説明

インクジェット記録媒体の製造方法

【課題】高い印画濃度が得られ、塗布欠陥が抑制されたインクジェット記録媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、少なくとも、(A)気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む塗布液Aと、(B)擬ベーマイト状アルミナ水和物を含み、該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する水溶性バインダーの含有率及び該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する架橋剤の含有率がいずれも3質量%未満である塗布液Bと、(C)架橋剤を含む塗布液Cと、を該支持体側からこの順となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報技術産業の急速な発展に伴ない、種々の情報処理システムが開発されると共に、各々の情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も実用化されている。これらの中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から広く利用されるようになっている。そして、インクジェット記録方法を利用した記録では、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきている。
【0003】
インクジェット記録用の記録材料は一般に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)ドット径が適正で均一であること(滲みのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)画像部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)白色度が高いこと、(9)保存安定性が高いこと(長期保存で黄変着色や画像の滲みのないこと)、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(低カールであること)、(11)ハード走行性が良好なこと等の特性を持つことが求められている。
【0004】
上記に鑑み、近年ではインクを受容する層が多孔質構造を有するインクジェット記録媒体(インクジェット記録材料)が実用化され、種々の検討がなされている。
例えば、塗工欠陥を抑制し、且つ良好なインク吸収性を得る技術として、基材上に架橋剤を含有する第一の塗工液を塗布する第一の工程、次いで、第一の工程における塗布と同時ないし第一の塗工液が乾燥固化する前に、無機微粒子及びバインダーを含有する第二の塗工液を塗布して架橋硬化させる第二の工程によりインク受容層を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、インク吸収性、光沢性、印字濃度を高める技術として、耐水性支持体上に少なくとも2層のインク受容層を設け、該耐水性支持体に近いインク受容層を、気相法シリカ、ほう酸またはほう酸塩、及び重合度3000未満のポリビニルアルコールを含有するインク受容層(A)とし、耐水性支持体から遠いインク受容層を、アルミナまたはアルミナ水和物、ほう酸またはほう酸塩、及び重合度3000以上のポリビニルアルコールを含有するインク受容層(B)とする技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、フォトライクな高い光沢を有し、インク吸収性、発色性、及び生産性に優れ、かつ印字部周辺に変色がない技術として、支持体上に設けたインク受容層のうち、少なくとも1層が平均二次粒子径500nm以下の無機微粒子とアセトアセチル基を有する樹脂バインダー、及び末端ヒドラジノ基を2個以上有する化合物を含有するインクジェット記録材料において、インク受容層の少なくとも1層がpKa値が2乃至5である有機酸を含有する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−230599号公報
【特許文献2】特開2002−225423号公報
【特許文献3】特開2007−69593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インク受容層に、擬ベーマイト状アルミナ水和物、水溶性バインダー及び架橋剤を含有させる系では凝集が起こりやすく、クラック等の塗布欠陥が生じやすいことが明らかとなった。従って、上記従来の技術のみでは高い印画濃度及び塗布欠陥の抑制を両立できるとは限らない。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、高い印画濃度が得られ、塗布欠陥が抑制されたインクジェット記録媒体の製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 支持体上に、少なくとも、(A)気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む塗布液Aと、(B)擬ベーマイト状アルミナ水和物を含み、該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する水溶性バインダーの含有率及び該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する架橋剤の含有率がいずれも3質量%未満である塗布液Bと、(C)架橋剤を含む塗布液Cと、を該支持体側からこの順となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含むインクジェット記録媒体の製造方法である。
<2> 前記気相法シリカ及び前記擬ベーマイト状アルミナ水和物の平均一次粒子径が3〜20nmであることを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法である。
【0009】
<3> 前記支持体が原紙であり、形成された前記インク受容層の表面が鏡面ロールを有するカレンダー装置によりカレンダー処理されていることを特徴とする<1>又は<2>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法である。
