説明

インクジェット画像記録装置

【課題】インクジェット画像記録装置は、インクの吐出に適したメニスカスを形成するための水頭差がインクの比重に比例するため、高比重インクを用いて、十分な水頭差を取りインク溢れ防止を図ると、過負圧により好適なメニスカスができず、記録画像の画質の品位が低下する。
【解決手段】インクジェット画像記録装置は、十分にインク溢れ防止を図る水頭差を確保し、記録ヘッドヘのインク供給経路上にポンプを設けて、ポンプ駆動には記録ヘッドに向かってインクを送液して、過負圧状態のノズルに加圧して、好適なメニスカスができる圧力に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給機構を備えるインクジェット画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ等のインクジェット画像記録装置は、記録ヘッドに設けられたノズル面に多数形成された微小なノズル孔から微量なインクを吐出し、その吐出したインクを記録媒体へ着弾させることで所望の画像を記録している。
【0003】
この記録ヘッドには、ヘッド本体にインクカードリッジを装着して、ノズルにインクを供給するインク供給機構又は、別体にインクタンクを配置し、チューブ等のインク経路によりヘッド内にインクを供給するインク供給機構を有する形式が知られている。インクカートリッジが装着される記録ヘッドは、移動する記録媒体に対して走査移動する走査移動型記録ヘッドに多く採用される。また、インクタンクを備えるインク供給機構が接続される記録ヘッドは、多量の記録処理が要求されるライン型記録ヘッドに多く採用されている。
【0004】
インクタンクを備えるインク供給機構においては、記録ヘッドのノズルにメニスカスを形成するために、記録ヘッド内(インク排出側)を負圧にする必要がある。メニスカスを形成する際に、インクの自重即ち、重力を利用する場合には、インク供給を行うメインタンクを記録ヘッドのノズル面よりも重力方向の高い位置に配置し、記録ヘッド内に負圧を掛けるためにノズル面よりも低い位置にサブタンクを配置して水頭差を発生させている。これらの高さを調整することで、記録ヘッドに好適なメニスカスを形成することができる。
【0005】
しかし、搭載する記録ヘッドやインク供給系の構成等によっては、大きく水頭差を設けなければならない事態が発生するため、画像記録装置が大型化する場合もある。画像記録装置を設置する場所や、他の製造機器等に搭載させるために、スペースなどの制限がある場合には、そのスペース以下のサイズの画像記録装置が望まれることとなる。
【0006】
例えば、特許文献1には、記録ヘッドに働く負圧を発生させる吸排ポンプを設けて、記録ヘッドの高さ方向への移動に追従して、サブタンクの液面高さを調整することで、記録ヘッドに働く負圧を変化させて、メニスカスを維持させる技術が提案されている。これにより、水頭差に制限されず可変可能な負圧を発生させて、且つ記録ヘッドの記録状態に応じて適宜、圧力制御を行い、記録ヘッドに一定の負圧を与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−203649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1におけるメニスカスを形成するための負圧調整機構は、サブタンク内の液面の高さを調整することで、メニスカスを維持させている。この構成例では、サブタンク内のインク液面で調整させるためには、サブタンクの容量を通常よりも大きく取らざるを得ず、装置の大型化に繋がっている。
【0009】
インクの吐出に適したメニスカスを形成するために重要な水頭差は、記録ヘッドのノズル面の高さと、記録ヘッドに接続されたサブタンク内のインク液面の高さとの差である。
【0010】
また、この水頭差は、インクの比重に比例する。このため、インクが高比重になる程、吐出に好適なインク液面とノズル面との差は小さくなっていく。つまり、高比重インクを用いた場合、十分な水頭差を取り、インク溢れ防止を優先させると、ノズルに形成されるメニスカスは、インクの吐出に対して好適な状態にはならず、記録画像の画質の品位の低下が懸念される。つまり、高比重インクを用いた場合、インク液面とノズル面とが離れて、水頭差を大きくするほど、適切なメニスカスができなくなり、反対に近づけて水頭差を小さくするほど、装置の水平に対する傾き調整が厳しくなり、また出荷や引越等の移動時に伴う揺れが発生することによって、ノズルからインクが漏れてしまう虞がある。
【0011】
