説明

インクジェット記録方法、及び、印刷物

【課題】硬化感度、及び、吐出安定性に優れ、かつ、得られた硬化膜の柔軟性、及び、被記録媒体との密着性に優れたインク組成物を用いて、優れた画質と高い生産性とを両立できるインクジェット記録方法、並びに、該インクジェット記録方法により記録された印刷物を提供すること。
【解決手段】(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物を吐出して、被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、発光ピーク波長が300〜400nmの範囲内の紫外線を発生する発光ダイオードを用いて前記被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2となるように紫外線を照射し、吐出されたインク組成物を硬化する硬化工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
(成分A)成分A−1〜成分A−3を含む重合性組成物
(成分B)成分B−1及び成分B−2を含む重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法、及び、印刷物に関する。
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。
インクジェット方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインク組成物を吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インク組成物を効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安い。更に、騒音が少なく、画像記録方式として優れており、近年注目を浴びている。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の被記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
かかるインクジェット記録方法においてインク組成物に対して紫外線などの放射線を照射する方法としては、これまでに種々の方法が提案されている(特許文献1及び2)。また、種々の放射線硬化性インク組成物が提案されている(特許文献3〜特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−70754号公報
【特許文献2】特開2009−84441号公報
【特許文献3】特開2010−242037号公報
【特許文献4】特開2010−184996号公報
【特許文献5】特開2007−177174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境適性の高いプリンターが市場で求められている。紫外線硬化型インク組成物を用いたプリンターでは光源として水銀灯やメタルハライドランプが用いられてきたが、これらは高い出力を要し、生産性は高いが消費電力が高く、熱により基材が変形するなどの問題があった。近年、水銀灯やメタルハライドランプと比較して低出力で熱を放出しないUV−LEDが上市され注目を浴びている。
【0005】
硬化膜の柔軟性に優れたインク組成物は、硬化感度が低いことが多く、硬化させるためには紫外線の照射時間を長くする必要があった。
そこで硬化感度の高いインク組成物をUV−LEDによる紫外線照射により定着すると、低照度側(最高照度が600mW/cm2未満の場合)ではインク組成物の硬化に長時間を要するため、インク組成物の液滴同士が合一し、画質が低下することが判明した。また、インク組成物の硬化に長時間を要するため生産性が低下することが判明した。
また、高照度側(最高照度が1,600mW/cm2を超える場合)では、短時間で過剰に硬化するためドットが高くなり画像表面に凹凸が形成され、画質が低下することが判明した。
【0006】
本発明の目的は、硬化感度、及び、吐出安定性に優れ、かつ、得られた硬化膜の柔軟性、及び、被記録媒体との密着性に優れたインク組成物を用いて、優れた画質と高い生産性とを両立できるインクジェット記録方法、並びに、該インクジェット記録方法により記録された印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記<1>又は<9>に記載の手段により達成された。好ましい実施態様である<2>〜<8>と共に以下に示す。
<1> (成分A)及び(成分B)を含むインク組成物を吐出して、被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、発光ピーク波長が300〜400nmの範囲内の紫外線を発生する発光ダイオードを用いて前記被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2となるように紫外線を照射し、吐出されたインク組成物を硬化する硬化工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
(成分A)成分A−1〜成分A−3を含む重合性組成物
(成分A−1)N−ビニルラクタム類
(成分A−2)式(a−2)で表される化合物
【0008】
【化1】

(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0009】
(成分A−3)多官能(メタ)アクリレート
なお、成分A−1及び成分A−2を含む単官能の重合性化合物の合計含有量がインク組成物中40重量%以上である
(成分B)成分B−1及び成分B−2を含む重合開始剤
(成分B−1)アシルフォスフィン化合物
(成分B−2)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物
なお、{(成分B−1の総重量)≧(成分B−2の総重量)}を満たす
【0010】
<2> 成分A−1が式(a−1)で表される化合物である、<1>に記載のインクジェット記録方法、
【0011】
【化2】

(式(a−1)中、nは1〜5の整数を表す。)
【0012】
<3> 成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、<1>又は<2>に記載のインクジェット記録方法、
<4> 式(a−2)中、X2が表す二価の連結基が、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基である、<1>〜<3>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<5> 成分Bの含有量がインク組成物中1〜20重量%であり、成分B−1を0.1〜16重量%含有し、成分B−2を0.1〜10重量%含有する、<1>〜<4>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<6> {(成分B−1の総重量):(成分B−2の総重量)}=20:1〜1:1の関係を満たす、<1>〜<5>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<7> 成分A−3の含有量がインク組成物中5〜59重量%である、<1>〜<6>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<8> 成分B−1としてビスアシルフォスフィン化合物及びモノアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、<1>〜<7>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<9> 前記インク組成物が(成分C)着色剤を含有する、<1>〜<8>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法、
<10> 成分Cが顔料又は油性染料である、<9>に記載のインクジェット記録方法、
<11> <1>〜<10>いずれか1つに記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする印刷物。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、硬化感度、及び、吐出安定性に優れ、かつ、得られた硬化膜の柔軟性、及び、被記録媒体との密着性に優れたインク組成物を用いて、優れた画質と高い生産性とを両立できるインクジェット記録方法、並びに、該インクジェット記録方法により記録された印刷物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のインクジェット記録方法は、(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物を吐出して、被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、発光ピーク波長が300〜400nmの範囲内の紫外線を発生する発光ダイオードを用いて前記被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2となるように紫外線を照射し、吐出されたインク組成物を硬化する硬化工程、を含むことを特徴とする。
(成分A)成分A−1〜成分A−3を含む重合性組成物
(成分A−1)N−ビニルラクタム類
(成分A−2)式(a−2)で表される化合物
【0015】
【化3】