<4> 前記支持体が耐水性支持体であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のインクジェット記録媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い印画濃度が得られ、塗布欠陥が抑制されたインクジェット記録媒体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、支持体上に、少なくとも、(A)気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む塗布液Aと、(B)擬ベーマイト状アルミナ水和物を含み、該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する水溶性バインダーの含有率及び該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する架橋剤の含有率がいずれも3質量%未満である塗布液Bと、(C)架橋剤を含む塗布液Cと、を該支持体側からこの順となるように(即ち、該支持体側からみて塗布液A、塗布液B、塗布液Cの順となるように)塗布してインク受容層を形成する工程を含んで構成される。インク受容層は、必要に応じ更にその他の塗布液を塗布して形成されていてもよい。
【0012】
擬ベーマイト状アルミナ水和物は印画濃度の向上に寄与する成分であるが、インク受容層に、擬ベーマイト状アルミナ水和物、水溶性バインダー及び架橋剤を含有させる系では凝集や塗布液の増粘が起こりやすく、該塗布液を塗布して形成された塗布層に塗布欠陥が生じやすいことが明らかとなった。
そこで、インクジェット記録媒体の製造方法を上記本発明の構成とすることにより、擬ベーマイト状アルミナ水和物と架橋剤と水溶性バインダーとの接触が抑えられるため、塗布欠陥の発生が効果的に抑制される。このため、高い印画濃度が得られ、かつ、塗布欠陥も抑制されたインクジェット記録媒体を製造することができる。
【0013】
<塗布液の調製>
本発明において、塗布液A、塗布液B、及び塗布液Cを調製する方法としては特に限定はなく、各塗布液に含まれる各成分を混合し、撹拌する公知の方法を用いることができる。
塗布欠陥をより効果的に抑制する観点からは、塗布液A又は塗布液Bの調製においては、まず、微粒子分散液(気相法シリカ分散液又は擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液)を調製しておき、その後、調製した微粒子分散液と他の成分とを混合する方法が好ましい。
この際、予め微粒子分散液及び他の成分を同じ温度で保温しておき、保温した状態で混合する形態が好ましい。具体的な温度としては、塗布液Aの調製においては15〜45℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。塗布液Bの調製においては40〜70℃が好ましく、45〜60℃がより好ましい。
【0014】
<塗布>
本発明において、塗布液A、塗布液B、及び塗布液Cの塗布は、塗布液A、塗布液B、及び塗布液Cを同時重層塗布することにより行ってもよいし、塗布液A、塗布液B、及び塗布液Cを逐次塗布することにより行ってもよいし、同時重層塗布と逐次塗布とを組み合わせて行ってもよい。
ここで、塗布は公知の塗布方式にて行うことができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等が挙げられる。
【0015】
前記逐次塗布は、例えば、塗布液A、塗布液B、塗布液Cの順序で1液ずつ塗布する方法である。
本発明において逐次塗布を用いる場合の形態としては、(1)塗布液A、塗布液B、塗布液Cの順序で1液ずつ塗布する形態、(2)塗布液A及び塗布液Bを同時重層塗布した後、塗布液Cを逐次塗布する形態、(3)塗布液Aを逐次塗布した後、塗布液B及び塗布液Cを同時重層塗布する形態、等が挙げられる。
逐次塗布の際は、既に支持体上に塗布した塗布液(以下、「下層側の塗布液」ともいう)が乾燥する前に次の塗布液を塗布してもよいし、下層側の塗布液が乾燥した後に次の塗布液を塗布してもよい。また、例えば、特開2005−14593号公報段落0016〜0037に記載の「Wet−On−Wet法(WOW法)」を用いてもよい。
【0016】
一方、前記同時重層塗布は、塗布液A、塗布液B、及び塗布液Cのうち少なくとも2つ(好ましくは全塗布液)を、乾燥工程を設けず同時に塗布する方法である。
上記のうち、各塗布液中の各成分の混合を抑制する観点や、生産効率の観点からは、同時重層塗布が好ましく、中でも、スライドビード方式、カーテン方式等を用いた同時重層塗布がより好ましい。
また、同時重層塗布では、各塗布液を保温した状態で塗布することが好ましい。このときの各塗布液の温度としては、35〜55℃が好ましく、40〜50℃がより好ましい。
【0017】
<乾燥>
前記塗布により形成された塗布膜(インク受容層)は、公知の方法により乾燥させることができる。
乾燥温度としては、支持体の耐熱性にも依存するが、10〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜80℃である。
また、塗布後、インク受容層を充分に乾燥させた後、支持体に悪影響を与えない範囲で熱処理を行なうことにより、インク受容層の細孔容積を大きくできるので、インク吸収性が良好になり、さらにインク受容層の耐水性も向上させることができる。熱処理する温度は、支持体の耐熱性にも依存するが、30〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜60℃である。
【0018】
<インク受容層>
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法では、支持体側から、塗布液A、塗布液B、塗布液Cの順に積層されて支持体上にインク受容層が形成される。
形成されたインク受容層は、塗布液Aにより得られた層、塗布液Bにより得られた層、及び塗布液Cにより得られた層のように、少なくとも3層からなる積層構造を明確に認識できる状態となっていてもよいし、層同士の界面が混ざり合って積層構造を明確に認識できない状態となっていてもよい。
形成されたインク受容層の総厚みとしては特に限定はないが、インク吸収性の観点からは20〜60μmが好ましく、30〜50μmがより好ましい。
【0019】
以下、インク受容層中(即ち、塗布液A、塗布液B、及び塗布液C中)の各成分について説明し、引き続き、支持体について説明する。
【0020】
<擬ベーマイト状アルミナ水和物>
本発明における塗布液Bは、擬ベーマイト状アルミナ水和物の少なくとも1種を含有する。擬ベーマイト状アルミナ水和物は、必要に応じ塗布液B以外のその他の塗布液に含有されていてもよい。
【0021】
前記擬ベーマイト状アルミナ水和物は、Al・nHO(1<n<3)の構成式で表され、nが1より大きく3未満であるときのアルミナ水和物をさす。
以下、擬ベーマイト状アルミナ水和物を、単に「アルミナ水和物」ともいう。
【0022】
前記アルミナ水和物は、結晶質でも非晶質でもよく、その形状については、不定形や、球状、板状等のいずれか1つであってもよいし、複数が組み合わされたものであってもよい。
前記アルミナ水和物の平均一次粒子径としては、3〜30nmが好ましく、3〜20nmがより好ましい。前記アルミナ水和物のアスペクト比としては2以上であることが好ましい。
【0023】
前アルミナ水和物は、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で50〜300nm程度まで粉砕したものを好ましく使用できる。
