説明

インクジェット記録材料

【課題】画像の耐滲み性に優れ、アート性のある光沢感を有し、且つ光沢性に優れるインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】透気性支持体上の少なくとも一方の面に、一次粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下であるアルミナまたはアルミナ水和物、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した平均粒径10μm以上200μm以下である顔料、ポリウレア化合物並びに接着剤を含有するインク受容層を設けたことを特徴とするインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作品制作や展示用途に用いられるアート性を有するインクジェット記録材料に関するものである。特に、光沢性を有しつつ、光の多重層反射によって起こる光の干渉で得られる深みのある光沢感によるアート性を有するインクジェット記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターやプロッターの目ざましい進歩により、フルカラーでしかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
【0003】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録材料に付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェット記録方式はコンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において急速に採用されている。特に多色インクジェット記録方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、さらに作成部数が少ない用途においては、印刷技術や写真技術によるよりも安価で済むことから広く応用されている。
【0004】
写真やデザインの制作においてもインクジェット記録方式によって印刷されたインクジェット記録材料を使用して、ポスター・ラベル等の展示用途に利用されることも多くなってきた。このような展示用途に利用されるインクジェット記録材料はいかに人目を引くかというところが重要であり、従来の単なる高光沢性だけではなく、アート性のある光沢感を有し且つ光沢性に優れたインクジェット記録材料を望まれている。
【0005】
アート性のある光沢感を有するインクジェット記録材料として、原紙の少なくとも片面に微細繊維状セルロースと親水性樹脂と真珠顔料とを含有する塗工液を塗工してなる被覆層を有する情報記録用紙がある(例えば、特許文献1参照)。マット調の中にキラキラ感を有した風合いを特徴としている。
【0006】
同じく、アート性のある光沢感を有するインクジェット記録材料として、支持体の金属光沢を有する面側に真珠顔料を含有する記録層を設けた艶消し金属光沢面を有する記録用シートがある(例えば、特許文献2参照)。艶消しされた金属調の光沢感を有することを特徴としている。
【0007】
これらはマット調あるいは艶消し金属調であり、各々アート性のある光沢感を有するものの、光沢性は高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−007899号公報
【特許文献2】特開2001−270234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
透気性支持体を用いたインクジェット記録材料は、湿度および湿気並びに水分を表裏から吸収する性質を有する。特に塗工層を有しない裏面ではこの性質が比較的大きい。この性質の影響により記録材料に保持された水分によって記録材料に形成された画像は滲むことがある。人目を引くというアート性のある光沢感を有しても、画像が滲んでいてはアート性は損なわれる。
【0010】
本発明の目的は、アート性のある光沢感を有し、且つ光沢性に優れるインクジェット記録材料を提供することにある。加えて、記録材料に形成された画像が滲むことを抑制できるという耐滲み性に優れたインクジェット記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題に対し検討を行った結果、課題の解決は、透気性支持体上の少なくとも一方の面に、一次粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下であるアルミナまたはアルミナ水和物、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した平均粒径10μm以上200μm以下である顔料、ポリウレア化合物並びに接着剤を含有するインク受容層を設けたことを特徴とするインクジェット記録材料によって達成される。
【0012】
また、インク受容層の薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した平均粒径10μm以上200μm以下である顔料の含有量が、インク受容層のアルミナまたはアルミナ水和物の全含有量に対して5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0013】
また、透気性支持体とインク受容層の間に非晶質シリカを含有する中間層を設けたインクジェット記録材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、アート性のある光沢感を有し、且つ光沢性に優れるインクジェット記録材料が得られる。加えて、画像の耐滲み性に優れるインクジェット記録材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のインクジェット記録材料を詳細に説明する。