(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0016】
(成分A−3)多官能(メタ)アクリレート
なお、成分A−1及び成分A−2を含む単官能の重合性化合物の合計含有量がインク組成物中40重量%以上である
(成分B)成分B−1及び成分B−2を含む重合開始剤
(成分B−1)アシルフォスフィン化合物
(成分B−2)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物
なお、{(成分B−1の総重量)≧(成分B−2の総重量)}を満たす
【0017】
明細書中、数値範囲を表す「X〜Y」の記載は「X以上Y以下」と同義である。また、前記「(成分A−1)N−ビニルラクタム類」等を単に「成分A−1」等ともいう。また、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」とも記載する。以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
I.インク組成物
まず、本発明に使用される(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物(以下、「本発明のインク組成物」ともいう。)について詳述する。本発明のインク組成物は、活性放射線により硬化可能な油性のインク組成物である。「活性放射線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
特に、本発明のインク組成物は、発光ピーク波長が300〜400nmの範囲内の紫外線を発生する発光ダイオードを用いてインク組成物が吐出された被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2となる紫外線に対して高感度に硬化する。
また、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインク組成物であり、インク組成物を被記録媒体上に適用後硬化させるため、高揮発性溶剤を含まず、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に高揮発性溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。
【0019】
((成分A)成分A−1〜成分A−3を含む重合性組成物)
本発明のインク組成物は、(成分A)成分A−1〜成分A−3を含む重合性組成物を含有する。以下、成分A−1〜成分A−3について説明する。
【0020】
<(成分A−1)N−ビニルラクタム類>
本発明のインク組成物は、N−ビニルラクタム類を含有する。N−ビニルラクタム類としては、式(a−1)で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化4】

【0022】
式(a−1)中、nは1〜5の整数を表し、インク組成物が硬化した後の柔軟性、被記録媒体との密着性、及び、原材料の入手性の観点から、nは2〜4の整数であることが好ましく、nが2又は4であることがより好ましく、nが4である、すなわちN−ビニルカプロラクタムであることが特に好ましい。N−ビニルカプロラクタムは安全性に優れ、汎用的で比較的安価に入手でき、特に良好なインク硬化性、及び硬化膜の被記録媒体への密着性が得られるので好ましい。
【0023】
本発明のインク組成物における成分A−1の含有量は、インク組成物全体の重量に対して、5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜35重量%である。含有量が5重量%以上であると、被記録媒体への密着性に優れ、また、含有量が60重量%以下であると、保存安定性に優れる。
【0024】
<(成分A−2)式(a−2)で表される化合物>
本発明のインク組成物は、(成分A−2)式(a−2)で表される化合物を含有する。成分A−2を含有しない場合、被記録媒体(特にポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂)と画像との密着性が低下する。
【0025】
【化5】

(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
【0026】
1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
2及びR3としては、それぞれ独立に水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましく、R2及びR3が共に水素原子であることが更に好ましい。
2における二価の連結基としては、本発明の効果を大きく損なうものでない限り特に制限はないが、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基であることがより好ましい。また、前記二価の連結基の炭素原子数は、1〜60であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
2としては、単結合、二価の炭化水素基、又は、炭化水素基及びエーテル結合を組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素原子数1〜20の二価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子数1〜8の二価の炭化水素基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。
【0027】
以下に成分A−2の具体例を挙げるが、これらの化合物に限定されたものではない。なお、下記の具体例中、Rは水素原子、又は、メチル基を表す。
【0028】
【化6】

【0029】
これらの中でも、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマル(メタ)アクリレートが好ましく、サイクリックトリメチロールプロパンフォーマルアクリレートが特に好ましい。成分A−2は、市販品であってもよく、市販品の具体例としては、SR531(SARTOMER社製)が挙げられる。
【0030】
被記録媒体と画像との密着性、インク組成物の硬化性の観点から、成分A−2の含有量は、インク組成物の総重量に対して1〜65重量%が好ましく、3〜60重量%がより好ましく、5〜60重量%が更に好ましく、5〜50重量%が特に好ましく、5〜40重量%が最も好ましい。
【0031】
<その他の単官能(メタ)アクリレート>
本発明のインク組成物は、成分A−2以外のその他の単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。
その他の単官能(メタ)アクリレートとして、(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく例示できる。
【0032】
<(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート>
本発明のインク組成物は、(成分A−4)芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。成分A−4としては、分子量が500以下のものが好ましく、分子量が300以下のものがより好ましい。
成分A−4として、特開2009−096985号公報の段落0048〜0063に記載された、芳香族単官能ラジカル重合性モノマーが挙げられる。本発明においては、芳香族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、式(a−4)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化7】

(式(a−4)中、R1は水素原子、又は、メチル基を表し、X1は二価の連結基を表し、Arは芳香族炭化水素基を表し、R5は置換基を表し、uは0〜5の整数を表し、また、u個存在するR5はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。)
【0034】
式(a−4)中、R1として好ましくは、水素原子である。
1は二価の連結基を表し、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(O)O−若しくは−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NR’−若しくは−NR’C(O)−)、カルボニル基(−C(O)−)、イミノ基(−NR’−)、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基、又は、これらを2以上組み合わせた二価の基であることが好ましい。なお、R’は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表す。置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
1及びX1を含む部分(H2C=C(R1)−C(O)O−X1−)は、芳香族炭化水素構造上の任意の位置で結合することができる。また、着色剤との親和性を向上させるという観点から、X1の芳香族炭化水素基と結合する端部は、酸素原子であることが好ましく、エーテル性酸素原子であることがより好ましい。式(a−4)におけるX1は、*−(LO)q−であることが好ましい。ここで、*は、式(a−4)のカルボン酸エステル結合との結合位置を示し、qは0〜10の整数であり、Lは炭素数2〜4のアルキレン基を表す。qは0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。(LO)qは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖であることが好ましい。
【0035】
Arは芳香族炭化水素基を表す。芳香族炭化水素基としては、1〜4つの環を有する単環又は多環芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、1H−インデン、9H−フルオレン、1H−フェナレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、テトラフェニレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、クリセン、プレイアンデン等から1つ以上の水素原子を除いた基が挙げられる。
中でも本発明においては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、単環芳香族炭化水素基、すなわちフェニル基がより好ましい。
【0036】
u個存在するR5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、カルボキシ基、炭素数1〜10のアシル基、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、チオール基、シロキサン基、又は、更に置換基を有していてもよい総炭素数30以下の炭化水素基若しくは複素環基であることが好ましい。置換基としては、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
uは、0〜5の整数を表し、0であることが好ましい。
【0037】
成分A−4の具体例として[L−1]〜[L−65]が好ましく挙げられる。
【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
【化13】

