説明

インクジェット記録シート

【課題】本発明は、画像再現性及び印刷時の搬送性に優れたインクジェット記録シートを得ることを目的とする。また、記録面同士が接触して重なっている場合に、重送等の搬送不良の発生を抑えることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るインクジェット記録シートは、支持体上の少なくとも片面に、白色無機顔料とバインダーを主成分とする単一層又は多層からなる記録層を設けたインクジェット記録シートにおいて、球状アルミナ粒子を前記記録層中に片面当たり0.008〜0.300g/m含有し、且つ前記インクジェット記録シートの記録面同士のJIS P 8147:1994「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」(水平方法)に規定される静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像再現性及び印刷時における搬送性に優れたインクジェット記録シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターの飛躍的な技術進歩と低価格化によって、デジタル画像の取り扱いが極めて容易になった。それに伴って、高性能のパーソナルプリンタが開発されて広く普及し、フルカラー印刷を手軽に行なうことが可能になった。現在、パーソナルプリンタとして最も普及しているのはインクジェットプリンタであり、インクジェット方式の利点としては、多色化が容易なこと、高速印刷が可能であること、非接触型で低騒音であること、装置が小型で安価なことが挙げられる。インクジェット方式の画像形成システムでは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の各色のインクを、サーマル方式やピエゾ方式等の吐出方式によってノズルから微小な液滴として吐出し、記録媒体上に画像を形成せしめる。
【0003】
インクジェット記録用媒体に要求される特性は、例えば、インク吸収容量が大きくインク吸収速度が速いこと、発色が鮮やかで均一であること、滲みが少なく解像度が高いことである。
【0004】
上記の特性が要求されるため、インクジェット記録シートにおいては、平均粒子径数μm〜十数μm程度の合成非晶質シリカを主成分とした数μmから数十μm厚のインク受容層を支持体上に形成させる。これにより、より大きなインク吸収容量と鮮やかな発色性を実現した、いわゆるインクジェット専用紙が主流となっている。
【0005】
また、デジタルカメラに代表されるデジタル画像技術の飛躍的な進歩により、フォト画像をインクジェットプリンタによって印刷することが一般的となったが、この際には銀塩写真と同等の高級感と印刷精細感が要求されるため、表面にナノオーダーの微細顔料からなる光沢発現層を設けた、いわゆる光沢タイプインクジェット専用紙も普及しつつある。
【0006】
インクジェット記録シートにおける搬送性を改善する方法として、片面に記録層を設けたインクジェット記録シートの非記録面に適当量の滑剤を塗工して、記録面と非記録面との摩擦係数を下げる方法が従来提案されている。滑剤の種類としては、高級脂肪酸塩(例えば、特許文献1を参照。)、あるいはポリエチレンエマルジョン(例えば、特許文献2を参照。)が挙げられる。
【0007】
また、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を用いた紙において、摩擦係数が低すぎて紙がスリップし給排紙が出来なくなるという搬送トラブルを防ぐために、紙の表面にロジンエステルエマルジョンを塗布して静摩擦係数を一定以上の値に保つ方法も提案されており、類似技術として挙げられる(例えば、特許文献3を参照。)。
【0008】
バックコート層を設けて搬送性を改良する方法の一例として、インク受理層に粒子径10〜40nmのコロイダルシリカを含有せしめ、バックコート層にはガラス転移温度(Tg)が4〜30℃のラテックスを含有せしめることにより、インクジェット記録シートとプリンタのピックアップロールとの静摩擦係数、及び、インクジェット記録シートの記録面と非記録面との静摩擦係数をコントロールする方法も提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0009】
インクジェット記録シートの記録面の摩擦係数をコントロールする方法として、記録層に特定の粒子径を有する有機球状粒子を含有せしめる方法も提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【特許文献1】特開平8−337050号公報(第1−6頁)
【特許文献2】特開平10−278414号公報(第1−3頁)
【特許文献3】特開平9−11610号公報(第1−5頁)
【特許文献4】特開平6−278357号公報(第1−4頁)
【特許文献5】特開2002−292997号公報(第1−3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インク吸収容量が大きくインク吸収速度が速いこと、発色が鮮やかで均一であること、滲みが少なく解像度が高いこと等の特性を得るため、μmオーダーの粒子径を持つ合成非晶質シリカを用いたインクジェット専用紙は、記録面の摩擦係数が大きく、給紙される際に重送等の搬送トラブルを発生しやすい。また、光沢タイプインクジェット専用紙も、その記録面はマットタイプのインクジェット専用紙の記録面と違って高平滑であるが、使用する顔料によっては記録面の摩擦係数が増大し、搬送トラブルを発生することがある。
【0011】
特許文献1、2又は4で記載されている非記録面を摩擦係数のコントロール層とする方法では、次のような問題がある。記録面の摩擦係数が高い場合は、記録面と非記録面との摩擦係数を下げるために非記録面の摩擦係数を大きく下げる必要がある。そこで、非記録面の摩擦係数を大きく下げると、非記録面と接触するプリンタの搬送ロールがスリップして正常に搬送されないことがある。また、非記録面を処理したインクジェット記録シートのみを重ねてプリンタにセットした時は、非記録面による摩擦係数のコントロールは有効だが、非記録面を処理していないインクジェット記録シートと混在してプリンタにセットした時は、全く効果を発揮しないことがある。
【0012】
