説明

インクジェット記録体

【課題】光沢性、プリンタ給紙時の耐傷性、インク吸収性、生産性において優れたインクジェット記録体を提供する。
【解決手段】透気性基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層のインク受容層と、光沢発現層を順次積層してなるインクジェット記録体において、該光沢発現層は、少なくともコロイド状粒子、ケン化度98%以上のポリビニルアルコール、およびゼラチンを含有し、インク受容層よりも塗工量が少なく、且つキャスト処理を施した層であることを特徴とするインクジェット記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢インクジェット記録体に関し、詳しくはプリンタ給紙時の耐傷性、インク吸収性、光沢性等のインクジェット記録体としての適性に優れ、かつ生産性に優れた光沢タイプのインクジェット記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクの液滴を微細なノズルから射出し、被記録体表面上に付着させることにより画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置より記録コストが安価であることなどの理由により、端末プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。
近年、インクジェットプリンタは高精細化・高速化が進み、また、デジタルカメラ等による撮影画像の出力などを目的として一般家庭ユーザへの普及が拡大している。そのなか、インクジェット記録体には、撮影画像を出力した記録画像の品質を銀塩方式の写真の品質に近づけるために、インクジェット記録体表面の光沢性が優れるとともに、記録画像の発色性や深みなどの高い画質が求められる。またインクジェットプリンタの高速化に対応するインク吸収性が求められている。
【0003】
光沢性の高いインクジェット記録体としては、記録面の最表面をキャスト仕上げ処理した記録体がいろいろ開発されている(特許文献1〜8)。
特許文献1では、キャスト層に沈降法シリカの微細分散物と完全ケン化でシリル変性したPVA(PVA R−1130)を使用した例(実施例4)があるが、現在では記録濃度が十分とは言えない。
特許文献2では、キャスト層に湿式シリカの微細分散物と完全ケン化PVA(PVA135)を使用し一定の成果を得た例(実施例6)が開示されているが、現在では十分な光沢を持っているとは言いがたい。
特許文献3では、キャスト層に平均重合度が異なる2種類の完全ケン化PVAを使用することが提案されているが、現在では記録濃度が十分とは言いがたい。
特許文献4では、実施例でキャスト層にコロイダルシリカと完全ケン化PVA(PVA110)を使用しているが、塗工層が10g/mと厚く、現在では記録濃度が十分とは言いがたい。
特許文献5では、比較例1でキャスト層にカチオン性コロイダルシリカと部分ケン化PVA(PVA245)を添加しているが、表面強度は搬送性に弱点があると記載されている。
特許文献6では、キャスト層に鹸化度70〜96%のPVAを含む発明が開示されている。本発明における鹸化度98%以上のPVAとは異なるものである。
特許文献7では、インク記録層に5〜700nmの微細顔料を含有する層を形成し、光沢層をアルカリ領域で安定なコロイド粒子とタンパク質系接着剤を主成分とし、さらにアンモニアを含有する塗液を塗布して、キャスト加工を施すインクジェット記録用紙の製造方法が提案されているが、耐水性、光沢性に対して効果は高いものの、耐傷性に関しては十分とは言えなかった。
特許文献8では、5〜700nmの微細粒子を含有するインク受容層上に、ポリビニルアルコールを水溶媒に添加して6質量%以下の濃度の混合液を調整し、10〜100nmのコロイド状粒子と混合して光沢発現層を形成することが提案されているが、生産性、対傷性は十分とは言えなかった。
また、キャスト加工は、鏡面ドラムなどに湿潤状態の塗工層表面を圧接し、塗工層が乾燥してから鏡面ドラムなどから剥離することにより、塗工層表面に鏡面を写しとり、塗工層表面に光沢を付与するものであるが、不十分な乾燥では剥離が重く、所望の光沢が得られない場合があり、十分に乾燥するために製造速度を遅くする必要があり、生産性が悪いものであった。
【0004】
近年、一般家庭ユーザへの普及に伴い、狭い室内への設置を容易にするため、プリンタ設置に必要な面積を狭くすることが求められており、その解決策のひとつとして、記録体をプリンタ下部の給紙トレイに印刷面を下向きにセットし、プリンタ内部で記録体を回転させて印刷面を上向きにしてから印刷する給紙方法を採用するインクジェットプリンタが増加している。この給紙方法は、記録体がプリンタ内部で回転する様子をアルファベットの「C」の字に例えてC型給紙等と呼ばれることがあり、従来のプリンタ背面からの給紙方法(C型給紙に対して、こちらはJ型給紙等と呼称される。)と区別されている。
C型給紙では、記録体をプリンタ内部の狭い給紙経路内で回転させる際、印刷面がプリンタの給紙経路に擦れ、傷がついてしまう現象が発生しやすい。特にインクジェット記録体が高い光沢性を有するほど、傷が非常に目立ち易くなるため、記録画像の品質を銀塩方式の写真の品質に近づけるには、この問題を解決することは非常に重要であるが、未だ解決できていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−10220号公報
【特許文献2】特開2004−167959号公報
【特許文献3】特開2005−280012号公報
【特許文献4】特開2005−280147号公報
【特許文献5】特開2007−160596号公報
【特許文献6】特開2007−185780号公報
【特許文献7】特開2007−245598号公報
【特許文献8】特開2008−1054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載されたインクジェット記録体は、いずれも光沢性、プリンタ給紙時の耐傷性、インク吸収性、生産性において、満足する品質を得ることは出来ていないのが現状である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、インク受容層と光沢発現層の2層タイプとし、インク受容層の塗工量よりも光沢発現層の塗工量を少なくし、光沢発現層にコロイド状粒子、ケン化度98%以上のポリビニルアルコール、ゼラチンを含有せしめ、キャスト仕上げを施すことにより達成できることを見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
[1]透気性基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層のインク受容層と、光沢発現層を順次積層してなるインクジェット記録体において、該光沢発現層は、少なくともコロイド状粒子、、ケン化度98%以上のポリビニルアルコール、およびゼラチンを含有し、インク受容層よりも塗工量が少なく、且つキャスト処理を施した層であることを特徴とするインクジェット記録体。
[2]光沢発現層が、接着剤として水分散性接着剤を含むことを特徴とする、[1]記載のインクジェット記録体。
[3]光沢発現層が、脂肪族アミン類または脂肪族アミド類のエチレンオキサイド付加物を含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載のインクジェット記録体。
[4]インクジェット記録体の光沢発現層面のJIS−Z−8741による20°光沢度が15%以上である[1]〜[3]に記載のインクジェット記録体。
[5]光沢発現層の塗工量が0.1〜5g/mである[1]〜[4]に記載のインクジェット記録体。
[6]インク受容層が、顔料として一次粒子径5nm〜50nmの気相法シリカを含み、接着剤としてポリビニルアルコール類を含む[1]〜[5]に記載のインクジェット記録体。
[7]インク受容層に架橋剤を含有する[1]〜[6]に記載のインクジェット記録体。
[8]光沢発現層に含まれる水分散性接着剤が、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂である[2]記載のインクジェット記録体。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、光沢性、プリンタ給紙時の耐傷性、インク吸収性、生産性において優れたインクジェット記録体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、透気性基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層のインク受容層と、光沢発現層を順次積層してなるインクジェット記録体において、該光沢発現層は、少なくともコロイド状粒子、ケン化度98%以上のポリビニルアルコール、およびゼラチンを含有し、インク受容層よりも塗工量が少なく、且つ湿潤状態あるいは再湿潤状態にある間に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥してなることを特徴とするインクジェット記録体である。
まず、記録する面の塗工層を、インクを受容するためのインク受容層と、光沢に寄与する光沢発現層の二層に機能分離をし、且つ、光沢発現層の塗工量を少なくすることにより、光沢加工時の乾燥負荷が軽減でき、生産性が大幅に向上するともに、インク吸収性を高めることが可能となる。なお、インク受容層の顔料として、平均二次粒子径が1μm以下の微細な顔料を用いると、高いインク吸収性と高い平滑な面のインク受容層が形成できるので、吸収性と光沢性が更に優れたインクジェット記録体となり、好ましい。