【0044】
本発明においては、式(a−4)で表される化合物としては、フェニル基を有する化合物が好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートが更に好ましく、2−フェノキシエチルアクリレートが特に好ましい。
【0045】
インクジェット吐出性、柔軟性の観点から、成分A−4の含有量は、インク組成物の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、3〜45重量%がより好ましく、5〜40重量%が更に好ましい。
【0046】
本発明のインク組成物は、成分A−2及び成分A−4以外のその他の単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。成分A−2及びA−4以外の単官能(メタ)アクリレートとしては、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソアミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロペンテニルアクリレート、シクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等が挙げられる。
【0047】
なお、本発明において成分A−1及び成分A−2を含む単官能の重合性化合物の合計含有量がインク組成物中40重量%以上である。なお、単官能の重合性化合物には、成分A−4、及び、上記その他の単官能(メタ)アクリレート等の単官能の重合性化合物も含まれる。
単官能の重合性化合物の含有量が40重量%未満であると、柔軟性が低下する。
柔軟性の観点から、単官能の重合性化合物の含有量は、45〜80重量%が好ましく、50〜70重量%がより好ましい。
【0048】
<(成分A−3)多官能(メタ)アクリレート>
本発明のインク組成物は、(成分A−3)多官能(メタ)アクリレートを含有する。
インク組成物が多官能(メタ)アクリレート化合物を含有しない場合には、硬化性が低下する。
【0049】
成分A−3の具体例としては、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
本発明のインク組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物として、好ましくはオリゴマーを含有する。
この「オリゴマー」とは、一般に有限個(一般的には5〜100個)のモノマーに基づく構成単位を有する重合体である。オリゴマーの重量平均分子量は400〜10,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。
オリゴマーとしては、官能基として(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
オリゴマーに含まれる官能基数は、柔軟性と硬化性のバランスの観点から、1分子あたり1〜15が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0051】
本発明におけるオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート系、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマーブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマー、(メタ)アクリレートオリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステル(メタ)アクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)、アミン変性ポリエステルオリゴマー等を挙げることができる。この中で、オリゴエステル(メタ)アクリレートが好ましく、その中では、ウレタンアクリル系、ポリエステル(メタ)アクリレート系が更に好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系が、硬化性、密着性に優れたインク組成物が得られることから特に好ましい。オリゴマーは、一種単独で用いる以外に、複数種を併用してもよい。
【0052】
ウレタン(メタ)アクリレート系としては、脂肪族系ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族系ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。詳しくは、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、化学工業日報社)を参照することができる。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーとしては、新中村化学工業(株)製のU−2PPA、U−4HA、U−6HA、U−6LPA、U−15HA、U−324A、UA−122P、UA5201、UA−512等;サートマー社製のCN964A85、CN964、CN959、CN962、CN963J85、CN965、CN982B88、CN981、CN983、CN996、CN9002、CN9007、CN9009、CN9010、CN9011、CN9178、CN9788、CN9893、ダイセル・サイテック社製のEB204、EB230、EB244、EB245、EB270、EB284、EB285、EB810、EB4830、EB4835、EB4858、EB1290、EB210、EB215、EB4827、EB4830、EB4849、EB6700、EB204、EB8402、EB8804、EB8800−20R等が挙げられる。
アミン変性ポリエステルオリゴマーとして、ダイセル・サイテック社製のEB524、EB80、EB81、サートマー社製のCN550、CN501、CN551、Rahn A.G.社製のGENOMER5275が挙げられる。
【0054】
オリゴマーの含有量は、硬化性と密着性の両立という観点から、インク組成物の総重量に対して、1〜10重量%が好ましく、2〜8重量%がより好ましく、3〜7重量%が更に好ましい。
【0055】
(成分A−3)多官能(メタ)アクリレートの総含有量は、硬化性の観点から、インク組成物の全重量に対して5〜60重量%であることが好ましく、5〜35重量%であることがより好ましく、7〜30重量%であることが更に好ましく、10〜25重量%であることが特に好ましい。
【0056】
インク組成物中における重合性化合物全体の総含有量は、65〜99重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
【0057】
((成分B)成分B−1及び成分B−2を含む重合開始剤)
本発明のインク組成物は、(成分B−1)アシルフォスフィン化合物、並びに、(成分B−2)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物を含む重合開始剤を含有し、{(成分B−1の総重量)≧(成分B−2の総重量)}を満たす。
【0058】
<(成分B−1)アシルフォスフィン化合物>
本発明のインク組成物は、(成分B)重合開始剤として(成分B−1)アシルフォスフィン化合物を含有する。成分B−1を含有しないと、十分な硬化性を得ることができない。
(成分B−1)アシルフォスフィン化合物としては、特開2009−096985号公報の段落0080〜0098に記載のアシルフォスフィンオキサイド化合物が好ましく挙げられ、中でも、化合物の構造中に式(b−1−1)又は式(b−1−2)で表される部分構造を有するものが好ましい。
【0059】
【化14】

(式(b−1−1)及び式(b−1−2)中、*は結合位置を表す。)
【0060】
特に、アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、式(b−1−3)又は式(b−1−4)の化学構造を有するものが特に好ましい。
【0061】
【化15】

