説明

インクジェット記録媒体

【課題】 インク吸収性と耐搬送傷性を高めたインクジェット記録媒体を提供すること。
【解決手段】 最表面のインク受容層である第1のインク受容層及び該第1のインク受容層に隣接した第2のインク受容層は、アルミナ顔料とポリビニルアルコールと硼酸とを含有し、該第1のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを7.0質量%以上10.5質量%以下、アルミナ顔料に対して硼酸を1.1質量%以上1.4質量%以下含有し、該第2のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを10.5質量%以上17.0質量%以下、アルミナ顔料に対して硼酸を1.5質量%以上2.5質量%以下含有していることを特徴とするインクジェット記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法等によって記録を行うインクジェット記録媒体として、支持体上にインク受容層を有する記録媒体が知られている。インク受容層は、シリカやアルミナ等の無機顔料やポリビニルアルコール等のバインダーを含有する。このようなインクジェット記録媒体には、近年の高速印字に対応する為、高いインク吸収性を有することが求められている。
【0003】
インク吸収性を高めたインクジェット記録媒体として、特許文献1には、2層のインク受容層を有する記録媒体が記載されている。このインクジェット記録媒体は、第1のインク受容層(支持体から遠い側の層)のバインダー含有量が、アルミナ水和物に対して4質量%以上6質量%以下である。また、第2のインク受容層(支持体に近い側の層)のバインダー含有量が、アルミナ水和物に対して7質量%以上12質量%以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−265110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の高速印字への対応という点では、インク吸収性に加えて、耐搬送傷性が要求されている。高速印字を行うには、記録媒体を高速で搬送する必要がある。高速で搬送しつつ高い搬送精度を出そうとすると、記録媒体を搬送ローラーで上下から強く抑えながら搬送する必要があり、記録媒体表面に搬送ローラーによる傷(搬送傷)がつくことがあった。本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の記録媒体は、このような傷への耐性(耐搬送傷性)に改良の余地があった。
【0006】
従って、本発明は、インク吸収性と耐搬送傷性を高めたインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、支持体と、該支持体上に2層以上のインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、該2層以上のインク受容層のうち、最表面のインク受容層である第1のインク受容層及び該第1のインク受容層に隣接した第2のインク受容層は、アルミナ顔料とポリビニルアルコールと硼酸とを含有し、該第1のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを7.0質量%以上10.5質量%以下、アルミナ顔料に対して硼酸を1.1質量%以上1.4質量%以下含有し、該第2のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを10.5質量%以上17.0質量%以下、アルミナ顔料に対して硼酸を1.5質量%以上2.5質量%以下含有していることを特徴とするインクジェット記録媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インク吸収性と耐搬送傷性を高めたインクジェット記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明のインクジェット記録媒体を詳細に説明する。本発明のインクジェット記録媒体は、支持体と、該支持体上に2層以上のインク受容層を有する。
【0010】
<支持体>
支持体としては、例えば、キャストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(両面がポリオレフィン等の樹脂で被覆された樹脂皮膜紙)等の紙類、フィルムからなるものが挙げられる。中でも、インク受容層形成後の光沢性の点からレジンコート紙が好ましい。フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の透明な熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。これ以外にも、適度なサイジングが施された紙である無サイズ紙やコート紙、無機物の充填若しくは微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙等)を使用してもよい。また、ガラスまたは金属等からなるシート等を使用してもよい。支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体の表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施してもよい。
【0011】
<インク受容層>
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に2層以上のインク受容層を有する。2層以上のインク受容層のうち、最表面側(支持体から最も遠い位置)に存在するインク受容層を第1のインク受容層とする。また、第1のインク受容層に隣接したインク受容層を第2のインク受容層とする。即ち、第2のインク受容層は第1のインク受容層の支持体側の面に隣接して存在する。
【0012】
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、アルミナ顔料とポリビニルアルコールと硼酸とを含有する。
【0013】
(アルミナ顔料)
本発明で用いるアルミナ顔料としては、アルミナ水和物が挙げられる。アルミナ水和物としては、下記一般式(X)により表されるものが好ましい。
Al3−n(OH)2n・mHO・・・・(X)
(上記式中、nは0、1、2または3の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の範囲にある値を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。mHOは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水を表すものであるため、mは整数または整数でない値をとることができる。また、加熱するとmは0の値に達することがある。)
アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型が知られており、これらのうち、何れの結晶構造のものも使用可能である。これらの中でも好適なアルミナ水和物としては、X線回折法による分析でベーマイト構造、または非晶質を示すアルミナ水和物である。具体的には、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。このアルミナ水和物は、インク受容層形成時のインク受容層全体の平均細孔半径が7.0nm以上10.0nm以下となるものを用いることが好ましい。また、8.0nm以上となるものを用いることがより好ましい。インク受容層全体の平均細孔半径が、7.0nm以上10.0nm以下であることによって、優れたインク吸収性及び発色性を発揮することができる。インク受容層全体の平均細孔半径が7.0nmよりも小さいと、インク吸収性が不足して、アルミナ水和物に対するバインダーの量を調整したとしても、十分なインク吸収性が得ることができない場合がある。また、インク受容層全体の平均細孔半径が10.0nmよりも大きくなると、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な発色性が得られない場合がある。さらに、インク受容層には細孔半径が25.0nm以上の細孔が存在しないことが好ましい。25.0nm以上の細孔が存在する場合には、インク受容層のヘイズが大きくなり、良好な発色性が得られない場合がある。
【0014】
インク受容層全体の細孔容積は、全細孔容積で0.50ml/g以上であることが好ましい。全細孔容積が0.50ml/g未満になると、インク受容層全体のインク吸収性が不足して、アルミナ水和物に対するポリビニルアルコールの量を調整したとしても、十分なインク吸収性が得ることができない場合がある。また、30.00ml/g以下であることが好ましい。
【0015】
尚、上記の平均細孔半径、細孔半径、全細孔容積とは、窒素吸着脱離法によって測定を行った結果得られる窒素ガスの吸着脱離等温線から、BJH(Barrett−Joyner−Halenda)法によって求められる値である。特に、平均細孔半径とは、窒素ガス脱離時に測定される全細孔容積と比表面積から計算によって求まる値である。記録媒体を窒素吸着脱離法により測定した場合には、インク受容層以外の部分に対しても測定が行われることとなる。しかし、インク受容層以外の成分(例えば、支持体、樹脂被膜層等)は、窒素吸着脱離法で一般的に測定できる範囲である1nm〜100nmの大きさの細孔を持っていない。このため、記録媒体全体を窒素吸着脱離法で測定した場合は、インク受容層の平均細孔半径を測定したものとすることができる。
【0016】
平均細孔半径が7.0nm以上10.0nm以下であるインク受容層を形成するためには、BET比表面積が、100m/g以上200m/g以下のアルミナ水和物を用いることが好ましい。より好ましくは、125m/g以上である。また、190m/g以下である。尚、BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。BET法では、通常、吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられる。この際、多分子吸着の等温線を表すものとして最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ比表面積決定に広く用いられている。BET法では、BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積が得られる。BET法では、窒素吸着脱離法の測定において、ある相対圧力における吸着量の関係を数点測定し、最小二乗法によりそのプロットの傾き、切片を求めることで比表面積を導き出す。本発明では、相対圧力と吸着量の関係を5点測定し、比表面積を導き出す。
【0017】