また、特許文献5で記載されている記録面を摩擦係数のコントロール層とする方法では有機球状粒子を使用するが、この有機球状粒子は多孔質ではないためインクの吸収性を有さず、摩擦係数を大きく下げようとして添加量を増やすと、インクジェット適性が悪化する上、塗工層から脱落する恐れがある。
【0013】
本発明は、このような従来の構成や方法が有していた問題を解決しようとするものであり、画像再現性及び印刷時の搬送性に優れたインクジェット記録シートを得ることを目的とするものである。また、片面に記録層を設けたインクジェット記録シートにおいて、一部のインクジェット記録シートが裏返されてセットされている場合又は両面に記録層を設けたインクジェット記録シートが混在してセットされている場合等の記録面同士が接触している場合に、重送等の搬送不良の発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るインクジェット記録シートは、支持体上の少なくとも片面に、白色無機顔料とバインダーを主成分とする単一層又は多層からなる記録層を設けたインクジェット記録シートにおいて、球状アルミナ粒子を前記記録層中に片面当たり0.008〜0.300g/m含有し、且つ前記インクジェット記録シートの記録面同士のJIS P 8147:1994「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」(水平方法)に規定される静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記球状アルミナ粒子の平均一次粒子径が50nm以下であることが好ましい。粒子径50nm以下の球状アルミナ粒子を記録層に均質に分布させることで、少ない添加量でも、摩擦低減効果を得ることができる。
【0016】
また、本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記球状アルミナ粒子が前記記録層の最表層に含有されていることが好ましい。前記球状アルミナ粒子を記録層の最表層に分布させることで、少ない添加量でも、摩擦低減効果を得ることができる。
【0017】
また、本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記記録層の最表層が、無機微細顔料を主成分とする光沢発現層であり、前記無機微細顔料のうち気相法アルミナ又は/及び気相法シリカの合計量が60質量%以上であることが好ましい。気相法アルミナ及び気相法シリカはインクジェット印刷適性に優れるものの、光沢発現層を形成させた場合に摩擦係数が大きくなりやすい。しかし、光沢発現層が無機微細顔料を主成分とし、その無機微細顔料のうち気相法アルミナ又は/及び気相法シリカの合計量が60質量%以上である場合は、球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が顕かなため、重送等の搬送不良を抑えることができる。
【0018】
また、本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記光沢発現層が、湿潤状態の塗工層にゲル化液を塗布したのち鏡面ロールに圧着乾燥されて形成されるゲル化法キャスト塗工方式により設けられ、前記球状アルミナ粒子が前記ゲル化液に含有されていることが好ましい。球状アルミナ粒子を記録層の極表面近くに分布させやすく、そのため、少ない添加量で摩擦低減効果を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係るインクジェット記録シートでは、前記光沢発現層が、乾燥状態の塗工層をリウエット液で再膨潤させたのち鏡面ロールに圧着乾燥されて形成されるリウエット法キャスト塗工方式により設けられ、前記球状アルミナ粒子が前記リウエット液に含有されていることが好ましい。球状アルミナ粒子を記録層の極表面近くに分布させやすく、そのため、少ない添加量で摩擦低減効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のインクジェット記録シートは、画像再現性及び印刷時の搬送性に優れる。また、片面に記録層を設けたインクジェット記録シートにおいて、一部のインクジェット記録シートが裏返されてセットされている場合又は両面に記録層を設けたインクジェット記録シートが混在してセットされている場合等の記録面同士が接触している場合に、重送等の搬送不良を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。
【0022】
本実施形態に係るインクジェット記録シートは、支持体上の少なくとも片面に、白色無機顔料とバインダーを主成分とする単一層又は多層からなる記録層を設けたインクジェット記録シートにおいて、球状アルミナ粒子を前記記録層中に片面当たり0.008〜0.300g/m含有し、且つ前記インクジェット記録シートの記録面同士のJIS P 8147:1994「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」(水平方法)に規定される静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下である。そして、本実施形態に係るインクジェット記録シートは、画像再現性及び印刷時の搬送性に優れる。
【0023】
支持体としては、例えば、酸性又は中性の上質紙や中質紙及び板紙、レジンコート紙、樹脂フィルム、不織布等の基材が挙げられる。本実施形態ではこれらの基材に限定されないが、インクジェットインクの吸収性、平滑性及び塗工液の塗工適性を具備したものを使用することが好ましい。また、支持体の製造方法についても限定されない。支持体は、例えば、長網抄造機、丸網抄造機、トップワイヤーの付いた長網抄紙機、短網抄紙機、あるいはそれらのコンビネーション抄紙機を用いて抄造することで得られる。
【0024】