(式(b−1−3)中、R6、R7、R8はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0062】
式(b−1−3)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、R6〜R8が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R7及びR8がフェニル基であり、R6が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−1−3)で表されるモノアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(Darocur TPO:チバ・ジャパン社製、Lucirin TPO:BASF社製)が好ましい。
【0063】
【化16】

(式(b−1−4)中、R9、R10、R11はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0064】
式(b−1−4)で表されるビスアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、R9〜R11が、置換基としてメチル基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、R11がフェニル基であり、R9及びR10が1〜3個のメチル基を有するフェニル基であることがより好ましい。
中でも、式(b−1−4)で表されるビスアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE819、チバ・ジャパン社製)が好ましい。
【0065】
インク組成物中における(成分B−1)アシルフォスフィン化合物の含有量は、硬化性の観点から、0.1〜16重量%が好ましく、1〜16重量%がより好ましく、4〜13重量%が更に好ましい。
また、(成分B−1)として、ビスアシルホスフィン化合物と、モノアシルフォスフィン化合物を併用することが好ましく、ビスアシルフォスフィン化合物とモノアシルフォスフィン化合物とを含有する場合、{(ビスアシルフォスフィン化合物の含有量):(モノアシルフォスフィン化合物の含有量)=20:1〜1:20}であることが好ましく、12:1〜1:10であることがより好ましく、10:1〜1:3であることが更に好ましい。ビスアシルフォスフィン化合物とモノアシルフォスフィン化合物の含有量の比が上記範囲内であると、硬化性に更に優れる。
【0066】
<(成分B−2)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物>
本発明のインク組成物は、(成分B−2)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物を含有する。成分B−2を含有しない場合、硬化性に劣る。
【0067】
<チオキサントン化合物>
チオキサントン化合物は、式(b−2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0068】
【化17】

(式(b−2−1)中、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基(一置換及び二置換の場合を含む。)、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。)
【0069】
前記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。
1〜R8は、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0070】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが例示できる。
これらの中でも、入手容易性や硬化性の観点から、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、及び、4−イソプロピルチオキサントンがより好ましい。
【0071】
<チオクロマノン化合物>
チオクロマノン化合物としては、式(b−2−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0072】
【化18】

【0073】
式(b−2−2)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基又はスルホ基を表す。上記アルキル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、アシル基におけるアルキル部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましい。なお、アシルオキシ基は、アリールオキシカルボニル基であってもよく、アシル基はアリールカルボニル基であってもよい。この場合、アリール部分の炭素数は、6〜14であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
1、R2、R3及びR4は、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5又は6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士が更に組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。これらの環構造は置換基を更に有していてもよい。置換基としては、式(b−2−1)で前述したものが挙げられる。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
また、チオクロマノン化合物は、チオクロマノンの環構造上に少なくとも1つの置換基(アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシ基及びスルホ基等)を有する化合物であることが好ましい。上記置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基及びアシルオキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基及びハロゲン原子がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基及びハロゲン原子が更に好ましい。
また、チオクロマノン化合物は、芳香環上、及び、シクロヘキサノン環上のそれぞれに、少なくとも1つの置換基を有する化合物であることがより好ましい。
【0074】
チオクロマノン化合物の具体例としては、下記(I−1)〜(I−31)が好ましく例示できる。これらの中でも、(I−14)、(I−17)、及び、(I−19)がより好ましく、(I−14)が特に好ましい。
【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
本発明のインク組成物中における(成分B−2)チオキサントン化合物及びチオクロマノン化合物の総含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜8重量%が更に好ましい。
【0078】
<その他の重合開始剤>
本発明のインク組成物は、成分B−1及び成分B−2以外の他の重合開始剤を含有していてもよい。他の重合開始剤としては、(成分B−3)α−アミノアルキルフェノン化合物が好ましい。
【0079】
<(成分B−3)α−アミノアルキルフェノン化合物>
本発明のインク組成物は、(成分B−3)α−アミノアルキルフェノン化合物を含有することが好ましい。成分B−3を含有することにより硬化性に優れたインク組成物が得られる。成分B−3は、式(b−3−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0080】
【化21】

【0081】
式(b−3−1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立にヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよいアミノ基を表し、Xは、水素原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。なお、R1、R2、R3、及びXがアミノ基である場合の置換基は、互いに結合して複素環基を形成してもよい。置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0082】
成分B−3としては、式(b−3−2)及び式(b−3−3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0083】
【化22】

【0084】
式(b−3−2)中、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R4とR5、及びR6とR7の少なくともいずれかが互いに結合して複素環基を形成してもよい。R1、R2、及び、置換基は、式(b−3−1)におけるR1、R2、及び、置換基とそれぞれ同義である。
【0085】
【化23】

