説明

インクジェット記録方法、記録物およびインクセット

【課題】従来良好に光輝性領域を記録できなかった記録媒体、層上に、良好な光輝性領域を記録する。
【解決手段】インク非吸収性または低吸収性の媒体、算術表面粗さRaが20μm以上の媒体、布帛、普通紙、から選択される一種以上の記録媒体に用いられるインクセットであって、インクジェットヘッドにより記録され、光輝性顔料を含有する光輝性インクと、活性エネルギー線重合性化合物を含有し、着色剤を実質的に含有しない重合性インクと、を含むインクセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法、記録物およびインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録面に光輝性を有する画像が形成された記録物の需要が高まっている。光輝性を有する画像を形成する方法としては、従来は、たとえば、平坦性の高い記録面を有する記録媒体を準備して、これに金属箔を押しつけて記録する箔押し記録法、記録面が平滑なプラスチックフィルムに対して金属等を真空蒸着する方法、および、記録媒体に光輝性顔料インキを塗布し、さらにプレス加工を行う方法などによって記録されてきた。
【0003】
光輝性顔料を有するインク(以下、適宜光輝性インクという)およびインクジェット記録方法として、例えば特許文献1において、非吸収性材料である基材を僅かに溶融するような溶剤をインク組成に用いるものが開示されている。しかしながらこれらの溶剤の場合、非吸収性材料としてポリ塩化ビニル系のプラスチックにおいては良好な光輝性を得ることは可能であった。しかし、溶解度の極めて低いプラスチック、金属およびガラスなどの非吸収性材料または吸収性が著しく低い材料においては、インク受容層を設けなければ、インクが乾燥をする前に溶剤等が対流して光輝性顔料の表面の平滑性が失われることから、光沢劣化の問題等が発生していた。また、吸収性材料であっても、普通紙のような表面の平滑性が十分でない記録媒体又は表面が平滑とならない平均粒子径(体積基準の平均粒子径、以下同様)200μm以上の顔料を含む顔料層の場合には、光輝性顔料をインクジェットで記録しても、光輝性顔料の平滑性が十分でないことで光が乱反射してしまい良好な光輝性を得ることは困難であった。また、非吸収性材料または吸収性が著しく低い材料に記録した場合に、光輝性顔料の記録媒体への密着性が十分ではなく、良好な耐擦性が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インク非吸収性または低吸収性の媒体、算術表面粗さRaが20μm以上の媒体、布帛、普通紙、から選択される一種以上の記録媒体又は平均粒子径200nm以上の顔料を含む顔料層上であっても、優れた光輝性を有するとともに、優れた耐擦性(摩擦に対する耐久性)を有する画像を記録し、更に画像記録工程において活性エネルギー線重合反応を用いることで、印刷速度の高速化が可能なインクセット、インクジェット記録方法を提供すること、及び、優れた光輝性を有する画像が記録された記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも上述の課題のひとつを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0007】
〔適用例1〕本適用例によるインクセットは、インク非吸収性または低吸収性の媒体、算術表面粗さRaが20μm以上の媒体、布帛、普通紙、から選択される一種以上の記録媒体に付与され、活性エネルギー線重合性化合物を含有し、着色剤を実質的に含有しない重合性インクと、インクジェットヘッドにより、前記重合性インク上に吐出される光輝性顔料を含有する光輝性インクと、からなることを特徴とする。
【0008】
これにより、優れた光輝性を有する画像を形成することが可能なインクセットを提供することができる。
【0009】
〔適用例2〕本適用例によるインクセットは、平均粒子径200nm以上の顔料を含む顔料層が形成された記録媒体に付与され、活性エネルギー線重合性化合物を含有し、着色剤を実質的に含有しない重合性インクと、インクジェットヘッドにより、前記重合性インク上に吐出される光輝性顔料を含有する光輝性インクと、を含む。
【0010】
これにより、優れた光輝性を有する画像を形成することが可能なインクセットを提供することができる。
【0011】
〔適用例3〕本適用例によるインクセットは、前記光輝性インクが、前記活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しないことを特徴とする。
【0012】
これにより、光輝性インク中に、前記活性エネルギー線重合性化合物を含まないことで、光輝性顔料の分散が安定し、より優れた光輝性を有する画像を形成することができる。
【0013】
〔適用例4〕本適用例によるインクセットは、前記重合性インクが、重合性化合物を5質量%以上含有することを特徴とする。
【0014】
これにより、良好な硬化を行う重合性インクとなる。
【0015】
〔適用例5〕本適用例によるインクジェット記録方法は、前記記載のインクセットを用いるインクジェット記録方法において、前記記録媒体上の、少なくとも前記光輝性インクが記録される部位に、前記重合性インクを付与して下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層上に、前記光輝性インクを記録する光輝性インク記録工程と、前記光輝性インク記録工程の前に行われる照射工程であって、前記下地層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を特徴とする。
【0016】
これにより、優れた光輝性を有する画像を形成することが可能なインクジェット記録方法を提供し、更に、重合性インク吐出後に、活性エネルギー線を照射することで、吸収性が高い記録媒体において、重合性インクが浸透する前に下地層が形成されるため、インク滴下量を低減することができる。また、印刷速度の高速化も可能にすることを特徴とする。
【0017】
〔適用例6〕本適用例によるインクジェット記録方法は、前記記載のインクジェット記録方法において、前記顔料層上の、少なくとも前記光輝性インクが記録される部位に、前記重合性インクを付与して下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層上に、前記光輝性インクを記録する光輝性インク記録工程と、前記光輝性インク記録工程の前に行われる照射工程であって、前記下地層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含むインクジェット記録方法。
【0018】
これにより、優れた光輝性を有する画像を形成することが可能なインクジェット記録方法を提供し、更に、重合性インク吐出後に、活性エネルギー線を照射することで、吸収性が高い記録媒体において、重合性インクが浸透する前に下地層が形成されるため、インク滴下量を低減することができる。また、印刷速度の高速化も可能にすることを特徴とする。