記録層は、白色無機顔料、バインダー及び球状アルミナ粒子、並びに、必要に応じて添加剤を含有する塗工液を支持体の表面に塗工することで形成される。このとき、記録層には、白色無機顔料とバインダーを主成分として含有させる。塗工は、一般の塗工機を用いて行なうことができる。例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター又はチャンブレックスコーターを使用しても良い。また、オフマシンあるいはオンマシンいずれで塗工を行なっても良い。記録層は支持体上に設けられるが、支持体上に直接設けられても良いし、支持体上に設けられた下塗り層の上に設けられても良い。また、記録層は、支持体上の片面のみ若しくは両面のいずれに設けられても良く、このとき、単一層からなっていても多層からなっていても良い。また、多層としたときの各層の成分は、それぞれ同じであっても異なっても良い。各層は、インクジェット記録シートに様々な機能を付与させるために設けられ、例えばインクジェット記録シートの表面に光沢性を付与させるために記録層の層構成中の最表層に光沢発現層が設けられる。光沢発現層の詳細については後述する。支持体の両面に記録層を設ける場合は、支持体の表面への塗工と裏面への塗工を同時に行なっても良いし、別々に行なっても良い。また、多層からなる記録層を設ける場合は、塗工を複数回繰り返しても良いし、多層の同時塗工を行なっても良い。
【0025】
記録層に含有させる顔料としては、例えば、非晶質シリカ、非晶質アルミナ、カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪酸リチウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マイカ、天然ゼオライト、合成ゼオライト、擬ベーマイト、ハイドロキシアパタイト、層間化合物等の白色無機顔料や、アクリル/メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の単体又は共重合体からなる球状あるいは不定形の有機顔料がある。以上のような顔料の中でも、優れたインクジェット印刷適性を得るためには、比表面積の大きい白色無機顔料が好ましく、例えば、合成非晶質シリカや合成非晶質アルミナが好ましい。これらの顔料の製造方法については限定されない。また、これらの顔料に、カップリング剤による表面改質、有機物による表面改質、又は、金属イオン交換法、気相蒸着法若しくは液相析出法による表面処理など、多元的な機能性を付与させるための表面処理を施しても良い。また、要求される品質を得るためにこれらの顔料を2種類以上組み合わせて使用しても良い。
【0026】
記録層に含有させるバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロースやカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、澱粉、変性澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等の水溶性バインダーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−p−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体等のエマルジョン型バインダーがある。これらのバインダーの重合度、ケン化度、Tg(ガラス転移温度)又はMFT(最低造膜温度)は限定されない。また、これらのバインダーの分子鎖中に架橋性の官能基を付加しても良い。
【0027】
本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、球状アルミナ粒子を、摩擦低減剤として記録層中に含有させる。蝋系あるいはポリオレフィンエマルジョン系等の一般的な摩擦低減剤では、添加量が少ないと摩擦低減効果が低く、特にインクジェット記録シート間の静摩擦係数の低減効果が低く、大きな効果を得ようとして添加量を増やすと、本質的に疎水性であるが故にインクジェットインクの吸収性を大きく低下させてしまう。したがって、画像再現性を低下させてしまう。しかし、球状アルミナ粒子では、画像再現性を保持しつつ、摩擦低減効果を得ることができる。摩擦低減効果が得られる理由は定かではないが、摩擦低減効果は、球状アルミナ粒子を記録層の表面に均質に分布させて、記録層の上に配置されている他のインクジェット記録シートとの接触面積を減少させることにより、また、シート間に空気層を形成させることにより発現すると考えられる。また、球状アルミナ粒子は、一般的な摩擦低減剤と比較して疎水性が高くないために画像再現性を低下させにくいと考えられる。球状アルミナ粒子以外のチタニア、ジルコニア、シリカ、珪酸カルシウム等の球状無機系粒子では、画像再現性を保持しつつ摩擦低減効果を得ることが難しい。また、球状アルミナ粒子をカップリング剤による表面改質等の表面処理を行った状態で記録層中に含有させても良い。記録層中に含有させる方法はいずれの方法によっても良く、例えば、球状アルミナ粒子を塗工液に添加しても良いし、球状アルミナ粒子を含有する摩擦低減剤スラリーを塗工液に添加しても良い。摩擦低減剤スラリーは、純水等の溶剤中に球状アルミナ粒子を分散させたものであり、適宜分散剤等の添加剤を含有する。この添加剤は、乾燥等の工程中で除去されるか、記録層中に含有される。
【0028】
球状アルミナ粒子は、その平均一次粒子径が50nm以下であることが所望の摩擦低減効果を得る上で好ましく、40nm以下であることがより好ましい。同質量の球状アルミナ粒子を添加する場合に、粒子径が小さいほど粒子数が多く、記録層表面に均質に分布し、摩擦低減効果を発現するものと推測される。つまり、粒子径が50nm以下の球状アルミナ粒子を記録層に均質に分布させることで、少ない添加量でも、摩擦低減効果を得ることができる。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像から読み取り算出する。
【0029】
本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、球状アルミナ粒子を記録層中に片面当たり0.008〜0.300g/m含有させる。より好ましくは、0.100〜0.200g/m含有させる。含有量が0.008g/mより少ない場合は、摩擦低減効果が小さく、搬送性の改善効果が不十分である。また、含有量が0.300g/mを超える場合は、インクの吸収性及び発色性の悪化を招き、画像再現性が低下する。ここで球状アルミナ粒子の含有量とは、乾燥状態における、支持体上の片面の1平方メートル当たりに存在する球状アルミナ粒子の質量である。
【0030】
球状アルミナ粒子を記録層中のいずれの場所に含有させても良く、記録層中に含有させる方法についても限定されない。効率良く摩擦低減効果を得るためには、球状アルミナ粒子を記録層の最表層に含有させることが好ましい。球状アルミナ粒子を記録層の最表層に分布させることで、少ない添加量でも、摩擦低減効果を得ることができる。
