説明

インクジェット用インクおよびインクから得られた硬化膜

【課題】金属エッチング液耐性、剥離液に対する剥離性、またはめっき液耐性を有するインクジェット用インクが求められている。
【解決手段】一般式(a)で表される化合物(A)と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)とを含むインクジェット用インク。


(式(a)中、mとnはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Rはそれぞれ独立して分岐構造を有していてもよい炭素数1〜13のアルキレンであり、Rは単結合または分岐構造を有していてもよい炭素数1〜13のアルキレンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、EL表示素子、プリント配線基板等を製造するために用いられるインクジェット用インクに関する。さらに本発明は、該インクジェット用インクにより得られる硬化膜(パターン化された硬化膜を含む)、硬化膜形成方法、および、硬化膜が形成された電子回路基板、電子部品、表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ法に比べて、インクジェット法によるパターン形成は工程が簡単になる上に、材料使用量の削減も期待できるので、電子機器に使用されるプリント配線板等の製造に用いることが提案されている(たとえば、特開2003−302642号公報(特許文献1)、特開2005−68280号公報(特許文献2)、特開2008−50601号公報(特許文献3)、特開平9−183929号公報(特許文献4)、特開2007−231231号公報(特許文献5)を参照)。
【0003】
近年、電子機器の小型化が進み、軽量かつフレキシブルなプリント配線板を用いた電子回路基板が多く用いられている。このような電子回路基板は、たとえば、エッチングレジストにより、所定の回路パターンをなす金属配線部を形成し、その後にめっきレジストによるめっきパターン作製、および金属層表面を保護する保護膜であるカバーレイをコーティングする工程を経て作製されている。
【0004】
レジストによるめっきパターン作製および金属層表面を保護する保護膜であるカバーレイをコーティングする工程をインクジェット法により実施する際、インクジェット用インクの保存安定性が要求され、安定したインク吐出性が要求される。また、インクジェット用インクにより形成された硬化膜は各インク用途により、さまざまな性能が要求される。
たとえば、エッチングレジスト用として形成されたインクジェット用インクの硬化膜については、金属エッチング液に対する耐性が要求され、剥離液に対する剥離性が要求される。たとえば、めっきレジスト用として形成されたインクジェット用インクの硬化膜については、めっき液に対する耐性が要求され、剥離液に対する剥離性が要求される。たとえば、カバーレイ用として形成されたインクジェット用インクの硬化膜については、めっき液に対する耐性が要求され、はんだ耐熱性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2004−099272号パンフレット
【特許文献2】特開2005−68280号公報
【特許文献3】特開2008−50601号公報
【特許文献4】特開平9−183929号公報
【特許文献5】特開2007−231231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインクジェット用インクの硬化膜は、上記性能のいずれかひとつ、または複数の性能が不十分であった。
【0007】
上記の状況の下、たとえばインクの保存安定性に優れたインクジェット用インクが求められている。また、たとえば、安定した吐出が可能なインクジェット用インクが求められている。そしてインクジェット用インクを硬化膜としたときに、たとえばエッチングレジスト用では金属エッチング液に対する耐性や剥離液に対する剥離性を有し、また、たとえばめっきレジスト用ではめっき液に対する耐性や剥離液に対する剥離性を有し、また、たとえばカバーレイ用ではめっき液に対する耐性やはんだ耐熱性を有するインクジェット用インクが求められている。また、信頼性の高いフレキシブル配線板が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、インクジェット用インクに所定の構造を有する化合物(A)を用いると上記課題に有効に対処することができることを見出し、この知見に基づいて、化合物(A)と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)とを含むインクジェット用インクに関する本発明を完成した。本発明は以下のようなインクジェット用インク、インクジェット用インクから得られた硬化膜およびその形成方法等を提供する。
【0009】
[1] 一般式(a)で表される化合物(A)と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)とを含むインクジェット用インク。
【化1】


(式(a)中、mとnはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Rはそれぞれ独立して分岐構造を有していてもよい炭素数1〜13のアルキレンであり、Rは単結合または分岐構造を有していてもよい炭素数1〜13のアルキレンである。)
[2] 一般式(a)において、mとnはそれぞれ独立して1〜2の整数であり、Rはそれぞれ独立して水素またはメチルであり、Rはそれぞれ独立して分岐構造を有していてもよい炭素数2〜3のアルキレンであり、Rは単結合または炭素数2〜5のアルキレンである、[1]に記載のインクジェット用インク。
[3] ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)が、一般式(b)で表される化合物である、[1]または[2]に記載のインクジェット用インク。
【化2】


(一般式(b)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Rは炭素数2〜12の有機基であり、sは1〜30の整数である。)
[4] ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、[1]または[2]に記載のインクジェット用インク。
[5] 光重合開始剤(C)が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)から選ばれた少なくとも1つの化合物である、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[6] カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)が一般式(d−1)又は(d−2)で表される化合物である、[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット用インク。

【化3】


(一般式(d−1)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Rは炭素数2〜12の有機基であり、Rは炭素数2〜12の有機基であり、pは1〜30の整数である。)