そこで本発明は、サブタンクの容量を増加せずに、停止時又は記録待機時にはノズルの高さとインク液面の高さとの差を十分に確保しつつ、画像記録時にはインク吐出に適したメニスカスを形成するインクジェット画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、インクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドとインク供給チューブを介して連通される、インクが貯留されるサブタンクと、前記インク供給チューブの途中に設けられ、前記サブタンク内のインクを前記記録ヘッドに供給するポンプと、を有し、前記記録ヘッドの前記ノズルにおける負圧が、インクを吐出するためのメニスカスを形成する負圧よりも大きくなるように、前記記録ヘッドのノズルの高さ位置と、前記サブタンク内のインク液面高さ位置が設定され、前記記録ヘッドからインク吐出の際に、前記ポンプを駆動させることで、前記ポンプが生成する正圧により、前記記録ヘッドの各ノズルに対して、インクを吐出するためのメニスカスを形成するインクジェット画像記録装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サブタンクの容量を増加せずに、停止時又は記録待機時にはノズルの高さとインク液面の高さとの差を十分に確保しつつ、画像記録時にはインク吐出に適したメニスカスを形成するインクジェット画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット画像記録装置の概念的な構成例を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、正常時のインク液面の最高位置とノズル面との位置関係を示す図であり、図2(b)は、傾きによりインク液面がノズル面よりも高い位置になった位置関係を示す図である。
【図3】図3(a)は、第1の実施形態におけるポンプ停止による非インク循環時のゲージ静圧分布を示す図であり、図3(b)はポンプ駆動によるインク循環時のゲージ静圧分布を示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態における変形例に係るインクジェット画像記録装置の概念的な構成例を示す図である。
【図5】図5(a)は、第1の実施形態の変形例におけるポンプ停止による非インク循環時のゲージ静圧分布を示す図であり、図5(b)はポンプ駆動によるインク循環時のゲージ静圧分布を示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る画像記録装置の概念的な構成例を示すブロック図である。
【図7】図7(a)は、第2の実施形態におけるポンプ停止による非インク循環時のゲージ静圧分布を示す図であり、図7(b)はポンプ駆動によるインク循環時のゲージ静圧分布を示す図である。
【図8】図8は、第3の実施形態に係る画像記録装置の概念的な構成例を示すブロック図である。
【図9】図9(a)は、第3の実施形態の変形例におけるポンプ停止による非インク循環時のゲージ静圧分布を示す図であり、図9(b)はポンプ駆動によるインク循環時のゲージ静圧分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット画像記録装置(以下、画像記録装置と称する)の概念的な構成例を示すブロック図である。尚、以下の説明において、画像記録装置は、本発明の特徴(要旨)に係る構成部材のみを説明しているが、通常の構成部材、例えば、記録媒体供給機構、排出機構、メンテナンス機構及び操作表示機構等は備えているものとする。本実施形態で適用するインク液は、一例として、高比重のインク、例えば、水よりも高比重であり、色材として酸化チタン等を含むインクである。又は、例えば溶媒としてエチレングリコール、グリセリン等を含むインクであってもよい。また、以下の説明において、位置における高低は、重力方向に沿って高い及び低いとしている。
【0016】
画像記録装置1は、インク2を吐出して記録媒体3に画像を記録する記録ヘッド4と、記録媒体3を搬送する搬送機構5と、記録ヘッド4に供給するインク2を収容するサブタンク6と、サブタンク6と記録ヘッド4との間で2つのインク経路(第1のインク経路7a[ポンプ連通路7cを含む],第2のインク経路7b)を有してインク2を循環させるインク循環経路7と、サブタンク6にインク2を補給するメインタンク8と、メインタンク8からサブタンク6を繋ぐインク補給経路9と、インク循環経路7の一方の経路途中に設けられたポンプ10と、インク補給経路9の途中に設けられた電磁弁11とで構成される。尚、記録ヘッド4、搬送機構5、ポンプ10及び電磁弁11等は、図示しない制御部によりそれぞれ制御される。
【0017】
これらの構成にうち、記録ヘッド4は、重力方向の下方に滴状のインク2を吐出するノズル16が複数形成されるノズル面(又は、ノズルプレート)15が設けられている。このノズル面15は、搬送される記録媒体3と正対するように設けられている。
【0018】