【0019】
〔適用例7〕本適用例によるインクジェット記録方法は、前記重合性インクは前記インクジェットヘッドにより記録されることを特徴とする。
【0020】
これにより、前記重合性インクは前記インクジェットヘッドによって、任意の箇所に下地層を形成することができ、重合性インクの使用量を少なくすることができ、経済的にも優れる。
【0021】
〔適用例8〕本適用例によるインクジェット記録方法は、前記重合性インクの単位面積あたりの吐出量(mg/inch2)は、前記光輝性インクの単位面積あたりの吐出量(mg/inch2)以上にすることができることを特徴とする。
【0022】
これにより、より優れた光輝性を有する画像を記録することができる。
【0023】
〔適用例9〕本適用例によるインクジェット記録方法は、前記重合性インクの1滴当たりの液滴量(L/inch2)は、前記光輝性インクの1適当たりの液適量(L/inch2)以上である。
【0024】
これにより、より優れた光輝性を有する画像を記録することができる。
【0025】
〔適用例10〕本適用例による記録装置は、前記記載の記録方法を用いる記録装置であって、前記インクジェットヘッドと対向する位置に設けられ、前記記録媒体を支持するプラテンと、前記インクジェットヘッド、前記プラテンの少なくとも一方を、走査させる走査機構と、を備え、前記光輝性インクを記録する際に前記走査機構を走査させる回数は、前記重合性インクを記録する際に前記走査機構を走査させる回数超である、ことを特徴とする。
【0026】
これにより、前記プラテンを備えることで、前期光輝製インクの速乾性を向上することが可能となる。また、前記走査機構を備えることで、インクジェットヘッドと記録媒体の相対移動によって、画像を形成することができるため、記録装置の構造における応用範囲が広がる。更に、前記光輝性インクを記録する際の走査させる回数を前記重合性インクの走査回数超であることで、より優れた光輝性を有する画像を記録することができる。
【0027】
〔適用例11〕本適用例による記録物は、前記記載の記録方法によって記録された記録物であることを特徴とする。
【0028】
これにより、優れた光輝性を有する画像が記録された記録物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
《インクジェット記録方法》
本発明のインクジェット記録方法の好適な実施形態について説明する。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体、算術平均粗さRaが20μm以上の記録媒体、布帛、普通紙上又は平均粒子径が200nm以上の顔料を含む顔料層上に、上述したようなインクジェット装置を用いて、光輝性顔料が分散した光輝性インクを吐出して、記録物を製造する方法である。
【0030】
具体的には、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体上又は顔料層上の光輝性インクを吐出する部位に、活性エネルギー線重合性化合物を含む重合性インクを上述したようなインクジェット装置を用いて吐出し、活性エネルギー線重合性化合物成分で構成された下地層を形成する下地層形成工程と、当該形成された下地層に対して活性エネルギー線を照射して下地層を硬化させる照射工程と、硬化させた下地層上にインクジェット装置を用いて光輝性インクを吐出し、記録物を得る光輝性インク記録工程とを有している。
【0031】
(1)吸収性について
なお、本明細書において、「インク非吸収性または低吸収性の記録媒体」とは、インクの受容層を備えていない、あるいは、インクの受容層が乏しい記録媒体をいう。より定量的には、インク非吸収性および低吸収性の記録媒体とは、記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0032】
(2)インク非吸収性記録媒体
インク非吸収性記録媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない(すなわち、インク受容層を実質的に有していない)プラスチックフィルム(メディア)、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの、ガラス、金属等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0033】
(3)インク低吸収性記録媒体
インク低吸収性記録媒体としては塗工紙が挙げられ、微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等の記録本紙(印刷本紙)等が挙げられる。
塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙。塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの顔料と、デンプンなどの接着剤を混合して作る。塗料は、紙の製造工程の中でコーターという機械を使って塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフマシン式がある。主に記録に用いられ、経済産業省の「生産動態統計分類」では印刷用塗工紙に分類される。
【0034】
微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m2以下の記録用紙のことをいう。アート紙とは、上級記録用紙(上質紙、化学パルプ使用率100%の紙)に塗工量が40g/m2前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。コート紙とは、塗工量が20g/m2以上40g/m2以下程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。キャスト紙とは、アート紙やコート紙を、キャストドラムという機械で表面に圧力をかけることで、光沢や記録効果がより高くなるように仕上げた記録用紙のことをいう。なお、本明細書において塗工量とは、記録用紙の両面の塗工値の合計値である。
【0035】
(4)表面粗さについて
また、本発明において、記録媒体は、光輝性インクを吐出する面の算術平均粗さRaが20μm以上であることが好ましく、20μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
なお、算術平均粗さ(Ra)は、例えば、表面粗さ計や光干渉型顕微鏡を用いて測定することが可能であり、具体的な表面粗さの測定装置としては、段差・表面粗さ・微細形状測定装置P−15(KLA−Tencor社製)等がある。
【0036】
