インクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置
【課題】ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置を実現する。
【解決手段】個別電極配線の発熱部12と対向する面およびその両側面をバリアメタル15bで覆う。個別配線15は、当該個別配線の延在する方向と直交する断面が四角形状であり、前記個別電極配線における前記電気熱変換体と対向する上面、および該上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆う。
【解決手段】個別電極配線の発熱部12と対向する面およびその両側面をバリアメタル15bで覆う。個別配線15は、当該個別配線の延在する方向と直交する断面が四角形状であり、前記個別電極配線における前記電気熱変換体と対向する上面、および該上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、プラスチックシート、布、物品等を包含する記録媒体(以下、「紙」と称する)に対してインク、機能性液体等(以下、「インク」と称する)を吐出することにより文字、記号、画像等(以下、「画像」と称する)の記録、印刷等(以下、代表的に「記録」と称する)を行うインクジェット記録ヘッドを構成するための基体、その基体を用いて構成される記録ヘッド、およびその記録ヘッドが装着される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は記録ヘッドからインクを微小な滴として吐出口から高速で吐出することにより、高精細な画像の高速記録を行うことができるという特徴を有している。特にインクを吐出するために利用されるエネルギー発生手段として電気熱変換体を用い、この電気熱変換体が発生する熱エネルギーによって生じるインクの発泡を利用してインクを吐出する方式のインクジェット装置は、一般的に広く用いられている。このようなインクジェット記録装置は、画像の高精細性、高速記録性、記録ヘッドおよび装置の小型化やカラー化などにおいて優れ、これらの装置性能に関する市場の要求は年々大きくなっており、これに応じてインクジェット装置の各種の改良が進められている。
【0003】
インクジェット記録に使用される記録ヘッドは、基板上に複数の吐出口が形成され、その基板上には、各吐出口よりインクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換素子が各吐出口毎に設けられている。電気熱変換素子は、発熱抵抗体と、発熱抵抗体に電力を供給するための電極配線およびこれらを保護する絶縁膜を備えている。また、吐出口と繋がる各インク流路は、複数の流路壁を基板上に形成し、インク供給口が形成された天板と流路壁とが接合されることで形成される(この電気熱変換素子とインク流路とを合わせて以下ではノズルともいう)。
【0004】
各インク流路は、その吐出口と反対側の端部が共通液室と連通しており、この共通液室に不図示のインクタンクから供給されるインクが貯留される。共通液室に供給されたインクは、ここから各インク流路に導かれ、吐出口近傍でメニスカスを形成して保持される。この時、電気熱変換素子を選択的に駆動させることにより、その発生するエネルギーを利用して熱作用面上のインクを急激に加熱して膜沸騰を生じさせ、これにより発生した気泡の成長に伴う圧力によってインクを吐出させる。
【0005】
図10は、従来のインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)における基板のインク流路に相当する部分を示した図であり、図11は図10のC−C’における断面図である。また図12は、図10の状態から流路壁を除いた状態を示した図であり、図13は、図12のD−D’における断面図である。図11における記録ヘッドの基板は、シリコン基板60上に熱酸化膜からなる蓄熱層61と、蓄熱を兼ねるSiO層、SiN層などからなる絶縁層62と、発熱抵抗層と、Al,Al−Si,Al−Cu等の電極配線と、SiO膜、SiN膜等からなる保護層63と、発熱抵抗層の発熱に伴う化学的、物理的衝撃から保護層を守るための耐キャビテーション層64と、を備えている。また、その基板の表面には、発熱抵抗層65で発生した熱をインクに作用させるための発熱作用部が形成されている。ここで、発熱抵抗層65に設けられた電気熱変換素子は、共通電極配線66と個別電極配線67とに繋がっており、図10および図11に示した基板の構成では、共通電極配線66と個別電極配線67とは、同じ層に設けられている。具体的には、共通電極配線66と個別電極配線67とが基板上に交互に設けられており、電気熱変換素子同士の間に共通電極配線66が配置されている。しかし今日では、電気熱変換素子を微小化し、更に液流路を高密度化に構成することにより吐出する液滴を小さくする小ドット化が求められている。図10および図11に示した基板の構成では、電気熱変換素子の間に電極配線を配置するスペースが必要となり実装密度を高密度化する際に制約を受ける。
【0006】
特許文献1では、電極配線のリターン部分を絶縁層の下側に導電層として這わせることで高密度化を図っている。図14は、特許文献1における一実施形態のインクジェット記録ヘッドの基体の概略断面図であり、図15はその平面図を示した図である。この構成では、電極のリターン部分を絶縁層82の下側にベタ状に共通電極配線81として設けている。しかしながら、電極のリターン部分を絶縁層82の下側にベタ状に共通電極配線81として這わせた場合、絶縁層82の下側にベタ状に這わせた第1の配線層が、おのずと共通電極配線81となり、個別電極配線83が第2の配線層となる。一方、同一基板内に形成されるヒーター駆動回路に繋がる個別電極配線は第1の配線層で形成される。そのため、ヒーター80に繋がる第2の配線層の個別電極配線83とヒーター駆動回路に繋がる第1の配線層の個別電極配線とを繋ぐためには、スルーホ−ル84を介して絶縁層82を挟んで第1の配線層と第2の配線層とを繋げる必要があり高密度化の妨げとなる。そこで、電極配線のリターン部分を絶縁層82の下側に這わせる場合は、特許文献1における他の実施形態のように電極配線のリターン部分を絶縁層82の下側にベタ状の導電層ではなく電極配線として配置し、それをヒーター84の個別電極配線として用いている。