アルミナ水和物は、平板状で、平均アスペクト比が3.0以上10以下、平板面の縦横比が0.60以上1.0以下のものが好ましい。なお、アスペクト比は、特公平5−16015号公報に記載された方法により求めることができる。アスペクト比は、粒子の(厚さ)に対する(直径)の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を示す。また、平板面の縦横比は、アスペクト比と同様に、粒子を顕微鏡で観察した場合の、平板面の最小値を示す直径と、最大値を示す直径の比を示す。アスペクト比が上記範囲外となるアルミナ水和物を使用した場合、形成したインク受容層の細孔分布範囲が狭くなる場合がある。このため、アルミナ水和物の粒子径を揃えて製造するのが困難になる場合がある。また、同様に、縦横比が上記範囲外のものを使用した場合も、インク受容層の細孔径分布が狭くなる。
【0018】
本発明者らの知見によれば、同じアルミナ水和物であっても、平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のアルミナ水和物よりも分散性が良好である。また、繊毛状のアルミナ水和物は、塗工時に支持体の表面に対して平行に配向し、形成される細孔が小さくなって、インク受容層のインク吸収性が小さくなることがある。これに対して、平板状のアルミナ水和物は、インク受容層の細孔を良好に形成することができる。
【0019】
インク受容層のアルミナ水和物の含有量は、インク受容層全量に対して30.0質量%以上98.0質量%以下であることが好ましい。第1のインク受容層、第2のインク受容層も、それぞれアルミナ水和物を各層の全量に対して30.0質量%以上98.0質量%以下含有していることが好ましい。
【0020】
本発明で用いるアルミナ顔料としては、アルミナ水和物の他に気相法アルミナが挙げられる。本発明のインクジェット記録媒体は、アルミナ顔料として気相法アルミナを含有していることが好ましく、特に第1のインク受容層がアルミナ水和物と気相法アルミナとを共に含有していると、インク吸収性、耐搬送傷性がより向上するため好ましい。気相法アルミナとしては、比表面積がアルミナ水和物よりも小さいもの、即ち一次粒子径が大きいものが好ましい。一次粒径が大きい気相法アルミナを含有していることにより、第1のインク受容層の細孔半径が第2のインク受容層よりも大きくなり、インク吸収性が高まる。また、耐搬送傷性が向上する。このメカニズムは明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。アルミナ水和物のような板状構造の粒子が記録媒体の最表面(第1のインク受容層の表面)にある場合、搬送ローラーで加圧される際に記録媒体の変形と最表面に存在する粒子の向きが変化することにより、光沢度が若干変化する。そしてこれが搬送傷を目立ちやすくする。一方、気相法アルミナは、形状が比較的球形に近くて異方性がないため、粒子の向きが変化しても光沢度の変化が比較的小さい。このため、搬送傷が目立ちにくくなる。
【0021】
気相法アルミナは、BET比表面積が50g/m以上であることが好ましく、80g/m以上であることがより好ましい。また、150g/m以下であることが好ましく、120g/m以下であることがより好ましい。一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、11nm以上であることがより好ましい。また、30nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。気相法アルミナの具体例としては、AEROXIDE AluC(EVONIC製、一次粒子径13nm、BET比表面積100g/m)、AEROXIDE Alu130(EVONIC製、一次粒子径10nm、BET比表面積130g/m)、AEROXIDE Alu65(EVONIC製、一次粒子径20nm、BET比表面積65g/m)等が挙げられ、これらが好ましく用いられる。中でもAEROXIDE AluC、AEROXIDE Alu65を用いると、インク吸収性及び耐搬送傷性が向上するため、より好ましい。特にAEROXIDE AluCを用いると、発色性も向上するため、さらに好ましい。
【0022】
第1のインク受容層が気相法アルミナを含有する場合、第1のインク受容層は気相法アルミナをアルミナ水和物に対して10質量%以上70質量%以下含有していることが好ましい。より好ましくは50質量%以下である。気相法アルミナの含有量がアルミナ水和物に対して10質量%以上70質量%以下であると、インク吸収性と耐搬送傷性、さらには発色性を良好に高めることができる。また、第1のインク受容層がアルミナ水和物と気相法アルミナとを共に有する場合、第1のインク受容層中のアルミナ水和物と気相法アルミナとの比は、質量基準で95:5〜60:40であることが好ましく、85:15〜75:25であることがより好ましい。
【0023】
(ポリビニルアルコール)
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、ポリビニルアルコールを含有する。ポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールを挙げることができる。ポリビニルアルコールは、粘度平均重合度が1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。また、5000以下であることが好ましい。ケン化度は80モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましい。また、100モル%以下であることが好ましい。市販されているポリビニルアルコールとしては、PVA235(クラレ製、ケン化度88モル%、平均重合度3500)が挙げられる。
【0024】
(硼酸)
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、硼酸を含有する。硼酸としては、例えばオルト硼酸(HBO)、メタ硼酸及び次硼酸等が挙げられる。中でも、インク受容層形成用塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点から、オルト硼酸が好ましい。
【0025】
(インク受容層のポリビニルアルコール及び硼酸の含有量)
本発明者らは、2層のインク受容層のポリビニルアルコール及び硼酸の含有量をそれぞれアルミナ顔料に対して特定の範囲とすることで、これらが相乗的に作用し、インク吸収性と耐搬送傷性、さらに耐湿性がいずれも高くなることを見出した。具体的には、最表面のインク受容層である第1のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを7.0質量%以上10.5質量%以下含有する。好ましくは、8.5質量%以上である。また、10.0質量%以下である。第1のインク受容層中において、アルミナ顔料に対するポリビニルアルコールの量は9.5質量%以上10.0質量%以下であることが特に好ましい。加えて、第1のインク受容層は、アルミナ顔料に対して硼酸を1.1質量%以上1.4質量%以下含有する。第1のインク受容層に隣接した第2のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを10.5質量%以上17.0質量%以下含有する。好ましくは、11.0質量%以上である。また、13.0質量%以下である。第2のインク受容層中において、アルミナ顔料に対するポリビニルアルコールの量は11.0質量%以上12.5質量%以下であることが特に好ましい。加えて、第2のインク受容層は、アルミナ顔料に対して硼酸を1.5質量%以上2.5質量%以下含有する。好ましくは1.9質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。本発明では、このような2層のインク受容層のポリビニルアルコール及び硼酸の含有量が重要であり、これらのバランスによってインク吸収性と耐搬送傷性、さらに耐湿性をいずれも高くすることができる。
【0026】
さらに本発明者らは、第1のインク受容層と第2のインク受容層とには、それぞれの層のポリビニルアルコール含有量と硼酸含有量との間に関係性があることを見出した。第1のインク受容層のアルミナ顔料に対するポリビニルアルコール含有量をP1、アルミナ顔料に対する硼酸含有量をB1とする。また、第2のインク受容層のアルミナ顔料に対するポリビニルアルコール含有量をP2、アルミナ顔料に対する硼酸含有量をB2とする。このとき、(B2/P2)/(B1/P1)が1.0以上2.1以下であることが好ましく、1.4以上1.9以下であることがより好ましく、1.5以上1.7以下であることが特に好ましい。1.0以上2.1以下とすることで、インク吸収性と耐搬送傷性、さらに耐湿性をいずれも高くすることができる。
【0027】
(その他)
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、ポリビニルアルコール以外のバインダーを含有していてもよい。具体的には、例えば以下のようなバインダーが挙げられる。即ち、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体。カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体等のアクリル系重合体ラテックス。エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス。上記の各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス。カチオン基を用いて上記各種重合体をカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤を用いて上記各種重合体の表面をカチオン化したもの。カチオン性ポリビニルアルコール下で上記各種重合体を重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの。カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で上記各種重合体の重合を行い、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの。メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダー。ポリメチルメタクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体または共重合体樹脂。ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー等である。
【0028】
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、耐湿性をさらに向上する目的でウレタン化合物を含有していてもよい。ウレタン化合物としては、2つ以上の活性水素基を有する含硫黄有機化合物(化合物A)、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物(化合物B)及び2つ以上の活性水素基を有するアミン化合物(化合物C)の少なくとも3種の化合物を反応させ、さらに得られる生成物中のアミノ基の少なくとも一部が酸によりカチオン化されたものが好ましい。ウレタン化合物の好ましい例を下記式(1)〜(6)で示す。
【0029】
【化1】

