説明

インクジェット記録材料

【課題】インク受理層にひび割れがなく、インク受理層表面に凹凸を有し、かつ顔料インクおよび染料インクの両方に適性を有するインクジェット記録材料を提供すること。
【解決手段】吸収性支持体の少なくとも片面に主成分としてアルミナ水和物を含有し、かつ水溶性バインダーを含有するインク受理層の塗液を塗工・乾燥して形成される半光沢インクジェット記録材料において、該吸収性支持体と該インク受理層の間に少なくとも微粒子、ホウ酸またはホウ酸塩、およびガラス転移点が50℃よりも高いラテックスを含有するアンダー層塗工液を塗工・乾燥して形成したアンダー層を有することを特徴とするインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録材料に関するものであり、特に顔料および染料インクに適した表面に特徴的な凹凸を有する半光沢インクジェット記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性インクを微細なノズルから記録体表面に向かって噴出し、記録体表面上に画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音の少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置よりも記録コストが低いことなどの理由により、端末プリンター、ファクシミリ、プロッタ、帳票印刷等で広く利用されている。
【0003】
これらのインクジェットプリンターには、一般的に水性のインクが使用されている。この水性インクは染料を用いた染料インクと顔料を用いた顔料インクとに分類され、鮮明性の点から主に染料インクが使用されている。しかし、染料インクは長期に保存・展示すると紫外線、オゾン等により酸化され、画像が退色し、見栄えが悪化し、十分な印字耐候性が得られないという欠点が指摘されるようになってきている。
【0004】
顔料インクは、印字耐光性に優れるという特徴を有する代わりに、染料インクの染料の大きさに比べ、顔料インクの顔料は非常に大きな粒子のために、従来の染料インク用のインクジェット記録材料では、鮮明な印字画像が得られないという問題があった。そこで、染料インク用のインクジェット記録材料、顔料インク用のインクジェット記録材料のそれぞれが開発されているが、染料インクにも顔料インクにも良好な印刷適性を有するインクジェット記録材料への要望が高かった。
【0005】
一方、インクジェット記録材料としては、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。例えば、特開昭59−185690号公報、特開昭62−259882号公報には、非晶質合成シリカを用いた高インク吸収性、高発色性のインクジェット記録材料の製造方法が開示されている。これらの材料はすべて表面光沢の低い、いわゆるマット調のインクジェット記録材料が主体である。
【0006】
特開昭62−158084号公報、特開平2−274587号公報には、最表層を加熱した鏡面を有するキャストドラムに圧着し、最表層がドラム鏡面を写し取ることによる高光沢を有するインクジェット記録材料の製造方法が開示されている。
【0007】
上記の様な様々なインクジェットプリンターやインクジェット記録材料の普及、さらには高機能パーソナルコンピューターやデジタルカメラの普及に伴い、風景等の写真をインクジェットプリンターでインクジェット記録材料に印刷し、作品にするユーザーも増加している。そのため、インクジェット記録材料そのものの風合いも作品の一部として見なされ、上記の様なマットや高光沢のインクジェット記録材料のみならず、マット調インクジェット記録材料に比べ発色が良く、高光沢インクジェット記録材料の様に表面への光の写り込みが少なく、特徴的な表面の凹凸を持った半光沢インクジェット記録材料が要望されている。
【0008】
実際、これまでにも支持体上に光沢を有する塗工層を設けたインクジェット記録材料を、マットスーパーロール処理し、記録面の75度鏡面光沢度(JIS−Z8741)を20%〜60%に調整してなる半光沢インクジェット記録材料(例えば、特許文献1参照)やアルミナ水和物からなるインク受理層中に平均粒径1〜20μmのマット剤を含有させることで表面光沢をコントロールした半光沢インクジェット記録材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、支持体に型押しにより凹凸を施し、その上にインク受理層を設けることで凹凸のあるインクジェット記録材料も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、マットスーパーロール処理した場合には、光沢を有する塗工層表面にひび割れが生じ、そのひび割れに顔料インクが落ち込むために顔料インク適性が低下したり、アルミナ水和物からなるインク受理層中にマット剤を添加した場合には、インク受理層の透明性が低下するために染料インクで印字したときに目的の発色性が得られなかったり、インク受理層表面にひび割れが発生するために、顔料インク適性が低下することがあった。また、支持体に型押しを行った後に、インク受理層を設けてインク受理層表面に凹凸を形成させる場合では、基材に樹脂被覆紙を用いたときには凹凸が反映されるものの、吸収性支持体を用いたときには、インク受理層を塗設した際にインク受理層塗液中の水分により、凹凸が戻り、インク受理層表面に凹凸が反映されないことがあった。