本発明者らは、インク受容層について鋭意検討を行った結果、一次粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下であるアルミナまたはアルミナ水和物、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した平均粒径10μm以上200μm以下である顔料、ポリウレア化合物並びに接着剤を含有するインク受容層を設けたインクジェット記録材料を見出した。このインクジェット記録材料が、優れた耐滲み性を有し、光沢性を有しつつ、光の多重層反射によって起こる光の干渉で得られる深みのある光沢感によるアート性を得ることができる。
【0016】
本発明において、アルミナまたはアルミナ水和物は、酸化アルミニウムやその含水物であり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形、球状、板状等の形態を有するものが使用できる。両者のいずれかを使用してもよく、併用してもよい。酸化アルミニウムとしては酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。酸化アルミニウムの含水物は、Al・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。
【0017】
本発明において、アルミナまたはアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径は、10nm以上50nm以下である。
【0018】
本発明において、アルミナまたはアルミナ水和物は、インク受容層の全顔料の含有量の50質量%超であることが好ましい。
【0019】
本発明において、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料は、例えば特開2006−291156号公報等に記載されているが如く、薄片状基質が分散したスラリーへ一定速度で添加し、所望の厚みの酸化チタン層を薄片状基質へ被覆する中和滴定法や、チタン含有溶液を薄片状基質分散スラリーへ、必要であれば尿素とともに最初に混合し、この混合スラリーを加熱攪拌してチタン原料の加水分解によって薄片状基質上に酸化チタン被覆層を得る均一沈殿法により得ることができる。雲母(マイカ)粒子は天然雲母(マイカ)を粉砕・分級して調製してもよいし、人工的に合成してもよい。品質の均一性および安定性から合成雲母(マイカ)が好ましい。
【0020】
酸化チタンで被覆する以外に、酸化鉄等の他の金属酸化物を酸化チタンと併用して被覆することもできる。酸化チタン以外の金属酸化物を併用した場合、反射光が着色する場合がある。好ましくは酸化チタン単独である。
【0021】
本発明において、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料としては、平均粒径10μm以上200μm以下である。このような顔料は、日本光研工業社やメルク社から市販されている。
【0022】
本発明において、平均粒径とは、分散された粒子の電子顕微鏡観察の観察野に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径より平均粒径を近似的に求めたものである。一次粒子の平均粒径は一次粒子に分散した状態の平均粒径であり、それ以外は凝集粒子を含む平均粒径である。
【0023】
一般的に顔料は、不定形、球状、棒状、紡錘状、平板状等の形状を有する。粒径が1μm以下の顔料では、その光の吸収および反射により、それぞれ固有の光沢感や光沢性を呈する。薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した粒子は、層状の構造を成すことによって光が多重層反射し、反射距離が一定とならないために起こる光の干渉で得られる深みのあるアート性のある光沢感が得られる。多重層反射を可能とするためにはある程度の粒径が必要であり、アート性のある光沢感と光沢性を両立することが困難であった。
【0024】
本発明において、アルミナまたはアルミナ水和物と薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料とを組み合わせることで、光沢性を維持しつつアート性のある光沢感を得ることができる。
【0025】
そして、光沢性を維持しつつアート性のある光沢感を得るためには、アルミナおよびアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下であり、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料の平均粒径が10μm以上200μm以下である。
【0026】
上記の粒径の範囲外では、アート性のある光沢感と光沢性との両立は得られない。薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料の平均粒径が大きくなると光沢性が低下する。小さくなるとアート性のある光沢感が低下する。アルミナまたはアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径が大きくなると光沢性が低下し、小さくなるとインク吸収性が低下する。アルミナまたはアルミナ水和物に置き換えてシリカを用いても光沢性は得られない。
【0027】
本発明において、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料のインク受容層中の含有量は、インク受容層中のアルミナまたはアルミナ水和物の全含有量の5質量%以上25質量%以下が好ましい。この範囲内であることにより、アート性を有する光沢感と光沢性を得ることができ、さらにインクジェット記録材料は耐滲み性を得ることができる。酸化チタンは比較的親水性に富む物質であるため、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料をアルミナまたはアルミナ水和物の全含有量の5質量%以上25質量%以下にすることで、光沢性とアート性のある光沢感を有しつつ、インクジェット記録材料に形成された画像が滲むことを抑制することができると考えられる。
【0028】
本発明にかかるインク受容層には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、コロイダルシリカ、ゲル法シリカ、沈降法シリカ、気相法シリカの非晶質シリカ等の顔料を併せて用いることができる。本発明の効果を損なわないためには、アルミナまたはアルミナ水和物以外の顔料の含有量は全顔料の50質量%未満であることが好ましい。
