説明

インクジェット記録方法

【課題】各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体においても、特に粒状性やカール抑制に優れ、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】クリアインク組成物を用いるインクジェット記録方法であり、クリアインク組成物の塗布工程と、塗布したクリアインク組成物の加熱工程とを含み、かつクリアインク組成物が、アミノ基含有樹脂と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、20℃、相対湿度が60%において固体である湿潤剤とを含むインクジェット記録方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、高品質な画像が実現できるインクジェット記録方法に関する。
【0002】
背景技術
インクジェット記録方法は、インク小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。近年のインクジェット記録技術の革新的な進歩により、これまで銀塩写真やオフセット印刷によって実現されてきた高精細印刷の分野においてもインクジェット記録方法が用いられるようになっている。それに伴い、銀塩写真やオフセット印刷の分野で用いられてきた印画紙やアート紙等に匹敵する高光沢性の記録媒体、いわゆる専用紙をインクジェット記録に使用して、銀塩写真並の光沢感を有する画像を実現できるインクジェット記録用のインクが開発されている。また、普通紙を用いた場合であっても、銀塩写真並の画質を実現できるインクジェット記録用のインクが開発されている。
【0003】
ところで、近年、デジタルデータからの画像形成技術が普及したことに伴い、特に印刷分野では、デスクトップパブリッシング(DTP)が普及しつつある。DTPにより印刷を行う場合であっても、実際の印刷物との光沢感や色感を確認するために、事前に色校正用プルーフを作製することが行われている。このプルーフの出力に、インクジェット記録方式を適用することが行われており、DTPにおいては印刷物の色再現性の高さ、色の安定性の高さが求められることから、記録媒体として、通常、インクジェット記録用の専用紙が使用されている。
【0004】
インクジェット記録用の専用紙であるプルーフ用紙は、印刷本紙に実際に印刷した出力物と光沢感や色感が同じになるように作製されている。このように、印刷本紙の種類に応じて専用紙の材質が適宜調整されているが、多種多様の印刷本紙に全て対応した専用紙を作製するのは製造コストの上昇を招く。そこで、色校正用途においては、専用紙よりも印刷本紙にインクジェット記録を行いたいとの技術的観点における要望がある。また、専用紙を用いずに、直接印刷本紙にインクジェット記録を行ったものを最終校正見本とできれば、校正にかかるコストを大幅に低減できるとの経済的観点における要望がある。また、印刷分野で広く使用されている、ポリエチレン樹脂やポリエステル樹脂に無機フィラー等を混合して空隙構造を付与した合成紙は、リサイクル性に優れ、環境に優しい材料として近年注目されている。このような合成紙に記録を行いたいとの環境的観点における要望がある。また、屋外広告を目的として、空隙構造のないプラスチックフィルムへの記録についても要望がある。
【0005】
印刷本紙は、その表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙であるが、塗工層の水性インクに対するインク吸収能力が乏しいという特徴を有する。そのため、インクジェット記録に一般的に用いられている水性の顔料インクを使用すると、記録媒体(印刷本紙)へのインクの浸透性が低く、画像に滲みや凝集斑が生じる場合がある。また、空隙構造のないプラスチックフィルムだけでなく、空隙構造を有する合成紙も水性インクに対するインク吸収能力が低いため、画像ににじみや凝集斑が生じる場合がある。
【0006】
上記の問題に対し、例えば、特開2005−194500号公報(特許文献1)には、界面活性剤としてポリシロキサン化合物を用い、溶解助剤として1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオールを添加することにより、滲みが改善され、かつ専用紙に対する光沢性にも優れる顔料系インクが開示されている。また、特開2003−213179号公報(特許文献2)、特開2003−253167号公報(特許文献3)、または特開2006−249429号公報(特許文献4)には、グリセリンや1,3−ブタンジオール等のジオールやペンタントリオール等のトリオールアルコール溶剤をインク中に添加することにより、インクの記録媒体への浸透性を制御し、高品質な画像が得られることが提案されている。
【0007】
さらに、特開2009-286998号公報(特許文献5)、特開2009-269964号公報(特許文献6)には、高品質な画像が実現でき、かつカールの発生を抑制できるインク組成物が提案されている。
【0008】
また、特開2005−88238号公報(特許文献7)には、良好な発色性と光沢性とを維持しながら良好なクリーニング操作を可能とする、変性ポリアリルアミンを含んでなり、かつ着色剤を含まず、インク組成物とともに記録媒体に付着させて用いられる液体組成物が提案されているが、本発明の記録方法に用いられるインク組成物とは、構成および効果の点でまったく異なるものである。
【0009】
また、特開2007−261206号公報(特許文献8)には、高い定着性、高速印字時での光学濃度の確保や滲みを防止できるインクセットが提供されており、このインクセットにはポリアリルアミンを含有することが記載されているが、本発明の記録方法に用いられるインク組成物とは、まったく異なるものである。
【0010】
さらに、特開2010−691号公報(特許文献9)には、ラインヘッドを用い、カラーブリード耐性に優れるインクジェット記録方法が提供されており、この記録方法に用いられる固着液にはポリアリルアミンを含有することが記載されているが、本発明の記録方法に用いられるインク組成物とは、まったく異なるものである。
【0011】
特開2010−115854号公報(特許文献10)には、乾燥工程を含み、色インク、樹脂インクおよび反応インクを塗布して画像を印刷する印刷方法が開示されており、この印刷方法に用いられる反応インクにはポリアリルアミンを含有することが記載されているが、本発明の記録方法に用いられるインク組成物とは、全く異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−194500号公報
【特許文献2】特開2003−213179号公報
【特許文献3】特開2003−253167号公報
【特許文献4】特開2006−249429号公報
【特許文献5】特開2009−286998号公報
【特許文献6】特開2009−269964号公報
【特許文献7】特開2005−88238号公報
【特許文献8】特開2007−261206号公報
【特許文献9】特開2010−691号公報
【特許文献10】特開2010−115854号公報
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、今般、クリアインク組成物を用いるインクジェット記録方法であり、クリアインク組成物の塗布工程と、塗布したクリアインク組成物の加熱工程とを含み、かつクリアインク組成物が、アミノ基含有樹脂と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、20℃、相対湿度が60%において固体である湿潤剤とを含むインクジェット記録方法を用いることにより、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体においても、特に粒状性やカール抑制に優れ、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる、との知見を得た。
【0014】
したがって、本発明の目的は、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体においても、特に粒状性やカール抑制に優れ、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できるインクジェット記録方法を提供することにある。
【0015】
そして、本発明のインクジェット記録方法は、クリアインク組成物を用いるインクジェット記録方法であり、クリアインク組成物の塗布工程と、塗布したクリアインク組成物の加熱工程とを含み、かつクリアインク組成物が、アミノ基含有樹脂と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、20℃、相対湿度が60%において固体である湿潤剤とを含むインクジェット記録方法である。
【0016】
本発明のインクジェット記録方法を用いた場合には、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体においても、特に粒状性やカール抑制に優れ、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、記録装置としてのインクジェット式プリンターを表す。
【発明の具体的説明】
【0018】
<定義>
本明細書において、アルカンジオールの炭化水素基部分は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよい。
【0019】
また、水溶性とは、20℃での、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、10.0g以上であることを意味し、難水溶性とは、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、1.0g未満であることを意味する。混和性とは、20℃での、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、10.0gの場合に、凝集または相分離することなく、均一に分散または溶解することを意味する。
【0020】
また、本明細書において、「非吸水性または低吸水性の記録媒体」とは、水性インクの受容層を備えていない、あるいは、水性インクの受容性が乏しい記録媒体をいう。より定量的には、非吸水性または低吸水性の記録媒体とは、記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
【0021】
<インクジェット記録方法>
本発明によるインクジェット記録方法は、クリアインク組成物を用いるインクジェット記録方法であり、クリアインク組成物の塗布工程と、塗布したクリアインク組成物の加熱工程とを含み、かつ前記クリアインク組成物が、アミノ基含有樹脂と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、20℃、相対湿度が60%において固体である湿潤剤とを含むインクジェット記録方法である。本発明のインクジェット記録方法を用いることにより、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体においても、特に粒状性やカール抑制に優れ、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる。
【0022】
そして、本発明によるインクジェット記録方法において、クリアインク組成物の塗布工程と、塗布したクリアインク組成物の加熱工程とを含むとは、次の(i)および(ii)の態様に限定されるものではないが、例えば、(i)クリアインク組成物の塗布工程の後に、塗布したクリアインク組成物の加熱工程が行われる態様、(ii)クリアインク組成物の塗布工程と、クリアインク組成物の加熱工程とが同時もしくは実質的に同時に行われる態様が挙げられる。これらの態様の中でも、上記(ii)の「クリアインク組成物の塗布工程と、クリアインク組成物の加熱工程とが同時もしくは実質的に同時に行われる態様」がより好ましい。ここで、「クリアインク組成物の塗布工程と、クリアインク組成物の加熱工程とが同時もしくは実質的に同時に行われる態様」とは、クリアインク組成物の塗布される開始時点および終了時点と、クリアインク組成物が加熱される開始時点および終了時点とがまったく同じ場合だけではなく、クリアインク組成物が塗布される開始時点から終了時点までの期間と、クリアインク組成物が加熱される開始時点から終了時点までの期間とがわずかな時間(例えば、ミリ秒(1000分の1秒)単位)であっても重なり合う場合には上記(ii)の態様に含まれる。
【0023】
上記(ii)の態様の中には、例えば、クリアインク組成物を塗布する記録媒体が加熱され、その記録媒体が加熱されている間のいずれかの時点でクリアインク組成物が塗布される態様が含まれる。ここで、「クリアインク組成物の加熱工程」とは、温風等によりクリアインク組成物自体を直接加熱する工程のみならず、例えば記録媒体を介してクリアインク組成物を間接的に加熱する工程も含まれる。
【0024】
また、クリアインク組成物の加熱工程には、事前に記録媒体等を加熱しておき、その余熱でクリアインク組成物を加熱する場合も含まれる。余熱でクリアインク組成物を加熱する場合には、記録媒体等に熱を加えている開始時点から終了時点までの期間と、クリアインク組成物が塗布される開始時点から終了時点までの期間とが重なり合わない場合でも、記録媒体等に余熱が残っている状態でクリアインク組成物が塗布され、クリアインク組成物が加熱されれば、上記(ii)の態様に含まれる。
【0025】
本発明にかかる加熱手段としては、図1中のプラテン3を加熱してヒーターとして機能させてよいし、ヒーター線等により放射熱で加熱させてもよいし、装置内に温風を送る手段を設けそれによって加熱させてもよいし、過熱水蒸気で加熱させてもよい。また、他の公知の加熱手段を用いてもよい。
【0026】
本発明による塗布したクリアインクの加熱工程は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、30〜160℃で行うことが好ましく、より好ましくは35〜75℃である。このような範囲で加熱を行うことにより、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体においても、特に粒状性やカール抑制に優れ、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる。
【0027】
また、本発明による記録方法は、下記着色剤を含むインク組成物の塗布工程を含んでいてもよい。この場合、インク液滴の記録媒体への付着順序としては、特に限定されるものではないが、クリアインク組成物の液滴を記録媒体に付着させた後、下記着色剤を含むインク組成物の液滴を記録媒体に付着させることが好ましい。また、下記着色剤を含むインク組成物によって記録される領域のクリアインク組成物による被覆率(以下、単に「クリアインクによる被覆率」ということもある)が、50〜200%となるようにクリアインク組成物を付着させることが好ましく、より好ましくは60〜160%である。上記の範囲とすることで、高品質な画像を得ることができる。ここで、クリアインク組成物による被覆率とは、下記着色剤を含むインク組成物によって記録される領域に付着した上記クリアインク組成物の平均ドット面積と、下記着色剤を含むインク組成物によって記録される領域に付着した上記クリアインク組成物の1inchあたりのドット数(1inchあたりのドット数)との積を、下記着色剤を含むインク組成物によって記録される領域の単位面積(つまり、1inch)で除したものであり、下式で算出される値である。
被覆率(%)=(下記着色剤を含むインク組成物によって記録される領域上におけるクリアインクの平均ドット面積×1inchあたりのドット数)/下記着色剤を含むインク組成物によって記録される領域の単位面積×100(式中、「平均ドット面積」とは、後述する平均ドット径の値を直径として算出される円の面積を意味する)。また、クリアインク組成物は下記着色剤を含むインク組成物によって記録される領域上に均一に付着させることが好ましい。
【0028】
以下、本発明によるインクジェット記録方法の用いられるクリアインク組成物、記録媒体等に関して記載する。
【0029】
<クリアインク組成物>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物は、アミノ基含有樹脂と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、特定の湿潤剤とを含んでなるものである。これらの成分を他の成分と組み合わせて含むことにより、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体においても、特に粒状性やカール抑制に優れ、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できるインクジェット記録方法を提供できる。また、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物に、これらの成分を他の成分と組み合わせて含むことにより、印刷時の着滴ドット径が小さい、高精細な画質を提供できる。
【0030】
なお、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物とは、着色剤を実質的に含まないインク組成物を意味し、好ましくは含浸作用を有するクリアインク組成物である。含浸作用を有するクリアインク組成物により記録された記録ドットは、そのクリアインク組成物自体に水分を含浸させる効果を有する。理由は定かではないが、前記湿潤剤により、クリアインク組成物に含浸作用が付与されるとも考えられる。ここで、「着色剤を実質的に含まない」とは、クリアインク組成物中に着色剤を全く含有しないか、あるいはクリアインク組成物に含まれる着色剤が0.3質量%未満であることを意味する。
【0031】
なお、本明細書中、ビーディングとは、単色で印刷した際(例えば6インチ四方に単色(結果として、印刷される色が単一であることを意味し、その色を実現するインク組成物数は複数であってよい)で印刷した際)に発生する、局所的な同系色の濃度斑のことを意味し、記録媒体表面がインクによって被覆されない部分が残存することを意味するものではない。
【0032】
また、本発明においては、70〜105g/mの印刷本紙または60〜210g/mのPPC用紙(普通紙)等を用いた場合であっても、印字面が内側に反り返る、いわゆるカールの発生を著しく抑制できる。