【0030】
(式中nは1または2を表す。Rはメチレン基、エチレン基またはプロピレン基を、Rはアルキレンもしくは複脂環を1つ以上含む脂肪族炭化水素基を、R10は炭素数1〜4のアルキル基を、R11及びR12はそれぞれ独立で水素原子もしくはメチル基を、Xは酸陰イオンを表す。mは重量平均分子量が2,000〜150,000になる数である。)
【0031】
【化2】

【0032】
(式中nは1または2を表す。R及びRはそれぞれ独立で水素原子、水酸基またはアルキル基を表す。R及びRは同一であっても異なっていてもよい。R〜R12及びX及びmは一般式(1)と同義である。)
【0033】
【化3】

【0034】
(式中nは0または1を表す。R〜R12及びX及びmは一般式(1)と同義である。)
【0035】
【化4】

【0036】
(式中nは1または2を表す。Rは硫黄原子または酸素原子を、Rは硫黄原子または−SO−を表す。R及びRは同一ではなく、それぞれ異なる基で構成される。R〜R12及びX及びmは一般式(1)と同義である。)
【0037】
【化5】

【0038】
(式中R及びRはそれぞれ独立で水素原子またはアルキル基を表し、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。R〜R12及びX及びmは一般式(1)と同義である。)
【0039】
【化6】