【0086】
式(b−3−3)中、R8は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
1、R2、及び、置換基は、式(b−3−1)におけるR1、R2、及び、置換基と同義であり、R4及びR5は、式(b−3−2)におけるR4及びR5と同義である。
前記複素環基としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、モルホリノ基が好ましい。
【0087】
α−アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、市販品として、IRGACURE369(チバ・ジャパン社製)、IRGACURE907(チバ・ジャパン社製)などが好適に挙げられる。
【0088】
硬化性の観点から、(成分B−3)α−アミノアルキルフェノン化合物の含有量は、インク組成物中0.1〜15重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
【0089】
その他の重合開始剤としては、更に、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、及び、炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。上記重合開始剤の詳細については、当業者に公知であり、例えば、特開2009−185186号公報の段落0090〜0116に記載されている。
【0090】
インク組成物中における重合開始剤の総含有量は、1〜20重量%が好ましく、3〜18重量%がより好ましく、5〜15重量%が更に好ましい。
上記の範囲内であると、インク組成物を十分硬化させることができ、硬化度が均一な硬化膜を得ることができる。
【0091】
なお、成分(B−1)と成分(B−2)は、{(成分B−1の総重量)≧(成分B−2の総重量)}を満たす。上記の関係を満たさないと、硬化性に劣る。
本発明においては、硬化性の観点から、{(成分B−1の総重量):(成分B−2の総重量)}が、20:1〜1:1であることが好ましく、10:1〜1.1:1であることがより好ましく、8:1〜1.2:1であることが更に好ましい。
【0092】
なお、重合開始剤として成分B−3を含有する場合、成分B−1〜成分B−3は、{(成分B−1と成分B−3との総重量)≧(成分B−2の総重量)}の関係を満たす。本発明においては、硬化性の観点から、{(成分B−1と成分B−3との総重量):(成分B−2の総重量)}が、20:1〜1:1であることが好ましく、20:1〜1.5:1であることがより好ましく、15:1〜1.5:1であることが更に好ましい。
【0093】
<(成分C)着色剤>
本発明のインク組成物は、形成された画像部の視認性を向上させるため、(成分C)着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0094】
本発明に使用できる顔料としては、特に限定されるわけではないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
赤又はマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3,5,19,22,31,38,42,43,48:1,48:2,48:3,48:4,48:5,49:1,53:1,57:1,57:2,58:4,63:1,81,81:1,81:2,81:3,81:4,88,104,108,112,122,123,144,146,149,166,168,169,170,177,178,179,184,185,208,216,226,257、Pigment Violet 3,19,23,29,30,37,50,88、Pigment Orange 13,16,20,36、青又はシアン顔料としては、Pigment Blue 1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17−1,22,27,28,29,36,60、緑顔料としては、Pigment Green 7,26,36,50、黄顔料としては、Pigment Yellow 1,3,12,13,14,17,34,35,37,55,74,81,83,93,94,95,97,108,109,110,120,137,138,139,153,154,155,157,166,167,168,180,185,193、黒顔料としては、Pigment Black 7,28,26、白色顔料としては、Pigment White 6,18,21などが目的に応じて使用できる。
【0095】
本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99,100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9;等が挙げられる。
【0096】
着色剤は、インク組成物に添加された後、適度に当該インク組成物内で分散することが好ましい。着色剤の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
【0097】
着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分と共に直接添加してもよい。また、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に使用する重合性化合物のような分散媒体に添加し、均一分散あるいは溶解させた後、配合することもできる。
本発明において、溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化、及び、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、着色剤は、重合性化合物のような分散媒体に予め添加して、配合することが好ましい。なお、分散適性の観点のみを考慮した場合、着色剤の添加に使用する重合性化合物は、最も粘度の低いモノマーを選択することが好ましい。着色剤はインク組成物の使用目的に応じて、1種又は2種以上を適宜選択して用いればよい。
【0098】
なお、インク組成物中において固体のまま存在する顔料などの着色剤を使用する際には、着色剤粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができるので好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0099】
(その他の成分)
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記各成分以外に、重合禁止剤、増感剤、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を含有することができる。これらは、特開2009−185186号公報に記載されており、本発明においても使用できる。
【0100】
<(成分D)重合禁止剤>
本発明のインク組成物は、保存性を高める観点から、重合禁止剤を含有することが好ましい。
インク組成物をインクジェット記録用インク組成物として使用する場合には、25〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して吐出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ニトロソ系重合禁止剤、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、ヒンダードアミン等が挙げられ、中でもニトロソ系重合禁止剤、ヒンダードアミン系重合禁止剤が好ましい。
本発明に好ましく使用されるニトロソ系重合禁止剤の具体例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。
【0101】
【化24】