さらに、光沢発現層に、コロイド状粒子と、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールとゼラチンを含有せしめる必要がある。これは、最表層部に、コロイド状粒子を集中的に局在化させ、その接着剤としてケン化度98%以上のポリビニルアルコールを選択することにより、インク吸収性を阻害することなく高い光沢性を実現し、離型性にも優れる。特に光沢発現層がカチオン系の場合でも、離型性能に優れた光沢発現層を得ることができる。そして、光沢発現層にゼラチンを含有せしめることにより、プリンタ給紙時に付く傷を更に抑えることができる。これは、ゼラチン自身が固く、またその接着力により顔料粒子が強固に接着されることで達成されるものと思われる。更に、ゼラチンは高い光沢度を付与するためには効果的な材料であり、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールと併用してはじめて、高い白紙光沢度を持ち、画像鮮明性に優れ、プリンタ給紙時に傷が付かず、生産性にも優れた光沢インクジェット記録体を提供することが可能となる。
【0011】
本発明の好ましい構成態様によれば、上記の光沢発現層が、接着剤として更に水分散性接着剤を含むことを特徴とするものである。これにより、光沢度と表面強度を両立できる。
本発明の好ましい構成態様によれば、上記の光沢発現層に含まれる脂肪族アミン類または脂肪族アミド類のエチレンオキサイド付加物を添加することにより、離型性を更に改善することができる。
本発明の好ましい構成態様によれば、光沢発現層に含まれる水分散性接着剤が、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂である。これにより、得られた用紙の光沢度が更に向上する。
本発明の好ましい構成態様によれば、該光沢発現層の塗工量が0.1〜5g/mであり、光沢発現層の下に位置するインク受容層が、顔料として一次粒子径5nm〜50nm、二次粒子径10nm〜500nmの気相法シリカを含み、接着剤としてポリビニルアルコール類を含むことである。これにより、光沢発現層が更に安定して設けられるようになり、キャスト後の光沢度が更に向上する。このため、光沢発現層の塗工量は0.1〜5g/mという少量でも十分な光沢を得ることができ、更には、高い記録濃度を得ることができる。
以下、使用する材料について具体的に開示する。
【0012】
<基材>
インクジェット記録体に用いられる基材は、透気性基材を使用する。透気性基材は、キャスト処理が可能な程度の透気性を示す基材であれば、特に限定されるものではない。例えば、紙基材、透気性を有する樹脂フィルムまたはシート材を使用することが好ましい。とりわけ、優れた透気性、記録体としての取り扱い易さ、および廃棄の容易さ等の面から紙基材を使用することが好ましい。紙基材としては、本発明の効果を損なわない範囲で、通常使用される公知の紙基材を用いることができ、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙が挙げられる。
また、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、中性紙等の別も適宜用いられる。
【0013】
〔紙基材〕
これら紙基材の概要を説明する。
紙基材は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等が添加されている。木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。特に、針葉樹および広葉樹のクラフトパルプ、あるいはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKPと称す)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKPと称す)が好ましい。また、これらのパルプにおいて、その漂白工程で塩素の影響を取り除いた塩素フリーパルプ、例えば、パルプ漂白に塩素そのものを使わずに塩素化合物を使うECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、パルプ漂白に塩素元素が一切入っていない漂白剤を用いるTCF(Total Chlorine Free)パルプ等を用いることは好ましい。これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整でき、その叩解度(フリーネス(CSF:Canadian Standard Freeness))は特に限定しないが、250〜550ml(JIS−P8121)が好ましい。
【0014】
紙基材に添加される填料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカ、酸化チタン、タルク等が好ましく用いられる。中でも軽質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライトは多孔質のためインクジェットプリンタから吐出されたインク中の溶媒を吸収する能力に優れているために好ましく、その中でも、軽質炭酸カルシウムは白色度が高い紙基材が得られ、インクジェット記録体の光沢感も高まるので好ましい。紙基材中の填料の含有率(灰分)は、1〜20質量%程度が好ましい。この範囲であれば、平滑度、透気度、紙力や剛性のバランスがとれ、光沢度や写像性、剛性のバランスに優れたインクジェット記録体が得られやすくなる。
【0015】
紙基材に添加される助剤としては、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等が挙げられる。上記サイズ剤としては、公知のサイズ剤が、例えば、強化ロジン、アルケニル無水コハク酸等が用いられる。また、このサイズ剤の定着剤として硫酸バンド、定着歩留まり向上剤として澱粉等がサイズ剤に併用されて用いられる。
【0016】
紙基材には、サイズプレス処理しても良い。サイズプレスの目的は、サイズ度のコントロール、紙力の増強、平滑化等であり、サイズプレス液にはそれぞれの目的に合わせて澱粉類、ポリビニルアルコール類、サイズ剤、各種顔料等、公知公用の材料が使用される。紙基材のステキヒトサイズ度(JIS−P8122)は1〜300秒程度が好ましく、4〜200秒がより好ましい。サイズ度が1秒未満であると、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる虞があり、300秒を越えるとインク吸収性が低下する虞があり、かつ印字後のカールやコックリング(吸収ジワ)が著しくなる虞があり好ましくない。
【0017】
紙基材の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m程度が好ましい。紙基材の王研式透気度(日本TAPPI No.5)は10〜1000秒程度であれば使用できるが、10〜350秒が好ましく、10〜200秒がより好ましく、20〜100秒がさらに好ましい。この透気度値が低すぎると、インク受容層用塗工液が紙基材からなる基材に過剰に浸透する虞があり、高すぎると、キャストドラムに圧接仕上げする際に、操業性が低下する虞があり、好ましくない。
紙基材は、長網抄紙機などにより製造され、その厚さは、特に限定されないが、用途に応じて20μm〜500μmの範囲で適宜選択される。
【0018】
<塗工層>
本発明のインクジェット記録体は、基材上に設けられた1層のインク受容層と、このインク受容層上に設けられ、この記録体の最表部を形成する光沢発現層とからなる2層の塗工層を有するのが好ましい。このインク受容層は、1層に限らず必要に応じて2層以上設けてもよい。塗工層を3層以上設ける場合は、インク受容層を2層形成してもよいが、この場合2層を全く同じ処方を積層する必要はない。また、1層を基材上に設けられインク溶媒を吸収する下塗り層とし、その上にインク染料定着層を設ける構成としても良い。また、1層を基材にインク溶媒を浸透させないバリアー層とし、その上にインク受容層を設ける構成としても良い。勿論、バリアー層、下塗り層、インク受容層の層構成を採用してもよい。
【0019】
〔インク受容層〕
このインク受容層は、顔料と、これを保持する接着剤を含む。さらにインク中の染料や顔料をよりよく定着させるためにカチオン性のインク定着剤を含有することが好ましい。
【0020】
(顔料)
インク受容層の顔料としては、平均粒子径が10nm〜3μm、好ましくは10nm〜1μmの微細2次顔料が用いられる。シリカ、アルミナ、アルミナ水和物から選ばれることが好ましい。これらの顔料のなかでは、シリカが特に好ましく、一次粒子径5nm〜50nm、二次粒子径10nm〜500nmの気相法シリカがより好ましい。
さらに、このシリカは、シリカとカチオン性化合物とを混合して得られるシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子が好ましく、これを粉砕分散して、平均粒子径10nm〜1μmの凝集体微粒子として用いられる。このカチオン性化合物およびシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子は、インク定着剤として作用しており、詳しくは、インク定着剤の項で説明する。