【0029】
本発明において、インク受容層に用いられる接着剤は特に制限はなく、例えば、デンプン、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプンなどのデンプン類、スチレンブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、メラミンホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂などの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化した変性物などが挙げられる。これらを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。好ましくは、ポリビニルアルコールである。
【0030】
本発明において、好適に用いることができるポリビニルアルコールは、70mol%から100mol%までの種々けん化度のポリビニルアルコールである。またシリル基、カルボキシル基、アミノ基、アセトアセチル基等の種々官能基を導入した変性ポリビニルアルコール、さらにエチレン等の他単量体をランダム的、グラフト的またはブロック的に導入した変性ポリビニルアルコールも使用することもできる。これら種々けん化度のポリビニルアルコールまたはこれらの変性ポリビニルアルコールをそれぞれ単独、あるいは2種以上を併用して使用してもよい。
【0031】
ポリビニルアルコールは、その水溶液の粘度が高いものの方が、含有量が比較的少量であっても塗工されたインク受容層の乾燥時に表面のひびが生じにくいので、その含有量を少なくすることができ、結果としてインク吸収性を向上させられるので好ましい。その反面、その水溶液の粘度が高すぎると、インク受容層の塗工液の粘度が高くなりすぎて塗工操作が困難になることがあるから好ましくない。具体的には、JIS Z8803に基づき25℃においてウベローデ粘度計を使用して測定される固形分濃度4質量%の水溶液の粘度が15mPa・秒以上400mPa・秒以下であることが好ましく、30mPa・秒以上200mPa・秒以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明において、インク受容層の接着剤の含有量は、インク受容層の全顔料の2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。少なすぎると乾燥時に表面にひびが生じたり、形成されるインクジェット記録材料の表面強度が不足することがある。一方で接着剤の含有量が多すぎるとインク吸収性が低下することがある。
【0033】
本発明において、インク受容層は接着剤とは別にポリウレア化合物を含有する。ポリウレア化合物とは、複数のウレア基を有する化合物である。好ましくは、複数のウレア基を有するウレアウレタン化合物である。このようなウレアウレタン化合物は、例えば、BYK−420、BYK−E420、BYK−425の名称でビックケミー・ジャパン社から市販されており、本発明に用いることができる。ウレアウレタン化合物中、さらに好ましくは、ウレア基とウレア基との間の連結部分に変性ウレタン構造を有し、化合物の末端に連結部分の変性ウレタン構造よりも極性が強い変性ウレタン構造を有して成るウレアウレタン化合物である。このようなウレアウレタン化合物としては、前記のBYK−420、BYK−E420である。
【0034】
ポリウレア化合物は、ウレア基の強い極性による水素結合力と会合作用によって、顔料の表面に吸着すると共に塗工後の塗工液中における顔料の沈降を物理的に抑制し、薄板上の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した粒径10μm以上の比較的大きな顔料であっても沈降を妨げて、インク受容層にアート性を有する光沢感を醸し出すことができると考えられる。従来公知の接着剤だけでは、沈降を十分に抑制することができず、アート性を有する光沢感を得ることができない。
【0035】
本発明において、インク受容層のポリウレア化合物の含有量は、インク受容層中の薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料の含有量に対して0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましい。1質量%超では、ポリウレア化合物のウレア基の極性による親水性から、インクジェット記録材料に形成された画像が滲む場合がある。上記の範囲の含有量であれば、顔料の沈降抑制効果が得られ、且つインクジェット記録材料に形成された画像の滲みをより抑えることができる。
【0036】
本発明のインク受容層には、必要に応じて、界面活性剤、着色剤、消泡剤、蛍光増白剤、インク定着剤、耐水化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など各種公知の添加剤を添加することもできる。
【0037】
本発明において、インク受容層の塗工液を塗工する方法に特に制限はなく、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター等のブレードコーター、バーコーター、リバースロールコーター、コンマコーター(登録商標)、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等各種の塗工方法を用いることができる。これらのうち、本発明にかかる塗工液の塗工安定性の点で、本発明にかかる塗工液を透気性支持体に塗工する塗工方法はカーテンコーターが好ましい。
【0038】
本発明において、インク受容層の塗工液を透気性支持体上に塗工する塗工量は特に限定されないが、インク吸収性と製造コストの点で、通常固形分として10g/m以上25g/m以下の範囲で塗工することが好ましい。ただし、特に多量のインクを吸収することを求められる場合では、30g/m程度を塗工することが好ましい場合もある。
【0039】