【0040】
(式中Rは水酸基またはアルキル基を表す。R〜R12及びX及びmは一般式(1)と同義である。)
化合物Aとしては、分子内にスルフィド基を少なくとも1つ有する化合物が好ましく、具体的には下記一般式(7)〜(12)で表される化合物を挙げることができる。特に、一般式(8)または一般式(12)で表される化合物は、大気中の酸性ガスや光による画像の変退色を抑える効果が高いため好ましい。また、化合物Aは単独、若しくは2種以上を同時に使用して本発明に用いるウレタン化合物を合成することが可能である。
【0041】
【化7】

【0042】
(式中nは1または2を表す。また、Rはメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基を表す。)
【0043】
【化8】

【0044】
(式中nは1または2を表す。また、R及びRはそれぞれ独立で水素原子、水酸基またはアルキル基を表し、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0045】
【化9】

【0046】
(式中nは0または1を表す。)
【0047】
【化10】

【0048】
(式中nは1または2を表す。また、Rは硫黄原子または酸素原子を表し、Rは硫黄原子または−SO−を表し、R及びRは同一ではなく、それぞれ異なる基で構成される。)
【0049】
【化11】

【0050】
(式中R及びRはそれぞれ独立で水素原子またはアルキル基を表し、R及びRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0051】
【化12】

【0052】
(式中Rは水酸基またはアルキル基を表す。)
化合物Bとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらは単独、若しくは2種以上同時に使用して、ウレタン化合物を合成することができる。
【0053】
化合物Cとしては、例えば、下記一般式(13)で表わされるような3級アミンが好ましい。
【0054】
【化13】