【0007】
図16は、特許文献1における他の実施形態のインクジェットヘッド基体の概略断面図を示した図であり、図17は図16の概略平面図を示した図である。また、特許文献1における他の実施形態では、下側の電極配線90の上面にバリアメタル91として高融点金属を積層させている。これは、ヒーター80の下側に設ける電極配線90において、ヒーター80の熱によるエレクトロマイグレーションにより、電極配線90を構成するアルミニウムの表面にヒロックが生じる。そのヒロックの成長でヒーター80上の発泡面に凸部が出来て、その部分にキャビテーションの力が集中し、断線が起こるのを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3311198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1における他の実施形態のように電極配線のリターン部分を絶縁層の下側に個別電極配線として這わせる構成では、絶縁層の下側の個別電極配線の上面にバリアメタルとして高融点金属を積層させることで、ヒロックの成長を抑えている。しかし、特許文献1の構成では、そのヒロックの成長によってヒーター上の発泡面に凸部が出来るのを防ぐことはできるが、個別電極配線の壁面(側面)にはバリアメタルがないため、壁面に発生するヒロックは防ぐことはできない。そのため、この壁面にヒロックが発生し、そのヒロックがさらに成長すると隣接する個別電極配線と短絡を起こしてしまう。
【0010】
よって本発明は、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため、本発明のインクジェット記録ヘッド用基体は、基板の上に設けられ、液体に熱エネルギーを供給するための電気熱変換体と、前記基板の上で前記基板と前記電気熱変換体との間に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された、断面が四角形状の個別電極配線と、前記基板の上に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された共通電極配線と、を備えたインクジェット記録ヘッド用基体において、前記個別配線は、当該個別配線の延在する方向と直交する断面が四角形状であり、前記個別電極配線における前記電気熱変換体と対向する上面、および該上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆われていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出することで記録を行うインクジェット記録ヘッドであり、前記インクジェット記録ヘッド用基体を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体に対してインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であり、前記インクジェット記録ヘッドを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクジェット記録ヘッド用基体は、個別電極配線における電気熱変換体と対向する上面、およびその上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆われている。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体を実現することができる。
【0015】
また、本発明によれば、インクジェット記録ヘッドは、上記インクジェット記録ヘッド用基体を備えている。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッドを実現することができる。
【0016】
また、本発明によれば、インクジェット記録装置は、上記インクジェット記録ヘッドを備えている。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】液体吐出ヘッドを具えた液体吐出装置の内部構造を示す正面図である。
【図2】液体吐出ヘッドを分解した状態を示す分解斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体を示した概略平面図である。
【図4】図3のインクジェット記録ヘッド用基体のA−A’における断面図である。
【図5】図3のインクジェット記録ヘッド用基体の流路壁を取り去った状態を示した図である。
【図6】図5のインクジェット記録ヘッド用基体のB−B’における断面図である。
【図7】(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。
【図8】他の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の断面図である。
【図9】(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。
【図10】従来のインクジェット記録ヘッドにおける基板のインク流路に相当する部分を示した図である。
【図11】図10のC−C’における断面図である。
【図12】図10の基板から流路壁を除いた状態を示した図である。
【図13】図12のD−D’における断面図である。