【特許文献1】特開2000−351272号公報
【特許文献2】特開2001−341409号公報
【特許文献3】特開2001−225545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、インク受理層にひび割れを生じさせず、インク受理層表面に特徴的な凹凸を有する顔料インクおよび染料インクの両方に適した半光沢インクジェット記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、吸収性支持体の少なくとも片面に主成分としてアルミナ水和物を含有し、かつ水溶性バインダーを含有するインク受理層の塗液を塗工・乾燥して形成される半光沢インクジェット記録材料において、該吸収性支持体と該インク受理層の間に少なくとも微粒子、ホウ酸またはホウ酸塩、およびガラス転移点が50℃よりも高いラテックスを含有するアンダー層塗工液を塗工・乾燥して形成したアンダー層を有するインクジェット記録材料により解決した。
【0012】
該アンダー層において、該ラテックスと該微粒子の比率が1:1〜10:1であり、かつ該アンダー層の乾燥固形分塗工量が3g/m〜10g/mであることが好ましい。
【0013】
該ラテックスがウレタン樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインクジェット記録材料は、インク受理層にひび割れがなく、インク受理層表面に特徴的な凹凸を有し、かつ染料インクおよび顔料インクの両方に適性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のインクジェット記録材料を詳細に説明する。
【0016】
本発明のインクジェット記録材料は半光沢タイプのインクジェット記録材料であり、JIS−P8142で測定される75度鏡面光沢度が20%以上55%以下の表面光沢を有するものをいう。
【0017】
本発明者は、半光沢インクジェット記録材料において、顔料インク適性を向上させる方法として、インク受理層表面にひび割れをなくすことにより、顔料インク中の溶媒と色材顔料とを分離し、顔料インク中の色材顔料をインク受理層表面近傍に分布させ、溶媒分をインク受理層に浸透させることで、顔料インク適性の改善が可能であると考えた。
【0018】
また、半光沢インクジェット記録材料において、染料インク適性を向上させる方法として、インク受理層が透明性を有することで、染料インクがインク受理層中に浸透した状態でも発色性が得られると考えた。
【0019】
そこで、本発明者は、半光沢インクジェット記録材料において、インク受理層表面に凹凸を設けて表面光沢をコントロールし、インク受理層の透明性を損なうことなく半光沢面を形成させることで、染料インク適性を維持し、かつインク受理層を設ける際に、ひび割れをなくすことで、顔料インク適性を向上させる手法を鋭意検討した結果、吸収性支持体の少なくとも片面に主成分としてアルミナ水和物を含有し、かつ水溶性バインダーを含有するインク受理層の塗液を塗工・乾燥して形成される半光沢インクジェット記録材料において、該吸収性支持体と該インク受理層の間に少なくとも微粒子、ホウ酸またはホウ酸塩、およびガラス転移点が50℃よりも高いラテックスからなるアンダー層塗工液を塗工・乾燥して形成したアンダー層を設けることで微細な凹凸を形成させ、風合いある半光沢インクジェット記録材料を作製できることを見いだした。
【0020】
本発明に係わる吸収性支持体について説明する。
【0021】
本発明に係わる吸水性支持体は透明、半透明、および不透明のいずれであっても良く、紙、各種不織布、織布など、あるいはこれらを組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
ただし、本発明に係わる吸収性支持体には、型押し等の処理により凹凸を施したものは使用しない。
【0022】
以下に本発明に係わるアンダー層について説明する。
【0023】
本発明においてアンダー層とは、吸収性支持体とインク受理層の間に形成され、インク受理層を設けた際に、特徴的な凹凸を形成させ、かつインク受理層の表面のひび割れを抑制する役割を担うための層をいう。
【0024】
該アンダー層は、少なくとも微粒子、ホウ酸またはホウ酸塩、およびガラス転移点が50℃よりも高いラテックスを含有する塗工液から形成される。
【0025】
本発明に用いられる微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの白色無機顔料などを用いることができる。上記の無機顔料の中でも、多孔性無機顔料が好ましく、多孔性非晶質合成シリカ、多孔性炭酸マグネシウムなどが挙げられ、特に合成非晶質シリカが好ましい。
【0026】
本発明のアンダー層に用いる微粒子の粒子径は、1〜15μmであることが好ましく、2〜12μmであることがより好ましい。粒子径を変更することで、インク受理層表面の凹凸形状および光沢のコントロールが可能となる。
【0027】
