説明

インクジェット記録体およびインクジェット記録体の製造方法

【課題】支持体が紙ベースでありながらRC支持体を用いた場合と同等の品質のインクジェット記録体を得ることを目指すものである。
【解決手段】支持体及びインク受容層を有するインクジェット記録体において、該支持体が、原紙と、顔料およびラテックスバインダーを含有する少なくとも1層の塗工層を有し、かつ該塗工層面の吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下であり、該塗工層を有する面にインク受容層を有すること特徴とするインクジェット記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方式に適用する記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から写真用インクジェット記録材料用の支持体は風合い、平滑や光沢感から、原紙の両面にポリオレフィン系樹脂層を被覆したもの(所謂レジンコート紙、以下RC支持体ともいう。)を用いるのが一般的である。RC支持体上に記録層を設けた記録体は、印字後のコックリングが生じず、光沢感が良好であるが、原紙の両面にポリオレフィン系樹脂被覆層を有するため、インク中の高沸点溶媒は蒸発することなく、記録層内に留まる。記録層内に高沸点溶媒が存在することによって、保管の際に高湿条件になると記録画像が滲み(高湿滲みともいう)やすく、大きな品質問題となっている。
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3などは、紙ベース支持体(原紙の両面にポリオレフィン系樹脂等を被覆していない支持体)を用い、キャスト法で写真用インクジェット記録体へのアプローチを行なっている。キャスト法で得られた記録体は、平滑性や光沢感に優れるが、低透気性支持体を使用する必要性から、印字後にインク中の溶媒が短時間に原紙へ浸透し、見た目のコックリングが悪く、また手触り感や風合いも写真と称する品質までには至っていない。
【0004】
キャスト法でありながら、コックリングの抑制や印字滲み改良の目的で細孔容積の小さい顔料とラテックス接着剤を含有する下塗り層を設ける試み(特許文献4)があるが、キャスト法で光沢性を付与するため、支持体の透気性が不可欠である。生産性から透気度を上げられる限界があり、RC支持体並みにコックリングを抑制することはできず、また風合いも不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−167959
【特許文献2】特開2005−199550
【特許文献3】特開2005−225070
【特許文献4】特開2007−290339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、支持体が紙ベースでありながらRC支持体を用いた場合と同等の品質のインクジェット記録体を得ることを目指すものである。本発明のインクジェット記録体は、RC支持体を用いたインクジェット記録体と同等レベルの耐コックリング性、平滑・光沢感、風合いを有し、かつRC支持体を用いた記録体特有の画像滲みを改良するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、紙ベースの支持体について研究を行なった。紙ベースの支持体の場合、RCベースの支持体に比べ、高湿滲みは良好である。これは紙ベースの支持体がインク溶媒成分を吸収し、色材成分と分離する作用によるものと考えられる。その反面、コックリングが生じやすい問題がある。コックリングは、記録時のインク溶媒がインク受容層から原紙に浸透することにより発生する。一方、高湿滲みは、記録後、時間が経過しても、インク受容層中にインク溶媒が存在することにより発生する。この相反する課題を解決するために、発明者等は、この紙ベースの支持体について鋭意研究を行なった結果、原紙に顔料及びラテックスバインダーを含有する塗工層を設け、且つその塗工層を特定の吸水度に調整することにより、達成できることを見出し、本発明に至ったのである。
【0008】
本発明は、以下の通りである。即ち、
(1)支持体及びインクジェット記録適正を有するインク受容層を有するインクジェット記録体において、該支持体が、原紙と、顔料およびラテックスバインダーを含有する少なくとも1層の塗工層を有し、かつ該塗工層面の吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下であり、該塗工層を有する面にインク受容層を有すること特徴とするインクジェット記録体。
【0009】
(2)インク受容層が、平均粒子径700nm以下である無機微粒子を主成分とし、接着剤としてポリビニルアルコールを含有する層である(1)記載のインクジェット記録体。
インク受容層は、更にポリビニルアルコールに対して架橋性を有する材料を含んでいることが好ましい。
【0010】
(3)塗工層が2層以上有する(1)又は(2)記載のインクジェット記録体。
2層以上有する塗工層のうち、1層が、バリア層であることが好ましい。
バリア層の顔料/バインダーの比率は、20〜250/100であることが好ましく、40〜230/100であることがより好ましく、70〜200/100であることがさらに好ましい。
【0011】
(4)下記測定条件で測定した伸び率が、0.05%以下である(1)〜(3)のいずれか一に記載のインクジェット記録体。
「測定条件」
温度23℃、湿度50%の条件で調湿した、A4判のインクジェット記録体に、横18cm×縦5cmのグリーンベタ印字を行い、温度23℃、湿度50%の環境下で、印字2分後の横の長さ(Lcm)を測定し、下記式で伸び率を算出する。
伸び率(%)=(L−18)×100/L
前記伸び率が、0.03%以下であることが好ましい。前記伸び率が、0.01%以下であることが更に好ましい。
【0012】
(5)原紙上に、塗工層面の吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下となるように、顔料およびラテックスバインダーを含有する少なくとも1層の塗工層を形成して支持体を得、該塗工層上にインク受容層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
(6)塗工層上に、少なくともポリビニルアルコールに対して架橋性を有する材料を含有する下塗り塗液と、平均粒子径700nm以下である無機微粒子を主成分とし、接着剤としてポリビニルアルコールを含有するインク受容層用塗液を塗工することによりインク受容層を形成する(5)記載のインクジェット記録体の製造方法。
架橋性を有する材料の塗工量が0.1g/m以上であることが好ましい。架橋性を有する材料がホウ酸および/またはホウ酸塩であることが好ましい。
【0013】
(7)該下塗り塗液が、顔料及びラテックスバインダーを含有する(6)記載のインクジェット記録体の製造方法。
下塗り層の顔料は炭酸カルシウム、カオリンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインクジェット記録体は、RC支持体にインク受容層を設けてなる記録体に近いコックリング抑制適性、及び表面光沢感を有する。更に、RC支持体を用いた記録体特有の課題であった高湿滲みをも防止したものである。つまり、RC支持体と紙支持体の長所を備え、短所を克服したインクジェット記録体である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔支持体〕
