説明

インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置

【課題】印刷した際に皺やカールが発生するのを防止することが可能なインクジェット記録方法、および、インクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】本発明のインクジェット記録方法は、インク組成物をインクジェット方式により吐出して、被記録媒体に印刷する印刷工程と、印刷工程においてインク組成物を被記録媒体に印刷する際に、被記録媒体を搬送する搬送工程と、を有し、インク組成物を被記録媒体に印刷する際に、被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第1の張力、および、搬送方向と垂直な方向に第2の張力を付与することを特徴とする。印刷工程の後に、被記録媒体を乾燥する乾燥工程を有し、乾燥工程において、被記録媒体を搬送しつつ、当該被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第3の張力、および、搬送方向と垂直な方向に第4の張力を付与するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙等の被記録媒体に対し、インクジェットヘッドによりインクを吐出して、画像を記録するインクジェット記録方法が知られている。
このようなインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置では、印刷が施された被記録媒体、特に比較的薄い被記録媒体は、皺が生じやすく、また、搬送時に被記録媒体がカールしてしまい、インクジェットヘッドから被記録媒体までの距離を一定に保つことができないといった問題があった。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば、インクを吐出するインクジェットヘッドに対向するとともに被記録媒体を沿わせて搬送するガイド面を有するプラテンを備え、そのプラテンのガイド面を、少なくともインクジェットヘッドによるインク吐出範囲内については吐出方向に垂直となる平坦面状とし、その搬送方向の上流側と下流側とについてはその断面形状を円弧状とする周面状としたインクジェットプリンタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来のインクジェットプリンタを用いたインクジェット記録方法では、印刷時に発生する被記録媒体の皺やカールを十分に抑制することができず、インクの着弾位置ずれ等が発生するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−90484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、印刷した際に皺やカールが発生するのを防止することが可能なインクジェット記録方法、および、インクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のインクジェット記録方法は、インク組成物をインクジェット方式により吐出して、被記録媒体に印刷する印刷工程と、
前記印刷工程において前記インク組成物を前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体を搬送する搬送工程と、を有し、
前記インク組成物を前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第1の張力、および、前記搬送方向と垂直な方向に第2の張力を付与することを特徴とする。
これにより、印刷した際に皺やカールが発生するのを防止することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
【0007】
本発明のインクジェット記録方法では、前記印刷工程の後に、前記被記録媒体を乾燥する乾燥工程を有し、
前記乾燥工程において、前記被記録媒体を搬送しつつ、当該被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第3の張力、および、前記搬送方向と垂直な方向に第4の張力を付与することが好ましい。
これにより、印刷した際に皺やカールが発生するのをより効果的に防止することができる。
【0008】
本発明のインクジェット記録方法では、前記第3の張力は、前記第1の張力よりも大きいことが好ましい。
これにより、印刷した際に皺やカールが発生するのをさらに効果的に防止することができる。
本発明のインクジェット記録方法では、前記第4の張力は、前記第2の張力よりも大きいことが好ましい。
これにより、印刷した際に皺やカールが発生するのをさらに効果的に防止することができる。
【0009】
本発明のインクジェット記録方法では、前記インク組成物は、両性イオン化合物と、10質量%以上60質量%以下の水とを含有することが好ましい。
これにより、被記録媒体に付与されたインク組成物によって、皺やカールが発生するのをより効果的に防止することができる。
本発明のインクジェット記録方法では、前記両性イオン化合物は、分子量100以上250以下のベタイン系化合物であることが好ましい。
これにより、被記録媒体に付与されたインク組成物によって、皺やカールが発生するのをより効果的に防止することができる。
【0010】
本発明のインクジェット記録方法では、前記インク組成物は、前記両性イオン化合物を10質量%以上40質量%以下含有することが好ましい。
これにより、被記録媒体に付与されたインク組成物によって、皺やカールが発生するのをより効果的に防止することができる。
本発明のインクジェット記録方法では、前記被記録媒体は、坪量50g/m以上80g/m以下で、かつ、水の動的浸透速度を示す浸漬開始から15秒時におけるI(%)が40(%)以上80(%)以下であることが好ましい。
このような被記録媒体を用いることにより、インク組成物による被記録媒体が膨潤する速度を遅くすることができ、被記録媒体にコックリングカールが生じるのを防止することができる。特に、両性イオン化合物を含むインク組成物と、このような被記録媒体とを組み合わせて使用することにより、インク組成物による膨潤速度を特に遅くすることができ、被記録媒体のコックリングカール抑制に顕著な効果を発揮する。
【0011】
本発明のインクジェット記録装置は、インク組成物をインクジェット方式により吐出して、被記録媒体に印刷する印刷手段と、
前記インク組成物を前記印刷手段により前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、を有し、
前記インク組成物を前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第1の張力、および、前記搬送方向と垂直な方向に第2の張力を付与することを特徴とする。
これにより、印刷によって皺やカールが発生するのを防止することが可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェット記録装置の一例を示す模式図である。
【図2】インクジェット記録装置の搬送ローラ(排出ローラ)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《インクジェット記録方法》
以下、インクジェット記録方法の好適な実施形態について説明する。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インク組成物をインクジェット方式により吐出して、被記録媒体に印刷する印刷工程と、当該印刷工程においてインク組成物を被記録媒体に印刷する際に当該被記録媒体を搬送する搬送工程と、印刷を施した被記録媒体を乾燥する乾燥工程とを有している。
【0014】
