説明

インクジェット装置

【課題】操作部材の回動動作に連動して記録ヘッドとチューブの接続・接続解除が行われるインクジェット装置において、記録ヘッドの着脱を容易に実現可能とする。
【解決手段】インクタンク320に接続された可撓性のチューブ302を記録ヘッド100に連通させる第1の位置と連通を解除させる第2の位置に移動可能なジョイント部310と、キャリッジ71に対して第1の姿勢または第2の姿勢を取るようにキャリッジ71に回動可能に設けられた操作部材91と、操作部材91の回動に伴ってジョイント部310が第1の位置または第2の位置に移動するように、操作部材91とジョイント部310とを連動させるリンク機構とを有し、操作部材91は、チューブ302の復元力によって、第1の姿勢と第2の姿勢のいずれか一方の姿勢を維持するように付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクタンクから記録ヘッドへインクを供給するためのチューブを備えたインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクタンク内のインクを記録ヘッドへ供給するためのチューブ(供給チューブ)を備えたインクジェットプリント装置が知られる。このような装置においては、記録ヘッドをキャリッジに固定する操作と、記録ヘッドと供給チューブとを接続させる操作とをそれぞれ行う必要がある。すなわち、作業者(ユーザー)は複数の操作を行わなければならない。また、操作の手順よっては、記録ヘッドと供給チューブとの接続が不完全になり、インクが漏れたり、供給チューブ内に空気が混入したりする虞があった。
【0003】
この点、特許文献1には、キャリッジカバーなどの一つの操作部材の閉塞動作に連動して、記録ヘッドの位置決め固定と供給チューブの記録ヘッドへの接続固定とを完了させる手段を備えたインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-200595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される装置では、キャリッジから記録ヘッドを取り出す際に、記録ヘッドと供給チューブとの接続部であるジョイント部を切り離すために、キャリッジカバーを回動させて開口させる。その際には、ジョイント接続された供給チューブもカバーに連動して回動するので、チューブは、キャリッジから離れる方向に押し曲げられることになる。このとき、キャリッジから離れる方向へ押し曲げられた供給チューブには余分なストレスが生じ、チューブ自身の弾性によって、形状を復元させようとする力(復元力)が発生する。そのためキャリッジカバーを開口する方向とは逆方向に作用する力(反力)が生じ、カバーを開口状態に保持することが難しくなり、記録ヘッドが取り出しにくくなる場合がある。
【0006】
本発明は、上述の課題の認識の下になされたものである。すなわち、本発明は、キャリッジカバーなどの操作部材の回動動作に連動して記録ヘッドと供給チューブの接続または接続解除が行われるインクジェット装置を前提とする。そして、本発明は、上述のような操作部材を簡易な構成により所定に回動位置に保持することで、記録ヘッドの着脱を容易に実現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
記録ヘッドを着脱可能であってシートに対して往復移動するキャリッジと、インクタンクから記録ヘッドへのインク流路を形成する可撓性のチューブとを有し、チューブがキャリッジの往復移動に追従するインクジェット装置であって、キャリッジは、チューブと記録ヘッドとを連通させる第1の位置と連通を解除させる第2の位置に移動可能なジョイント部と、キャリッジに対して第1の姿勢または第2の姿勢を取るようにキャリッジに回動可能に設けられた操作部材と、操作部材の回動に伴ってジョイント部が第1の位置または第2の位置に移動するように、操作部材とジョイント部とを連動させるリンク機構とを有し、操作部材は、チューブの復元力によって、第1の姿勢と第2の姿勢の少なくともいずれか一方の姿勢を維持するように付勢されている。
【発明の効果】
【0008】
操作部材の回動動作に連動して記録ヘッドと供給チューブの接続または接続解除が行われるインクジェット装置において、上記操作部材が簡易な構成により所定に回動位置に保持されるので、記録ヘッドの着脱が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの全体構成を示す模式的斜視図である。