上記粗面を有する記録媒体としては、例えば、上質紙「55PW8R」、XeroxP(富士ゼロックス社製;算術平均粗さRa=29.2μm)、プレイン・デザインペーパー ブラックペーパー(トチマン(株)社製;算術平均粗さRa=30.2μm)、およびスーパーファイン紙(セイコーエプソン社製;Ra=36.6μm)、Bフルート段ボールシート(レンゴー社製;算術平均粗さRa=39.9μm)等が挙げられる。
【0037】
(5)布帛
本発明に用いられる布帛としては、綿、麻、レーヨン繊維、アセテート繊維、絹、羊毛、ナイロン繊維若しくはポリエステル繊維またはこれらの2種以上の混紡からなる布帛等が挙げられる。
【0038】
(6)普通紙
普通紙とは、インクジェットプリンター、レーザープリンター、コピー機等の記録に広く用いられる用紙であり、例えば商品名として「普通紙」として表示されている用紙や、「普通紙」という呼称にて認識されている用紙などが挙げられ、セルロース繊維等によって主に構成されウレタン樹脂等の樹脂による「膨潤層」やシリカ、アルミナ等の無機粒子による「空隙層」が実質的に設けられていない用紙である。普通紙の代表例としては、両面上質普通紙<再生紙>(セイコーエプソン株式会社製)、XeroxP(富士ゼロックス社製)、キヤノン普通紙・ホワイト(キヤノン株式会社製)、画彩普通紙仕上げ(富士フイルム株式会社製)、BROTHER専用A4上質普通紙(ブラザー株式会社製)、KOKUYO KB用紙(共用紙)(コクヨ株式会社製)等が挙げられる。
【0039】
(7)顔料層
本発明の顔料層とは、平均粒子径200nm以上の顔料を含むものである。顔料層はインクジェット方式等によって形成されてもよいし、後述するアナログコーター等によって形成されても良い。このように平均粒子径が大きな顔料を含む顔料層は、表面が平滑とはならず、光輝性インクを記録する際に良好な光沢度が得られない。また、本発明は上述の平均粒子径が大きい場合でも良好に効果を発揮し、平均粒子径が250nm以上、又は、300nm以上であってもよい。なお、顔料層に対して光輝性インクが記録される場合、顔料層が形成されている記録媒体は特に限定されず、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)のような平滑性、吸収性の高い記録媒体でも良い。また、顔料は公知のシアン顔料、マゼンダ顔料、イエロー顔料、ブラック顔料等いずれであっても良いが、白色系の顔料が良好な例として上げられる。
【0040】
白色系の顔料とは、例えば、社会通念上「白」と呼称される色を記録出来る顔料であり、微量着色されているものも含む。また、その顔料を含有するインク(インキ)が「白色インク(インキ)、ホワイトインク(インキ)」などといった名称で呼称ようになる顔料も含む。さらに、その顔料を含有するインク(インキ)が、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に記録された場合に、インクの明度(L*)および色度(a*、b*)が、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測した場合に、70≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−6≦b*≦2.5、の範囲を示すものを含む。
【0041】
白色系の顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子や中空構造を有する粒子が挙げられる。これらの中でも、白色度に優れているという観点から、二酸化チタンを粉末状にした二酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0042】
また、金属酸化物粒子を用いる場合には、その平均粒子径d50(体積基準)は、280nm以上440nm以下である。これによって、良好な白色度を持った層を記録することが可能となる。
【0043】
二酸化チタン粒子としては、市販されているものを用いることができ、例えば、超微粒子酸化チタンTTOシリーズ(株式会社石原産業製)や、微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製)、NanoTek(R)Slurry(シーアイ化成株式会社製)等が挙げられる。
【0044】
白色系の顔料には、中空構造を有する粒子も含まれる。中空構造を有する粒子としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号などの明細書に記載されている粒子を好ましく用いることができる。また、中空構造を有し有機化合物からなる粒子は、市販のものを用いることもできる。市販品としてはsx866シリーズ(JSR株式会社製)等がある。
【0045】
以下、各工程について、詳細に説明する。
<下地層形成工程>
下地層形成工程は、後述に詳述する重合性インクを、所定の記録媒体又は顔料層に付与し、下地層を形成する工程である。
ところで、従来のインクジェット記録方法においては、インク非吸収性または吸収性が著しく低い記録媒体では、インク受容層を設けなければ、インクが乾燥をする前に溶剤等が対流して光輝性顔料の表面の平滑性が失われることから、光沢劣化の問題等が発生していた。また、インク非吸収性または吸収性が著しく低い記録媒体では、光輝性顔料の記録媒体への密着性が十分ではなく、良好な耐擦性(摩擦に対する耐久性)が得られないという問題があった。また、従来のインクジェット記録方法においては、算術平均粗さRaが20μm以上の記録媒体、布帛、普通紙のような表面の平滑性が十分でない記録媒体又は層の場合には、光輝性顔料をインクジェットで記録しても、光輝性顔料の平滑に配置されていないため、光が乱反射してしまい良好な光輝性を得ることは困難であった。
【0046】
これに対して、本発明では、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体又は算術平均粗さRaが20μm以上の記録媒体上又は平均粒子径200nm以上の顔料を含む顔料層の、少なくとも光輝性インクを付与する部位に、重合性インクを用いて下地層を形成し、当該下地層上に光輝性インクを付与する点に特徴を有している。このような特徴を有することにより、下地層がインク受容層として機能し、光輝性インク中の溶媒が下地層に浸透することによって、記録媒体上に光輝性顔料を平坦に配向させることができる。その結果、光輝性顔料が平滑に配列し高い光沢(光輝性)を発揮させることができる。また、下地層を形成することにより、光輝性インクによって形成された画像の上記記録媒体に対する密着性が向上し、得られる記録物の耐擦性(摩擦に対する耐久性)を特に優れたものとすることができる。なお、顔料層は、完成した記録媒体に対して設けられる層であり、記録媒体の表層に存在するシリカ、アルミナ等の層は含まれない。
【0047】