この凝集体微粒子は、平均粒子径は30〜500nmの範囲が最も好ましい。この粒子径が10nm未満では、インク吸収性が低下するおそれがあり、1μmを超えると、塗膜の透明性が劣り、印字濃度が著しく低下するおそれがあり、また、平滑性も損なわれるため、高い光沢性を得るために上層の光沢発現層の塗工量を多くする必要があり、結果として、インク吸収性の低下や生産性の低下に繋がるという懸念点がある。
【0021】
ここでいう平均粒子径とは、微粒子のスラリーを動的光散乱法に基づく装置を使用して測定した粒子径分布のメジアン径であり、本発明者らは「動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500型(株式会社堀場製作所製)」を使用したが、測定原理が同じであれば、装置のモデルが異なっても、ほぼ同じ値が得られる。
【0022】
インク受容層には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の平均粒子径10nm〜1μmの顔料に併用して通常のインクジェット記録体に使用される公知の顔料を用いることができる。これらの顔料としては、カオリン(含クレー)、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ(含コロイダルシリカ)、酸化アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等が挙げられ、単独或いは併用で用いられる。
【0023】
(接着剤)
接着剤は水分散系接着剤、水溶性接着剤を単独、併用とも可能である。水分散系接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル系樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。この中で、得られる塗膜のインク吸収性および透明性の面で、アクリル系樹脂およびウレタン系樹脂が特に好ましい。これらの水分散系接着剤は、単独で用いても、または2種以上の併用であっても良い。
【0024】
水溶性接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。
【0025】
これらの接着剤の中でも表面強度の点からポリビニルアルコールを用いることが好ましい。インク受容層に用いられるポリビニルアルコールは、そのケン化度の相違により性状が異なり、目的に応じてそのケン化度を選択することが好ましい。ケン化度が95%以上、より好ましくは98%以上のポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の強度が強くなるとともに、塗工液調製時に泡立ちなどもおこらず、製造時の作業性が非常に良好である。また、ケン化度が75〜90%の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の可撓性に優れ、その折り割れ防止に非常に効果的である。これらケン化度の異なるポリビニルアルコールは、その目的に応じて、それぞれ単独で用いても、併用して用いても良い。
【0026】
また、上記ポリビニルアルコールは、その重合度が3500以上であることが好ましく、3500〜5000であることが特に好ましい。重合度が3500未満であると、インク受容層の強度が弱いと共に、ひび割れが発生しやすく、かつ断裁時に紙粉が発生する虞があり、5000を超えると、十分なインク吸収性が得られにくいとともに、溶液粘度が高く塗工液調整におけるハンドリング面が困難となる虞があり、好ましくない。
【0027】
インク受容層の接着剤の配合量は、顔料100質量部に対して7〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。この配合量が、7質量部未満であると、塗膜強度が十分でないおそれがあり、50質量部を超えると、インクの吸収性を損なう虞があり好ましくない。
【0028】
(インク定着剤)
上記インク定着剤は、インクジェット記録用インク中の染料色素を定着する作用を有し、これにより印字画像に耐水性を付与する。このインク定着剤には、カチオン性化合物が用いられ、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤、アミノ基含有シランカップリング剤、水溶性多価金属塩等)が例示される。印字濃度向上の点ではカチオン性樹脂が好ましく、一般にインクジェット記録用シートで用いられる各種公知のカチオン性樹脂が使用可能である。
【0029】
これらのカチオン性樹脂としては、例えば、(イ)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、(ロ)第2級または第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、またはそれらのアクリルアミドの共重合体、(ハ)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、(ニ)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(ホ)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(ヘ)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体、(ト)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(チ)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(リ)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(ヌ)アリルアミン塩の共重合体、(ル)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(オ)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(ワ)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等が挙げられる。
本発明の実施の形態では、これらの定着剤を単独に、また2種以上併用して用いられる。
【0030】
(シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子)
上記カチオン性化合物は、気相法シリカとの混合液中で気相法シリカと凝集し、シリカ−カチオン性化合物凝集体を形成する。このため、このカチオン性化合物は、単体で用いるよりあらかじめ気相法シリカと凝集体を形成して用いることが好ましい。なお、シリカ−カチオン性化合物凝集体は、粉砕・分散して平均粒子径0.01〜1μmに調節し、インク受容層用塗工液に用いることが好ましい。シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を形成するために用いる単体の気相法シリカは、平均粒子径が3〜40nmの1次粒子であるが、この凝集体微粒子は、実質的に1次粒子が凝集してできた二次粒子からなっている。
【0031】
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の製造方法の概略を説明する。
カチオン性化合物の添加量としては、気相法シリカ100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲で調節される。気相法シリカ分散液にカチオン性化合物を添加し混合すると、増粘した凝集体分散液が得られる。或いは、カチオン性化合物を含有する溶液に、気相法シリカを添加し、混合することにより、凝集体分散液を得ることもできる。この場合、気相法シリカを吸引導入することが好ましい。どちらの場合も、予め非イオン系の界面活性剤を添加しておくと、粗い凝集体の形成を妨げることができるので好ましい。
得られたシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子は、粉砕・分散して、平均粒子径10nm〜1μm、好ましくは平均粒子径は30〜500nmの範囲に調節するとよい。調節する方法としては、機械的手段で強い力を与えるブレーキング・ダウン法(塊状原料を細分化する方法)が採られる。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダ、ナノマイザ(商品名)、ホモミキサ等が挙げられる。
【0032】
顔料およびインク定着剤としてこのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、1種単独で、あるいは2種以上併用して用いられるが、これを用いることによって、インク受容層の透明性、表面強度、平滑性ならびにインクの吸収性、発色性、耐候性、耐水性等を向上させることができる。
【0033】
インク受容層には、さらに、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。また、インク受容層中に、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0034】
なお、インク受容層中には、さらにインクの定着性を高め耐水性を向上させるために、単体のカチオン性化合物を配合してもよい。カチオン性化合物としては、上記シリカ−カチオン性化合物凝集体で用いたカチオン性化合物が例示でき、その中でも、水溶性樹脂あるいはエマルジョンのものが好ましく用いられる。また、この単体で配合するカチオン性化合物、特にカチオン性樹脂は、接着剤としての役割も併せて付与させる場合にしばしば用いられる。
【0035】
(インク受容層の形成方法)