【0055】
(式中R、R、Rはいずれか一つは炭素数1〜6のアルキル基、アルカノール基、またはアミノアルキル基であり、それ以外は同一若しくは異なっていてもよく、アルカノール基、アミノアルキル基、またはアルカンチオール基を表す。)
一般式(13)で表される化合物Cとしては、例えばジオール化合物としてはN−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−エチル−N,N−ジエタノールアミン、N−イソブチル−N,N−ジエタノールアミン、N−t−ブチル−N,N−ジエタノールアミン、N−t−ブチル−N,N−ジイソプロパノールアミン等が挙げられる。トリオール化合物としてはトリエタノールアミン等が挙げられる。また、ジアミン化合物としてはメチルイミノビスプロピルアミン、ブチルイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。トリアミン化合物としてはトリ(2−アミノエチル)アミン等が挙げられる。これらアミン化合物は単独、または2種以上を同時に使用して、ウレタン化合物を合成することができる。
【0056】
ウレタン化合物の重量平均分子量は2,000以上150,000以下であることが好ましく、2,000以上50,000以下であることがさらに好ましい。ウレタン化合物の重量平均分子量が2,000未満では光沢度や印字濃度が低下する場合があり、150,000を越えると反応時間が長くなり合成コストが増加する場合がある。
【0057】
ウレタン化合物の合成に際しては、前記化合物A及び化合物C以外の、2つ以上の活性水素基を有する化合物(以下「化合物D」という)を必要に応じて共重合させてもよい。このような化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0058】
ウレタン化合物は、前記化合物Cユニットの少なくとも一部を酸によりカチオン化することにより、水中に分散安定化または溶解させることができる。他の方法として、ハロゲン化アルキルの如き4級化剤でカチオン化した場合、水中に好ましい粒子径で分散安定化または溶解させることはできない。酸としては、例えば多価酸を用いた場合にはウレタン化合物を水中に分散または溶解する際に増粘を起こすことがあることから、燐酸及び/または一価の酸が好ましい。
【0059】
ウレタン化合物を水性媒体に分散した場合、保存安定性の観点から該分散体の平均粒子径は5nm以上500nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上200nm以下である。尚、ウレタン化合物の平均粒子径は動的光散乱法による粒径測定装置(ELSZ、大塚電子製)にて測定される。また、本発明に用いるウレタン化合物は、ガラス転移温度(Tg)が、50℃以上80℃以下であることが好ましい。
【0060】
本発明においては、第1のインク受容層及び第2のインク受容層のうち、第1のインク受容層のみがウレタン化合物を含有していることが好ましい。第1のインク受容層のみがウレタン化合物を含有していることで、本発明の層構成と相乗的に作用し、良好なインク吸収性を得ることができる。第1のインク受容層は、アルミナ顔料に対してウレタン化合物を1質量%以上6質量%以下含有していることが好ましい。1質量%未満では、耐湿性が十分に向上しないことがある。6質量%よりも多いと、発色性が低下することがある。また、2質量%以上含有していることがより好ましく、4質量%以下含有していることがより好ましい。
【0061】
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、支持体上にインク受容層形成用塗工液を塗工することで形成する。このインク受容層形成用塗工液はアルミナ分散液を含有しているが、アルミナ分散液中でアルミナ顔料を良好に分散することが好ましい。このため、本発明では、アルミナ分散液が、解膠剤として炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸を含有することが好ましい。この結果として、インク受容層が炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸を含有することとなる。解膠剤として、炭素数が5以上のアルキルスルホン酸やベンゼン環を有するスルホン酸を用いると、色安定性、耐湿性が低下し、画像濃度が低くなりやすい。この理由は、炭素数が多くなると解膠剤の疎水性が強くなり、結果としてアルミナ顔料表面の疎水性が強くなるので、アルミナ顔料表面での染料定着速度が遅くなるためと考えられる。また、炭素数が5以上のアルキルスルホン酸やベンゼン環を有するスルホン酸でアルミナ顔料を解膠すると、十分な分散安定性を得ることが困難であり、増粘が進みやすくなる。また、アルミナが凝集してしまい、画像濃度の低下を引き起すことがある。炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸は、可溶化基としてスルホン酸基のみを有する1塩基酸であることが好ましい。水酸基やカルボキシル基といった可溶化基を有さないアルキル基であると、耐湿性の点で好ましい。また、アルキルスルホン酸は一塩基酸であり、かつ、アルキル鎖の炭素数が1以上4以下の無置換アルキル基であることが好ましい。また、直鎖あるいは分岐のいずれでもよい。好ましいアルキルスルホン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、i−ブタンスルホン酸、t−ブタンスルホン酸等が挙げられる。中でも、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸が好ましい。さらに、メタンスルホン酸が最も好ましい。尚、炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸は、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、炭素数1以上4以下のアルキルスルホン酸を、アルミナ顔料に対して1.0質量%以上2.0質量%以下含有していることが好ましい。1.0質量%以上であることで耐湿性及び耐オゾン性が良好となり、2.0質量%以下であることでインク吸収性が良好となる。好ましくは1.3質量%以上であり、また1.6質量%以下である。
【0063】
第1のインク受容層及び第2のインク受容層は、例えば以下の添加剤を含有していてもよい。即ち、pH調整剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料等である。
【0064】
<インク受容層形成用塗工液>
インク受容層形成用塗工液の塗工には、例えば、各種カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーター等を用いることが好ましい。塗工時に、塗工液の粘度調製等を目的として、塗工液を加温してもよい。或いはコーターヘッドを加温してもよい。塗工後の塗工液の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機を用いてもよい。また、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を用いてもよい。
【0065】