【0031】
球状アルミナ粒子を記録層中の片面当たり0.008〜0.300g/m含有させても、重送等の搬送不良が発生することがある。記録層の組成や表面の平滑性等の条件によっては、十分な摩擦低減効果が得られないためと考えられる。インクジェット記録シートの記録面同士のJIS P 8147:1994「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」(水平方法)に規定される摩擦係数を測定してみると、搬送不良が発生しなかったものは静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下であるが、搬送不良が発生したものは、静摩擦係数が0.90を超えているか、又は、動摩擦係数が0.85を超えていた。そこで、本実施形態のインクジェット記録シートでは、インクジェット記録シートの記録面同士の静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下とすることとしている。これにより、重送等の搬送不良の発生が抑えられ、搬送性の改善効果が十分となる。重送には、(1)背面に配置されたインクジェット記録シートと完全に重なって給紙されることと、(2)背面に配置されたインクジェット記録シートを引きずって、その配置場所をずらしてしまうこととがある。静摩擦係数を0.90以下にすることで、(1)に示す重送の発生を抑えることができ、動摩擦係数を0.85以下にすることで、(2)に示す重送の発生を抑えることができると考えられる。記録面と非記録面との摩擦係数は、その非記録面の組成や表面の平滑性等の条件により異なるため、本実施形態のインクジェット記録シートでは、記録面のみの表面状態を評価するため、記録面同士の摩擦係数で評価することとした。また、記録面同士の摩擦係数は、記録面と非記録面との摩擦係数や非記録面同士の摩擦係数より高いことが多い。したがって、記録面同士の摩擦係数を一定値以下として記録面同士が接触している場合に重送等の搬送不良が発生しないようにすれば、インクジェット記録シートがいずれの面同士で接触している状態で印刷するときにおいても、重送等の搬送不良の発生を抑えることができる。
【0032】
本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、必要に応じて、添加剤を記録層中に含有させる。このような添加剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤がある。これらの添加剤の種類と添加量は限定されない。また、添加剤を添加する場所と方法についても限定されず、例えば、顔料スラリーに含有させても良いし、バインダーに含有させても良い。
【0033】
本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、インクジェットインクの定着性と発色性を向上させるため、カチオン性高分子を主成分とするインク定着剤を記録層中に含有させることが好ましい。これらの種類と添加量、添加する場所と方法については限定されない。
【0034】
本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、塗工後の乾燥は、いずれの方法で行なっても良く、例えば、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥によって乾燥させる。
【0035】
本実施形態に係るインクジェット記録シートでは、記録層の最表層は、光沢発現層であることが好ましい。光沢発現層は、光沢発現能のある微細顔料とバインダーを主成分とする。微細顔料としては、有機微細顔料のみあるいは無機微細顔料のみを使用しても良いし、無機微細顔料と有機微細顔料を併用しても良い。微細顔料は、無機微細顔料を主成分とすることが好ましい。バインダーについても、有機のバインダーのみあるいは無機のバインダーのみを使用しても良いし、有機のバインダーと無機のバインダーを併用しても良い。
【0036】
光沢発現能のある無機微細顔料としては、例えば、気相法シリカ、気相法アルミナ等の乾式製法による無機微粒子、コロイダルシリカ、ベーマイト、擬ベーマイト等のコロイダルシリカ、アルミナゾルに代表されるコロイド状懸濁物、ゲル化法や沈降法による非晶質シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン等の白色顔料やカオリン、タルク、珪藻土等の天然鉱物の粉砕物あるいは分級された微細粒子、あるいはこれらの無機微細顔料に表面処理を施したものがある。光沢発現能のある有機微細顔料としては、例えば、ポリスチレン、メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル共重合体、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂がある。これらは一種類のみで使用しても良いし、二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0037】
光沢発現層に用いる有機のバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、グルテン等の蛋白質、澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、ウレタン樹脂、あるいはこれらの官能基変性重合体、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化型樹脂がある。また、光沢発現層に用いる無機のバインダーとしては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸の金属塩、アルミナゾル、ポリ塩化アルミニウム、重リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛がある。
【0038】
