共)重合鎖が、芳香族モノマーも酸モノマー又はその塩も含まないものである。ポリマーの製法は特開2001−40256号公報の実施例1にしたがった。中心骨格を単離することで得られる中心化合物はトリヒドロキシベンゼン、アームを構成するモノマーはエチレンオキサイド、アームの数は3本である。ポリマー33に水を加えて25%のポリマー水溶液33を得た。ポリマー33の各物性を下記表13にまとめて示す。
【0116】

【0117】
(ポリマー34)
ポリマー34は本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、スターポリマーを構成する(共)重合鎖が、芳香族モノマーも酸モノマー又はその塩からなるモノマーも含まないものである。ポリマーの製法は特開2001−40256号公報の実施例15にしたがった。中心骨格を単離することで得られる中心化合物はTMMP、アームを構成するモノマーはN,N−ジメチルアクリルアミド、アームの数は3本である。ポリマー34に水を加えて25%のポリマー水溶液34を得た。ポリマー34の各物性を下記表14にまとめて示す。
【0118】

【0119】
(ポリマー35)
ポリマー35は本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、スターポリマーを構成する(共)重合鎖が、芳香族モノマーも酸モノマー又はその塩も含まないものである。ポリマーの製法は特開平9−249709号公報の参考例1にしたがった。中心骨格を単離することで得られる中心化合物はPEMG、アームを構成するモノマーはn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アームの数は4本である。ポリマー35の酢酸エチル溶液に、ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、減圧条件下にて酢酸エチルを除去し、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液35を得た。ポリマー35の各物性を下記表15にまとめて示す。
【0120】

【0121】
(ポリマー36)
ポリマー36は本発明の比較例に使用したポリマーで、原料にスターポリマーを含むが、合成されるポリマーはスターポリマーでない。つまり、本発明で用いるような、スターポリマーを構成する(共)重合鎖が、芳香族モノマーや酸モノマー又はその塩を含まないものである。ポリマーの製法は特開昭59−124922号公報の製造例1にしたがった。スターポリマーであるペンタエリスリトールポリマーをイソホロン系イソシアネートで架橋し、ペンタエリスリトールポリマーのヒドロキシル基に無水フタル酸を付加させたもので合成されるポリマーはスターポリマーではない。ポリマー36の酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液36を得た。ポリマー36の各物性を下記表16にまとめて示す。
【0122】

【0123】
(ポリマー37)
ポリマー37は本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このスターポリマー単離可能な中心化合物を持たず、スターポリマーを構成する(共)重合鎖が、芳香族モノマーを含まないものである。ポリマーの製法は特開2000−169771号公報のスターポリマー1の合成方法にしたがった。アームを構成するモノマーは芳香族(メタ)アクリレートや芳香族(メタ)アクリルアミドでないBMAとメタクリル酸(MAA)である。そしてアームの片末端に重合したエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の架橋によりスターポリマーとしたものである。アームの数は制御不能のため分布を有しており一義的に定められない。ポリマー37のTHF溶液に、ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、減圧条件下にてTHFを除去し、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液37を得た。ポリマー37の各物性を下記表17にまとめて示す。
【0124】

【0125】
(ポリマー38)
ポリマー38は本発明の比較例に使用した直鎖状ポリマーである。分子量分布を1.5以下とするためリビングアニオン重合で合成を行った。合成方法は新高分子実験学2 高分子の合成・反応(1)付加系高分子の合成 高分子学会編を参考にした。直鎖状ポリマーのモノマー組成は下記表18に示す通りであり、芳香族モノマーであるベンジルメタクリレート、酸モノマーとなるtBMAを含んでいる。
【0126】
重合に際し、実験装置及び実験手順は「新高分子実験学2」高分子の合成・反応(1)付加系高分子の合成 高分子学会編 212頁に記載の実験例2.4.1を用いた。溶媒をトルエン100部、開始剤をsBuLi/トリブチルアルミニウムを2部用い、重合温度を−78℃、反応時間を24時間とした。反応後、塩酸/メタノールを加えて停止反応を行うと同時にtBMAの加水分解反応を行ってMAAとした。その後過剰のヘキサンを加えてポリマーを析出させて、真空乾燥を行った。ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水を加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液38を得た。ポリマー38の各物性を下記表18にまとめて示す。
【0127】