【図14】特許文献1における一実施形態のインクジェット記録ヘッドの基体の概略断面図である。
【図15】図14の平面図を示した図である。
【図16】特許文献1における他の実施形態のインクジェットヘッド基体の概略断面図を示した図である。
【図17】図16の概略平面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、液体吐出ヘッド110を具えた液体吐出装置(以下、インクジェット記録装置ともいう)111の内部構造を示す正面図である。図中の液体吐出装置111は、複数の液体吐出ヘッド110、各液体吐出ヘッド110に対応する個別の回復ユニット112、液体を収納するカートリッジ113、記録媒体搬送部114、オペレーションパネル部115、給紙部116等を備えている。なお、ここでいう液体とは、インクや画像形成に用いられる処理液等を含むものである。
【0020】
図2は、液体吐出ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)110を分解した状態を示す分解斜視図である。ヒータボード101は、セラミック製のベースプレート100によって支持されており、そのヒータボード101をベースプレート100と挟む形で配線基板102が配置されている。このヒータボード101から液体に対して熱エネルギーが供給されることで、液体が吐出される構成となっている。そして、ヒータボード101の凹部に形成されたヒーター2と配線基板102上の端子とは各々の配線に対応してワイヤボンディングにより電気的に接続されている。この記録ヘッド110から、熱エネルギーの作用によって、記録媒体に対して液体を吐出することで記録が行われる。
【0021】
図3は、本発明の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を示した概略平面図である。また、図4は、図3に示したインクジェット記録ヘッド用基体のA−A’における断面図である。なお、図3については耐キャビテーション膜および保護膜は図示していない。
【0022】
本形態のインクジェット記録ヘッド用基体10は、流路壁20によって区切られた複数のノズルが隣接して形成されたものであり、それぞれのノズルのインク流動方向前方にスルーホール11が、その後方には発熱素子(電気熱変換体)12が形成されている。発熱素子12の上には、保護膜18と、消泡によって生じるキャビテーションが、発熱素子12に及ぼす影響を抑制するための耐キャビテーション膜19が形成されている。
【0023】
発熱素子12へ接続される電極配線は、以下に説明するように配設されている。各発熱素子に接続された共通電極配線13は、ノズルのインク流動方向前方のスルーホール11を介して層間絶縁膜14の上部に配設される。また、発熱素子12の共通電極配線13が接続されている側の反対側には個別電極配線15が配設されている。断面が四角形状の個別電極配線は延在する方向と直交する断面が四角形状をなしている。尚、ここでいう延在する方向と直交する断面とは、図3に示したA−A’における断面と同じであり、断面が四角形状とは、上面および両側面を有す形状を指す。すなわち発熱素子12と個別電極配線15とは層間絶縁膜14によって絶縁されている。また、個別電極配線15は、発熱素子12と対向する面(上面)およびその側面がバリアメタル15bで覆われている。
【0024】
図5は、図3に示したインクジェット記録ヘッド用基体の流路壁を取り去った状態を示した図であり、図6は、図5に示したインクジェット記録ヘッド用基体のB−B’における断面図である。
【0025】
図7(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。以下、図7(a)から順に各行程を説明する。(a)まず、単結晶シリコンからなるシリコン基板16上に、熱酸化法、スパッタ法、CVD法などによって1.12μmの蓄熱層17を形成し、その上にスパッタリング法により膜厚1μmのAlSiからなるAlSi膜21を形成する。(b)AlSi膜21上にフォトレジスト22を被せ、フォトリソグラフィ法で個別電極配線パターンを形成する。(c)ドライエッチングにより不要なAlSiを除去し、(d)フォトレジスト22を除去することで個別電極配線15の第1の層15aを形成する。(e)引き続き個別電極配線15のバリアメタル15bを形成するために、個別電極配線の第1の層15aの表面を覆うようにスパッタリング法により膜厚0.1μmのTaからなる膜を形成する。(f)Taの膜上にフォトレジスト23を被せ、フォトリソグラフィ法により(b)で形成した個別電極配線パターンに対して、個別電極配線パターン15aの側面に形成されたTa膜の厚さ分寸法が太い個別電極配線パターンを形成し、(g)次いで異方性ドライエッチングにより、個別電極配線パターン15aの側面に形成されたTa膜を残し、蓄熱層17上のTa膜を除去する。(h)フォトレジスト23を除去することにより個別電極配線の第2の層であるバリアメタル15bを形成する。(i)その後、プラズマCVD法などによってSiOからなる膜厚0.9μmの層間絶縁層14を形成する。これにフォトリソグラフィ法によりスルーホールパターンを形成しエッチングでスルーホールを形成する(不図示)。(j)次いで、Ta−Si合金ターゲットを用い反応性スパッタリング法により、TaSiNからなる発熱抵抗層26を形成する。その上に膜厚0.4μmのAlCu膜24を形成し、(k)AlCu膜24上にフォトレジスト25を被せ、フォトリソグラフィ法を用いて共通電極配線パターンを形成する。(l)ドライエッチングにより、AlCu層と発熱抵抗層26の不用部を同時に取り除き、(m)フォトレジスト25を除去することで共通電極配線13を形成する。(n)更に、フォトリソグラフィ法により発熱素子に相当するパターンを形成し、(o)AlCu膜をエッチングし、(p)フォトレジストを除去することで発熱部12を形成する。(q)次に、保護膜18としてプラズマCVD法によってSiNから成る膜厚0.5μの絶縁体を設け、続いて耐キャビテーション層19を作るためにスパッタリング法によって膜厚0.23μmのTa膜を形成する。(r)フォトリソグラフィ法により耐キャビテーションパターンを形成し、(s)エッチングを行い、(t)フォトレジストを除去することで、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製した。