ところで、従来のインクジェット記録方法では、印刷が施された被記録媒体、特に比較的薄い被記録媒体は、皺が生じやすく、また、搬送時に被記録媒体がカールしてしまい、インクジェットヘッドから被記録媒体までの距離を一定に保つことができないといった問題があった。
これに対して、本発明のインクジェット記録方法では、インク組成物を被記録媒体に印刷する際に、被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第1の張力、および、搬送方向と垂直な方向(被記録媒体の幅方向)に第2の張力を付与することにより、薄い被記録媒体であっても、皺が生じるのを防止し、また、搬送時においてインク組成物による被記録媒体の膨潤によって生じるカール(もしくはコックリング)を防止することができる。その結果、被記録媒体の目的の部位にインク組成物を付与することができ、鮮明な印刷を行うことができる。
【0015】
以下、各工程について説明する。
[印刷工程]
印刷工程では、被記録媒体に対して、インク組成物をインクジェット方式により付与することにより、被記録媒体に印刷を施す。
本発明で用いる被記録媒体は、吸湿性および可撓性を有するものであるのが好ましく、例えば、電子写真複写用紙等の普通紙、シリカ、アルミナ、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)等を含む水溶性インク吸収層を備えたインクジェット用紙等が挙げられる。また、水溶性インクの浸透速度が比較的小さなタイプの吸収性被記録媒体として一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。これらの中では、本発明の効果を一層有効に発揮する観点から普通紙が好ましい。
【0016】
本実施形態において、「普通紙」とは、一般に、パルプを主原料とし、プリンタなどに使用される紙をいい、JIS P 0001番号6139で定義されているものをいう。具体的には、上質紙、PPCコピー紙、非塗工印刷紙等を挙げることができる。普通紙は、各社から市販されているものを利用することもでき、例えば、Xerox 4200(Xerox社製)、GeoCycle(Gerogia−Pacific社製)等、種々のものを利用することができる。
【0017】
特に、被記録媒体は、坪量50g/m以上80g/m以下で、かつ、水の動的浸透速度を示す浸漬開始から15秒時におけるI(%)が40(%)以上80(%)以下であるのが好ましい。このような被記録媒体を用いることにより、インク組成物による被記録媒体が膨潤する速度を遅くすることができ、被記録媒体にコックリングカールが生じるのを防止することができる。特に、両性イオン化合物を含むインク組成物と、このような被記録媒体とを組み合わせて使用することにより、インク組成物による膨潤速度を特に遅くすることができ、被記録媒体のコックリングカール抑制に顕著な効果を発揮する。
なお、「水の動的浸透速度」とは、動的液体浸透性測定装置PDA(EmtecElectronic社製)により、例えば、以下のようにして測定される値である。
【0018】
(測定方法)
1)試料ホルダーに所定の形状に切断した紙片を固定する。
2)測定セル内に純水を充填する。
3)試料ホルダーに固定した紙片を測定セル内の純水に浸漬する。
4)紙片の浸漬と同時に超音波信号を紙片の厚さ方向に発射して、紙片を透過する超音波の信号強度をセンサーで受信する。
5)浸漬開始から所定時間(60秒間)の信号強度の変化をモニターする。
I(%)=(発射強度−受信強度)/発射強度×100
6)浸漬開始から15秒時におけるI(%)を比較する。
【0019】
(測定条件)
紙片形状:50mm×90mm
超音波周波数:2MHz
測定時間:60sec
測定回数:n=3回(平均値)
具体的には、普通紙(Steinbeis、Xerox−P、Xerox−4200、Neenahbond、Mondy、Tidal)は、表1のように測定される。この測定結果によれば、Steinbeis裏の場合には、浸透性が進みにくく、Neenahbondは、浸透が早く進むことを表している。
【0020】
【表1】

【0021】
なお、インク組成物については後に詳述する。
インクジェットの吐出方法としては、サーマルジェット(バブルジェット(登録商標))方式でもよい。また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
【0022】
[搬送工程]
搬送工程では、上記印刷工程で印刷を行いつつ、被記録媒体の搬送を行う。
上述したように、本工程では、被記録媒体の搬送方向に第1の張力、および、搬送方向と垂直な方向に第2の張力を付与する。これにより、薄い被記録媒体であっても、皺が生じるのを防止し、また、搬送時においてインク組成物による被記録媒体の膨潤によって生じるカール(もしくはコックリング)を防止することができる。
【0023】
[乾燥工程]
本工程では、被記録媒体に付与したインク組成物を乾燥させる。
ところで、このような乾燥させる際にも、被記録媒体にカールが発生する場合がある。
本実施形態では、当該工程において、被記録媒体を搬送しつつ、当該被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第3の張力、および、搬送方向と垂直な方向に第4の張力を付与することにより、乾燥時のカールを防止することができ、最終的に得られる印刷物にカールが生じるのをより効果的に防止することができる。
【0024】
本工程における被記録媒体の搬送方向に付与する第3の張力は、上記搬送工程における被記録媒体の搬送方向に付与する第1の張力よりも大きいのが好ましい。このような構成とすることにより、皺が生じるのをより効果的に防止し、また、搬送時においてインク組成物による被記録媒体の膨潤によって生じるカール(もしくはコックリング)をより確実に防止することができる。
【0025】
また、本工程における搬送方向と垂直な方向に付与する第4の張力は、上記搬送工程における搬送方向と垂直な方向に付与する第2の張力よりも大きいのが好ましい。このような構成とすることにより、皺が生じるのをより効果的に防止し、また、搬送時においてインク組成物による被記録媒体の膨潤によって生じるカール(もしくはコックリング)をより確実に防止することができる。
【0026】
《インクジェット記録装置》
次に、上記インクジェット記録方法に適用されるインクジェット記録装置の好適な実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一例を示す模式図、インクジェット記録装置の搬送ローラ(排出ローラ)の一例を示す模式図である。
【0027】
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット記録装置100は、被記録媒体101に、インク組成物の液滴を吐出し画像を記録するためのインクジェットヘッドユニット190と、インクジェットヘッドユニット190に対向するように設けられたプラテン部120と、印刷前の被記録媒体101を収納した収納カセット104と、収納カセット104から被記録媒体101を給紙する給紙ローラ105と、被記録媒体101を搬送するための一対の搬送ローラ(ゲートローラ)140と、被記録媒体101を搬送して排出するための一対の第1排出ローラ150および一対の第2排出ローラ160と、印刷された被記録媒体101を収納する排紙カセット106と、制御部111と、給紙される被記録媒体101の位置検出を行う位置検出センサ109とを有している。
【0028】
インクジェットヘッドユニット190は、印刷手段であり、インクの種類に対応した複数のインクジェットヘッドおよびそれらを搭載するキャリッジ(図示せず)を備えている。各インクジェットヘッドは、被記録媒体101の幅方向にわたって全幅に対応する多数のインク吐出ノズルを各々配列している、いわゆるラインヘッドで構成されている。