本発明のインクジェット記録体に用いる支持体は、原紙と、顔料およびラテックスバインダーを含有する少なくとも1層の塗工層を有する構成である。そして該塗工層面の吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下である必要がある。該吸水度が0.1g/m未満であると、支持体のバリア性が高すぎると、耐湿にじみが起こりやすくなる。吸水度が5g/mを超えると、バリア性が不十分であると、コックリングを防ぐことができない。このような吸水度を示す支持体としては、原紙の選択、塗工層の配合、塗工量、塗工層の積層方法などを調製することができる。
【0016】
「支持体の原紙」
原紙としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。一般に、木材パルプと必要に応じ含有する填料を主成分として構成される。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができ、これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS P8121)程度である。300〜500ml程度に調整することが好ましい。
【0017】
填料は、不透明性等を付与する目的で配合し、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、白土、タルク、酸化チタン、珪藻土、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、製紙工場の排水(製紙スラッジや脱墨フロス)などを乾燥、焼成、粉砕することにより得られた凝集物も使用することができる。特に炭酸カルシウムは、白色度が高い基材となり、インクジェット記録体の光沢感が高まるので好ましい。紙基材中の填料の含有率(灰分)は1〜30%程度が好ましいが、多すぎると紙力が弱くなったりする傾向にあるので、好ましい填料の含有率は5〜20%である。なお、焼成カオリンやシリカも適宜含有するとよい。
【0018】
その他、原紙には、助剤としてサイズ剤、乾燥および湿潤紙力増強剤、定着剤のほか、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、コッブ吸水度等を調整できる。
【0019】
前記サイズ剤としては、例えば、脂肪酸塩、ロジン、マレイン化ロジン等のロジン誘導体、パラフィンワックス、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、エポキシ化脂肪酸アミド等の高級脂肪酸を含有する化合物等が挙げられる。前記乾燥紙力増強剤としては、例えば、カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアミド、アニオン化ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。前記湿潤紙力増強剤としては、例えば、ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂等が挙げられる。前記定着剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の多価金属塩、カチオン化澱粉等のカチオン性ポリマー等が挙げられる。
【0020】
前記原紙の密度は、0.6〜1.2g/cmの範囲であり、RC支持体の有する風合いを出すためには0.7〜1.0g/cmが好ましく、0.80〜0.95g/cmがより好ましい。前記原紙の厚みは、特に制限はなく、通常50〜500μmである。紙腰、剛度から100〜300μmが好ましく、150〜250μmがより好ましい。前記原紙の坪量は、特に制限はなく50〜300g/mが好ましく、剛度とのバランスや重量感から100〜250g/mがより好ましい。
【0021】
「支持体の塗工層」
支持体の、インク受容層を設ける側の面に有する塗工層は、顔料及びラテックスバインダーを含有する層であり、その塗工層面が、特定範囲のバリア性、すなわち、吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下であれば、特に塗工層について限定するものではない。
顔料を含有せしめることにより、原紙由来の面質を抑え、最終的に得られる記録体表面の光沢性を上げることができる。ラテックスバインダーを用いることにより、耐水性を付与することができる。耐水性が優れることにより、インク受容層用塗液が積層された際、面質を損なうことなく、インク受容層を形成することができる。塗工層は、塗布後にカレンダーなどによる平滑処理を行われることが好ましい。平滑な塗工層表面に、インク受容層を積層することにより、光沢感が向上する。
【0022】
本発明で規定するJIS P8140のコッブ法(接触時間30秒)の吸水度が、0.1g/m以上5g/m以下とするためには、塗工層として、バリア性の高い塗工層(以下、バリア層ともいう)を有することが好ましい。例えば、顔料に対するラテックスバインダーの配合量を多くすることにより、成膜性が高くなり、バリア性の高い層とすることができる。しかし、かかる層は、ブロッキングの虞があるため、バリア層よりも顔料の比率が高い塗工層(以下、上塗工層ともいう)をバリア層上に設けることがより好ましい。また、原紙にバリア層を直接設けると、原紙由来の面質が出やすくなるため、原紙とバリア層の間に、原紙由来の面質を緩和するために、バリア層よりも顔料の比率が高い塗工層(以下、下塗工層ともいう)を設けることが好ましい。本発明の塗工層は、2層以上形成する構成がより好ましい。
市販されている印刷用塗工紙は、原紙に顔料及びラテックスバインダーを有する塗工層が形成されたものであるが、バリア性は不足し、本発明で規定する吸水度を満足しない。しかし、市販の印刷用塗工紙の塗工層面に、更に顔料及びラテックスバインダーを含有する塗工層を形成することにより、規定する吸水度を満足すれば、それを支持体として使用することができる。
【0023】
(顔料)
塗工層を形成する顔料としては、印刷用塗工紙などで使用できる公知の顔料が例示できる。例えば、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、プラスチックピグメントなどが例示できる。これらは、複数種を併用することもできる。顔料の粒子径は、特に限定しないが10μm以下が好ましい。さらに好ましくは5μm以下である。1.5μm以下が最も好ましい。粒子径は小さい方がバリア性の発現しやすく、またインク受容層塗布後の平滑性や光沢感がよくなる傾向を示す。一般市販品であれば平均粒子径は0.1μmよりは大きいことが普通であるので、経済合理性からも0.1μm以上とすることが好ましい。これらの顔料を単独で用いるかまたは併用することが可能である。中でも、特に、炭酸カルシウム、カオリン、サチンホワイトは、コックリングを抑制する適性に優れ、白色度の高い塗布層が得られやすいので好ましい。中でも
炭酸カルシウム、カオリンが好ましい。なお、インクジェット記録体のインク受容層用として好ましい材料である、無定形シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、ゼオライトなど吸水性に富んだ顔料や微細な顔料を50%以下併用してもよい。
【0024】