記録ヘッド4は、インクをヘッド内の供給又は排出するための第1のインクポート4aと第2のインクポート4bを備えており、共通インク室と連通している。これらのインクポート4a,4bの何れか一方がインクの供給側であれば、他方がインクの排出側となる。インク2の流れる方向は、ポンプ10によるインク送液方向を変えることで、供給と排出の方向を切り換えることが可能である。尚、内部のインクの流れ方向が決まっている記録ヘッドであれば、インク経路7a,7bとインクポート4a,4bとの接続位置を反転させればよい。尚、本実施形態におけるインク経路7a,7bは、金属製チューブ又は、樹脂製チューブ等のチューブ部材により構成される。また、チューブ径は設計や仕様により適宜、好適する管径が選択される。
【0019】
本実施形態において、インクポート4a,4bには、インク循環経路7の第1のインク経路7a及び第2のインク経路7bがそれぞれに連結される。以下の説明において、理解しやすくするために、第1のインク経路7aは、インク2を記録ヘッド4に供給するインク経路であり、インクポート4aとポンプ10間を接続するインク供給経路7a1と、サブタンク6からポンプ10までのインク経路をポンプ連通路7a2とする。また第2のインク経路7bは、インクポート4bに接続して、ノズルから吐出されず記録ヘッド4からサブタンク6に排出されるインクが流れるインク排出経路7bとして説明する。
【0020】
搬送機構5は、記録ヘッド4とは対向して配置され、搬送される記録媒体2が記録ヘッド4のノズル面15と対向するように通過する。この搬送機構5は、例えば、環状のベルトを複数のプーリーに巻回して支持し、プーリーを回転させることにより、ベルトを回転させる。ベルトには、複数の孔が開口され、ファン等の負圧により記録媒体3をベルトに吸着搬送する。他にも、長尺の記録媒体を、搬送方向の上流側及び下流側に配置したローラー対で挟持して搬送を行ってもよい。
【0021】
メインタンク8は、記録ヘッド4よりも高い位置に設けられている。この位置は、電磁弁11が開いたときに、記録ヘッド4及びインク循環経路7のインクが逆流してメインタンク8内に流れ込まない高さがあればよい。メインタンク8には、大気開放口12が設けられており、常時、大気開放の状態となっている。メインタンク8は、例えば、インク補給経路9から着脱可能なカートリッジタイプであり、インクが空になった際に、インクが満たされたカートリッジに交換する構成であってもよい。
【0022】
また、サブタンク6には、大気開放口13が設けられ、常時大気と連通している。サブタンク6内には液面センサ14が設けられ、インク液面6Hの高さを検知する。液面センサ14は、例えば、インク液面に浮かぶフロートを有しており、そのフロートの位置でインク液面の高さを検知する構成である。ここでは、液面6Hの最高位置がノズル面15よりも低い位置となるように、サブタンク6は記録ヘッド4よりも、重力方向で下方に配置されている。
【0023】
電磁弁11は、インク補給時を除き、通常は閉状態である。記録媒体又はメンテナンスへのインク吐出により、インク2が消費される。この消費に伴い、図示しない制御部の制御により、液面センサ14により検出されたサブタンク6のインク残量(インク面6Hの高さ)が予め設定したレベル(所定高さ)を下回ると、電磁弁11が開状態となり、インク補給経路9を通じて、メインタンク8からサブタンク6へインクが流下してインクが補給される。補給完了レベルを示唆するインク液面6Hが所定高さ以上となったところで電磁弁11が閉鎖され、インク補給が停止される。
【0024】
インク循環経路7において、第1のインク経路7a(ポンプ連通路7a2)及び第2のインク経路7bの他端の開口がサブタンク6内の底面近傍まで延出している。これは、サブタンク内のインクを有効に利用するためである。
【0025】
本実施形態において、ポンプ10は、第1のインク経路7aの途中で、記録ヘッド4より高い位置に設けられている。このポンプ10は、正転又は逆転により、第1のインク経路7aにおいて、インクを記録ヘッド8に向かう方向又はサブタンク6に向かう方向のいずれの方向にも流すことが可能である。ポンプ10は、例えば、プロペラポンプ等の無脈動ポンプが好ましいが、これに限定されるものではなく、適当なダンパを併用するならばチューブポンプ、ダイヤフラムポンプ又はピストンポンプ等の脈動ポンプを用いることもできる。
【0026】
このポンプ10を駆動することで、ポンプ10、第1のインク経路7a、記録ヘッド4、第2のインク経路7b、サブタンク6及び第1のインク経路7aからなるインク循環経路7を構築して、インクを循環させることができる。尚、必要に応じて、インク循環経路7の経路上に、異物フィルタ、温度調整装置及び脱気装置等を設けてもよい。
【0027】
このように構成されたインクジェット画像記録装置におけるインク吐出動作について説明する。
