説明

インクジェット用インク製造用合流弁

【課題】 アクチュエータが1個であり、さらに弁の閉口時にはシール部から液体が漏れることを抑制し、弁の開口時には一定の適切な混合比で流れ始める、インクジェット用インク製造用合流弁を提供すること。
【解決手段】 2本以上の流入路及び1本以上の流出路を有する弁座と、1個のアクチュエータで操作される弁体とで構成される合流弁であって、前記弁体はシール部を有し、前記シール部は、厚さ1mm以上、20mm以下のフッ素樹脂であり、かつショアD硬度が60以上、90以下であることを特徴とするインクジェット用インク製造用合流弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク製造用合流弁に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は優れた接液性・耐薬品性を有するため、医薬品やインク等、様々な分野における製造プラントの弁のシール部として、広く使われている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、インクの製造では、色材の水溶液や溶剤、活性剤など複数の原材料を混合する必要があるので、インクの製造プラントでは、複数の原料の流体を合流させるような配管レイアウトをとることが一般的である。この配管レイアウトでは、複数の配管それぞれに接液性に優れたフッ素樹脂のシール部を有するダイヤフラム弁を1個ずつ設置し、それぞれの配管で個別のダイヤフラム弁を開閉し、流れを制御する。
【0004】
しかし、ダイヤフラム弁は、アクチュエータ部が大きく、密集した配管、特に複数の流体が合流するような部分の周辺に複数個の弁を個別に設置すると、立体的に干渉し、配管のレイアウトが困難であった。
【0005】
そこで、2個の独立した弁を連結し、1ユニットとしたダイヤフラム弁とすることで、合流部の配管用の弁として省スペース効果をもたらすダイヤフラム弁が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−108131号公報
【特許文献2】特開平11―141713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット用インクの製造に関しては、複数の原料の混合比が守られないと、インクの組成が安定せず、出力画像にムラができる可能性がある。従って、弁の閉口時にシール部から液体が漏れてお互いの配管に流れ込み、拡散し混ざることを抑制する必要がある。また、弁の開口時には一定の適切な混合比で流れ始めることが必要である。
【0007】
しかし、特許文献1に記載のシール部を有する弁体では、上記のような要求を満たすことは困難であった。
【0008】
また、特許文献2に記載のダイヤフラム弁は、弁体を操作するアクチュエータが複数個必要であり、省スペース効果はまだ十分と言えるものではなかった。
【0009】
従って、本発明は、アクチュエータが1個であり、さらに弁の閉口時にはシール部から液体が漏れることを抑制し、弁の開口時には一定の適切な混合比で流れ始めるインクジェット用インク製造用合流弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
【0011】
すなわち本発明は、2本以上の流入路及び1本以上の流出路を有する弁座と、1個のアクチュエータで操作される弁体とで構成される合流弁であって、前記弁体はシール部を有し、前記シール部は、厚さ1mm以上、20mm以下のフッ素樹脂であり、かつショアD硬度が60以上、90以下であることを特徴とするインクジェット用インク製造用合流弁である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アクチュエータが1個であり、さらに弁の閉口時にはシール部から液体が漏れることを抑制し、弁の開口時には一定の適切な混合比で流れ始めるインクジェット用インク製造用合流弁を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0014】
本発明の合流弁は、図1(a)のように、1個のアクチュエータ(1)で操作される弁体(3)と弁座(5)が、1対で構成されるものである。アクチュエータは、手動式、エア式や電動式など、駆動方式に依らず、アクチュエータの稼動により弁棒(2)をリフトさせることで、弁棒の先に連結した弁体を進退させるものである。一方、弁座は、2本以上の流入路(6)と1本以上の流出路(7)を有する。図1(b)は、本発明の合流弁を弁体の進退方向から見た図である。