バリア層の顔料は前述の顔料を適宜選択使用できるが、平滑性が得られやすいため、特に炭酸カルシウム、カオリンが好ましい。より高平滑性を得るためには、炭酸カルシウムの平均粒径は0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。カオリンについては90%以上の粒子が2μm以下の粒径であることが好ましく、95%以上の粒子が2μm以下であれば更に好ましい。一般的にカオリンは白色度が低いため、白色度は88%以上を選択することが好ましく、90%以上がより好ましい。また、見た目をRC支持体の記録体に近づけるために酸化チタンを含有することもできる。含有量は全顔料の1〜20%程度、好ましくは2〜10%である。最終的に得られる記録体の平滑性を損なわないためには、酸化チタンの平均粒径は0.01〜2μmの範囲が好ましく、0.02〜1μmの範囲がより好ましい。また、コロイダルシリカは、一次粒子であるため吸収性は低く、接着性を高める作用を有するので、使用することができる。なお、インクジェット記録体の受容層としてよく使用される湿式シリカ、乾式シリカ、アルミナ水和物、酸化アルミナなどは、吸水性が高いため、バリア性を損なう傾向にあり、使用する場合は本発明の効果を損なわない範囲にとどめる必要がある。
【0025】
(ラテックスバインダー)
塗工層を形成するラテックスバインダーは、印刷用塗工紙などで使用できる公知の水分散性ラテックス(所謂、水分散性樹脂)を用いることができる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、スチレン系共重合体ラテックス、(ポリ)ウレタン系重合体ラテックス等のような各種バインダーが、単独にあるいは2種以上混合して使用される。水分散性ラテックスがコックリング抑制効果に優れるため、結着剤の主成分として使用される。特にスチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、(ポリ)ウレタン系重合体エマルションは、結着力や保存性の点で良好である。また、結着剤のガラス転移温度は特に限定はないが、ガラス転移温度の低い結着剤は平滑性が得られやすく、バリア性も発現しやすいため好ましい。ガラス転移温度が−40〜+40℃程度のものが好ましく、−30〜+30℃がさらに好ましい。最も好ましい範囲は−20〜+20℃である。なお、結着力アップや塗工適性改良などから、水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質類、デンプン、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロースなどのセルロース誘導体)を顔料100部に対して20部以下を配合することが可能である。
【0026】
バリア層のバインダーは前述のバンインダーを適宜選択使用できるが、塗料の安定性及び最終的なインクジェット記録シートの折り割れを防止する観点から、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックスなどの水分散性高分子はとりわけ好ましく用いられる。さらに該水分散性高分子のガラス転移温度は−50〜50℃であることが好ましく、−30〜30℃であることがより好ましい。
【0027】
バリア層の顔料/バインダーの比率(以下P/B比と称す)は、特定範囲のバリア性、すなわち、吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下を得るために、20〜250/100、より好ましくは40〜230/100、さらに好ましくは70〜200/100である。顔料の配合量が少なく、吸水度が0.1g/m未満となると、記録後、時間が経過しても溶媒成分が支持体へ浸透せずインク受容層に残るため、画像の高湿滲みが悪化する虞がある。一方、顔料の配合量が多く、吸水度が5g/mを超えると、バリア性が不十分となり、コックリングが生じやすくなる。本発明では特定範囲の吸水度に調整することにより、RC支持体に近いレベルまでコックリング抑止でき、且つRC支持体では解決できなかった記録後の画像の高湿滲みをも改良することができる。
【0028】
バリア層以外の塗工層(下塗工層、上塗工層)を設ける場合は、塗工層の顔料/バインダーの比率(以下P/B比と称す)は、原紙由来のボコツキを抑えるには、好ましくは100/5〜100/100、さらに好ましくは100/10〜100/50である。P/B比が100/5より顔料成分が多いと塗膜強度が弱くなり、紙粉が出やすく、塗膜剥がれが発生する虞がある。一方、100/100よりバインダー成分が多いとブロッキングの虞がある。
【0029】
支持体の塗工層の総塗工量は、特に制限はないが、10〜70g/m程度である。20〜55g/mが好ましい。10g/mより少ないと原紙由来のボコツキが抑えられず、70g/mより多いと平滑性を得るための効果が飽和し、生産性、経済性が低下する。
バリア層の塗布量は、特定範囲のバリア性、すなわち、吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下が得られる範囲であれば特に制限はないが、前記総塗工量のうち、1〜20g/m程度である。2〜15g/mが好ましく、より好ましくは3〜10g/mである。塗工量が過剰によって吸水度が0.1g/m未満となると、画像の高湿滲みが悪化する虞がある。一方、塗工量不足によって吸水度が5g/mを超えると、バリア性が不十分となり、コックリングが生じやすくなる。
【0030】
塗工層は塗布乾燥後に平滑化処理されることが好ましい。本発明の支持体表面の王研式
平滑度(J.TAPPI No.5B)の測定値は2000秒以上が好ましく、5000秒以上がより好ましい。平滑処理の方法は特に限定しないが、例えば、カレンダー処理、キャストコート処理などが挙げられるが、カレンダー処理がより好ましい。塗工面がカレンダーロール金属面と接するようにカレンダー処理することが最も好ましい形態の一つである。カレンダー圧(線圧)は50〜400Kg/cmが好ましく、100〜300Kg/cmはさらに好ましく、150〜250Kg/cmは最も好ましい範囲である。カレンダー圧が低すぎると平滑性が得られにくく、高すぎると塗工面がカレンダーロールに貼り付く虞がある。より高い平滑性を得るためには、カレンダー直前の支持体の紙面温度は20〜90℃、より好ましくは30〜50℃の範囲にすると良い。紙面温度が低すぎるとラテックスが軟化しにくく、平滑化の効果が得にくい。一方、紙面温度が高すぎると、カレンダーロールに貼り付く問題が生じる虞がある。前記カレンダー金属ロールの表面温度は、5℃〜60℃が好ましく、10℃〜45℃がより好ましい。その他、カレンダー処理速度は100〜1200m/minの範囲が好ましく、200〜700m/minがより好ましい。カレンダー速度が遅いとカレンダーロールに貼りつきやすく、塗工層が剥がれる虞があるが、速すぎると平滑化の効果が低下する。
【0031】
(その他の材料)
支持体のバリア層、およびバリア層以外の塗工層において、他の成分として、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、蛍光染料、着色剤、紫外線吸収剤等の各種助剤が適宜添加される。特に見かけの白色度を上げるために、着色剤(蛍光増白剤、有色顔料、染料等)を配合することができる。
【0032】
(塗工方法)
支持体の塗工層(バリア層、上塗工層、下塗工層)は、公知の塗工方法により塗工できる。例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、スライドビード、スライドホッパー、およびスロットダイなどのダイコーター等、各種公知の塗工装置が選択できる。平滑性と生産性を高めるためには、ブレードコーターが最適である。
【0033】
「裏面層」