【0033】
記録媒体に記録する場合に発生するインクのビーディングは、例えば、24mN/mよりも高い表面張力を有するインクを用いた場合に、記録媒体に付着したインク滴が流動してしまうことが原因と考えられる。即ち、記録媒体に対するインク滴の接触角が高くなり、インク滴を弾いてしまうことに起因すると考えられる。したがって、ビーディングを抑制するにはインクの表面張力を小さくする必要がある。しかしながら、非吸水性または低吸水性の記録媒体に記録する場合には、インクに含有される水が吸収され難いために、例えば、20〜24mN/mの表面張力を有するインクであってもインク滴が流動してしまうことがある。
【0034】
なお、本明細書における表面張力は、Wilhelmy法を用いて求めた値を意味する。Wilhelmy法による表面張力は、例えば、全自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)によって測定が可能である。
【0035】
よって、非吸水性または低吸水性の記録媒体において、インクのビーディングを抑制するには、インクの表面張力を小さくするだけでなく、記録媒体に付着した後の流動性を抑制することが好ましいと考えられる。
【0036】
記録媒体にインクが付着すると、記録媒体に対してインクが濡れ広がった後に記録媒体へ浸透することが知られている。そうすると、記録媒体に記録する場合に発生するインクのブリーディングは、例えば、24mN/mよりも高い表面張力を有するインクを用いた場合に、記録媒体に付着したインク滴が流動してしまうことが原因と考えられる。即ち、記録媒体に対するインクの濡れ性が低いために、インクに含有される溶媒が記録媒体へ直ちに浸透しないことに起因すると考えられる。したがって、ブリーディングを抑制するにはインクの表面張力を小さくする必要がある。しかしながら、非吸水性または低吸水性の記録媒体に記録する場合には、インクに含有される水が浸透し難いために、例えば、20〜24mN/mの表面張力を有するインクであってもインク滴が流動してしまうことがある。
【0037】
よって、非吸水性または低吸水性の記録媒体において、インクのブリーディングを抑制するには、インクの表面張力を小さくするだけでなく、記録媒体に付着してからのインクの流動性を抑制することが好ましいと考えられる。
【0038】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインク組成物にあっては、表面張力が低く、かつ記録媒体に付着した後のインク滴の流動性が抑制されたインクが実現できたものと考えられ、その結果、ブリーディング、ビーディングが効果的に抑制されたものと考えられる。
【0039】
<難水溶性のアルカンジオール>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、難水溶性のアルカンジオールが含まれる。
【0040】
本発明の好ましい態様によれば、難水溶性のアルカンジオールは、炭素数7以上のアルカンジオールが好ましく、より好ましくは炭素数7〜10のアルカンジオールである。さらに好ましくは難水溶性の1,2−アルカンジオールであり、ビーディングをより効果的に抑制できる。難水溶性の1,2−アルカンジオールとしては、例えば、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、5−メチル−1,2−ヘキサンジオール、4−メチル−1,2−ヘキサンジオール、または4,4−ジメチル−1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、1,2−オクタンジオールがより好ましい。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、難水溶性のアルカンジオールの含有量は、インクのブリーディングおよびビーディングインクを効率良く抑制出来る限りにおいて、適宜決定されてよいが、組成物全体に対し、1.0〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜4.0質量%であり、さらに好ましくは2.0〜3.5質量%である。難水溶性のアルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、インクのブリーディングおよびビーディングを抑制し、高品質な画像を実現することができる。また、難水溶性のアルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ上限を超えずにあることでインクの初期粘度が高くなりすぎず、通常のインク保存状態において、油層の分離を有効に防止でき、インクの保存性の観点から好ましい。
【0042】
本発明の好ましい態様によれば、前記難水溶性アルカンジオールが、1,2−オクタンジオールであって、かつ前記難水溶性アルカンジオールが、インク組成物に対して、1.5〜3.0質量%含有するインク組成物である。前記難水溶性アルカンジオールの含有量において、下限を下回らないことで、インクのブリーディングとビーディングインクとを抑制することができ、上限を超えないことで、インクの粘度を低く抑えることができる。
【0043】
<湿潤剤>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、20℃、相対湿度が60%において、すなわち20℃、相対湿度が60%の環境下で静置しても固体である湿潤剤(以下、単に「湿潤剤」ということもある)が含まれる。この湿潤剤に含まれるものとして、例えば、糖質が挙げられる。糖質について、以下に詳述する。
【0044】
糖質
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物に好適に使用できる糖質は、糖であり、20℃/60%RHの環境下で24時間静置しても固体であることが好ましい。また、20℃/60%RHから20℃/80%RHへの吸湿率が0質量%以上10質量%未満であることが好ましい。また、糖質は20℃の水100gに対する溶解度が30質量%以上であることが好ましい。
【0045】
本明細書において、例えば、「A℃/X%RHからB℃/Y%へのRH吸湿率」とは、下記式で示される値である。
(吸湿率(質量%))=100×(MB−Y − MA−X)/MA−X
A−Xは、A℃、相対湿度X%の環境下で24時間静置させた後の質量である。
B−Yは、B℃、相対湿度Y%の環境下で24時間静置させた後の質量である。
【0046】
前記糖質は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、およびマンニトールからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、これらの中でもトレハロースが好ましい。また、トレハロース、イソトレハロース、およびネオトレハロースからなる群から選択される糖質を含む三糖類以上であってもよく、例えば、トレハロースと、マルトースとからなるマルトシルトレハロース等が挙げられる。
【0047】
トレハロースは、グルコースの1位同士がグルコシド結合をした非還元性の二糖類である。非還元糖であるため、メイラード反応による褐色変化が起きないことから、インクの保存安定性の観点から好ましい。また、水への溶解度および保水力が高く、吸湿性が極めて低い特性を有する。具体的には、高純度のトレハロース無水物は、水への溶解度(69g/100g(20℃))は非常に高いが、湿度が95%以下では吸湿性を示さない。したがって、トレハロースが水に接触した場合は、水を吸収しゲルとなるが、通常の環境(20℃、湿度が45%程度)では吸湿性を示さないために安定に存在することができる。
【0048】
また、イソトレハロースおよびネオトレハロースは、グルコシド結合をした非還元性の二糖類である。非還元糖であるため、メイラード反応による褐色変化が起きないことから、インクの保存安定性の観点から好ましい。
【0049】
糖質の市販品としては、例えば、トレハロースの市販品であるトレハ微粉(株式会社林原商事社製)、マンニトールの市販品であるD−マンニトール(花王ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
さらに、糖質は、発酵法、加水分解法、糖転移反応法、糖縮合反応法、エピメラーゼ(異性化)法、重合法、化学架橋法などの定法により、澱粉糖から製造することが可能である。また、固形化も定法により製造可能である。つまり、糖質を含む溶液であるマスキットを噴霧乾燥する方法や、マスキットの水分を自然乾燥することでブロック状に晶出固化させ粉砕する方法、溶融状態のマスキットから種結晶を用いて再結晶化する方法等を用いる事が可能である。なお、使用するマスキットは、上述の低吸湿性が得られる糖質を得られる糖質であれば良く、含有する糖質の種類が2種類以上であってもよい。
【0051】
このような糖質を含むクリアインク組成物をインクジェット記録方法に用いた場合は、特に高速印刷をした場合に発生する流動斑に起因したビーディングを抑制できる。理由は定かではないが、例えば、以下のように考えられる。記録媒体上に付着されたインク組成物に含まれる糖質は、水に対する高い溶解性と高い保水力を有するので、付着後にインク組成物に含まれる水を取りこんでゲル化(または固化)することができる。そして、ゲル化(または固化)したインク滴は流動性(流動斑)が抑制されると考えられる。また、ファントホッフの法則に従い、水溶性の糖を多く含ませることにより、浸透圧が高められ、浸透速度が向上したためと考えられる。上述の推考によらず、ビーディングが抑制されることで高速印刷が可能となり、また、記録媒体に付着させるインクのduty制限値が増加するために印刷物の色再現領域が向上する。
【0052】
また、このような糖質を含むインク組成物を用いて得られた記録物は、20℃、相対湿度が60%程度の多湿環境における耐結露性を向上できる。
【0053】
また、このような糖質を含むインク組成物は、特にヘッドをキャッピングした環境下での目詰まり回復性を向上できる。理由は定かではないが、吸湿性が低いので、キャップ内に滞留しているインク組成物が、ヘッドに充填されているインク組成物から水分を奪うことがないので、キャップで密閉されている状態での目詰まり回復性に優れると考えられる。
【0054】
さらに、このような糖質を含むインク組成物は、氷結晶の成長を防止することから、インクの低温保存安定性が向上する。
【0055】
本発明の好ましい態様によれば、前記糖質は、上記の効果を奏する限りにおいて、適宜決定されてよいが、インク組成物全体に対し、12質量%以上36質量%以下含有されていることが好ましい。湿潤剤の量を上記範囲とすることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、上述の環境下での目詰まり回復性を向上させることから好ましく、また光沢の観点からも好ましい。また、糖質の量を上記範囲とすることで、とりわけ上限を超えずにあることで、インクの初期粘度が高くなりすぎず、凍結温度を低下させるので、インクの低温保存性の観点から好ましい。さらに、70g/m程度の薄い印刷本紙やPPC用紙(普通紙)を用いた場合であっても、印字面が内側に反り返る、いわゆるカールの発生を著しく抑制できる。理由は定かではないが、以下のように考えられる。セルロースは単糖類が連結(重合)した長い鎖状の糖類である。カールは、セルロース同士の水素結合が水分子によって切断され、水が蒸発乾燥する際に、切断されたセルロース同士の水素結合部位とは異なる部位において、セルロース同士の水素結合が再生されることによって生じる。よって、カールを抑制するには、水が蒸発乾燥した後で、可及的迅速にセルロース同士の水素結合の再生を阻害すればよい。この阻害剤として効果的な物質は、セルロースと類似の分子構造を有する結晶性糖質であり、さらに好ましくは乾燥性や再結晶性に優れるトレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロースであると考えられる。
【0056】
本発明のさらに好ましい態様によれば、前記難水溶性のアルカンジオールと、前記湿潤剤との含有量の和は、特に限定されないが、12.0〜42.0質量%であることが好ましく、さらに好ましくは27.0〜39.0質量%である。この含有量比とすることにより、開放系目詰まり回復性と密閉系目詰まり回復性を確保しつつ、ビーディングとブリーディングを向上させることができる。
【0057】
<アミノ基含有樹脂>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、アミノ基含有樹脂が含まれる。
【0058】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物において、アミノ基含有樹脂は、水溶液の液性がアルカリ性であり、アミノ基が塩を形成していないことが好ましい。アミノ基含有樹脂を含むクリアインク組成物を用いることによって、ビーディングやブリーディングのない高品質な画像が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。アミノ基が塩酸またはスルホン酸等の酸と塩を形成しているアミノ基含有樹脂の水溶液の液性は、塩を形成する酸の種類によって酸性を示す場合がある。このようなアミノ基含有樹脂と、液性をアルカリ性にすることで着色剤を分散させたインク組成物とが接触すると、急激に凝集反応が進むので、着色剤の分離が起こり、固形化してしまう。
【0059】
前記凝集反応が廃液の経路中(インク吸収体、廃液流路および廃液タンク等)で上記の固形化が起こると、廃液の経路が詰まるため、廃液処理性の観点から好ましくない。また、記録媒体上で前記凝集反応が起こると、固形化した凝集物は、湿潤剤への水の浸透を阻害してしまうことから、ビーディングの観点で好ましくない。
【0060】
一方で、アミノ基含有樹脂がアルカリ性であれば、前記凝集反応が緩やかに進み、湿潤剤に水が浸透することを阻害しないのでビーディングの観点で好ましい。また、着色剤を含むアルカリ性のインクの流動性を抑制する程度の凝集なので、廃液処理性の観点から好ましい。
【0061】
前記アミノ基含有樹脂としては、特許4144487号公報、4240375号公報、4281393号公報、および4239152号公報に記載のアミノ基含有樹脂を使用することができる。特に、特許4144487号公報に記載の変性ポリアリルアミンが、記録媒体上のドット径が小さくなり、かつ、廃液処理性に優れる観点から好ましい。また、別の前記アミノ基含有樹脂のより好ましい態様としては、特許4240375号および4281393号に記載のカルバモイル変性ポリアリルアミンであっても良い。例えば、アミノ基含有樹脂としてフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとカルバモイル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)が挙げられる。以下、変性ポリアリルアミンについて詳述する。
【0062】
変性ポリアリルアミン
本明細書の変性ポリアリルアミンの説明において、基または基の一部としてのアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0063】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物が含有するアミノ基含有樹脂は、変性ポリアリルアミンであることが好ましく、該変性ポリアリルアミンは下記繰り返し単位(a)で表されるジアリルアルキルアミンモノマー単位と、(c)で表されるアリルアミンモノマー単位とを必須の構成成分とし、(b)で表されるジアルキルアリルアミンモノマー単位を任意成分として含んでなる共重合体(以下、原料の共重合体ということがある)を原料として、アリルアミンモノマーのアミノ基を下記に示す各置換基により変性したものである。
【化1】

式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、特にメチル基であることが好ましい。
【0064】
本発明において用いられる変性ポリアリルアミンは、アリルアミン繰り返し単位(c)の−NHの一つまたは二つの水素原子が以下の(i)〜(v)いずれかに置換されたものをいう。
【0065】
すなわち、(i)−CONH(以下、ウレア変性ポリアリルアミンという)、(ii)−COOR(以下、ウレタン変性ポリアリルアミンという)、(iii)−COR(以下、アシル変性ポリアリルアミンという)、(iv)−CHCH(R)−A(以下、マイケル変性ポリアリルアミンという)、および、(v)−CHCH(OH)−B(以下、アルコール変性ポリアリルアミンという)等が挙げられる。
【0066】
以下、本発明における変性ポリアリルアミンのそれぞれについて説明する。
【0067】
(i)ウレア変性ポリアリルアミン
ウレア変性ポリアリルアミンは、下記繰り返し単位(a)、(b)、(c)および(d1)の共重合体である。
【化2】

式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、特にメチル基が好ましい。
【0068】
また、繰り返し単位(a)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する上記(a)および(b)の構成モノマー単位の総数に対して、0〜90%が好ましく、0〜80%がより好ましい。また、前記繰り返し単位(a)および(b)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する全モノマー数に対して、5〜95%が好ましく、10〜90%がより好ましく、特に20〜80%が好ましい。このとき、カルバモイル化度すなわち、繰り返し単位(c)および(d1)の総数に対する(d1)の割合は、変性ポリアリルアミンの溶解性および安定性の面から、60〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、特に95〜100%が好ましい。
【0069】
(ii)ウレタン変性ポリアリルアミン
ウレタン変性ポリアリルアミンは、下記繰り返し単位(a)、(b)、(c)、および(d2)の共重合体である。
【化3】

式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、特にメチル基が好ましい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12もアリール基を表す。
【0070】