【0015】
本発明では、図1(c)のように、流入路のうち少なくとも1本以上の流入路は、弁体の周囲方向に配置されていることが好ましい。このような構成とすることで、液体の合流をスムーズに行うことができる。弁体の周囲方向とは、図1(c)中の弁体の進退方向と垂直方向のことである。2本以上の流入路は、弁体の周囲方向に、弁体の進退方向と垂直に交わる平面(図中の点線)を仮想して、その同一平面上に、必要な本数だけ放射状に配置することが好ましい。この時、全ての流入路は、配管径が同じ大きさであり、かつ径の中心が、弁体の進退方向と垂直となる仮想の平面上からの距離が±0.25mmとなるように配置することが好ましい。尚、配管径が同じであるとは、配管を同じ方法で製造した時に出来る配管間の径が同じであることを意味し、僅かな製造誤差等があっても同じであるものとみなす。また、配管径は、合流弁の外でレデューサーにより偏心させてもよい。
【0016】
シール部と接触する弁座の表面は、0.1mm以下の面精度で加工することが好ましい。
【0017】
弁座の材質は、特に制限されるものではないが、ステンレスであることが好ましい。
【0018】
流入路のうち少なくとも1本以上の流入路は、弁体の進退方向に配置されていることが好ましい。このような構成とすることで、液体の合流をスムーズに行なうことができる。進退方向に配置した流入路は、配管径や加工精度に特に制限はない。
【0019】
1本以上の流出路に関しては、弁体の後退方向、即ちシール面よりも後方のに配置されてさえいれば、配管径や加工精度には特に制限はない。流出路が2本以上の場合は、弁体の周囲方向に、弁体の進退方向と垂直に交わる平面(図中の点線)を仮想して、その同一平面上に、必要な本数だけ放射状に流出路を配置することが好ましい。
【0020】
本発明の弁体は、シール部を有する。弁体のシール部は、弁座と、アクチュエータにより前進した弁体とが接触する部分に配置される。これにより、弁体が前進した時に、弁体と弁座との隙間をシール部の弾性(可逆的な変形)を利用して封止し、複数の流入路と流出路を遮蔽することができる。逆に弁体が後退した時には、シール部と弁座との隙間が大きくなり、流体が流れ出す。
【0021】
本発明の弁体が有するシール部は、フッ素樹脂である。フッ素樹脂としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等、フッ素含有の樹脂が挙げられる。
【0022】
本発明のシール部のフッ素樹脂は、厚さが1mm以上、20mm以下である。さらに、2mm以上が好ましく、18mm以下が好ましい。本発明では、弁座を確実にシールするために、シール部と弁座が触れた状態から、アクチュエータにより弁体を進退方向に0.5mm程度押し込むことが好ましい。しかし、厚さが1mm未満であると、押し込み量を差し引いたフッ素樹脂の可逆的な変形量が少なく、遮蔽性能が満たされない可能性がある。一方、20mmより厚いと、弁体の開閉を行なった場合に、弁体の軸を中心として周囲にフッ素樹脂を均等に配置することが困難となる。シール部と弁座が触れた状態の時に、流入路の径の中心が、弁体の進退方向と垂直となる仮想の平面上からの距離が±0.25mmの範囲に位置するようにフッ素樹脂を配置できないと、弁を一括で開閉しにくくなる傾向となる。
【0023】
本発明のシール部のフッ素樹脂は、ショアD硬度が60以上、90以下である。ショアD硬度が60未満の場合、フッ素樹脂が弁座との接触により、クリープ(不可逆な変形)を発生しやすくなり、液体を遮蔽することが困難となる。さらにショアD硬度は、65以上が好ましい。65以上であると、長期使用時のクリープの発生を抑えることができる。また、ショアD硬度が90より大きいと、フッ素樹脂の弾性が大きくなり(可逆的な変形の量が小さくなり)、弁体が前進した時の弁座との隙間を埋めることができなくなる可能性がある。さらにショアD硬度は、85以下であることが好ましい。
【0024】
本発明においては、シール部がフッ素樹脂のみからなることが好ましい。これは、シール部を、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)やNBR(ニトリルゴム)のような弾性の小さなゴムをバックアップ基材とし、基材の表面をフッ素樹脂で覆う構成にすると、インクがフッ素樹脂と基材ゴムの隙間に浸透する可能性があるためである。このような浸透が発生すると、インクの構成成分によって基材ゴムが劣化したり、基材ゴムの構成成分がインクへ溶出し、インクの性能が劣化する要因となりうる。