【化4】


(一般式(d−2)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、R10は炭素数2〜12の有機基であり、qは1〜30の整数であり、rは1〜3の整数である。)
[7] インクジェット用インク中に、一般式(a)で表される化合物(A)が1〜90重量%、ラジカル重合性モノマー(B)が1〜80重量%、光重合開始剤(C)が0.2〜20重量%およびカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)が1〜60重量%含まれる、[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[8] さらに、多官能のラジカル重合性モノマー(G)を含む[1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
[9] さらに、熱反応性樹脂(E)および難燃剤(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、[1]〜[8]のいずれかに記載のインクジェット用インク。
また、[1]〜[8]のいずれかに記載のインクジェット用インクは、エッチングレジストまたはめっきレジストの用途、または、カバーレイの用途のインクジェット用インクであることが好ましい。
[10] インクジェット法によって[1]〜[8]のいずれかに記載のインクジェット用インクを塗布し、塗布されたインクに光を照射することによって硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
[11] インクジェット法によって[1]〜[8]のいずれかに記載のインクジェット用インクを塗布し、塗布されたインクへの光照射および加熱を同時、または、光照射の後に加熱を行うことによって硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
[12] [10]または[11]に記載された方法で得られた硬化膜。
[13] 所定のパターンで形成されている、[12]に記載の硬化膜。
[14] 基板上に[12]または[13]に記載された硬化膜が形成された電子回路基板。
[15] [14]に記載された電子回路基板を有する電子部品。
[16] [14]に記載された電子回路基板または[15]に記載された電子部品を有する表示素子。
【0010】
なお、本明細書中、アクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクは、たとえば、インクの保存安定性に優れ、安定した吐出が可能となる。また、このインクジェット用インクから得られる硬化膜は、たとえば、金属エッチング液、アルカリ性水溶液またはめっき液に対する耐性や剥離液に対する剥離性を有している。たとえば、このインクジェット用インクから得られる硬化膜は、めっき液に対する耐性や剥離液に対する剥離性を有している。たとえば、インクジェット用インクから得られる硬化膜は、めっき液に対する耐性やはんだ耐熱性を有している。
さらに、本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクを用いることにより、電子回路基板の製造における保護膜の形成にかかる手間や時間を短縮でき、消耗品も削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.本発明のインクジェット用インク
本発明のインクジェット用インクは、一般式(a)で表される化合物(A)と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)とを含むインクジェット用インクである。
本発明のインクジェット用インクは、無色であっても有色であってもよい。
【0013】
また、本発明のインクジェット用インクは、一般式(a)で表される化合物(A)と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)の他に、任意に、熱反応性樹脂(E)、難燃剤(F)等を含むことができる。また、所望により、多官能のラジカル重合性モノマー、反応性希釈剤、溶媒、添加剤、重合禁止剤、着色剤等をさらに含むことができる。なお、「熱反応性」とは、例えば、熱により架橋反応を起こす性質を意味するが、これに限定されるわけではない。
【0014】
1.1 一般式(a)で表される化合物(A)
本発明のインクジェット用インクで用いられる一般式(a)で表される化合物(A)の具体例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等である。
【0015】
これらの中でも、ジプロピレングリコールジアクリレート(一般式(a)においてm、nがいずれも1であり、Rは水素であり、Rはイソプロピレンであり、Rは単結合である化合物)、または、トリプロピレングリコールジアクリレート(一般式(a)においてm、nがそれぞれ1、2、またはm、nがそれぞれ2、1であり、Rは水素であり、Rはイソプロピレンであり、Rは単結合である化合物)、または、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(m、nがいずれも2であり、Rは水素であり、Rはイソプロピレンであり、Rは2,2−ジメチルプロピレンである化合物)が好ましい。
【0016】
ジプロピレングリコールジアクリレートはサートマー社のSR508として市販されており、トリプロピレングリコールジアクリレートはサートマー社のSR306Hとして市販されており、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートはサートマー社のSR3009として市販されている。
【0017】
一般式(a)で表される化合物(A)は、式(a)で表される化合物群から選ばれる1種の化合物であっても、これらの混合物であってもよい。
インクジェット用インク中に一般式(a)で表される化合物(A)が1〜90重量%含まれると、インクジェット時、ノズルからの吐出安定性が良好になるので好ましく、1〜80重量%含まれるとより好ましく、1〜70重量%含まれるとさらに好ましい。
【0018】
1.2 ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)
本発明のインクジェット用インクで用いられるヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)は、単官能のラジカル重合性化合物であって、ヒドロキシを有するものであれば特に限定されない。「ラジカル重合性」とは、光が当たることで発生したフリーラジカルにより重合を開始する性質である。
【0019】
ラジカル重合性モノマー(B)がラジカル重合性を有するための官能基として、アクリル、メタクリル、アクリルアミド、またはメタクリルアミド等の官能基が挙げられる。
【0020】
ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)は、上述するようにラジカル重合性モノマーがヒドロキシを有するものである。
【0021】
単官能とは、官能性を有する基を一つ有する性質を意味する。単官能のラジカル重合性の基としては、たとえば、炭素間二重結合(但し、芳香族を構成する炭素間二重結合を除く)、炭素間三重結合等が挙げられる。
本発明のインクジェット用インクを光硬化性インクジェット用インクに用いた場合に、ノズルからの吐出安定性の観点から、1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーが好ましく、具体的には、単官能は炭素間二重結合であることが特に好ましい。
【0022】
単官能のラジカル重合性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、ビニルトルエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−フェニルマレイミド、またはN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
したがって、本発明のインクジェット用インクで用いられるヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)は、これらのラジカル重合性モノマーを構成する1以上の水素が水酸基に置換されたモノマーが挙げられる。
【0023】
ラジカル重合性モノマー(B)に含まれるヒドロキシの数は、複数個であってもよいが、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個である。
ラジカル重合性モノマー(B)に含まれるヒドロキシは、インクジェット用インク中に含まれる他の成分との相溶性を高める効果を有する。
【0024】
本発明のインクジェット用インクで用いられるヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、または1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
本発明のインクジェット用インクで用いられるヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)は、これらの中でも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、または1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましい。
【0025】
また、本発明のインクジェット用インクで用いられるヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)は、上記一般式(b)で表される化合物であることが好ましい。
【0026】
一般式(b)中、sは1〜30の整数であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1である。
また、一般式(b)中、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜3のアルキルであり、具体的には、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが挙げられ、好ましくは水素またはメチルである。一般式(b)中、Rはそれぞれ独立して炭素数2〜12の有機基である。
【0027】
は有機基であり、特に炭素数2〜20の2価の炭化水素基が好ましい。
「炭素数2〜20の2価の炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。炭素数2〜20の炭化水素基が非環式の場合には、直鎖状でもよいし、枝分かれでもよい。「炭素数2〜20の2価の炭化水素基」には、炭素数2〜20のアルキレン、炭素数2〜20のアルケニレン、炭素数2〜20のアルキニレン、炭素数4〜20のアルキルジエニレン、炭素数6〜18のアリーレン、炭素数7〜20のアルキルアリーレン、炭素数7〜20のアリールアルキレン、炭素数4〜20のシクロアルキレン、炭素数4〜20のシクロアルケニレンなどが含まれる。
【0028】
これらの炭素数2〜20の2価の炭化水素基の中でも、Rは炭素数2〜20の直鎖アルキレン、炭素数2〜20の分岐鎖アルキレン、炭素数2〜20の環構造を有するアルキレンまたは置換基を有してもよい芳香族基が好ましい。
【0029】
本明細書において、「炭素数2〜20のアルキレン」は、炭素数2〜10のアルキレンであることが好ましい。直鎖アルキレンまたは分岐鎖アルキレンの例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ドデカニレン等を挙げることができる。環構造のアルキレンの例としては、下記式(2)で表される基、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン等を挙げることができる。
【化5】