が炭素数1〜12のアルキル基である場合は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基といった炭素数1〜4の直鎖アルキル基が好ましい。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、およびp−トリル基が挙げられる。
【0071】
また、繰り返し単位(a)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する上記(a)および(b)の構成モノマー単位の総数に対して、0〜90%が好ましく、0〜80%がより好ましい。また、前記繰り返し単位(a)および(b)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する全モノマー数に対して、5〜95%が好ましく、10〜90%がより好ましく、特に20〜80%が好ましい。このとき、アルコキシカルボニル化(またはアリロキシカルボニル化)度、すなわち、繰り返し単位(c)および(d2)の総数に対する(d2)の割合は、変性ポリアリルアミンの溶解性および安定性の面から、60〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、特に95〜100%が好ましい。
【0072】
(iii)アシル変性ポリアリルアミン
アシル変性ポリアリルアミンは、下記繰り返し単位(a)、(b)、(c)、および(d3)の共重合体である。
【化4】

式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、特にメチル基が好ましい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表し、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−ノニル基が挙げられる。
【0073】
また、繰り返し単位(a)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する上記(a)および(b)の構成モノマー単位の総数に対して、0〜90%が好ましく、0〜80%がより好ましい。また、前記繰り返し単位(a)および(b)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する全モノマー数に対して、5〜95%が好ましく、10〜90%がより好ましく、特に20〜80%が好ましい。このとき、アシル化度すなわち、繰り返し単位(c)および(d3)の総数に対する、(d3)の割合は、変性ポリアリルアミンの溶解性および安定性の面から、60〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、特に95〜100%が好ましい。
【0074】
(iv)マイケル変性ポリアリルアミン
マイケル変性ポリアリルアミンは、下記繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d41)、および/または(d42)の共重合体である。
【化5】

式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、特にメチル基が好ましい。また、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは−CONR(RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または、炭素数1〜8のアルキル基(このアルキル基は、ヒドロキシ基、ケト基、炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基、ジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基、またはトリ(炭素数1〜4のアルキル)アンモニウム基からなる群から選択される基により置換されていてもよい)を表すか、またはNRは一緒になってピペリジノ基またはモルホリノ基の環状アミノ基を表す。)、−CN、およびCOOR(ここで、Rは炭素数1〜8のアルキル基(このアルキル基は、ヒドロキシ基、ケト基、炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基、ジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基、およびトリ(炭素数1〜4のアルキル)アンモニウム基からなる群から選択される基で置換されていてもよい)からなる群から選択されるものである。
【0075】
また、基−CHCH(R)−Aは、通常、アクリル化合物のマイケル反応付加体であるが、アクリルアミド付加体タイプ(Aが−CONRタイプ)のときは、−CHCHCONH、−CHCHCONHCH、−CHCHCON(CH、−CHCHCONHC、−CHCHCON(C、−CHCHCONH−nC、−CHCHCON(nC、−CHCHCONH−iC、−CHCHCONHCHO−nC、−CHCHCONHCHOH、−CHCHCONHCHCHN(CH、−CHCHCONHCHCHN(C、−CHCHCONHCHCHCHN(CH、−CHCHCONHCHCHCHN(C、−CHCHCONHCHCH(CH、−CHCHCONHCHCH(C、−CHCHCONHCHCHCH(CH、−CHCHCONHCHCHCH(C、−CHCHCO−モルホリノ基、−CHCHCO−ピペリジノ基、−CHCH(CH)CONH、−CHCH(CH)CONHCH、−CHCH(CH)CON(CH、−CHCH(CH)CONHC、−CHCH(CH)CON(C、−CHCH(CH)CONH−nC、−CHCH(CH)CON(nC、−CHCH(CH)CONH−iC、−CHCH(CH)CONHCHO−nC、−CHCH(CH)CONHCHOH、−CHCH(CH)CONHCHCHN(CH、−CHCH(CH)CONHCHCH(CH)N(C、−CHCH(CH)CONHCHCHCHN(CH、−CHCH(CH)CONHCHCHCHN(C、−CHCH(CH)CONHCHCH(CH、−CHCH(CH)CONHCHCH(C、−CHCH(CH)CONHCHCHCH(CH、−CHCH(CH)CONHCHCHCH(C、−CHCH(CH)CO−モルホリノ基、−CH
H(CH)CO−ピペリジノ基を例示できる。
【0076】
また、基−CHCH(R)−Aがアクリロニトリル付加体タイプのときは、−CHCHCN、および−CHCH(CH)CNを例示できる。
【0077】
さらに、基−CHCH(R)−Aがアクリル酸エステル付加体タイプのときは、−CHCHCOOCH、−CHCHCOOC、−CHCHCOOC、−CHCHCOOC、−CHCHCOOCHCHN(CH、−CHCHCOOCHCHCHN(CH、−CHCHCOOCHCHN(C、−CHCHCOOCHCHCHN(C、−CHCHCOOCHCHCH(CH、−CHCHCOOCHCH(C、−CHCHCOOCHCHCH(Cを例示できる。
【0078】
繰り返し単位(a)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する上記(a)および(b)の構成モノマー単位の総数に対して、0〜90%が好ましく、0〜80%がより好ましい。また、前記繰り返し単位(a)および(b)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する全モノマー数に対して、5〜95%が好ましく、10〜90%がより好ましく、特に20〜80%が好ましい。このとき、マイケル付加体タイプ変換度すなわち、繰り返し単位(c)と(d41)および/または(d42)との総数に対する、(d41)および/または(d42)の割合は、変性ポリアリルアミンの溶解性および安定性の面から、60〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、95〜100%が特に好ましい。
【0079】
また、繰り返し単位(d41)および(d42)の総数に対する、(d42)の割合は、廃液の処理の面から、60〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、95〜100%が特に好ましい。
【0080】
(v)アルコール変性ポリアリルアミン
アルコール変性ポリアリルアミンは、下記繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d51)、および/または(d52)の共重合体である。
【化6】

式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、特にメチル基が好ましい。また、Bは炭素数1〜8のアルキル基(このアルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、およびアルケニルオキシ基からなる群から選択される基により置換されていてもよい)を表す。
【0081】
Bは、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、または炭素数1〜8のアルキル基(ここで、このアルキル基は、アルケニルオキシ基により置換されていても良い)であるが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、メトキシメチル、エトキシメチル基、プロピロキシメチル基、ブトキシメチル基、ペントキシメチル基、ヒドロキシメチル基、(2−プロペニルオキシ)メチル基を例示できる。
【0082】
基−CHCH(R)−Bは、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシヘキシル基、2−ヒドロキシヘプチル基、2−ヒドロキシオクチル基、3−メトキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−エトキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−プロピロキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−(i−プロピロキシ)−2−ヒドロキシプロピル基、3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル基、3−ペントキシ−2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−(2−プロペニル)2−ヒドロキシプロピル基を例示できる。
【0083】
繰り返し単位(a)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する上記(a)および(b)の構成モノマー単位の総数に対して、0〜90%が好ましく、0〜80%がより好ましい。また、前記繰り返し単位(a)および(b)の割合は、変性ポリアリルアミンを構成する全モノマー数に対して、5〜95%が好ましく、10〜90%がより好ましく、特に20〜80%が好ましい。このとき、ヒドロキシアルキル変換度すなわち、繰り返し単位(c)と(d51)および/または(d52)との総数に対する、(d51)および/または(d52)の割合は、本発明に係る変性ポリアリルアミンの溶解性および安定性の面から、60〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、95〜100%が特に好ましい。
【0084】
また、繰り返し単位(d51)および(d52)の総数に対する、(d52)の割合は、廃液の処理の面から、60〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、95〜100%が特に好ましい。
【0085】
以上、変性ポリアリルアミンの構造について説明したが、アリルアミンを変性したモノマーユニットが複数ある場合は、全てのモノマーユニットが同一であっても良く、複数種類の異なるモノマーユニットから構成されていても良い。
【0086】
上記の変性ポリアリルアミンの重量平均分子量は、12,000以下であることが好ましく、200以上12,000以下であることがより好ましく、200以上8000以下であることがより一層好ましく、特に1000以上5000以下であることが好ましい。
分子量が12,000以下であることにより、本発明の記録方法に用いられるクリアインク組成物に含まれる成分に対する、変性ポリアリルアミンの適度な溶解性を実現できる。一方、分子量が200以上であることにより、本発明のインクジェット記録方式に用いた場合に記録物の性能を向上させることができる。なお、本願明細書中の「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPS)法で測定したポリエチレングリコール換算の値を意味する。
【0087】
上記の原料の共重合体は、例えば、以下の方法により合成することができる。
【0088】
原料の共重合体は、モノマーとして、ジアリルアルキルアミンとモノアリルアミンとを必須成分とし、所望によりジアルキルアリルアミンを含んでなる水溶液を、重合開始剤の存在下で重合させることにより製造できる。この場合、該水溶液中のモノマー濃度は、10〜80質量%、好ましくは15〜70質量%である。ジアリルアルキルアミンは、変性物の溶解性の高さからメチルジアリルアミンが好適に用いられる。また、任意成分であるジアルキルアリルアミンは、ジアリルアルキルアミンモノマーに対して、0〜90%含まれていることが好ましく、0〜80%含まれていることがより好ましい。
【0089】
重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等の水溶性アゾ基を有する化合物が好適に用いられる。該重合開始剤は、モノマーの総量に対して0.1〜30mol%が好ましい。また、重合時間は3〜100時間、好ましくは5〜70時間である。
【0090】
原料の共重合体の重量平均分子量は、200〜12,000であることが好ましく、200〜8000がより好ましく、特に300〜5000が好ましい。分子量が上記範囲にあることで、生成する変性ポリアリルアミンがインクを構成する溶媒に良好に溶解し、またインクジェット記録装置に使用されている部品へのアタック性が抑制され、インク流路構成部品を侵すことがなく好ましい。
【0091】
クリアインク成物が含有する変性ポリアリルアミンは、原料の共重合体を、アミノ基を炭素数1〜12の置換基に置換させうる試薬、例えば、N−カルバモイル化試薬、アルコキシカルボニル化試薬、アリロキシカルボニル化試薬、アシル化試薬、もしくはマイケル付加反応が可能なアクリル化合物または置換基を有しても良い1,2−エポキシアルカン化合物、を作用させて、原料の共重合体中にあるアリルアミンモノマーの−NHの水素原子の一部または全部を、「−NH−置換基」または/および「−N−ジ置換基」に変性させることにより、N,N−ジアルキルアリルアミンとN−置換アリルアミンとの共重合体を得ることができる。
【0092】
本発明において、アミノ基含有樹脂の含有量は、記録物のドット径縮小効果および廃液処理性の観点から適宜決定されてよいが、本発明の好ましい態様によれば、インク組成物中に固形分として、好ましくは2.0〜8.0質量%が好ましい。
【0093】
また、本発明においては、ポリエチレンイミンまたはその誘導体を混合して添加してもよい。
【0094】
<(ポリ)オキシアルキレングリコール>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、(ポリ)オキシアルキレングリコールを含んでいてもよい。
【0095】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物に(ポリ)オキシアルキレングリコール含まれる場合、(ポリ)オキシアルキレングリコールは、好ましくは、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加重合によって得られる水混和性のオリゴマーである。本発明の好ましい態様によれば、より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコールからなる群から選択される一種または二種以上であり、さらに好ましくは、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコールからなる群から選択される一種または二種以上である。本発明の好ましい態様によれば、前記(ポリ)オキシアルキレングリコールは、より好ましくは、水混和性の(ポリ)プロピレングリコールである。その(ポリ)プロピレングリコールは、特に限定されないが、吸湿性が低い観点から、トリプロピレングリコール(CAS No.24800−44−0)であることがより好ましい。
【0096】
本発明において、(ポリ)オキシアルキレングリコールは、インクのブリーディングとビーディングインクとを効率良く抑制出来る限りにおいて、適宜決定されてよいが、インク組成物全体に対し、2.0〜18.0質量%含有されていることが好ましく、より好ましくは6.0〜18.0質量%である。(ポリ)オキシアルキレングリコールの量を上記範囲とすることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、難水溶性のアルカンジオールをインク滴の乾燥工程で分離させずに、混和状態に保持できるので好ましい。また、(ポリ)オキシアルキレングリコールの量を上記範囲とすることで、とりわけ上限を超えずにあることで、インクの初期粘度が高くなりすぎず、通常のインク保存状態において、油層の分離を有効に防止でき、インクの保存性の観点から好ましく、不相溶状態を防ぐので、光沢の観点で好ましい。
【0097】
また、(ポリ)オキシアルキレングリコールは、高温低湿放置下においても乾燥しにくいため、50℃における相対湿度15%RHの開放環境下でのノズルの目詰まり回復性を改善することができるとの利点も有する。
【0098】
また、前記(ポリ)オキシアルキレングリコールと、前記湿潤剤との含有量の和が、インク組成物に対し、12.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、30.0質量%以上54.0質量%以下である。この範囲とすることにより、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体において、よりカール抑制に優れる。
【0099】