【0025】
本発明の合流弁は、色材の水溶液や溶剤、活性剤など複数の原材料を混合する必要がある、インクジェット用インク製造用合流弁として使用される。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
本発明の1実施形態を図2に示す。図2では、流入路として、流入路A、B、C、D、Eの5系路を有し、これらから流入したインクが合流弁を通じ、流出路Fから排出される。
【0028】
流入路Aは、配管の直径が25.4mmであり、弁体の進退方向に配置されている。また、流入路B、C、D、Eは、共に配管の直径が13.8mmで、それぞれの弁体の周囲方向に配置されている。また、流入路B、C、D、Eは、配管径の中心が、弁体の進退方向と垂直となる同一平面上から±0.1mmの範囲内となるように配置されている。
【0029】
弁体は、流入路A、B、C、D、E及び流出路Fと接触する部分にシール部を有する。シール部としては、厚さ5mmのフッ素樹脂(PFA樹脂)を使用した。このPFA樹脂のショアD硬度を、事前にデュロメータGS720(TECLOCK製)で測定したところ、66であった。
【0030】
尚、流入路A、B、C、D、Eにはそれぞれ原料タンク、コリオリ式流量計、調節弁を各1つずつ設置し、調節弁は、調節計からPID制御によって、開度を調整し、流量を制御するシステムにした。この時、流入Aのコリオリ式流量計には、プロマス83A(エンドレスハウザー製)を、調節弁にはバウマン84000(バウマン製)を使用した。流入B、C、D及びEのコリオリ流量計には、プロマス83A(エンドレスハウザー製)を、調節弁にはバウマン83000(バウマン製)を使用した。調節計としては、AHC2000(山武製)を使用した。
【0031】
始めに、原料タンクに水を入れ、0.15MPaで加圧して送液した。0.15MPaの加圧下において、全ての合流弁を閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計値を読み取ると、全て「0」を表示していた。従って、合流弁を閉じた状態では、流入路A、B、C、D、Eに流れはなく、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0032】
さらに、この状態から、合流弁の開閉を繰返し10万回行った後、最終的に閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計の値を読み取ると、全て「0」を表示していた。従って、10万回の繰返し耐久テスト後にも、流入路A、B、C、D、Eに流れはなく、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0033】
次に、合流弁を開けて5つの流入路A、B、C、D、Eから一斉に送液を行い、流量設定値に対する調節弁の安定開度を調べた。
【0034】
流入路Aに関して、流量設定値を6.0kg/minとして水を流し、安定して流れた時の調節弁開度を記録した。その時の開度は、41.1%であった。
【0035】
同様に、流入路Bの調節弁の安定時の開度を調べると、流量設定値6.0kg/minの時、開度は、36.3%であった。流入路Cは、流量設定値5.2kg/minの時、開度は54.3%であった。流入路Dは、流量設定値1.6kg/minの時、開度は33.8%であった。流入路Eは、流量設定値1.1kg/minの時、開度は40.9%であった。
【0036】
次に、予め流入路Aの調節弁開度を41.1%に、流入路Bの調節弁開度を36.3%に、流入路Cの調節弁開度を54.3%に、流入路Dの調節弁開度を33.8%に、流入路Eの調節弁開度を40.9%にした。そして、合流弁を開口し、5分後に閉口した。
【0037】
このときに得られた流量値トレンドを図3に示す。また、評価結果を表1に示す。
【0038】
<実施例2>
実施例1と同様の、図2の配管と合流弁を有する系において、各弁体のシール部として、厚さ2mm、ショアD硬度66のPFA樹脂を使用した合流弁を用い、開閉の繰返しテストを行った。そして、初回及び10万回の繰返し耐久テスト後にも、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0039】
また、予め流入路Aの調節弁開度を41.1%、流入路Bの調節弁開度を36.3%、流入路Cの調節弁開度を54.3%、流入路Dの調節弁開度を33.8%、流入路Eの調節弁開度を40.9%まで開いた状態にした。そして、合流弁を開口し、5分後閉口した。評価結果を表2に示す。