【0024】
本発明のアルミナ水和物の分散には、乳酸、酢酸、蟻酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、塩化アルミニウム等の酸を使用してもよい。
【0025】
本発明において、アルミナ水和物の平均一次粒子径は、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めることができる。なお、平均一次粒子径は、市販品メーカー公称値を用いてもよい。
紡錘状粒子の場合、平均粒径は長径と短径の平均で得られる。平板状アルミナ水和物の平均厚さは、アルミナ水和物をフィルム上に塗布したシートの断裁面の観察より得られ、アルミナ水和物のアスペクト比は平均厚みに対する平均粒径の比として求めることができる。アルミナ水和物の平均二次粒子径は、希薄分散液を用い、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置にて測定することができる。
なお、後述の気相法シリカ微粒子の平均一次粒子径及び平均二次粒子径についてもアルミナ水和物と同様の方法で求めることができる。
【0026】
アルミナ水和物の平均細孔半径としては、インク受容層のインク吸収速度を良好にする点で、1〜10nmであることが好ましく、特に2〜7nmであることが好ましい。平均細孔半径が前記範囲内であると、インク吸収性が良好であり、インク中の染料の定着が良好で画像滲みの発生も回避できる。
【0027】
アルミナ水和物の細孔容積としては、インク受容層のインク吸収容量を良好にする点で、0.1〜0.8ml/gの範囲が好ましく、特に0.4〜0.6ml/gの範囲が好ましい。インク受容層の細孔容積が前記範囲内であると、インク受容層でのクラックや粉落ちの発生を回避でき、インクの吸収が良好になる。また、細孔半径2nm〜10nmにおける細孔容積は0.1ml/g以上であるのが望ましい。この範囲内であると、インク中の染料の吸着が良好になる。さらに、インク受容層の単位面積当たりの溶媒吸収量としては、5ml/m以上が好ましく、特に好ましくは10ml/m以上である。単位面積当たりの溶媒吸収量が前記範囲内であると、特に多色印字を行なった場合のインク溢れを防止できる。
【0028】
アルミナ水和物がインク中の染料を充分に吸収し、定着するためには、アルミナ水和物のBET比表面積が70〜300m/gの範囲であることが好ましい。BET比表面積が前記範囲内であると、アルミナ水和物の分散を良好に行なえると共に、細孔径分布が片寄らずにインク中の染料の定着効率が良好になり、画像滲みも回避できる。
【0029】
アルミナ水和物の分散液の濃度を上げるためには、アルミナ水和物の表面水酸基の数は1020個/g以上であることが好ましい。表面水酸基の数が少ないと、アルミナ水和物が凝集しやすくなり、分散液の濃度を上げるのが困難になる。
【0030】
なお、アルミナ水和物は、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等公知の方法によって製造することができる。また、アルミナ水和物の粒子径、細孔径、細孔容積、比表面積、表面水酸基の数等は、析出温度、熟成時間、液pH、液濃度、共存塩類等によって制御することができる。
【0031】
例えば、特開昭57−88074号、同62−56321号、特開平4−275917号、同6−64918号、同7−10535号、同7−267633号公報、米国特許第2,656,321号明細書、Am.Ceramic Soc.Bull.,54,289(1975)等にアルミニウムアルコキシドを加水分解する方法が開示されている。これらのアルミニウムアルコキシドとしてはイソプロポキシド、プロポキシド、2−ブトキシド等が挙げられる。この方法では非常に純度の高いアルミナ水和物を得ることができる。
【0032】
その他、アルミナ水和物を得る方法としては、特開昭54−116398号、同55−23034号、同55−27824号、同56−120508号等の各公報に例示されているように、アルミニウムの無機塩またはその水和物を原料として得る方法が一般的である。これらの無機塩としては、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アンモニウムミョウバン、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、水酸化アルミニウム等の無機塩等、及びこれら無機塩の水和物等を挙げることができる。
【0033】
具体的には、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の酸性のアルミニウム塩水溶液と、アルミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア水等の塩基性水溶液との中和反応によって、アルミナ水和物を製造することができる。この場合、液中に生成するアルミナ水和物の量が5質量%を超えない範囲で混合し、pHは6〜10、温度20〜100℃の条件下で反応させることが一般的である。また、特開昭56−120508号公報に記載の、pHを酸側及び塩基側に交互に変動させてアルミナ水和物の結晶を成長させる方法、特公平4−33728号公報に記載の、アルミニウムの無機塩から得られるアルミナ水和物とバイヤー法で得られるアルミナとを混合し、アルミナを再水和する方法、等によっても製造することができる。
【0034】
また、印画濃度の観点からは、インク受容層中の擬ベーマイト状アルミナ水和物の総量としては、5〜35g/mが好ましく、10〜25g/mがより好ましい。
また、ひび割れ抑制及びインク吸収性向上の両立の観点からは、擬ベーマイト状アルミナ水和物の塗布液B中における含有量としては、塗布液Bの全固形分に対し、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
【0035】
<気相法シリカ>
本発明における塗布液Aは、気相法シリカを少なくとも1種含有する。気相法シリカは、必要に応じ塗布液A以外のその他の塗布液に含有されていてもよい。
合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、(1)ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または(2)このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、(3)シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には(4)シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
【0036】
本発明に用いられる気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されており入手することができる。