本発明においてラテックスとは、実質的に非水溶性の高分子化合物が水中に分散した液状物を指し、一旦乾燥した後は熱水にも実質的に溶解しない点で水溶性高分子化合物の水溶液と明確に区別される。その例としては、酢酸ビニル重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、イソプレン共重合体、クロロプレン共重合体、ウレタン系重合体、およびこれらの重合体を構成する単量体の2種以上をランダム的、グラフト的、ブロック的に組み合わせた共重合体などの合成高分子化合物の水性分散液や、天然ゴムラテックス等が挙げられる。上記のラテックスの中でも、表面の凹凸をコントロールすることができるウレタンラテックスが好ましい。
【0028】
本発明に使用するラテックスはガラス転移点(Tg)が50℃よりも高いものである。表面のひび割れを抑制し、表面の凹凸を得るためには、ガラス転移点(Tg)が55℃以上100℃以下のものを用いるのが好ましい。50℃以下のものを用いた場合には、アンダー層中のホウ酸またはホウ酸塩とインク受理層中の水溶性バインダーの反応を阻害するため、インク受理層表面にひび割れが発生し、顔料インク適性が低下する。ラテックスのガラス転移点(Tg)を50℃よりも高いものを使用することで、ホウ酸等の拡散がスムースとなり、インク受理層中の水溶性バインダーと良好に反応し、インク受理層表面にひび割れが発生せず、顔料インク適性が向上する。
【0029】
本発明において用いられるホウ酸としては、オルトホウ酸だけでなくメタホウ酸、次ホウ酸等が使用できる。ホウ酸塩はこれらの可溶性塩が好ましく、具体的には、Na・10HO、NaBO・4HO、K・5HO、NHHB・3HO、NHBO等が挙げられる。
【0030】
ホウ酸またはホウ酸塩の添加量は、HBO換算で、ホウ酸またはホウ酸塩を添加するアンカー層に含有するラテックスに対して1〜15質量%、好ましくは1.5〜10質量%である。
【0031】
本発明において、アンダー層中のラテックスと微粒子の固形分比率は1:1〜10:1であり、かつアンダー層の乾燥固形分塗工量が3g/m〜10g/mであることが好ましい。より好ましくは、ラテックスと微粒子の比率は1.5:1〜7:1であり、かつアンダー層の乾燥固形分塗工量が4g/m〜8g/mである。この範囲にすることで、インク受理層表面に凹凸を効果的に形成させ、光沢値をコントロールすることができ、好ましい。アンダー層中のラテックスと微粒子の固形分比率とアンダー層の乾燥固形分塗工量が上記の範囲以外では、インク受理層表面の凹凸が効果的に形成することができない。
【0032】
以下に本発明に係わるインク受理層について説明する。
【0033】
本発明のインク受理層には、アルミナ水和物が主成分として用いられる。
【0034】
本発明において、主成分とは、インク受理層に含有される顔料の総量の50質量%より多いことを表す。
【0035】
本発明に用いられるアルミナ水和物は、下記の一般式により表すことができる。Al・nHOアルミナ水和物は組成や結晶形態の違いにより、ジプサイト、バイアライト、ノルストランダイト、ベーマイト、ベーマイトゲル(擬ベーマイト)、ジアスポア、無定形非晶質等に分類される。中でも、上記の式中、nの値が1である場合はベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1を超え3未満である場合は擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが3以上では非晶質構造のアルミナ水和物を表す。特に、本発明に好ましいアルミナ水和物は、少なくともnが1を超え3未満の擬ベーマイト構造のアルミナ水和物である。
【0036】
本発明に用いられるアルミナ水和物の形状は、平板状、繊維状、針状、球状、棒状等のいずれでも良く、インク吸収性の観点から好ましい形状は平板状である。平板状のアルミナ水和物は、平均アスペクト比3〜8であり、好ましくは平均アスペクト比が3〜6である。アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で表される。ここで粒子の直径とは、アルミナ水和物を電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積に等しい円の直径を表す。アスペクト比が上記の範囲より小さい場合は、十分なインク吸収性が得られない場合がある。一方アスペクト比が上記の範囲を超える場合は、粒子を揃えてアルミナ水和物を製造することが困難となる。
【0037】
本発明に用いられるアルミナ水和物は、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等公知の方法によって製造することができる。また、アルミナ水和物の粒子径、細孔径、細孔容積、比表面積等の物性は、析出温度、熟成温度、熟成時間、液のpH、液の濃度、共存化合物等の条件によって制御することができる。
【0038】
アルコキシドからアルミナ水和物を得る方法としては、特開昭57−88074号公報、特開昭62−56321号公報、特開平4−275917号公報、特開平6−64918号公報、特開平7−10535号公報、特開平7−267633号公報、米国特許第2,656,321号明細書等にアルミニウムアルコキシドを加水分解する方法として開示されている。これらのアルミニウムアルコキシドとしてはイソプロポキシド、2−ブトキシド等が挙げられる。