【0040】
<実施例3>
実施例1と同様の、図2の配管と合流弁を有する系において、各弁体のシール部として、厚さ18mm、ショアD硬度66のPFA樹脂を使用した合流弁を用い、開閉の繰返しテストを行った。そして、初回及び10万回の繰返し耐久テスト後にも、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0041】
また、予め流入路Aの調節弁開度を41.1%、流入路Bの調節弁開度を36.3%、流入路Cの調節弁開度を54.3%、流入路Dの調節弁開度を33.8%、流入路Eの調節弁開度を40.9%まで開いた状態にした。そして、合流弁を開口し、5分後閉口した。評価結果を表3に示す。
【0042】
<実施例4>
実施例1と同様の、図2の配管と合流弁を有する系において、各弁体のシール部として、厚さ5mm、ショアD硬度85のPCTFE樹脂を使用した合流弁を用い、開閉の繰返しテストを行った。そして、初回及び10万回の繰返し耐久テスト後にも、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0043】
また、予め流入路Aの調節弁開度を41.1%に、流入路Bの調節弁開度を36.3%に、流入路Cの調節弁開度を54.3%に、流入路Dの調節弁開度を33.8%に、流入路Eの調節弁開度を40.9%まで開いた状態にした。そして、合流弁を開口し、5分後閉口した。評価結果を表4に示す。
【0044】
<比較例1>
実施例1と同様の、図2の配管と合流弁を有する系において、ステンレスの弁体でシールする構成のバルブを用意した。即ち、弁体のシール部として、フッ素樹脂は使用していない。
【0045】
原料タンクに水を入れ、0.15MPaで加圧して送液を行なった。0.15MPaの加圧下において、弁体の合流弁を閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計値を読み取ると、流入路A、B、Cの流量計に微小の流量が確認され、閉塞状態が保持されていないことが確認された。
【0046】
<比較例2>
実施例1と同様の、図2の配管と合流弁を有する系において、各弁体のシール部として、厚さ0.5mm、ショアD硬度66の(PFA樹脂)を使用した合流弁を用い、開閉の繰返しテストを行った。
【0047】
最初に、原料タンクに水を入れ、0.15MPaで加圧して送液を行った。0.15MPaの加圧下において、弁体の合流弁を閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計値を読み取ると、全て「0」を表示していた。従って、合流弁を閉じた状態では、流入路A、B、C、D、Eに流れはなく、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0048】
さらに、この状態から、合流弁の開閉を繰返し10万回行った後、最終的に閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計の値を読み取ると、流入路Bの流量計に微小の流量が確認された。従って、10万回の繰返し耐久テスト後には、合流弁による閉塞状態が保持されていないことが確認された。
【0049】
<比較例3>
実施例1と同様の、図2の配管と合流弁を有する系において、各弁体のシール部として、厚さ30mm、ショアD硬度66の(PFA樹脂)を使用した合流弁を用い、10万回の開閉の繰返しテストを行った。
【0050】
最初に、原料タンクに水を入れ、0.15MPaで加圧して送液を行った。0.15MPaの加圧下において、本発明の合流弁を閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計値を読み取ると、全て「0」を表示していた。従って、合流弁を閉じた状態では、流入路A、B、C、D、Eに流れはなく、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0051】
さらに10万回の繰返し耐久テスト後、合流弁を開けて、5つの流入路A、B、C、D、Eから一斉に送液を行った。ここで各コリオリ流量計の値を確認したところ、流入路A、B、Cは有意値を示し、送液が確認されたが、流入路D、Eでは0.01kg/min未満の無効値を示した。即ち、流入路D、Eでは、液を一定の量及び混合比で送液することが困難であった。これは、合流弁の繰返しの開閉によりフッ素樹脂に偏りが生じ、弁体の軸を中心に均等にフッ素樹脂が配置されず、開口時にも一部の流路が塞がれたためであると考えられる。