本発明における気相法シリカの平均一次粒子径としては、より高い光沢を得る観点から、3〜50nmが好ましく、3〜20nmがより好ましい。
一般的には気相法シリカは凝集して適度な空隙を有する二次粒子となっており、好ましくは一次粒子の平均粒径が3〜50nmの気相法シリカを用いて、500nm以下、好ましくは180〜400nmの二次粒子になる迄超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕、分散させたものが光沢性とインク吸収性が良好であり好ましい。
【0037】
印画濃度をより向上させる観点からは、気相法シリカの平均一次粒子径と、前述の擬ベーマイト状アルミナ水和物の平均一次粒子径と、のいずれもが3〜20nmであることが好ましく、7〜12nmであることが特に好ましい。
【0038】
また、インク吸収性の観点からは、インク受容層中の気相法シリカの総量としては、3〜15g/mが好ましく、5〜11g/mがより好ましい。
また、インク吸収性向上とひびわれ抑制との両立の観点からは、気相法シリカの塗布液A中における含有量としては、塗布液Aの全固形分に対し、70〜90質量%が好ましく、75〜85質量%がより好ましい。
【0039】
<水溶性バインダー>
本発明における塗布液Aは、水溶性バインダーを少なくとも1種含有する。塗布液A中における水溶性バインダーは、同一であっても異なっていてもよい。
前記水溶性バインダーは、必要に応じ塗布液A以外のその他の塗布液に含有されていてもよい。
ただし、前記水溶性バインダーを塗布液B中に含む場合には、該塗布液B中の擬ベーマイトアルミナ水和物に対し水溶性バインダーの含有率は3質量%未満であることが必要である。該含有率が3質量%以上であると、塗布欠陥が悪化する。塗布欠陥の観点からは、塗布液Bは水溶性バインダーを含有しないことが好ましい。
また、架橋剤を含む塗布液Cには架橋剤とのゲル化を抑制するためにも水酸基を含まない水溶性バインダーを必要に応じて添加することが好ましい。
【0040】
上記水溶性バインダーとしては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
【0041】
上記の中でも、本発明に用いる水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂が好ましい。
【0042】
ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂としては、完全または部分けん化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールを用いることができる。特に好ましいのはけん化度が80%以上の部分または完全けん化したものである。
【0043】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載のような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0044】
インク受容層の強度及びインク吸収性の観点からは、ポリビニルアルコール系樹脂としては、重合度3000以上のポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
好ましい重合度の上限は6000程度である。尚、本発明で重合度は平均重合度を表し、一層で平均重合度の異なるポリビニルアルコールを使用する場合には各々の重合度の平均を意味する。
また、塗布適性等も考慮し、塗布液Bに重合度3500以上のポリビニルアルコールを用いてもよい。
【0045】
また、インク吸収性向上及びひび割れ抑制の観点からは、インク受容層中の水溶性バインダーの総量としては、2〜8g/mが好ましく、3〜6g/mがより好ましい。
また、インク吸収性向上及びひび割れ抑制の観点からは、水溶性バインダーの塗布液A中における含有量としては、塗布液Aの全固形分に対し、10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
【0046】
<架橋剤>
本発明における塗布液Cは、水溶性バインダーを架橋する架橋剤の少なくとも一種を含有する。架橋剤を含有することにより、水溶性バインダーを架橋して硬膜することができる。これより、擬ベーマイト状アルミナ水和物を用いて構成されるインク受容層の膜強度、成膜性及び耐水性を向上できる。
前記架橋剤は、必要に応じ塗布液C以外のその他の塗布液に含有されていてもよい。
ただし、前記架橋剤を塗布液B中に含む場合には、該塗布液B中の擬ベーマイトアルミナ水和物に対し架橋剤の含有率は3質量%未満であることが必要である。該含有率が3質量%以上であると、塗布欠陥が悪化する。塗布欠陥の観点からは、塗布液Bは架橋剤を含有しないことが好ましい。
同様に、塗布液A中の架橋剤の含有率も、塗布液A中の気相法シリカに対し3質量%未満であることが好ましく、0質量%(即ち、塗布液Aに架橋剤を含有しない形態)がより好ましい。
【0047】
架橋剤は、その1種もしくは2種以上を水系溶媒に溶解した水溶液として用いることができる。水系溶媒は、純粋やイオン交換水等の水のほか、水と該水に可溶性の有機溶媒との混合溶媒を用いることができ、詳細については後述する。
【0048】
架橋剤としては、インク受容層に含まれる水溶性バインダーとの関係で好適なものを適宜選択すればよい。中でも、PVAを含有する場合、架橋反応が迅速である点で、ホウ酸及び/又はその塩が好ましい。ホウ酸には、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸等を使用でき、ホウ酸塩にはこれらの可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)が好ましく、具体的には、Na・10HO、NaBO・4H0、K・5HO、NHHB・3HO、NHBO等が挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
水溶性バインダーとしてゼラチンをPVAと共に併用する場合などには、ホウ酸及びその塩以外の下記化合物も架橋剤として用いることができる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3017280号明細書、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3100704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
【0050】
架橋剤は、一種単独で用いるほか、二種以上を併用してもよい。
架橋剤のインク受容層中における総含有量としては、水溶性バインダーの総量100質量部に対して、5〜40質量部が好ましく、15〜35質量部がより好ましい。架橋剤の含有量が前記範囲であると、ひび割れ等の防止に有効である。
また、ホウ酸及び/又はその塩を用いる場合、ホウ酸及び/又はその塩の総量は、HBO換算でPVAに対して5〜40質量%が好ましく、より好ましくは15〜35質量%である。総量を前記範囲内にすることにより、調製する塗布液の粘度上昇を抑えつつ、成膜性及び耐水性を向上できる。