本明細書において、「置換基を有してもよい芳香族基」としては、水素が炭素数1〜5のアルキルまたはハロゲンで置換されてもよいベンゼン環またはナフタレン環等の芳香環由来の芳香族基を挙げることができる。
【0030】
これらの中でも、Rは直鎖アルキレンまたは分岐鎖アルキレンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレンが好ましく、環構造のアルキレンとしては上記式(2)で表される基が好ましい。
【0031】
インクジェット用インク中に含まれるラジカル重合性モノマー(B)は、上述した化合物から選ばれる1種の化合物であってもよく、またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0032】
ラジカル重合性モノマー(B)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
ラジカル重合性モノマー(B)は、インクジェット用インク中に1〜70重量%含まれると、光硬化性インクジェット用インクとした場合、インクジェットノズルからの吐出が安定するので好ましく、3〜60重量%含まれるとより好ましく、5〜50重量%含まれるとさらに好ましい。
【0033】
1.3 光重合開始剤(C)
本発明のインクジェット用インクで用いられる光重合開始剤(C)は、紫外線あるいは可視光線などの照射によりラジカルを発生することのできる化合物であれば特に限定されない。
光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0034】
これらの中でも、インクジェット用インク中に含まれる他の成分との相溶性が高く、得られるインクジェット用インクが少ない紫外線の照射量で硬化するという観点から、光重合開始剤(C)として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバジャパン(株)製のIRGACURE 819(商品名))または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバジャパン(株)製のDAROCUR TPO(商品名))、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバジャパン(株)製のIRGACURE 184(商品名))等を用いることが好ましい。
【0035】
光重合開始剤(C)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
光重合開始剤(C)は、インクジェット用インク中に0.2〜20重量%含まれると、インクジェット用インクとしたとき、紫外線に対して高感度となるので好ましく、1〜20重量%であるとより好ましく、2〜15重量%であるとさらに好ましい。
【0036】
1.4 カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)
カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)は、ラジカル重合性化合物であって、カルボキシまたはリンを有していれば特に限定されない。
【0037】
ラジカル重合性モノマー(D)がカルボキシを有する場合、インクジェットインクから得た硬化膜のアルカリ性水溶液に対する剥離性を向上する効果を有する。また、ラジカル重合性モノマー(D)がリンを有する場合、インクジェットインクから得た硬化膜と金属基板との密着性を向上させる効果を有する。
【0038】
(1)カルボキシを有するラジカル重合性モノマー(D)
カルボキシを有するラジカル重合性モノマー(D)の好ましい例としては、カルボキシと1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマー、カルボキシと2つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマー、またはカルボキシと3つ以上のラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーを挙げることができる。
【0039】
カルボキシと1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、α−クロルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、またはフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0040】
カルボキシと2つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーの具体例としては、脂肪酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート等を挙げることができる。
【0041】
カルボキシと3つ以上のラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーの具体例としては、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、またはコハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0042】
これらの中でも、光硬化性インクジェット用インクに応用した場合に、ノズルからの吐出安定性や、インクジェット用インクから得た硬化膜のアルカリ性水溶液に対する剥離性の観点から、カルボキシを有するラジカル重合性モノマー(D)としては、カルボキシと1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーが好ましく、特に、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、またはフタル酸モノヒドロキシエチルメタクリレート(新中村化学工業(株)製のCB−1(商品名))を用いることが好ましい。
【0043】
また、カルボキシを有するラジカル重合性モノマー(D)は、上記一般式(d−1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(d−1)中、pは1〜30の整数であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1である。また、一般式(d−1)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、具体的には、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが挙げられ、好ましくは水素またはメチルである。一般式(d−1)中、Rは炭素数2〜12の2価の有機基であり、Rは炭素数2〜12の2価の有機基である。
は、炭素数2〜12の2価の炭化水素基が好ましい。これらの炭素数2〜12の2価の炭化水素基の中でも、Rは炭素数2〜12の直鎖アルキレン、炭素数2〜12の分岐鎖アルキレン、炭素数2〜12の環構造を有するアルキレンまたは置換基を有してもよい芳香族基が好ましい。
は、炭素数2〜12の2価の炭化水素基が好ましい。これらの炭素数2〜12の2価の炭化水素基の中でも、Rは炭素数2〜12の直鎖アルキレン、炭素数2〜12の分岐鎖アルキレン、炭素数2〜12の環構造を有するアルキレンまたは置換基を有してもよい芳香族基が好ましい。
【0044】
カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)として上記一般式(d−1)で表される化合物を用いた本発明のインクジェット用インクおよび当該インクを用いて得られた硬化膜は、レジスト用途に用いられると好ましい。
【0045】
(2)リンを有するラジカル重合性モノマー(D)
リンを有するラジカル重合性モノマー(D)の好ましい例としては、リンと1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマー、リンと2つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマー、またはリンと3つ以上のラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーを挙げることができる。
【0046】
リンを有するラジカル重合性モノマー(D)は、上記一般式(d−2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(d−2)中、qは1〜30の整数であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1である。rは1〜3の整数であり、より好ましくは1または2、さらに好ましくは2である。また、一般式(d−2)中、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜3のアルキルであり、具体的には、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルが挙げられ、好ましくは水素またはメチルである。R10は炭素数2〜12の2価の炭化水素基が好ましい。これらの炭素数2〜12の2価の炭化水素基の中でも、R10は炭素数2〜12の直鎖アルキレン、炭素数2〜12の分岐鎖アルキレン、炭素数2〜12の環構造を有するアルキレンまたは置換基を有してもよい芳香族基が好ましい。
【0047】
これらの中でも、光硬化性インクジェット用インクに応用した場合に、ノズルからの吐出安定性や、インクジェット用インクから得た硬化膜と金属基板との密着性の観点から、リンを有するラジカル重合性モノマー(D)としては、リンと1つまたは2つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する重合性モノマーが好ましく、特に、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製のライトエステルP−1M、ライトエステルP−2M(商品名))が好ましい。
【0048】
インクジェット用インク中に含まれるカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)は、上述した化合物から選ばれる1種の化合物であってもよく、またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
インクジェット用インク中のカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)の好ましい含有量は、1〜80重量%である。この範囲にあれば、インクジェット用インクから得られる硬化膜のめっき液耐性が良好であるので好ましい、また、ラジカル重合性モノマー(D)の含有量が1〜70重量%であるとより好ましく、1〜60重量%であるとさらに好ましい。
【0049】
カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)として上記一般式(d−2)で表される化合物を用いた本発明のインクジェット用インクおよび当該インクを用いて得られた硬化膜は、カバーレイ用途に用いられると好ましい。
【0050】
1.5 熱反応性樹脂(E)
熱反応性樹脂(E)の「熱反応性」とは、例えば、熱により架橋反応を起こす性質を意味するが、これに限定されるわけではない。
【0051】
熱反応性樹脂(E)の例としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、「熱反応性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合体(例えばフェノール樹脂)」、または「熱反応性官能基を有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとの共重合体」等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐薬品性の観点からメラミン樹脂を用いるのが好ましく、硬化膜のアルカリ性水溶液に対する剥離性、耐酸性水溶液の観点から「熱反応性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合体(例えばフェノール樹脂)」を用いることが好ましい。
【0052】
メラミン樹脂の具体例としては、メラミン、メチロールメラミン、エーテル化メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、メチロールベンゾグアナミン、エーテル化メチロールベンゾグアナミン、およびそれらの縮合物を挙げることができる。これらの中でも、耐薬品性が良好であることから、エーテル化メチロールメラミンが好ましく、さらに下記式(e−1)で表される化合物およびその縮合物の混合物は、三和ケミカル(株)製のニカラックMW−30(商品名)として市販されている。
【化6】