また、前記難水溶性のアルカンジオールと、前記(ポリ)オキシアルキレングリコールおよび前記湿潤剤の含有量の和との含有量比は、好ましくは、1:5〜1:20であることが好ましい。この範囲とすることにより、前記難水溶性のアルカンジオールを安定して溶解させることができ、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体において、よりカール抑制に優れる。
【0100】
<水溶性のアルカンジオール>
本発明の好ましい態様によれば、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、アミノ基含有樹脂と、難水溶性のアルカンジオールと、湿潤剤とを含んでなることに加えて、水溶性のアルカンジオールを含んでいてもよい。これにより、インク組成物が含有している固形分以外の物質、すなわち溶剤を含む水溶液のブリーディング発生がさらに抑制できる点で有利である。
【0101】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物に含まれる水溶性のアルカンジオールは、両末端または片末端アルカンジオールである。この水溶性のアルカンジオールは、炭素数3以上のアルカンジオールが好ましく、より好ましくは炭素数3〜6のアルカンジオールである。本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物に含まれる水溶性のアルカンジオールは、好ましくは、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の水溶性のヘキサンジオールや、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3-メチル-1,5−ペンタンジオールが挙げられ、その中でも1,2−ヘキサンジオールまたは3-メチル-1,5−ペンタンジオールが好ましい。また、高周波数での吐出安定性が優れる観点から、1,6−ヘキサンジオールであってもよい。ここで、両末端アルカンジオールとは、アルキル鎖の主鎖の両方の末端に水酸基を有するアルカンジオールを意味し、片末端アルカンジオールとは、アルキル鎖の主鎖の片方の末端に水酸基を有するアルカンジオールを意味する。したがって、例えば、1,6−ヘキサンジオールおよび3−メチル−1,5−ペンタンジオールは両末端アルカンジオールであり、1,2−ヘキサンジオールは片末端アルカンジオールである。
【0102】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、前記難水溶性のアルカンジオールと、前記水溶性のアルカンジオールとの含有量比が、それぞれ3:1〜1:2であることが好ましい。この範囲にあることで、着滴時間間隔が短い場合のビーディングを抑制させることができる。
【0103】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記水溶性のアルカンジオールと、前記湿潤剤との含有量の和が、インク組成物に対し、40.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは28.0質量%以下である。この範囲にあることで、着滴時間間隔が短い場合のビーディングを抑制させることができる。
【0104】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、前記水溶性のアルカンジオールと、前記(ポリ)オキシアルキレングリコールとの含有量の和が、インク組成物に対し、22.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは16.0質量%以下であり、さらに好ましくは、10.0質量%以下である。この範囲にあることで、着滴時間間隔が短い場合のブリーディングを抑制させることができる。
【0105】
また、(ポリ)オキシアルキレングリコールと、水溶性のアルカンジオールと、難水溶性のアルカンジオールとの含有量の和が、インク組成物に対し、26.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20.0質量%以下であり、さらに好ましくは、14.0質量%以下である。この範囲にあることで、着滴時間間隔が短い場合のブリーディングを抑制させることができる。
【0106】
さらに、湿潤剤と、水溶性のアルカンジオールと、難水溶性のアルカンジオールとの含有量の和が、インク組成物に対し、インク組成物に対し、16.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは16.0質量%以上28.0質量%以下である。この範囲にあることで、着滴時間間隔が短い場合のビーディングを抑制させることができる。
【0107】
また、本発明の好ましい態様によれば、水溶性のアルカンジオールの添加量は、インクのブリーディングと、ビーディングインクとを効率良く抑制出来る限りにおいて、適宜決定されてよいが、組成物全体に対し、0.1〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.0質量%である。水溶性のアルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、ブリーディング発生の抑制を十分なものとすることができる。また、水溶性のアルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ上限を超えずにあることでインクの初期粘度が高くなりすぎず、通常のインク保存状態において、油層の分離を有効に防止でき、インクの保存性の観点から好ましい。また、水溶性のアルカンジオールの好ましい態様である1,2−ヘキサンジオールを、組成物全体に対し、0.3〜1.0質量%含むことにより、さらにブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現でき、また顔料種や樹脂量により吐出性能が異なる場合の調整剤として効果的である。
【0108】
本発明の好ましい態様によれば、インク組成物に対して、(ポリ)オキシアルキレングリコールの含有量が6質量%以上18質量%以下であり、湿潤剤の含有量が12質量%以上36質量%以下であり、水の含有量が30質量%以上74質量%以下であり、かつ、(ポリ)オキシアルキレングリコールと前記湿潤剤との含有量の和と、前記水との含有量比が5:3〜1:4であることが好ましい。上記の範囲にあることで、インク組成物の状態での湿潤剤の析出を抑制でき、また、記録媒体上での速やかな糖質の析出ができる観点で好ましい。
【0109】
本発明の好ましい態様によれば、インク組成物に対して、難水溶性のアルカンジオールの含有量が1.0質量%以上5.0質量%以下であり、水溶性のアルカンジオールの含有量が0.1質量%以上5.0質量%以下であり、かつ、難水溶性のアルカンジオールと、前記水溶性のアルカンジオールとの含有量比が3:1〜1:2であることが好ましい。
上記の範囲にあることで、着滴時間間隔が短い場合のビーディングを抑制させることができる。
【0110】
<その他の溶剤>
本発明の好ましい態様によれば、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、更にトリエチレングリコールモノメチルエーテルを含んでも良い。トリエチレングリコールモノメチルエーテルを6〜18質量%含むことにより、インクジェットヘッドをキャップするためのインクキャップ内の目詰まりを抑制することができる。ここで、インクキャップ内の目詰まりとは、キャップ内に滞留している廃液が乾燥固化し、これがインクキャップ内の不織布等のインク吸収剤の微細孔を目詰させることを意味する。インクキャップ内の目詰まりを抑制することにより、クリーニング成功率の低下を防ぎ、ノズル目詰まり回復性を向上させることができる。
【0111】
<界面活性剤>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、界面活性剤を含んでもよい。記録媒体として、普通紙のように、インクを受容する繊維層が表面にあるものに対して、界面活性剤を用いることにより、滲みを調整できるので、優れた細線を表現する画像を実現することができる。とりわけ、印刷本紙のように、表面の受容層に油性インクを受容するための塗布層が設けられているような記録媒体を用いた場合であっても、色間の滲み(ブリーディング)を防止できるとともに、インク付着量の増加に伴い発生する光の反射光による白化を防止することができる。
【0112】
本発明において用いられる界面活性剤としては、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を好適に使用でき、記録画像を形成する際に、記録媒体表面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を用いた場合、上記したような一種類の難水溶性のアルカンジオールと、1種類の(ポリ)オキシアルキレングリコールとを含有するため、界面活性剤のインク中への溶解性が向上し、不溶物等の発生を抑制できるため、吐出安定性がより優れるインク組成物を実現できる。
【0113】
このような界面活性剤は市販されているものを用いてもよく、例えば、BYK−347(ビックケミー株式会社製)、BYK−348(ビックケミー株式会社製)等を用いることができる。
【0114】
本発明において用いられる界面活性剤としては、前記ポリオルガノシロキサン系界面活性剤は、特に限定されないが、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下のものを使用することが特に好ましい。動的表面張力は、例えば、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて測定することができる。
【0115】
上記のような界面活性剤は市販されているものを用いてもよく、例えば、オルフィンPD−501(日信化学工業株式会社製)、オルフィンPD−570(日信化学工業株式会社製)等を用いることができる。
【0116】
また、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤として、下記式(I):
【化7】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは2〜13の整数を表し、mは2〜70の整数を表し、nは1〜8の整数を表す。)
で表される一種または二種以上の化合物を含んでなるか、または、上記式(I)の化合物において、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは2〜11の整数を表し、mは2〜50の整数を表し、nは1〜5の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることが好ましく、または、上記式(I)の化合物において、Rが水素原子またはメチル基であり、aが2〜13の整数であり、mは2〜50の整数であり、nは1〜5の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。また、上記式(I)の化合物において、Rが水素原子またはメチル基であり、aが2〜13の整数であり、mは2〜50の整数であり、nは1〜8の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。あるいは、上記式(I)の化合物において、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数であり、mが0〜4であり、nが1または2である一種または二種以上の化合物を含んでなることが好ましく、または、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数、であり、mが0であり、nが1である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。このような特定のオルガノポリシロキサン系界面活性剤を使用することにより、記録媒体として印刷本紙に印刷した場合であっても、インクの凝集むらがより改善される。
【0117】
上記式(I)の化合物においては、Rがメチル基である化合物を使用することによって、さらにインクのビーディングが改善できる。また、上記式(I)の化合物においては、Rが水素原子である化合物を併用することにより、さらにインクのブリーディングが改善できる。
【0118】
上記式(I)の化合物においては、Rがメチル基の化合物とRが水素原子の化合物との配合割合を適宜、調整することにより、さらにブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現でき、また顔料種や樹脂量により流動性が異なる場合の調整剤として効果的である。
【0119】
上記界面活性剤は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物中に、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜0.50質量%含有される。特に、Rが水素基である上記界面活性剤を使用する場合は、Rがメチル基である上記界面活性剤を用いた場合よりも、含有量を少なくすることがビーディングの観点から好ましい。Rが水素基である界面活性剤を0.01〜0.1質量%含有させることにより、撥水性が発現し、ブリードを調整できる。
【0120】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物には、その他の界面活性剤、具体的には、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等をさらに添加しても良い。
【0121】
これらのうち、アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(商品名、日信化学社製)、サーフィノール61、104,82,465,485、あるいはTG(商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
【0122】
<水、その他の成分>
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物は、水を含有する。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
【0123】
また、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物は、上記成分に加えて、浸透剤を含んでも良い。
【0124】
浸透剤としては、グリコールエーテル類を好適に使用できる。
【0125】
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノールなどが挙げられ、これらの一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0126】
上記グリコールエーテル類の中でも、多価アルコールのアルキルエーテルが好ましく、特にエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが好ましい。
より好ましくは、トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよびトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルである。
【0127】
上記浸透剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.1〜30質量%程度が好ましく、より好ましくは1〜20質量%程度である。
【0128】
また、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物は、上記成分に加えて、記録媒体溶解剤を含んでも良い。
【0129】
記録媒体溶解剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ピロリドンカルボン酸、およびそれらのアルカリ金属塩などの、ピロリドン類を好適に使用できる。また、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグライム類や、γ-ブチロラクトンなどのラクタム類も好適に使用できる。上記記録媒体溶解剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.1〜30質量%程度が好ましく、より好ましくは1〜20質量%程度である。
【0130】
また、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物においては、グリセリンやその誘導体、例えば、3−(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2−プロパンジオール(CAS14641−24−8)、3−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2−プロパンジオール等を含むことが好ましい。グリセリンやその誘導体は、インクジェットノズル等において、インクが乾燥して固化するのを防ぐ機能を有するものであるため、目詰まり回復性を向上させる観点で好ましい。本発明においては、これらのグリセリンやその誘導体を0.1〜8質量%以下含ませることもできる。
【0131】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物は、さらにノズルの目詰まり防止剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを添加することができる。
【0132】
防腐剤・防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等を挙げることができる。
【0133】
さらに、pH調整剤、溶解助剤、または酸化防止剤の例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩を挙げることができる。
【0134】
また、本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物は、酸化防止剤および紫外線吸収剤を含んでいてもよく、その例としては、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のTinuvin 328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor 252 153、Irganox 1010、1076、1035、MD1024、ランタニドの酸化物等を挙げることができる。