【0052】
<比較例4>
実施例1と同様の、図2の配管と合流弁を有する系において、各弁体のシール部として、厚さ5mm、ショアD硬度50の(PTFE樹脂)を使用した合流弁を用い、開閉の繰返しテストを行った。
【0053】
最初に、原料タンクに水を入れ、0.15MPaで加圧して送液を行った。0.15MPaの加圧下において、本発明の合流弁を閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計値を読み取ると、全て「0」を表示していた。従って、合流弁を閉じた状態では、流入路A、B、C、D、Eに流れはなく、合流弁により閉塞状態が保持されていることが確認された。
【0054】
さらに、この状態から、合流弁の開閉を繰返し10万回行った後、最終的に閉じた状態で、流入路A、B、C、D、Eに設置のコリオリ流量計の値を読み取ると、流入路Bの流量計に微小の流量が確認された。従って、10万回の繰返し耐久テスト後には、合流弁による閉塞状態が保持されていないことが確認された。
【0055】
<比較例5>
比較例5の実施形態を図4に示す。図4では、流入路として、流入路G(直径25.4mm)、H(直径13.8mm)の2系路を有する。図4では、合流弁ではなく、それぞれ個別のダイヤフラムバルブBWC2Nタイプ(フジキン製)を設置して開閉を行っており、インクは配管上で合流後、流出路Iから排出される。
【0056】
2つの流入路G、Hから送液した時に得られた流量値トレンドを図5に示す。また、評価結果を表5に示す。
【0057】
<評価>
静止状態から流入路Aの流量が流量設定値まで到達する間に得られる、各流量値トレンドの曲線、時間軸、及び流入路Aの流量が流量設定値に達した時間における時間軸に垂直な直線で囲まれる領域の面積を算出し、流入路間の面積比を算出した。流量設定値比と面積比の値が近接しているほど、即ち、「(流量設定値比/面積比)×100」で算出される値が100%に近いほど、流量を設定値に対して適切に制御できている。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
表1〜4及び表5の結果を比較すると、本発明の合流弁を有している系は、従来の系と比較して、弁の開口時に一定の適切な混合比で流れ始めることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の合流弁の一例を示す図(a)、本発明の合流弁を弁体の進退方向から見た図(b)、本発明の合流弁の一例を示す図(c)である。
【図2】本発明の合流弁を有する系の一例を示す図である。
【図3】本発明の流量値トレンドの一例を示す図である。
【図4】本発明の合流弁を有していない系の一例を示す図である。
【図5】本発明の流量値トレンドでない一例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 アクチュエータ
2 弁棒
3 弁体
4 シール部(フッ素樹脂)
5 弁座
6 流入路
6a、6b、6c、6d 流入路
7 流出路
8 原料加圧タンク
9 コリオリ流量計
10 調節弁
11 ダイヤフラム弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本以上の流入路及び1本以上の流出路を有する弁座と、1個のアクチュエータで操作される弁体とで構成される合流弁であって、
前記弁体はシール部を有し、
前記シール部は、厚さ1mm以上、20mm以下のフッ素樹脂であり、かつショアD硬度が60以上、90以下であることを特徴とするインクジェット用インク製造用合流弁。
【請求項2】
前記シール部がフッ素樹脂のみからなる請求項1に記載のインクジェット用インク製造用合流弁。
【請求項3】
前記流入路のうち少なくとも1本以上の流入路が弁体の周囲方向に配置されている請求項1または2に記載のインクジェット用インク製造用合流弁。
【請求項4】
前記流入路のうち少なくとも1本以上の流入路が弁体の進退方向に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク製造用合流弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−96206(P2010−96206A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265174(P2008−265174)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】