本実施形態では、重合性インクの付与はインクジェットヘッドにより記録されると好ましい。これにより、任意の箇所に下地層を形成することができる。また、光輝性インクを付与する部位に選択的に下地層を形成することができ、重合性インクの使用量を少なくすることができ、経済的にも優れる。なお、下地層形成に用いられる重合性インクの、後述のdutyは、特に限定されないが、50%以上である事が好ましく、より好ましくは80%以上、一層好ましくは100%以上、最も好ましくは300%以上である。これにより、優れた光輝性(光沢)と耐擦性を得ることができる。
また、重合性インクの液滴重量は、特に限定されないが、1ng〜20ngであることが好ましく、下地層の平均膜厚は、0.1μm以上30μm以下であるのが好ましく、1μm以上15μm以下であるのがより好ましい。これにより、より優れた光輝性を有する画像を形成することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、重合性インクの付与手段として、インクジェット装置を用いたものについて説明したが、これに限定されず、公知の技術を選択することができる。例えば、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、スプレーコーター、スリットコーター等の従来から利用されているアナログコーターによって付与してもよい。アナログコーターの場合は、樹脂インクの粘度の制限範囲が広く、高速で塗布できる点で優れている。アナログコーターの市販品としては、たとえばKハンドコーター(松尾産業株式会社製)、バーコーター(第一理化株式会社製)、Capilary_Coater小型基板&小容量タイプ(株式会社ヒラノテクシード製)、No579バーコーター(株式会社安田精機製作所製)等がある。
【0049】
<照射工程>
下地層形成工程に加えて照射工程を有する。照射工程は、上記のように形成した下地層に活性エネルギー線を照射することで下地層を硬化させる。活性エネルギー線としては、その照射により重合開始剤から開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば特に制限はなく、広く、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度および装置の入手容易性の観点からは、活性エネルギー線としては、紫外線および電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。このような工程を有することにより、下地層のインク受容層としての機能をより優れたものとすることができ、形成される画像の記録媒体に対する密着性をより向上させることができる。その結果、より優れた耐擦性を有する記録物を形成することができる。また、下地層のインク受容層としての機能が向上することにより、光輝性顔料をより平滑に配列させることができ、より高い光沢(光輝性)を発揮させることができる。
照射工程は、後述する記録工程より前に行う事が好ましいが、記録工程を行った後に行っても良い。記録工程の前に、下地層を硬化させる照射工程を行っている場合は、下地層が良好な平滑度を有する状態になっているので、一層好ましく光輝性を有した記録物が得られる。
【0050】
下地層の照射工程は、活性エネルギー線照射の光源としてメタルハライドランプ、高圧水銀灯、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等を用いることができる。好ましい態様として用いられる、LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
【0051】
下地層の照射工程における照射源は、好ましくは350nm〜450nmの範囲、より好ましくは380nm〜450nmの範囲にピーク波長を持つ。LEDが上記範囲内にピーク波長を持つと、コストの低下という有利な効果が得られる。
【0052】
硬化の照射エネルギーに制限はなく、インク組成によっても異なるが、紫外線照射エネルギーとして好ましくは10000mJ/cm2以下であり、より好ましくは100〜1000mJ/cm2である。
【0053】
<記録工程>
本工程では、上述したインクジェット装置を用い、下地層の上に、光輝性インクの液滴を吐出して、記録媒体に付着させ、記録媒体上に画像を形成する。これにより、記録物(本発明の記録物)が得られる。
画像の膜厚は、好ましくは0.02〜10μmであり、より好ましくは0.05〜5μmである。光輝性層の膜厚が0.02μm未満であると、記録面に光輝性が得られなくなる場合がある。
【0054】
<加熱工程>
本発明は適宜加熱工程を備えていてもよい。加熱をする手段としては、インク組成物中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進させる方法であれば特に限定されない。加熱工程に用いられる方法として、被記録媒体に熱を加える方法、被記録媒体上のインク組成物に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、強制空気加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。加熱工程において熱を与える際の温度範囲は、インク組成物中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進することができれば特に制限はないが、40℃以上であればその効果が得られ、好ましくは40℃〜130℃であり、より好ましくは40℃〜110℃の範囲である。なお「温度」とは、インク組成物が接触する被記録媒体表面の温度である。
【0055】
本発明において、加熱工程を設ける場合、光輝性インク組成物は活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しない水系インク又は溶剤系インクである事が好ましい。光輝性インクが水系又は溶剤系インクである場合には、重合性インクに活性エネルギー線を照射しても水系又は溶剤系インクは乾燥、固化又は硬化はしない。この場合、重合性インクの層に吸収された場合であっても、記録速度を優先した場合、十分に光輝性インクが乾燥、固化、硬化が十分に出来ていない状態で記録媒体を搬送しなければならない場合がある。そこで、加熱工程を設ける事で、乾燥、固化又は硬化を補填する事が可能となり一層良好な記録装置、記録方法となる。
【0056】
さらに、加熱工程を設ける場合、重合性インクは水系重合性インクであるのも好ましい、近年環境の観点から水系の重合性インクの開発が進んでいる。このようなインクの場合には、活性エネルギー線の照射だけでは良好な乾燥、固化、硬化の効果得られない場合があるが、加熱工程を設ける事によって、一層良好な記録装置、記録方法を提供できる。
【0057】
《インクジェットヘッド》
インク組成物を吐出するインクジェットヘッドは、プラテン若しくはヘッドの少なくとも一方を走査する走査機構を用いるマルチパス方式であってもよく、記録媒体を搬送し、ヘッドを固定して記録するラインヘッド方式であってもよいが、好ましくはマルチパス方式である。高解像度の画像を形成する際に、副走査方向(紙送り方向)の解像度は、記録媒体の搬送精度によって支配される。一方、主走査方向(紙送り方向と垂直方向)の解像度においては、インクジェットヘッドのノズル列間隔によって支配されるため、インクジェットヘッドを走査することが可能なマルチパス方式の方が、より高解像度な画像を形成することができる。