【0026】
このように形成されたインクジェット記録ヘッド用基体は、個別電極配線における第1の層15aの発熱部12と対向する面および側面がバリアメタル15bで覆われている。このバリアメタル15bは、発熱部12から伝わる熱を拡散させてその影響をやわらげ、バリアメタル15b自体は熱の影響を受けないものとして機能する。これにより、ヒロックの生成が防止或いは抑制され、個別電極配線15における第1の層15aの発熱部12と対向する面および側面に凸部が形成されることも防止或いは抑制される。これによって、発熱部12の発泡面に凸部が出来てキャビテーションの力が集中することで生じる断線や、隣接する個別電極配線が短絡することを防止することができる。なお、バリアメタル15bに用いる材料としては、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で、Ta、W、Cr、Ti、およびMoから選択された金属元素を含有する合金であればよい。
【0027】
このように、個別電極配線の発熱部と対向する面およびその両側面をバリアメタルで覆う。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置を実現することができた。
【0028】
(他の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の他の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は上記実施形態と同様であるため、ここでは特徴的な構成についてのみ説明する。
【0029】
図8は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の断面図である。本実施形態の個別電極配線30は、発熱部12と対向する面および側面だけでなく、その下面もバリアメタル30bで覆われている。これによって、発熱部12と対向する面および側面だけでなく、その下面におけるヒロックの成長も抑えることができる。
【0030】
図9(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。各工程は図7で説明した上記実施形態における各工程とほぼ同じであるが、図9(a)の工程で蓄熱層17とAlSi層21との間にバリアメタルを形成している点および図9(g)におけるドライエッチングの際に、一部のバリアメタルを取り除いた点が異なる。その他の工程は図7で説明した上記実施形態と同じ工程である。
【0031】
このように、個別電極配線の発熱部と対向する面と側面および下面をバリアメタルで覆う。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0032】
12 発熱部
13 共通電極配線
15 個別電極配線
15b バリアメタル
17 蓄熱層
18 保護膜
19 耐キャビテーション膜
110 記録ヘッド
111 インクジェット記録装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、プラスチックシート、布、物品等を包含する記録媒体(以下、「紙」と称する)に対してインク、機能性液体等(以下、「インク」と称する)を吐出することにより文字、記号、画像等(以下、「画像」と称する)の記録、印刷等(以下、代表的に「記録」と称する)を行うインクジェット記録ヘッドを構成するための基体、その基体を用いて構成される記録ヘッド、およびその記録ヘッドが装着される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置は記録ヘッドからインクを微小な滴として吐出口から高速で吐出することにより、高精細な画像の高速記録を行うことができるという特徴を有している。特にインクを吐出するために利用されるエネルギー発生手段として電気熱変換体を用い、この電気熱変換体が発生する熱エネルギーによって生じるインクの発泡を利用してインクを吐出する方式のインクジェット装置は、一般的に広く用いられている。このようなインクジェット記録装置は、画像の高精細性、高速記録性、記録ヘッドおよび装置の小型化やカラー化などにおいて優れ、これらの装置性能に関する市場の要求は年々大きくなっており、これに応じてインクジェット装置の各種の改良が進められている。
【0003】
インクジェット記録に使用される記録ヘッドは、基板上に複数の吐出口が形成され、その基板上には、各吐出口よりインクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換素子が各吐出口毎に設けられている。電気熱変換素子は、発熱抵抗体と、発熱抵抗体に電力を供給するための電極配線およびこれらを保護する絶縁膜を備えている。また、吐出口と繋がる各インク流路は、複数の流路壁を基板上に形成し、インク供給口が形成された天板と流路壁とが接合されることで形成される(この電気熱変換素子とインク流路とを合わせて以下ではノズルともいう)。
【0004】
各インク流路は、その吐出口と反対側の端部が共通液室と連通しており、この共通液室に不図示のインクタンクから供給されるインクが貯留される。共通液室に供給されたインクは、ここから各インク流路に導かれ、吐出口近傍でメニスカスを形成して保持される。この時、電気熱変換素子を選択的に駆動させることにより、その発生するエネルギーを利用して熱作用面上のインクを急激に加熱して膜沸騰を生じさせ、これにより発生した気泡の成長に伴う圧力によってインクを吐出させる。
