説明

インクジェット用インク組成物及びインクジェット記録方法

【課題】 低い粘度を維持し、吐出性に優れると共に、耐光性、硬化性に優れた、インクジェット用インク組成物、及び、上記インクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】 重合性基を有するイソシアヌレート化合物、及び重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物、並びに、上記インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンターにより記録媒体に吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク組成物及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性のインクジェット用インクは、普通紙に印字した場合に耐水性が劣ったり、滲みが生じやすく、更に、プラスチックなど非吸水性の記録媒体に印字した場合には、インク液滴の付着が悪いために画像形成ができなかったり、溶剤の乾燥が極めて遅いために印字直後には記録物を重ねずに乾燥させる必要があったり、画像がにじみやすいといった欠点があった。
【0003】
非吸水性の記録媒体に対する印刷に適するものとして、記録媒体との接着性に優れた多官能モノマーを用いた紫外線硬化性インクが開示されているが、水分散型のインクのために乾燥が遅く、フルカラーの画像を形成するには不十分であった。乾燥性を解決するために、インクの溶剤として揮発性の有機溶剤を用いる方法が行われてきたが、急速に乾燥させるためにはメチルエチルケトン及びエタノールなど高度に引火性があり、揮発性の高い溶剤を用いる必要があった。
【0004】
これらの問題点を解決するために、インク溶媒の揮発ではなく放射線によって硬化し固着するインクジェット用インク組成物、例えば、重合性基を有するモノマーと油溶性染料とを含むインク組成物が開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、特定のアクリレートを含む活性エネルギー線硬化型インクが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
しかし、これらのインクには硬化速度を速めるために多官能アクリレートモノマーを用いているが、インク粘度が高くなり吐出安定性が悪化し、また、硬化性、耐光性が不十分であるという問題点があった。
【特許文献1】特開2003−221528号公報
【特許文献2】特開2003−221532号公報
【特許文献3】特開2003−221530号公報
【特許文献4】特開2001−181528号公報
【特許文献5】特開2003−246818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決することを目的とする。
即ち、本発明の目的は、低い粘度を維持し、吐出性に優れると共に、耐光性、硬化性に優れた、インクジェット用インク組成物を提供することである。また、上記インクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、本発明のインクジェット用インク組成物は、
<1> 重合性化合物として重合性基を有するイソシアヌレート化合物を含有し、且つ、重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物である。
【0007】
<2> 前記重合性化合物として、更に、二官能モノマー及び/又は単官能モノマーを含有することを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット用インク組成物である。
【0008】
<3> 着色剤を含有することを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のインクジェット用インク組成物である。
【0009】
<4> 前記着色剤が油溶性染料であることを特徴とする前記<3>に記載のインクジェット用インク組成物である。
【0010】
<5> 前記油溶性染料の酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であることを特徴とする前記<4>に記載のインクジェット用インク組成物である。
【0011】
また、本発明のインクジェット記録方法は、
<6> 前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物をインクジェットノズルにより記録媒体に吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低い粘度を維持し、吐出性に優れると共に、耐光性、硬化性に優れた、インクジェット用インク組成物を提供することができる。また、上記インクジェット用インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を説明するにあたり、まずインクジェット用インク組成物について説明し、その後インクジェット記録方法について述べる。
【0014】
≪インク組成物≫
本発明のインクジェット用インク組成物は、重合性基を有するイソシアヌレート化合物と、重合開始剤と、を含有することを特徴とし、更に必要に応じて、他の重合性化合物、着色剤、増感剤等、その他の添加剤を含有することができる。
【0015】
(重合性基を有するイソシアヌレート化合物)
以下に重合性基を有するイソシアヌレート化合物について、詳細に説明する。
本発明に用いられるイソシアヌレート化合物としては、活性エネルギー線照射によって重合開始剤から生じるラジカル種又はカチオン種等により、付加重合が開始され、重合体を生じるものが好ましい。
付加重合の重合様式としては、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合等が挙げられ、中でも、ラジカル重合が好ましく用いられる。尚、それぞれ別の重合様式、例えば、ラジカル重合によって硬化する重合性化合物と、カチオン重合によって硬化する重合性化合物と、を併用することもできる。
【0016】
本発明に用いることができるイソシアヌレート化合物の具体例としては、例えば、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するイソシアヌレート化合物が挙げられ、特に2つ又は3つのアクリロイル基又はメタクリロイル基を有していることが好ましい。また、総炭素数が10〜30であることが好ましく、14〜22であることがより好ましい。
より具体的には、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートが好ましく、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。
上述のような、重合性基を有するイソシアヌレート化合物を用いることにより、良好な吐出性、耐光性及び硬化性を得ることができる。
【0017】
本発明のインクジェット用インク組成物における、重合性基を有するイソシアヌレート化合物の含有量は、10〜70質量%であることが好ましく、20〜65質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることが特に好ましい。10質量%以上であることにより、上述のような効果を効率的に発揮することができ、また、70質量%以下であることにより、液状の組成物とすることができる。
尚、上記重合性基を有するイソシアヌレート化合物は、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0018】
(低粘希釈剤)