【0058】
マルチパス方式を用いる場合に、走査機構は、インクジェットヘッドを走査してもよく、ヘッドに対向する位置に設けられ記録媒体を支持するプラテンを走査しても良い。なお、光輝性インクを記録する際に前記走査機構を走査させる回数は、重合性インクを記録する際に前記走査機構を走査させる回数超であることが好ましい。これによって、これによって重合性インクは高速で、光輝性インクは一層精密に記録する記録方法となる。
【0059】
また、重合性インクと光輝性インクとを吐出する場合に、吐出する液適量(L/inch2)は、重合性インクの方が多い事が好ましい。重合性インクは下地層として機能するだけであるが、光輝性インクは画像層を記録するインクであり、重合性インクより精密に記録する必要がある。つまり、重合性インクは高速で、光輝性インクは一層精密に記録する液滴量の関係が好ましい。
【0060】
さらに、ラインヘッド方式、マルチパス方式どちらであっても、重合性インクを記録する際の解像度重合性インクの記録物に記録する場合の記録画像解像度は、特に限定されないが、360dpi×360dpi(主走査×副走査)以上であるのが好ましい。またインク組成物を吐出する方式はピエゾ方式、サーマルジェット方式、静電吸引方式など、オンデマンドプリンターに用いられる公知の吐出方法を使用することが出来る。
【0061】
《インクセット》
次に、上述したインクジェット記録方法に適用されるインクセットについて説明する。
本実施形態にかかるインクジェット記録用のインクセットは、上述したような特定の記録媒体に対し、インクジェット記録装置を用いて、光輝性を有する画像の記録に用いられるインクセットであって、少なくとも、重合性インクと、光輝性インクとを備えている。
【0062】
なお、上記の各インクをそれぞれ単独または複数備えたインクセットとしてもよいし、さらに一または複数の他のインクを含むインクを備えたインクセットとしてもよい。インクセットに備えることができる他のインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のカラーインク、ブラックインク、ライトブラックインク等が挙げられる。
【0063】
<重合性インク>
本実施形態における重合性インク組成物は、活性エネルギー線重合性モノマー等の重合性化合物、及び重合開始剤を少なくとも含み、エネルギー線の照射に起因して重合反応が起こることにより硬化する。また、重合性インクは着色剤を実質的に含有しないものである。着色剤としては公知の染料、顔料が挙げられ、例えば米国特許出願2010/0086690、米国特許出願2005/0235870に記載されているものが該当する。なお、「実質的に含有しない」とは、例えば、インク中に0.1質量%以上含有しない、一層好ましくは0.05質量%以上含有しない、さらに好ましくは0.01質量%以上含有しない、一層好ましくは0.005質量%以上含有しない、最も好ましくは0.001質量%以上含有しないことである。以下、インク組成物を構成する各成分を詳細に説明する。なお、重合性インクは水を30質量%以上、好ましくは50質量%以上含有する水系の重合性インクであっても良い。
【0064】
(重合性化合物)
インク組成物に用いられる重合性化合物は、後述する重合開始剤の作用により紫外線などのエネルギー線の照射時に重合し、固化する化合物であれば、特に制限はないが、単官能基、2官能基、及び3官能基以上の多官能基を有する種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。
【0065】
前記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、前記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0066】
上記で列挙したものの中でも(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。
【0067】
前記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
前記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
前記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
これらの中でも、硬化時の塗膜の伸び性が高く、かつ低粘度であるため、インクジェット記録時の射出安定性が得られやすいという観点から、重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。さらに塗膜の硬さが増すという観点から、単官能(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。上記の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
さらに、上記単官能(メタ)アクリレートは、芳香環骨格、飽和脂環骨格及び不飽和脂環骨格からなる群より選択される1種以上の骨格を有することが好ましい。前記重合性化合物が前記骨格を有する単官能(メタ)アクリレートであることにより、インク組成物の粘度を低下させることができる。
【0072】
芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、不飽和脂環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとして、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0073】
重合性インク中の重合性化合物の量は、5質量%以上含む事が好ましい。また、水系重合性インクならば5質量%以上50質量%以下が好ましく、非水系重合性インクの場合は重合性化合物を50質量%以上、好ましくは70質量%以上含有することが好ましい。これらの条件を満たすことで良好な重合性インクとなる。
【0074】
(重合開始剤)
インク組成物に含まれる重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0075】
上記のラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0076】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0077】
ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
【0078】