【0135】
本発明のインクジェット記録方法に用いられるクリアインク組成物は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。別途調製した樹脂(樹脂エマルジョン)、水、水溶性有機溶媒、糖、pH調製剤、防腐剤、防かび剤等を加えて十分溶解させてインク溶液を調製する。十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒径および異物を除去するためにろ過を行って目的のクリアインク組成物を得ることができる。前記ろ過は、ろ材として、好ましくは、グラスファイバーフィルターを用いて行ってもよい。前記グラスファイバーは、樹脂含浸グラスファイバーであることが、静電吸着機能の観点から好ましい。また、グラスファイバーフィルターの孔径は、1〜40ミクロンが好ましく、さらに好ましくは1〜10ミクロンであることが、生産性と帯電遊離樹脂等の吸着除去の観点から好ましい。帯電遊離樹脂等の吸着除去を十分に行うことにより、吐出安定性を向上させることができる。上記のフィルターとして、例えば、日本ポール社製のウルチポアGFプラスを挙げることができる。
【0136】
<着色剤を含むインク組成物>
本発明のインクジェット記録方法には、着色剤を含むインク組成物を、クリアインク組成物と共に用いてもよい。着色剤を含むインク組成物は、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、およびブラックインク組成物からなる群から選択される一種または二種以上を含んでもよい。本発明の好ましい着色剤を含むインク組成物の一つの態様によれば、初期粘度の調整や、保存後の粘度変化を調整でき、各色のインクの吐出インク質量を長期間に渡って安定化できることから、少なくとも、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、およびブラックインク組成物からなる群から選択される一種または二種以上に、前記無機顔料を含んでなるものである。
【0137】
本発明のインクジェット記録方法に用いてもよい着色剤を含むインク組成物としては、染料および顔料のいずれも使用することができるが、耐光性や耐水性の観点から顔料を好適に使用できる。また、着色剤は、前記顔料およびその顔料をインク中に分散させることが可能な下記分散剤を含んでなることが好ましく、アニオン性分散液であることが好ましい。
【0138】
顔料としては、無機顔料および有機顔料を使用することができ、それぞれ単独または複数種を混合して用いることができる。有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、その他に、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等が使用できる。
【0139】
顔料の具体例は、得ようとするインク組成物の種類(色)に応じて適宜挙げられる。例えば、イエローインク組成物用の顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,147,150,151,154,155,180,185等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントイエロー74,110,128、および129からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。また、マゼンタインク組成物用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,112,122,123,168,184,202,209;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントレッド122,202,209、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、これらの固溶体であってもよい。また、シアンインク組成物用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15:2,15:3,15:4,15:34,16,22,60;C.I.バットブルー4,60等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントブルー15:3および/または15:4を用いることが好ましく、とりわけ、C.I.ピグメントブルー15:3を用いることが好ましい。
【0140】
また、ブラックインク組成物用の顔料としては、例えば、ランプブラック(C.I.ピグメントブラック6)、アセチレンブラック、ファーネスブラック(C.I.ピグメントブラック7)、チャンネルブラック(C.I.ピグメントブラック7)、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)等の炭素類、酸化鉄顔料等の無機顔料、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料等が挙げられるが、本発明においては、カーボンブラックが好ましく用いられる。カーボンブラックとして、具体的には、#2650、#2600、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#966、#960、#950、#900、#850、MCF-88、#55、#52、#47、#45、#45L、#44、#33、#32、#30、(以上、三菱化学(株)製)、SpecialBlaek4A、550、Printex95、90、85、80、75、45、40(以上、デグッサ社製)、Regal660、RmogulL、monarch1400、1300、1100、800、900(以上、キャボット社製)、Raven7000、5750、5250、3500、3500、2500ULTRA、2000、1500、1255、1200、1190ULTRA、1170、1100ULTRA、Raven5000UIII(以上、コロンビアン社製)等が挙げられる。
【0141】
本発明のインクジェット記録方法に用いてもよい着色剤を含むインク組成物としては、顔料の濃度は、インク組成物を調製した際に適宜な顔料濃度(含有量)に調整すればよいため特に限定されないが、本発明においては、顔料の固形分濃度を1.0〜10.0質量%とすることが好ましい。また、発色性の観点から3.0〜7.0質量%であることが好ましく、粒状性の観点から、1.0〜3.0質量%であることが好ましい。本発明のインクジェット記録方法に用いられる着色剤を含むインク組成物としては、特に限定はされないが、各種記録媒体、とりわけ非吸水性または低吸水性記録媒体に記録する場合には、前記難水溶性のアルカンジオールと、前記湿潤剤と、前記アミノ基含有樹脂とを組み合わせて使用することが、より好ましい。
【0142】
また、本発明のインクジェット記録方法に用いてもよい着色剤を含むインク組成物は、クリアインク組成物と同様に、(ポリ)オキシアルキレングリコール、水溶性のアルカンジオール、その他の溶剤、界面活性剤、水、浸透剤、記録媒体溶解剤、ノズルの目詰まり防止剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。これらの具体例およびその添加量は、クリアインク組成物の場合と同様であってよい。
【0143】
<分散剤>
本発明のインクジェット記録方法に用いてもよい着色剤を含むインク組成物としては、スチレン−アクリル酸系共重合樹脂、オキシエチルアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、およびフルオレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなることが好ましく、より好ましくは、オキシエチルアクリレート系樹脂およびフルオレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなる。これら共重合樹脂は、顔料に吸着して分散性を向上させる。
【0144】
共重合体樹脂における疎水性モノマーの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルアクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、iso−オクチルアクリレート、iso−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フエニルメタクリレート、ノニルフェニルアクリレート、ノニルフェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ボルニルアクリレート、ボルニルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシエチル化オルトフェニルフェノールアクリレートなどを挙げることができる。これらは、単独でまたは二種以上を混合して用いてもよい。
【0145】
親水性モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などを挙げることができる。
【0146】
前記疎水性モノマーと親水性モノマーとの共重合樹脂は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、スチレン−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、またはスチレン−マレイン酸共重合樹脂、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、またはスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、ヒドロキシエチル化オルトフェニルフェノールアクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0147】
前記共重合樹脂は、スチレンと、アクリル酸またはアクリル酸のエステルとを反応して得られる重合体を含む樹脂(スチレン−アクリル酸樹脂)であってもよい。あるいは、前記共重合樹脂は、アクリル酸系水溶性樹脂であってもよい。またはこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等の塩であってもよい。
【0148】
前記共重合樹脂の酸価は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは50〜320であり、一層好ましくは100〜250である。
【0149】
前記共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは2,000〜3万であり、より好ましくは2,000〜2万である。
【0150】
前記共重合樹脂のガラス転移温度(Tg:JISK6900に従い測定)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは30℃以上であり、一層好ましくは50〜130℃である。
【0151】
前記共重合樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合とがあり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
【0152】
前記共重合樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
【0153】
本発明においては、前記共重合樹脂として、オキシエチルアクリレート系樹脂を使用することもできる。使用することにより、インクの初期粘度の低減、高温時の保存安定性、目詰まり回復性に優れるので、より好ましい。
【0154】
上記オキシエチルアクリレート系樹脂は、オキシエチルアクリレート骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、好ましくは下記式(II)で表される化合物である。下記式(II)で表される化合物は、例えば、モノマーモル比として、CAS No.72009−86−0のオルト-ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレートを45〜55%と、CAS No.79−10−7のアクリル酸を20〜30%と、CAS No.79−41−4のメタクリル酸を20〜30%と含む樹脂が挙げられる。これらは、単独でもまたは二種以上を混合して用いてもよい。また、上記モノマー構成比は、特に限定されないが、好ましくはCAS No.72009−86−0のオルト-ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレートが70〜85質量%、CAS No.79−10−7のアクリル酸が5〜15質量%、CAS No.79−41−4のメタクリル酸が10〜20質量%である。
【0155】
【化8】

(上記式(II)中、R1および/またはR3は水素原子またはメチル基であって、R2はアルキル基またはアリール基である。nは1以上の整数である。)
【0156】
上記式(II)で表される化合物は、好ましくはノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートまたはポリプロピレングリコール#700アクリレート等が挙げられる。
【0157】
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の含有量は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに、凝集斑を抑制し、埋まり性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは10〜40質量部であり、一層好ましくは15〜25質量部である。
【0158】
前記オキシエチルアクリレート系樹脂に占めるアクリル酸とメタクリル酸の群から選ばれる水酸基を有するモノマー由来の樹脂構成比の合計は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに、目詰まり回復性の観点からは、好ましくは30〜70%であり、一層好ましくは40〜60%である。
【0159】
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の架橋前の数平均分子量(Mn)は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立する観点からは、好ましくは4000〜9000であり、より好ましくは5000〜8000である。Mnは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
【0160】
前記オキシエチルアクリレート系樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合とがあり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
【0161】
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
【0162】
また、本発明のインクジェット記録方法に用いてもよい着色剤を含むインク組成物としては、定着性顔料分散剤として、ウレタン系樹脂を用いることにより、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる。ウレタン系樹脂とは、ジイソシアネート化合物と、ジオール化合物とを反応して得られる重合体を含む樹脂であるが、本発明においては、ウレタン結合および/またはアミド結合と、酸性基とを有する樹脂であることが好ましい。
【0163】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらの変性物が挙げられる。
【0164】
ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系、ポリエチレンアジベート、ポリブチレンアジベート等のポリエステル系、ポリカーボネート系が挙げられる。
【0165】
前記ウレタン系樹脂の酸価は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは10〜300であり、一層好ましくは20〜100である。なお、酸価は、樹脂1gを中和させるのに必要なKOHのmg量である。
【0166】
前記ウレタン樹脂の架橋前の重量平均分子量(Mw)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは100〜20万であり、より好ましくは1000〜5万である。Mwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
【0167】
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg:JISK6900に従い測定)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは−50〜200℃であり、一層好ましくは−50〜100℃である。
【0168】
前記ウレタン系樹脂は、カルボキシル基を有することが好ましい。
【0169】
前記ウレタン系樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
【0170】
さらに、本発明においては、定着性顔料分散剤として、フルオレン系樹脂を使用することもできる。使用することにより、インクの初期粘度の低減、高温時の保存安定性、印刷本紙への定着性に優れるので、より好ましい。
【0171】
また、前記フルオレン系樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂であれば何ら制限されるものではなく、例えば、下記のモノマー単位を共重合することにより得ることができる。
5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(CAS No.4098−71−9)
2,2‘−[9H−フルオレン−9−イリデンビス(4,1−フェニレンオキシ)]ビスエタノール(CAS No.117344−32−8)
3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸(CAS No.4767−03−7)
N,N−ジエチル−エタンアミン(CAS No.121−44−8)