【0102】
ニトロソ系重合禁止剤の市販品として、FIRSTCURE ST−1(Chem First社製)等が挙げられる。ヒンダードアミン系重合禁止剤の市販品としてTINUVIN292、TINUVIN770DF、TINUVIN765、TINUVIN123が挙げられる。
本発明のインク組成物中における重合禁止剤の含有量は0.01〜1.5重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましく、0.2〜0.8重量%が更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、インク組成物の調製時、保管時の重合を抑制でき、インクジェットノズルの詰まりを防止できる。
【0103】
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
【0104】
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の重量に対し、0.05〜15重量%であることが好ましい。
【0105】
(インク物性)
本発明のインク組成物は、吐出性を考慮し、25℃における粘度が40mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは5〜40mPa・s、更に好ましくは7〜30mPa・sである。また吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となるので好ましい。更に、インク液滴着弾時のインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0106】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、28〜39mN/mであることが好ましい。より好ましくは35〜38mN/mである。上記の範囲であると光沢性に優れる。
【0107】
II.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、(a)(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物を吐出して、被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、(b)発光ピーク波長が300〜400nmの範囲内の紫外線を発生する発光ダイオードを用いて前記被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2となるように紫外線を照射し、吐出されたインク組成物を硬化する硬化工程、を含むことを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法は、(a)及び(b)工程を含むことにより、被記録媒体上において硬化したインク組成物によって画像を形成する方法である。
【0108】
<(a)工程:画像形成工程>
まず、(a)(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物を吐出して、被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程について説明する。
本発明に使用される被記録媒体としては、特に限定されず、公知の被記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。本発明における被記録媒体としては、非吸収性被記録媒体が好ましく、中でもプラスチックフィルム、紙がより好ましい。
【0109】
画像形成工程に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。即ち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a)工程における支持体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク組成物供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pL、より好ましくは3〜42pL、更に好ましくは8〜30pLのマルチサイズドットを、好ましくは300×300〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0110】
本発明のインクジェット記録方法において使用されるインクジェットヘッドは非撥液処理ノズルプレートを有するインクジェットヘッドであることが好ましい。ノズルプレートとしては、公知のものを用いることができるが、例えば米国特許第7,011,396号明細書、米国特許出願公開第2009/0290000号明細書等に記載されたインクジェットヘッドを好ましく用いることができる。このようなノズルプレートは、例えばFUJIFILM Dimatix社製のピエゾ駆動方式によるオンデマンド・インクジェットヘッドに搭載されている。その具体例として、S−class、Q−class Sapphireが挙げられる。
【0111】
前記ノズルプレートは、少なくとも被記録媒体に対向する側の面の一部が非撥液処理(親インク処理)されたものであることが好ましい。非撥液処理方法としては、公知の方法を用いることができ、限定されないが、例えば(1)シリコン製のノズルプレートの表面を熱酸化して酸化ケイ素膜を形成する方法、(2)シリコンやシリコン以外の酸化膜を酸化的に形成する方法、若しくは、スパッタリングにより形成する方法、(3)金属膜を形成する方法、が挙げられる。これらの方法の詳細については、米国特許出願公開第2010/0141709号明細書を参照することができる。
【0112】
該インクジェットヘッドは400ng*kHz以上の生産性を有することが好ましい。
生産性は、インク組成物1ドットあたりの重量×ノズル数×周波数により算出され、1秒あたりに吐出されるインク組成物の重量を意味する。
本発明のインク組成物は、硬化感度が高く、短時間で硬化させることができるため、400ng*kHz以上の生産性を有する画像形成装置を用いたとしても、画質を低下させることなく画像を形成することが可能である。生産性は、200〜800ng*kHzがより好ましく、300〜600ng*kHzが更に好ましい。
【0113】
本発明において、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インク組成物供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる画像形成装置が好ましく使用される。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク組成物供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断又は断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0114】
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物として使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。よって、インク組成物の温度の制御幅は、設定温度の±5℃であることが好ましく、設定温度の±2℃であることがより好ましく、設定温度の±1℃であることが更に好ましい。
【0115】
<(b)工程:硬化工程>
次に、(b)発光ピーク波長が300〜400nmの範囲内の紫外線を発生する発光ダイオードを用いて前記被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2となるように紫外線を照射し、吐出されたインク組成物を硬化する硬化工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、紫外線の照射により硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能により重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物中に重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が紫外線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0116】
硬化工程において、紫外線を照射するための線源として発光ピーク波長が300〜400nmの範囲である紫外線を発生する発光ダイオード(UV−LED)を使用する。
UV−LEDとして、例えば、日亜化学工業(株)が、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、LEDとして、米国特許番号第6,084,250号明細書に開示されている、300nmと370nmとの間に中心付けされた紫外線を放出し得るLEDが例示できる。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。
ここで、本発明に使用される紫外線の発光ピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、300〜400nmである。300nm未満であると、安全性に劣る。また、400nmを超えると、硬化性に劣る。紫外線の発光ピーク波長は、硬化性の観点から、330〜395nmが好ましく、350〜390nmがより好ましい。
【0117】
本発明のインク組成物は十分な感度を有するため、低出力の活性放射線であっても十分に硬化する。具体的には、被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2の範囲内で十分に硬化する。被記録媒体表面における最高照度が600mW/cm2未満であると、吐出されたインク組成物が硬化せず、画像のベタツキや画質の低下を招く。また、被記録媒体表面における最高照度が1,600mW/cm2を超えると、吐出されたインク組成物の硬化が過剰に早く進行し、画像表面に凹凸が形成されることによる画質の低下を招く。
被記録媒体表面における最高照度は、画質及び生産性の観点から、650〜1,500mW/cm2が好ましく、700〜1,400mW/cm2がより好ましい。
【0118】
本発明のインク組成物は、このような紫外線に、好ましくは0.01〜2秒、より好ましくは0.1〜1.5秒、更に好ましくは0.3〜1秒照射されることが適当である。
活性放射線の照射条件及び基本的な照射方法は特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。
このように、稼働部に設けられる活性放射線源として小型かつ軽量のUV−LEDを用いることにより、インクジェット記録装置の小型化及び省エネルギー化を図ることができ、高い生産性で画像を形成することができる。また、UV−LEDは、露光条件の可変性に優れているため、インク組成物に応じて好適な露光条件を設定することができ、高い生産性で画像を形成することができる。
【0119】
活性放射線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0120】
硬化工程において、前記発光ダイオードにより付与するエネルギー、すなわち紫外線の照射により被記録媒体上のインク組成物に付与するエネルギーは、100〜1,000mJ/cm2が好ましく、150〜800mJ/cm2がより好ましく、200〜700mJ/cm2が更に好ましい。上記の数値の範囲内であると、生産性と硬化性を両立できるため好ましい。
【0121】
本発明のインクジェット記録方法においては、光沢性に優れた画像が得られることから、印刷物における画像の少なくとも一部を、前記(a)画像形成工程及び前記(b)硬化工程を2回以上繰り返して形成することも好ましい。