【図2】記録ヘッドが装着されたキャリア部と、該キャリア部に接続された供給チューブを示す模式的斜視図である。
【図3】記録ヘッドが未装着のキャリア部と、該キャリア部に接続された供給チューブを示す模式的斜視図である。
【図4】記録ヘッドが装着されたキャリア部を示す模式的斜視図である。
【図5】記録ヘッドのキャリア部への装着動作を示す模式的斜視図である。
【図6】記録ヘッドのキャリア部への固定が解除された状態を示す模式的斜視図ある。
【図7】記録ヘッドのキャリア部への装着状態を示す模式的側面図である。
【図8】記録ヘッドのキャリア部への装着動作を示す模式的側面図である。
【図9】記録ヘッドのキャリア部への固定が解除された状態を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例について図1〜図9を用いて詳細に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応する部分を示すものである。図1〜図9は、インクを吐出してシートに記録を行うインクジェットプリンタに本発明を適用した例を示している。インクジェットプリンタには、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。
【0011】
図1に本実施形態に係るプリンタの全体構成を模式的に示す。本実施形態に係るプリント装置は、大きく分けて、給紙部(ASFユニット)40、シート搬送部20、排紙部30、記録ヘッド100を搭載するキャリア部70、および記録ヘッド回復部(回復ユニット)50から構成されている。不図示のホスト装置から記録データが送られると、制御基板5上のプリンタ制御部(不図示)にデータが格納され、同制御部から記録動作開始指令が出されて記録動作が開始する。
【0012】
具体的には、先ず給紙動作が行われる。給紙部40はASF(Automatic Sheet Feeder)である。この給紙部40は、圧板41上に複数枚積載されたシート(不図示)から給紙ローラ42によって記録動作ごとに1枚ずつシートを引き出してシート搬送部20に送る自動給紙部として構成されている。
【0013】
給紙部40から給送されたシートは、シート搬送部20たる搬送ローラ(LFローラ)21とピンチローラ22のニップ部に向けて搬送される。その後、給紙ローラ42は駆動力を切断され、シートと連れ回りするようになる。この時点で、シートは搬送ローラ21とピンチローラ22のみで搬送されるようになる。シートは所定改行量毎に正方向に前進し、プラテン29に設けられたリブに沿って進行する。シート先端は漸次第1排紙ローラ(不図示)及び第1拍車列(不図示)のニップ部に掛かるが、第1排紙ローラ(不図示)の周速は搬送ローラ21の周速とほぼ等しく設定され、かつ搬送ローラ21から第1排紙ローラ(不図示)はギア列で接続されている。よって、第1排紙ローラ(不図示)は搬送ローラ21と同期して回転することになり、そのため、シートは弛んだり引っ張られたりすることなく搬送される。
【0014】
キャリア部70は、主に記録ヘッド100と記録ヘッド100を搭載してシート搬送方向と交差(通常直交)する方向に走査(移動)するキャリッジ71とからなる。キャリッジ71は、シャーシ10に固定されたガイドシャフト14とシャーシ10の上部に固定されたサポートレール15とによって案内支持されている。このキャリッジ71は、キャリッジモータ17とアイドラプーリー18との間に張架されたキャリッジベルト16を介してキャリッジモータ17の駆動力が伝達されることにより、ガイドシャフト14に沿って往復移動(走査)する。またキャリッジ71に搭載された記録ヘッド100には、ジョイント部310を介して可撓性のチューブからなる供給チューブ302が接続されている。この供給チューブ302は、キャリッジ71の走査範囲全域でキャリッジ71の移動に追従するように這いまわされて供給ユニット300へと接続されている。
【0015】
供給ユニット300には、各色のインクタンク(メインタンク320)が着脱可能に装着される。供給ユニット300には、メインタンク320に貯蔵されたインクを記録ヘッド100へ移送するためのポンプ等から構成される供給ポンプユニット301が設けられている。この供給ユニット300は、装置前面となる排紙口近傍に配設される構成となっている。このため、キャリア部70に搭載されたジョイント部310から延びる供給チューブ302は、屈曲されながら排紙側方向へと這いまわされて、供給ユニット300からのメイン流路(不図示)と連通されている。