インク受容層を形成するためには、例えば、インク受容層用塗工液を塗布すると同時に、または、インク受容層用塗工液を塗布した塗液層の乾燥途中に、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、塗工液を増粘または架橋させて成膜して製造すると、空隙の多いインク吸収性が優れ、且つひび割れを効率よく防止したインク受容層となるので好ましい。
具体的には、下記(A)〜(C)に挙げる方法が例示でき、適宜採用できるがこれらの方法に限るものではない。
【0036】
例えば、
(A)電子線照射によりハイドロゲルを形成する親水性樹脂を含有し、塗工の直後に、または、塗工された塗液層の乾燥途中であって、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、電子線照射して塗液層を増粘(ハイドロゲルを形成)させる方法、
(B)インク受容層が接着剤を含有する塗液であり、塗工の直後に、または、塗工された塗液層の乾燥途中であって、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、接着剤との架橋性を有する化合物で塗料を増粘、架橋させる方法、
(C)例えば接着剤として感温性高分子化合物(特開2003−40916号公報に記載された一定温度(感温点)以下の温度領域では親水性を示し、感温点より高い温度領域では疎水性を示す)を含有させ、塗工の直後に塗液層温度を低下させることによって塗液層を増粘させる方法、
等が例示できる。
上記(A)及び(B)の方法で塗工層を形成する場合、接着剤としては、上記の、インクジェット記録体用として使用される公知の接着剤が使用できる。
【0037】
接着剤との架橋性を有する化合物としては、各種公知の架橋剤、ゲル化剤が使用できる。ポリビニルアルコールに対する架橋性を有する化合物としては、グリオキザールなどのアルデヒド系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ビスビニルスルホニルメチルエーテルなどのビニル系架橋剤、ホウ酸およびホウ砂などのホウ素含有化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等などが例示できる。中でも、ホウ素含有化合物は、増粘またはゲル化が早く生じるので特に好ましい。
【0038】
ホウ素含有化合物としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことである。具体例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが、塗料を適度に増粘させる効果があるために好ましく用いられる。
ホウ素化合物の含有量は、ホウ素化合物及びポリビニルアルコールの重合度にもよるが、基材の片面に0.01〜2.0g/m含有されることが好ましい。含有量が2.0g/m以下であることにより、親水性バインダとの架橋密度が高くなりすぎず、塗膜強度を良好なものにできる。一方、含有量が0.01g/m以上であることにより、親水性接着剤との架橋が強まり、塗料のゲル化を促進して塗膜がひび割れしにくいものとなる。
【0039】
インク受容層は、例えば、架橋剤を予めインク受容層に塗布・含浸させておき、インク受容層用塗液を塗布する、または、インク受容層用塗液に架橋剤を配合しておき塗布する、または、インク受容層用塗液を塗布後、架橋剤を塗布する等の方法により製造される。中でも、架橋剤を予め塗布しておくことにより、増粘またはゲル化を均一に起こすことができるため好ましい。
【0040】
インク受容層の乾燥固形分塗工量には、制限はないが、一般に5〜100g/mであることが好ましく、5〜50g/mであることがより好ましい。塗工量が5g/m以上であることにより、高精細・高速のプリンタにおけるインク吸収性が充分なものとなり、塗工量が50g/m以下であることにより塗膜のひび割れが起こりにくくなる。
【0041】
インク受容層は、2層以上形成することもでき、このように2層以上で構成する場合は、それぞれの層を構成するシリカや接着剤は同じでも良いし、異なっていても構わない。また、同一の層内に2種類以上のシリカや接着剤を混合しても良いし、それらを組み合わせて使用しても良い。
インク受容層を形成するための塗工装置としては、ブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータおよびダイコータ等の各種塗工装置が挙げられる。
【0042】
また、スライドビードコータなどを用い、複数のインク受容層を同時に塗工することもできる。2層以上のインク受容層を塗工する場合は、下層が未乾燥のうちに上層を下層の上に塗工する方法、すなわち、Wet on Wet法を用いることが好ましい。
また、電子線照射を施す方法は、(1)塗工、電子線照射、乾燥を繰り返してもよいし、(2)塗工し電子線照射後に次の層を塗工して乾燥してもよく、(3)多層を同時に塗工し、電子線照射を行ってもよい。
さらに、この塗工したインク受容層に、必要に応じてスーパーカレンダ、ブラシ掛け等の平滑化処理を施しても良い。
【0043】
〔下塗り層〕
基材とインク受容層の間に、インク溶媒を吸収させる目的で下塗り層を形成することができる。インク中の溶媒を下塗り層で吸収することで、インク受容層で保持された染料と分離し、保存性をたかめることができる。顔料や接着剤としては、インク受容層で例示した材料が適宜利用できるが、吸収性の高い平均粒子径が1μm以上の顔料を用いることが好ましい。なお、20μmを超えるような顔料は、記録体の光沢度を低下させる虞があるので、20μm以下の顔料を用いることが好ましい。
【0044】
〔バリアー層〕
基材とインク受容層の間、或いは基材と下塗り層の間に、インク中の溶媒を基材への浸透を防ぐか、遅延させるために、バリアー層を形成することができる。インク吸収性の低いバリアー層を形成することにより、インク中の溶媒が基材へ浸透することを防ぎ、或いは遅延させることで、コックリングを抑制することができる。顔料や接着剤としては、インク受容層で例示した材料が使用できるが、接着剤の比率を高くすることにより達成できる。中でも、顔料として炭酸カルシウムやカオリンなどを用いることが好ましい。また、雲母などの平板顔料も好適な顔料である。
【0045】
〔光沢発現層〕
本実施の形態の記録体は、上記インク受容層上に、光沢を発現する光沢発現層を有する。
この光沢発現層は、後述するキャスト加工が施されて光沢面となる光沢発現性を示す。スーパーカレンダ、ブラシ掛け等の平滑化処理を施してもある程度の光沢をするが、キャスト加工を施すことにより、優れた光沢を発現する。
この光沢発現層は、コロイド状粒子と接着剤を主成分とし、光沢を発現する該記録体の最表部をなしていて、インク受容層の塗工量よりも少ない塗工量で形成する必要がある。例えば、光沢発現層の乾燥塗工量が0.1〜5g/mであるとき、生産性に優れ、より鮮明な画像を得ることが出来、本発明の目的を確実にする。
【0046】
(コロイド状粒子)
光沢発現層のコロイド状粒子とは、水中に懸濁分散してコロイド状をなしている無機粒子或いは有機粒子を指し、コロイド状粒子を含有することにより、均一で高い光沢性を得ることが出来る。該コロイド状粒子として、例えば、コロイダルシリカ、ベーマイト、擬ベーマイト等のアルミナゾルやコロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、或いは特公昭47−26959号公報に開示されているようなコロイド状シリカ粒子表面をアルミナコーティングした粒子、等の無機粒子、ポリスチレン、メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル共重合体、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン等の有機粒子が挙げられる。本発明において好ましいコロイド状粒子としては、コロイダルシリカや無定形シリカを保護コロイドを作る能力のある水溶性化合物の存在下で分散・解砕したものが例示される。無定形シリカとしては、一次粒子径が小さく二次粒子径が大きくて解砕しにくいゲル法シリカより一次粒子径が大きめで解砕しやすい沈降法シリカや気相法シリカがより好ましく、二次粒子径が小さい気相法シリカは更に好ましい。これらのコロイド状粒子は、2種以上併用することも可能である。
【0047】
光沢発現層のコロイド状粒子は、インクを定着させる機能を有するカチオン性コロイド状粒子が好ましい。カチオン性コロイド状粒子は、上述のコロイド状粒子の内、該粒子表面が正に帯電した粒子を指し、例えば、ベーマイト、擬ベーマイト等のアルミナゾルやコロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、コロイド状シリカ粒子表面をアルミナコーティングした粒子等が挙げられる。また、保護コロイドを作る能力のある水溶性化合物としてカチオン性樹脂等を選択し、その存在下で分散・解砕した気相法シリカも、好ましく使用される。
【0048】
(接着剤)
光沢発現層中には、コロイド状粒子等をインク受容層上に固着させる目的で、接着剤を含有する。該接着剤は、上記インク受容層に用いた上述の接着剤のなかから選ばれ、単独であっても、または2種類以上であってもよいが、本発明の場合、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールを含有する。ケン化度98%以上のポリビニルアルコールを使用することによって、鏡面ドラムからの離型が容易となり、優れた生産性を得ることができる。