さらに、記録層の最表層は、無機微細顔料を主成分とする光沢発現層であり、無機微細顔料のうち気相法アルミナ又は/及び気相法シリカの合計量が60質量%以上であることが好ましい。気相法アルミナ又は気相法シリカはインクジェット印刷適性に優れるものの、光沢発現層を形成させた場合に摩擦係数が大きくなりやすい。しかし、光沢発現層が無機微細顔料を主成分とし、その無機微細顔料のうち気相法アルミナ又は/及び気相法シリカの合計量が60質量%以上である場合は、球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が顕かなため、重送等の搬送性不良を抑えることができる。光沢発現層が無機微細顔料を主成分とし、その無機微細顔料のうち気相法アルミナ又は/及び気相法シリカの合計量が60質量%未満である場合は、摩擦低減効果が不十分であり、重送等の搬送性不良を抑えることが難しい。
【0039】
記録層中の光沢発現層にも、必要に応じて、前述した記録層中に含有させる添加剤を含有させても良い。
【0040】
前述したように、摩擦低減効果は、球状アルミナ粒子を記録層表面に分布させることで発現すると考えられる。よって、効率よく摩擦低減効果を得るために、光沢発現層中でも記録層の極表面近くに分布させることが好ましい。
【0041】
そのため、光沢発現層は、湿潤状態の塗工層にゲル化液を塗布したのち鏡面ロールに圧着乾燥されて形成されるゲル化法キャスト塗工方式により設けられ、このとき球状アルミナ粒子がゲル化液に含有されていることによって得られたものであることが好ましい。湿潤状態の塗工層は、微細顔料を含有した塗工液を塗工して形成される。このとき、先に形成したインク受容層が塗工層の一部となっていても良い。この塗工層が湿潤状態にあるときに、ゲル化液を塗布して塗工層をゲル化させる。ゲル化液は、湿潤状態にある塗工層をゲル化させる薬剤、即ちゲル化剤を含有している塗布液である。例えば、硼酸ナトリウムはポリビニルアルコール水溶液にゲル化剤として働き、ポリビニルアルコール水溶液をゲル化させる。本実施形態では、このゲル化液に球状アルミナ粒子を含有させる。ゲル化させた湿潤状態の塗工層を鏡面ロールに圧着乾燥させて光沢発現層とする。このようにして光沢発現層を形成することにより、球状アルミナ粒子を効率よく記録層の極表面近くに分布させることができるため、球状アルミナ粒子を効率よく摩擦低減効果に寄与させることができる。光沢発現層中の球状アルミナ粒子の濃度は、記録層の極表面近くで高く、支持体側に向かって低くなる。本実施形態に係る記録層の最表層に光沢発現層を有するインクジェット記録シートの製造方法は、無機微細顔料を含有する塗工液を支持体上若しくは支持体上に設けられた下塗り層の上に塗工して塗工層を形成する工程と、その塗工層が湿潤状態のうちに、その塗工層上に球状アルミナ粒子を含有するゲル化液を塗布する工程と、鏡面仕上げされた金属ドラムドライヤに圧着乾燥して表面を写し取る工程とを含むことが好ましい。
【0042】
また、光沢発現層が、乾燥状態の塗工層をリウエット液で再膨潤させたのち鏡面ロールに圧着乾燥されて形成されるリウエット法キャスト塗工方式により設けられ、このとき球状アルミナ粒子がリウエット液に含有されていることによって得られたものであることも好ましい。乾燥状態の塗工層は、微細顔料を含有した塗工液を塗工し、鏡面ロールに圧着乾燥させて形成される光沢発現層である。鏡面ロールに圧着乾燥させる代わりに、熱風乾燥、赤外乾燥等の方式で乾燥しても良い。そして、この塗工層にリウエット液を塗布して塗工層を再膨潤させる。リウエット液は、乾燥状態の塗工層を再膨潤させる塗布液である。例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液はリウエット液としてポリビニルアルコールを含有する塗工層を再膨潤させる。本実施形態では、このリウエット液に球状アルミナ粒子を含有させる。再膨潤させた塗工層を鏡面ロールに圧着乾燥させて再び光沢発現層とする。このように光沢発現層を形成することにより、球状アルミナ粒子を効率よく記録層の極表面近くに分布させることができるため、球状アルミナ粒子を効率よく摩擦低減効果に寄与させることができる。光沢発現層中の球状アルミナ粒子の濃度は、記録層の極表面近くで高く、支持体側に向かって低くなる。本実施形態に係る記録層の最表層に光沢発現層を有するインクジェット記録シートの製造方法は、塗工後一旦乾燥させた光沢発現層に球状アルミナ粒子を含有するリウエット剤を塗布する工程と、再膨潤した塗工層を鏡面仕上げされた金属ドラムドライヤに圧着乾燥して表面を写し取る工程とを含むことが好ましい。
【0043】
キャスト塗工方式で光沢発現層を塗設する場合には、支持体上に形成した塗工層に含有されている溶剤は、支持体を通過して金属ドラムドライヤに接触していない反対面から抜ける。そのため、支持体には透気性のある基材を用いることが好ましい。また、乾燥に使用する金属ドラムドライヤには、クロムメッキされた鏡面ロール即ちキャストドラムを使用することが好ましい。このとき、キャストドラムの表面温度は、80〜150℃が好ましい。
【0044】
また、記録層中のバインダーの含有量としては、光沢発現層ではないインク受容層については、顔料100質量部に対して10〜70質量部が適当量であり、30〜60質量部がより好ましい。10質量部より少ないと塗膜強度が不足し、70質量部を超えるとインク吸収性が低下する。光沢発現層については、顔料100質量部に対して3〜50質量部が適当量あり、10〜30質量部がより好ましい。3質量部より少ないと塗膜強度が不足し、50質量部を超えるとインク吸収性が低下する。
【0045】
記録層の塗設量は、求めるインク吸収容量やインク受容層の構成と平滑性、記録層の支持体である基材の吸液性や平滑性、光沢発現層を設ける場合には要求される光沢度と面質により異なるが、概ね乾燥塗工量で5〜30g/mである。好ましくは、10〜25g/mである。5g/mより少ない場合には、インク吸収性が低下し、30g/mを超える場合には、記録層強度が不足して、断裁時の粉落ちや折れ割れ強度の低下といった悪影響をもたらす。
【0046】
また、記録面の平滑性を制御する目的で、必要に応じてカレンダー処理を行なっても良い。カレンダー処理は、いずれの方式で行なっても良く、例えば、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、ソフトカレンダーを使用しても良い。
【0047】
また、記録面に別の機能を付与する加工を行なっても良い。例えば風合いを持たせるためにエンボス加工を行なうことも、表面の摩擦特性を損なわない限りは、本実施形態において限定されない。また片面のみに記録層を設けたインクジェット記録シートの場合は、非記録面に機能性の加工を行なっても良い。例えば、帯電防止加工、滑り性付与、樹脂ラミネートを行なっても良い。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り「乾燥質量部」及び「乾燥質量%」を示す。