上記重合性基を有するイソシアヌレート化合物の溶解には、低粘希釈剤を用いることが好ましい。ここで、本発明における低粘希釈剤とは、化合物を液状に溶解可能で粘度が低いものをさし、該粘度としては30mPa・s以下であることが特に好ましい。
低粘希釈剤は、上記条件を満たすモノマーであることが好ましく、更に、二官能モノマー又は単官能モノマーであることが好ましい。中でも二官能アクリレートが特に好ましく、その具体例としては、後述する(その他の重合性化合物)において、二官能アクリレートの例として列挙する化合物等を挙げることができる。
低粘希釈剤としては、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよく、その使用量は、用いるものによっても異なるものの、重合性基を有するイソシアヌレート化合物に対し10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることが特に好ましい。
【0019】
尚、本発明のインクジェット用インク組成物の印画後(硬化後)における揮発成分量は5質量%以下であることが好ましく、その観点から、上記低粘希釈剤は不揮発性であることが好ましい。
また、同様の観点から、本発明のインクジェット用インク組成物は有機溶媒を使用しない無溶媒処方とすることが好ましい。
【0020】
(その他の重合性化合物)
本発明のインクジェット用インク組成物には、硬化膜物性や組成物の親和性などを調整するために、前記重合性基を有するイソシアヌレート化合物の他、必要に応じて公知の重合性化合物を併用して用いることができる。
上記公知の重合性化合物としては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマー等が挙げられ、中でも単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0021】
具体的に単官能(メタ)アクリレート化合物としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、1H, 1H, 2H, 2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、モルホリノアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート等が挙げられる。
また、これらの中でも、イソボルニルアクリレート、モルホリノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレートがより好ましい。
【0022】
二官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートがより好ましい。
【0023】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレートがより好ましい。
【0024】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、これらの中でも、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートがより好ましい。
【0025】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、これらの中でも、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートがより好ましい。
【0026】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、これらの中でも、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートがより好ましい。
【0027】
尚、上記の「(メタ)アクリレート」の表記はメタクリレート及びアクリレートの両方の構造を取り得ることを表す省略的表記である。
【0028】
また、重合性基を有するイソシアヌレート化合物に併用できる重合性化合物として、種々の不飽和カルボン酸と脂肪族アルコール化合物とのエステルであるラジカル重合性化合物が市販されている。具体的には、PEG600ジアクリレート(EB11:ダイセル・ユーシービー(株)製)、KAYARAD DPCA−60(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬(株)製)が例示できる。
【0029】
またその他、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等のエステルも使用できる。
【0030】
本発明において、上記公知の重合性化合物は、粘度の点から二官能モノマー及び/又は単官能モノマーが特に好ましく用いられる。
また、重合性基を有するイソシアヌレート化合物との含有割合としては、重合性基を有するイソシアヌレート化合物に対し、20〜400質量%の範囲で用いることが好ましく、50〜250質量%の範囲で用いることがより好ましい。
【0031】
(重合開始剤)
本発明に用いられる重合開始剤とは、活性なエネルギー線付与により活性なラジカル種等を発生し、インク組成物の重合反応を開始、促進する化合物を示す。活性なエネルギー線としては、例えば、紫外線、ガンマー線、アルファー線、電子線などが挙げられ、中でも紫外線がより好ましい。
【0032】
エネルギー線の付与によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンジル系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物等が好ましい。
【0033】
アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン等が挙げられる。
【0034】
ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0035】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。
【0036】
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0037】
ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等が挙げられる。
【0038】
アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0039】
また、通常カチオン発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども活性エネルギー線照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを単独で用いてもよい。
【0040】
重合開始剤の添加量は、重合性基を有するイソシアヌレート化合物を含む全ての重合性化合物と、重合開始剤との総量のうち、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
【0041】
ここで、前述した、重合性基を有するイソシアヌレート化合物と、重合開始剤に関し、特に好ましい組み合せを列挙する。
重合性基を有するイソシアヌレート化合物として、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートを用い、一方、重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)フォスフィンオキサイドのいずれかを用いる組み合せが特に好ましい。
【0042】
(着色剤)
本発明のインクジェット用インク組成物には、必要に応じて着色剤を含有することができる。使用できる着色剤としては、染料と顔料とに大別され、中でも染料が好ましく用いられる。前記染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。