【0172】
上記フルオレン樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂であれば、モノマー構成比は、特に限定されないが、好ましくは、5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(CAS No.4098−71−9)が35〜45質量%、2,2‘−[9H−フルオレン−9−イリデンビス(4,1−フェニレンオキシ)]ビスエタノール(CAS No.117344−32−8)が40〜60質量%、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸(CAS No.4767−03−7)が5〜15質量%、N,N−ジエチル−エタンアミン(CAS No.121−44−8)が5〜15質量%である。
【0173】
前記フルオレン系樹脂の架橋前の数平均分子量(Mn)は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立する観点からは、好ましくは2000〜5000であり、より好ましくは3000〜4000である。Mnは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
【0174】
前記フルオレン系樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合とがあり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
【0175】
前記フルオレン系樹脂の含有量は、カラー画像の定着性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層定着性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部であり、一層好ましくは20〜40質量部である。
【0176】
前記共重合樹脂および前記定着性顔料分散剤の質量比(前者/後者)は、1/2〜2/1が好ましいが、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、1/1.5〜1.5/1であることが一層好ましい。
【0177】
前記顔料の固形分と、前記共重合樹脂および前記定着性顔料分散剤の固形分との質量比(前者/後者)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、100/40〜100/100であることが好ましい。
【0178】
また、分散剤として、界面活性剤を用いてもよい。このような界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキルスルホン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、スルホ琥珀酸エステル塩、ナフテン酸塩、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などの陰イオン界面活性剤;脂肪酸アミン塩、第四アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウムなどの陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。上記した界面活性剤はインク組成物に添加されることで、界面活性剤としての機能をも果たすことは言うまでもない。
【0179】
本発明のインクジェット記録方法に用いてもよい着色剤を含むインク組成物は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。好ましくは、まず顔料と高分子分散剤と水とを適当な分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなど)で混合し、均一な顔料分散液を調製し、次いで、別途調製した樹脂(樹脂エマルジョン)、水、水溶性有機溶媒、糖、pH調製剤、防腐剤、防かび剤等を加えて十分溶解させてインク溶液を調製する。十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒径および異物を除去するためにろ過を行って目的のインク組成物を得ることができる。前記ろ過は、ろ材として、好ましくは、グラスファイバーフィルターを用いて行ってもよい。前記グラスファイバーは、樹脂含浸グラスファイバーであることが、静電吸着機能の観点から好ましい。また、グラスファイバーフィルターの孔径は、1〜40ミクロンが好ましく、さらに好ましくは1〜10ミクロンであることが、生産性と帯電遊離樹脂等の吸着除去の観点から好ましい。帯電遊離樹脂等の吸着除去を十分に行うことにより、吐出安定性を向上させることができる。上記のフィルターとして、例えば、日本ポール社製のウルチポアGFプラスを挙げることができる。
【0180】
<記録媒体>
本発明によるインクジェット記録方法においては、記録対象となる記録媒体は、特に限定されず、例えば、普通紙や水系インクの受容層を備える記録媒体のほか、非吸水性または低吸水性の記録媒体であっても好適に用いることが可能である。
【0181】
非吸水性または低吸水性の記録媒体
非吸水性の記録媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない(すなわち、インク受容層を有していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0182】
低吸水性の記録媒体としては、例えば、塗工紙が挙げられ、微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等の記録本紙(印刷本紙)等が挙げられる。
【0183】
塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙である。塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの顔料と、デンプン、ポリビニルアルコールなどの接着剤を混合して作ることができる。塗料は、紙の製造工程の中でコーターという機械を用いて塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工を1工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフマシン式がある。主に記録に用いられ、経済産業省の「生産動態統計分類」では印刷用塗工紙に分類される。
【0184】
微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m以下の記録用紙のことをいう。アート紙とは、上級記録用紙(上質紙、化学パルプ使用率100%の紙)に40g/m前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。コート紙とは、20g/m2 − 40g/m程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。キャスト紙とは、アート紙やコート紙を、キャストドラムという機械で表面に圧力をかけることで、光沢や記録効果がより高くなるように仕上げた記録用紙のことをいう。
【0185】
非吸水性または低吸水性の記録媒体として合成紙や印刷本紙(OKT+:王子製紙株式会社製)を用いることが好ましいが、とりわけ、アート紙、POD(プリントオンデマンド)用途に用いられる高画質用紙およびレーザープリンター用の専用紙において、特に低解像度で印刷した場合でも、ブリーディングやビーディングが抑制された高品質な画像が実現できる。POD用途の高画質用紙としては、例えば、リコービジネスコートグロス100(リコー株式会社製)等が挙げられる。また、レーザープリンター用の専用紙としては、例えばLPCCTA4(セイコーエプソン株式会社製)等が挙げられる。また、耐水紙としては、カレカ(三菱化学メディア株式会社製)や、レーザーピーチ(日清紡ポスタルケミカル株式会社製)等を挙げられる。
【0186】
<インクジェット記録装置>
以下、本発明の一実施形態を、記録装置としてインクジェット式プリンターを用いた例により、図1に基づいて説明する。
【0187】
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター1(以下、プリンター1という)は、フレーム2を有している。フレーム2には、プラテン3が設けられ、プラテン3上には、記録媒体送りモーター4の駆動により用紙Pが給送されるようになっている。また、フレーム2には、プラテン3の長手方向と平行に、棒状のガイド部材5が設けられている。
【0188】
ガイド部材5には、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されている。そして、キャリッジ6は、キャリッジモーター8の駆動により、ガイド部材5に沿って往復移動されるようになっている。
【0189】
キャリッジ6には、ヘッド9が設けられるとともに、ヘッド9に液体としてのインクを供給するためのインクカートリッジ10が着脱可能に配置されている。インクカートリッジ10内のインクは、ヘッド9に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ10からヘッド9へと供給され、ヘッド9のノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された用紙Pに対して吐出されるようになっている。これにより記録物を製造することが可能となる。
【0190】
記録方法としては、サーマルジェット(バブルジェット)方式でも良い。また、従来公知の方法はいずれも使用できる。
【実施例】
【0191】
本発明を以下の実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0192】
以下、アリルアミンを「AA」と、N,N−ジメチルアリルアミンを「DMAA」と、N,N−ジアリルメチルアミンを「DAMA」と記載することもある。また、特に断りのない限り「%」とは質量%を表すものとする。
【0193】
重合体の重量平均分子量の測定
重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とを連結したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、0.4mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準サンプルとして分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000のポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に重合体のMwを求めた。
【0194】
変性ポリアリルアミンの製造
製造例1
変性PAA−1(DAMAとAAとの共重合体(5/5))の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、および温度計を備えた2000mlの四つ口セパラブルフラスコ中に、濃度58.80%のモノアリルアミン塩酸塩水溶液159.10gと、濃度69.58%のN,N−ジアリルメチルアミン塩酸塩水溶液212.20gと、蒸留水834.70gとを仕込んだ。そのモノマー水溶液を65℃に加温し、ラジカル開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩54.24gを添加し、48時間の重合を行った。
【0195】
重合終了後、氷冷下で濃度50%の水酸化ナトリウム水溶液193.30gを滴下し塩酸を中和した。中和終了後、減圧下(10.6kPa)、50℃で未反応モノマーを留去した。
【0196】
ここで得られた溶液を、電気透析に付し、脱塩し、濃度14.35%のフリータイプのN,N−ジメチルアリルアミンとアリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)水溶液1055.43gを得た。
【0197】
共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果はC=50.02、H=9.01、N=11.32であった。これらの値は計算値C=49.80、H=9.19、N=11.64と一致した。
【0198】
製造例2a
変性PAA−2a(DAMAとカルバモイル化AAとの共重合体(5/5))の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、および温度計を備えた1000mlの4つ口セパラブルフラスコ中に、製造例1において得られた濃度14.35%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアリルアミンとの共重合体水溶液586.35gを仕込み、氷冷下で濃度35%の塩酸104.17gを滴下した。引き続き、50℃に加温し、濃度7.5%のシアン酸ナトリウム水溶液455.07gを滴下し、24時間の反応を行った。
【0199】
反応終了後、氷冷下で濃度50%の水酸化ナトリウム42.00gを滴下し、未反応の塩酸を中和した。
【0200】
ここで得られた溶液を、電気透析に付し、脱塩し、濃度11.30%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとカルバモイル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5、)水溶液907.00g(収率97%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0201】
この共重合体を濃縮して固体とし、各種溶媒への10%での溶解性を調べた。その結果、この重合体は、アセトン、アセトニトリルには不溶であったが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、DMSO、DMFに溶解した。この結果は、本発明の共重合体が、アリルアミン重合体に比べ有機溶媒にも溶解することを示している。
【0202】
共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、アセトン溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。この結果は、本発明の変性ポリアリルアミンがカチオン性ポリマーになりうることを示している。
【0203】
元素分析の結果はC=53.58、H=8.92、N=16.64であった。これらの値は計算値C=53.32、H=8.95、N=16.96と一致した。また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりカルバモイル化モル分率を算出した結果、46.76%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0204】
製造例2b
変性PAA−2b(DAMAとカルバモイル化AAとの共重合体(3/7))の製造
製造例1において、濃度69.58%のN,N−ジアリルメチルアミン塩酸塩水溶液127.32gと、濃度58.80%のモノアリルアミン222.75gと、蒸留水747.78gを用いた以外は、製造例1と同様にして、濃度14.50%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアリルアミンとの共重合体(共重合比3:7)水溶液889.95gを得た。
【0205】
実施例2aにおいて、上記共重合体水溶液505.67g、シアン酸ナトリウム水溶液637.10g、水酸化ナトリウム水溶液25.20gを用いた以外は、製造例2aと同様にして濃度11.52%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとカルバモイル化アリルアミンとの共重合体(共重合比3:7)水溶液853.10g(収率95%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1500であった。
【0206】
製造例2c
変性PAA−2c(DAMAとカルバモイル化AAとの共重合体(7/3))の製造
製造例1において、濃度69.58%のN,N−ジアリルメチルアミン塩酸塩水溶液297.08gと、濃度58.80%のモノアリルアミン95.46gと、蒸留水921.66gを用いた以外は、製造例1と同様にして、濃度14.81%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアリルアミンとの共重合体(共重合比7:3)水溶液1218.26gを得た。
【0207】
実施例2aにおいて、上記共重合体水溶液641.18g、シアン酸ナトリウム水溶液273.04g、水酸化ナトリウム水溶液58.80gを用いた以外は、製造例2aと同様にして濃度11.12%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとカルバモイル化アリルアミンとの共重合体(共重合比7:3)水溶液940.95g(収率97%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は2100であった。
【0208】
製造例3
変性PAA−3(DAMAとメトキシカルボニル化AAとの共重合体(5/5))の製造 かき混ぜ機、ジムロート還流器、および温度計を備えた1000mlの4つ口セパラブルフラスコ中に、製造例1において得られた濃度14.35%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアリルアミンとの共重合体水溶液586.35gを仕込み、50℃に加温して純度99%の炭酸ジメチル47.77gを滴下し、24時間の反応を行った。
【0209】
反応終了後、減圧下(80mmHg)、50℃で副生したメタノールを除去し、濃度22.44%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとメトキシカルボニル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)水溶液494.19g(収率98%)を得た。
この共重合体の重量平均分子量は1900であった。
【0210】