【0039】
本発明で使用するアルミナ水和物において平均一次粒子径が3nm〜25nmのアルミナ水和物が好ましい。特に好ましい一次粒子径は5nm〜20nmのものである。またこれらが凝集した二次粒子径としては、50nm〜200nmにするのが好ましい。
【0040】
本発明のインク受理層には、特開平8−72387公報等に記載されている気相法アルミナ、特開昭60−219083号公報、特開昭61−19389号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−178074号公報、特開平5−51470号公報等に記載されているようなコロイダルシリカ、特公平4−19037号公報、特開昭62−286787号公報に記載されているようなシリカ/アルミナハイブリッドゾル、特開平10−119423号公報、特開平10−217601号公報に記載されているような、気相法シリカを高速ホモジナイザーで分散したようなシリカゾル等を本発明を損なわない限りにおいて併せて用いることができる。
【0041】
本発明のインク受理層に用いられる水溶性バインダーとしてはポリビニルアルコール、澱粉およびその変性物、ゼラチンおよびそれらの変性物、カゼイン、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミン等の天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、カチオン変性、シラノール変性等のポリビニルアルコールの変性物、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸またはその共重合体等を挙げられ、単独あるいは併用して用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの親水性バインダーの配合量の総和は、無機超微粒子に対して、4〜25質量%であることが好ましく、特に6〜20質量%であることが好ましい。
【0042】
本発明のインク受理層に用いられる、水溶性バインダーとしては、表面のひび割れを抑制する観点から、アンダー層中のホウ酸およびその塩と反応性を持つポリビニルアルコール、またはシリル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体が好ましい。アルミナ水和物との混合性、塗液粘度の調整、および成膜性等の点で重合度2000以上、ケン化度が88%以上96%未満のポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0043】
本発明において、インク受理層の乾燥塗工量は4〜20g/mの範囲が好ましい。インク吸収性および表面のひび割れの点において、特に6〜18g/mの範囲がより好ましい。
【0044】
本発明において、インク受理層には、上記の他、添加剤として、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤力増強剤、乾燥紙力増強剤などを適宜配合することもできる。
【0045】
本発明においてアンダー層およびインク受理層は、吸収性支持体上に各塗液を順次、塗布・乾燥して形成される。各層を設ける際に塗工する方法は特に限定されず、公知の塗工方法を用いることができる。例えば、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スライドリップコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、サイズプレスなどの各種装置により塗工することができる。
【0046】
本発明において、塗液塗工後に乾燥する方法は、特に限定されず、公知の乾燥方法を用いることができるが、特に熱風を吹きつける方法、赤外線を照射する方法など、加熱により乾燥する方法は、生産性が良く好ましく用いられる。
【0047】
本発明において、アンダー層またはインク受理層を塗工、乾燥後、表面光沢をさらにコントロールする目的で、カレンダー処理により、平滑化しても良い。その際のカレンダー処理装置としては、グロスカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどが挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例に於いて示す「部」および「%」は特に明示しない限り質量部および質量%を示す。
【0049】
実施例に用いたアンダー層中に含まれる微粒子の平均二次粒子径はレーザー光回折・散乱法(マイクロトラック9320HRA、Leeds&Northrup社製)にて測定した。
【0050】
<支持体1>
濾水度450mlCSFのLBKP70部、濾水度450mlCSFのNBKP30部からなる木材パルプ100部、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が30/35/35の顔料5部、市販アルキルケテンダイマー0.1部、市販カチオン系アクリルアミド0.03部、市販カチオン化澱粉1.0部、硫酸バンド0.5部を水に混合して1質量%スラリーを調製後、長網抄紙機を用いて坪量105g/mで抄造し、透気性およびインクの溶媒の吸収性を有する紙支持体である支持体1を得た。