ケン化度98%以上のポリビニルアルコールを使用することでドラムからの離型性が良好となる理由は定かではないが、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは部分ケン化と称されるケン化度98%未満のポリビニルアルコールより水酸基の量が多いため、水との親和性が強く、分子同士の相互作用も強い。そのため、一旦水に溶解したポリビニルアルコールを乾燥し、熱処理した場合、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは結晶化して水に溶解しなくなるが、部分ケン化のポリビニルアルコールは結晶化せず分子は屈曲性を保ったままである。このことが、高温のドラムとの接着性の違いに影響し、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは水分を失った場合にドラムに対する接着力が落ちやすいのに対し部分ケン化ポリビニルアルコールはドラムへの接着力が落ちず、結果として、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールの方がドラムから剥離しやすくなるものと推測される。
光沢発現層中のコロイド状粒子がカチオン性である場合や、光沢発現層中にインク定着剤を配合する場合は、カチオン変性した接着剤を使用することが好ましい。接着剤の配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部の範囲で調節される。接着剤の配合量が1質量部より少ないと、光沢発現層の固着力が弱くなり、塗工層の欠落が発生する虞があり、200質量部を越えると、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる虞があり、好ましくない。
【0049】
また、光沢層発現層用塗工液は、ゼラチンを含有する。ゼラチンを配合することにより、C型給紙傷を大幅向上し、光沢性も向上させる。その添加量はコロイド粒子100質量部に対して0.5〜20部、好ましくは2〜15部である。
光沢発現層中に、コロイド状粒子、ケン化度98%以上のポリビニルアルコール、及びゼラチンを含有することによって、高い白紙光沢度を持ち、画像鮮明性に優れ、プリンタ給紙時に傷が付かず、生産性にも優れた光沢インクジェット記録体を得ることができる。
ポリビニルアルコールとゼラチンの添加量は1:5〜5:1の範囲が好ましい。この範囲にすることによって、上記のような全ての特性を付与することが容易となる。ゼラチンの添加比率がこの範囲を越えて増えた場合、後述する光沢化処理においてキャストドラムから用紙が剥離しにくくなり、生産性が劣るようになることが懸念される。逆にこの範囲を越えて少なくなった場合、高い白紙光沢度を得にくくなる懸念がある。
【0050】
本発明のインクジェット記録体の光沢発現層に用いられるゼラチンとしては、牛、羊、豚、鶏、あるいは魚等の皮、骨、腱などの主タンパク成分であるコラーゲンを原料としたゼラチンであれば何れでも使用できるが、牛骨、牛皮又は豚皮を原料としたゼラチンが工業原料として安価に購入しやすく好ましい。ゼラチンの種類としては特に制限はなく、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチンを、単独又は組み合わせて使用することが可能である。また、ゼラチン誘導体等も単独又は組み合わせて用いることができる。ゼラチン誘導体としては、例えば、ゼラチンを無水フタル酸などの酸無水物やフェニルイソシアネートなどのイソシアネート類で処理してゼラチンのアミノ基を不活性化して得られるゼラチン誘導体等があり、また好ましく用いられる。
【0051】
本発明において、光沢発現層に用いられるゼラチンの平均分子量は好ましくは2〜30万であり、また、ゼリー強度(PAGI法、ブルーム式ゼリー強度計による)は150g以上が好ましく、180〜320gであることがより好ましく、200〜300gであることが更に好ましい。ゼリー強度を150g以上とすることで、塗膜強度が向上する傾向が有り、また、C型給紙の際のひび割れも良化する傾向が有る。一方、320g以下とすることで、インク吸収性を良化させる傾向があるため、目的の塗膜強度と吸収性によって最適なゼリー強度のゼラチンを適宜使い分けるのがよい。
【0052】
本発明において、光沢発現層におけるゼラチンの使用量は、光沢発現層中のゼラチン量をコロイド状粒子に比して少なくすることで、ゼラチンが光沢発現層最表面に残りにくくし、C型給紙の際の傷防止効果を高めることができる。ただし、ゼラチンが多いほうがコロイド状粒子同士の結着が強まり、コロイド状粒子の欠落を防いだり、耐ひび割れ性を向上させる傾向がある。
【0053】
本発明の光沢発現層では、ゼラチンと併用して、水分散性接着剤を使用することも可能であり、また好ましい。水分散性接着剤を使用することで、コロイド状粒子の欠落を防いだり、光沢が向上する傾向がある。光沢発現層にゼラチンを用いた場合、併用するコロイド粒子の種類によっては、その理由は必ずしも明らかではないが、光沢性が若干低下する傾向が見られる場合がある。特にこのような場合には、水分散性接着剤を使用して光沢を向上させることは、銀塩方式の写真の品質に近い記録画像を得るために有効である。ただし、水分散性接着剤の使用量が少ないほうがC型給紙の際の傷防止効果が高まる傾向があるため、好ましい水分散性接着剤の添加量はコロイド状粒子100質量部に対して15質量部以下であり、より好ましくは1〜10質量部であり、さらに好ましくは1〜8質量部である。
【0054】
(離型剤)
本発明の光沢発現層は、キャスト加工されるが、鏡面ドラムや転写フィルムから塗工面の剥離をスムーズに行なうために離型剤を用いることが出来る。例えば、ステアリルリン酸カリウム等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモニウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物など公知の離型剤を配合することができる。
光沢発現層が、カチオン性のコロイド状粒子やカチオン性化合物を含有する場合、例えばカチオン変性したポリエチレンエマルジョンやステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が例示できるが、離型性と記録適性を両立させるためには、脂肪族アミン類または脂肪族アミド類のエチレンオキサイド付加を用いることが好ましい。付加するエチレンオキサイドユニット数は3以上25以下、好ましくは5以上20以下である。2以下の場合は親水性が不足し、光沢発現層塗料への添加が困難であり、逆に25を越えると親水性が強すぎて離型の効果が少なくなる傾向がある。離型剤の働きは、乾燥した光沢層をドラム表面から剥がすことにある。具体的には、ドラム表面に界面活性剤の多層膜を形成し、その中間でドラム側と紙側に別れるようにすることが重要であることを、本発明者等は見出した。この場合、親油基に比べて親水基があまりに大きい場合、ドラム表面に多層膜を作りにくくなる。なぜなら、一層目の分子は親水基をドラム側にして並ぶが、親水基が大きすぎると親油基の間隔が開きすぎて、二層目の分子が親油基を一層目の親油基側に向けた層を作りにくくなるためである。逆に親油基に比べて親水基の親水性が小さすぎる場合、前述のとおり、水性塗料中に添加することができない。
以上のように、親水基としては親水性が強く、かつ大きさがコンパクトであるものが好ましい。したがって、ポリアルキレンオキサイドの中では、ポリエチレンオキサイドが適している。
なお、エチレンオキサイド単位を付加しない脂肪族アミン類または脂肪族アミド類を水分散体(乳化物)として添加した場合、これらの物質は界面活性剤ではないために塗料中に固体の小粒子として存在する形になり、効率よくドラム表面に多層膜を形成することは困難である。したがって、所望の効果を得るにはその添加量を多く必要とし、これが塗料層中にも多く存在することとなり、インクの吸収を疎外する虞がある。この離型剤は界面活性剤であるためにドラムと塗料層の間に効率よく集まり、そのような問題を起こさない。この離型剤は、光沢発現層がカチオン性である場合も凝集などを起こすことなく添加することが出来、それ自身親水基を持つために吸収性を阻害することもない。また必要に応じて、変性ポリエチレンやワックス類、ノニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤を併用しても良い。特に、変性ポリエチレン類の添加は光沢度が向上するため好ましいが、過剰の添加は記録濃度の低下やプリンタ給紙時の傷を悪化させる場合がある。変性ポリエチレンの好ましい配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し2〜30質量部、特に好ましい配合量は3〜15質量部である。脂肪族アミン類のエチレンオキサイド付加物としては、Nヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン等が例示される。また、アルキル鎖は植物(例えばヤシ)由来、動物(例えば牛脂)由来のものであっても良く、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪アミン、ポリオキシエチレン牛脂脂肪アミン等が例示される。
【0055】
脂肪族アミド類のエチレンオキサイド付加物としては、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミド等が例示される。