インク受容層の膜厚は、インク受容層形成用塗工液の塗工量によって大きく影響を受ける。第1のインク受容層の膜厚は、3μm以上18μm以下とすることが好ましい。3μmより薄いと、ポリビニルアルコールと硼酸が少ない層が薄くなるため、インク吸収性が低下することがある。18μmを超えると、ポリビニルアルコールと硼酸が少ない層が厚くなるため、耐搬送傷性が低下することがある。第1のインク受容層の膜厚は、6.5μm以上18.0μm以下であることがより好ましく、9.0μm以上13.0μm以下であることが特に好ましい。第2のインク受容層の膜厚は、17μm以上35μm以下とすることが好ましい。17μmより薄いと、ポリビニルアルコールと硼酸が多い層が薄くなるため、耐搬送傷性が低下することがある。35μmを超えると、総膜厚が厚くなるため生産性が低下することがある。第2のインク受容層の膜厚は、25.0μm以上35.0μm以下とすることがより好ましく、27.0μm以上33.0μm以下とすることが特に好ましい。
【0066】
インク受容層全体の膜厚は、35μm以上45μm以下とすることが好ましい。35μmより薄いとインク吸収性が低下する傾向にあり、45μmを超えると耐搬送傷性が低下する傾向にある。より好ましくは40μm以下である。第1のインク受容層と第2のインク受容層の膜厚の関係は、(第1のインク受容層の膜厚)/(第2のインク受容層の膜厚)を0.09以上1.10以下とすることが好ましい。好ましくは0.16以上であり、また0.75以下である。
【0067】
尚、本発明における膜厚とは絶乾時の膜厚であり、走査電子顕微鏡を用いて膜厚を測定する対象の断面を4点測定し、その測定値の平均値である。本発明では、膜厚を測定する対象を四角形とし、四隅から四角形の重心方向に1cm離れた部分を4点としている。
【0068】
本発明においては、最表面のインク受容層である第1のインク受容層上、或いは第1のインク受容層と第2のインク受容層の間に、本発明の効果を妨げない範囲であれば薄層を設けてもよい。つまり、本発明においては、インク受容層の最表面が、記録媒体の最表面を構成していてもよいし、インク受容層の最表面に設けられた薄層が、記録媒体の最表面を構成していてもよい。この場合、薄層の膜厚は2.0μm以下とすることが好ましい。また、第2のインク受容層と支持体の間には、インク受容層を設けてもよい。
【0069】
特に、第1のインク受容層上に設ける薄層としては、気相法シリカを含有した層が好ましい。気相法シリカを含有した層を設けることで、耐搬送傷性がより良好となる。気相法シリカとしては、AEROSIL300(EVONIC社製)が好ましい。他にも、気相法シリカとともにポリビニルアルコールを含有することが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量は、気相法シリカ100質量部に対して10質量部以上25質量部以下であることが好ましい。また、第1のインク受容層上に設ける薄層は硼酸を含有することが好ましい。硼酸の含有量は、気相法シリカ100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。第1のインク受容層上に設ける薄層の膜厚は2.0μm以下とすることが好ましいが、少なくとも0.1μm以上とすることが好ましい。0.1μm以上とすることで、耐搬送傷性が向上する。2.0μmを超えると、インク受容層と同様の働きをするようになり、本発明の効果が得られにくくなる。より好ましくは0.5μm以下である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
<支持体の作製>
下記条件にて支持体を作製した。まず、下記組成の紙料を固形分濃度が3.0質量%となるように純水で調製した。
・濾水度450ml CSF(Canadian Standarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP) 80.00質量部
・濾水度480ml CSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)
20.00質量部
・カチオン化澱粉 0.60質量部
・重質炭酸カルシウム 10.00質量部
・軽質炭酸カルシウム 15.00質量部
・アルキルケテンダイマー 0.10質量部
・カチオン性ポリアクリルアミド 0.03質量部
【0072】
得られた紙料を長網抄紙機で抄造し3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、サイズプレス装置で、固形分が1.0g/mとなるように酸化澱粉水溶液を含浸させ、乾燥させた。さらにマシンカレンダー仕上げをして、坪量170g/m、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙を得た。
【0073】
得られた基紙上に、低密度ポリエチレン(70質量部)と、高密度ポリエチレン(20質量部)と、酸化チタン(10質量部)からなる樹脂組成物を、25.0g/m塗布しこちらを表面とした。さらに表面と裏側の面(裏面)に、高密度ポリエチレン(50質量部)と、低密度ポリエチレン(50質量部)からなる樹脂組成物を、25.0g/m塗布することで、樹脂被覆した支持体を作製した。
【0074】
<アルミナ顔料分散液の調製>
(アルミナ水和物分散液1)
純水160.0g中に、アルミナ水和物1(Disperal HP14、サソール製)を40.0g、メタンスルホン酸を0.6g(アルミナ水和物の含有量に対して1.5質量%)混合した。混合後、ミキサーで30分間撹拌し、アルミナ水和物分散液1を調製した。30分後、アルミナ水和物の分散状態が良好であることを目視で確認した。アルミナ水和物分散液1の固形分濃度を測定したところ、20.0質量%であった。固形分濃度の測定は、アルミナ水和物分散液5.0gを秤取り、赤外線水分計FD−620(ケツト科学研究所製)を用い、120℃にて測定した。また、分散液中のアルミナ水和物の平均粒子径を動的光散乱法による粒径測定装置(ELSZ、大塚電子製)で測定したところ、130nmであった。
【0075】
(気相法アルミナ分散液1)
純水160.0g中に、気相法アルミナ1(AEROXIDE AluC、EVONIC製)40.0g、メタンスルホン酸を0.5g(気相法アルミナの含有量に対して1.3質量%)混合した。混合後、ミキサーで30分間撹拌し、気相法アルミナ分散液1を調製した。30分後、気相法アルミナの分散状態が良好であることを目視で確認した。気相法アルミナ分散液1の固形分濃度を測定したところ、20.0質量%であった。固形分濃度の測定は、気相法アルミナ分散液5.0gを秤取り、赤外線水分計FD−620(ケツト科学研究所製)を用い、120℃にて測定した。また、分散液中の気相法アルミナの平均粒子径を動的光散乱法による粒径測定装置(ELSZ、大塚電子製)で測定したところ、160nm(装置名:ELSZ、大塚電子製)であった。
【0076】
(気相法アルミナ分散液2)
純水160.0g中に、気相法アルミナ2(AEROXIDE Alu65、EVONIC製)40.0g、メタンスルホン酸を0.5g(気相法アルミナの含有量に対して1.3質量%)混合した。混合後、ミキサーで30分間撹拌し、気相法アルミナ分散液2を調製した。30分後、気相法アルミナの分散状態が良好であることを目視で確認した。気相法アルミナ分散液2の固形分濃度を測定したところ、20.0質量%であった。固形分濃度の測定は、気相法アルミナ分散液5.0gを秤取り、赤外線水分計FD−620(ケツト科学研究所製)を用い、120℃にて測定した。また、分散液中の気相法アルミナの平均粒子径を動的光散乱法による粒径測定装置(ELSZ、大塚電子製)で測定したところ、180nm(装置名:ELSZ、大塚電子製)であった。
【0077】
(気相法アルミナ分散液3)