【0049】
(実施例1)
<基材の作製>
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100部(カナダ標準ろ水度:CSF=500ml)のパルプスラリーに、パルプに対し、カチオン澱粉1.0部、軽質炭酸カルシウム5.0部及び中性ロジンサイズ剤0.25部を添加し調製した紙料を長網式抄紙機で抄紙し、坪量150g/mの基材を得た。
<インクジェット記録層の作製>
[インク受容層用塗工液の調製]
平均粒子径9μmの合成非晶質シリカ(商品名;サイロジェットP409、グレース ジャパン社製)100部に、純水とpH調整剤として酢酸0.2部を添加し、カウレス分散機で20%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、ポリビニルアルコール(商品名;PVA−124、クラレ社製)15部、ポリエチレン酢酸ビニル(EVA)バインダー(商品名;スミカフレックス450、住友化学社製)30部、インク定着剤(商品名;SR1001、住友化学社製)15部及び平均一次粒子径35nmの球状アルミナ粒子である摩擦低減剤を主成分として含有する摩擦低減剤スラリーA(商品名;NANOBYK−3600、BYK−Chemie社製)0.180部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.164部)を添加・攪拌し、さらに純水を添加し、固形分濃度が20%の塗工液を得た。
[インク受容層の形成]
上記の基材の片面に、得られたインク受容層用塗工液を片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤで熱風乾燥した。さらに、ソフトカレンダーを用いて、線圧30kg/cm、表面温度25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行ない、インクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.010g/m)。
【0050】
(実施例2)
基材の作製は、実施例1と同じ方法で行った。
<インクジェット記録層の作製>
[インク受容層用塗工液の調製]
平均粒子径9μmの合成非晶質シリカ(商品名;サイロジェットP409、グレース ジャパン社製)100部に、純水とpH調整剤として酢酸0.2部を添加し、カウレス分散機で20%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、ポリビニルアルコール(商品名;PVA−124、クラレ社製)15部、ポリエチレン酢酸ビニル(EVA)バインダー(商品名;スミカフレックス450、住友化学社製)30部及びインク定着剤(商品名;SR1001、住友化学社製)15部を添加・攪拌し、さらに純水を添加し、固形分濃度が20%の塗工液を得た。
[インク受容層の形成]
上記の基材の片面に、得られたインク受容層用塗工液を片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤで熱風乾燥した。さらに、ソフトカレンダーを用いて、線圧30kg/cm、表面温度25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行なった。
[光沢発現層用塗工液用シリカスラリーの調製]
気相法シリカ(商品名;アエロジル300、日本アエロジル社製)と純水とを混合してカウレス分散機で分散した後、粒子径1mmのジルコニウムビーズを充填したパールミルで粉砕し、固形分濃度15%のシリカスラリーを得た。
[光沢発現層用塗工液の調製]
上記シリカスラリー40部、アルミナスラリー(商品名;PG003、キャボット社製)60部及びポリビニルアルコール(商品名;PVA135H、クラレ社製)8部をセリエミキサーで混合した後、カチオン樹脂(商品名;パラコンPJ、大原パラジウム社製)7部、アクリルラテックス(商品名;パスコールJK−714、明成化学工業社製)10部及び離型剤(商品名;メイカテックスHP70C、明成化学工業社製)1部を加えて攪拌し、固形分濃度20%の光沢発現層用塗工液を得た。
[光沢発現層用ゲル化液の調製]
純水97.88部に、硼酸ナトリウム2部と、平均一次粒子径35nmの球状アルミナ粒子である摩擦低減剤を主成分として含有する摩擦低減剤スラリーA(商品名;NANOBYK−3600、BYK−Chemie社製)0.100部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.091部)とを加え、さらに界面活性剤(商品名;ペインタッド32、ダウコーニング社製)0.020部を添加して攪拌し、光沢発現層用ゲル化液を得た。
[光沢発現層の形成]
得られた光沢発現層用塗工液を、上記インク受容層を設けた基材に片面乾燥塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、形成された塗工層が湿潤状態にあるうちに、上記ゲル化液を絶乾付着量1.050g/m(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.045g/m)となるよう塗布してゲル化させたのち、表面温度110℃のキャストドラムに圧着乾燥してインクジェット記録シートを得た。
【0051】
(実施例3)
光沢発現層用ゲル化液の調製において、摩擦低減剤スラリーAの添加量を、0.100部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.091部)から0.020部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.018部)へ変更した以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.009g/m)。
【0052】
(実施例4)