本発明の支持体は、製品カール、搬送性、手触り、風合い調整などから裏面層を有することが好ましい。裏面層は、顔料/バインダーから構成される塗布層、樹脂塗布層などの一般塗布層や樹脂のラミネート層により構成される。中でも顔料/ラテックスバインダーを主成分とする塗布層が特に好ましい。裏面層を構成する顔料やバインダーは上述したものから適宜選ばれる。手触り、風合いをよりRC支持体を使用したインクジェット記録体に近づけるために、発明者らが鋭意に検討した結果、顔料はカオリン、クレー、炭酸カルシウム、バインダーはラテックスを主成分にした方がより効果的である。カール、ブロッキング、搬送性、手触り、風合いを考慮すると、P/B比は100/5〜100/100程度である。100/10〜100/60がより好ましい。塗布量は2〜40g/m程度、5〜30g/mがより好ましく、10〜25g/mが最も好ましい範囲である。
例えば、裏面層は本発明の支持体の塗工層塗布液を使うことができる。また、裏面は、搬送性向上処理、帯電防止処理、ブロッキング防止処理のために、帯電防止剤やブロッキング防止剤などで更に、処理してもよい。該処理は、インク受容層を形成する前でも後でも可能である。
【0034】
〔インク受容層〕
インク受容層は、インクジェット記録適性を有する層であれば特に限定するものではない。インク受容層は、2層以上により形成されていてもよい。例えば、支持体側に、主としてインク中の溶媒成分を吸収する吸収層、表面側にインク中の着色成分を保持するための受理層というように、層ごとに機能分離して構成することができる。また、光沢性を付与するための光沢発現層を最表層に積層することもできる。
【0035】
インク受容層を、平均粒子径700nm以下である無機微粒子を主成分として形成すると、光沢感の高い記録体となるので好ましい。この場合、製造時(特にインク受容層を塗工、乾燥する際)にひび割れを生じやすいが、インク受容層の接着剤としてポリビニルアルコールを用い、該ポリビニルアルコールに対して架橋性を有する材料(以下、架橋剤ともいう)を併用すると、インク受容層のひび割れを抑止することができる。
【0036】
「下塗り塗液」
架橋剤は、インク受容層用塗液に配合してもよいが、塗液が高粘度となり易く、製造条件が厳しくなるが、架橋剤を含有する下塗り塗液を塗布後、インク受容層用塗液を塗布すると、下塗り塗液に配合した架橋剤がインク受容層用塗液中のポリビニルアルコールと架橋するため、厳しい製造条件を採用することなく、ひび割れを抑制することができる。
該下塗り塗液には、顔料や接着剤を配合することができる。この場合、支持体とインク受容層の間に顔料塗工層(以下、下塗り層ともいう)が形成される。本発明は、下塗り層を有する態様も含まれるものであり、本発明で規定する吸水度は、インク受容層(下塗り層がある場合は下塗り層)を塗工する前の、塗工する面の測定値である。
【0037】
下塗り塗液は、インク受容層に対するひび割れ防止のため、少なくともインク受容層に含有するポリビニルアルコールに対して架橋性を有する材料(架橋剤)を含有するものである。本発明では、特に、支持体がバリア性を有するため、架橋剤の支持体への染込みを抑えることができ、最小限の架橋剤で効率よくインク受容層を設けることができる。
【0038】
(架橋剤)
架橋剤としては、インク受容層塗液に接着剤として含有されるポリビニルアルコールに対して架橋性を有するものであれば、特に限定するものではないが、例えば、ホウ素化合物、エポキシ化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、チタネート化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等が挙げられる。これら架橋剤の中でも、ポリビニルアルコールと組み合わせた場合に、増粘またはゲル化の進行が速いことから、ホウ素化合物が好ましく、ホウ酸および/またはホウ酸塩がより好ましく用いられる。
ホウ酸としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸等が挙げられる。またホウ酸塩としては、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが好ましい。四ホウ酸二ナトリウム(組成:Na)は、ホウ砂(ナトリウムの含水ホウ酸塩鉱物、組成:N2B・10HO)として使用される。
また、これらの架橋剤は、インク受容層に対するひび割れ防止、折り割れ防止の効果、その他の性能に応じて二種以上を併用することもできる。特にホウ酸とホウ砂を混合することにより高濃度溶解が可能となるため、併用することが好ましい。
【0039】
架橋剤の塗工量は固形分換算で0.1g/m以上になるように調整することが好ましい。0.1g/m未満であると、インク受容層中のポリビニルアルコールの架橋が不十分となり、塗膜にヒビワレが生じやすくなる。
【0040】
「下塗り層」
下塗り塗液は、架橋剤の水溶液であっても、架橋剤の他に顔料およびバインダーを含有する塗液であってもよいが、後者の顔料及びバインダーを含有する塗液の場合、下塗り層が形成され、面質が更に向上し、最終的に得られる記録体表面の光沢性を上げることができるので好ましい。
【0041】
(顔料)
下塗り層に使用できる顔料としては、前述の支持体の塗工層で例示した顔料を適宜選択使用でき、これらは、複数種を併用することもできる。平滑性が得られやすいため、特に炭酸カルシウム、カオリンが好ましい。より高平滑性を得るためには、炭酸カルシウムの平均粒径は0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。カオリンについては90%以上の粒子が2μm以下の粒径であることが好ましく、95%以上の粒子が2μm以下であれば更に好ましい。一般的にカオリンは白色度が低いため、白色度は88%以上を選択することが好ましく、90%以上がより好ましい。また、見た目をRC支持体の記録体に近づけるために酸化チタンを含有することもできる。含有量は全顔料の1〜20%程度、好ましくは2〜10%である。最終的に得られる記録体の平滑性を損なわないためには、酸化チタンの平均粒径は0.01〜2μmの範囲が好ましく、0.02〜1μmの範囲がより好ましい。
なお、インクジェット記録体のインク受容層用として好ましい材料である、無定形シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、ゼオライトなど吸水性に富んだ顔料や微細な顔料を併用してもよい。また、コロイダルシリカは、一次粒子であるため吸収性は低いが、接着性を高める作用を目的として使用することができる。
【0042】
(バインダー)
下塗り層のバインダーとしては前述の支持体の塗工層で例示のバインダーを適宜選択使用できる。塗料の安定性及び最終的なインクジェット記録シートの折り割れを防止する観点から、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックスなどの水分散性高分子はとりわけ好ましく用いられる。
【0043】
下塗り層の顔料/バインダーの比率(以下P/B比と称す)は、原紙由来のボコツキを抑えるには、好ましくは100/5〜100/100、さらに好ましくは100/10〜100/50である。P/B比が100/5より顔料成分が多いと塗膜強度が弱くなり、紙粉が出やすく、塗膜剥がれが発生する虞がある。一方、100/100よりバインダー成分が多いと、架橋剤成分を隠蔽してしまい、架橋効果が低下する傾向がある。
【0044】
「インク受容層」
インク受容層は、インクジェット記録適性を有する層であれば特に限定するものではなく、公知の各インク受容層が使用できる。無機顔料と結着剤と媒染剤を含有する層がその代表例である。
(無機微粒子)