【0016】
記録ヘッド100の内部には複数のインク流路が形成されており、インク流路はプラテン29と対向する面(吐出口面)に配された吐出口(不図示)まで連通している。吐出口列を形成する複数の吐出口(不図示)のそれぞれの内部にはインク吐出用のアクチュエータ(エネルギー発生手段)が配されている。このアクチュエータとしては、例えば、ヒータなどの電気熱変換体(発熱素子)や、ピエゾ素子などの電気機械変換体(電気−圧力変換素子)などが用いられる。
【0017】
以上により、キャリア部70の走査中においても、メインタンク320に貯蔵されているインクは、供給ポンプユニット301によって供給ユニット300から供給チューブ302を通して記録ヘッド100の内部へと供給されることが可能となる。
【0018】
なお、記録ヘッド100とプリンタ本体との間の電気接続を確保するために、記録ヘッド側には、レジストを行っていない導体露出部を有する不図示の電気基板(ヘッド基板)が設けられている。図3のように、記録ヘッド100(図3には不図示)を搭載するためのキャリッジ71には、メッキが施された金属の弾性変形を用いて記録ヘッド100の導体露出部に圧接し、記録ヘッド100の導体露出部と電気的に結合する圧接コネクタ74が設けられている。
【0019】
さらに、圧接コネクタ74は、キャリッジ71上に搭載された不図示の基板(キャリッジ基板)に半田付けされ、キャリッジ71上の基板はフレキシブルフラットケーブル(FFC)12を介して装置本体側の回路基板(制御基板)5と電気的に結合されている。
【0020】
上記のようなインクジェットプリンタにおいては、記録ヘッド100に、FFC12を介してヘッドドライバ(不図示)の信号を伝達することで、記録データに応じてインク滴を吐出することが可能である。また、シャーシ10に張架されたコードストリップ19をキャリア部70に搭載されたCRエンコーダ(不図示)によって読み取ることで、適切なタイミングでシートに向けてインク滴を吐出することができる。このようにして、1ライン分の記録が終了すると、シート搬送部20により必要量だけシートを搬送(紙送り)する。この動作を繰り返して実施することにより、シート全面にわたる記録動作が可能となる。
【0021】
次に、キャリア部70の詳細について説明する。図2および図3は、図1に示したプリンタにおけるキャリア部70の斜視図である。図2は、キャリッジ71に記録ヘッド100が装着された状態を示している。
【0022】
図2に示すように、キャリア部70は、記録ヘッド100をキャリッジ71に装着する際に記録ヘッド100を案内するヘッド保護カバー72と、記録ヘッド100をキャリッジ71に固定するヘッド固定機構80(図4)とを有している。ヘッド固定機構80は、ヘッド固定レバー81に設けられた回転軸811を中心としてキャリッジ71に対して回動(遥動)できるように構成されている。また、このヘッド固定レバー81にはヘッド固定機構80を開閉させるための力を受けるボス812が設けられている。
【0023】
キャリア部70には、供給チューブ302からの流路を記録ヘッド100内の流路へ連通させるジョイント部310が設けられている。ジョイント部310は、相対的に記録ヘッド100に接近した第1の位置と、相対的に記録ヘッド100から離間した第2の位置に移動可能である(記録ヘッドに対して接離可能である)。そして、ジョイント部310が第1の位置に移動すると、供給チューブ302からの流路と記録ヘッド100内の流路とが連通され、ジョイント部310が第2の位置に移動すると、上記連通が解除される。
【0024】