前記印刷物における画像の少なくとも一部を、前記(a)画像形成工程及び前記(b)硬化工程を2回以上繰り返して形成する態様の例としては、1色につき前記(a)及び(b)工程を1回ずつ行ってカラー画像を形成する態様や、単色の画像について前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返して単色の画像を形成する態様、カラー画像における1色について前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返して単色の画像を形成し、更にカラー画像の他の色についても同様に前記(a)及び(b)工程を2回以上繰り返すことにより、カラー画像を形成する態様が挙げられる。
【0122】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な支持体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0123】
本発明のインクジェット記録方法には、本発明のインク組成物を1つ以上含むインクセットを好適に使用することができる。吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の低い着色インク組成物から被記録媒体に付与することが好ましい。本発明のインク組成物として、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインク組成物を使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物とシアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物の計7色が少なくとも含まれるインクセットとしても使用することができ、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。このようにして、本発明のインク組成物は、紫外線の照射により高感度で硬化することで、支持体表面に画像を形成することができる。
【0124】
本発明のインク組成物を複数色そろえ、インクセットとして用いる場合、本発明のインク組成物を少なくとも1つ含み、本発明のインク組成物又は本発明以外のインク組成物と組み合わせた2種以上のインク組成物を有するインクセットであれば、特に制限はないが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト、ライトマゼンタ、及び、ライトシアンよりなる群から選択される色の本発明のインク組成物を少なくとも1つ含むことが好ましい。
また、本発明のインクセットは、本発明のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。本発明のインク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、本発明のインクセットとして、少なくともイエロー、シアン、マゼンタ、及び、ブラックよりなる4色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることがより好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、及び、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物と、ライトシアン、及び、ライトマゼンタよりなる2色のインク組成物とを組み合わせたインクセットであることが更に好ましい。
なお、本発明における「濃色インク組成物」とは、着色剤の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。前記着色剤としては、特に制限はなく公知の着色剤を用いることができ、顔料や分散染料が例示できる。
本発明のインクセットが、少なくとも1つの濃色インク組成物、及び、少なくとも1つの淡色インク組成物を含んでおり、濃色インク組成物と淡色インク組成物とが同系色の着色剤を用いている場合、濃色インク組成物と淡色インク組成物との着色剤濃度の比が、濃色インク組成物:淡色インク組成物=15:1〜4:1であることが好ましく、12:1〜4:1であることがより好ましく、10:1〜4.5:1であることが更に好ましい。上記範囲であると、粒状感の少ない、鮮やかなフルカラー画像が得られる。
【実施例】
【0125】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」とは、特に断りのない限り「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示すものとする。
【0126】
(イエローミルベースの調製)
・イエロー顔料:NOVOPERM YELLOW H2G(クラリアント社製)
30重量部
・SR9003(プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、SARTOMER社製) 30重量部
・BYK168(分散剤、BYK Chemie社製) 40重量部
上記の成分を撹拌し、イエローミルベースを得た。なお、顔料ミルベースの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散することにより行った。
【0127】
(マゼンタミルベースの調製)
・マゼンタ顔料:CINQUASIA MAGENTA RT−355D(チバ・ジャパン社製) 30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、マゼンタミルベースを得た。
【0128】
(シアンミルベースの調製)
・シアン顔料:IRGALITE BLUE GLVO(チバ・ジャパン社製)
30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、シアンミルベースを得た。
【0129】
(ブラックミルベースの調製)
・ブラック顔料:SPECIAL BLACK 250(チバ・ジャパン社製)
30重量部
・SR9003 30重量部
・BYK168 40重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、ブラックミルベースを得た。
【0130】
(ホワイトミルベースの調製)
・ホワイト顔料:アルミナ処理酸化チタン(KRONOS社製) 60重量部
・SR9003 36重量部
・ソルスパース36000(アビシア社製) 4重量部
上記の成分を、イエローミルベースの調製と同様の分散条件で撹拌し、ホワイトミルベースを得た。
【0131】
(実施例1−1〜1−19、及び、比較例1−1〜1−6)
<インク組成物の作製方法>
表1及び表2に記載の素材を混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。なお、表中の数値は各成分の配合量(重量部)を表す。
【0132】
<インクジェット記録方法>
インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に打滴し、紫外発光ダイオード(UV−LED)の光線下に特定の速度で通過させることにより照射を行って、インク組成物を硬化させ、印刷物を得た。
本実施例では、インク組成物の吐出は、ピエゾ型インクジェットヘッド(FUJIFILM Dimatix社製Q−class Sapphire)を有するインクジェット記録装置により行った。硬化のための発光ダイオード(UV−LED)は、日亜化学工業(株)製NC4U134を用いた。前記LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、電流量をコントロール(レンズを用いて集光)することにより、表面での照度を50〜2,000mW/cm2の範囲で調整できる。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光される。
【0133】
<硬化感度の評価>
印刷後の表面のベトツキがなくなる露光エネルギーによって硬化感度を定義した。
照度を1,000mW/cm2に固定し、露光エネルギーが700mJ/cm2になるように露光時間(sec)を調整した。印刷後の表面のベトツキの有無は、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス(株)製コピー用紙C2)を押し付け、色移りが起きる場合はベトツキ有り、色移りが起きない場合はベトツキなしと判断した。値が低いほど感度が高いと評価し、以下の基準で評価した。
◎:転写、ベトツキなし。
○:転写はなく、ベトツキもほとんどなし。
△:若干転写し、ややベトツキあり。
×:転写し、ベトツキあり。
【0134】
<密着性の評価>
基材(ポリ塩化ビニル)との密着性評価方法としてクロスハッチテスト(JIS K 5600−5−6)を行った。上記インクジェット記録方法に従い、画像部の平均膜厚が12μmのベタ画像を描画した。なお、積算露光量は1,000mJ/cm2、照度は800mW/cm2とした。その後、各々の印刷物に対して、クロスハッチテストを実施した。なお、評価は、JIS K5600−5−6に従い、0〜5の6段階評価とした。ここで、評価0がカットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがないことを意味する。クロスハッチテストの結果を以下の基準で振り分け、評価した。
◎:JIS K5600−5−6 分類 0
○:JIS K5600−5−6 分類 1,2
△:JIS K5600−5−6 分類 3,4
×:JIS K5600−5−6 分類 5
【0135】
<吐出安定性の評価>
得られたインク組成物を室温(25℃)で二週間保存後、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体への記録を行い、常温(25℃)で3時間連続印字したときの、ドット抜け及びインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。
◎:ドット抜け又はインクの飛び散りが発生しない
○:ドット抜け又はインクの飛び散りの発生が1〜3回発生
△:ドット抜け又はインクの飛び散りが4〜10回発生
×:ドット抜け又はインクの飛び散りが11回以上発生
【0136】
<柔軟性の評価>
積算露光量1,000mJ/cm2、照度:800mW/cm2とし、支持体をFassonPE(Fasson社製ポリエチレンフィルム:膜厚100μm)を用いる以外は、硬化感度の評価と同様にして、硬化膜を作製した。得られた硬化膜を軸長5cm×幅2.5cmにカットし、引っ張り試験機((株)島津製作所製)を用いて、速度30cm/minで延伸させ、硬化膜が破断する伸び率を測定した。初期長から2倍の長さまで伸びた状態を伸び率100%と定義した。
◎:伸び率 100%以上
○:伸び率 80%以上100%未満
△:伸び率 50%以上80%未満
×:伸び率 0%以上50%未満
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
なお、上記表1及び表2に記載された各成分は以下の通りである。
・CN964(ウレタンアクリレートオリゴマー、平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製)
・CN962(ウレタンアクリレートオリゴマー、平均官能基数2、サートマー・ジャパン(株)製)
・Irg369;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(IRGACURE 369、チバ・ジャパン社製)
・Irg907;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907、チバ・ジャパン社製)
・Irg819;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819、チバ・ジャパン社製)
・TPO;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(Darocur TPO、チバ・ジャパン社製)
・DETX;2,4−ジエチルチオキサントン(KAYACURE DETX、日本化薬(株)製)
【0140】
【化25】