【0043】
イエロー染料としては、例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;カップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物を有するアゾメチン染料;ベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料のようなメチン染料;ナフトキノン染料、アントラキノン染料等のキノン系染料などがあり、またこれらの他、キノフタロン染料、ニトロ、ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等が挙げられる。
【0044】
マゼンタ染料としては、例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、ピラゾロトリアゾール類、閉環型活性メチレン化合物類(例えば、ジメドン、バルビツール酸、4−ヒドロキシクマリン誘導体)、電子過剰へテロ環(例えば、ピロール、イミダゾール、チオヘン、チアゾール誘導体)を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;カップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;アリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのキノン系染料;ジオキサジン染料などのような縮合多環系染料等を挙げることができる。
【0045】
シアン染料としては、例えば、インドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料、アントラキノン染料;カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピロロピリミジン−オン、ピロロトリアジン−オン誘導体を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料;インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。
【0046】
前記各染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンは、アルカリ金属やアンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機カチオンであってもよく、更にそれらの部分構造を有するカチオンポリマーであってもよい。
【0047】
本発明に用いる染料は、油溶性のものが好ましく用いられる。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを意味する。従って、所謂水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
【0048】
本発明に用いる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料(染料母核)に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖若しくは分岐アルキル基、長鎖若しくは分岐アルコキシ基、長鎖若しくは分岐アルキルチオ基、長鎖若しくは分岐アルキルスルホニル基、長鎖若しくは分岐アシルオキシ基、長鎖若しくは分岐アルコキシカルボニル基、長鎖若しくは分岐アシル基、長鎖若しくは分岐アシルアミノ基、長鎖若しくは分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖若しくは分岐アルキルアミノスルホニル基、およびこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0049】
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖若しくは分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
【0050】
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
具体的には特開2002−114930号公報の段落番号[0023]〜[0089]に記載の染料などが挙げられる。また、本発明のインク組成物においては、油溶性染料は一種単独で用いてもよいし、数種類を混合して用いてもよい。また、必要に応じて、他の水溶性染料、分散染料、顔料等の着色材が含有されていてもよい。
【0051】
また、褪色や、オゾンなどの酸化性物質に対する耐性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)染料が望ましい。したがって、前記油溶性染料としては、酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴であるものがより好ましい。この酸化電位は高い方が好ましく、酸化電位が1.1V(vs SCE)よりも高いものがより好ましく、1.15V(vs SCE)より高いものが特に好ましい。
【0052】
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報に記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]〜[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
【0053】
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落番号[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]〜[0122]に記載された一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例としては特開2002−121414号公報の段落番号[0123]〜[0132]に記載の化合物が挙げられる。なお、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)で表される油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどの他色のインクに用いてもよい。
【0054】
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]〜[0078]に記載の一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]〜[0066]、特開2002−121414号の段落番号[0079]〜[0081]の化合物が挙げられる。特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]〜[0196]に記載の一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更には一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]〜[0201]に記載の化合物が挙げられる。なお、式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)で表される油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどの他色のインクに用いてもよい。
【0055】
以下に、本発明で使用される好ましい染料の具体例を示すが、本発明に用いられる染料は、下記の具体例に限定されるものではない。
【0056】
【化1】