画像記録装置1は、記録媒体3に向けて滴状のインク2の吐出を開始する際に、ポンプ6の駆動によりインク循環経路7内のインク2を循環させて、ノズル16には、インクの吐出に好適なメニスカスを形成する。メニスカスの形成過程については後で詳述する。インク吐出動作を実施しない場合、例えば画像データ待ち状態、ユーザによる一時停止状態、電源無供給状態等では、ポンプ10は駆動せず、インクは循環されていない。この時、ノズル16には、吐出に好適なメニスカスが形成されていない事態も想定されるが、画像記録は行わないため、問題とはならない。
【0028】
ここで、ノズル16のメニスカス形成方法について説明する。
ノズル16からインクを吐出するためにはメニスカスを形成する必要があるが、インク液面6Hとノズル16(ノズル面15)との水頭差を用いて好適なメニスカスを形成する技術は、公知である。
【0029】
図1に示すように、サブタンク6は、インク液面6Hの最高位置とノズル面15の位置とが所定距離、例えば、記録媒体3のサイズによって決定される記録ヘッド4とサブタンク6との距離X、ノズル面15とインク液面6Hの最高位置との差Yとする。
【0030】
インク液面6Hの最高位置とノズル面15とが所定距離以下である例では、図2(a)に示すように、インク循環経路7が非循環状態において、画像記録装置に傾斜・振動・衝撃等が加わった際に、図2(b)に示すように、インク液面6Hがノズル面15よりも高い位置になると、インク2がノズル16より溢れてくる。
【0031】
従って、距離Xと、差Yによって規定される角度arctan(Y/X)が画像記録装置1の設置位置における許容傾斜角度又は、輸送時の許容傾斜角度等よりも大きくなるように位置決めされている。
【0032】
本実施形態では、輸送時に装置が例えば数度、傾いたとしても、ノズル面15とインク液面6Hとの水頭差の上下位置反転によりインク溢れが発生しない差Yがあるように、インク液面6Hの最高位置とノズル面15とを所定距離以上に離れるように設定されている。
【0033】
しかし、前述したように、高比重インクを用いた場合、インク漏れ防止を優先させて、水頭差を大きく取るほど、適切なメニスカスができなくなり、反対に近づけるとノズル16からインク溢れが発生する可能性が高くなる。
【0034】
本実施形態では、インク2に高比重インクを採用したときに、装置の傾斜・振動・衝撃等が加わったとしてもノズル16からのインク溢れが発生せず、且つポンプを用いてインク循環時に吐出に好適なメニスカスをノズル16に形成する画像記録装置を提案している。以下に具体的に説明する。
【0035】
図3(a)は、ポンプ10が停止している非インク循環時のゲージ静圧分布を示し、図3(b)はポンプ10が駆動しているインク循環時のゲージ静圧分布を示している。
ポンプ10の駆動により、インク2は、第1のインク経路7aにおいてサブタンク6から記録ヘッド4に向かう方向に流れるものとする。
図3(a)において、ポンプ10の停止時は、インク循環経路7ではインクが停留し流れていないため、ゲージ静圧は、インク液面6Hからの高さに比例する。
【0036】
サブタンク6は、大気開放されているため、サブタンク6のゲージ静圧は、0kPaである。ノズル16及びポンプ10は、インク液面6Hよりも上方にあるため、高さに応じた負圧となる。本実施形態では、インク10が高比重であり、ノズル面15とインク液面6Hとの高低差が所定距離以上であるため、ノズル16は吐出に好適な圧力よりも負圧側になっている。つまり、好適なメニスカスは形成されていない。
【0037】
図3(b)に示すように、所定の駆動力でポンプ10を駆動すると、ノズル16のゲージ静圧が上昇する。即ち、ポンプ10がノズル16方向にインクが流れるように駆動しているため、ポンプ10駆動前と比べて、ポンプ10直下流は、さらに正圧側に、ポンプ10直上流は、さらに負圧側に圧力が変化する。この結果、ノズル16のゲージ静圧は、正圧側に振れ、吐出に好適な圧力まで上昇する。
【0038】
尚、ノズル16に吐出に好適な圧力まで上昇させるためのポンプ10の駆動力は、定まった数値ではなく、インク循環経路7の仕様、即ち、経路上の設けられる構成部位及び配管径やパイプ(インク流路)の引き廻し形状等により、それぞれに異なっている。これは、ノズル16とインク液面6Hとの高低差、ポンプの種別及び性能、第1のインク供給経路7a、第2のインク供給経路7bを含んだインク循環経路7の構成に影響され、さらに、使用するインク2の密度、粘度及び、表面張力等の諸物性等に依存するため、予め経験的に実測又はシミュレーションを行い、最適な駆動力を取得しておく。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、非画像記録時においては、装置に加わる傾斜・振動・衝撃等によるノズル16からのインク溢れを発生させないように、インク液面6Hの最高位置とノズル16とは所定距離以上に離間して配置する。さらに、画像記録時には、この構成において、ノズル16とインク液面6Hとの水頭差が吐出に好適な圧力をノズル16に得られない場合には、ポンプ10によるインク送液によりインク循環経路7にインク10を循環させて、ノズル16に吐出に好適な圧力を設定して、最適なメニスカスを形成することができる。従って、画像記録装置に加わる傾斜・振動・衝撃への耐性を備えつつ、且つインク吐出に好適な圧力(メニスカス)をノズル16に設定することができる。