プラテン部120は、被記録媒体101を、その搬送面120Aに沿って搬送させるものである。プラテン部120の搬送面120Aは、インクジェットヘッドユニット190のインク吐出方向に垂直な平坦面である。搬送面120Aは、被記録媒体101にインク組成物が着弾する際に、その着弾方向に垂直な平面状態を維持できるような広さを有していれば、良好な画像形成を行うのに十分である。
【0029】
また、給紙ローラ105は、収納カセット104内部の被記録媒体101を搬送ローラ140へ送り出すためのローラであり、制御部111により駆動制御されるモータ118により駆動する。
搬送ローラ140は、搬送手段の一部であり、制御部111により駆動制御されるモータ116により駆動するローラユニットとしての駆動ローラ140Aと、駆動ローラ140Aに接触して従動する従動ローラ140Bとで構成されている。
【0030】
第1排出ローラ150は、搬送手段の一部であり、制御部111により駆動制御されるモータ117により駆動するローラユニットとしての駆動ローラ150Aと、駆動ローラ150Aに接触して従動する従動ローラ150Bとで構成されている。
また、第2排出ローラ160は、搬送手段の一部であり、制御部111により駆動制御されるモータ119により駆動するローラユニットとしての駆動ローラ160Aと、駆動ローラ160Aに接触して従動する従動ローラ160Bとで構成されている。
【0031】
制御部111は、印刷処理(記録処理)や各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、ホストコンピュータなどからインタフェイスを介して入力される印刷データ(記録データ)をデータ格納領域に格納するあるいは各種データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)、各部を制御する制御プログラム等を収納するPROM,EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などを備えている。
【0032】
位置検出センサ109は、例えば、発光素子の赤外発光ダイオードと受光素子のフォトトランジスタを組み合わせた反射型フォトセンサを用いる。位置検出センサ109は、給紙ローラ105と搬送ローラ140の間の用紙搬送部に配置され、搬送される被記録媒体101の先端位置(被記録媒体101の有無)を検出して、その検出信号は、制御部111に入力される。制御部111では、被記録媒体101の先端位置の検出信号に基づいて搬送ローラ140の駆動制御処理が行われる。
【0033】
被記録媒体101は、制御部111からの駆動信号によりモータ116が駆動することにより回転する搬送ローラ140に到達し、被記録媒体101先端が搬送ローラ140に接触することにより、被記録媒体101の先端面および方向が整えられ、駆動ローラ140Aと従動ローラ140Bとの灰田に挟まれて紙送りされ、プラテン部120上に送り出される。そして、搬送ローラ140によってインクジェットヘッドユニット190下方の印刷領域に搬送された被記録媒体101は、搬送ローラ140に挟持された状態で第1排出ローラ150まで到達する。このとき、制御部111からの駆動信号によりモータ117が駆動され駆動ローラ150Aが回転し、駆動ローラ150Aに接触して従動する従動ローラ150Bとの間に被記録媒体101が挟まれて紙送りされる。このようにして、被記録媒体101は、搬送ローラ140および第1排出ローラ150の両方に挟まれた状態で搬送移動されるとともに、被記録媒体101の搬送方向と幅方向にそれぞれ張力が付与されながら、インクジェットヘッドユニット190のノズルからインク滴が吐出されて印刷データに基づく印刷が施される。
【0034】
被記録媒体101への印刷は、制御部111において、インタフェイスを介してホストコンピュータから入手し、RAMに格納された印刷データを、CPUにおいて所定の処理を実行して、この処理データに基づいてヘッドドライバに駆動信号が出力され、ヘッドドライバを介して駆動信号がインクジェットヘッドユニット190に入力され、駆動信号が入力された静電アクチュエータの駆動により、これに対応するノズルから、被記録媒体101にインクが吐出されて印刷データに基づく画像の印刷(記録)が行われる。
【0035】
なお、被記録媒体101への印刷は、上記静電アクチュエータを用いた静電吸引方式に限定されない。すなわち、本実施形態におけるインクジェット記録方式は、インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を被記録媒体に着弾、付着させる方式であればよい。具体的には以下に説明する。
第一の方法としては、静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、その液滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方法、あるいは、インクの液滴を偏向することなく印刷情報に対応して噴出させる方式である。
【0036】
第二の方法としては、小型ポンプで液状のインク組成物に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインクの液滴を噴射させる方式である。噴射された液滴は、噴射と同時に帯電させ、その液滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方法としては、圧電素子を用いる方式であり、液状のインク組成物に圧電素子で圧力と印刷情報とを同時に加え、インクの液滴を噴射・記録させる方式である。
【0037】
第四の方法としては、熱エネルギーの作用により液状のインク組成物を急激に体積膨張させる方式であり、インク組成物を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、その液滴を噴射・記録させる方式である。
以上いずれの方式も本実施形態のインクジェット記録装置(インクジェット記録方法)に採用することができる。
【0038】
印刷が行われた被記録媒体101は、搬送ローラ140および第1排出ロ一ラ150により紙送りされ、その間、被記録媒体101は、搬送方向および幅方向に張力が付与された状態にある。
被記録媒体101に対する搬送方向への張力の付与は、搬送ローラ140および第1排出ローラ150を回転させる時の周速度を調整することにより行われる。すなわち、第1排出ローラ150の周速度を、搬送ローラ140の周速度よりも速めることにより、被記録媒体101に、その搬送方向に対して張力を付与することができる。
【0039】
また、被記録媒体101に対する幅方向(搬送方向とは垂直な方向)への張力の付与は、例えば、図2に示すような搬送ローラ(排出ローラ)を用いることにより行うことができる。
図2に示すように、搬送ローラ140は、被記録媒体101の幅方向に並んだ複数の駆動ローラ140Aと、各駆動ローラ140に対応した従動ローラ140Bとを備えている。
【0040】
そして、駆動ローラ140Aは、外側に配置されているものほど、そのローラの外径が大きくなるよう構成されている。このような構成とすることにより、被記録媒体101に対して幅方向に向かって張力を付与することが可能となる。
なお、第1排出ローラ150も搬送ローラ140と同様の構成とすることにより、被記録媒体101に対して幅方向に向かって張力を付与することができる。
また、駆動ローラ140Aの被記録媒体101に対する駆動方向を被記録媒体101の搬送方向に対して少し斜めになるように配置することによって被記録媒体101を幅方向(搬送方向と垂直な方向)に広げるように僅かに引張力(張力)を作用させることができる。
【0041】