【0053】
「熱反応性官能基を有するラジカル重合性モノマーの重合体」の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール等のフェノール樹脂、ポリ(グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン)、ポリ(3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン)、ポリ(3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン)、ポリ(3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン)、ポリ(p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル)、ポリ(2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン)、ポリ(2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン)、ポリ(4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン)、ポリ(メタ)アクリル酸等をあげることができる。中でも、硬化膜のアルカリ性水溶液に対する剥離性を向上することからポリビニルフェノール等のフェノール樹脂が好ましく、丸善石油化学(株)製のマルカリンカーM S−2P(商品名)として市販されている。
【0054】
インクジェット用インク中に含まれる熱反応性樹脂(E)は、上述した化合物から選ばれる1種の化合物であってもよく、またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
熱反応性樹脂(E)は、インクジェット用インク中に0.1〜30重量%含まれると、得られるインクの硬化膜の耐薬品性が高くなるために好ましく、0.5〜25重量%含まれるとより好ましく、1〜20重量%含まれるとさらに好ましい。
【0055】
1.6 難燃剤(F)
インクジェット用インクに難燃性を付与するために難燃剤(F)を含んでもよい。この難燃剤(F)としてはリン系化合物が環境へ与える影響が少ないので好ましい。
【0056】
リン系化合物の難燃剤(F)の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10オキシド、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、下記一般式(f−1)で表される縮合9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10オキシド等があげられる。
【化7】