本発明において、インク受容層と透気性支持体との間に中間層を設けることが好ましい。中間層を設けることによって、インクジェット記録材料全体のインク吸収性をさらに高めることができる。中間層は1層であっても2層以上であっても構わない。2層以上では、中間層を形成する中間層の塗工液の組成は同一であっても異なっていても構わない。また、中間層の塗工液の組成がインク受容層の塗工液と同一であっても構わない。
【0040】
また、インク受容層と隣接する中間層は非晶質シリカを含有することが好ましい。インク受容層と隣接する中間層が非晶質シリカを含有することにより、インク受容層の光沢性やアート性のある光沢感が低下し難くなる。
【0041】
また、中間層の塗工量としては、インク受容層と同様に限定されないが、固形分として合計10g/m以上25g/m以下を塗工することが好ましい。ただし、特に多量のインクを吸収することを求められる場合には、合計30g/m程度を塗工することが好ましいこともある。
【0042】
本発明において、インク受容層や中間層の各々塗工・乾燥後に、各層の平坦化や透気抵抗度をコントロールする等の目的のためにカレンダー処理を施すことができる。その際のカレンダー処理装置としては、グロスカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどが挙げられる。
【0043】
本発明において、透気性支持体としては紙が好ましい。透気性があれば塗工紙を支持体として、あるいは不織布など紙以外を支持体として用いることもできる。
【0044】
本発明において、透気性支持体として用いられる紙は、従来公知の方法で製造される通常の紙であって特に限定されない。透気性支持体として用いられる紙は、木材パルプおよび填料を含有した紙料にその他製紙用助剤を必要に応じて添加して抄造された紙が好ましい。
【0045】
用いられる木材パルプは各種パルプの製法によって得ることができる。例えば、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、LBSP(広葉樹晒亜硫酸パルプ)、NBSP(針葉樹晒亜硫酸パルプ)など従来から知られている化学パルプ、GP(グランドパルプ)やTMP(サーモメカニカルパルプ)など各種の機械パルプ、古紙パルプを挙げることができる。また非木材パルプ、合成パルプ、各種パルプ繊維をマーセル化したパルプなど化学的処理を加えたパルプについても紙の品質を損なわない範囲で併用して使用することが可能である。これらのパルプは抄紙適性、塗工適性、さらにはインクジェット記録適性等を満足させるために叩解機で叩解度(フリーネス)が調整される。パルプの叩解度はパルプの種類により異なるが、一般的にCSF(JIS P8121で規定されたカナディアン・スタンダード・フリーネスを意味する。)で150ml以上550ml以下であることが好ましく、300ml以上500ml以下に調整することがより好ましい。
【0046】
用いられる填料は不透明性やインクジェット記録適性を維持するために用いられ、例えば、タルク、各種カオリン、炭酸カルシウム等の従来公知の填料を挙げることができる。特に炭酸カルシウムは、白色度が高い紙となるので好ましい。木材パルプや非木材パルプの総パルプ100質量部に対して填料の混合量は5質量部以上30質量部以下が好ましく、特に10質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0047】
本発明において、透気性支持体として用いられる紙には、その他製紙用助剤として従来公知の各種助剤を用いることができる。例えば、紙力剤としてデンプン、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ガラクトマンナン、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂など、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー、アルケニルまたはアルキル琥珀酸無水物、脂肪酸金属塩、脂肪酸、エポキシ系高級脂肪酸アミド、ロジン誘導体など、定着剤として塩化アルミニウム、硫酸バンドなどの水溶性アルミニウム塩など、pH調整剤として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸、塩酸など、他に歩留まり向上剤、着色染料または顔料、蛍光増白剤、嵩高剤であり、これらを適宜組み合わせて含有することができる。
【0048】
本発明において、紙の製造に使用する抄紙機は特に限定されない。例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ハイブリッド抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機、各種のコンビネーション抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を適宜使用できる。なお、紙は酸性紙、中性紙またはアルカリ性紙のいずれであってもよい。
【実施例】
【0049】
以下に本発明の実施例を示す。また本実施例中では、特に明示しない限り「部」は質量部、「%」は質量%を示すものとする。
【0050】
<アルミナ水和物分散液1の調製>
水299部に酢酸1部を混合し、一次粒子の平均粒径14nmであるアルミナ水和物(サソール製Disperal HP14)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ水和物分散液1を得た。
【0051】
<アルミナ水和物分散液2の調製>
水299部に酢酸1部を混合し、一次粒子の平均粒径10nmであるアルミナ水和物(サソール製Disperal)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ水和物分散液2を得た。
【0052】
<アルミナ水和物分散液3の調製>
水299部に酢酸1部を混合し、一次粒子の平均粒径30nmであるアルミナ水和物(サソール製Disperal HP30)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ水和物分散液3を得た。
【0053】
<アルミナ水和物分散液4の調製>