本発明において、離型剤の添加量は対顔料3〜30部、好ましくは5〜20部である。
【0056】
(その他添加剤)
また、この光沢発現層には、必要に応じてインク定着剤、分散剤、架橋剤、増粘剤(流動変成剤)、消泡剤、耐水化剤(印刷適性向上剤)、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保存性改良剤、蛍光増白剤、および着色剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
【0057】
インク定着剤としては、インク受容層に用いた上述のカチオン性化合物と同様なものが使用される。
【0058】
上記増粘剤および流動変成剤としては、(イ)スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート─ブタジエン共重合体等の合成樹脂共重合体、(ロ)カゼイン、(ハ)大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、(ニ)澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、(ホ)PVA、(へ)カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体類、(ト)ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアマイド、ポリエステルの合成樹脂重合体、(チ)非イオン界面活性剤、等が適宜使用される。
【0059】
上記耐水化剤および印刷適性向上剤としては、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カルシルム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、モノクロル酢酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等の無機酸や有機酸のアンモニウム塩や金属塩類、さらに、メチルアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、メタノールアミン、エタノールアミン等のアミン類、リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレエーテルリン酸エステル塩、アルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩などのリン酸エステル類、ポリオキシメチレン、アルキルエーテル、ポリオキシエチレンやアンモニア水、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルやアジピン酸ジグリシジルエステル等の多官能性エポキシ化合物、尿素─ホルムアルデヒド系化合物、ポリアミド─エピクロロヒドリン系化合物、グリオキザール、等が適宜使用される。
【0060】
上記各種添加剤は、光沢発現層用塗工液中に固形分濃度として0.05〜10部、好ましくは、0.1〜5部の範囲で添加される。
また、本発明に示す離型剤とゼラチンを併用することで、C型給紙傷はさらに改善されることを見出した。この理由は定かではないが、本発明の離型剤は界面活性剤であるために塗工層表面に集中しやすく、その結果、プリンタ内部の部品と擦れあったときの抵抗を下げているものと推測される。ゼラチンで塗工層顔料の結着が強まって固くなり、内部部品との滑りが良くなることで、傷がつきにくくなったものと推定している。しかし離型剤の添加量が過剰の場合、用紙表面に離型剤の層ができる。その場合、離型剤そのものは柔らかいため、逆に傷が目立ちやすくなることもある。
【0061】
さらに、光沢発現層用塗工液には、その他の添加剤として、アルミナ、コロイダルシリカ、微細シリカ、クレーや炭酸カルシウム等の公知の白色顔料を添加することもできる。
なお、後述するリウェット処理を行う場合は、上記添加剤中の、分散剤、消泡剤、着色剤、蛍光染料、帯電防止剤、防腐剤等は、リウェット処理に用いる湿潤液に添加しても良い。
【0062】
(乾燥塗工量)
本発明では、平均粒子径5μm以下、好ましくは0.01〜1μmの顔料をインク受容層中に含有することにより、光沢発現層の乾燥塗工量は、0.1〜5g/m、好ましくは0.3〜2g/mという少ない塗工量で、高い光沢性を得ることが可能である。乾燥塗工量が0.1g/m未満であると、光沢性や印字濃度が劣り、乾燥塗工量が5g/mより多いと、インク吸収性悪化による画像鮮明性の低下、乾燥負荷の増大による生産性の悪化等の問題が生じる。
【0063】
(キャスト処理)
上記光沢発現層は、上記成分を含む塗工液を塗工して乾燥した後、キャスト加工を施す必要がある。
一般にキャスト加工とは、塗工層を、鏡面を有するキャストドラム(鏡面仕上げした金属、プラスチック、ガラス等のドラム)、鏡面仕上げした金属板、プラスチックシートやフィルム、ガラス板等に圧接して乾燥し、鏡面を塗工層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある塗工層表面を得ることである。
この中で加熱した鏡面ドラムを利用するキャスト加工により光沢を発現させる方法は、
(イ)最表塗工層用塗工液を基材上に塗工して、該塗工液が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、
(ロ)基材上に塗工した最表塗工層を一旦乾燥後、その最表塗工層を再湿潤させて、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)、
(ハ)基材上の最表塗工層をゲル化してゲル状塗工層とし、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ゲル化キャスト法)、
(二)加熱された鏡面ドラムに直接最表塗工層用塗工液を塗工し、乾燥させて鏡面ドラム上に該最表塗工層を形成した後、基材上に上記鏡面ドラムを圧接し、上記最表塗工層を転移させて仕上げる方法(プレキャスト法)、
が挙げられる。
これらのキャスト加工においては、加熱された鏡面ドラムの温度は例えば50〜150℃、好ましくは70〜120℃である。
【0064】
さらに、キャスト加工として、フィルム転写方式を採用することもできる。
フィルム転写方式とは、
(イ)上記の最表塗工層用塗工液を基材上に塗工して、該塗工液が湿潤状態にある間に平滑なフィルムやシートを重ね、乾燥した後、平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法、
(ロ)平滑なフィルムやシート上に最表塗工層用塗工液を塗工して、貼り合せようとする基材面をある程度湿潤状態にした状態で、その基材面に圧接し、乾燥した後平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法、である。
フィルム転写法に比べ、加熱した鏡面ドラムを用いるキャスト法のほうが、表面平滑性に優れる傾向があり、かつ生産性やコストの点で有利である場合が多い。
【0065】
キャスト加工は、上記いずれの方法を用いても良いが、本実施の形態の記録シートでは、上記のインク受容層用塗工液を紙基材上に塗工、乾燥し、このインク受容層上に光沢発現層用塗工液を塗工した後、直ちに加熱された鏡面金属ドラムに圧接、乾燥して仕上げるウェットキャスト法を用いることが好ましい。このウェットキャスト法では、均一な塗工層が形成されやすく、印字濃度が高く、光沢の優れた光沢発現層が得られ易い。
【0066】
上記各キャスト加工において、光沢発現層用塗工液を塗工する方法としては、各種公知の塗工方法を、例えば、ブレード、ブラシコータ、チャンプレックスコータ、バーコータ、グラビアコータ等の塗工装置のいずれかを使用して塗工する塗工方法を用いることができる。また、インク受容層と光沢発現層をスライドビードコータで同時多層塗工することも可能である。
【0067】
<裏面層>
本発明では、インク受容層および光沢発現層を設けていない基材のもう一方の面側である裏面に、写真の風合いやインクジェット記録体のカール防止及び搬送性などの改良のために、裏面層を設けてもよい。裏面層には、特に限定するものではないが、顔料とバインダ系(例えば、コロイダルシリカとアクリル系エマルション型バインダ等)、有機エマルジョン系(例えば、シリコン系エマルジョン型バインダ、アクリル系エマルジョン型バインダ等)、親水性・疎水性の接着剤系(例えば、澱粉やポリビニルアルコールの塗膜)、ラミネート(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)等からなるものが挙げられる。
【0068】
さらに、裏面にインクジェット記録体や他の記録体を貼り合わせて両面記録体としたり、裏面に粘着剤層を形成してラベルとしたり、磁気カードやICカードの表面に貼り合わせてカードとしたりなど、公知の手段を施すことができる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
また、以下に示す実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ水を除く固形分の「質量部」および「質量%」を示す。
【0070】
<実施例1>
[紙基材]
木材パルプ(LBKP;ろ水度400mlCSF)100質量部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス)5質量部、市販サイズ剤0.05質量部、硫酸バンド1.5質量部、湿潤紙力剤0.5質量部、澱粉0.75質量部よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量180g/mの紙基材を製造した。