【0057】
これらの中でも、インクジェット用インクから得られる硬化膜を高温状態にさらした場合でも難燃剤のブリードアウトが減少するという観点から、難燃剤(F)として、縮合9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10オキシド(昭和高分子(株)製のHFA−3003(商品名))等を用いることが好ましい。
【0058】
難燃剤(F)は、上述した化合物から選ばれる1種の化合物であってもよく、またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
難燃剤(F)は、インクジェット用インク中に10〜50重量%含まれると、インクジェット用インクから得られる硬化膜が高い難燃性(UL燃焼試験法V−0規格相当)を示すので好ましい。
【0059】
1.7 その他の成分
インクジェット用インクは、保存安定性や、光に対する感度、形成される膜の耐久性、形成される膜の膜面均一性、形成される膜の硬化密度、インクの吐出特性、インクの塗布性等を向上させるために、多官能のラジカル重合性モノマー、反応性希釈剤、溶媒、重合禁止剤、界面活性剤、着色剤、帯電防止剤等を含むことができる。これらの成分は1種の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
なお、インクジェット用インク中の水分量は特に限定されないが、10,000ppm以下が好ましく、5,000ppm以下がさらに好ましい。これらの水分量であると、インクジェット用インクの粘度変化が少なく保存安定性に優れるので好ましい。
【0060】
1.7.1 多官能のラジカル重合性モノマー(G)
インクジェット用インクは光感度、および硬化膜の架橋密度を高めるために多官能のラジカル重合性モノマー(G)を含んでもよい。
【0061】
多官能のラジカル重合性モノマー(G)の具体例としては、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールA型エチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート、レゾルシノールエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
これらの中でも、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート(東亜合成(株)製のM208(商品名))、ビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート(日本ユピカ(株)製のネオポール 8477(商品名))から選ばれる1つ以上を含有していると、硬化膜の耐薬品性が高くなるので、より好ましい。
【0063】
多官能のラジカル重合性モノマー(G)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
多官能のラジカル重合性モノマー(G)は、インクジェットインク中に5〜70重量%含まれると、インクジェット用インクとした場合に光に対して高感度となり、また硬化膜のめっき液耐性が高くなるため好ましく、5〜65%重量%であるとより好ましく、10〜65重量%であるとさらに好ましい。
【0064】
1.7.2 反応性希釈剤(H)
インクジェット用インクはインクの粘度調整や硬化膜の架橋度を制御するために反応性希釈剤(H)を含んでもよい。溶媒の代わりにまたは溶媒の一部を置き換えて反応性希釈剤(H)を使用すると、インクの固形分濃度が高くなるため、厚膜を形成させることが可能である。反応性希釈剤(H)は、一般式(a)で表される化合物(A)、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)とは異なる化合物を示す。
【0065】
反応性希釈剤(H)の具体例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレ―ト、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
これらの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートは少量用いることで、インクジェット用インクの粘度を大きく下げることができるので好ましい。
【0067】
反応性希釈剤(H)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
反応性希釈剤(H)は、インクジェット用インク中に5〜60重量%含まれると、光硬化性インクジェット用インクとした場合、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2〜500mPa・sの範囲になるので好ましく、より好ましくは5〜50重量%である。
【0068】
1.7.3 溶媒(I)
インクジェット用インクはインクの吐出特性を向上させるために溶媒(I)を含んでもよい。この溶媒としては沸点が100℃以上の溶媒が好ましい。室温でのインクジェット用インクの粘度が30mPa・s以上である場合には、ジェッティング温度を高くすることが好ましいが、この場合には含まれる溶媒の沸点は200℃以上であることが好ましい。
【0069】
沸点が100℃以上である溶媒の具体例としては、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。これらの溶媒中の水分量は、インクジェット用インク中の水分量が前述の範囲になるように調整されていることが望ましい。
【0070】
これらの溶媒の中でも、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等を用いると、インクの吐出が安定するので好ましい。
【0071】
溶媒(I)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
溶媒(I)は、インクジェット用インク中に0〜50重量%含まれると、光硬化性インクジェット用インクとした場合の吐出が安定するので好ましく、より好ましくは0〜20重量%である。
【0072】
さらに、インクジェット用インクの塗布性にインクの表面張力が大きく影響するため、インクの表面張力を好ましくは20〜45mN/m、より好ましくは27〜42mN/m、さらに好ましくは30〜40mN/mに調整する。表面張力が20〜45mN/mの範囲であればインク吐出口におけるインクメニスカスが安定になり、インクの吐出は良好となる。
表面張力を20〜45mN/mの範囲に調整するには、溶媒選定が重要である。表面張力が20〜45mN/mの範囲にある1種の溶媒を用いてもよいが、表面張力の大きな溶媒(例えば、γ−ブチロラクトン:43mN/m)および表面張力の小さな溶媒(例えば、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル:24mN/m、あるいはエチレングリコールモノブチルエーテル:32mN/m)を混合して用いると溶媒組成で表面張力を微調整できるので好ましい。
【0073】
1.7.4 重合禁止剤(J)
インクジェット用インクは、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノン、フェノチアジン等を挙げることができる。これらの中でも、ジェッティング時にインクジェットヘッドを加熱した場合のインクの粘度変化を最小にする観点から、重合禁止剤としてフェノチアジンを用いることが好ましい。
【0074】
重合禁止剤(J)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
重合禁止剤(J)は、インクジェット用インクの保存安定性と光に対する高感度性とを両立させるという観点から、インクジェット用インク中に0.01〜1重量%含まれることが好ましい。
【0075】
1.7.5 界面活性剤(K)
インクジェット用インクは、インクジェット用インクから得られた膜面の均一性を向上させるために界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤等が用いられる。具体的には、Byk−300、Byk−306、Byk−335、Byk−310、Byk−341、Byk−344、またはByk−370(それぞれ商品名:ビック・ケミー(株)製)等のシリコン系界面活性剤;Byk−354、Byk−358、またはByk−361(それぞれ商品名:ビック・ケミー(株)製)等のアクリル系界面活性剤;DFX−18、フタージェント250、またはフタージェント251(それぞれ商品名:ネオス(株)製)、メガファックF−410、メガファックF−443、メガファックF−445、メガファックF−470、メガファックF−479、メガファックF−483、メガファックF−489(それぞれ商品名:大日本インキ(株)製)等のフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0076】
界面活性剤(K)は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
界面活性剤(K)は、熱硬化性組成物中に0.01重量%以上であると硬化膜の膜面均一性が向上するので好ましく、他特性とのバランスを考慮すると0.01〜1重量%であることが好ましい。
【0077】
1.7.6 着色剤(L)
インクジェット用インクは、着色剤を含んでいてもよく、この場合、例えば、得られる硬化膜の状態を検査する際に基板との識別を容易にすることができる。着色剤は、インクジェット用インク中に0.01〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%程度含んでもよい。インク原料の相溶性の観点から、着色剤は染料であることが好ましい。
【0078】
1.7.7 帯電防止剤(M)
帯電防止剤は、特に限定されるものではなく、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩等が挙げられる。帯電防止剤は、帯電を防止するために使用するものであり、インクジェット用インク100重量部に対し0.01〜1重量部添加して用いられることが好ましい。
【0079】
1.8 インクジェット用インクの調製方法
本発明のインクジェット用インクは、インクを構成する各成分を混合することによって製造される。具体的には、本発明のインクジェット用インクは、一般式(a)で表される化合物(A)、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)、光重合開始剤(C)、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)および、任意に含まれる成分(熱反応性樹脂(E)、難燃剤(F)、多官能のラジカル重合性モノマー(G)等)を混合して製造される。
なお、混合する順番は特に限定されない。
【0080】
特に本発明のインクジェットインク組成においては、インクジェット用インク中に一般式(a)で表される化合物(A)を1〜90重量%と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)を1〜70重量%と、光重合開始剤(C)を0.2〜20重量%と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)を5〜70重量%含む。さらに、一般式(a)で表される化合物(A)を1〜70重量%と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)を5〜50重量%と、光重合開始剤(C)を2〜15重量%と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)を10〜65重量%含むように構成することが好ましい。
【0081】
エッチングレジストまたはめっきレジスト等の用途の本発明のインクジェット用インクであって、成分(A)〜(D)からなるインクジェット用インクでは、一般式(a)で表される化合物(A)としてジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)として2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1からなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)としてフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
当該組成のインクジェット用インクでは、インクの粘度や硬化膜としたときの架橋密度、アルカリ水溶液に対する剥離性の観点から、各成分の含有量は、インクジェット用インク中に化合物(A)が1〜20重量%であり、重合性モノマー(B)が5〜50重量%であり、光重合開始剤(C)が5〜15重量%であり、カルボキシを有するラジカル重合性モノマー(D)が20〜80重量%であると好ましい。
【0082】
エッチングレジストまたはめっきレジスト等の用途の本発明のインクジェット用インクであって、成分(A)〜(D)および成分(G)からなるインクジェット用インクでは、一般式(a)で表される化合物(A)としてジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)として2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1からなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)としてフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用い、多官能のラジカル重合性モノマー(G)としてビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
当該組成のインクジェット用インクでは、インクの粘度や硬化膜としたときの架橋密度、めっき液に対する耐性、エッチング液に対する耐性、アルカリ水溶液に対する剥離性の観点から、各成分の含有量は、インクジェット用インク中に化合物(A)が1〜20重量%であり、重合性モノマー(B)が5〜50重量%であり、光重合開始剤(C)が5〜15重量%であり、カルボキシを有するラジカル重合性モノマー(D)が5〜30重量%であり、重合性モノマー(G)が10〜50重量%であると好ましい。
【0083】
カバーレイ等の用途の本発明のインクジェット用インクであって、成分(A)〜(D)からなるインクジェット用インクでは、一般式(a)で表される化合物(A)としてジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)として2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1からなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)として2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェートを用いることが好ましい。
当該組成のインクジェット用インクでは、インクの粘度や硬化膜としたときの架橋密度、金属基板に対する密着性の観点から、各成分の含有量は、インクジェット用インク中に化合物(A)が30〜90重量%であり、重合性モノマー(B)が5〜30重量%であり、光重合開始剤(C)が5〜15重量%であり、リンを有するラジカル重合性モノマー(D)が1〜10重量%であると好ましい。
【0084】
本発明のインクジェット用インクにおいて、カバーレイ等の用途で使用する場合で、成分(A)〜(D)および成分(G)からなるとき、一般式(a)で表される化合物(A)としてジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)として2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレートおよび4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、光重合開始剤(C)として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1からなる群から選ばれる少なくとも1つを用い、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)として2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェートを用い、多官能のラジカル重合性モノマー(G)としてビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
当該組成のインクジェット用インクでは、インクの粘度や硬化膜としたときの架橋密度、金属基板に対する密着性、めっき液に対する耐性、はんだ耐熱性の観点から、各成分の含有量は、インクジェット用インク中に化合物(A)が5〜15重量%であり、重合性モノマー(B)が5〜40重量%であり、光重合開始剤(C)が2〜15重量%であり、リンを有するラジカル重合性モノマー(D)が1〜10重量%であり、重合性モノマー(G)が30〜70重量%であると好ましい。
【0085】
本発明のインクジェット用インクは、必要な成分を混合して得られた溶液を、ろ過することにより調製するのが好ましい。ろ過には、例えばフッ素樹脂製のメンブレンフィルター等が用いられる。
【0086】
1.9 インクジェット用インクの粘度
インクジェット用インクは、E型粘度計で測定した25℃における粘度が2〜500mPa・sであるとインクジェットのヘッドからの塗布特性(ジェッティング精度等)が良好となるので好ましい。25℃におけるインクジェット用インクの粘度は、より好ましくは3〜300mPa・s、さらに好ましくは5〜200mPa・sである。
25℃における粘度が30mPa・sを超える場合は、インクジェットヘッドを加熱して吐出時の粘度を下げると、より安定した吐出が可能になる。インクジェットヘッドを加熱してジェッティングを行う場合は、加熱温度(好ましくは40〜120℃)におけるインクジェット用インクの粘度は3〜30mPa・sが好ましく、5〜25mPa・sであればさらに好ましく、7〜20mPa・sが特に好ましい。
【0087】
1.10 インクジェット用インクの保存
インクジェット用インクは、−20〜20℃で保存すると粘度変化が小さく、保存安定性が良好である。
【0088】
2.インクジェット方法によるインクジェット用インクの塗布
本発明のインクジェット用インクは、公知のインクジェット塗布方法を用いて塗布することができる。インクジェット塗布方法としては、例えば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクをヘッドから吐出(塗布)させる方法(いわゆるピエゾ方式)、および、インクに熱エネルギーを作用させてインクを塗布させる塗布方法(いわゆるバブルジェット(登録商標)方式)等がある。
インクジェット塗布方法を用いることにより、インクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。これによって、必要な箇所だけにインクを塗布でき、フォトリソグラフィ法に比べて、コストの削減となる。
【0089】
本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布ユニットは、例えば、これらのインクを収容するインク収容部と、塗布ヘッドとを備えた塗布ユニットが挙げられる。塗布ユニットとしては、例えば、塗布信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる塗布ユニットが挙げられる。
塗布ヘッドとしては、例えば、金属および/または金属酸化物を含有する発熱部接液面を有するものである。前記金属および/または金属酸化物の具体例は、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属、および、これらの金属の酸化物等が挙げられる。
【0090】
本発明のインクジェット用インクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布装置としては、例えば、インクが収容されるインク収容部を有する塗布ヘッドの室内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0091】
インクジェット塗布装置は、塗布ヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。また、インク収容部は塗布ヘッドに対し分離可能または分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介して塗布ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0092】
また、インクジェットの吐出(塗布)温度は10〜120℃が好ましく、塗布温度におけるインクジェット用インクの粘度は、3〜30mPa・sであることが好ましい。
【0093】
3.硬化膜の形成
本発明の硬化膜は、公知のインクジェット塗布方法を用いて上記インクジェット用インクを基板の表面に吐出した後に、インクに紫外線や可視光線等の光を照射して得られる。光が照射された部分のインクはラジカル重合性モノマー、例えば(メタ)アクリルモノマーの重合により三次元化架橋体となって硬化し、インクの広がりを効果的に抑えられる。したがって、上記インクジェット用インクを用いると、高精細なパターンの描画が可能になる。インクジェット用インクの組成に依存するが、照射する光として紫外線を用いた場合には、照射する紫外線の量は、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−405PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、10〜1,000mJ/cm程度が好ましく、10〜800mJ/cm程度がより好ましく、20〜500mJ/cm程度がさらに好ましい。また、照射する紫外線の波長は、200〜450nmが好ましく、220〜430nmがより好ましく、250〜400nmがさらに好ましい。
また、必要に応じて、光の照射により硬化した上記硬化膜をさらに加熱・焼成してもよく、特に、120〜250℃で10〜60分間加熱することが好ましく、150〜240℃で10〜60分間加熱することがより好ましく、180〜230℃で10〜60分間加熱することがさらに好ましい。
【0094】
本発明で使用する基板は、上記インクジェット用インクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
【0095】
また、基板の材質は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、ポリイミドと金属箔の積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、あるいはポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)等で目止め処理した紙、ガラス等を挙げることができる。
【0096】
これらの基板を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および/または電磁波防止剤等の添加剤を含んでもよい。また、基板の表面の一部には、基板と異なる材質が形成されていてもよい。
【0097】
基板の用途も特に限定されないが、本発明のインクジェット用インクから得られる硬化膜は耐エッチング液性、めっき液耐性、アルカリ水溶液に対する剥離性、耐熱性に優れているため、基板表面に金属製の回路を有する電子回路基板等の製造にもちいられることが好ましい。回路を形成する金属は、特に限定されるものではないが、金、銀、銅、アルミまたはITOが好ましい。
【0098】
基板の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm〜2mm程度であり、使用する目的により適宜調整されるが、15〜500μmが好ましく、20〜200μmがさらに好ましい。
【0099】
基板における硬化膜を形成する面には、必要により撥水処理、コロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の易接着処理を施したり、表面に易接着層やカラーフィルター用保護膜を設けたりしてもよい。
【0100】
また、インクジェット用インクを、特定の場所にだけ塗布することによって、所定のパターンの硬化膜を形成することができ、硬化膜の形成のためのコストの削減を図ることができる。特に電子回路基板では、金属配線パターン形成やめっきパターン形成、金属配線保護膜(カバーレイ)形成において、吐出性、保存安定性に優れた本発明のインクジェット用インクを、所定の回路部分にだけ塗布することができるので、効率的に各目的に応じた硬化膜を形成できる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は重量部を意味するものとする。
【0102】
実施例および比較例に使用した各成分は以下のとおりである。