上記重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、前述の重合性化合物として活性エネルギー線重合性の化合物を用いることで、重合開始剤の添加を省略することも可能であるが、重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ、好適である。
【0079】
(水、溶剤)
本実施形態におけるインク組成物は、水又は有機溶剤を含んでもよい。
【0080】
(その他の成分)
本実施形態におけるインク組成物は、上記に挙げた成分以外の成分を含んでもよい。例えば、界面活性剤を含んでもよく、樹脂成分等を含んでいてもよい。
【0081】
界面活性剤としては、例えばシリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社(BYK Japan KK)から入手可能)を挙げることができる。
【0082】
また、重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤を添加することにより、インク組成物の保存安定性が向上する。重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードアミン系重合禁止剤のIRGASTAB UV−10、及びヒンダードフェノール系重合禁止剤のIRGASTAB UV−22(以上、チバ社(Ciba Inc.)から入手可能)などを用いることができる。
【0083】
さらに、本実施形態におけるインクは、重合促進剤、スリップ剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤を含んでも良い。その他の添加剤としては、例えば定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0084】
<光輝性インク>
光輝性インクは、光輝性顔料と、水を50質量%以上含有する(水系インク)、あるいは水を50質量%未満(非水系インク)のいずれであってもよい。非水系の場合、有機溶剤を50質量%以上含有する溶剤系インクであっても良い。以下、水系インクの場合を具体例にして各成分を説明する。光輝性インクに含有される光輝性顔料としては、インクジェット記録方法によって当該インクの液滴を吐出できる範囲内で、任意のものを用いることができる。光輝性顔料は、光輝性インクが樹脂インクの層の上に付着したときに、光輝性を付与する機能を有し、また、付着物に光輝性を付与することもできる。このような光輝性顔料としては、パール顔料や金属粒子があげられる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。一方、金属粒子としてはアルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の粒子を挙げることができ、これらの単体またはこれらの合金およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本実施形態で使用される光輝性顔料は、光沢度(光輝性)の高さの観点から銀又はコストの観点からアルミニウムを用いることが好ましい。以下、光輝性インクの具体例として銀インクを用いて説明する。
【0085】
(1)銀粒子
上述したように、本実施形態に係る銀インクは、銀粒子を含むものである。このように、銀インクが、銀粒子を含むものであることにより(特に、所定の条件を満足するワックスとともに含むことにより)、優れた金属光沢を有する画像を形成することができる。また、銀は、各種金属の中でも、白色度の高い金属であるため、他色のインクと重ね合わせることにより、金色、銅色等の様々な金属色を表現することができる。
【0086】
銀粒子の平均粒子径は、5nm以上100nm以下であるのが好ましく、20nm以上65nm以下であるのがより好ましい。これにより、銀インクを用いて形成される画像の光沢感(光輝性)および耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、インクジェット方式によるインクの吐出安定性(着弾位置精度、吐出量の安定性等)を特に優れたものとすることができ、長期間にわたって所望の画質の画像をより確実に形成することができる。なお、本明細書では、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、上述と同様体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0087】
銀インク中における銀粒子の含有率は、0.5質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。これにより、インクのインクジェット方式による吐出安定性、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができる。また、記録物とされたときの記録媒体上での銀粒子の密度(単位面積当たりの含有量)が低い場合から高い場合まで、広い密度の範囲で、良好な画質、耐擦性を実現することができる。
銀粒子は、いかなる方法で調製されたものであってもよく、例えば、銀イオンを含む溶液を用意し、この銀イオンを還元ずることにより、好適に形成することができる。
【0088】
(2)樹脂
本発明に係る銀インクは、樹脂を含有していても良く、これを含有することで定着性や耐擦性が向上する。樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、ポリイソブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、ロジンエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0089】
(3)重合性化合物
本発明に関わるインクは、重合性化合物を含有していても良い。つまり、本発明に関わる光輝性インクは活性エネルギー線によって硬化するインクであっても良い。重合性化合物については、重合性インクの(重合性化合物)の欄で説明した物と同様の物を用いる事が出来る。
【0090】
一方、光輝性インクは、活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しない事が好ましい。この場合の「実質的に含有しない」とは、例えば、インク中に5質量%以上含有しない、一層好ましくは1質量%以上含有しない、さらに好ましくは0.1質量%以上含有しない、一層好ましくは0.01質量%以上含有しない、最も好ましくは0.001質量%以上含有しないことである。光輝性顔料は、従来用いられてきたシアン、マゼンダ等のカラー顔料に比べ重合性インクに適用しづらいという問題点がある。将来的に課題が解決される場合は十分にあり、本願発明が活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しない光輝性インクに限定されるわけではないが、例えば、米国特許7828888に記載の金属顔料は、重合性インク中で酸化され良好な光沢度を発揮しづらいという問題点がある。また、重合性化合物が硬化した際に、金属顔料が良好に配列せず光輝性が良好に得られないという問題点がある。以上の事から、重合性インクと活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しない光輝性インクとの組み合わせが本願発明を適用するにあたって良好である。