【0051】
<支持体2>
LBKP50部とNBSP50部の混合物を濾水度300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、紙力増強剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1質量%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、紙基体を作製し、さらに紙基体の表面(顔料層及びインク受理層が設けられる側)に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100%の樹脂に対して、5%の割合でアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で20μmの厚さになるように押し出しコーティングした後、微粗面化処理したクーリングロールを用いて表面光沢度を60%とし、透気性およびインクの溶媒の吸収性を有さない支持体である支持体2を作製した。
【0052】
<アンダー層塗液1>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度19.7%のアンダー層塗液1を調整した。
【0053】
<アンダー層塗液2>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)60部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度24.2%のアンダー層塗液2を調整した。
【0054】
<アンダー層塗液3>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)12部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度16.7%のアンダー層塗液3を調整した。
【0055】
<アンダー層塗液4>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)6部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度15.6%のアンダー層塗液4を調整した。
【0056】
<アンダー層塗液5>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)3部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度15.1%のアンダー層塗液5を調整した。
【0057】
<アンダー層塗液6>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)120部を添加・混合し、固形分濃度18.0%のアンダー層塗液6を調整した。
【0058】
<アンダー層塗液7>
水440部に四ホウ酸ナトリウム十水和物16部(HBO換算で2.59部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度14.6%のアンダー層塗液7を調整した。
【0059】
<アンダー層塗液8>
水110部に四ホウ酸ナトリウム十水和物4部(HBO換算で0.65部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度24.5%のアンダー層塗液8を調整した。
【0060】
<アンダー層塗液9>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−707)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度19.7%のアンダー層塗液9を調整した。
【0061】
<アンダー層塗液10>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78F)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度19.7%のアンダー層塗液10を調整した。
【0062】
<アンダー層塗液11>
水275部にホウ酸10部を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分34%のスチレン−アクリルラテックス(DIC製ボンコートCP−8380、Tg60℃)176部を添加・混合し、固形分濃度20.3%のアンダー層塗液11を調整した。
【0063】
<アンダー層塗液12>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分29%のアクリルラテックス(中央理科工業社製SA−513、Tg60℃)207部を添加・混合し、固形分濃度21.1%のアンダー層塗液12を調整した。
【0064】
<アンダー層塗液13>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分40%のアクリルラテックス(ニチゴー・モビニール社製モビニール790、Tg102℃)150部を添加・混合し、固形分濃度24.0%のアンダー層塗液13を調整した。