搬送ローラ140を通過し終えた後は、被記録媒体101の先端は、第1排出ローラ150に挟持された状態で第2排出ローラ160まで到達する。このとき、制御部111からの駆動信号によりモータ119が駆動され駆動ローラ160Aが回転し、駆動ローラ160Aに接触して従動する従動ローラ160Bとの間に被記録媒体101が挟まれて紙送りされる。このように、被記録媒体101は、第1排出ローラ150および第2排出ローラ160の両方に挟まれた状態で搬送移動されるとともに、被記録媒体101の搬送方向と幅方向にそれぞれ張力が付与されつつ、被記録媒体101上の印刷面が乾燥される。
各方向における張力は、上記搬送ローラ140および第1排出ローラ150で挟持されている場合と同様な構成することにより、付与することができる。
【0042】
すなわち、第2排出ローラ160の周速度を、第1排出ローラ150の周速度よりも速めることにより、被記録媒体101に、その搬送方向に対して張力を付与することができる。
また、第2排出ローラ160を図2に示すような構成とすることにより、被記録媒体101に対して幅方向に向かって張力を付与することが可能となる。
その後、第1排出ローラ150を通過し終えた後は第2排出ローラ160のみによって紙送りされ、排紙カセット106に収納される。
【0043】
《インク組成物》
次に、本発明に適用されるインク組成物について説明する。
本実施形態に係るインク組成物は、両性イオン化合物と、10質量%以上60質量%以下の水とを含有する。
本実施形態に係るインク組成物は、安全性、取扱性および性能面(発色性、裏抜け適性、インク信頼性)の観点から水を含有する。このように水を含有するインク組成物が、本実施形態のように両性イオン化合物を含有すると、本実施形態による効果を有効に発揮することができる。
【0044】
また、このインク組成物は、安全性、取り扱い上の観点から、インクの主溶媒が水である水性インク組成物であることが好ましく、水はイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水を用いることが、カビやバクテリアの発生を防止してインクの長期保存を可能にする点で好ましい。インクの適正な物性値(粘度等)の確保、インクの安定性および信頼性の確保という観点で、インク組成物は、その全量に対して、水を10質量%以上60質量%以下含有するのが好ましい。
【0045】
また、インク組成物に含まれる水の含有量を上記の範囲に規定することにより、普通紙中のセルロースに吸収される水分量が従来のインク組成物よりも少なくなる結果、コックリングカールの原因と考えられているセルロースの膨潤を抑制することができる。以下、コックリングまたはカールを抑制するのに適した性質を、それぞれ「コックリング適性」、「カール適性」ともいう。
【0046】
水分含有量が10質量%未満の場合は、被記録媒体への定着性が低下する場合がある。
一方、水分含有量が60質量%を超える場合は、従来の水性インク組成物と同様、インク吸収性が乏しい紙支持体の吸収層を有する被記録媒体に対して印刷する際に、コックリングやカールが発生しやすいが、本発明を適用することにより軽減することができる。
両性イオン化合物としては、特に限定されず、例えば、ベタイン系化合物、アミノ酸及びその誘導体が挙げられる。より具体的にはベタイン系化合物として、グリシンベタイン(分子量117、「トリメチルグリシン」ともいう。)、γ−プチロベタイン(同145)、ホマリン(同137)、トリゴネリン(同137)、カルニチン(同161)、ホモセリンベタイン(同161)、バリンベタイン(同159)、リジンベタイン(同188)、オルニチンベタイン(同176)、アラニンベタイン(同117)、スタキドリン(同185)及びグルタミン酸ベタイン(同189)等のアミノ酸のN−トリアルキル置換体が挙げられる。また、アミノ酸として、グリシン(分子量75)、アラニン(同89)、セリン(同105)、トレオニン(同119)、バリン(同117)、メチオニン(同149)、システイン(同121)、プロリン(同115)、リシン(同146)、ヒスチジン(同155)、アルギニン(同174)やそれらの誘導体が挙げられる。これらの中では、印刷後の被記録媒体の膨張速度をより確実に遅くする観点、およびインク吐出ノズルの目詰まりを防止する観点から、ベタイン系化合物が好ましく、トリメチルグリシンがより好ましい。両性イオン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられ、常法により合成してもよく、市販品を入手してもよい。市販品としては、例えば、トリメチルグリシンとして、アミノコート(旭化成ケミカルズ社製)を使用することもできる。
【0047】
また、両性イオン化合物の分子量は100以上250以下であると好ましい。その分子量が100未満であると、10℃以上40℃以下での粘度差が大きくなる傾向が強くなり、また、印刷後の被記録媒体が乾燥するのに伴い変形しカールが生じやすくなる傾向にある。一方で、その分子量が250を超えると、インク組成物中のその化合物の添加量に対して、インク組成物の粘度が増加しやすく、また、印刷後の被記録媒体にカール等の変形が生じた場合に、その被記録媒体が完全に乾燥してもその変形が解消し難くなる傾向にある。
【0048】
インク組成物は、印刷後の被記録媒体の膨張速度を抑制する観点、並びに、インクジェットにおけるインク吐出ノズルの目詰まりを防止する観点から、その全量に対して、両性イオン化合物を10質量%以上40質量%以下含有しているのが好ましく、10質量%以上25質量%以下含有しているのがより好ましい。この含有量が10質量%を下回ると、上記膨張速度の抑制が困難になる傾向にあり、40質量%を超えると、上記目詰まりの防止が困難になる傾向にある。
【0049】
インクの10℃以上40℃以下の温度範囲における粘度は、インクに含まれる着色剤、保湿剤、溶剤等の持つ温度特性に影響を受ける。これらの中では特に保湿剤の影響が大きく、保湿剤の種類や添加量、含有比によっては、10℃での粘度がより上がりやすく、40℃での粘度がより下がりやすい。なお、本明細書中では、10℃以上40℃以下での粘度差がより少ないことを、インクの温度による粘度特性に優れると表記する。
【0050】
本実施形態に係るインク組成物は、カール、コックリング適性、裏抜け適性、目詰まり適性、インクの温度による粘度特性のバランスを適正に保つという観点から、下記(A)および(B)の保湿剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の保湿剤を含むことが好ましい。ここで(A)の保湿剤は、グリセリン、1,2,6−−キサントリオール、ジェチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、(B)の保湿剤は、トリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0051】
(A)の保湿剤は、特に目詰まりの抑制に対して効果があり、また、カール、コックリングの抑制に対しても効果を合わせ持つ物質である。しかしながら、その優れた被記録媒体への浸透性から裏抜け適性には劣る物質である。上述の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、(A)の保湿剤として、グリセリンおよびトリエチレングリコ−ルが好ましい。
【0052】
(B)の保湿剤は、特に目詰まりの抑制に対して効果があり、また、浸透抑制効果を持つため裏抜け適性に優れる物質である。それらの効果をより有効かつ確実に奏する観点から、(B)の保湿剤として、トリメチロールプロパンが好ましい。
(A)および(B)の保湿剤は、その物質のもつ10℃以上40℃以下での粘度差が大きいという特性のため、インク組成物中の含有量が増えるに従って、温度による粘度特性に大きく影響し、インク組成物も10℃以上40℃以下での粘度差が大きくなる。
【0053】