さらに当該プリント装置には、ユーザーがジョイント部310の接離動作およびヘッド固定機構80を遥動させる力を加える操作部材として機能するキャリッジカバー91が設けられている。キャリッジカバー91は回転軸911を中心としてキャリッジ71に回動可能なるように取り付けられている。そして、キャリッジカバー91は、回動によって、キャリッジ71に対して閉塞した第1の姿勢と、キャリッジ71に対して開口した第2の姿勢のいずれか一方の姿勢から他方の姿勢に移行することができる。このキャリッジカバー91と上述のジョイント部310とは、リンク機構を介して連結されており、キャリッジカバー91の回動に連動してジョイント部310が移動されるように構成されている。具体的には、図3に示すように、キャリッジカバー91とジョイント部310とはリンク95を介して連結されている。そして、リンク95の一端は、第1の連結軸(カバーリンク連結部913)を介してキャリッジカバー91に回動可能に連結され、他端は第2の連結軸(ジョイントリンク連結部313)を介してジョイント部310に回動可能に連結されている。また、キャリッジカバー91上にはヘッド固定レバー81のボス812を案内する案内溝912が設けられている。
【0025】
前述のヘッド固定レバー81のボス812はキャリッジカバー91の案内溝912と係合しているため、キャリッジカバー91の開閉に応じて、ヘッド固定レバー81も遥動して開閉動作を行うことができる。さらにキャリッジカバー91の開閉に伴い、リンク95がカバーリンク連結部913を中心に動作し、ジョイントリンク連結部313を介してリンク95に連結されているジョイント部310を動作させることができる。
【0026】
キャリア部70に搭載されたジョイント部310から延びる供給チューブ302は、屈曲されながら排紙側方向へと這いまわされて、供給ユニット300(図1)からの流路と連通されている。したがって、供給チューブ302の這いまわし屈曲によって生じるチューブ曲げ弾性に起因する復元力が図2中の矢印F方向に常時作用していることになる。
【0027】
図3は、記録ヘッド100をキャリッジ71から外し、キャリッジカバー91およびヘッド固定機構80が開口した状態のキャリア部70を示している。図3に示すように、ヘッド固定レバー81の回転軸811(図4)の伸延方向に関する両端部付近には、2つのヘッド固定バネ(不図示)に押圧されたヘッド固定カム82がそれぞれ設けられている。これらのヘッド固定バネ(不図示)とヘッド固定カム82は、キャリッジカバー91の開閉に連動して遥動されるヘッド固定レバー81に伴って回転軸811を中心として移動する。
【0028】
また、ジョイント部310の記録ヘッド側には記録ヘッド100内に設けられた流路との連通を実現するための、ジョイントニードル311が設けられている。したがって、ジョイント部310の接離動作によって、このジョイントニードル311が後述する記録ヘッド100のジョイント挿入口102(図5)から挿抜されることで、供給ユニット300からのインク流路の連通または切離が行われる。
【0029】
この図3のように、キャリッジカバー91が開口し、ジョイント部310がキャリッジ71から離れる方向に移動した状態では、供給チューブ302は、キャリッジカバー91の閉塞時よりも屈曲Rの内側へ押出されることになる。したがって、図2と同様に、供給チューブ302の這いまわし屈曲によって生じる復元力が図3中の矢印F方向に作用することになる。
【0030】
次に、記録ヘッド100をキャリッジ71に着脱する際の動作についてキャリッジ71を側面から見た模式的斜視図である図4〜図6、および模式的側面図である図7〜図9を用いて説明する。図4および図7は記録ヘッド100が装着固定され、ジョイント部310が連接された状態(第1の位置に移動した状態)を示す模式図である。また、図5および図8は記録ヘッド100が装着されており、ジョイント部310は切離された状態(第2の位置に移動した状態)を示す模式図である。また、図6および図8は記録ヘッド100が開放されており、ジョイント部310が記録ヘッド100から切離された状態を示す模式図である。なお、図4〜図7はキャリア部70のみを模式的に表した図で、供給チューブ等は図示されていない。しかし、実際には供給チューブ等が図1〜図3と同様に這いまわされており、供給チューブ302の復元力が各図中の矢印F方向に作用している。
【0031】
ここでユーザーが記録ヘッド100をキャリッジ71から取り外す際の動作について説明する。記録ヘッド100が装着された状態から、図4および図7に示す矢印A1方向に、キャリッジカバー91を回転軸911を支点にして回動操作する(第1の姿勢から第2の姿勢に移行させる)。この場合、キャリッジカバー91の回動に伴って、リンク95がカバーリンク連結部913を中心に動作する。そのとき、リンク95は、ジョイントリンク連結部313を介して連結されているジョイント部310を矢印B1方向へ直線移動させる(第1の位置から第2の位置へ向けて移動させる)。ジョイント部310はキャリッジ71に設けられたガイド部711(図6)によりガイドされて、供給チューブ302の復元力Fに抗して記録ヘッド100から遠ざかる方向に直線移動する(図5および図8)。そして、ジョイント部310に設けられたジョイントニードル311が、記録ヘッド100に設けられたジョイントシールゴムにより形成されたジョイント挿入口102から抜脱することで、インク流路の連結が切り離される(図5および図8)。