一般式(a)で表される化合物(A)
A1:ジプロピレングリコールジアクリレート
(商品名「SR508」、サートマー社製)
A2:トリプロピレングリコールジアクリレート
(商品名「SR306H」、サートマー社製)
A3:プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート
(商品名「SR9003」、サートマー社製)

ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)
B1:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(東京化成工業(株)製)
B2: 4−ヒドロキシブチルアクリレート
(商品名「4HBA」、日本化成(株)製)

光重合開始剤(C)
C1:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド
(商品名「DAROCUR TPO」、チバジャパン(株)製)

カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)
D1:フタル酸モノヒドロキシエチルメタクリレート
(商品名「CB−1」、新中村化学工業(株)製)
D2:2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート
(商品名「ライトエステルP−2M」、共栄社化学(株)製)

熱反応性樹脂(E)
E1:ポリビニルフェノール
(商品名「マルカリンカーM S−2P」、丸善石油化学(株)製)
E2:上記式(e−1)で表される化合物およびその縮合物の混合物
(商品名「ニカラックMW−30」、三和ケミカル(株)製)

難燃剤(F)
F1:縮合9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10オキシド
(上記式(f−1)の化合物。商品名「HFA−3003」、昭和高分子(株)製)

多官能のラジカル重合性モノマー(G)
G1:ビスフェノールFエポキシアクリレート
(商品名「ネオポール8477」、日本ユピカ(株)製)
G2:ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート
(商品名「M−208」、東亜合成(株)製)