本実施形態に係るインク組成物が、両性イオン化合物に加えて、上記(A)および/または(B)の保湿剤を含有する場合、カール適性、コックリング適性、裏抜け適性、目詰まり適性の観点から、上記両性イオン化合物、(A)および(B)の合計の含有量は、インク組成物の全体量に対して、10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
また、(A)および(B)の保湿剤並びに両性イオン化合物について、含有量の質量比は、それらによる上記効果をバランス良く発揮させる観点から、(A)(B)(両性イ
オン化合物)=(1.0):(0.1〜1.0):(1.0〜3.5)であるのが好ましい。
【0054】
(A)の群から選ばれる保湿剤(「(A)の保湿剤」という。以下同様。)に対して、(B)の保湿剤の質量比を上記よりも多くすると、カール適性およびコックリング適性が低下し、少なくすると、裏抜け適性が低下する。(A)の保湿剤に対して、両性イオン化合物の質量比を上記よりも多くすると、目詰まり適性が低下し、少なくすると、カール適性およびコックリング適性が低下する。
【0055】
また、本実施形態に係るインク組成物は、インクジェットヘッドのノズル近傍での目詰まり防止やインクの被記録媒体の浸透性や滲みを適度に制御したり、インクの乾燥性を付与する目的で、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水溶性有機溶剤は、上記観点から、1,2−アルカンジオールおよび/またはグリコールエーテルを含有することが好ましい。1,2−アルカンジオールの具体的な例としては、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオールが挙げられる。また、グリコールエーテルの具体的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコ−ルモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルが挙げられる。また、上記以外に、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなども水溶性有機溶剤として用いることができる。これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上を用いることができ、インクの適正な物性値(粘度等)の確保、印刷品質、信頼性の確保という観点で、インク組成物中に1質量%以上50質量%以下含まれることが好ましい。
【0056】
さらに、インクの被記録媒体の濡れ性を制御し、被記録媒体の浸透性やインクジェット記録方法における印字安定性を得るために、インク組成物は表面張力調整剤を含有することが好ましい。表面張力調整剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤やポリエーテル変性シロキサン類が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の例としては、サーフィノール420、440、465、485、104、STG(以上、エアープロダクツ社製、製品名)、オルフィンPD−001、SPC、E1004、E1010(以上、日信化学工業(秩)製、製品名)、アセチレノールE00、E40、E100、LH(以上、川研ファインケミカル(秩)製、製品名)が挙げられる。またポリエーテル変性シロキサン類としては、BYK−346、347、348、UV3530(ビックケミー社製品)などが挙げられる。これらは、インク組成物中に1種または2種以上用いることができ、インク組成物の表面張力を好ましくは20mN/m〜40mN/mに調整するよう含まれ、好ましくはインク組成物中に0.1質量%以上3.0質量%以下含まれる。
【0057】
また、必要に応じて、インク組成物に、pH調整剤、錯化剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐・防カビ剤等を添加することもできる。pH調整剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化アルカリおよび/またはアンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミンを用いることができる。特に、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンから選択される少なくとも1種類のpH調整剤を含み、pH6から10に調整されることが好ましい。pHがこの範囲を外れると、インクジェット記録装置を構成する材料等の悪影響を与え、目詰まり回復性が劣化する傾向にある。また、錯化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩(例えばナトリウム塩、アンモニウム塩)などのアミノポリカルボン酸が挙げられる。
【0058】
本実施形態に係るインク組成物は、画像形成や印字を目的として顔料を含むことが好ましい。本実施形態に係るインク組成物に用いられる顔料としては、公知の無機顔料および有機顔料のいずれをも用いることができる。そのような顔料としては、例えば、カラーインデックスに記載されているピグメントイエロー、ピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー、ピグメントブラック等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、黄色4号、5号、205号、401号;橙色228号、405号;青色1号、404号等の有機顔料や、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられる。
【0059】
顔料のカラーインデックスとしては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等、C.I.ピグメントブラック1,7等が挙げられ、1種または2種以上の顔料をインク組成物に添加してもよい。
【0060】
本実施形態に用いられる顔料は、樹脂分散型の態様であってもよい。そのような態様の顔料は、高分子分散剤や界面活性剤などの分散剤と共に、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速獲拝型分散機などを用いて水性媒体中に分散させた顔
料分散液として、あるいは、顔料表面に分散性付与基(親水性官能基および/またはその塩)を直接またはアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させ、分散剤なしで水性媒体中に分散および/または溶解する自己分散型顔料として加工され、水性媒体中に分散させた顔料分散液として、インク組成物中に配合されることが好ましい。
【0061】
分散剤の例としては、高分子分散剤として、にかわ、ゼラチン、サポニンなどの天然高分子化合物やポリビニルアルコール類、ポリピロリドン類、アクリル系樹脂類(ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体など)、スチレン−アクリル酸系樹脂類(スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体など)、スチレン−マレイン酸系樹脂類、酢酸ビニル−脂肪酸ビニル−エチレン共重合体の樹脂類などおよびこれらの塩などの合成高分子化合物が挙げられ、共重合体の構成はランダムタイプ、ブロックタイプ、グラフトタイプのいずれでもよい。
【0062】