【0091】
(4)多価アルコール
本発明に係るインクは、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、本実施形態に係るインクをインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクによる目詰まりを防止することができる。
【0092】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数が4〜8アルカンジオールが好ましく、炭素数が6〜8のアルカンジオールがより好ましい。これにより、記録媒体への浸透性を特に高いものとすることができる。インク中における多価アルコールの含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
上記の多価アルコールの中でも、インクは、1,2−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンを含むものであるのが好ましい。これにより、インク中における銀粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、インクの保存安定性を特に優れたものとすることができるとともに、インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0093】
(5)グリコールエーテル
本発明に係るインクは、グリコールエーテルを含有することが好ましい。グリコールエーテルを含有することにより、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。インク中におけるグリコールエーテルの含有率は、特に限定されないが、0.2質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
【0094】
(6)界面活性剤
本発明に係るインクは、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0095】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0096】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
さらに、本発明に係るインクは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
インク中における上記界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、0.01質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0097】
(7)その他の成分
本発明に係るインクは、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、pH調整剤、浸透剤、有機バインダー、尿素系化合物、アルカノールアミン(トリエタノールアミン等)等の乾燥抑制剤、チオ尿素等が挙げられる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]重合性インクの調製
重合性インクは、表1に記載の組成になるように、光重合開始剤、重合性化合物、重合禁止剤、および界面活性剤を混合し調製した。なお、重合禁止剤としてはIRGASTAB UV−22(Ciba社製)を、界面活性剤としてはBYK−UV3500(BYK Japan KK製)を用いた。表1中で使用した成分は、下記のとおりである。
【0099】
【表1】

【0100】
[2]光輝性インクの調製
ポリビニルピロリドン(PVP、重合平均分子量10000)を70℃の条件下で15時間加熱して、その後室温で冷却をした。そのPVP1000gを、エチレングリコール溶液500mlに添加してPVP溶液を調整した。別の容器にエチレングリコールを500ml入れ、硝酸銀128gを加えて電磁攪拌器で十分に攪拌をして硝酸銀溶液を調整した。PVP溶液を120℃の条件下でオーバーヘッドミキサーを用いて攪拌しつつ、硝酸銀溶液を添加して約80分間加熱して反応を進行させた。そして、その後室温で冷却をさせた。得られた溶液を遠心分離機で2200rpmの条件下で10分間遠心分離を行った。その後、分離が出来た銀粒子を取り出して、余分なPVPを除去するためエタノール溶液500mlに添加した。そして、さらに遠心分離を行い、銀粒子を取り出した。さらに、取り出した銀粒子を真空乾燥機で35℃、1.3Paの条件下で乾燥させた。上記によって製造された銀粒子10質量%に、プロピレングリコールを10質量%、1,2−ヘキサンジオールを5質量%、2−ピロリドンを5質量%、シリコン系界面活性剤(BYK−348)を1質量%、さらに残分としてイオン交換水を添加することにより、光輝性インクとした。
【0101】
[3]白色系インクの調整
白色系インクは、二酸化チタン(体積平均粒子径330nm)(NanoTek(R)_Slurry:シーアイ化成株式会社製)を10質量%、スチレン−アクリル酸共重合体を2質量%、1,2−ヘキサンジオールを5質量%、グリセリンを10質量%、トリエタノールアミンを0.9質量%、BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社)を0.5質量%、イオン交換水を残分として調整した。
【0102】
[4]記録物の形成
(実施例1〜11)
まず、インクジェットプリンターとしてPX−G5000(セイコーエプソン社製)を改造して照射装置(波長が395nmUVLED)を取り付けた。そしてこのプリンターを用いて、表2に示す記録媒体に、所定のdutyの所定パターンで、表1に記載の重合性インクを記録した。そして、表2に記載の照射エネルギーを照射した。なお、照射工程は100%dutyごとに表2に記載の照射エネルギーで行った。その後、重合性インクによる下地層に対して、表2に記載のdutyにて光輝性インクの記録を行った。なお、200%dutyとは、100%dutyの記録を2回行ったという意味である。
【0103】
(実施例12)
実施例12は、前段落に記載をしたプリンターを用いて、表2に示す記録媒体に、所定のdutyの所定パターンで、表1に記載の重合性インクを記録した。そして、その後表2に記載のdutyにて光輝性インクの記録を行った。最後に、表2に記載の照射エネルギーを照射した。なお、照射工程は100%dutyごとに表2に記載の照射エネルギーで行った。