光沢発現層用ゲル化液の調製において、摩擦低減剤スラリーAの添加量を、0.100部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.091部)から0.600部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.545部)へ変更した以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.219g/m)。
【0053】
(実施例5)
光沢発現層用塗工液の調製までは、実施例2と同じ方法で行った。
[光沢発現層用リウエット液の調製]
純水99.3部にヘキサメタリン酸ナトリウム0.4部を添加し、さらに摩擦低減剤スラリーA0.300部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.273部)を添加して攪拌し、光沢発現層用リウエット液を得た。
[光沢発現層の形成]
光沢発現層用塗工液を塗布し、エアドライヤで塗工層を乾燥させた後、上記光沢発現層用リウエット液を絶乾付着量0.140g/m(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.055g/m)となるよう塗布し、塗工層を再湿潤させたのちキャストドラムに圧着乾燥してインクジェット記録シートを得た。
【0054】
(比較例1)
インク受容層用塗工液の調製において、摩擦低減剤スラリーAを添加しなかった以外は実施例1と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0g/m)。
【0055】
(比較例2)
光沢発現層用ゲル化液の調製において、摩擦低減剤スラリーAを添加しなかった以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0g/m)。
【0056】
(比較例3)
光沢発現層用ゲル化液の調製において、摩擦低減剤スラリーAの添加量を、0.100部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.091部)から0.010部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.009部)へ変更した以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.005g/m)。
【0057】
(比較例4)
光沢発現層用ゲル化液の調製において、摩擦低減剤スラリーAの添加量を、0.100部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.091部)から1.000部(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.909部)へ変更した以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.316g/m)。
【0058】
(比較例5)
光沢発現層用リウエット液の調製において、摩擦低減剤スラリーAを添加しなかった以外は実施例5と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0g/m)。
【0059】
(比較例6)
光沢発現層用ゲル化液の調製において、摩擦低減剤含有液を、摩擦低減剤スラリーAからポリエチレンエマルジョン(商品名;SNコート289、サンノプコ社製)0.300部へ変更した以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(ポリエチレン):0.129g/m)。
【0060】
(比較例7)
光沢発現層用ゲル化液の調製において、摩擦低減剤含有液を、摩擦低減剤スラリーAから高級脂肪酸系滑り剤(商品名;ノプコセラLU−6418、サンノプコ社製)0.300部へ変更した以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(高級脂肪酸):0.129g/m)。
(比較例8)
光沢発現層の形成において、キャストドラムの表面温度を110℃から70℃へ変更した以外は実施例2と同じ方法でインクジェット記録シートを得た(摩擦低減剤(球状アルミナ粒子):0.045g/m)。
【0061】
実施例及び比較例において得られたインクジェット記録シートについて、記録層表面の摩擦係数の測定と搬送性試験及びインクジェット印刷適性の評価を行なった。評価は、得られたインクジェット記録シートを23℃−50%RHの恒温恒湿室で24時間調湿後、同環境下で、それぞれ下記の方法により行なった。評価結果は表1に示した。
【0062】
<記録層表面の摩擦係数>
得られたインクジェット記録シートの記録面同士の摩擦係数を、ストログラフ(商品名;STROGRAPH−R2、東洋精機社製)を用いてJIS P 8147:1994「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」の水平方法に準じて測定した。
【0063】
<搬送性試験>
得られたインクジェット記録シートを100mm×148mmの大きさに断裁し、市販のフルカラーインクジェットプリンタ(商品名;PM−G800、セイコーエプソン社製)を用いて、連続20枚×3回の計60枚、記録層側に印刷を行ない、「搬送不良(重送・紙詰まり等)の発生頻度(回)」を測定した。発生頻度0回を実用レベルとし、発生頻度1回以上を実用に適さないとした。
【0064】
<インクジェット印刷適性>
市販のフルカラーインクジェットプリンタ(商品名:PM−G800、セイコーエプソン社製)を用いて、得られたインクジェット記録シートの記録層側に写真画像を印刷し、画像細部の潰れや境界部の滲み、発色の鮮やかさ及びインク吸収速度を目視観察してインクジェット印刷適性を評価した。そして、下記要領によって記述した。◎…優れている、○…良い(実用レベル)、△…やや劣る(実用下限レベル)、×…劣る(実用に適さない)。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1では、球状アルミナ粒子の含有量を0.010g/mとした。球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が十分であったため、静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下となり、搬送不良が発生しなかった。また、インクジェット印刷適性は実用レベルの範囲内であった。