また、分散剤として用いられる界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキルスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤、脂肪酸アミン塩、脂肪酸アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤、ポリオオキシアルキルエーテル類、ポリオキシアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類などのノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0063】
これらの分散剤の中で、特に水不溶性樹脂が好ましい。水不溶性樹脂として、具体的には、疎水性基を有するモノマーと親水性基を有するモノマーとのブロック共重合体樹脂からなり、少なくとも塩生成基を有するモノマーを含有しているもので、中和後に25℃の水100gに対する溶解度が1g未満である樹脂が好ましい。疎水性基を有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類や酢酸ビニル等のビニルエステル類やアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。親水性基を有するモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタアクリレート、エチレングリコール・プロピレングリコールモノメタアクリレートが挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。塩生成基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンカルボン酸、マレイン酸が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロモノマー、シリコーン系マクロモノマーなどのマクロモノマーやその他のモノマーを併用することもできる。
この水不溶性樹脂は、エチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ中和剤で中和した塩として用いることが好ましく、重量平均分子量が10000以上150000以下程度のものが、顔料を安定的に分散させる点で好ましい。
【0064】
分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能な自己分散型顔料は、例えば、顔料に物理的処理または化学的処理を施すことで、分散性付与基または分散性付与基を有する活性種を顔料の表面に結合(グラフト)させることによって製造される。物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理が例示できる。また、化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法が例示できる。自己分散型顔料を含有するインク組成物は、通常の顔料を分散させるために含有させる前述のような分散剤を含む必要がないため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんどなく、吐出安定性に優れるインクを調製しやすい。また、分散剤に起因する大幅な粘度上昇が抑えられるので、顔料をより多く含有することが可能となり、印字濃度を十分に高めることが可能になる、あるいは、取り扱いが容易となる。このような利点があることから、自己分散型顔料は、特に高濃度を必要とするブラックインク組成物に有効であり、本実施形態のインク組成物として用いるブラックインク組成物には、分散剤なしに水に分散および/または溶解が可能な自己分散型顔料が少なくとも含まれることが好ましい。
【0065】
本実施形態においては、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、またはオゾンによる酸化処理により表面処理される自己分散型顔料が、高発色という点で好ましい。また、自己分散型顔料として市販品を利用することも可能であり、そのような市販品として、マイクロジェットCW−1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−〇−JET300(以上商品名;キヤポット社製)が例示できる。
【0066】
また、これらの顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、インク中での体積平均粒子径が50nm〜200nmの範囲であることが好ましい。これらの体積平均粒子径は、M icrotrac UPA 150 (マイクロトラック社製)や粒度分布測定機LPA3100(大塚電子(秩)製)等の粒径測定によって得ることができる。
【0067】
これらの顔料は、インク組成物中に6質量%以上の範囲で含有されることが好ましい。その含有量が6質量%未満では印字濃度(発色性)が不充分である場合がある。また、その含有量の上限は特に限定されないが、例えば、含有量が25質量%以下であってもよい。含有量が25質量%よりも大きいと、ノズルの目詰まりや、吐出の不安定を起こす等の信頼性に不具合が生じる場合がある。
【0068】
本実施形態に係るインク組成物は、被記録媒体−の定着性を高める等の観点から、樹脂エマルジョンを含むことが好ましい。樹脂エマルジョンは、最低造膜温度が20℃未満の樹脂粒子を含むことが好ましい。樹脂エマルジョンとして、最低造膜温度が20℃未満の樹脂粒子を含むものを用いることにより、通常20℃以上である使用環境下の周囲温度において、樹脂粒子が膜化するので、インク組成物の被記録媒体−の定着性や耐擦性を向上させる。
【0069】
ここで、最低造膜温度は、下記のようにして測定される。まず、温度勾配試験装置のステンレス板上に0.3mmの厚さに樹脂エマルジョンを塗布する。塗布後、直ちにシリカゲルの入ったバスケットを板の上にのせ、透明プラスチック製の蓋で覆う。塗膜が乾燥した後、一様な連続皮膜部分と白濁している部分の境界部の温度を読み取り、最低造膜温度とする。
【0070】
これらの樹脂エマルジョンとしては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂からなる群より選択される1種又
は2種以上の樹脂粒子を含むものであることが好ましい。これらの樹脂はホモポリマーとして使用されてもよく、また、コポリマーして使用されてもよく、単相構造および複相構造(コアシェル型)のいずれのものも使用できる。
【0071】
さらに、本実施形態で用いられるインク組成物に含まれる樹脂エマルジョンは、少なくともいずれかが、不飽和単量体の乳化重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョンの形態で、インク組成物中に配合されることが好ましい。樹脂粒子を単独でインク組成物中に添加しても、該樹脂粒子の分散が不十分となる場合があるため、インク組成物の製造上、エマルジョンの形態が好ましい。また、エマルジョンとしては、インク組成物の保存安定性の観点から、アクリル樹脂粒子のエマルジョン、すなわちアクリルエマルジョンが好ましい。樹脂粒子のエマルジョン(アクリルエマルジョン等)は、公知の乳化重合法により得ることができる。例えば、不飽和単量体(不飽和ビニルモノマー等)を、重合開始剤および界面活性剤を存在させた水中において乳化重合することによって得ることができる。
不飽和単量体としては、例えば、一般に乳化重合で使用されるアクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル単量体、ビニルエステル単量体、ビニルシアン化合物単量体、ハロゲン化単量体、オレフィン単量体、ジエン単量体が挙げられる。
【0072】