【0057】
【化2】

【0058】
【化3】

【0059】
【化4】

【0060】
【化5】

【0061】
【化6】

【0062】
【化7】

【0063】
【化8】

【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
〔酸化電位〕
本発明に用いられる染料の酸化電位の値(Eox)は、当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP. Delahay著"New Instrumental Methods in Electrochemistry"(1954年, Interscience Publishers社刊)やA. J. Bard他著"Electrochemical Methods"(1980年、John Wiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著"電気化学測定法"(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
【0069】
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10-2〜1×10-6mol/l溶解して、ボルタンメトリー装置により、作用極として炭素(GC)を、対極として回転白金電極を用いて酸化側(貴側)に掃引したときの酸化波を直線で近似して、この直線と残余電流・電位直線との交点と、直線と飽和電流直線との交点(又はピーク電位値を通る縦軸に平行な直線との交点)とで作られる線分の中間電位値をSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については藤嶋昭他著"電気化学測定法"(1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
なお、上記の測定溶媒とフタロシアニン化合物試料の濃度範囲では、非会合状態の酸化電位が測定される。
【0070】
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極への電子の移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。
酸化電位が貴である染料を使用した場合には、重合阻害がほとんど無い。
【0071】
また、本発明のインクジェット用インク組成物に着色剤として上記染料を用いる場合、インク組成物中における油溶性染料の含有量は、0.3〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1.0〜8.0質量%であることが特に好ましい。
【0072】
〔顔料〕
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
【0073】
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0074】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく、化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0075】
本発明においてCMY染料に替えてCMY顔料を使用することもできる。
有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0076】
マゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0077】
シアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラックが挙げられる。
【0078】
尚、本発明のインクジェット用インク組成物に着色剤として上記顔料を用いる場合、一般に、インク組成物中において1〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0079】
(増感剤)
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、更に増感剤を用いてもよい。
増感剤は、単独では光照射によって活性化しないが、重合開始剤と一緒に使用した場合に重合開始剤単独で用いた場合よりも効果があるもので、一般にアミン類が用いられる。アミン類の添加により硬化速度が速くなるのは、第一に水素引き抜き作用により重合開始剤に水素を供給するためであり、第二に生成ラジカルが大気中の酸素分子と結合して反応性が悪くなるのに対して、アミンが組成中に溶け込んでいる酸素を捕獲する作用があるためである。
【0080】
増感剤としては、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)等が挙げられる。
【0081】
増感剤の使用量は、通常、インク組成物中において0〜10質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。重合開始剤と増感剤の選定や組み合わせ、及び配合比に関しては使用する重合性化合物、使用装置によって適宜選定すればよい。
【0082】
(その他の添加剤)
本発明の効果を害しない範囲内において、目的に応じて適宜選択したその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、溶剤やポリマー、表面張力調整剤、貯蔵安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、導電性塩類、pH調整剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0083】
(粘度)
インクジェット用インク組成物の好ましい物性は、印字する装置にも依存するが、一般的に粘度は5〜100mPa・s(25℃)が好ましく、10〜80mPa・s(25℃)が更に好ましい。尚、本明細書において、粘度は、RE80型粘度計(東機産業(株)製)を用い25℃の環境下で測定した値である。
また、表面張力は20〜60mN/mが好ましく、20〜40mN/mが更に好ましい。
【0084】
≪インクジェット記録方法≫
本発明のインク組成物は、インクジェット記録方法に好適に用いられる。以下、本発明のインク組成物を用いたインクジェット記録方法について説明する。
【0085】
本発明のインクジェット記録方法は、上記のインク組成物をインクジェットプリンタにより記録媒体に印字する工程(以下、「印字工程」という。)及び印字されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる工程(以下、「硬化工程」という。)を含む。
【0086】
(印字工程)
インクジェット記録方法に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のインク組成物は、公知の記録媒体に好適に印字等することができる。例えば、普通紙、樹脂コート紙、インクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等が挙げられる。記録媒体に関しては、特開2001−181549号公報などに記載されている。
本発明のインクは、いかなるインクジェット記録方式にも適用でき、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等に好適に使用される。尚、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0087】
(硬化工程)
本発明で用いられる活性エネルギー線には、電子線(β線)、紫外線、X線、γ線、α線などの各種の放射線が含まれる。この中でも特に、紫外線で硬化する結合剤(紫外線(UV)硬化性結合剤)を使用することが好ましい。
UV硬化性インク組成物を硬化させるためのUV露光に関しては、一般に用いられる低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、複写用高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、DeepUVランプ、ハロゲンランプ、殺菌ランプ、紫外用蛍光灯、カーボンアークランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED等が使用可能であり、露光波長は250〜450nmとすることができる。露光エネルギーは1,000mJ/cm2以下が好ましく、10〜400mJ/cm2がより好ましい。UV光源からUV透過性の光ファイバーを用いて印字面にUV光を導くことができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるもの
ではない。尚、実施例において、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0089】
(実施例1)
モノマー:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート 10.0部
(GX8430:第一工業製薬(株)製)
モノマー:1,6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA) 10.0部
(ダイセル・ユーシービー(株)製)
重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) と、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−
トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) との、
30:70(質量比)混合物 0.6部
着色剤:下記M−1 0.3部
以上の成分を撹拌混合し、マゼンタインクを得た。
【0090】
【化13】