【0040】
次に図4を参照して、前述した第1の実施形態における変形例について説明する。
本変形例は、前述した第1の実施形態とは、第2のサブタンクがポンプと記録ヘッドの間のインク供給経路7a上に設置された構成が異なっている。図4は、変形例に係るインクジェット画像記録装置の構成を示すブロック図である。前述した第1の実施形態と同様な構成については、同じ参照符号を付して、変形例においては、その説明を省略し、異なる点について説明する。
【0041】
この変形例の画像記録装置21は、ポンプ10と記録ヘッド4間のインク供給経路7a1(インク供給経路7a3及び、第2のポンプ連通路7a4)上に、第2のサブタンク22が設けられている。第2のサブタンク22には、電磁弁23と、インク液面を検出する液面センサ24(液面センサ14と同等)が設けられている。
【0042】
電磁弁23は、電磁弁11と共にインク2が非循環時には閉鎖され、循環時には大気開放される。第2のサブタンク22は、ポンプ10によりサブタンク6から汲み上げられたインク2を一時的に貯留した後、記録ヘッド4にインク2を供給している。尚、装置の輸送時や移動時は、非循環時であり、電磁弁23及び電磁弁11と共に閉鎖しておく。従って、装置の傾きによるノズルからのインク溢れは、水頭差に応じて防止される。
【0043】
第2のサブタンク22内で昇降するインク液面22Hは、通常は、サブタンク6のインク液面6Hよりも高い位置で、且つ記録ヘッド4のノズル面15よりも低い位置となる。但し、インク液面22の昇降範囲においては、ノズル面15よりも高い位置及びインク液面6Hの最上位置よりも低い位置も含まれている。例えば、インク供給路7a3の流路抵抗が大きい場合などには、インク液面22Hは、ノズル面15よりも上方に位置することもある。この場合は、ポンプ10を制御することで、インクの送液量を減少させて、第2のサブタンク22からのインクのオーバーフローを防止する。
【0044】
図5(a)は、変形例において、ポンプ10が停止している非インク循環時のゲージ静圧分布を示し、図5(b)は、同様に、ポンプ10が駆動しているインク循環時のゲージ静圧分布を示している。
【0045】
図5(a)に示すインクの非循環時には、電磁弁23が閉鎖状態であるため、第2のサブタンク22内は、大気圧よりも低いゲージ負圧となっている。また図5(b)においては、電磁弁23が開放することにより、第2のサブタンク22内は大気開放状態となる。ここで、ポンプ10を駆動して、インクを循環した場合、第2のサブタンクは、非循環状態に比較して、実質的に加圧状態となり、ノズル16の圧力が引き上げられて好適な圧力となり適正なメニスカスがノズル16に形成されて、インク2が吐出される。
【0046】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、ポンプ駆動により適正なメニスカスを形成してインクを吐出することができる。さらに、第2のサブタンクを設けることにより、ポンプによるインク送液における脈動を緩和することができ、記録ヘッドヘのスムーズな流れ込みによるインク供給を実現することができる。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る画像記録装置の概念的な構成例を示すブロック図である。本実施形態について、前述した第1の実施形態と同様な構成部位は、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
本実施形態のインク循環経路7は、サブタンク6に繋ぐ1ラインのインク経路7cが途中で、インク経路7aとインク経路7bに分岐する構成である。インク経路7aは、分岐点31で分岐した後、ポンプ連通路7a5、ポンプ10及びインク供給経路7a1 を経て記録ヘッド4のインクポート4aに接続される。また、インク経路7bは、分岐した後、インク排出経路7bを経て記録ヘッド4のインクポート4bに接続される。
【0049】
この構成において、インク循環経路7は、分岐点31−ポンプ連通路7a5−ポンプ10−インク供給経路7a1− 記録ヘッド4−インク排出経路7b−分岐点31となり、サブタンク6が含まれなくなる。但し、記録ヘッド4のインク吐出により、インク循環経路7内の循環するインク量が減少すると、インク経路7cを経て、ポンプ10によるサブタンク6への負圧が大きくなり、サブタンク6内のインクがインク経路7cに吸い上げられて、インク循環経路7に取り込まれる。