【0005】
図10は、従来のインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)における基板のインク流路に相当する部分を示した図であり、図11は図10のC−C’における断面図である。また図12は、図10の状態から流路壁を除いた状態を示した図であり、図13は、図12のD−D’における断面図である。図11における記録ヘッドの基板は、シリコン基板60上に熱酸化膜からなる蓄熱層61と、蓄熱を兼ねるSiO層、SiN層などからなる絶縁層62と、発熱抵抗層と、Al,Al−Si,Al−Cu等の電極配線と、SiO膜、SiN膜等からなる保護層63と、発熱抵抗層の発熱に伴う化学的、物理的衝撃から保護層を守るための耐キャビテーション層64と、を備えている。また、その基板の表面には、発熱抵抗層65で発生した熱をインクに作用させるための発熱作用部が形成されている。ここで、発熱抵抗層65に設けられた電気熱変換素子は、共通電極配線66と個別電極配線67とに繋がっており、図10および図11に示した基板の構成では、共通電極配線66と個別電極配線67とは、同じ層に設けられている。具体的には、共通電極配線66と個別電極配線67とが基板上に交互に設けられており、電気熱変換素子同士の間に共通電極配線66が配置されている。しかし今日では、電気熱変換素子を微小化し、更に液流路を高密度化に構成することにより吐出する液滴を小さくする小ドット化が求められている。図10および図11に示した基板の構成では、電気熱変換素子の間に電極配線を配置するスペースが必要となり実装密度を高密度化する際に制約を受ける。
【0006】
特許文献1では、電極配線のリターン部分を絶縁層の下側に導電層として這わせることで高密度化を図っている。図14は、特許文献1における一実施形態のインクジェット記録ヘッドの基体の概略断面図であり、図15はその平面図を示した図である。この構成では、電極のリターン部分を絶縁層82の下側にベタ状に共通電極配線81として設けている。しかしながら、電極のリターン部分を絶縁層82の下側にベタ状に共通電極配線81として這わせた場合、絶縁層82の下側にベタ状に這わせた第1の配線層が、おのずと共通電極配線81となり、個別電極配線83が第2の配線層となる。一方、同一基板内に形成されるヒーター駆動回路に繋がる個別電極配線は第1の配線層で形成される。そのため、ヒーター80に繋がる第2の配線層の個別電極配線83とヒーター駆動回路に繋がる第1の配線層の個別電極配線とを繋ぐためには、スルーホ−ル84を介して絶縁層82を挟んで第1の配線層と第2の配線層とを繋げる必要があり高密度化の妨げとなる。そこで、電極配線のリターン部分を絶縁層82の下側に這わせる場合は、特許文献1における他の実施形態のように電極配線のリターン部分を絶縁層82の下側にベタ状の導電層ではなく電極配線として配置し、それをヒーター84の個別電極配線として用いている。
【0007】
図16は、特許文献1における他の実施形態のインクジェットヘッド基体の概略断面図を示した図であり、図17は図16の概略平面図を示した図である。また、特許文献1における他の実施形態では、下側の電極配線90の上面にバリアメタル91として高融点金属を積層させている。これは、ヒーター80の下側に設ける電極配線90において、ヒーター80の熱によるエレクトロマイグレーションにより、電極配線90を構成するアルミニウムの表面にヒロックが生じる。そのヒロックの成長でヒーター80上の発泡面に凸部が出来て、その部分にキャビテーションの力が集中し、断線が起こるのを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3311198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1における他の実施形態のように電極配線のリターン部分を絶縁層の下側に個別電極配線として這わせる構成では、絶縁層の下側の個別電極配線の上面にバリアメタルとして高融点金属を積層させることで、ヒロックの成長を抑えている。しかし、特許文献1の構成では、そのヒロックの成長によってヒーター上の発泡面に凸部が出来るのを防ぐことはできるが、個別電極配線の壁面(側面)にはバリアメタルがないため、壁面に発生するヒロックは防ぐことはできない。そのため、この壁面にヒロックが発生し、そのヒロックがさらに成長すると隣接する個別電極配線と短絡を起こしてしまう。
【0010】
よって本発明は、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため、本発明のインクジェット記録ヘッド用基体は、基板の上に設けられ、液体に熱エネルギーを供給するための電気熱変換体と、前記基板の上で前記基板と前記電気熱変換体との間に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された、断面が四角形状の個別電極配線と、前記基板の上に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された共通電極配線と、を備えたインクジェット記録ヘッド用基体において、前記個別配線は、当該個別配線の延在する方向と直交する断面が四角形状であり、前記個別電極配線における前記電気熱変換体と対向する上面、および該上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆われていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出することで記録を行うインクジェット記録ヘッドであり、前記インクジェット記録ヘッド用基体を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体に対してインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であり、前記インクジェット記録ヘッドを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクジェット記録ヘッド用基体は、個別電極配線における電気熱変換体と対向する上面、およびその上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆われている。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体を実現することができる。