この共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果は、C=54.69、H=8.62、N=10.37であった。これらの値は計算値C=54.85、H=8.82、N=10.66と一致した。また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりメトキシカルボニル化モル分率を算出した結果、49.88%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0211】
製造例4
変性PAA−4(DAMAとアセチル化AAとの共重合体(5/5))の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、および温度計を備えた1000mlの4つ口セパラブルフラスコ中に、製造例1において得られた濃度14.35%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアリルアミンとの共重合体水溶液586.35gを仕込んだ。氷冷下で純度98%の無水酢酸54.69gを、アリルアミンの1/2モル量分のみを滴下し、副生した酢酸のモル量に対応する濃度50%の水酸化ナトリウム42.00gで中和し、この操作を繰り返して、無水酢酸の全量を滴下し、24時間の反応を行った。
【0212】
ここで得られた溶液を、電気透析に付し、脱塩し、濃度15.12%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアセチル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)水溶液695.50g(収率100%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1900であった。
【0213】
この共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果は、C=58.31、H=9.16、N=11.07であった。これらの値は計算値C=58.41、H=9.40、N=11.35と一致した。また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりアセチル化モル分率を算出した結果、50.06%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0214】
製造例5
変性PAA−5(DAMAとモノカルバモイルエチル化AAとの共重合体(5/5))の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、および温度計を備えた1000mlの4つ口セパラブルフラスコ中に、製造例1において得られた濃度14.35%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアリルアミンとの共重合体水溶液586.35gを仕込み、50℃に加温して濃度50%のアクリルアミド74.63gを滴下し、24時間の反応を行った。このようにして、濃度18.56%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンと、モノカルバモイルエチル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)水溶液631.93g(収率98%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0215】
この共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果は、C=56.48、H=8.99、N=15.38であった。これらの値は計算値C=56.61、H=9.50、N=15.24と一致した。また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりモノプロピルアミド化モル分率を算出した結果、49.03%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0216】
製造例6
変性PAA−6(DAMAとジカルバモイルエチル化AAとの共重合体(5/5))の製造
製造例5において、アクリルアミド149.27gを用いた以外は製造例5と同様にして、濃度23.27%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンと、ジカルバモイルエチル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)水溶液647.03g(収率97%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0217】
この共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果は、C=55.18、H=8.75、N=15.81であった。これらの値は計算値C=55.40、H=9.01、N=16.15と一致した。また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりジプロピルアミド化モル分率を算出した結果、48.71%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0218】
製造例7
変性PAA−7(DAMAとモノエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化AAとの共重合体(5/5))の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、および温度計を備えた1000mlの4つ口セパラブルフラスコ中に、製造例1において得られた濃度14.35%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアリルアミンとの共重合体水溶液586.35gを仕込み、50℃に加温して純度100%のエチルグリシジルエーテル53.62gを滴下し、24時間の反応を行った。このようにして、濃度21.99%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンと、モノエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)水溶液614.87g(収率100%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0219】
この共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果は、C=58.50、H=9.99、N=9.08であった。これらの値は計算値C=58.71、H=10.18、N=9.13と一致した。
また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりモノエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化モル分率を算出した結果、50.12%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0220】
製造例8
変性PAA−8(DAMAとジエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化AAとの共重合体(5/5))の製造
実施例7において、エチルグリシジルエーテル107.24gを用いた以外は、実施例7と同様にして濃度28.62%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンと、ジエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化アリルアミンとの共重合体(共重合比5:5)水溶液644.36g(収率99%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0221】
この共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果は、C=58.56、H=9.98、N=6.73であった。これらの値は計算値C=58.73、H=10.10、N=6.85と一致した。
また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりジエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化モル分率を算出した結果、49.71%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0222】
製造例9
変性PAA−9(DAMAと、AAと、カルバモイル化AAとの三元共重合体(5/3/2))の製造
製造例2aにおいて、シアン酸ナトリウム水溶液273.04gおよび水酸化ナトリウム水溶液58.80gを用いた以外は製造例1と同様にして、濃度11.75%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンと、モノカルバモイルエチル化アリルアミンと、アリルアミンとの共重合体(共重合比5:3:2)水溶液817.70g(収率99%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0223】
製造例10
変性PAA−10(DAMAと、AAと、メトキシカルボニル化AAとの三元共重合体(5/3/2))の製造
製造例3において、炭酸ジメチル28.66gを用いた以外は実施例3と同様にして濃度19.33%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとメトキシカルボニル化アリルアミンとアリルアミンとの共重合体(共重合比5:3:2)水溶液494.19g(収率98%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0224】
製造例11
変性PAA−11(DAMAと、AAと、アセチル化AAとの三元共重合体(5/3/2))の製造
製造例4において、無水酢酸32.81gおよび水酸化ナトリウム水溶液25.20gを用いた以外は製造例4と同様にして、濃度13.74%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとアセチル化アリルアミンとアリルアミンとの共重合体(共重合比5:3:2)水溶液704.15g(収率100%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0225】
製造例12
変性PAA−12(DAMAと、AAと、モノカルバモイルエチル化AAとの三元共重合体(5/3/2))の製造
製造例5において、アクリルアミド44.78gを用いた以外は製造例5と同様にして、濃度17.26%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンと、モノカルバモイルエチル化アリルアミンとアリルアミンとの共重合体(共重合比5:3:2)水溶液611.07g(収率98%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0226】
製造例13
変性PAA−13(DAMAと、モノエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化AAと、AAとの三元共重合体(5/3/2))の製造
製造例7において、エチルグリシジルエーテル32.17gを用いた以外は製造例7と同様にして、濃度19.57%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンと、モノエトキシ−2−ヒドロキシプロピル化アリルアミンとアリルアミンとの共重合体(共重合比5:3:2)水溶液586.51g(収率100%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1800であった。
【0227】
製造例14
変性PAA−14(DAMAと、DMAAと、カルバモイル化AAとの三元共重合体(1/1/1))の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、および温度計を備えた1000mlの4つ口セパラブルフラスコ中に、濃度69.58%のN,N−ジアリルメチルアミン塩酸塩水溶液212.20gと、濃度63.45%のN,N−ジメチルアリルアミン塩酸塩水溶液191.66gと、濃度58.80%のモノアリルアミン塩酸塩水溶液159.10gと、蒸留水646.40g仕込んだ。このモノマー水溶液を65℃に加温し、ラジカル重合剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩54.24gを添加し、48時間の重合反応を行った。
【0228】
反応終了後、氷冷下で濃度50%の水酸化ナトリウム水溶液273.28gを滴下し、塩酸を中和した。中和終了後、減圧下(10.6kPa)、50℃で未反応モノマーを留去した。
【0229】
得られた溶液を電気透析に付し、脱塩し、濃度14.82%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとN,N−ジメチルアリルアミンとアリルアミンとの共重合体(重合比1:1:1)水溶液1504.87gを得た。
【0230】
得られた共重合体水溶液570.04gに、氷冷下で濃度35%の塩酸104.17gを滴下し、引き続き、50℃に加温して濃度7.5%のシアン酸ナトリウム水溶液300.35gを滴下し、24時間の反応を行った。
【0231】
このようにして得られた溶液を、電気透析に付し、脱塩し、濃度12.13%のフリータイプのN,N−ジアリルメチルアミンとN,N−ジメチルアリルアミンとカルバモイル化アリルアミンとの共重合体(重合比1:1:1)水溶液782.09g(収率96%)を得た。この共重合体の重量平均分子量は1700であった。
【0232】
この共重合体水溶液の一部を塩酸塩にし、イソプロパノール溶媒により再沈し、共重合体塩酸塩を得た。元素分析の結果は、C=51.83、H=9.13、N=14.97であった。これらの値は計算値C=52.03、H=9.28、N=15.17と一致した。また、共重合体塩酸塩を中和滴定よりカルバモイル化モル分率を算出した結果、31.84%であり、元素分析の結果とほぼ一致した。
【0233】
<クリアインク組成物の調製>
下記表1の組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、各インクを調製した。下記表1中の数値はインク中の含有量(質量%)を表す。また、変性ポリアリルアミン(表中では変性PAAと表記)は固形分の含有量(質量%)を表す。
さらに、インクA1〜A58で用いた界面活性剤は、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤であり、上記の式(I)において、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数であり、mが0の整数であり、nが1の整数である化合物と、上記の式(I)において、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物と、上記の式(I)において、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物とからなる界面活性剤である。前記界面活性剤は、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下であった。具体的には、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて、1Hz(=泡1個/1秒)の動的表面張力を測定したところ、前記水溶液の1Hzの動的表面張力は、24.6mN/mであった。
また、インクB1、B6〜B8、B9、およびB14〜B16で用いた界面活性剤(ポリオルガノシロキサン系)は、インクA1〜A58で用いたポリオルガノシロキサン系界面活性剤と同じものである。
インクB2およびB10に使用した、日信化学工業社製のアセチレングリコール系界面活性剤のサーフィノール104(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)は、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力は27mN/m以上であった。具体的には、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて、1Hz(=泡1個/1秒)の動的表面張力を測定したところ、前記水溶液の1Hzの動的表面張力は、27.8mN/mであった。
インクB3およびB11に使用した、日信化学工業社製のアセチレングリコール系界面活性剤のサーフィノール465(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物)は、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力は27mN/m以上であった。具体的には、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて、1Hz(=泡1個/1秒)の動的表面張力を測定したところ、前記水溶液の1Hzの動的表面張力は、27.5mN/mであった。
インクB4およびB12で用いた界面活性剤は、ビックケミージャパン社製のポリオルガノシロキサン系界面活性剤であるBYK347を使用し、インクB5およびB13で用いた界面活性剤は、ビックケミージャパン社製のポリオルガノシロキサン系界面活性剤であるBYK348を使用した。
【0234】
さらに、トリプロピレングリコールは、株式会社旭硝子社製のトリプロピレングリコールであり、トレハロースは、株式会社林原商事社製のトレハ微粉であり、AQUACER593はビックケミージャパン株式会社製のものを使用した。また、トリエチレングリコールモノメチルエーテルは、東邦化学工業株式会社製のハイモールTMを使用した。
【0235】
【表1】




【0236】
<着色剤を含むインク組成物の調製>(インクC1〜C8)
下記表2の組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、各インクを調製した。下記表2中の数値はインク中の含有量(質量%)を表す。なお、下記表2中のオキシエチルアクリレート系樹脂(オキシエチル樹脂)は、CAS No.72009−86−0で示されるオキシエチルアクリレート構造を有するモノマーをモノマー構成比率略75質量%含有する、分子量6900の樹脂である。