【0050】
本実施形態では、ポンプ10の駆動による圧力変化の影響、すなわち、ポンプ10直下流に発生する正圧及びポンプ10直上流に発生する負圧は、共に分岐31に掛かる。従って、第1の実施形態とは異なり、循環経路の流路抵抗分布によって、ポンプの駆動方向を決定する必要がある。
【0051】
例えば、本実施形態におけるポンプ10が、ポンプ10からインク供給経路7a1に向けてインク2が流れるように送液する時に、ポンプ10の直下流に+P、直上流に−Pの圧力が生成される。従って、インク循環経路7をインクが1周すると、2Pの圧力損失が発生することとなる。
【0052】
本実施形態では、例えば、ポンプ連通路7a5の直径が相対的に細長く、このポンプ連通路7a5で、Pの圧力損失が発生し、インク供給経路7a1、記録ヘッド4及び、インク排出経路7bで、残りPの圧力損失が発生するものと仮定すると、ポンプ連通路7a5の圧力は負圧側となり、インク供給経路7a1、ノズル16及びインク排出経路7bの圧力は、正圧側となることになる。
【0053】
このように、ポンプ10から記録ヘッド4までのインク供給経路7a1における流路抵抗のほうが、記録ヘッド4から分岐31までのインク排出経路7bにおける流路抵抗と、分岐31からポンプ10までのポンプ連通路7a5における流路抵抗との和が小さい場合には、ポンプ10からインク供給経路7a1を介して記録ヘッド4に向けてインクを送液することで、ノズルにメニスカスに適した負圧を生成することができる。
【0054】
以上を考慮して、ノズル16が吐出に好適な圧力となるように駆動方向を決定する。本実施形態では、ポンプ10によるインク2の送液方向は、インク2がポンプ10からインク供給経路7a1を経て、記録ヘッド4に向かって流れる方向である。
【0055】
なお、ポンプ10から記録ヘッド4までのインク供給経路7a1における流路抵抗のほうが、記録ヘッド4から分岐31までのインク排出経路7bにおける流路抵抗と、分岐31からポンプ10までのポンプ連通路7a5における流路抵抗との和が大きい場合には、先程とは逆に、ポンプ10からポンプ連通路7a5、分岐31、インク排出経路7bらを介して記録ヘッド4に向けてインクを送液することで、ノズルにメニスカスに適した負圧を生成することができる。
【0056】
図7(a)は、第2の実施の形態において、ポンプ10が停止している非インク循環時のゲージ静圧分布を示し、図7(b)は、同様に、ポンプ10が駆動しているインク循環時のゲージ静圧分布を示している。ここで、長さ当り流路抵抗は、各部で均一であるものとしている。
【0057】
図7(a)においては、ポンプ10の停止によるインクの非循環時であり、インク循環経路7ではインクが停留し流れていないため、ゲージ静圧は、サブタンク6が大気圧であり、分岐点31が最も低い圧力となっており、ノズル16においてもメニスカスの適正圧よりも低くなっている。従って、インク溢れが抑制されている。
【0058】
また図7(b)においては、ポンプ10の駆動により、ポンプ10を循環経路の始点・終点としてみた場合に、相対的にインクの流れ方向における上流にあるノズル16へ昇圧が掛かり、正圧側へ圧力が変化し、反対に下流にある分岐点31は負圧側へ圧力が変化することとなる。このポンプ10の駆動によりインク循環が行われると、ノズル16に掛かる圧力が上昇して、好適なメニスカスを形成する圧力となり、インクが吐出される。
【0059】
本実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果に加えて、インク循環経路の経路長を短くすることができ、特に、サブタンクの近辺におけるインク経路の引き廻しがコンパクトなインク循環経路を構築することができる。
【0060】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る画像記録装置の概念的な構成例を示すブロック図である。本実施形態について、前述した第1の実施形態と同様な構成部位は、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0061】
この第3の実施形態のインク経路は、第1の実施形態と比較すると、ポンプから記録ヘッドのインクポートへ接続していたインク供給経路が、ポンプからインク排出経路の途中の分岐点に接続することが異なっている。従って、本実施形態は、記録ヘッドにインクを流入流出するインク循環経路ではなく、ポンプは、サブタンク6と分岐点のインク循環経路間においてインクを循環させ、記録ヘッドに対してはインク供給するのみのインク経路である。
【0062】