【0015】
また、本発明によれば、インクジェット記録ヘッドは、上記インクジェット記録ヘッド用基体を備えている。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッドを実現することができる。
【0016】
また、本発明によれば、インクジェット記録装置は、上記インクジェット記録ヘッドを備えている。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】液体吐出ヘッドを具えた液体吐出装置の内部構造を示す正面図である。
【図2】液体吐出ヘッドを分解した状態を示す分解斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体を示した概略平面図である。
【図4】図3のインクジェット記録ヘッド用基体のA−A’における断面図である。
【図5】図3のインクジェット記録ヘッド用基体の流路壁を取り去った状態を示した図である。
【図6】図5のインクジェット記録ヘッド用基体のB−B’における断面図である。
【図7】(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。
【図8】他の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の断面図である。
【図9】(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。
【図10】従来のインクジェット記録ヘッドにおける基板のインク流路に相当する部分を示した図である。
【図11】図10のC−C’における断面図である。
【図12】図10の基板から流路壁を除いた状態を示した図である。
【図13】図12のD−D’における断面図である。
【図14】特許文献1における一実施形態のインクジェット記録ヘッドの基体の概略断面図である。
【図15】図14の平面図を示した図である。
【図16】特許文献1における他の実施形態のインクジェットヘッド基体の概略断面図を示した図である。
【図17】図16の概略平面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、液体吐出ヘッド110を具えた液体吐出装置(以下、インクジェット記録装置ともいう)111の内部構造を示す正面図である。図中の液体吐出装置111は、複数の液体吐出ヘッド110、各液体吐出ヘッド110に対応する個別の回復ユニット112、液体を収納するカートリッジ113、記録媒体搬送部114、オペレーションパネル部115、給紙部116等を備えている。なお、ここでいう液体とは、インクや画像形成に用いられる処理液等を含むものである。
【0020】
図2は、液体吐出ヘッド(以下、単に記録ヘッドともいう)110を分解した状態を示す分解斜視図である。ヒータボード101は、セラミック製のベースプレート100によって支持されており、そのヒータボード101をベースプレート100と挟む形で配線基板102が配置されている。このヒータボード101から液体に対して熱エネルギーが供給されることで、液体が吐出される構成となっている。そして、ヒータボード101の凹部に形成されたヒーター2と配線基板102上の端子とは各々の配線に対応してワイヤボンディングにより電気的に接続されている。この記録ヘッド110から、熱エネルギーの作用によって、記録媒体に対して液体を吐出することで記録が行われる。
【0021】
図3は、本発明の実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を示した概略平面図である。また、図4は、図3に示したインクジェット記録ヘッド用基体のA−A’における断面図である。なお、図3については耐キャビテーション膜および保護膜は図示していない。
【0022】
本形態のインクジェット記録ヘッド用基体10は、流路壁20によって区切られた複数のノズルが隣接して形成されたものであり、それぞれのノズルのインク流動方向前方にスルーホール11が、その後方には発熱素子(電気熱変換体)12が形成されている。発熱素子12の上には、保護膜18と、消泡によって生じるキャビテーションが、発熱素子12に及ぼす影響を抑制するための耐キャビテーション膜19が形成されている。
【0023】
発熱素子12へ接続される電極配線は、以下に説明するように配設されている。各発熱素子に接続された共通電極配線13は、ノズルのインク流動方向前方のスルーホール11を介して層間絶縁膜14の上部に配設される。また、発熱素子12の共通電極配線13が接続されている側の反対側には個別電極配線15が配設されている。断面が四角形状の個別電極配線は延在する方向と直交する断面が四角形状をなしている。尚、ここでいう延在する方向と直交する断面とは、図3に示したA−A’における断面と同じであり、断面が四角形状とは、上面および両側面を有す形状を指す。すなわち発熱素子12と個別電極配線15とは層間絶縁膜14によって絶縁されている。また、個別電極配線15は、発熱素子12と対向する面(上面)およびその側面がバリアメタル15bで覆われている。