本発明では、インク受容層の無機顔料として、平均粒子径700nm以下である無機微粒子を主成分として形成すると、光沢性、表面平滑性、インク吸収性が優れるため好ましい。この様な無機微粒子としては、例えば、気相法シリカ、メソポーラスシリカ、湿式法シリカ、アルミナ酸化物、アルミナ水和物、アルミナシリケートを挙げられるが、中でも高画質を得るためには、気相法シリカ、アルミナ水和物、酸化アルミナが最も好ましい。無機微粒子は、後で述べる無機媒染剤や有機媒染剤で表面処理を施していてもよい。また、凝集し、平均粒子径が700nmを超える場合は、粉砕処理や分散処理を施すとよい。ここでいう平均粒子径は、無機微粒子の水分散液を、濃度1%に調整し、25℃の条件で、動的光散乱法により求めた数平均二次粒子径である。
【0045】
(結着剤)
インク受容層に用いる結着剤としては、インク受容層として公知の結着剤が使用できるが、顔料として上記無機微粒子を用いる場合、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。ポリビニルアルコールは、前記下塗り塗液に含有される架橋剤により架橋される水溶性樹脂であり、例えば、完全鹸化ポリビニルアルコール樹脂、不完全鹸化ポリビニルアルコール樹脂、低鹸化ポリビニルアルコール樹脂に加え、カチオン変性ポリビニルアルコール樹脂、シリル変性ポリビニルアルコール樹脂、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール樹脂、カルボキシ変性ポリビニルアルコール樹脂などの変性ポリビニルアルコール樹脂類から一種以上を適宜選択使用できる。
【0046】
インク受容層に用いられるポリビニルアルコールの重合度としては3000〜5000であることが好ましい。重合度が3000未満では、得られるインク受容層の耐水性が不充分になる傾向にあり、5000を超えるものは、溶液あるいは塗料に対してせん断力が加えられると樹脂分子の結晶化が引き起こされ易くなり、取り扱い性低下の懸念があり、また実用上も入手が困難である。
【0047】
インク受容層中に使用されるポリビニルアルコールの配合比は、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部の範囲で適宜調節される。
また、インク受容層中のポリビニルアルコールと下塗り塗液中の架橋剤との比率としては、質量比として好ましくは、20:1〜1:5であり、5:1〜1:1がより好ましい。質量比をこの範囲に調節することにより、ひび割れ及び折れ割れを防止するとともに、インク吸収性及び画質・光沢により優れ、経時による印字の滲みも改善されたインクジェット記録用シートが得られる。
【0048】
インク受容層は、塗料の安定性が得られる範囲内で、前記下塗り塗液で記載された架橋剤を含むことができる。必要に応じて、架橋剤を下塗り塗液とインク受容層で併用することによって、インク吸収層塗工時のヒビワレが制御しやすくなる。架橋剤としては前述のホウ素化合物が好ましい。
【0049】
なお、架橋剤を含有する下塗り塗液を用いず、インク受容層用塗液に架橋剤を配合することもできる。この場合、塗液粘度が上昇し、無機微粒子の比較的大きい凝集物が生じたりするが、ポリビニルアルコールの種類、微細顔料の種類、塗液の濃度、塗液の温度、粉砕、分散処理などを調製することにより、塗工することが可能であり、本発明の形態の一つである。
【0050】
〔媒染剤〕
本発明においては、形成画像の耐水性及び耐経時滲みの向上を図るために、インク受容層に媒染剤が含有されるのが好ましい。媒染剤は、有機媒染剤と無機媒染剤が挙げられる。有機媒染剤及び無機媒染剤はそれぞれ単独種で使用しても良いし、有機媒染剤及び無機媒染剤を併用してもよい。
【0051】
有機媒染剤は、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤や、アミノ基含有のシランカップリング剤などが挙げられる。これら媒染剤は、色材受容層のインク吸収性良化の観点から、平均分子量が500〜500000の化合物が好ましい。無機媒染剤としては、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属の塩又は錯体が挙げられる。中でも、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、元素周期律表第IIIB族シリーズの金属化合物(塩又は錯体)が好ましい。なお、無機微粒子の表面をこれら媒染剤で被覆処理を施して使用することも可能である。
【0052】
媒染剤含有量は、インク受容層の全固形分質量に対して、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。
【0053】
〔光沢発現層〕
高光沢を得るためには、微細な単分散コロイド顔料や2次凝集体コロイド顔料から選択され、単独で又は2種以上混合した顔料を主成分とする光沢発現層をインク受容層上に設けることが可能である。単分散コロイド顔料の平均粒子径は0.01〜0.2μm、吸収性と透明性のバランスから、0.02〜0.1μmが好ましい範囲である。2次凝集体コロイド顔料は平均粒径1μm以下のアルミナ酸化物、アルミナ水和物が好ましい。高光沢を得るためには、平均粒径が0.02〜0.5μmの範囲がより好ましい。光沢発現層の形成方法は、特に限定するものではないが、例えばWO2003−039881号公報に記載された、「光沢発現層をインク受容層上に設けた後、湿潤状態で鏡面を有するニップロールに通過させる方法」や特開2004−306610号公報に記載された「光沢発現層とインク受容層は同時多層塗布により形成する方法」等が有効である。
【0054】
〔その他の成分〕
前記インク受容層、光沢発現層には、必要に応じて、更に各種の公知の添加剤、例えば、酸、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、モノマー、重合開始剤、重合禁止剤、滲み防止剤、防腐剤、粘度安定剤、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、マット剤、カール防止剤、耐水化剤等を含有することが可能である。
【0055】
〔塗工方法〕
インク受容層の塗工には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーター、ダイコーター、スライドコーター等の各種塗工装置を用いることができる。多層のインク受容層やインク受容層と光沢発現層など多層構成の場合は多層式スライドコーター、多層式カーテンコーター、多層式ダイコーターを用いると効果的である。
【0056】
塗工層の表面がバリア層である場合、インク受容層を塗工する際はオンラインで行なうことができる。バリア層はバインダー成分が多いため、インク受容層塗工せずに巻き取るとブロッキングが生じやすい。
【0057】
本発明のインクジェット記録体は、下記条件で測定した伸び率が、0.05%以下であることが好ましい。
「測定条件」
温度23℃、湿度50%の条件で調湿した、A4判のインクジェット記録体に、横18cm×縦5cmのグリーンベタ印字を行い、温度23℃、湿度50%の環境下で、印字2分後の横の長さ(Lcm)を測定し、下記式で伸び率を算出する。
伸び率=(L−18)×100/L
【0058】
伸び率が0.05%以下であると、バリア層がコックリングを抑止するために機能していることが分かり、0.05%を超えると、バリア層のバリア性が不十分であり、コックリングを防ぐことができないと言える。伸び率は、0.03%以下であることがより好ましく、0.01%以下が特に好ましい。なお、伸び率を、印字の2分後としたのは、この2分前後の状態がもっとも原紙の伸びが最大になるためである。因みに、1分後では原紙が伸びる途中であり、4分後では一旦伸びた原紙が縮んだ状態となる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、水を除いた固形分であり、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0060】