【0128】
(ポリマー39)
ポリマー39は本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、第1の(共)重合鎖に芳香族モノマー、第2の(共)重合鎖に酸モノマー又はその塩が(共)重合されているが、中心化合物として多価チオール化合物を用いている。そして、中心化合物のチオール基の硫黄原子に第1の(共)重合鎖と第2の(共)重合鎖を結合することで得られるものである。ポリマーの製法は特開平7−179538号公報の実施例6の合成方法にしたがった。ポリマー39の酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液39を得た。ポリマー39の各物性を下記表19にまとめて示す。
【0129】

【0130】
(ポリマー40)
ポリマー40は本発明の比較例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、3本の異なる成分を持つ(共)重合鎖が中心骨格に結合しているスターポリマーである。ポリマーの製法は特開平3−190911号公報の実施例7の合成方法にしたがった。ポリマー40のTHF溶液にメタノールを加えてポリマーを析出させて減圧乾燥した。適量の水を加えて25%のポリマー水溶液40を得た。ポリマー40の各物性を下記表20にまとめて示す。
【0131】

【0132】
(ポリマー41)
ポリマー41は本発明の参考例に使用したスターポリマーである。このポリマーは、中心骨格に結合している(共)重合鎖を同時に重合して合成したスターポリマーである。撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置及び温度計を備えたフラスコにMEKを100部を加えた。次いでBzMAを65部、nBMAを20部、AAを15部を混合したモノマー混合液、中心化合物となる6官能チオールDPMP20部を加えた後、撹拌しながら窒素雰囲気下80℃に昇温した。フラスコ内部の温度が80℃に達したことを確認後、V−59を0.3部加え3時間撹拌した。その後、V−59をさらに0.1部加え2時間反応を継続させた。なお、ラマン分光光度計(日本分光製)を用いてチオール(S−H結合)の吸収(2,570cm-1付近)の消失を確認することで、中心骨格に6本のアームが結合していると帰属した。ポリマー41のMEK溶液に、ポリマーの酸価に対して等mol量のKOHと適量の水とを加えて撹拌した後、減圧条件下にてMEKを除去し、さらに水を加えて25%のポリマー水溶液41を得た。ポリマー41の各物性を下記表21にまとめて示す。
【0133】