【0065】
<アンダー層塗液14>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度12.9%のアンダー層塗液14を調整した。
【0066】
<アンダー層塗液15>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分27%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス840、Tg5℃)223部を添加・混合し、固形分濃度20.4%のアンダー層塗液15を調整した。
【0067】
<アンダー層塗液16>
水220部に四ホウ酸ナトリウム十水和物8部(HBO換算で1.30部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分40%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス820、Tg46℃)150部を添加・混合し、固形分濃度24.0%のアンダー層塗液16を調整した。
【0068】
<アンダー層塗液17>
水220部に湿式合成シリカ(水澤社製ミズカシルP−78D)30部を添加した後ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いで固形分25%のウレタンラテックス(第一工業製薬社製スーパーフレックス830、Tg68℃)240部を添加・混合し、固形分濃度18.4%のアンダー層塗液17を調整した。
【0069】
<インク受理層塗液1>
水400部に、60%硝酸2部、擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物(平均一次粒子径15nm、BET法による比表面積160m/g)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型撹拌機を使用して、20.2%のアルミナ水和物分散液を作製した。こうして得たアルミナ水和物分散液502部、4%ホウ酸水溶液10部、8%ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500)100部、界面活性剤0.3部、水34部を混合し、固形分濃度17.0%のインク受理層塗液1を調製した。尚、レーザー光回折・散乱法にて測定したアルミナ水和物微粒子の平均二次粒子径は150nmであった。
【0070】
(実施例1)
上記で作製した支持体1の上にアンダー層塗液1を乾燥固形分7g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、熱風により乾燥した。次いでその顔料層の上にインク受理層塗液1をエアーナイフコーターにて乾燥固形分15g/mになるように塗工、熱風により乾燥して設けた後、ソフトカレンダー処理を行い、実施例1のインクジェット記録材料を作製した。
【0071】
(実施例2)
上記で作製した支持体1の上にアンダー層塗液1を乾燥固形分1g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、熱風により乾燥した。次いでその顔料層の上にインク受理層塗液1をエアーナイフコーターにて乾燥固形分15g/mになるように塗工、熱風により乾燥して設けた後、ソフトカレンダー処理を行い、実施例2のインクジェット記録材料を作製した。
【0072】
(実施例3)
上記で作製した支持体1の上にアンダー層塗液1を乾燥固形分3g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、熱風により乾燥した。次いでその顔料層の上にインク受理層塗液1をエアーナイフコーターにて乾燥固形分15g/mになるように塗工、熱風により乾燥して設けた後、ソフトカレンダー処理を行い、実施例3のインクジェット記録材料を作製した。
【0073】
(実施例4)
上記で作製した支持体1の上にアンダー層塗液1を乾燥固形分10g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、熱風により乾燥した。次いでその顔料層の上にインク受理層塗液1をエアーナイフコーターにて乾燥固形分15g/mになるように塗工、熱風により乾燥して設けた後、ソフトカレンダー処理を行い、実施例3のインクジェット記録材料を作製した。
【0074】
(実施例5)
上記で作製した支持体1の上にアンダー層塗液1を乾燥固形分12g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、熱風により乾燥した。次いでその顔料層の上にインク受理層塗液1をエアーナイフコーターにて乾燥固形分15g/mになるように塗工、熱風により乾燥して設けた後、ソフトカレンダー処理を行い、実施例5のインクジェット記録材料を作製した。
【0075】
(実施例6)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液2を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例6のインクジェット記録材料を作製した。