【0032】
なお、記録ヘッド100が装着固定されている場合には、ジョイント挿入口102にジョイントニードル311が挿入され、ジョイントシールゴムによりシールされて連接することでインク流路が形成される。
【0033】
図5、図8の状態から、さらにキャリッジカバー91を矢印A1方向に回動させると(第2の姿勢を取るように回動させると)、前述同様に、リンク95に連結されたジョイント部310はさらに矢印B1方向移動する(第2の位置へ向けて移動する)。それと同時に、キャリッジカバー91に設けられた案内溝912に係合するボス812に操作力が伝達されて、ヘッド固定カム82を介したヘッド固定バネの押圧力を越えたところで、ヘッド固定機構80による記録ヘッド100の固定が開放される。引き続いてキャリッジカバー91の回動に連動して、ヘッド固定機構80が回転軸811を中心とする回動(遥動)によって開かれて、キャリッジカバー91が完全に開口された図6の状態となる。すなわち、キャリッジカバー91が第2の姿勢を取る。
【0034】
図9に示すように、図6に示されている状態では、第1の連結軸であるカバーリンク連結部913は、キャリッジカバー91の回転軸911と第2の連結軸であるジョイントリンク連結部313とを結ぶ直線よりも鉛直方向上方に位置する。一方、図2および図3のように、キャリッジカバー91の開閉のいずれの状態においても、ジョイント部310は供給チューブ302の復元力によって矢印F方向、すなわち、記録ヘッド100へ近づく方向(矢印B2)へと付勢されている。従って、図9に示すように、カバーリンク連結部913が上記直線よりも鉛直方向上方に位置しているときには、供給チューブ302の復元力はリンク機構を介して、キャリッジカバー91(カバーリンク連結部913)を矢印A1方向へと付勢する。換言すれば、リンク機構は、前記第2の姿勢に回転操作されたキャリッジカバー91に対して、供給チューブ302の復元力をキャリッジカバー91が第2の姿勢を維持する力として作用させるトグル機構として機能する。
【0035】
以上により、キャリッジカバー91の開口時に、キャリア部70に特別な付勢部材等を設けることがなくとも、キャリッジカバー91を図6、図9に示す開口状態(第2の姿勢)に安定して維持することができる。
【0036】
なお、上記の通り、記録ヘッド100をキャリッジ71から取り外す際には、供給チューブ302(ジョイント部310)と記録ヘッド100との連通が先行して解除され、その後にヘッド固定機構80による記録ヘッド100の固定が解除される。
【0037】
次に、ユーザーが記録ヘッド100をキャリッジ71へ装着する場合について説明する。
【0038】
まずユーザーはキャリア部70へ記録ヘッド100を投入する(図6および図9)。続いて、図6および図9に示す矢印A2方向に、キャリッジカバー91を回転軸911を中心にして回動操作する(第2の姿勢から第1の姿勢に移行させる)。すると、キャリッジカバー91の閉塞動作に連動して、ヘッド固定機構80が回転軸811を中心とする遥動によって閉塞動作を行う。このとき、ヘッド固定機構80に設けられたヘッド固定カム82が記録ヘッド100に当接し、ヘッド固定カム82を介したヘッド固定バネの押圧力によって、記録ヘッド100をキャリッジ71に押圧して位置決め固定させる。
【0039】
この間同時に、キャリッジカバー91の回動に伴ってリンク95が動作して、ジョイント部310が矢印B2方向へと直線移動する(第2の位置から第1の位置へ向けて移動する)。ジョイント部310はガイド部711(図6)によりガイドされ、記録ヘッド100に近づく方向に移動するが、ジョイントニードル311は記録ヘッド100へ接続挿入されるほどの移動はしない構成となっている(図5および図8)。
【0040】