【0141】
・ST−1;FIRSTCURE ST−1(重合禁止剤、Chem First社製)
【0142】
(実施例2−1〜2−21、及び、比較例2−1〜2−9)
<インク組成物の作製方法>
表3及び表4に記載の素材を混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。なお、表中の数値は各成分の配合量(重量部)を表す。
また、得られた各インク組成物に対して、実施例1−1と同様にして評価を行った。
【0143】
【表3】

【0144】
【表4】

【0145】
(実施例3−1〜3−6、及び、比較例3−1〜3−7)
露光条件(ピーク波長、光源、最高照度、総露光時間、及び、積算光量)を表5の実施例3−1〜3−6、及び、比較例3−1〜3−7のように調整し、実施例1−1、1−4、1−7、及び、比較例1−3で調製したインク組成物を用いて画質、及び、生産性を評価した。
【0146】
<画質の評価>
前記インクジェット記録方法に従い、平均膜厚が4μmのベタ画像の描画を行い、紫外線照射後の画像面において、ミクロとマクロとでの評価で表した。ミクロの評価は、電子顕微鏡観察による画像面の凹凸の有無により評価した。マクロの評価は、人の目による画質の精細加減の度合いにより評価した。以上から、画質は下記の基準で評価した。
◎:凹凸、滲みが無く、滑らかな画面であり、精細な画像であった。
○:凹凸、滲みがあるが、精細さは維持している画像であった。
△:凹凸、滲みがあり、かつ精細さに欠ける画像であった。
×:凹凸、滲みが多くあり、かつ精細さに欠ける画像であった。
【0147】
<生産性の評価>
積算光量が500mJ/cm2になる時の総露光時間によって定義した。
◎:0.3秒以下
○:0.3〜1秒
×:1秒以上
【0148】
【表5】

【0149】
(実施例4−1〜4−6、及び、比較例4−1〜4−7)
露光条件(ピーク波長、光源、最高照度、総露光時間、及び、積算光量)を表6の実施例4−1〜4−6、及び、比較例4−1〜4−7のように調整し、実施例2−12、2−13、2−17、及び、比較例2−3、2−5、2−9で調製したインク組成物を用いて、実施例3−1と同様に画質、及び、生産性を評価した。
【0150】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)及び(成分B)を含むインク組成物を吐出して、被記録媒体上に画像を形成する画像形成工程、及び、
発光ピーク波長が300〜400nmの範囲内の紫外線を発生する発光ダイオードを用いて前記被記録媒体表面における最高照度が600〜1,600mW/cm2となるように紫外線を照射し、吐出されたインク組成物を硬化する硬化工程、を含むことを特徴とする
インクジェット記録方法。
(成分A)成分A−1〜成分A−3を含む重合性組成物
(成分A−1)N−ビニルラクタム類
(成分A−2)式(a−2)で表される化合物
【化1】

(式(a−2)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、X2は単結合、又は、二価の連結基を表す。)
(成分A−3)多官能(メタ)アクリレート
なお、成分A−1及び成分A−2を含む単官能の重合性化合物の合計含有量がインク組成物中40重量%以上である
(成分B)成分B−1及び成分B−2を含む重合開始剤
(成分B−1)アシルフォスフィン化合物
(成分B−2)チオキサントン化合物及び/又はチオクロマノン化合物
なお、{(成分B−1の総重量)≧(成分B−2の総重量)}を満たす
【請求項2】
成分A−1が式(a−1)で表される化合物である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【化2】

(式(a−1)中、nは1〜5の整数を表す。)
【請求項3】
成分A−1がN−ビニルカプロラクタムである、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
式(a−2)中、X2が表す二価の連結基が、二価の炭化水素基、ポリ(アルキレンオキシ)基、又は、ポリ(アルキレンオキシ)アルキル基である、請求項1〜3いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
成分Bの含有量がインク組成物中1〜20重量%であり、成分B−1を0.1〜16重量%含有し、成分B−2を0.1〜10重量%含有する、請求項1〜4いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
{(成分B−1の総重量):(成分B−2の総重量)}=20:1〜1:1の関係を満たす、請求項1〜5いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
成分A−3の含有量がインク組成物中5〜59重量%である、請求項1〜6いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
成分B−1としてビスアシルフォスフィン化合物及びモノアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、請求項1〜7いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記インク組成物が(成分C)着色剤を含有する、請求項1〜8いずれか1つに記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
成分Cが顔料又は油性染料である、請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1つに記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする印刷物。

【公開番号】特開2012−46724(P2012−46724A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102972(P2011−102972)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】