【0076】
(実施例7)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液3を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例7のインクジェット記録材料を作製した。
【0077】
(実施例8)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液4を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例8のインクジェット記録材料を作製した。
【0078】
(実施例9)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液5を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例9のインクジェット記録材料を作製した。
【0079】
(実施例10)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液6を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例10のインクジェット記録材料を作製した。
【0080】
(実施例11)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液7を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例11のインクジェット記録材料を作製した。
【0081】
(実施例12)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液8を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例12のインクジェット記録材料を作製した。
【0082】
(実施例13)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液9を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例13のインクジェット記録材料を作製した。
【0083】
(実施例14)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液10を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例14のインクジェット記録材料を作製した。
【0084】
(実施例15)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液11を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例15のインクジェット記録材料を作製した。
【0085】
(実施例16)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液12を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例16のインクジェット記録材料を作製した。
【0086】
(実施例17)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液13を用いた以外は実施例1と同一条件で実施例17のインクジェット記録材料を作製した。
【0087】
(比較例1)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液14を用いた以外は実施例1と同一条件で比較例1のインクジェット記録材料を作製した。
【0088】
(比較例2)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液15を用いた以外は実施例1と同一条件で比較例2のインクジェット記録材料を作製した。
【0089】
(比較例3)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液16を用いた以外は実施例1と同一条件で比較例3のインクジェット記録材料を作製した。
【0090】
(比較例4)
実施例1でアンダー層塗液1を用いる代わりにアンダー層塗液17を用いた以外は実施例1と同一条件で比較例4のインクジェット記録材料を作製した。
【0091】
(比較例5)
実施例1で支持体1を用いる代わりに支持体2を用いた以外は実施例1と同一条件で比較例5のインクジェット記録材料を作製した。
【0092】
(比較例6)
上記で作製した支持体1の上にインク受理層塗液1をエアーナイフコーターにて乾燥固形分15g/mになるように塗工、熱風により乾燥して設けた後、ソフトカレンダー処理を行い、比較例6のインクジェット記録材料を作製した。
【0093】
<光沢度>
インクジェット記録材料の表面光沢は、インク受理層面の無印字部分についてJIS P8142に従って75度鏡面光沢度を測定した。
【0094】
<表面凹凸の評価>
インクジェット記録材料のインク受容層表面における凹凸の明瞭性を目視により評価し次の4段階に分類した。ここで、Dは実用上問題があるレベルである。