図5、図8の状態から、キャリッジカバー91を矢印A2方向に回動させると(第1の姿勢を取るように回動させると)、ジョイント部310はさらに矢印B2方向へ直線移動する(第1の位置へ向けて移動する)。すると、ジョイント部310に設けられた位置決めガイドピン314が記録ヘッド100のガイド孔104に挿入されて位置きめが行われる。続いて、ジョイントニードル311が記録ヘッド100に形成されたジョイント挿入口102に挿入される。すなわち、記録ヘッド100をキャリッジ71に装着する際には、ヘッド固定機構80による記録ヘッド100の固定が先行して行われ、その後に供給チューブ302(ジョイント部310)と記録ヘッド100との連通が行われる。換言すれば、ジョイント部310が記録ヘッド100に直接位置決めされてからジョイントニードル311が挿入されるので、安定して確実な流路の連通が可能となる。
【0041】
以上により、ユーザーはキャリッジカバー91の回動操作のみで、記録ヘッド100の位置決め固定およびジョイント部310の連結動作を完了させることができる(図4および図7)。
【0042】
ここで、図7に示すように、同図および図4に示されている状態では、第1の連結軸であるカバーリンク連結部913は、キャリッジカバー91の回転軸911と第2の連結軸であるジョイントリンク連結部313とを結ぶ直線よりも鉛直方向下方に位置する。一方、図2および図3のように、キャリッジカバー91の開閉のいずれの状態においても、ジョイント部310は供給チューブ302の復元力によって矢印F方向、すなわち、記録ヘッド100へ近づく方向(矢印B2)へと付勢されている。従って、カバーリンク連結部913が上記直線よりも鉛直方向下方に位置しているときには、供給チューブ302の復元力はリンク機構を介して、キャリッジカバー91(カバーリンク連結部913)を矢印A1方向へと付勢する。換言すれば、リンク機構は、前記第1の姿勢に回転操作されたキャリッジカバー91に対して、供給チューブ302の復元力をキャリッジカバー91が第1の姿勢を維持する力として作用させるトグル機構として機能する。
【0043】
以上により、キャリッジカバー91の閉塞時に、キャリア部70に特別な付勢部材等を設けることがなくとも、キャリッジカバー91を図4、図7に示す閉塞状態(第1の姿勢)に安定して維持することができる。リンク機構は、第1の姿勢に回転操作された操作部材に対してチューブの復元力を操作部材が第1の姿勢を維持する力として作用させるとともに、第2の姿勢に回転操作された操作部材に対してチューブの復元力を操作部材が第2の姿勢を維持する力として作用させる。チューブの復元力によって第1の姿勢と第2の姿勢のそれぞれを維持することが好ましいが、リンク機構は少なくともいずれか一方を維持するような機構であってもよい。
【0044】
以上、図1〜9に示した一形態としてのインクジェットプリンタによれば、ユーザーが特に意識しなくても、簡単かつ安価な方法で無理なく確実に記録ヘッドをキャリッジに装着することができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、キャリッジに1つの記録ヘッドを装着する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、記録ヘッドの数に関わりなく自由に実施できる。具体的には、1個以上の記録ヘッドを用いるインクジェットプリンタの他、異なる色のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いるカラー記録用のインクジェットプリンタにも同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。また、同一色彩で異なる濃度のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いる階調記録用のインクジェットプリンタ、さらには、これらを組み合わせたインクジェットプリンタの場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。また、本発明は、複写装置、ファクシミリ装置等のプリント機能を有するプリント装置、さらにはインクジェット技術により各種デバイスを製造する製造装置、検査装置、噴霧装置等の各種インクジェット装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
71 キャリッジ
80 ヘッド固定機構
81 ヘッド固定レバー
82 ヘッド固定カム
91 キャリッジカバー
95 リンク
100 記録ヘッド
320 インクタンク(メインタンク)