反応性希釈剤(H)
H1:シクロへキシルメタクリレート
(商品名「ライトエステルCH」、共栄社化学(株)製)
H2:テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート
(商品名「SR203」、サートマー社製)
【0103】
実施例および比較例で作成した硬化膜の評価方法は以下のとおりである。
(1)インクの粘度・保管による粘度の変化
各インクジェット用インクの25℃での粘度をE型粘度計(東機産業(株)製 VISCOMETER TV−22)で測定した。結果を表2に示す。
また、各インクジェット用インクの一部(10g)を30mLのサンプル瓶に入れ、密栓をして、100℃で5時間保管した。そして、保管前のインクの粘度に対する保管後のインクの粘度の変化率を調べた。インクの粘度はいずれも保管後に増加しており、変化率が10%未満である場合を「○」、10%以上である場合を「×」とした。
【0104】
(2)ジェッティング特性の評価
各インクジェット用インクをインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix社製のDMP−2800)に装着し、10pl用のヘッドを用いて、吐出電圧(ピエゾ電圧)16V、ヘッド温度70℃、駆動周波数5kHzの条件下で吐出の様子を観察した。ジェッティング時の液柱が垂直方向に吐出され、サテライトは発生しなかった場合を「○」、液柱が隣の液柱と接触する、またはサテライトが発生した場合を「×」とした。
【0105】
(3)エッチングレジスト用またはめっきレジスト用硬化膜の評価のための試験基板の作成と硬化膜の評価
各インクジェット用インクをインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix社製のDMP−2800)に装着し、以下の基板作製条件で、基板上にインクジェットプリンタにより各インクジェット用インクを塗布(描画)し、次いでUV硬化させて硬化膜が形成された試験基板を作製した。このようにして作製された試験基板を用いて、以下の(3.1)〜(3.3)に示す、硬化膜のエッチング液に対する耐性、アルカリ性水溶液(剥離液)に対する剥離性およびめっき液に対する耐性を調べた。
基板作製条件
基 板 :銅箔をポリイミド上に積層した基板(厚さ35μm)
[(東洋紡績(株)製)バイロフレックス(商品名)]
硬化膜の膜厚:30μm
吐出条件 :上記(2)と同様の吐出条件
UV露光量 :250mJ/cm
【0106】
(3.1)硬化膜のエッチング液に対する耐性の評価
硬化膜のエッチング液に対する耐性を評価するために、作製した試験基板を50℃の13%FeCl水溶液に15分浸漬させた後に水洗を行い、硬化膜の表面状態を目視にて判定した。剥離や変色が生じなかった場合を「○」、剥離や変色が生じた場合を「×」とした。
【0107】
(3.2)硬化膜のアルカリ性水溶液(剥離液)に対する剥離性の評価
硬化膜のアルカリ性水溶液(剥離液)に対する剥離性を評価するために、作製した試験基板を50℃の8%NaOH水溶液に1分浸漬させた後に水洗を行い、硬化膜の剥離状態を目視にて判定した。完全に溶解もしくは剥離した場合を「○」、溶解もしくは剥離しなかった場合を「×」とした。
【0108】
(3.3)硬化膜のめっき液に対する耐性の評価
硬化膜のめっき液に対する耐性を評価するために、作製した試験基板を60℃の無電解ニッケルめっき液(商品名:ニムデンNPR−4、Ni濃度4.5g/L、上村工業(株)製)に20分浸漬させて水洗を行い、続いて60℃の金ストライクめっき液(商品名:アシドストライク、日本高純度化学(株)製)に10分浸漬させて水洗を行い、続いて100℃の無電解金めっき液(商品名:ゴブライトTAM−55、Au濃度1g/L、上村工業(株)製)に30分浸漬させて水洗することでめっき皮膜を形成した。この工程中においてめっき液の硬化膜内部への浸入や剥離が生じなかった場合を「○」、めっき液の硬化膜内部への浸入や剥離が生じた場合を「×」とした。

(4)カバーレイ用硬化膜の評価のための試験基板の作成と硬化膜の評価
各インクジェット用インクをインクジェットカートリッジに注入し、これをインクジェット装置(FUJIFILM Dimatix社製のDMP−2800)に装着し、以下の基板作製条件で、基板上にインクジェットプリンタにより各インクジェット用インクを塗布(描画)し、次いでUV硬化および熱硬化させて硬化膜が形成された試験基板を作製した。このようにして作製された試験基板を用いて、以下の(4.1)〜(4.3)に示す、硬化膜の銅基板に対する密着性、硬化膜のめっき液に対する耐性およびはんだ耐熱性を調べた。
基板作製条件
基 板 :銅箔をポリイミド上に積層した基板(厚さ35μm)
[(東洋紡績(株)製)バイロフレックス(商品名)]
硬化膜の膜厚:30μm
吐出条件 :上記(2)と同様の吐出条件
UV露光量 :40mJ/cm
熱硬化条件 :190℃×30分
【0109】
(4.1)硬化膜の銅基板に対する密着性の評価
硬化膜の銅との密着性を評価するために、碁盤目法(JIS K 5400(1990))を用いて、剥離が生じたか否かを調べた。当該試験は、温度25℃、湿度65%の条件下で行った。剥離が生じなかった場合を「○」、剥離が生じた場合を「×」とした。
【0110】
(4.2)硬化膜のめっき液に対する耐性の評価
硬化膜のめっき液に対する耐性を評価するために、作製した試験基板を30℃のパラジウム水溶液(商品名:KAT−450、Pd濃度12mg/L、上村工業(株)製)に1分浸漬して水洗した後に、80℃の無電解ニッケルめっき液(商品名:ニムデンNPR−4、Ni濃度4.5g/L、上村工業(株)製)中に30分浸漬させて水洗を行い、続いて80℃の無電解金めっき液(商品名:ゴブライトTAM−55、Au濃度1g/L、上村工業(株)製)中に10分浸漬させて水洗することでめっき皮膜を形成した。この工程中においてめっき液の硬化膜内部への浸入や硬化膜の剥離が生じなかった場合を「○」、めっき液の硬化膜内部への浸入や硬化膜の剥離が生じた場合を「×」とした。
【0111】
(4.3)硬化膜のはんだ耐熱性の評価
硬化膜のはんだ耐熱性を評価するために、試験基板の硬化膜表面にロジン系フラックス(商品名:NS−829、(株)日本スペリア社製)を塗布して、260℃のはんだ浴中に30秒浸漬させ、剥離や膨れが生じたか否かを調べた。剥離と膨れが全く生じなかった場合を「○」、剥離または膨れが僅かでも生じた場合を「×」とした。
【0112】
[実施例1および比較例1]
実施例1はエッチングレジスト用またはめっきレジスト用として用いることに適した硬化膜を形成する本発明にかかるインクジェット用インクである。表1に記載された割合(重量部)で配合し、混合・溶解してフッ素樹脂製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、各インクジェット用インクを調製した。
なお、比較例1は、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)を含まない例である。
【0113】
【表1】

【0114】
また、実施例1および比較例1のインクジェット用インクには、重合禁止剤(I)として0.05重量部のフェノチアジン(重合禁止剤(I)を除くインクジェット用インクの合計量を100重量部とする)を添加した。
【0115】
得られたインクジェット用インクの粘度および保管による粘度の変化、ジェッティング特性および硬化膜のアルカリ性水溶液(剥離液)に対する剥離性を、前述の方法により測定・評価した。結果を表2に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
[実施例2および比較例2,3]
実施例2はカバーレイ用として用いることに適した硬化膜を形成する本発明にかかるインクジェット用インクである。表3に記載された割合(重量部)で配合し、混合・溶解してフッ素樹脂製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、各インクジェット用インクを調製した。
なお、比較例2は、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)を含まない例であり、比較例3は、(A)成分を含んでいてもカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)成分を含まない例である。
【0118】
【表3】

【0119】
また、実施例2および比較例2と3のインクジェット用インクには、重合禁止剤(I)として0.05重量部のフェノチアジン(重合禁止剤(I)を除くインクジェット用インクの合計量を100重量部とする)を添加した。
【0120】
得られたインクジェット用インクの粘度および保管による粘度の変化および硬化膜のアルカリ性水溶液(剥離液)に対する剥離性を、前述の方法により測定・評価した。また、得られたインクジェット用インクのジェッティング特性を、ヘッド温度を50度にした以外は前述で記載した(2)と同一の方法で評価した。これらの結果を表4に示す。