【0024】
図5は、図3に示したインクジェット記録ヘッド用基体の流路壁を取り去った状態を示した図であり、図6は、図5に示したインクジェット記録ヘッド用基体のB−B’における断面図である。
【0025】
図7(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。以下、図7(a)から順に各行程を説明する。(a)まず、単結晶シリコンからなるシリコン基板16上に、熱酸化法、スパッタ法、CVD法などによって1.12μmの蓄熱層17を形成し、その上にスパッタリング法により膜厚1μmのAlSiからなるAlSi膜21を形成する。(b)AlSi膜21上にフォトレジスト22を被せ、フォトリソグラフィ法で個別電極配線パターンを形成する。(c)ドライエッチングにより不要なAlSiを除去し、(d)フォトレジスト22を除去することで個別電極配線15の第1の層15aを形成する。(e)引き続き個別電極配線15のバリアメタル15bを形成するために、個別電極配線の第1の層15aの表面を覆うようにスパッタリング法により膜厚0.1μmのTaからなる膜を形成する。(f)Taの膜上にフォトレジスト23を被せ、フォトリソグラフィ法により(b)で形成した個別電極配線パターンに対して、個別電極配線パターン15aの側面に形成されたTa膜の厚さ分寸法が太い個別電極配線パターンを形成し、(g)次いで異方性ドライエッチングにより、個別電極配線パターン15aの側面に形成されたTa膜を残し、蓄熱層17上のTa膜を除去する。(h)フォトレジスト23を除去することにより個別電極配線の第2の層であるバリアメタル15bを形成する。(i)その後、プラズマCVD法などによってSiOからなる膜厚0.9μmの層間絶縁層14を形成する。これにフォトリソグラフィ法によりスルーホールパターンを形成しエッチングでスルーホールを形成する(不図示)。(j)次いで、Ta−Si合金ターゲットを用い反応性スパッタリング法により、TaSiNからなる発熱抵抗層26を形成する。その上に膜厚0.4μmのAlCu膜24を形成し、(k)AlCu膜24上にフォトレジスト25を被せ、フォトリソグラフィ法を用いて共通電極配線パターンを形成する。(l)ドライエッチングにより、AlCu層と発熱抵抗層26の不用部を同時に取り除き、(m)フォトレジスト25を除去することで共通電極配線13を形成する。(n)更に、フォトリソグラフィ法により発熱素子に相当するパターンを形成し、(o)AlCu膜をエッチングし、(p)フォトレジストを除去することで発熱部12を形成する。(q)次に、保護膜18としてプラズマCVD法によってSiNから成る膜厚0.5μの絶縁体を設け、続いて耐キャビテーション層19を作るためにスパッタリング法によって膜厚0.23μmのTa膜を形成する。(r)フォトリソグラフィ法により耐キャビテーションパターンを形成し、(s)エッチングを行い、(t)フォトレジストを除去することで、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製した。
【0026】
このように形成されたインクジェット記録ヘッド用基体は、個別電極配線における第1の層15aの発熱部12と対向する面および側面がバリアメタル15bで覆われている。このバリアメタル15bは、発熱部12から伝わる熱を拡散させてその影響をやわらげ、バリアメタル15b自体は熱の影響を受けないものとして機能する。これにより、ヒロックの生成が防止或いは抑制され、個別電極配線15における第1の層15aの発熱部12と対向する面および側面に凸部が形成されることも防止或いは抑制される。これによって、発熱部12の発泡面に凸部が出来てキャビテーションの力が集中することで生じる断線や、隣接する個別電極配線が短絡することを防止することができる。なお、バリアメタル15bに用いる材料としては、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で、Ta、W、Cr、Ti、およびMoから選択された金属元素を含有する合金であればよい。
【0027】
このように、個別電極配線の発熱部と対向する面およびその両側面をバリアメタルで覆う。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置を実現することができた。
【0028】
(他の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の他の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は上記実施形態と同様であるため、ここでは特徴的な構成についてのみ説明する。
【0029】
図8は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体の断面図である。本実施形態の個別電極配線30は、発熱部12と対向する面および側面だけでなく、その下面もバリアメタル30bで覆われている。これによって、発熱部12と対向する面および側面だけでなく、その下面におけるヒロックの成長も抑えることができる。
【0030】
図9(a)から(t)は、本実施形態のインクジェット記録ヘッド用基体を作製する各行程を示した図である。各工程は図7で説明した上記実施形態における各工程とほぼ同じであるが、図9(a)の工程で蓄熱層17とAlSi層21との間にバリアメタルを形成している点および図9(g)におけるドライエッチングの際に、一部のバリアメタルを取り除いた点が異なる。その他の工程は図7で説明した上記実施形態と同じ工程である。
【0031】
このように、個別電極配線の発熱部と対向する面と側面および下面をバリアメタルで覆う。これによって、ヒーターの断線による寿命の短期化および隣接する個別電極配線の短絡を防止することが可能なインクジェット記録ヘッド用基体、記録ヘッドおよび記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0032】