不飽和単量体として、さらに具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチル−キシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロ−キシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン化単量体;スチレン、α−チルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン;ブタジェン、クロロプレン等のジエン;ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体が挙げられる。これらは1種を単独または2種以上を混合して用いられる。
【0073】
また、重合可能な二重結合を2つ以上有する架橋性単量体も、不飽和単量体として使用することができる。重合可能な二重結合を2つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物;ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;メチレンビスアクリルアミド;ジビニルベンゼンが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0074】
また、乳化重合の際に使用される重合開始剤および界面活性剤の他に、連鎖移動剤、さらには中和剤等も常法に準じて使用してよい。特に中和剤としては、アンモニア、無機アルカリの水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが好ましい。
本実施形態において、樹脂エマルジョンは、インク組成物のインクジェット適性物性値、信頼性(目詰まりや吐出安定性等)、定着性等をより有効に得る観点から、インク組成物中の樹脂粒子が1質量%以上10質量%以下の範囲となるよう、含有されることが好ましい。
【0075】
インク組成物に含まれる樹脂エマルジョンの体積平均粒子径は、インク組成物中におけ
る樹脂粒子の分散安定性の観点および定着性の観点から、5nm以上400nm以下であることが好ましく、50nm以上200nm以下であることがより好ましい。この体積平均粒子径は、例えばコールターカウンターN4(コールタ−社製、商品名)を用いて測定される。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
例えば、上記本実施形態は、ライン型インクジェット記録装置に関するが、本発明のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置は、複数パスで印刷を行うシリアル型インクジェット記録装置に関するものであってもよい。特に、駆動ローラの回転距離ごとにインク吐出ノズルを配列して、ローラの周期的なズレを修正するヘッド配列をもつものは、被記録媒体の印刷を開始してから完了するまでに時間差が生じるため、被記録媒体が膨張しやすくなる。したがって、かかる構成を有するものに対して、本発明のインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を採用すれば、本発明による膨張速度の抑制という効果を、より有効に活用できるので、好ましい。
また、プラテン部には、被記録媒体の搬送を補助する搬送ベルトを備えてもよい。
【実施例】
【0077】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インク組成物の調製
[着色剤の準備]
(顔料分散液B1)
市販のカーボンブラックであるカラーブラックS170(商品名:デグサ・ヒュルス社製)100gを水1kgに混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度12%)1400gを滴下して、ボールミルで粉砕しながら5時間反応させ、さらに撹拌しながら4時間煮沸して湿式酸化を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100 (商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して、さらに水で洗浄した。得られたウェットケーキを水5kgに再分散して、逆浸透膜により電導度が2mS/cmになるまで脱塩および精製し、さらに顔料濃度が20質量%になるまで濃縮して顔料分散液Bを調製した。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA 150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、120nmであった。
【0078】
(顔料分散液Y1)
有機溶媒(メチルエチルケトン)20質量部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03質量部、重合開始剤、および表2に示す各モノマーを用い、窒素ガス置換を十分に行った反応容器内に入れて75℃撹拌下で重合し、モノマー成分100質量部に対してメチルエチルケトン40質量部に溶解した2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル0.9質量部を加え、80℃で1時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
【0079】
【表2】

【0080】
得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたうちの5質量部をメチルエチルケトン15質量部に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液を用いてポリマーを中和した。さらに、C.I.ピグメントイエロー74を15質量部加え、さらに水を加えながら分散機で混練した。得られた混練物にイオン交換水100質量部を加え撹拝した後、減圧下、60℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、固形分濃度が20質量%のイエロー顔料の水分散体(顔料分散液Y1)を得た。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、110nmであった。
【0081】
(顔料分散液M1)
C.I.ピグメントイエロー74の代わりにC.I.ピグメントレッド122を用いた以外は顔料分散液Ylの調製方法と同様にして、顔料分散液Mlを得た。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、100nmであった。
【0082】
(顔料分散液C1)
C.I.ピグメントイエロー74の代わりにC.I.ピグメントブルー15:4を用いた以外は顔料分散液Ylの調製方法と同様にして、顔料分散液Clを得た。この分散液の顔料の体積平均粒子径をMicrotrac UPA150 (Microtrac社製)の粒度分布測定により測定したところ、130nmであった。
【0083】
[樹脂エマルジョンの調製]
最低造膜温度が20℃未満の樹脂エマルジョン(ポリマ−1)は、水中で、アクリルアミド20gにメチルメタクリレート600g、n−ブチルアクリレート125g、メタクリル酸30g、トリエチレングリコールジアクリレート5gを乳化重合することにより製造した。エマルジョン中の樹脂粒子の体積平均粒子径は50nm、最低造膜温度は10℃であった。なお、樹脂粒子の体積平均粒子径は、コールターカウンターN4 (コールター社製、商品名)を用いて測定し、最低造膜温度は上述のようにして測定した。
【0084】
[インク組成物の調製]
表3に示す割合で各成分を混合し、室温にて2時間接拝した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過して、製造例1〜11の各インク組成物を調製した。ただし、表2中に示す添加量は全て質量%の濃度として表されており、顔料分散液の()内の数字は顔料の固形分濃度(質量%)を示し、樹脂エマルジョンの()の数字は樹脂粒子濃度(質量%)を示す。またイオン交換水の「残量」とは、インク組成物の全量が100質量%となるようにイオン交換水を加えることを意味する。