【0071】
[下塗り層塗工液]
水に分散剤(東亞合成(株)製、商品名:アロンSD−10)を0.5部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ1407K)を0.05部、カチオン性樹脂(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M)10部を添加し、更に平均粒子径7μmの無定形シリカ(グレースジャパン(株)製、商品名:サイロジェットP407)100部を添加・分散した。これに加熱・溶解した変性PVA((株)クラレ製、商品名:PVA R−1130)10部を添加し、蛍光染料(住友化学(株)製、商品名:ホワイテックスBP−S)を2部、紫染料(大日精化(株)製、商品名:DC−Violet XRN)0.1部、青染料(大日精化(株)製、商品名:DC−Blue XB)0.05部を添加し、固形分濃度20%の下塗り層塗工液を調製した。
【0072】
[カチオン性シリカ微粒子]
平均粒子径1.0μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製、商品名:エアロジルA300、平均1次粒子径 約8nm)を用い、ホモミキサにより分散した後、平均粒子径が50nmになるまで高速流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散し、10質量%のシリカの水分散液を調製した。
前記10質量%水分散液100質量部に、5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M、分子量30万)10質量部を添加し、高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、平均粒子径が0.10μmのシリカ−カチオン性化合物の10質量%水分散液を調製した。
【0073】
[インク受容層塗工液]
カチオン性シリカ微粒子100部に、接着剤としてPVA((株)クラレ製、商品名:PVA−145、重合度4500、ケン化度99%)10部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777)0.1部を混合・攪拌し、固形分濃度12%のインク受容層塗工液を調製した。
[硼砂液]
水に硼砂(シオノギ製薬(株)製、商品名:硼砂)100部と濡れ剤(ライオン(株)製、商品名:レオックス2160C)0.05部を混合・攪拌し、固形分濃度4%の硼砂液を調製した。
[光沢発現層塗工液a]
水にコロイド状粒子としてコロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックスAK−L、平均粒子径:45nm、1次粒子)100部、接着剤として完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA124、ケン化度=98%)10部、アクリル系樹脂(サイデン化学(株)製、商品名:サイビノールE67)5部、染料定着剤としてカチオン性樹脂(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M)10部を含有する組成液を混合し、更にゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)5部、ポリオキシエチレンラウリルアミン(日本油脂(株)製、商品名:ナイミーンL−207、エチレンオキサイドユニット=7)5部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ライオン(株)製、商品名:レオックス2008C)5部を添加・混合し、固形分濃度5%の光沢発現層用塗工液aを調製した。
【0074】
[インクジェット記録体の作製]
作製した紙基材の一方の面側に、下塗り層塗工液を乾燥後の塗工量が8g/mになるように塗工・乾燥した後、硼砂液を乾燥後の塗工量が1g/mとなるように塗工・乾燥した。この表面にインク受容層塗工液を乾燥後の重量が8g/mとなるように塗工・乾燥した。
さらに、このインク受容層上に光沢発現層塗工液aを塗工した後、予めオクタデカン酸および酸化アルミニウム微粉末でバフ掛け処理した表面温度が95℃の鏡面ドラムに直ちに圧接して乾燥し、剥離させてインクジェット記録体を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1g/mであった。
【0075】
<比較例1>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液bに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液b]
光沢発現層塗工液aの完全ケン化ポリビニルアルコールを部分ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA224、ケン化度=88%)10部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液bを調製した。
【0076】
<比較例2>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液cに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液c]
光沢発現層塗工液aの完全ケン化ポリビニルアルコールを部分ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA420、ケン化度=80%)10部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液cを調製した。
【0077】
<比較例3>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液dに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液d]
光沢発現層塗工液aのゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)を0部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液dを調製した。
【0078】
<比較例4>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液eに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液e]
光沢発現層塗工液aのアクリル系樹脂(サイデン化学(株)製、商品名:サイビノールE67)を0部、ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)を0部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液eを調製した。
【0079】
<比較例5>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液fに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液f]
光沢発現層塗工液aのアクリル系樹脂(サイデン化学(株)製、商品名:サイビノールE67)を0部、ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)を0部、ポリオキシエチレンラウリルアミン(日本油脂(株)製、商品名:ナイミーンL−207、エチレンオキサイドユニット=7)を0部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液fを調製した。
【0080】
<比較例6>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液gに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液g]
光沢発現層塗工液aの完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA124、ケン化度=98%)を0部、アクリル系樹脂(サイデン化学(株)製、商品名:サイビノールE67)を0部、ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)を0部、ポリオキシエチレンラウリルアミン(日本油脂(株)製、商品名:ナイミーンL−207、エチレンオキサイドユニット=7)を0部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液gを調製した。
【0081】
<実施例2>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液hに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液h]
光沢発現層塗工液aの完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA124、ケン化度=98%)を5部、ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)を10部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液hを調製した。