【0104】
(実施例13)
実施例13は、前々段落に記載をしたプリンターを用いて、表2に示す記録媒体に上記に記載した白色系インクを100%dutyで記録を行った。その後表2に示す所定のdutyの所定パターンで、表1に記載の重合性インクを記録した。そして、表2に記載の照射エネルギーを照射した。なお、照射工程は100%dutyごとに表2に記載の照射エネルギーで行った。最後に表2に記載のdutyにて光輝性インクの記録を行った。
【0105】
(比較例1〜4)
前々々段落に記載をしたプリンターを用いて、表2に示す記録媒体に、表2に示すduty(%)の所定パターンで、表2に示す光輝性インクを付与し、画像を形成した。
【0106】
(比較例5)
比較例5は、重合性インクを記録せず、照射工程を行わなかった以外は、実施例13と同様に記録物を作成した。
【0107】
(比較例6)
比較例6は、比較例5で用いた白色系インクに含まれる顔料の平均粒子径を250nmに変更した以外は、比較例5と同様に記録物を作成した。
【0108】
ここで、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(式中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位長さ当たりの解像度である。)
【0109】
【表2】

【0110】
[5]評価
[5.1]光沢度
前記各実施例および各比較例に係る記録物の記録面について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
【0111】
A :60度光沢度が、400以上。
B :60度光沢度が、300以上400未満。
C :60度光沢度が、100以上300未満。
D :60度光沢度が、10以上100未満。
E :60度光沢度が、10未満。
【0112】
[5.2]耐擦性試験
前記各実施例および各比較例に係る記録物の記録面について以下の評価基準に基づいて評価した。
記録物を学振型摩耗堅牢度試験機AB−301(商品名、テスター産業株式会社製)にセットし、接触部に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子(荷重;300g)にて10回擦ることで、耐摩耗性評価を実施し、以下の基準に従い評価した。
【0113】
重合性インクの層を付与しなかった場合に対して、
A:耐擦性の向上と、白綿布への光輝性インク付着の低減が見られた場合。
B:耐擦性の向上は見られたが、白綿布への光輝性インク付着の低減が見られなかった場合。
C:耐擦性の向上は見られず、白綿布への光輝性インク付着の低減も見られなかった場合。
これらの結果を表2に示した。
表2から明らかなように、本発明のインクジェット記録方法によって得られた記録物では、光沢度および耐擦性に優れていたのに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク非吸収性または低吸収性の媒体、算術表面粗さRaが20μm以上の媒体、布帛、普通紙、から選択される一種以上の記録媒体に付与され、活性エネルギー線重合性化合物を含有し、着色剤を実質的に含有しない重合性インクと、
インクジェットヘッドにより、前記重合性インク上に吐出される光輝性顔料を含有する光輝性インクと、を含むインクセット。
【請求項2】
平均粒子径200nm以上の顔料を含む顔料層が形成された記録媒体に付与され、活性エネルギー線重合性化合物を含有し、着色剤を実質的に含有しない重合性インクと、
インクジェットヘッドにより、前記重合性インク上に吐出される光輝性顔料を含有する光輝性インクと、を含むインクセット。
【請求項3】
前記光輝性インクが、前記活性エネルギー線重合性化合物を実質的に含有しない、請求項1又は2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記重合性インクが、重合性化合物を5質量%以上含有する請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項5】
請求項1に記載のインクセットを用いるインクジェット記録方法において、
前記記録媒体上の、少なくとも前記光輝性インクが記録される部位に、前記重合性インクを付与して下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層上に、前記光輝性インクを記録する光輝性インク記録工程と、前記光輝性インク記録工程の前に行われる照射工程であって、前記下地層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含むインクジェット記録方法。
【請求項6】
請求項2に記載のインクセットを用いるインクジェット記録方法において、
前記顔料層上の、少なくとも前記光輝性インクが記録される部位に、前記重合性インクを付与して下地層を形成する下地層形成工程と、前記下地層上に、前記光輝性インクを記録する光輝性インク記録工程と、前記光輝性インク記録工程の前に行われる照射工程であって、前記下地層に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含むインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記重合性インクは前記インクジェットヘッドにより記録される、請求項5又は6に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記重合性インクの単位面積あたりの吐出量(mg/inch2)は、前記光輝性インクの単位面積あたりの吐出量(mg/inch2)以上である、請求項5ないし7のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記重合性インクの1滴当たりの液滴量(L/inch2)は、前記光輝性インクの1適当たりの液適量(L/inch2)以上である、請求項5ないし8のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載の記録方法を用いる記録装置であって、
前記インクジェットヘッドと対向する位置に設けられ、前記記録媒体を支持するプラテンと、
前記インクジェットヘッド、前記プラテンの少なくとも一方を、走査させる走査機構と、を備え、
前記光輝性インクを記録する際に前記走査機構を走査させる回数は、前記重合性インクを記録する際に前記走査機構を走査させる回数超である記録装置。
【請求項11】
請求項5ないし8のいずれか一項に記載の記録方法によって記録された記録物。

【公開番号】特開2012−236870(P2012−236870A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105008(P2011−105008)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】