純水160.0g中に、気相法アルミナ3(AEROXIDE Alu130、EVONIC製)40.0g、メタンスルホン酸を0.5g(気相法アルミナの含有量に対して1.3質量%)混合した。混合後、ミキサーで30分間撹拌し、気相法アルミナ分散液3を調製した。30分後、気相法アルミナの分散状態が良好であることを目視で確認した。気相法アルミナ分散液3の固形分濃度を測定したところ、20.0質量%であった。固形分濃度の測定は、気相法アルミナ分散液5.0gを秤取り、赤外線水分計FD−620(ケツト科学研究所製)を用い、120℃にて測定した。また、分散液中の気相法アルミナの平均粒子径を動的光散乱法による粒径測定装置(ELSZ、大塚電子製)で測定したところ、150nm(装置名:ELSZ、大塚電子製)であった。
【0078】
(気相法シリカ分散液1)
純水168.0g中に、気相法シリカ(AEROSIL300、EVONIC製)を40.0g、カチオンポリマー水溶液(シャロールDC−902P、50質量%水溶液、第一工業製薬製)を4.0g(気相法シリカの含有量に対して5質量%)混合した。混合後、ミキサーで30分間撹拌し、気相法シリカ分散液1を調製した。30分後、気相法アルミナの分散状態が良好であることを目視で確認した。気相法シリカ分散液1の固形分濃度を測定したところ、20.0質量%であった。固形分濃度の測定は、気相法シリカ分散液5.0gを秤取り、赤外線水分計FD−620(ケツト科学研究所製)を用い、120℃にて測定した。また、分散液中の気相法アルミナの平均粒子径を動的光散乱法による粒径測定装置(ELSZ、大塚電子製)で測定したところ、130nm(装置名:ELSZ、大塚電子製)であった。
【0079】
(ポリビニルアルコール水溶液1)
室温下で、純水505.0gに対しポリビニルアルコール(PVA235、クラレ製。重合度:3500、ケン化度:88%)50.0gをミキサーで混合した。10分後、90℃に加熱し、さらに30分間攪拌を続けてポリビニルアルコールを溶解した後、室温(25℃)まで空冷してポリビニルアルコール水溶液1を得た。ポリビニルアルコール水溶液1の固形分濃度を測定したところ、9.0質量%であった。固形分濃度の測定は、ポリビニルアルコール水溶液5.0gを秤取り、赤外線水分計FD−620(ケツト科学研究所製)を用い、120℃にて測定した。
【0080】
(ウレタン化合物1の合成)
以下のようにしてウレタン化合物1を合成した。
【0081】
攪拌装置、温度計及び還流冷却管を備えた反応容器に、反応溶媒としてアセトン140gを投入した。これを撹拌しながら、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールを50.00g、メチルジエタノールアミンを10.46g溶解させた。溶解後、40℃まで昇温してさらにイソホロンジイソシアネートを79.66g加えた。その後50℃まで昇温して錫系触媒を0.4g加え、さらに55℃まで昇温して撹拌しながら4時間反応を行なった。
【0082】
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却して、35%塩酸9.14gを加えてカチオン化した。さらに水573gを加えた後、減圧濃縮をしてアセトンを除去して、さらに水で濃度調製することにより、固形分20質量%のウレタン化合物1の水分散液を合成した。ウレタン化合物1の平均粒子径を、動的光散乱法による粒径測定装置(ELSZ、大塚電子製)で測定したところ、35nmであった。またガラス転移温度(Tg)を測定したところ、60℃であった。
【0083】
<実施例1>
上記支持体の表面上に、下記組成に調製したインク受容層形成用塗工液1及び2をカーテンコーターにて同時二層塗工した。硼酸水溶液とは、純水中に硼酸を添加した水溶液である。塗工はインク受容層形成用塗工液2が支持体側になるようにして行った。塗工後、60〜100℃の空気を順次吹き付けて乾燥させた。このようにして、インクジェット記録媒体1を作製した。尚、インク受容層形成用塗工液1で形成したインク受容層が最表面の第1のインク受容層であり、インク受容層形成用塗工液2で形成したインク受容層が第1のインク受容層に隣接した第2のインク受容層である。
【0084】
(インク受容層形成用塗工液1)
・アルミナ水和物分散液1(20.0質量%水溶液) 100.0質量部
・ポリビニルアルコール水溶液1(9.0質量%水溶液) 15.6質量部
・硼酸水溶液(5.0質量%水溶液) 4.4質量部
(インク受容層形成用塗工液2)
・アルミナ水和物分散液1(20.0質量%水溶液) 100.0質量部
・ポリビニルアルコール水溶液1(9.0質量%水溶液) 24.4質量部
・硼酸水溶液(5.0質量%水溶液) 6.0質量部
第1のインク受容層及び第2のインク受容層の組成を表1に示す。表1中の質量部は、固形分量である。第1のインク受容層の組成は、質量基準で、アルミナ顔料(アルミナ水和物1)/ポリビニルアルコール/硼酸=100/7.0/1.1である。第2のインク受容層の組成は、質量基準で、アルミナ顔料(アルミナ水和物1)/ポリビニルアルコール/硼酸=100/11.0/1.5である。
【0085】
インクジェット記録媒体1のインク受容層の断面観察試料をミクロトームにより作成し、光学顕微鏡にて膜厚を測定した。この結果、第1のインク受容層の膜厚は10μm、第2のインク受容層の膜厚は25μmであった。
【0086】
<実施例2〜実施例41、比較例1〜8>
実施例1にならって、表1及び表2に示す組成の通りにしてインクジェット記録媒体2〜41、46〜53を作製した。
【0087】
<実施例42、43>
実施例42、43では、インクジェット記録媒体1の第1のインク受容層の上に、下記組成の塗工液をグラビアコーターにより塗工して薄層を形成した。塗工液の塗工量を調節することで、薄層の乾燥後の膜厚を、実施例42で0.1μm、実施例43で2.0μmとした。このようにして、表1に示すインクジェット記録媒体42、43を作製した。
【0088】
(薄層組成)
・気相法シリカ分散液1(20.0質量%) 100質量部
・ポリビニルアルコール水溶液1(9.0質量%) 45質量部
・硼酸(5質量%) 16質量部
【0089】
<実施例44、45>
実施例44、45では、インクジェット記録媒体1の第1のインク受容層にウレタン化合物1を加えた。ウレタン化合物1の量は、実施例44でアルミナ水和物1に対して1質量%、実施例45でアルミナ水和物1に対して6質量%とした。このようにして、表1に示すインクジェット記録媒体44、45を作製した。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
<評価>
各インクジェット記録媒体の評価を下記の通りに行った。
【0094】
(評価1;光学濃度)
各インクジェット記録媒体に、インクジェット記録装置(商品名;MP990、キヤノン製。光沢ゴールド、キレイモード、色補正なし。)にて5×5cmの黒のベタ画像を記録した。このベタ画像の中心部分の光学濃度を、グレタグスペクトロリノ(グレタグマクベス製)にて測定した。
【0095】
(評価2;インク吸収性)
各インクジェット記録媒体に、インクジェット記録装置(MP990の印字処理方法を改造。)にて画像を記録した。画像はGreen色の64階調のベタ画像(6.25%Duty刻みで64階調、0〜400%Duty)とし、キャリッジ速度が25インチ/秒で、往復2回のパスで印字が完了する双方向印字とした。尚、400%Dutyとは、600dpi四方(600dpiで1平方インチの正方形)の全てのマスに4回ずつインクを付与した状態である。結果的に、44ngのインクを付与することになる。
【0096】