【0085】
【表3】

【0086】
[2]評価
各評価で用いられる普通紙(Xerox P、Xerox社製)の坪量は64g/mで、水の動的浸透速度が浸漬開始から15秒時のI=70(%)であった。
<コックリング試験(ヘッド擦れ試験)>
図1に示すようなインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体としての普通紙(Xerox 4200、Xerox社製)に対して印刷を行った。インク組成物としては、上記各インク組成物を用い、図3に示すような搬送ローラ、第1排出ローラ、第2排出ローラを用いて、搬送ローラの搬送速度<第1排出ローラの搬送速度<第2排出ローラの搬送速度なる関係となるようにインクジェット記録装置のセッティングをし、duty100%でベタ印刷を行った。得られた印刷物を目視にて観察し以下の判断基準に従い評価した。
A :印刷物の凹凸量が1.0mm未満で許容できる
B :印刷物の凹凸量が1.0mm以上1.5mm未満で許容できる
C :印刷物の凹凸量が1.5mm以上2.0mm未満で許容できる
D :印刷物の凹凸量が2.0mm以上で許容できない
【0087】
<排紙カール試験>
図1に示すようなインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体としての普通紙(Xerox 4200、Xerox社製)に対して印刷を行った。インク組成物としては、上記各インク組成物を用い、図3に示すような搬送ローラ、第1排出ローラ、第2排出ローラを用いて、搬送ローラの搬送速度<第1排出ローラの搬送速度<第2排出ローラの搬送速度なる関係となるようにインクジェット記録装置のセッティングをし、duty50%〜200%の間で10%刻みでベタ印刷を行った。得られた各印刷物を目視にて観察し以下の判断基準に従い評価した。
A :印字Duty0〜200%にて用紙スタックが可能である
B :印字Duty0〜150%にて用紙スタックが可能である
C :印字Duty0〜100%にて用紙スタックが可能である
D :印字Duty0〜100%にて用紙スタックが不可能である
【0088】
<永久カール試験>
図1に示すようなインクジェット記録装置を用いて、被記録媒体としての普通紙(Xerox 4200、Xerox社製)に対して印刷を行った。インク組成物としては、上記各インク組成物を用い、図3に示すような搬送ローラ、第1排出ローラ、第2排出ローラを用いて、搬送ローラの搬送速度<第1排出ローラの搬送速度<第2排出ローラの搬送速度なる関係となるようにインクジェット記録装置のセッティングをし、duty100%でベタ印刷を行った。得られた印刷物を24時間放置し、目視にて観察し以下の判断基準に従い評価した。
A :24hr放置後のカール量が10mm未満で許容できる
B :24hr放置後のカール量が10mm以上30mm未満で許容できる
C :24hr放置後のカール量が30mm以上50mm未満で許容できる
D :24hr放置後のカール量が50mm以上で許容できない
【0089】
これらの結果を表4に示した。表中、各評価において、本発明に該当するものを実施例とした。また、各評価について、各ローラの搬送速度を等しくし、また、各ローラの外径を均一にしたインクジェット記録装置を用いて評価を行い、比較例1とした。また比較例2として、被記録媒体としてNeenahbond(表1 15秒のI=30%)を用いた場合を表4に示した。
【0090】
【表4】

【0091】
表4から明らかなように、本発明では、カールの発生が抑制されており、品質に優れた印刷物が得られた。これに対して、各比較例では、満足行く結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0092】
100…インクジェット記録装置 101…被記録媒体 104…収納カセット 105…給紙ローラ 106…排紙カセット 109…位置検出センサ 110…インクジェットヘッド 111…制御部 116、117、118、119…モータ 120…プラテン部 120A…搬送面 140…搬送ローラ 140A…駆動ローラ 140B…従動ローラ 150…第1排出ローラ 150A…駆動ローラ 150B…従動ローラ 160…第2排出ローラ 160A…駆動ローラ 160B…従動ローラ 190…インクジェットヘッドニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物をインクジェット方式により吐出して、被記録媒体に印刷する印刷工程と、
前記印刷工程において前記インク組成物を前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体を搬送する搬送工程と、を有し、
前記インク組成物を前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第1の張力、および、前記搬送方向と垂直な方向に第2の張力を付与することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記印刷工程の後に、前記被記録媒体を乾燥する乾燥工程を有し、
前記乾燥工程において、前記被記録媒体を搬送しつつ、当該被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第3の張力、および、前記搬送方向と垂直な方向に第4の張力を付与する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記第3の張力は、前記第1の張力よりも大きい請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記第4の張力は、前記第2の張力よりも大きい請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記インク組成物は、両性イオン化合物と、10質量%以上60質量%以下の水とを含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記両性イオン化合物は、分子量100以上250以下のベタイン系化合物である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記インク組成物は、前記両性イオン化合物を10質量%以上40質量%以下含有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記被記録媒体は、坪量50g/m以上80g/m以下で、かつ、水の動的浸透速度を示す浸漬開始から15秒時におけるI(%)が40(%)以上80(%)以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
インク組成物をインクジェット方式により吐出して、被記録媒体に印刷する印刷手段と、
前記インク組成物を前記印刷手段により前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体を搬送する搬送手段と、を有し、
前記インク組成物を前記被記録媒体に印刷する際に、前記被記録媒体に対して、当該被記録媒体の搬送方向に第1の張力、および、前記搬送方向と垂直な方向に第2の張力を付与することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−232498(P2012−232498A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102750(P2011−102750)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】