【0134】
<顔料分散液の調製>
(ブラック顔料分散液の調製)
・ポリマー水溶液1(固形分濃度25%) 20部
・2−ピロリドン 10部
・イオン交換水 55部
【0135】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、撹拌下で樹脂分を完全に溶解させた。この溶液にカーボンブラック(ナイペックス95;デグサ製)15部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行ってブラック顔料分散液1を得た。
・分散機:超高圧ホモジナイザーNM2−L200AR(吉田機械興業製)
・処理圧力:150MPa
・処理パス:10パス
【0136】
また、ポリマー水溶液2〜41のそれぞれを用いて、ブラック顔料分散液1のポリマー水溶液1を変えた以外はブラック顔料分散液1と同様の方法でブラック顔料分散液2〜41をそれぞれ調製した。
【0137】
(シアン顔料分散液の調製)
・ポリマー水溶液1(固形分濃度25%) 20部
・2−ピロリドン 10部
・イオン交換水 55部
【0138】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、撹拌下で樹脂分を完全に溶解させた。この溶液にシアン顔料(IRGALITE Blue 8700;チバスペシャリティケミカルズ製)15部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行ってシアン顔料分散液1を得た。
・分散機:ビーズミル UAM−015(製品名)(寿工業製)
・使用ビーズ:0.05mm径ジルコニアビーズ
・ビーズ充填率:70%(嵩比重換算)
・ローター回転数:3500Hz
【0139】
また、ポリマー水溶液2〜41のそれぞれを用いて、シアン顔料分散液1のポリマー水溶液1を変えた以外はシアン顔料分散液1と同様の方法でシアン顔料分散液2〜41をそれぞれ調製した。
【0140】
(マゼンタ顔料分散液の調製)
上記シアン顔料分散液における顔料をシアン顔料からマゼンタ顔料(CROMOPHTAL Pink PT;チバスペシャリティケミカルズ製)とした以外はシアン顔料分散液1と同じ方法によりマゼンタ顔料分散液1を調製した。
【0141】
また、ポリマー水溶液2〜41のそれぞれを用いて、マゼンタ顔料分散液1のポリマー水溶液1を変えた以外はマゼンタ顔料分散液1と同様の方法でマゼンタ顔料分散液2〜41をそれぞれ調製した。
【0142】
(イエロー顔料分散液の調製)
上記シアン顔料分散液における顔料をシアン顔料からイエロー顔料(IRGALITE Yellow GS;チバスペシャリティケミカルズ製)とした以外はシアン顔料分散液1と同じ方法によりイエロー顔料分散液1を調製した。
【0143】
また、ポリマー水溶液2〜41のそれぞれを用いて、イエロー顔料分散液1のポリマー水溶液1を変えた以外はイエロー顔料分散液1と同様の方法でイエロー顔料分散液2〜41をそれぞれ調製した。
【0144】
<インクの調製>
(ブラックインク(Bk)の調製)
上記のブラック顔料分散液1を使用し、下記に示す各成分を混合し、ブラックインク1とした。
・ブラック顔料分散液1(顔料濃度として5部) 33部
・グリセリン 10部
・エチレングリコール 5部
・PEG1,000 5部
・AE100 0.5部
・イオン交換水 46.5部
【0145】
また、ブラック顔料分散液2〜41を用いてブラックインク1のブラック顔料分散液1を変えた以外は、ブラックインク1と同様の方法でブラックインク2〜41をそれぞれ調製した。
【0146】
(シアンインク(C)の調製)
ブラックインク1において、ブラック顔料分散液1をシアン顔料分散液1とした以外はブラックインク1と同様にしてシアンインク1を調製した。
【0147】
また、シアン顔料分散液2〜41を用いてシアンインク1のシアン顔料分散液1を変えた以外は、シアンインク1と同様の方法でシアンインク2〜41をそれぞれ調製した。
【0148】
(マゼンタインク(M)の調製)
ブラックインク1において、ブラック顔料分散液1をマゼンタ顔料分散液1とした以外はブラックインク1と同様にしてマゼンタインク1を調製した。
【0149】
また、マゼンタ顔料分散液2〜41を用いてマゼンタインク1のマゼンタ顔料分散液1を変えた以外は、マゼンタインク1と同様の方法でマゼンタインク2〜41をそれぞれ調製した。
【0150】
(イエローインク(Y)の調製)
ブラックインク1において、ブラック顔料分散液1をイエロー顔料分散液1とした以外はブラックインク1と同様にしてイエローインク1を調製した。
【0151】
また、イエロー顔料分散液2〜41を用いてイエローインク1のイエロー顔料分散液1を変えた以外は、イエローインク1と同様の方法でイエローインク2〜41をそれぞれ調製した。
【0152】
<インクの評価>
(吐出安定性)
上記で得られたブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、このインクカートリッジをインクジェット記録装置 PIXUS iP4100(キヤノン製)に搭載した。そして、記録モードを普通紙・標準モードとして、キヤノン普通紙ホワイトSW−101(キヤノン製)にブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクを用いて記録デューティが100%であるベタ画像をそれぞれ記録して記録物を作製した。同様の記録物を連続して合計で2,000枚作製した。
【0153】
そして、1枚目と2,000枚目の記録物について、各インクで形成したベタ画像の部分における光学濃度を測定した。1枚目の記録物における光学濃度OD1と2,000枚目の記録物における光学濃度OD2の各値から、これらの比ROD=OD2/OD1の値を求め、インクの吐出安定性の評価を行った。光学濃度は、反射濃度計RD-19I(Gretag Macbeth製)を用いて測定した。吐出安定性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表22に示す。なお、吐出安定性に優れるインクは、1枚目と2,000枚目との記録物における光学濃度の値が変わらないため、ROD値が1に近くなる。
【0154】
A:0.95<ROD
B:0.9<ROD≦0.95
C:0.8<ROD≦0.9
D:0.6<ROD≦0.8
E:ROD≦0.6
【0155】
(耐乾燥性)
先ず、上記で得られたブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクについて、各インク中の顔料の平均粒子径D50-1を測定した。顔料の平均粒子径(体積平均粒子径)D50は、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA-EX150(日機装製)を用いて測定した。また、上記で得られたブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクをそれぞれ2mLずつ、直径20mmのシャーレに入れた。このシャーレを温度60℃の恒温槽で24時間乾燥させた後、シャーレにイオン交換水を入れて顔料を再分散させた液体について、該液体中の顔料の平均粒子径D50-2を上記と同様の装置を用いて測定した。
【0156】
得られたD50-1及びD50-2の各値から、これらの比R=D50-2/D50-1の値を求め、インクの耐乾燥性の評価を行った。耐乾燥性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表22に示す。なお、インクの耐乾燥性とは、記録ヘッドのノズル中に存在するインクが放置されたときの乾燥による凝集の起こりにくさを評価するものである。
A:R<1.1
B:1.1≦R<1.2
C:1.2≦R<1.5
D:1.5≦R<2.0
E:2.0≦R
【0157】
(保存安定性)
先ず、上記で得られたブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクについて、各インク中の顔料の平均粒子径D50-1を測定した。顔料の平均粒子径(体積平均粒子径)D50は、ナノトラック粒度分布測定装置 UPA-EX150(日機装製)を用いて測定した。また、上記で得られたブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの各インクをそれぞれ温度80℃の恒温槽中にて1週間保存した後、各インク中の顔料の平均粒子径D50-2を上記と同様の装置を用いて測定した。得られたD50-1及びD50-2の各値から、これらの比R=D50-2/D50-1の値を求め、インクの保存安定性の評価を行った。保存安定性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表22に示す。
A:0.95≦R<1.1
B:0.90≦R<0.95、又は1.1≦R<1.2
C:0.85≦R<0.90、又は1.2≦R<1.5
D:0.7≦R<0.85、又は1.5≦R<2.0
E:R<0.7、又は2.0≦R
上記3種の評価項目において、評価基準のA〜Cを許容できるレベル、D及びEを許容できないレベルとした。
【0158】