具体的に説明する。サブタンク6から記録ヘッド4のインクポート45にインク供給経路41(44)が接続される。また、サブタンク6近傍のインク供給経路41には、分岐点46が設けられる。サブタンク6からポンプ10までポンプ連通路7a2により接続される。ポンプ10から分岐点46までポンプ分岐連絡路42により接続される。本実施形態のインク循環経路は、記録ヘッド4を含まず、ポンプ10、ポンプ分岐連絡路42、分岐点46、インク供給経路44、サブタンク6及び、ポンプ連通路7a2で構成されている。
【0063】
本実施形態においては、記録ヘッド4はインク循環機能を有せず、インクポートも流入用のインクポート45のみとなる。従って、記録ヘッド4にインク2を供給するインク経路において、記録ヘッド4の手前でインク2を循環させることにより、記録ヘッド4へ流入するインクの圧力が変化する。
【0064】
図9(a)は、第3の実施の形態において、ポンプ10が停止している非インク循環時のゲージ静圧分布を示し、図9(b)は、同様に、ポンプ10が駆動しているインク循環時のゲージ静圧分布を示している。
【0065】
本実施形態では、図9(a)に示すように、ポンプ10の停止により、インク循環経路ではインクが停留し流れていないため、ゲージ静圧は、大気圧のサブタンクが最も高い圧力となっており、ノズル16はメニスカスの適正圧よりも低くなっている。従って、インク溢れが抑制されている。
【0066】
図9(b)に示すように、ポンプ10の駆動により、分岐点46の圧力が高められ、その分だけ、ノズル16の圧力も高めることができる。従って、ポンプ10から分岐点46に向けて、インク2が流れるように、ポンプ10を駆動することで、ノズル16の圧力を高め、吐出に好適な圧力を得ることが出来る。
【0067】
本実施形態によれば、前述した第1,第2の実施形態における記録ヘッドは、インクを通過させることの可能なインク循環構成のタイプに限られたが、本実施形態では、インクジェットヘッドにインクを通過させる必要がないため、汎用的な構成の記録ヘッドへの適用の点から見ると、選択の幅が広くなる。
【0068】
また、本実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果に加えて、インク循環経路の経路長を短くすることができ、特に、記録ヘッドの近辺におけるインク経路の引き廻しがコンパクトなインク循環経路を構築することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…画像記録装置、2…インク、3…記録媒体、4…記録ヘッド、4a…第1のインクポート、4b…第2のインクポート、5…搬送機構、6…サブタンク、6H…インク面、7…インク循環経路、7a…第1のインク経路、7a1…インク供給経路、7a2…ポンプ連通路、7c…ポンプ連通路、7b…第2のインク経路、8…メインタンク、9…インク補給経路、10…ポンプ、11…電磁弁、12,13…大気開放口、14…液面センサ、15…ノズル面、16…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドとインク経路部材を介して連通される、インクが貯留されるサブタンクと、
前記インク経路部材の途中に設けられ、前記サブタンク内のインクを前記記録ヘッドに供給するポンプと、
を有し、
前記ポンプ停止時の前記ノズルにおける圧力が、インクを吐出するためのメニスカスを形成する負圧に対してより負圧側の値になるように、前記記録ヘッドのノズルの高さ位置と、前記サブタンク内のインク液面高さ位置が設定され、
前記記録ヘッドからインク吐出の際に前記ポンプを駆動させることで、前記ポンプが生成する正圧により、前記ノズルにおける圧力を、インクを吐出するためのメニスカスを形成する負圧に設定することを特徴とするインクジェット画像記録装置。
【請求項2】
前記経路部材が、第1のインク供給チューブと第2のインク供給チューブとからなり、前記ポンプは、前記第1のインク供給チューブに位置し、
インク吐出時には、前記ポンプから前記記録ヘッドに向けてインクを送液することで、インクを吐出するためのメニスカスを各ノズルに形成するための負圧を各ノズルに設定することを特徴とする請求項1記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項3】
前記インク経路部材から分岐したポンプ用経路を備え、前記ポンプは、前記ポンプ用経路上に位置することを特徴とする請求項1記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項4】
前記ポンプは、前記ポンプから前記記録ヘッドまでの流路抵抗の方が、前記記録ヘッドから前記分岐点までの流路抵抗と、前記分岐点から前記ポンプまでの流路抵抗と、の和よりも小さい場合には、インク吐出時に、前記ポンプから前記記録ヘッドに向けて、インクを送液することで、前記ノズルにおける圧力を、インクを吐出するためのメニスカスを形成する負圧に設定することを特徴とする請求項3記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項5】