−シリカ微粒子の調製−
2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBE−603)の水溶液(876g、1%)に市販気相法シリカ(日本アエロジル社製、商品名:エアロジルA200)120g、乳酸4gを攪拌しながら添加し、サンドグラインダーにより分散した後、圧力式ホモジナイザーで更に分散し、平均粒子径が0.08μmになるまでサンドグラインダーと圧力式ホモジナイザーの分散操作を繰り返し、水分散液を調製した。
なお、平均粒子径は、水分散液を、濃度1%に調整し、25℃の条件で、動的光散乱法により求めた数平均二次粒子径である。測定装置は、濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000(大塚電子株式会社製)を使用した。
【0061】
−インク受容層用塗液A−
上記シリカ微粒子100部にポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235、重合度:3500、ケン化度:88.5%)15部を混合し、13%水分散液を調整した。
【0062】
−インク受容層用塗液B−
上記シリカ微粒子100部に、ホウ酸1部を添加して溶解した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235、重合度:3500、ケン化度:88.5%)15部を混合し、13%水分散液を調整した。
【0063】
−光沢発現層用塗液A−
45nmのカチオン性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:ST−AKL)100部に、前記ポリビニルアルコール2部、カチオン離型剤(近代科学社製、商品名:ペルトールN856)1部を混合し、3%水分散液を調整した。
【0064】
実施例1
−原紙Aの作製−
LBKP90部(フリーネス440ml/csf)、NBKP10部(フリーネス510ml/csf)からなるパルプスラリー中に、パルプ固形分に対して填料として軽質炭酸カルシウムを紙灰分で10%となるように添加し、さらに内添サイズ剤としてAKDサイズ剤(商品名:サイズパインK−902、荒川化学工業社製)0.05%および硫酸アルミニウム0.5%をそれぞれ添加して紙料を調成した。このように調成された紙料を用いて、ハイブリッドタイプのツインワイヤ抄紙機で抄紙、乾燥を行って成紙(基紙)を得た。次いで、このようにして得られた基紙の両面に2本ロールサイズプレス装置を介して、6%濃度の酸化澱粉糊液(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を両面固形分換算で1.4g/mとなるように塗布、乾燥して米坪が150g/mの原紙Aを得た。
【0065】
−支持体の作製−
上記原紙Aの一方の面に下記の塗工層用塗液A、もう一方の面に塗工層塗液用Bをそれぞれ乾燥重量が5g/m、15g/mとなるように片面ずつブレードコーターを使用して塗工し、乾燥した。表面温度25℃の条件でスーパーカレンダー(8ニップ、線圧100kg/cm、500m/min)に通紙して平滑化し、支持体を得た。なお、塗工層用塗液Aを塗工した面を、インク受容層を形成する面とする。この面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、2g/mであった。
【0066】
「塗工層用塗液A」
市販分散剤(東亞合成社製、商品名:アロンT−50)0.3部含有水溶液に、顔料として、重質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名:ソフトン3200)100部を添加して分散し、スラリーを調製した。平均粒子径が110nmのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:PT1051、日本ゼオン社製、Tg=10℃)を100部、増粘剤としてエーテル化度が0.70〜0.80のカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩(第一工業製薬社製、商品名:セロゲンWSA)を0.2部、および消泡剤、染料などの助剤を添加し、最終的に固形分濃度が55%の塗工層用塗液Aを調製した。
【0067】
「塗工層塗液B」
市販分散剤(東亞合成社製、商品名:アロンT−50)0.3部含有水溶液に、顔料として、前述の白色度95%、平均粒子径0.7μmの重質炭酸カルシウム100部を添加して分散し、スラリーを調製した。続いて、前述のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを20部、増粘剤として前述のカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩を0.3部、および消泡剤、染料などの助剤を添加し、最終的に固形分濃度が60%の顔料塗工層用塗液Aを調製した。
【0068】
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体上に、下塗り塗液として、0.5%硼砂水溶液を塗工量が0.1g/mとなるように塗布し、更にインク受容層塗液Aを塗工量が15g/mとなるようにWet on Wetの条件で塗工し、80℃の乾燥器で乾燥を行い、インクジェット記録体を得た。
【0069】
実施例2
−支持体の作製−
実施例1と同様にして支持体を得た。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体上に、下記下塗り層用塗液を、塗工量が5g/mとなるように塗工し、乾燥した。次いで、インク受容層用塗液Aを塗工量が15g/mとなるように塗工し、80℃の乾燥器で乾燥を行い、インクジェット記録体を作製した。
「下塗り層用塗液A」
市販分散剤(東亞合成社製、商品名:アロンT−50)0.3部含有水溶液に、顔料として、前述の重質炭酸カルシウム100部を添加して分散し、スラリーを調製した。続いて、水溶液としたホウ酸とホウ砂の1:1混合物25部を攪拌混合し、前述のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを15部、増粘剤として前述のカルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩を0.3部、および消泡剤、染料などの助剤を添加し、最終的に固形分濃度が55%の下塗り層用塗液Aを調製した。
【0070】
実施例3
−支持体の作製−
実施例1の塗工層用塗液Aの重質炭酸カルシウム100部を50部とした以外は実施例1と同様にして支持体を得た。インク受容層を形成する面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、0.5g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0071】
実施例4
−支持体の作製−
実施例1の塗工層用塗液Aのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを50部とした以外は実施例1と同様にして支持体を得た。インク受容層を形成する面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、4g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0072】
実施例5
−支持体の作製−