インク吸収性とビーディングはほぼ相関性があるため、ビーディングを評価することによって、記録媒体のインク吸収性を評価した。尚、ビ―ディングとは、表面に付与されたインク滴がインク受容層に吸収される前に、隣接するインク滴と接触して色ムラのある画像ができる現象である。評価は下記の基準で目視にて行った。
・ランク5:350%Dutyでもビーディングが認められない。
・ランク4:350%Dutyではビーディングが認められるが、300%Dutyではビーディングは認められない。
・ランク3:300%Dutyではビーディングが認められるが、250%Dutyではビーディングは認められない。
・ランク2:250%Dutyではビーディングが認められるが、200%Dutyではビーディングは認められない。
・ランク1:150%Dutyでビーディングが認められる。
【0097】
(評価3;耐湿性)
各インクジェット記録媒体に、インクジェット記録装置(商品名;MP990、キヤノン製。光沢ゴールド、キレイモード、色補正なし。)にて画像を記録した。画像はBlueの背景に「E」の白抜き文字で、48ポイントと10ポイントの2種類とした。記録した画像を温度30℃、湿度90%の環境で20日間放置した。放置前後での白抜き部分への画像のにじみ度合いの評価を、下記の基準で目視にて行った。
・ランク5:10ポイント及び48ポイント白抜き文字の両方とも滲みは認められず、文字ははっきりとしている。
・ランク4:48ポイント白抜き文字では滲みは認められず、文字ははっきりとしている。一方、10ポイント白抜き文字はやや滲みが認められるが、文字は潰れていない。
・ランク3:10ポイント及び48ポイント白抜き文字の両方でやや滲みが認められるが、共に文字は潰れていない。
・ランク2:10ポイント白抜き文字は滲みが認められ、文字が潰れている部分がある。一方、48ポイント白抜き文字はやや滲みが認められるが、文字は潰れていない。
・ランク1:10ポイント及び48ポイント白抜き文字の両方でかなりの滲みが認められ、共に文字が潰れている部分がある。
【0098】
(評価4;耐搬送傷性)
インクジェット記録装置(MP990、キヤノン製)の搬送ローラーの圧力を1.5kgfから2.0kgfまで調整できるよう改造した。このインクジェット記録装置を用いて、各インクジェット記録媒体の全面に黒のベタ画像を記録した。記録後の搬送ローラーによる搬送傷の評価を、下記の基準で目視にて行った。
・ランク5:圧力が2.0kgfでも傷は視認できない。
・ランク4:圧力が1.8kgfでは傷は視認できないが、2.0kgfでは視認できる。
・ランク3:圧力が1.7kgfでは傷が視認できないが、1.8kgfでは視認できる。
・ランク2:圧力が1.5kgfでは傷が視認できないが、1.7kgfでは視認できる。
・ランク1:圧力が1.5kgfで傷が視認できる。
【0099】
以上の評価結果を、表3及び表4に示す。
【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
表3及び表4から、実施例1〜45のインクジェット記録媒体は、インク吸収性、耐湿性及び耐搬送傷性のいずれもが良好であることが分かる。一方、第1のインク受容層のポリビニルアルコールの含有量が少ない比較例1のインクジェット記録媒体は、耐搬送傷性が低い。第1のインク受容層のポリビニルアルコールの含有量が多い比較例2のインクジェット記録媒体は、インク吸収性が低い。第1のインク受容層の硼酸の含有量が少ない比較例3のインクジェット記録媒体は、耐搬送傷性が低い。第1のインク受容層の硼酸の含有量が多い比較例4のインクジェット記録媒体は、耐湿性が低い。第2のインク受容層のポリビニルアルコールの含有量が少ない比較例5のインクジェット記録媒体は、耐搬送傷性が低い。第2のインク受容層のポリビニルアルコールの含有量が多い比較例6のインクジェット記録媒体は、インク吸収性が低い。第2のインク受容層の硼酸の含有量が少ない比較例7のインクジェット記録媒体は、耐搬送傷性が低い。第2のインク受容層の硼酸の含有量が多い比較例8のインクジェット記録媒体は、耐湿性が低い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に2層以上のインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、
該2層以上のインク受容層のうち、最表面のインク受容層である第1のインク受容層及び該第1のインク受容層に隣接した第2のインク受容層は、アルミナ顔料とポリビニルアルコールと硼酸とを含有し、
該第1のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを7.0質量%以上10.5質量%以下、アルミナ顔料に対して硼酸を1.1質量%以上1.4質量%以下含有し、
該第2のインク受容層は、アルミナ顔料に対してポリビニルアルコールを10.5質量%以上17.0質量%以下、アルミナ顔料に対して硼酸を1.5質量%以上2.5質量%以下含有していることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記第1のインク受容層のアルミナ顔料に対するポリビニルアルコール含有量をP1、アルミナ顔料に対する硼酸含有量をB1とし、前記第2のインク受容層のアルミナ顔料に対するポリビニルアルコール含有量をP2、アルミナ顔料に対する硼酸含有量をB2としたときに、
(B2/P2)/(B1/P1)が1.0以上2.1以下である請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記第1のインク受容層が、アルミナ顔料としてアルミナ水和物及び気相法アルミナを含有する請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記第1のインク受容層の膜厚が25.0μm以上35.0μm以下であり、前記第2のインク受容層の膜厚が6.5μm以上18.0μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記第1のインク受容層が、アルミナ顔料としてアルミナ水和物及び気相法アルミナを含有し、前記第2のインク受容層が、アルミナ顔料としてアルミナ水和物を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
前記第1のインク受容層中のアルミナ水和物と気相法アルミナとの比が、質量基準で85:15〜75:25である請求項5に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記(B2/P2)/(B1/P1)が1.4以上1.9以下である請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項8】
前記第1のインク受容層の膜厚が25.0μm以上35.0μm以下であり、前記第2のインク受容層の膜厚が6.5μm以上18.0μm以下であり、
前記第1のインク受容層が、アルミナ顔料としてアルミナ水和物及び気相法アルミナを含有し、前記第2のインク受容層が、アルミナ顔料としてアルミナ水和物を含有し、
前記第1のインク受容層中のアルミナ水和物と気相法アルミナとの比が、質量基準で85:15〜75:25である請求項7に記載のインクジェット記録媒体。


【公開番号】特開2012−179898(P2012−179898A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3370(P2012−3370)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】