【0051】
また、インク吸収性向上及びひび割れ抑制の観点からは、インク受容層中の架橋剤の総量としては、0.2〜3.0g/mが好ましく、0.4〜1.5g/mがより好ましい。
また、塗布欠陥をより抑制する観点からは、インク受容層中における架橋剤の含有量としては、擬ベーマイト状アルミナ水和物に対し、2〜8質量%が好ましく、3〜6質量%がより好ましい。
【0052】
<その他の成分>
本発明におけるインク受容層(即ち、塗布液A、塗布液B、塗布液C、及びその他の塗布液の少なくとも1つ)には、必要に応じ、下記のその他の成分を含有していてもよい。
【0053】
(カチオン性化合物)
本発明のインク受容層は、耐水性改良目的等でカチオン性化合物を含有するのが好ましい。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーは、気相法シリカと組み合わせて用いた場合、透明性を低下させる傾向にあり、水溶性金属化合物は逆に透明性が向上する。インク受容層に発生する微細な亀裂を抑える為と推定される。
【0054】
本発明に用いられるカチオン性化合物としては、例えばカチオン性ポリマーや水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000〜10万程度が好ましい。
【0055】
これらのカチオン性ポリマーの使用量は前記無機微粒子に対して1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%である。
【0056】
本発明に用いられる水溶性金属化合物として、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。中でも透明性、耐水性改良効果の高いジルコニウム系化合物が好ましい。
【0057】
また、カチオン性化合物として、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が挙げられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0058】
[Al(OH)Cl6−n ・・・ 式1
[Al(OH)AlCl ・・・ 式2
Al(OH)Cl(3n−m)、0<m<3n ・・・ 式3
【0059】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できるが、pHが不適当に低い物もあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。
【0060】
本発明において、上記水溶性の金属化合物のインク受容層中の含有量は、0.1g/m〜10g/m、好ましくは0.2g/m〜5g/mである。
【0061】
上記したカチオン性化合物は2種以上を併用することができる。例えば、カチオン性ポリマーと水溶性金属化合物を併用してもよい。
【0062】
本発明におけるインク受容層は、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することが好ましいが、そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0063】
(硬膜剤)
本発明において、インク受容層には、耐水性、ドット再現性を向上させる目的で上記架橋剤以外の硬膜剤を添加することができる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム等がある。好ましくは有機チタニウム化合物をほう酸、ほう酸塩と併用することで粘度を大きく上げないでチキソトロピー係数を上げることができる。
【0064】
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0065】
<支持体>
本発明における支持体としてはインク受容層を形成し得るものであれば特に限定はなく、例えば、原紙を用いてもよいし、耐水性支持体を用いてもよい。
支持体の厚みとしては特に限定はないが、50〜250μmが好ましい。
【0066】
(原紙)
前記原紙としては、例えば、LBKP、NBKP、LBSP、NBSP、LUKP、NUKP、LUSP、NUSP等の化学パルプ、GP、TMP等の機械パルプ等のバージンパルプ、新聞古紙、雑誌、オフィス古紙等からの再生パルプを用いて抄紙されたものを用いることができる。
【0067】
原紙には填料として、平均粒径が0.3〜10μmの白色顔料、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、カオリン、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、硫酸バリウム等の少なくとも1種を全パルプの固形分に対して2〜30質量%、好ましくは4〜30質量%使用される。白色顔料の平均粒径が0.3μm以上であれば歩留まりをより向上させることができ、白色顔料の平均粒径が10μm以下であれば紙の地合をより向上できる。
特にJIS−M8016で規定される白色度が88%以上の白色顔料が好ましく用いられる。白色顔料の含有率が2質量%以上であればより白い原紙を得ることができ、白色顔料の含有率が30質量%以下であれば原紙の強度をより向上させることができ、製造工程での汚れをより抑制できる。
原紙には一般に製紙で用いられている各種サイズ剤、紙力増強剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0068】
さらに、原紙には、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0069】
原紙の厚さは、70〜200μmが好ましい。紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどして厚さを調整する。
【0070】
本発明における支持体として原紙を用いる場合は、光沢性等の観点から、形成されたインク受容層の表面をカレンダー処理する工程を更に含むことが好ましい。前記カレンダー処理は、例えば、鏡面ロール(鏡面ドラム)を有するカレンダー装置により行うことができる。
カレンダー処理の条件としては、加熱された鏡面ドラム面と圧接ロールとのニップ間で最上層に接触させる再湿潤液の温度を92℃以上、好ましくは95℃以上とし、かつ、湿潤時間を25mm秒以下、好ましくは20mm秒以下とするとともに、湿潤状態にある最上層を圧接する鏡面ドラム面の温度を95℃以上、好ましくは97℃以上にすることが好ましい。
【0071】
(耐水性支持体)
前記耐水性支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム、樹脂被覆紙等が用いられる。
【0072】
前記樹脂被覆紙は、前述の原紙の少なくとも一方の面(好ましくは両面)を樹脂で被覆したものを指す。