【表4】

【0121】
[実施例3および比較例4]
実施例3はエッチングレジスト用またはめっきレジスト用として用いることに適した硬化膜を形成する本発明にかかるインクジェット用インクである。表5に記載された割合(重量部)で配合し、混合・溶解してフッ素樹脂製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、各インクジェット用インクを調製した。
なお、比較例4は、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)を含まない例である。
【0122】
【表5】

【0123】
また、実施例3および比較例4のインクジェット用インクには、重合禁止剤(I)として0.05重量部のフェノチアジン(重合禁止剤(I)を除くインクジェット用インクの合計量を100重量部とする)を添加した。
【0124】
得られたインクジェット用インクの粘度および保管による粘度の変化、ジェッティング特性、硬化膜のエッチング液に対する耐性、アルカリ性水溶液(剥離液)に対する剥離性およびめっき液に対する耐性を、前述の方法により測定・評価した。これらの結果を表6に示す。
【0125】
【表6】

【0126】
[実施例4および比較例5,6]
実施例4はカバーレイ用として用いることに適した硬化膜を形成する本発明にかかるインクジェット用インクである。表7に記載された割合(重量部)で配合し、混合・溶解してフッ素樹脂製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、各インクジェット用インクを調製した。
なお、比較例5は、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)を含まない例であり、比較例6は、(A)成分を含んでいてもカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)成分を含まない例である。
【0127】
【表7】

【0128】
また、実施例4および比較例5と6のインクジェット用インクには、重合禁止剤(I)として0.05重量部のフェノチアジン(重合禁止剤(I)を除くインクジェット用インクの合計量を100重量部とする)を添加した。
【0129】
得られたインクジェット用インクの粘度および保管による粘度の変化、ジェッティング特性、硬化膜の銅基板に対する密着性、硬化膜のめっき液に対する耐性およびはんだ耐熱性を、前述の方法により測定・評価した。これらの結果を表8に示す。
【表8】

【0130】
[実施例5〜10および比較例7〜12]
実施例5〜10はエッチングレジスト用またはめっきレジスト用として用いることに適した硬化膜を形成する本発明にかかるインクジェット用インクである。表9に記載された割合(重量部)で配合し、混合・溶解してフッ素樹脂製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、各インクジェット用インクを調製した。
なお、比較例7〜9は、一般式(a)で表される化合物(A)成分を含まない例であり、比較例10〜12は、(A)成分を含んでいてもカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)成分を含まない例である。
【0131】
【表9】

【0132】
また、実施例5〜10および比較例7〜12のインクジェット用インクには、重合禁止剤(I)として0.05重量部のフェノチアジン(重合禁止剤(I)を除くインクジェット用インクの合計量を100重量部とする)を添加した。
得られたインクジェット用インクについて、比較例10〜12のジェッティング特性の評価においてヘッド温度を45℃にして評価を行ったこと以外は、インクの粘度および保管による粘度の変化、ジェッティング特性、硬化膜のエッチング液に対する耐性、アルカリ性水溶液(剥離液)に対する剥離性およびめっき液に対する耐性を、前述の方法により測定・評価した。これらの結果を表10に示す。
【0133】
【表10】

【0134】
[実施例11〜16および比較例13〜18]
実施例11〜16はカバーレイ用として用いることに適した硬化膜を形成する本発明にかかるインクジェット用インクである。表11に記載された割合(重量部)で配合し、混合・溶解してフッ素樹脂製メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過し、各インクジェット用インクを調製した。
なお、比較例13〜15は、一般式(a)で表される化合物(A)成分を含まない例であり、比較例16〜18は、(A)成分を含んでいてもカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)成分を含まない例である。
【0135】
【表11】

【0136】
また、実施例11〜16および比較例13〜18のインクジェット用インクには、重合禁止剤(I)として0.05重量部のフェノチアジン(重合禁止剤(I)を除くインクジェット用インクの合計量を100重量部とする)を添加した。
得られたインクジェット用インクの粘度および保管による粘度の変化、ジェッティング特性、硬化膜の銅基板に対する密着性、硬化膜のめっき液に対する耐性および硬化膜のはんだ耐熱性を、前述の方法により測定・評価した。結果を表12に示す。
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、たとえば、電子回路基板に使用される保護膜あるいは絶縁膜、あるいは金属パターン配線形成用レジスト、あるいはめっきパターン形成用レジストに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(a)で表される化合物(A)と、ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)とを含むインクジェット用インク。
【化8】


(式(a)中、mとnはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Rはそれぞれ独立して分岐構造を有していてもよい炭素数1〜13のアルキレンであり、Rは単結合または分岐構造を有していてもよい炭素数1〜13のアルキレンである。)
【請求項2】
一般式(a)において、mとnはそれぞれ独立して1〜2の整数であり、Rはそれぞれ独立して水素またはメチルであり、Rはそれぞれ独立して分岐構造を有していてもよい炭素数2〜3のアルキレンであり、Rは単結合または炭素数2〜5のアルキレンである、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)が、一般式(b)で表される化合物である、請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【化9】


(一般式(b)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Rは炭素数2〜12の有機基であり、sは1〜30の整数である。)
【請求項4】
ヒドロキシを有する単官能のラジカル重合性モノマー(B)が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
光重合開始剤(C)が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)から選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
カルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)が一般式(d−1)又は(d−2)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用インク。

【化10】


(一般式(d−1)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、Rは炭素数2〜12の有機基であり、Rは炭素数2〜12の有機基であり、pは1〜30の整数である。)

【化11】


(一般式(d−2)中、Rは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、R10は炭素数2〜12の有機基であり、qは1〜30の整数であり、rは1〜3の整数である。)
【請求項7】
インクジェット用インク中に、一般式(a)で表される化合物(A)が1〜90重量%、ラジカル重合性モノマー(B)が1〜80重量%、光重合開始剤(C)が0.2〜20重量%およびカルボキシまたはリンを有するラジカル重合性モノマー(D)が1〜60重量%含まれる、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
さらに、多官能のラジカル重合性モノマー(G)を含む請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
さらに、熱反応性樹脂(E)および難燃剤(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
インクジェット法によって請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インクを塗布し、塗布されたインクに光を照射することによって硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
【請求項11】
インクジェット法によって請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インクを塗布し、塗布されたインクへの光照射および加熱を同時、または、光照射の後に加熱を行うことによって硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載された方法で得られた硬化膜。
【請求項13】
所定のパターンで形成されている、請求項12に記載の硬化膜。
【請求項14】
基板上に請求項12または13に記載された硬化膜が形成された電子回路基板。
【請求項15】
請求項14に記載された電子回路基板を有する電子部品。
【請求項16】
請求項14に記載された電子回路基板または請求項15に記載された電子部品を有する表示素子。

【公開番号】特開2010−265430(P2010−265430A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120187(P2009−120187)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】