302 供給チューブ
310 ジョイント部
811 回転軸
812 ボス
911 回転軸
912 案内溝
913 カバーリンク連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを着脱可能であってシートに対して往復移動するキャリッジと、インクタンクから前記記録ヘッドへのインク流路を形成する可撓性のチューブとを有し、前記チューブが前記キャリッジの往復移動に追従するインクジェット装置であって、
前記キャリッジは、
前記チューブと前記記録ヘッドとを連通させる第1の位置と前記連通を解除させる第2の位置に移動可能なジョイント部と、
前記キャリッジに対して第1の姿勢または第2の姿勢を取るように前記キャリッジに回動可能に設けられた操作部材と、
前記操作部材が前記第1の姿勢から前記第2の姿勢に回動操作されると、前記ジョイント部が前記第1の位置から前記第2の位置に移動され、前記操作部材が前記第2の姿勢から前記第1の姿勢に回動操作されると、前記ジョイント部が前記第2の位置から前記第1の位置に移動されるように、前記操作部材と前記ジョイント部とを連動させるリンク機構とを有し、
前記操作部材は、前記チューブの復元力によって、前記第1の姿勢と前記第2の姿勢の少なくともいずれか一方の姿勢を維持するように付勢されていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記第1の姿勢に回転操作された前記操作部材に対して前記チューブの復元力を該操作部材が該第1の姿勢を維持する力として作用させるとともに、前記第2の姿勢に回転操作された前記操作部材に対して前記チューブの復元力を該操作部材が該第2の姿勢を維持する力として作用させることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、一端が第1の連結軸を介して前記操作部材に回動可能に連結され、他端が第2の連結軸を介して前記ジョイント部に回動可能に連結されたリンクを有し、
前記第1の連結軸は、前記操作部材が前記第1の姿勢を取っているときには、該操作部材と前記キャリッジを連結している回転軸と前記第2の連結軸とを結ぶ直線よりも鉛直方向下方に位置し、前記操作部材が前記第2の姿勢を取っているときには、前記直線よりも鉛直方向上方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット装置。
【請求項4】
前記操作部材の動作に連動して、前記記録ヘッドを前記キャリッジに固定し、または前記記録ヘッドの前記キャリッジへの固定を解除する固定機構を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
前記操作部材の姿勢を前記第1の姿勢から前記第2の姿勢へ移行させると、前記ジョイント部の前記第1の位置から前記第2の位置への移動が先行して開始され、その後に前記固定機構による前記記録ヘッドの前記キャリッジへの固定が解除されることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット装置。
【請求項6】
前記操作部材の姿勢を前記第2の姿勢から前記第1の姿勢へ移行させると、前記固定機構による前記記録ヘッドの前記キャリッジへの固定が先行して行われ、その後に前記ジョイント部の前記第2の位置から前記第1の位置への移動が開始されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のインクジェット装置。
【請求項7】
前記固定機構は、前記キャリッジに回動可能に取り付けられるとともに、前記操作部材と係合し、該操作部材の回動と連動して前記キャリッジに対して回動する機構を有し、前記機構は、前記操作部材が前記第1の姿勢を取っているときには、前記記録ヘッドを前記キャリッジに圧接させて固定し、前記操作部材が前記第2の姿勢を取っているときには、該操作部材を介して前記チューブの復元力による付勢を受けることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−126115(P2011−126115A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286226(P2009−286226)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】