前記樹脂としては、密度が0.91〜0.93g/cmの低密度ポリエチレン、密度が0.94〜0.96g/cmの高密度ポリエチレン、中間密度の中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であるポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。特に取り扱い性からポリオレフィン樹脂が好ましく使用され、特に密度が0.91〜0.93g/cmの低密度ポリエチレンを該樹脂被覆層の全樹脂固形分の50質量%以上含有させることが好ましい。
【0073】
また、樹脂被覆紙の少なくともインク受容層を設ける側の樹脂被覆層中には、平均粒径が0.1〜1μmである、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の白色顔料の少なくとも1種を全樹脂の固形分に対して5〜20質量%、好ましくは7〜15質量%含有させることができる。平均粒径が0.1μmより小さい白色顔料は隠蔽効果が小さく、1μmより大きいと樹脂層の表面性が低下する。特にJIS−M8016で規定される白色度が88%以上の白色顔料が好ましく用いられる。白色顔料を樹脂の固形分に対して5質量%以上とすることにより、基紙の厚さが薄い場合でも樹脂被覆紙の不透明度が充分得られる。また、20質量%以下にすることにより、樹脂層表面が傷の発生等による不均一が抑えられ、強度が保てる。その他の添加剤としてステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加える。
【0074】
樹脂被覆紙の主な製造方法としては、走行する基紙上に熱可塑性樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、基紙が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。裏面の樹脂被覆層は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。
【0075】
樹脂被覆紙のインク受容層が形成される表側樹脂層は、主として原紙の片面に熱可塑性樹脂を押出機で加熱溶融し、基紙とクーリングロールとの間にフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造される。この際、クーリングロールは樹脂コーティング層の表面形状の形成に使用され、樹脂層の表面はクーリングロール表面の形状により鏡面、微粗面、またはパターン化された絹目状やマット状等に型付け加工することができる。
【0076】
樹脂被覆紙の前記表側樹脂層と反対側の裏側樹脂層も、樹脂を押出機で加熱溶融し、基紙とクーリングロールとの間にフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造できる。この際、プリンターでの搬送性の点から好ましくは、クーリングロールはJIS−B−0601に規定されるRaが0.8〜5μmになるようにクーリングロール表面の形状により微粗面、またはパターン化された、例えば絹目状やマット状等に型付け加工することが好ましい。
【0077】
基紙に樹脂被覆層を設ける方法は、加熱溶融樹脂を押し出して塗設する以外に電子線硬化樹脂を塗設後、電子線を照射する方法や、ポリオレフィン樹脂エマルジョンの塗液を塗設後乾燥、表面平滑化処理を施す方法等が有る。いずれも凹凸を有する熱ロール等での型付けを行うことで本発明に適応可能な樹脂被覆紙が得られる。
【0078】
樹脂被覆紙の表側面には接着性を改良するために下引き層を設けてもよい。下引き層は、インク受容層が塗設される前に、予め支持体の樹脂層表面に塗布乾燥されたものである。下引き層は、膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主に含んでなる層であり、好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーが用いられ、特に好ましくはゼラチンを用いて形成される。水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/mが好ましく、20〜300mg/mがより好ましい。下引き層には更に、界面活性剤や硬膜剤を含有されていることが好ましい。また、樹脂被覆紙に下引き層を(塗布等して)形成する前には、コロナ放電処理を行なうことが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。また、本実施例では、インクジェット記録媒体の一例としてインクジェット記録用シートを作製する場合を中心に示す。
【0080】
〔実施例1〕
<擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液の調製>
イオン交換水2042gをディゾルバーで攪拌しながら、これにカタロイドAP−5(触媒化成工業(株)製 擬ベーマイト状アルミナ水和物;平均一次粒子径8nm)708gを添加し、アルミナの白色粗分散液を得た。このときのディゾルバーの回転数は、3000r.p.m.,回転時間は10分間とした。
【0081】
続いて、このアルミナ粗分散液を、高圧分散機(アルティマイザーHJP25005、(株)スギノマシン製)にて微分散し、固形分濃度25%の白色透明なアルミナ分散液(擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液)を得た。このときの圧力は100MPaとし、吐出量は600g/minとした。
【0082】
得られた擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液について、液温を30℃に調整し、イオン交換水で薄めた状態で、LB−500((株)堀場製作所製)により、分散粒子の粒子径を測定した。測定の結果、粒子径は0.06μmであった。
【0083】
<気相法シリカ分散液の調製>
イオン交換水3365gをディゾルバーで攪拌しながら、シャロールDC902P 35g(第一工業製薬(株)製 ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)を添加し、アエロジル300(日本アエロジル(株)製 気相法シリカ;平均一次粒子径7nm)を600gを添加し、気相法シリカ粗分散液を得た。このときのディゾルバーの回転数は3000rpm,回転時間は10分間であった。この気相法シリカ粗分散液を高圧分散機((株)スギノマシン製 アルティマイザーHJP25005)にて微分散を行い、固形分濃度15質量%の白色透明な気相法シリカ分散液を得た。このときの圧力は100MPa,吐出量は600g/minであった。シリカ透明分散液における分散粒子の粒子径を、擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液の分散粒子の粒子径と同様の方法で測定したところ、0.1040μmであった。
【0084】
<塗布液C(最上層)の調製>