etch
前記ポンプは、前記ポンプから前記記録ヘッドまでの流路抵抗の方が、前記記録ヘッドから前記分岐点までの流路抵抗と、前記分岐点から前記ポンプまでの流路抵抗と、の和よりも大きい場合には、インク吐出時に、前記ポンプから前記分岐点を介して前記記録ヘッドに向けて、インクを送液することで、前記ノズルにおける圧力を、インクを吐出するためのメニスカスを形成する負圧に設定することを特徴とする請求項3記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項6】
前記インク供給チューブから分岐したポンプ用経路
を備え、前記ポンプは、前記ポンプ用経路上に位置し、インク吐出時には、前記ポンプから前記分岐点に向けてインクを送液することで、前記ノズルにおける圧力を、インクを吐出するためのメニスカスを形成する負圧に設定すること、
を特徴とする、請求項1記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項7】
前記インク経路部材は、
前記ポンプを介在し、重力方向で前記記録ヘッドのノズル位置より低い位置に配置された常時大気下の前記サブタンクから前記記録ヘッドにインクを供給するインク供給経路と
前記記録ヘッドより非吐出で排出されたインクを前記サブタンクに帰還するインク排出経路と、を含むインク循環経路を構成し、
前記ポンプの駆動により、前記ポンプから前記記録ヘッドに向けてインクを送液して、前記インク循環経路でインクを循環させた際に、前記ノズルにインク吐出させるためのメニスカスを形成する負圧を設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項8】
前記インク経路部材において、
前記ポンプから前記記録ヘッドの前記インク供給経路の途中で、
重力方向で前記サブタンクより高い位置であり、且つ前記前記記録ヘッドのノズル位置よりも低い位置に配置された、常時大気下の第2のサブタンクを備え、
前記ポンプの駆動により、前記ポンプから前記記録ヘッドに向けてインクを送液した際に、前記ノズルにインク吐出させるためのメニスカスを形成することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項9】
前記インク経路部材において、
前記サブタンクから導出された前記インク経路が、
前記ポンプを介在し前記記録ヘッドに接続するインク供給経路と、
前記記録ヘッドからインクを前記サブタンクに帰還させるためのインク排出経路と、に分岐する分岐点を有し、
前記分岐点をインク送液の折り返し点として、前記記録ヘッドと前記インク供給経路とインク排出経路とを含む第2のインク循環経路を構成し、
前記ポンプの駆動により前記ポンプから前記記録ヘッドに向けてインクを送液して前記第2のインク循環経路でインクを循環させた際に、前記ノズルにインク吐出させるためのメニスカスを形成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項10】
前記ポンプから前記記録ヘッドまでの前記インク供給経路の流路抵抗が、
前記記録ヘッドから前記分岐点までの前記インク排出経路の流路抵抗と、前記分岐点から前記ポンプまでの流路抵抗と、の和よりも小さい場合には、
前記ポンプの駆動により前記記録ヘッドに向けてインクを送液して、インクを吐出するためのメニスカスを形成することを特徴とする請求項8記載のインクジェット画像記録装置。
【請求項11】
前記インク経路部材において
前記サブタンクから導出されて前記記録ヘッドに接続し、前記インクを供給する第1のインク供給経路と、
前記サブタンクから導出されて前記ポンプを介在し、前記第1のインク供給経路に接続する第2のインク供給経路と、
前記第1のインク供給経路と前記第2のインク供給経路とが接続する分岐点を有し、
前記分岐点をインク送液の折り返し点として、前記第1のインク供給経路と第2のインク供給経路とを含む第3のインク循環経路を構成し、
前記ポンプの駆動により前記ポンプから前記分岐点に向けてインクを送液して前記第3のインク循環経路でインクを循環させた際に、前記ノズルにインク吐出させるためのメニスカスを形成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−88328(P2011−88328A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242704(P2009−242704)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】