原紙Aの一方の面に下記の塗工層用塗液A、もう一方の面に塗工層塗液用Bをそれぞれ乾燥重量が5g/m、15g/mとなるように片面ずつブレードコーターを使用して塗工し、乾燥した。次いで、塗工層塗液A塗布面上に、さらに塗工層塗液Bを15g/m塗付し、乾燥したあと、表面温度25℃の条件でスーパーカレンダー(8ニップ、線圧100kg/cm、500m/min)に通紙して平滑化し、支持体を得た。なお、塗工層用塗液Aおよび塗工層用塗役Bの2層を塗工した面を、インク受容層を形成する面とする。この面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、1.5g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0073】
実施例6
−支持体の作製−
実施例5と同様にして支持体を得た。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用い、実施例2の下塗り層用塗液Aにおいて、顔料を重質炭酸カルシウム50部、カオリン(イメリスミネラルズ・ジャパン社製、商品名:Contour Xtreme)50部に変更した以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0074】
実施例7
−支持体の作製−
実施例5と同様にして支持体を得た。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用い、実施例2の下塗り層用塗液Aにおいて、顔料を平均1次粒子径12nm、平均2次粒子径約300nmの微細シリカコロイド液(商品名:サイロジェット703A グレース・デヴィソン社製)に変更し、塗料の固形分濃度を25%とした以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0075】
実施例8
−支持体の作製−
実施例5と同様にして支持体を得た。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用い、実施例2の下塗り層用塗液Aにおいて、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスをアクリル酸共重合体ラテックス(商品名:JK7000,明成化学社製)に変更した以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0076】
実施例9
−支持体の作製−
実施例5と同様にして支持体を得た。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用い、インク受容層用塗液Aをインク受容層塗液Bに変更した以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0077】
実施例10
実施例9で得られたインクジェット記録体上に光沢発現層塗料Aを1g/mになるように塗布、湿潤のうちに塗布面が鏡面に当たるように鏡面ドラム(表面温度:85℃)とニップロールの間に通過(線圧:150Kg/cm、速度:100m/min)させた後、乾燥してインクジェット記録体を得た。
【0078】
実施例11
−支持体の作製−
実施例1の支持体の作製において、原紙Aの代わりに、市販塗工紙(「SA金藤+」209g/m、王子製紙製)に変更した以外は実施例1と同様にして支持体を得た。なお、塗工層用塗液Aを塗工した面を、インク受容層を形成する面とする。この面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、1g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0079】
実施例12
−支持体の作製−
実施例5の支持体の作製において、原紙Aの代わりに、市販塗工紙(「SA金藤+」209g/m、王子製紙製)に変更した以外は実施例5と同様にして支持体を得た。なお、塗工層用塗液Aおよび塗工層用塗役Bの2層を塗工した面を、インク受容層を形成する面とする。この面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、0.5g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例5と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0080】
比較例1
−支持体の作製−
上記原紙Aの裏面に塗工層塗液用Bを乾燥重量が15g/mとなるようにブレードコーターを使用して塗工し、乾燥した。表面温度25℃の条件でスーパーカレンダー(8ニップ、線圧100kg/cm、500m/min)に通紙して平滑化し、支持体を得た。なお、塗工層を形成していない面を、インク受容層を形成する面とする。この面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、測定不能であった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0081】
比較例2
−支持体の作製−
実施例1の塗工層用塗液Aのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを10部とした以外は実施例1と同様にして支持体を得た。インク受容層を形成する面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、20g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0082】
比較例3
−支持体の作製−
実施例5の塗工層用塗液Aのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを10部とした以外は実施例5と同様にして支持体を得た。インク受容層を形成する面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、15g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0083】
比較例4
−支持体の作製−
実施例5の塗工層用塗液Aのスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスをPVA(クラレ社製、商品名:PVA140)100部とし、顔料を用いなかった以外は実施例5と同様にして支持体を得た。インク受容層を形成する面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、0g/mであった。
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0084】
比較例5
−支持体の作製−
支持体として、下記RC支持体に変更した。なお、インク受容層を形成する面の吸水度(JIS P8140のコッブ法(接触時間30秒))は、0g/mであった。
【0085】
−RC支持体−
LBKP100部(フリーネス400ml/csf)、焼成カオリン(商品名:アンシレックス)5質量部、前記AKDサイズ剤0.05質量部、硫酸バンド1.5質量部、湿潤紙力剤0.5質量部、澱粉0.75質量部よりなる製紙材料を使用し、ハイブリッドタイプのツインワイヤ抄紙機で抄紙、乾燥を行って150g/mの基紙を得た。
上記基紙の両面にコロナ放電処理を施した後、基紙のフェルト面側に塗工量が22g/mとなるようにバンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を、また、基紙のワイヤー面側に塗工量が30g/mとなるようにポリオレフィン樹脂組成物2を、それぞれT型ダイを有する溶融押し出し機(溶融温度320℃)で塗布した。次いで、基紙のフェルト面側を鏡面のクーリングロールで、また、基紙のワイヤー面側を粗面のクーリングロールで、それぞれ冷却固化した。平滑度(王研式、J.TAPPI No.5)が6000秒、不透明度(JIS P 8138)が93%のRC支持体を製造した。