A;明らかに凹凸を認識できる
B;よく見ると凹凸を認識できる。
C;見る角度により凹凸を確認できる
D;凹凸が認識できない。もしくはザラツキ感、またはテカリ感がある。
【0095】
<染料インク適性の評価>
キヤノン社製インクジェットプリンター(PIXUS 850i)により所定の評価画像を印刷し、各記録媒体のインク吸収性を、画像の細部の判読性を基準とし次の4段階に分類した。ここで、Dは実用上問題があるレベルである。
A;印画部に色ムラや発色性不良がなく、非常に良好
B;印画部に若干の色ムラが見られるものの、発色性不良はなく、良好
C;印画部に色ムラが散見され、一部発色性不良が見られる
D;印画部に著しい色ムラが視認でき、インクの落ち込みにより発色性も不良
【0096】
<顔料インク適性の評価>
セイコーエプソン社製インクジェットプリンター(PX−7500;顔料インク使用)により黒のグラデーションパターン(100%−0%階調)を印刷し、各記録媒体の顔料インク適性を、画像の色ムラや発色性を基準とし次の4段階に分類した。ここでDは実用上問題があるレベルである。
A;印画部に色ムラや発色性不良がなく、非常に良好
B;印画部に若干の色ムラが見られるものの、発色性不良はなく、良好
C;印画部に色ムラが散見され、一部発色性不良が見られる
D;印画部に著しい色ムラが視認でき、インクの落ち込みにより発色性も不良
【0097】
<ひび割れ評価>
インク受理層表面のひび割れに関しては、各記録材料のインク受理層塗工面に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンター(PX−7500;顔料インク使用)を用いて、黒のベタ印字を行った。塗層表面のひび割れは、印字部を光学顕微鏡で観察し、下記の基準により4段階に分類した。C以上であれば実用上問題ないレベルである。
A;全くひび割れが認められない。
B;小さいひび割れが少し認められる。
C;やや大きめのひび割れがあるものの、肉眼では認識できない。
D;肉眼ではっきり認識できる。
【0098】
【表1】

【0099】
表1中、実施例1〜17に示す様に、吸収性支持体の少なくとも片面に主成分としてアルミナ水和物を含有し、かつ水溶性バインダーを含有するインク受理層の塗液を塗工・乾燥して形成される半光沢インクジェット記録材料において、該吸収性支持体と該インク受理層の間に少なくとも微粒子、ホウ酸またはホウ酸塩、およびガラス転移点が50℃よりも高いラテックスからなるアンダー層塗工液を塗工・乾燥して形成したアンダー層が設けることで、インク受理層にひび割れがなく、インク受理層表面に凹凸を有し、かつ染料インクおよび顔料インクの両方に適性を有するインクジェット記録材料を得ることが可能となる。
【0100】
実施例1〜10の比較より、アンダー層において、ラテックスと微粒子の比率が1:1〜10:1であり、かつアンダー層の乾燥固形分塗工量が3g/m〜10g/mであると、表面凹凸、染料・顔料インクの適性が向上し、好ましい。
【0101】
実施例1、15〜17の比較より、ラテックスがウレタン樹脂であると、表面凹凸、染料・顔料インクの適性が向上し、好ましい。
【0102】
表1中、比較例1においてはアンダー層中に、微粒子が含まれないために表面凹凸をコントロールできなかった。また比較例2においてラテックスのガラス転移点(Tg)が低いものを用いた場合には、表面の凹凸および染料・顔料インク適性が得られなかった。比較例4では、ホウ酸またはホウ酸塩を含有していないため、インク受理層表面にひび割れが生じ、発色性が低下した。また、比較例5においては、支持体が非吸収性支持体のため、インク受理層表面にひび割れが生じ、インク受理層表面にざらつき感が生じ、顔料インク適性が低下した。また、比較例6においては、アンダー層がないために凹凸感が得られず、またインク受理層表面のひび割れに伴い、ざらつき感と顔料インク適性が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性支持体の少なくとも片面に主成分としてアルミナ水和物を含有し、かつ水溶性バインダーを含有するインク受理層の塗液を塗工・乾燥して形成される半光沢インクジェット記録材料において、該吸収性支持体と該インク受理層の間に少なくとも微粒子、ホウ酸またはホウ酸塩、およびガラス転移点が50℃よりも高いラテックスを含有するアンダー層塗工液を塗工・乾燥して形成したアンダー層を有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【請求項2】
該アンダー層において、該ラテックスと該微粒子の比率が1:1〜10:1であり、かつ該アンダー層の乾燥固形分塗工量が3g/m〜10g/mである請求項1記載のインクジェット記録材料。
【請求項3】
該ラテックスがウレタン樹脂である請求項1記載のインクジェット記録材料。

【公開番号】特開2010−83034(P2010−83034A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255360(P2008−255360)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】