7.5%ホウ酸水溶液200gと、8%濃度のアルコックスR1000(明成化学工業社製ポリエチレンオキサイド)150gと、10%界面活性剤水溶液(日光ケミカルズ(株)製 スワノールAM2150)4gを混ぜて塗布液C(最上層)を得た。ここで、「最上層」とは、後述の同時重層塗布において、支持体から最も離れた層を指す。
【0085】
<塗布液B(中間層)の調製>
上記で得られた擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液937.5gと、10%界面活性剤水溶液(日光ケミカルズ(株)製 スワノールAM2150)12.3gと、を混合して塗布液B(中間層)を得た。ここで、「中間層」とは、後述の同時重層塗布において、前記「最上層」と後述の「最下層」との間に位置する層を指す。
【0086】
<塗布液A(最下層)の調製>
上記で得られた気相法シリカ分散液892.2gと、けん化度88%、重合度4500のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製 PVA245)の7%水溶液467.4gと、10%界面活性剤水溶液(日光ケミカルズ(株)製 スワノールAM2150)16.2gと、イオン交換水84.2gと、59%AP−7(日本アルコール製工業用エタノール)160gと、を混合前に30℃に保温した。各保温してある液を30℃で保温しながらよく混合して塗布液A(最下層)を得た。ここで、「最下層」とは、後述の同時重層塗布において、支持体に最も近い層を指す。
【0087】
<支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)との1:1混合物を、カナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。得られたパルプスラリーに、サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%で、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%で、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%で、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%で、それぞれ添加し、水で希釈して1%スラリーとした。
この1%スラリーを、長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿して原紙を得た。
【0088】
次に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対し、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融した。溶融したポリエチレン樹脂組成物を、上記で得られた原紙の一方の面に、200m/分で厚さ35μmとなるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した(以下、この面をポリオレフィン樹脂被覆紙の「オモテ面」ということがある)。
【0089】
次に、密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70重量部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30重量部とのブレンド樹脂組成物を320℃で溶融した。溶融したブレンド樹脂組成物を、上記原紙の他方の面に、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した(以下、この面をポリオレフィン樹脂被覆紙の「ウラ面」ということがある)。
【0090】
以上により、ポリオレフィン樹脂被覆紙を得た。
次に、得られたポリオレフィン樹脂被覆紙のオモテ面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層を、石灰処理ゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥して耐水性支持体(支持体)を得た。
【0091】
〜下引き層の組成〜
・石灰処理ゼラチン … 100部
・スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 … 2部
・クロム明ばん … 10部
【0092】
<インク受容層の形成>
まず、上記で得られた塗布液A、塗布液B、及び塗布液Cをそれぞれ45℃に保温した。
次に、上記支持体の下引き層上に、塗布液A、塗布液B、及び塗布液Cを、該支持体側からみてこの順となるように同時にスライドビード塗布装置で塗布した(同時重層塗布)。
ここで、同時重層塗布は、塗布液C(最上層)中のホウ酸は6g/m、塗布液B(中間層)中の擬ベーマイト状アルミナ水和物が20g/m、塗布液A(最下層)中の気相法シリカが9g/mとなる塗布量にて行った。
【0093】
次に、上記塗布して得られた塗布膜を、膜面温度が12℃となるように30秒冷却し、さらに、全固形分濃度が90質量%となるまで45℃、10%RHの条件で乾燥し、次いで、温度35℃、10%RHの条件で乾燥した。
次に、上記乾燥後の塗布膜に対し、膜面温度が20℃になるように2分間セット乾燥を行い、その後、80℃で10分間乾燥した。
以上により、下引き層上にインク受容層を形成し、インクジェット記録用シートを得た。
形成されたインク受容層の総厚みは、45μmであった。
【0094】
<評価>
上記で得られたインクジェット記録用シートを用い、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)印画濃度
セイコーエプソン社インクジェットプリンターPM−A820を使用して、上記インクジェット記録用シートのインク受容層上にブラックのベタ印刷を行った。ブラック(Bk)のベタ印字部の画像濃度をグレタグスペクトロリノSPM−50を用いて、視野角2°、光源D50、フィルターなしの条件で計測した。
【0095】
(2)光沢度
印画前のインクジェット記録用シートのインク受容層表面の光沢度を、デジタル変角光沢計(スガ試験機(株)UGV−5D 測定孔8mm)を用い、入射角60度、受光60度の条件で測定した。
【0096】
(3)塗布欠陥
インクジェット記録用シートを100m作製した時に、該100mあたりの3mm以上の部分欠陥及び塗布ムラの発生状況を目視にて観察し、下記基準にて比較した。
〜 評価基準 〜
A:部分欠陥が1個以下
B:部分欠陥が2〜10個の範囲である
C:部分欠陥が11〜100個以上である
D:部分欠陥が101〜1000個以上である。
E:部分欠陥が1001〜2000個以上である。
【0097】
〔実施例2〕
塗布液C(最上層)の架橋剤をアジピン酸ジヒドラジドに変更し、塗布液A(最下層)の水溶性バインダーをアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製 ゴーセファイマーZ210;アセトアセチル化度3%、けん化度98%、重合度2350)に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0098】