【0091】
(実施例2)
モノマー:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート 6.0部
(GX8430:第一工業製薬(株)製)
モノマー:1,6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA) 14.0部
(ダイセル・ユーシービー(株)製)
重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) と、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−
トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) との、
30:70(質量比)混合物 0.6部
着色剤:前記M−1 0.3部
以上の成分を撹拌混合し、マゼンタインクを得た。
【0092】
(実施例3)
モノマー:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート 6.0部
(GX8430:第一工業製薬(株)製)
モノマー:フェノキシジエチレングリコールアクリレート 14.0部
(PHE−2D:ダイセル・ユーシービー(株)製)
重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) と、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−
トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) との、
30:70(質量比)混合物 0.6部
着色剤:前記M−1 0.3部
以上の成分を撹拌混合し、マゼンタインクを得た。
【0093】
(実施例4)
モノマー:イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート 6.0部
(M−215:東亞合成(株)製)
モノマー:1,6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA) 14.0部
(ダイセル・ユーシービー(株)製)
重合開始剤:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) と、
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−
トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製) との、
30:70(質量比)混合物 0.6部
着色剤:前記M−1 0.3部
以上の成分を撹拌混合し、マゼンタインクを得た。
【0094】
(比較例1)
モノマー(重合性化合物)として、
モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
(日本化薬製) 10.0部
モノマー:トリロキシエチルアクリレート 10.0部
(I−1612B、綜研化学製)
を使用した以外は実施例1と同様にしてマゼンタインクを得た。
【0095】
(比較例2)
モノマー(重合性化合物)として、
モノマー:ペンタエリスリトールトリアクリレート 10.0部
(PET−3:第一工業製薬(株)製)
モノマー:1,6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA) 10.0部
(ダイセル・ユーシービー(株)製)
を使用した以外は実施例1と同様にしてマゼンタインクを得た。
【0096】
(比較例3)
モノマー(重合性化合物)として、
モノマー:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA) 8.0部
(東亞合成(株)製)
モノマー:1,6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA) 12.0部
(ダイセル・ユーシービー(株)製)
を使用した以外は実施例1と同様にしてマゼンタインクを得た。
【0097】
〔粘度〕
上記より得られたインク組成物の粘度を、RE80型粘度計(東機産業(株)製)を用い、25℃環境下にて測定した。
【0098】
〔印字サンプル〕
得られたインク組成物をインクジェットプリンター(印字密度:300dpi、打滴周波数:4kHz、ノズル数:64)でアート紙上に印字し、Deep UVランプ(ウシオ電機(株)製、SP−7)で100mJ/m2のエネルギーになる条件で露光しマゼンタ濃度約1.0の印字サンプルを得た。
【0099】
〔硬化性〕
前記印字サンプルの、印字直後の印字部を指でさわり、下記の基準によって官能評価した。尚、インク組成物の濃度が高すぎてノズルから吐出することができず、印字サンプルが得られなかったものに関しては、行っていない。
A:べたつきはない。
B:若干べたつきがある
C:著しくべたつきがある
【0100】
〔耐光性〕
前記印字サンプルを、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いてキセノン光(85000lux)を7日間照射した。照射前後の画像濃度を反射濃度計(Xrite社製、310TR)を用いて測定し、画像残存率を下記式より求めた。画像残存率が80%以上であればA、70%以上80%未満をB、50%以上70%未満をC、50%未満をDとして評価した。
画像残存率(%)=照射後の反射濃度/照射前の反射濃度×100
尚、インク組成物の濃度が高すぎてノズルから吐出することができず、印字サンプルが得られなかったものに関しては、行っていない。
以上の評価結果等を、下記表1に示す
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基を有するイソシアヌレート化合物、及び重合開始剤を含有することを特徴とするインクジェット用インク組成物。
【請求項2】
二官能モノマー及び/又は単官能モノマーを含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項3】
着色剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項4】
前記着色剤が油溶性染料であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項5】
前記油溶性染料の酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物をインクジェットノズルにより記録媒体に吐出する工程、及び、吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2006−241218(P2006−241218A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55668(P2005−55668)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】