12 発熱部
13 共通電極配線
15 個別電極配線
15b バリアメタル
17 蓄熱層
18 保護膜
19 耐キャビテーション膜
110 記録ヘッド
111 インクジェット記録装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に設けられ、液体に熱エネルギーを供給するための電気熱変換体と、前記基板の上で前記基板と前記電気熱変換体との間に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された、断面が四角形状の個別電極配線と、前記基板の上に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された共通電極配線と、を備えたインクジェット記録ヘッド用基体において、
前記個別配線は、当該個別配線の延在する方向と直交する断面が四角形状であり、
前記個別電極配線における前記電気熱変換体と対向する上面、および該上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆われていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項2】
前記個別電極配線は、該個別電極配線と前記電気熱変換体との間の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項3】
前記金属は、Ta、W、Cr、Ti、Mo、またはこれらの金属元素から選択された2またはそれ以上の金属元素からなる合金である請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項4】
前記金属はTa、W、Cr、Ti、およびMoから選択された金属元素を含有する合金である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項5】
前記基板と前記個別電極配線との間に前記金属が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項6】
インクを吐出することで記録を行うインクジェット記録ヘッドであり、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用基体を備えていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
記録媒体に対してインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であり、請求項6に記載のインクジェット記録ヘッドを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項1】
基板の上に設けられ、液体に熱エネルギーを供給するための電気熱変換体と、前記基板の上で前記基板と前記電気熱変換体との間に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された、断面が四角形状の個別電極配線と、前記基板の上に設けられ、前記電気熱変換体と電気的に接続された共通電極配線と、を備えたインクジェット記録ヘッド用基体において、
前記個別配線は、当該個別配線の延在する方向と直交する断面が四角形状であり、
前記個別電極配線における前記電気熱変換体と対向する上面、および該上面と繋がった両側面が、1気圧のもとにおける融点が摂氏1500度以上である金属で覆われていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項2】
前記個別電極配線は、該個別電極配線と前記電気熱変換体との間の絶縁膜に設けられたスルーホールを介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項3】
前記金属は、Ta、W、Cr、Ti、Mo、またはこれらの金属元素から選択された2またはそれ以上の金属元素からなる合金である請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項4】
前記金属はTa、W、Cr、Ti、およびMoから選択された金属元素を含有する合金である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項5】
前記基板と前記個別電極配線との間に前記金属が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
【請求項6】
インクを吐出することで記録を行うインクジェット記録ヘッドであり、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド用基体を備えていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
記録媒体に対してインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であり、請求項6に記載のインクジェット記録ヘッドを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−131466(P2011−131466A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292123(P2009−292123)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
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