【0159】

【0160】
<反応液の調製>
下記に示す各成分を混合し、ろ過して、反応液を調製した。
・ジエチレングリコール 10.0部
・メチルアルコール 5.0部
・硝酸マグネシウム 3.0部
・AE100 0.1部
・イオン交換水 81.9部
【0161】
<インクと反応液とのセットの評価>
上記で得られた反応液と、ブラックインク1、シアンインク1、マゼンタインク1及びイエローインク1とを組み合わせてインクと反応液とのセットとした。このセットを構成する反応液をキヤノン普通紙ホワイトSW−101(キヤノン製)に先に付与した後、反応液と各インクとがそれぞれ接触するように、ブラックインク1、シアンインク1、マゼンタインク1及びイエローインク1を記録して記録物を作製した。
【0162】
上記の吐出安定性の評価の際に作製したものと同様の条件で作製した記録物(記録デューティが100%であるベタ画像)について、ブラックインクで形成した画像はその光学濃度を測定し、カラーインクで形成した画像はその色相を測定した。具体的には、ブラックインクで形成した画像の部分について、反射濃度計RD-19I(Gretag Macbeth製)を用いて光学濃度ODを測定した。得られたODの値により光学濃度の評価を行った。なお、光学濃度ODの値が大きいほど画像が濃いことを示す。また、カラーインクで形成した画像の部分について、CIEで規定される色差表示法であるL***表色系におけるa*及びb*を、反射濃度計RD-19I(Gretag Macbeth製)を用いて測定し、下記式で定義される彩度C*の値を算出した。得られたC*の値により彩度の評価を行った。なお、彩度C*の値が大きいほど発色性が高いことを示す。評価結果を表23に示す。
*={(a*2+(b*21/2
【0163】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料と、中心骨格に4本以上のα、β−エチレン性不飽和モノマーの(共)重合鎖が結合してなるスターポリマーとを含有するインクジェット用インクであって、
前記(共)重合鎖が、芳香族モノマーユニットを少なくとも含む第1の(共)重合鎖を2本以上と、酸モノマー及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーユニットを含む第2の(共)重合鎖を2本以上と、を有し、
前記スターポリマーが下記式X及び下記式Yの構造を有し、かつ、下記式X中のAが前記第1の(共)重合鎖であり、下記式Y中のBが前記第2の(共)重合鎖であることを特徴とするインクジェット用インク。

【請求項2】
前記中心骨格が、前記式X及び前記式Yの構造から、前記A及び前記Bを除いた構造を有する請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記第1の(共)重合鎖及び前記第2の(共)重合鎖の数平均分子量が、それぞれ400以上3,000以下である請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記第1の(共)重合鎖と前記第2の(共)重合鎖の合計が、4本以上8本以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記第1の(共)重合鎖の芳香族モノマーユニットが占める質量比率が、第1の(共)重合鎖を構成する全てのモノマーユニットを基準として、50.0質量%以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記第2の(共)重合鎖が、少なくともその末端(中心骨格との結合端の反対側端部)に酸モノマー及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーユニットを有している請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
前記ポリマーにおける、芳香族モノマーユニットが占める質量比率が、ポリマー全質量を基準として、30.0質量%以上85.0質量%以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
前記ポリマーの酸価が、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
前記ポリマーのポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られる分子量分布が、1.0≦(ポリスチレン換算の重量平均分子量:Mw)/(ポリスチレン換算の数平均分子量:Mn)≦1.5である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、使用するインクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジであって、インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−111856(P2010−111856A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226159(P2009−226159)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】