〔実施例3〕
擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液の調製を以下のように変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0099】
<擬ベーマイト状アルミナ水和物分散液の調製>
イオン交換水1200g、イソプロピルアルコール900gを3Lの反応器に仕込み、75℃に加熱した。前記加熱後の溶液に、アルミニウムイソプロポキシド408gを加え、75℃で24時間、95℃で4時間加水分解を行った。その後、酢酸24gを加え、95℃にて48時間撹拌した後、固形分濃度が15%になるように濃縮し、白色のアルミナ水和物の分散液(アルミナ白色透明分散液)を得た。
このゾル(アルミナ白色透明分散液)を室温で乾燥させ、X線回折を測定したところ、擬ベーマイト構造を示した。また、透過型電子顕微鏡で平均一次粒子径を測定したところ、約30nmであり、アスペクト比6の平板状擬ベーマイト構造のアルミナ水和物であった。また、窒素吸着脱離方法によってBET比表面積、平均細孔半径、細孔半径1nm〜30nmの細孔容積、細孔半径2nm〜10nmの細孔容積を測定したところ、それぞれ136m/g、5.8nm、0.54ml/g、0.50ml/gであった。
【0100】
〔実施例4〕
気相法シリカをアエロジル300からアエロジルOX50(平均一次粒子径40nm)に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0101】
〔実施例5〕
塗布液B(中間層)に擬ベーマイト状アルミナ水和物に対してオレイン酸カリウムを2部加え、支持体の作製方法を下記の方法に変更し、形成されたインク受容層に下記カレンダー処理を施したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0102】
<支持体の作製>
LBKP(ろ水度400mlcsf)80部とNBKP(ろ水度400mlcsf)20部とからなる木材パルプ100部に対し、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムとタルクとの比率が10/10/10の顔料25部、市販アルキルケテンダイマー0.10部、市販カチオン系(メタ)アクリルアミド0.03部、市販カチオン化澱粉0.80部、硫酸バンド0.40部を配合して混合物とし、長網抄紙機を使用して坪量90g/mの原紙(支持体)を得た。
【0103】
<カレンダー処理>
上記で得られた原紙上に実施例1と同様の方法によりインク受容層を形成した。
形成されたインク受容層表面について、直径300mmの圧接ロールと直径1250mmの鏡面ドラムとを備え、さらにニップ上にノズルが配設されてなる装置を使用し、下記の条件でリウエットキャスト(カレンダー処理)を行なってインクジェット記録シート(インクジェットキャストコート紙)を得た。
【0104】
〜リウエットキャスト条件〜
使用再湿潤液: 温水
再湿潤液温度: 95℃
鏡面ドラム面温度: 95℃
プレスニップ圧: 150kg/cm
湿潤時間: 20ミリ秒
【0105】
〔比較例1〕
塗布液C(最上層)を用いず、塗布液B(中間層)にホウ酸を加えたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0106】
〔比較例2〕
塗布液C(最上層)を用いず、塗布液A(最下層)にホウ酸を加えたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0107】
〔比較例3〕
塗布液B(中間層)に、けん化度88%、重合度4500のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製 PVA245)の7%水溶液を加えたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0108】
〔比較例4〕
塗布液A(最下層)に、けん化度88%、重合度4500のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製 PVA245)の7%水溶液を加えなかったこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートについて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示すように、実施例1〜5のインクジェット記録用シートでは、高い印画濃度を示し、かつ、塗布欠陥が抑制されていた。一方、塗布液Cを用いず塗布液Bに架橋剤を含有させた比較例1、塗布液Cを用いず塗布液Aに架橋剤を含有させた比較例2、塗布液Bに水溶性バインダーを含有させた比較例3では塗布欠陥が悪化した。また、塗布液Bに水溶性バインダーを含有させた比較例3では印画濃度が低下した。また、塗布液Aに水溶性バインダーを含有させなかった比較例4では塗布膜(インク受容層)の形成を行うことができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも、
(A)気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む塗布液Aと、
(B)擬ベーマイト状アルミナ水和物を含み、該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する水溶性バインダーの含有率及び該擬ベーマイト状アルミナ水和物に対する架橋剤の含有率がいずれも3質量%未満である塗布液Bと、
(C)架橋剤を含む塗布液Cと、
を該支持体側からこの順となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含むインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記気相法シリカ及び前記擬ベーマイト状アルミナ水和物の平均一次粒子径が3〜20nmであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記支持体が原紙であり、形成された前記インク受容層の表面をカレンダー処理する工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記支持体が耐水性支持体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2009−83299(P2009−83299A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256452(P2007−256452)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】