【0082】
<実施例3>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液iに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液i]
光沢発現層塗工液aの完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA124、ケン化度=98%)10部、ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)1部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液iを調製した。
【0083】
<比較例7>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液jに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液j]
光沢発現層塗工液aの完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA124、ケン化度=98%)0部、ゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)15部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液jを調製した。
【0084】
<比較例8>
[光沢発現層塗工液k]
光沢発現層塗工液aのゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)5部をカゼイン(アンモニア水を対カゼイン10部として濃度10%に溶解)とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液kを調製したが、塗料が凝固して調製できなかった。
[インクジェット記録体の作製]
光沢発現層塗工液kが調製できなかったため、インクジェット記録体は得られなかった。
【0085】
<実施例4>
光沢発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液lに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液l]
光沢発現層塗工液aに変性ポリエチレンエマルジョン(日新化学研究所(株)製、商品名:ペルトールN856)5部を更に添加した以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液lを調製した。
【0086】
<実施例5>
実施例3において、光沢発現層の塗工量を5g/mとした以外は実施例3と同様にして、インクジェット記録体を得た。ただし、光沢発現層塗工液iの濃度は25%とした。
<実施例6>
実施例3において、光沢発現層の塗工量を2g/mとした以外は実施例3と同様にして、インクジェット記録体を得た。ただし、光沢発現層塗工液iの濃度は15%とした。
【0087】
<実施例7>
光沢層発現層塗工液aを下記光沢発現層塗工液mに変更した以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液m]
光沢発現層塗工液aのアクリル系樹脂(サイデン化学(株)製、商品名:サイビノールE67)を0部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液mを調製した。
【0088】
<比較例9>
光沢層発現層塗工液aに替えて光沢発現層塗工液nとした以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録体を得た。
[光沢発現層塗工液n]
光沢発現層塗工液aのコロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックスAK−L、平均粒子径:45nm、1次粒子)に替えて無定形シリカ((株)トクヤマ製、商品名:ファインシールx−45、平均二次粒子径:4μm、平均一次粒子径:30nm、2次粒子)100部とした以外は光沢発現層塗工液aと同様にして、光沢発現層塗工液nを調製した。
<比較例10>
実施例5において、インク受容層の塗工量を4g/mとした以外は実施例5と同様にして、インクジェット記録体を得た。
【0089】
<評価方法>
インクジェット記録体のインク吸収性、記録画像の鮮明性、プリンタ給紙時の耐傷性、光沢性、及び生産性について、下記に示す方法で評価し、その結果を表1に示した。
なお、記録画像の鮮明性の評価は、記録画像の色濃度を測定することにより行った。
インクジェットプリンタには、CANON社製、商標:iP−4300、印字モード:光沢紙、きれいモードを用いた。
【0090】
「インク吸収性(印字斑)」
インクジェット記録体にグリーン色インクをベタ印字し、ベタ印字画像中に斑があるかどうかを目視で観察し、下記の5段階にて評価した。
印字斑は、先に打ち込まれたインクが、インクジェット記録体の塗工層に完全に吸収されないうちに、次のインクが飛来して表面で重なった場合に生ずる現象であり、インク吸収速度が遅くなると、顕著に現れるものである。
5:印字斑は全く見られない。
4:印字斑は少し見られるが、実用上問題ないレベル。
3:印字斑やや多いが、実用上問題ないレベル。
2:印字斑が多く、実用上問題のあるレベル。
1:印字斑が非常に多く、実用不可。
【0091】
「記録画像の鮮明性(印字濃度)」
インクジェット記録体に黒色インクでベタ印字し、その色濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Gretag Macbeth RD−19、マクベス社製)で測定した。尚、色濃度を測定する場合のみ、印字モードを光沢紙、きれいモード、マッチングしないに設定した。
【0092】
「プリンタ給紙時の耐傷性」
インクジェット記録体をプリンタiP4300下部の給紙トレイに印刷面を下向きにセットし、プリンタ内部で記録体を回転させて印刷面を上向きにしてから印刷する給紙方法(C型給紙)により、記録体全面に、黒ベタでの印字を行った後、印字部表面の傷を目視で観察した。
5:傷は全く見られない。
4:傷は少し見られるが、実用上問題ないレベル。
3:傷がやや多いが、実用上問題ないレベル。
2:傷が多く、実用上問題のあるレベル。
1:傷が非常に多く、実用に耐えないレベル。
【0093】
「光沢度」
20度鏡面光沢度の評価は、記録体表面を、JIS−Z8741に準拠して、村上色彩技術研究所製デジタル光沢計(GM−26D)を用い、入反射角度20度で測定した。
5:光沢度が30%以上で、非常に優れた光沢をもつレベル。
4:光沢度が20%以上30%未満で、優れた光沢をもつレベル。
3:光沢度が15%以上20%未満で、実用上問題ないレベル。
2:光沢度が10%以上15%未満で、実用上問題のあるレベル。
1:光沢度が10%未満で、実用に耐えないレベル。
【0094】
「生産性」
インクジェット記録体の最表層を塗工・凝固処理した後、90℃に加熱した鏡面ドラムに圧着し光沢処理を施し、6秒後に、鏡面ドラムからインクジェット記録体を剥がしとった。このときの鏡面表面に、インクジェット記録体の塗工層の残留があるかどうかと、剥離の際の重さを考慮して下記の基準で評価した。
6:ドラム表面に残留は全く無く、また、剥離も軽く、生産性が極めて高い(更にスピードアップの可能性がある)。
5:ドラム表面に残留は全く無くが、剥離がやや重く、生産性が極めて高い(但し、更にスピードアップの可能性はない)。
4:ドラム表面に残留はほとんど無く、離型性に優れ、生産性が高い(但し、更にスピードアップの可能性はない)。
3:ドラム表面に残留がややみられるが通常に生産できる。
2:ドラム表面に残留が多く見られ、記録体の塗工層の一部欠落も視認でき、離型性に劣り、生産性が低い。
1:ドラム表面に塗工層が付着し、記録体の塗工層が欠落し、離型性に非常に劣り、生産性が極めて悪い。
【0095】
【表1】

【0096】
表1から明らかなように、本実施例の光沢インクジェット記録体は、光沢性とインク吸収を両立し、プリンタ給紙時の傷が付きにくく、生産性にも優れている。
これに対し、比較例は、いずれかの評価項目で少なくとも実用上問題となるレベルと評価されることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透気性基材上に、顔料および接着剤を含有する少なくとも1層のインク受容層と、光沢発現層を順次積層してなるインクジェット記録体において、該光沢発現層は、少なくともコロイド状粒子、ケン化度98%以上のポリビニルアルコール、およびゼラチンを含有し、インク受容層よりも塗工量が少なく、且つキャスト処理を施した層であることを特徴とするインクジェット記録体。
【請求項2】
光沢発現層が、接着剤として水分散性接着剤を含むことを特徴とする、請求項1記載のインクジェット記録体。
【請求項3】
光沢発現層が、脂肪族アミン類または脂肪族アミド類のエチレンオキサイド付加物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のインクジェット記録体。

【公開番号】特開2010−142977(P2010−142977A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319851(P2008−319851)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】