【0086】
「ポリオレフィン樹脂組成物1」
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm、メルトインデックス20g/10分)35質量部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm、メルトインデックス2g/10分)50質量部、アナターゼ型二酸化チタン(石原産業社製、商品名:A−220)15質量部、ステアリン酸亜鉛0.1質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製、商品名:Irganox1010)0.03質量部、群青(第一化成社製、商品名:青口群青No.2000)0.09質量部、蛍光増白剤(チバガイギー社製、商品名:UVITEX OB)0.3質量部。
【0087】
「ポリオレフィン樹脂組成物2」
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm、メルトインデックス20g/10分)65質量部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm、メルトインデックス4g/10分)35質量部。
【0088】
−インクジェット記録体の作製−
上記支持体を用いた以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録体を作製した。
【0089】
<評価方法>
実施例1〜12および比較例1〜5で得られた記録体のインク受容層の成膜性(塗膜のヒビワレ)、光沢感、伸び率(コックリング)、画像の高湿滲み、リサイクル性を以下に示す方法で評価した。印字は、市販のインクジェットプリンター(CANON社製、機種:PIXUS iP4200、用紙設定:スーパーフォトペーパー、印刷品位:標準)で行った。
【0090】
−インク受容層の成膜性−
インク受容層のヒビワレの程度を目視により評価した。
○:ヒビワレはまったくみられない。
△:若干ヒビワレがみられるが、実用上問題ないと思われるレベル。
×:ヒビワレが発生し、実用上問題あるレベル。
【0091】
−光沢感−
ISO−400の画像(「高精細カラーディジタル標準画像データISO/JIS−S
CID」、p13、画像名称:果物かご)を印字し、印字部に対して横の角度から目視し、以下の4段階で評価した。
◎:銀塩写真に近い光沢感。
○:グロス系印刷用紙(ウルトラOK金藤N,王子製紙製、アート紙)よりは優れる光沢感。
△:グロス系印刷用紙(ウルトラOK金藤N,王子製紙製、アート紙)に近い23光沢感。
×:光沢感がほとんどない
【0092】
−印字伸び率(コックリング)−
温度23℃、湿度50%の条件で調湿した、A4判のインクジェット記録体に、横18cm×縦5cmのグリーンベタ印字を行い、温度23℃、湿度50%の環境下で、印字2分後の横の長さ(Lcm)を測定し、下記式で伸び率を算出した。
伸び率(%)=(L−18)×100/L
伸び率が大きいほどコックリングが悪い傾向であった。0.10%を超えるとコックリングがかなり目立ち、0.05%より小さいとコックリングは良好で、見た目ではRC支持体を使用したインクジェット記録体との違いが分からないレベルであった。
【0093】
−画像滲み−
インクジェット記録体を30℃、80%の高温高湿条件で24時間調湿後、そのまま条件下でISO−400の画像(「高精細カラーディジタル標準画像データISO/JIS−SCID」、p13、画像名称:果物かご)を印字した。印字直後に同じ記録体の裏面と印字された面を重ね、300gの重しを乗せ、そのままの高温高湿条件にて3日間放置後、画像を観察した。
○:画像の滲みはなく良好。
△:若干滲みは認められるが、実用上問題ないレベル。
×:画像の滲みが悪い。
【0094】
−リサイクル性−
一般塗工紙と同様に、本発明の支持体をアルカリ水溶液中で叩解し、再離解可能かどうか
を調べた。再生紙にする可能性を下記の基準で評価した。
○:塗工紙と同レベルで再生紙にすることが可能。
△:再離解が難しく、普通のパルプに少量添加なら再生紙にすることが可能。
×:再離解不可。
【0095】
【表1】

【0096】
表1から明らかなように、本発明は、再生可能な紙ベースの支持体でありながら、RC支持体を用いたインクジェット記録体と同等レベルのコックリングフリーであり、かつ光沢感、画像滲みが良好である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によると、RC支持体にインク受容層を設けてなる記録体に近い耐コックリング性、表面光沢感、平滑性、風合いを有する。且つRC支持体を用いた記録体特有の画像の滲みがなく、リサイクルも可能である。つまり、RC支持体と紙支持体の長所を備え、短所を克服したインクジェット記録体が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体及びインク受容層を有するインクジェット記録体において、該支持体が、原紙と、顔料およびラテックスバインダーを含有する少なくとも1層の塗工層を有し、かつ該塗工層面の吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下であり、該塗工層を有する面にインク受容層を有すること特徴とするインクジェット記録体。
【請求項2】
インク受容層が、平均粒子径700nm以下である無機微粒子を主成分とし、接着剤としてポリビニルアルコールを含有する層である請求項1記載のインクジェット記録体。
【請求項3】
塗工層が2層以上有する請求項1又は2記載のインクジェット記録体。
【請求項4】
下記測定条件で測定した伸び率が、0.05%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録体。
「測定条件」
温度23℃、湿度50%の条件で調湿した、A4判のインクジェット記録体に、横18cm×縦5cmのグリーンベタ印字を行い、温度23℃、湿度50%の環境下で、印字2分後の横の長さ(Lcm)を測定し、下記式で伸び率を算出する。
伸び率(%)=(L−18)×100/L
【請求項5】
原紙上に、塗工層面の吸水度がJIS P8140のコッブ法による接触時間30秒において、0.1g/m以上5g/m以下となるように、顔料およびラテックスバインダーを含有する少なくとも1層の塗工層を形成して支持体を得、該塗工層上にインク受容層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
【請求項6】
塗工層上に、少なくともポリビニルアルコールに対して架橋性を有する材料を含有する下塗り塗液と、平均粒子径700nm以下である無機微粒子を主成分とし、接着剤としてポリビニルアルコールを含有するインク受容層用塗液を塗工することによりインク受容層を形成する請求項5記載のインクジェット記録体の製造方法。
【請求項7】
該下塗り塗液が、顔料及びラテックスバインダーを含有する請求項6記載のインクジェット記録体の製造方法。

【公開番号】特開2010−184391(P2010−184391A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29012(P2009−29012)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】