【0067】
実施例2、実施例3及び実施例4では、いずれも球状アルミナ粒子の含有量を0.008〜0.300g/mの範囲内とし、光沢発現層を形成した。いずれも球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が十分であったため、静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下となり、搬送不良が発生しなかった。また、いずれもインクジェット印刷適性が良好であった。
【0068】
比較例1及び比較例2では、摩擦低減剤を含有させなかったため、摩擦係数が高く搬送不良が発生した。比較例3では、球状アルミナ粒子の含有量を0.005g/mとした。球状アルミナ粒子の含有量が少なく、球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が不十分であったため、静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下とならず、搬送不良が発生した。球状アルミナ粒子の含有量が少なすぎると、インクジェット印刷適性が良好であっても、十分な搬送性改善効果が得られなかった。
【0069】
比較例4では、球状アルミナ粒子の含有量を0.316g/mとした。球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が十分であったため、静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下となり、搬送不良が発生しなかった。しかし、インクジェット印刷適性が実用に適さない場合が生じた。球状アルミナ粒子の含有量が多すぎると、搬送性が良好であっても、インクジェット印刷適性を悪化させてしまった。
【0070】
実施例2及び比較例2ではゲル化法キャスト方式により光沢発現層を形成し、実施例5及び比較例5ではリウエット法キャスト方式により光沢発現層を形成した。実施例2及び実施例5では、球状アルミナ粒子の含有量を0.008〜0.300g/mの範囲内とした。いずれも球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が十分であったため、静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下となり、搬送不良が発生しなかった。また、いずれもインクジェット印刷適性が良好であった。一方、比較例2及び比較例5では摩擦低減剤を含有させなかったため、インクジェット印刷適性が良好であっても、摩擦係数が高く搬送不良が発生した。このことから、光沢発現層の形成方法等の製造方法を問わず、球状アルミナ粒子を0.008〜0.300g/mの範囲内で含有させて、静摩擦係数及び動摩擦係数をそれぞれ一定値以下にすることで、搬送性及びインクジェット印刷適性を良好に両立させることができることがわかった。
【0071】
比較例6及び比較例7では、一般的な摩擦低減剤を使用した。一般的な摩擦低減剤の使用では、動摩擦係数の低減効果は大きかったが、静摩擦係数の低減効果が小さかったため、搬送不良が発生した。また、インクジェット印刷適性も劣っていた。一般的な摩擦低減剤では、搬送性とインクジェット印刷適性のいずれも良好なインクジェット記録シートを得ることは難しかった。
【0072】
実施例2では、表面温度110℃のキャストドラムで圧着乾燥し、比較例8では、表面温度70℃のキャストドラムで圧着乾燥して光沢発現層を形成した。いずれも、球状アルミナ粒子の含有量を0.045g/mとした。実施例2では、搬送不良が発生しなかったが、比較例8では、球状アルミナ粒子による摩擦低減効果が不十分であったために、静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下とならならず、搬送性不良が発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の少なくとも片面に、白色無機顔料とバインダーを主成分とする単一層又は多層からなる記録層を設けたインクジェット記録シートにおいて、球状アルミナ粒子を前記記録層中に片面当たり0.008〜0.300g/m含有し、且つ前記インクジェット記録シートの記録面同士のJIS P 8147:1994「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」(水平方法)に規定される静摩擦係数が0.90以下且つ動摩擦係数が0.85以下であることを特徴とするインクジェット記録シート。
【請求項2】
前記球状アルミナ粒子の平均一次粒子径が50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録シート。
【請求項3】
前記球状アルミナ粒子が前記記録層の最表層に含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録シート。
【請求項4】
前記記録層の最表層が、無機微細顔料を主成分とする光沢発現層であり、前記無機微細顔料のうち気相法アルミナ又は/及び気相法シリカの合計量が60質量%以上であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のインクジェット記録シート。
【請求項5】
前記光沢発現層が、湿潤状態の塗工層にゲル化液を塗布したのち鏡面ロールに圧着乾燥されて形成されるゲル化法キャスト塗工方式により設けられ、前記球状アルミナ粒子が前記ゲル化液に含有されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録シート。
【請求項6】
前記光沢発現層が、乾燥状態の塗工層をリウエット液で再膨潤させたのち鏡面ロールに圧着乾燥されて形成されるリウエット法キャスト塗工方式により設けられ、前記球状アルミナ粒子が前記リウエット液に含有されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録シート。


【公開番号】特開2007−98919(P2007−98919A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295529(P2005−295529)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】