フルオレン系樹脂(フルオレン樹脂)は、CAS No.117344−32−8で示されるフルオレン骨格を有するモノマーをモノマー構成比率略50質量%含有する、分子量3300の樹脂である。
スチレンアクリル酸系樹脂(スチレンアクリル酸樹脂)は、分子量1600、酸価150の共重合体のものを用いた。
さらに、用いた界面活性剤は、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤であり、上記の式(I)において、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数であり、mが0の整数であり、nが1の整数である化合物と、上記の式(I)において、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物と、上記の式(I)において、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物とからなる界面活性剤である。前記界面活性剤は、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下であった。具体的には、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて、1Hz(=泡1個/1秒)の動的表面張力を測定したところ、前記水溶液の1Hzの動的表面張力は、24.6mN/mであった。トリプロピレングリコールは、株式会社旭硝子社製のトリプロピレングリコールであり、トレハロースは、株式会社林原商事社製のトレハ微粉である。トリエチレングリコールモノメチルエーテルは、東邦化学工業株式会社製のハイモールTMである。
【0237】
【表2】


※上記表2中、下記インクセットに含まれる「Y」は、顔料としてC.I.ピグメントイエロー74を含み、「Lm」は、顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19を含み、「Lc」は、顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を含み、そして「K」は、顔料としてC.I.ピグメントブラック7を含むインク組成物を表す。
【0238】
(1)印刷本紙での記録物評価
(1−1)インクビーディング(画質)の評価(ビーディング性)
上記で得られたY、K、Lc(「Y」は表2のインクC2を用い、「K」は表2のインクC3を用い、「Lc」は表2のインクC1を用いた)、およびクリアインク(以下、単に「CL」という場合もある)の各インク組成物をキャップ側のノズル列から順にY/Y/K/K/Lc/Lc/CL/CLとなるように、インクジェットプリンター(PX−20000、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着した。該プリンターは、ワイパーが、キャップ側のノズル列から順にノズル2列毎に分割しており、クリアインクのワイパーが、着色インクのノズル列をワイピングすることはない。また、該プリンターは、記録位置において、記録媒体を加熱することができるように、温度調節可能なプラテンヒーターを取り付ける改造を行った。
着弾時のドットサイズが3ngになるようにプリンターヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一主走査によるドット間隔が360×720dpiとなるように設定した。128g/mのOKT+(王子製紙株式会社製)に、解像度として、720×1440dpiでクリアインクおよびインクC1〜C3を塗布して画像を記録した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は3.1mg/inchであった。
ここで、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(式中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は1mmであった。
画像の記録は、25℃、45%RHの環境下において実施した。まず、クリアインク(平均ドット径:50μm)をDuty20%またはDuty40%で塗布し、表3に示す実施例1〜29および比較例30〜38にのみ加熱工程を設けてクリアインクを塗布した。加熱工程は42℃に加熱したプラテンによって行った。次に、塗布したクリアインク上に、インクC1〜C3を用いて、同じDutyの単色同士を混合した2次色の画像として評価した。したがって、例えば、「2次色として100%Duty」とは、異なる二つの単色インクをそれぞれDuty50%で記録したことを意味する。また、前記評価における上記クリアインクによる被覆率を算出したところ63%(Duty20%)および126%(Duty40%)であった。上記の「2次色の画像」は、C1〜C3の全ての組み合わせ(3通り)で記録した画像である。
【0239】
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。結果を表3に示す。なお、インクC3をインクC4に替えて評価を行った場合も評価結果は同じであった。
S:2次色として200%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
AA:2次色として180%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
A:2次色として160%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
B:2次色として140%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
C:2次色として120%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
【0240】
(1−2)ドット径の評価
解像度、インクC1〜C3のDutyを変更した以外は、上記(1−1)インクビーディングの評価と同様に画像を記録した。
具体的な変更点としては、一主走査によるドット間隔が720×360dpiとなるように設定し、解像度を720×720dpiとした。インクC1〜C3のDutyを1%として画像を記録した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は1.6mg/inchであった。
【0241】
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。結果を表3に示す。なお、インクC3をインクC4に替えて評価を行った場合も評価結果は同じであった。
S:ドット径が40ミクロン未満である。
AA:ドット径が40ミクロン以上、50ミクロン未満である。
A:ドット径が50ミクロン以上、60ミクロン未満である。
B:ドット径が60ミクロン以上、70ミクロン未満である。
C:ドット径が70ミクロン以上である。
【0242】
(1−3)カール性の評価
使用記録媒体、解像度、インクC1のDuty、および記録画像を変更した以外は、上記(1−1)インクビーディングの評価と同様に画像を記録した。
具体的な変更点としては、記録媒体として、73.3g/mのOKT+(王子製紙株式会社製)および60g/mのXeroxP(富士ゼロックス株式会社製)を使用した。一主走査によるドット間隔が360×720dpiとなるように設定し、解像度を720×720dpiとした。インクC1のDutyを100%とし、周辺6mm余白のベタ画像を記録した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は1.6mg/inchであった。
【0243】
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。結果を表3に示す。なお、インクC1を、インクC2〜C4のいずれか一つに替えて評価を行っても結果は同様であった。
2種類の上記記録用紙において、それぞれ、机から記録用紙の各四隅までの反り返りを測定し平均値を算出した:平均値(OKT+)および平均値(XeroxP)。得られた2種類の記録用視の反り返りの平均値について、さらに平均値(ALL)を算出し、評価の指標とした。
AA:前記平均値(ALL)が、5mm以下である。
A:前記平均値(ALL)が、10mm以下である。
B:前記平均値(ALL)が、10mm以上20mm以下である。
C:前記平均値(ALL)が、20mm以上である。
【0244】
【表3】



【0245】
(2)フィルムでの記録物評価
(2−1)インクビーディング(画質)の評価(ビーディング性)
上記で得られたY、K、Lc(「Y」は表2のインクC6を用い、「K」は表2のインクC7を用い、「Lc」は表2のインクC5を用いた)、およびクリアインク(以下、単に「CL」という場合もある)の各インク組成物をキャップ側のノズル列から順にY/Y/K/K/Lc/Lc/CL/CLとなるように、インクジェットプリンター(PX−20000、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着した。該プリンターは、ワイパーが、キャップ側のノズル列から順にノズル2列毎に分割しており、クリアインクのワイパーが、着色インクのノズル列をワイピングすることはない。また、該プリンターは、記録位置において、記録媒体を加熱することができるように、温度調節可能なプラテンヒーターを取り付ける改造を行った。
着弾時のドットサイズが3ngになるようにプリンターヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一主走査によるドット間隔が360×720dpiとなるように設定した。ルミラーS10(100ミクロン厚)(東レ株式会社製)に、解像度として、720×1440dpiでクリアインクおよびインクC5〜C7を塗布して画像を記録した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は3.1mg/inchであった。
ここで、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100(式中、「実記録ドット数」は単位面積当たりの実記録ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は1mmであった。
画像の記録は、25℃、45%RHの環境下において実施した。まず、クリアインク(平均ドット径:50μm)をDuty20%またはDuty40%で塗布し、表4に示す実施例30〜58および比較例77〜85にのみ加熱工程を設けてクリアインクを塗布した。加熱工程は42℃に加熱したプラテンによって行った。次に、塗布したクリアインク上に、インクC5〜C7を用いて、同じDutyの単色同士を混合した2次色の画像として評価した。したがって、例えば、「2次色として100%Duty」とは、異なる二つの単色インクをそれぞれDuty50%で記録したことを意味する。また、前記評価における上記クリアインクによる被覆率を算出したところ63%(Duty20%)および126%(Duty40%)であった。また、上記の「2次色の画像」は、C5〜C7の全ての組み合わせ(3通り)で記録した画像である。
【0246】
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。結果を表4に示す。なお、インクC7をインクC8に替えて評価を行っても結果は同様であった。
S:2次色として200%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
AA:2次色として180%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
A:2次色として160%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
B:2次色として140%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
C:2次色として120%Dutyまでがビーディングなく再現できている。
【0247】
(2−2)フィルム線幅の評価
解像度および記録画像を変更した以外は、上記(2−1)インクビーディングの評価と同様に画像を記録した。
具体的な変更点としては、一主走査によるドット間隔が720×360dpiとなるように設定し、解像度を720×180dpiとし、記録画像を主走査方向の罫線とした。この際、単色のDuty100%のインク付着量は0.4mg/inchであった。
【0248】
得られた罫線について、下記の基準により評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、インクC7をインクC8に替えて評価を行っても結果は同様であった。
A:線幅が60ミクロン以上70ミクロン未満である。
B:線幅が70ミクロン以上である。
C:落花生模様になり、線幅が一定ではない。
【0249】
【表4】



【符号の説明】
【0250】
1 インクジェット式プリンター
2 フレーム
3 プラテン
4 記録媒体送りモーター
5 ガイド部材
6 キャリッジ
7 タイミングベルト
8 キャリッジモーター
9 ヘッド
10 インクカートリッジ
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリアインク組成物を用いるインクジェット記録方法であり、
前記クリアインク組成物の塗布工程と、
塗布した前記クリアインク組成物の加熱工程と
を含み、かつ前記クリアインク組成物が、アミノ基含有樹脂と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、20℃、相対湿度が60%において固体である湿潤剤とを含む、インクジェット記録方法。
【請求項2】
前記湿潤剤がトレハロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(ポリ)オキシアルキレングリコールをさらに含み、前記(ポリ)オキシアルキレングリコールが、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコールからなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記(ポリ)オキシアルキレングリコールと、前記湿潤剤との含有量の和が、インク組成物に対し、12.0質量%以上60.0質量%以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アミノ基含有樹脂が、変性ポリアリルアミンであり、下記式で表される繰り返し単位(a)および(d)を必須の構成モノマーとして含み、かつ、(b)および/または(c)を任意の構成モノマーとして含んでなるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法:
【化1】

(式中、
、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、
Xは下記(i)〜(v)のいずれかであり、
(i) −CONH
(ii) −COOR(ここで、Rは炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基を表す)、
(iii)−COR(ここで、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す)、
(iv) −CHCH(R)−A(ここで、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aは−CONR(RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基(このアルキル基は、ヒドロキシ基、ケト基、炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基、ジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基、またはトリ(炭素数1〜4のアルキル)アンモニウム基からなる群から選択される基により置換されていてもよい)を表すか、またはNRは一緒になってピペリジノ基またはモルホリノ基の環状アミノ基を表す。)、−CN、およびCOOR(ここで、Rは炭素数1〜8のアルキル基(このアルキル基は、ヒドロキシ基、ケト基、炭素数1〜4のモノアルキルアミノ基、ジ(炭素数1〜4のアルキル)アミノ基、およびトリ(炭素数1〜4のアルキル)アンモニウム基からなる群から選択される基で置換されていてもよい)からなる群から選択されるものである)、または、
(v) −CHCH(OH)−B(ここで、Bは炭素数1〜8のアルキル基(このアルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基、およびアルケニルオキシ基からなる群から選択される基により置換されていてもよい)を表す。)、
Yが、上記Xと同じ意味を表すか、または水素原子を表し、
XおよびYは、繰り返し単位ごとに同じであっても、異なっていてもよい)。
【請求項6】
インク組成物に対して、
前記(ポリ)オキシアルキレングリコールの含有量が6質量%以上18質量%以下であり、
前記湿潤剤の含有量が12質量%以上36質量%以下であり、
前記水の含有量が30質量%以上74質量%以下であり、かつ、
前記(ポリ)オキシアルキレングリコールと前記湿潤剤との含有量の和と、前記水との含有量比が5:3〜1:4である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記難水溶性のアルカンジオールと、前記(ポリ)オキシアルキレングリコールおよび前記湿潤剤の含有量の和との含有量比が1:5〜1:20である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱工程が、30〜160℃において行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−106439(P2012−106439A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258042(P2010−258042)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】