水299部に酢酸1部を混合し、一次粒子の平均粒径40nmであるアルミナ水和物(サソール製Disperal 40)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ水和物分散液4を得た。
【0054】
<アルミナ水和物分散液5の調製>
水299部に酢酸1部を混合し、一次粒子の平均粒径4nmであるアルミナ水和物(サソール製Dispal 25F4)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ水和物分散液5を得た。
【0055】
<アルミナ水和物分散液6の調製>
水299部に酢酸1部を混合し、一次粒子の平均粒径60nmであるアルミナ水和物(サソール製Disperal 60)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ水和物分散液6を得た。
【0056】
<アルミナ分散液の調製>
水299部に酢酸1部を混合し、一次粒子の平均粒径13nmであるアルミナ(日本アエロジル製アエロジル酸化アルミニウムC)100部を添加し、そのまま2時間攪拌し、固形分濃度25%のアルミナ分散液を得た。
【0057】
<気相法シリカ分散液の調製>
水392部を攪拌しながら、400mPa・秒の粘度を有するジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体の50%水溶液8部(固形分4部)、一次粒子の平均粒径12nmである気相法シリカ(日本アエロジル製アエロジル200V、BET法による比表面積200m/g)100部を添加し、ブレード型分散機を使用して予備分散した。得られた予備分散液をコロイドミルで処理して、固形分濃度20.8%の気相法シリカ分散液を得た。
【0058】
<インク受容層の塗工液1の調製>
上記のアルミナ水和物分散液1の100部(固形分25部)に、けん化度88mol%のポリビニルアルコール(クラレ製PVA235)の10%水溶液25部(固形分2.5部)、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(日本光研工業製ME−100R、平均粒径20μm)を2.5部、ポリウレア化合物(ビックケミー・ジャパン製BYK−420)を0.025部添加して、インク受容層の塗工液1を調製した。
【0059】
<インク受容層の塗工液2の調製>
インク受容層の塗工液1において、アルミナ水和物分散液1の代わりに、アルミナ水和物分散液2を用いた以外はインク受容層の塗工液1と同様にして、インク受容層の塗工液2を調製した。
【0060】
<インク受容層の塗工液3の調製>
インク受容層の塗工液1において、アルミナ水和物分散液1の代わりに、アルミナ水和物分散液3を用いた以外はインク受容層の塗工液1と同様にして、インク受容層の塗工液3を調製した。
【0061】
<インク受容層の塗工液4の調製>
インク受容層の塗工液1において、アルミナ水和物分散液1の代わりに、アルミナ水和物分散液4を用いた以外はインク受容層の塗工液1と同様にして、インク受容層の塗工液4を調製した。
【0062】
<インク受容層の塗工液5の調製>
インク受容層の塗工液1において、アルミナ水和物分散液1の代わりに、アルミナ水和物分散液5を用いた以外はインク受容層の塗工液1と同様にして、インク受容層の塗工液5を調製した。
【0063】
<インク受容層の塗工液6の調製>
インク受容層の塗工液1において、アルミナ水和物分散液1の代わりに、アルミナ水和物分散液6を用いた以外はインク受容層の塗工液1と同様にして、インク受容層の塗工液6を調製した。
【0064】
<インク受容層の塗工液7の調製>
インク受容層の塗工液1において、アルミナ水和物分散液1の代わりに、アルミナ分散液を用いた以外はインク受容層の塗工液1と同様にして、インク受容層の塗工液7を調製した。
【0065】
<インク受容層の塗工液8の調製>
上記の気相法シリカ分散液の100部(固形分20.8部)に、けん化度88mol%のポリビニルアルコール(クラレ製PVA235)の10%水溶液50部(固形分5部)、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(日本光研工業製ME−100R、平均粒径20μm)を2.5部、ポリウレア化合物(ビックケミー・ジャパン製BYK−420)を0.025部添加して、インク受容層の塗工液8を調製した。
【0066】
(実施例1)
坪量81.4g/mの紙(三菱製紙製ダイヤフォーム)上に、インク受容層の塗工液1を、塗工量が18g/mとなるようにカーテンコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥を行い実施例1のインクジェット記録材料を得た。
【0067】
(実施例2)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1の代わりにインク受容層の塗工液2を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録材料を得た。
【0068】
(実施例3)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1の代わりにインク受容層の塗工液3を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録材料を得た。
【0069】
(実施例4)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1の代わりにインク受容層の塗工液4を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録材料を得た。
【0070】
(実施例5)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1の代わりにインク受容層の塗工液7を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5のインクジェット記録材料を得た。
【0071】
(実施例6)
薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料2(日本光研工業製MXL−100R、平均粒径300μm)を、ブレード型分散機を使用して分散し、ろ過することで平均粒径180μmの薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料3を得た。実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いている薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(ME−100R)の代わりに、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料3(平均粒径180μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6のインクジェット記録材料を得た。
【0072】
(実施例7)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いているポリウレア化合物(BYK−420)の代わりに、ポリウレア化合物(ビックケミー・ジャパン製BYK−425)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7のインクジェット記録材料を得た。
【0073】
(実施例8)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いている薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(ME−100R)の添加量を1部にした以外は実施例1と同様にして、実施例8のインクジェット記録材料を得た。
【0074】
(実施例9)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いている薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(ME−100R)の添加量を7.5部にした以外は実施例1と同様にして、実施例9のインクジェット記録材料を得た。
【0075】
(実施例10)
坪量81.4g/mの紙(三菱製紙製ダイヤフォーム)上に、インク受容層の塗工液8を、塗工量が8g/mとなるようにカーテンコーターを使用して塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥を行い、次いでインク受容層の塗工液1を、塗工量が10g/mとなるようにカーテンコーターを使用して塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥を行い実施例10のインクジェット記録材料を得た。
【0076】
(比較例1)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1の代わりにインク受容層の塗工液5を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録材料を得た。
【0077】
(比較例2)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1の代わりにインク受容層の塗工液6を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録材料を得た。
【0078】
(比較例3)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1の代わりにインク受容層の塗工液8を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3のインクジェット記録材料を得た。
【0079】
(比較例4)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いている薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(ME−100R)の代わりに、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料4(日本光研工業製MF−100RN、平均粒径8μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4のインクジェット記録材料を得た。
【0080】
(比較例5)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いている薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(ME−100R)の代わりに、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料2(日本光研工業製MXL−100R、平均粒径300μm)を用いた以外は実施例1と同様にした。しかしながら、面が著しくぼこついてしまい、インクジェット記録材料を得ることができなかった。
【0081】
(比較例6)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いている薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料1(ME−100R)を用いなかった以外は実施例1と同様にして、比較例6のインクジェット記録材料を得た。
【0082】
(比較例7)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いているポリウレア化合物(BYK−420)の代わりに、ポリアクリルアミド化合物(チバスペシャリティケミカルズ製ハイドロコールHC−880)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例7のインクジェット記録材料を得た。
【0083】
(比較例8)
実施例1のインクジェット記録材料において、インク受容層の塗工液1に用いているポリウレア化合物(BYK−420)を用いなかった以外は実施例1と同様にして、比較例8のインクジェット記録材料を得た。
【0084】
<評価方法>
実施例1〜10、比較例1〜8で得られたインクジェット記録材料のアート性のある光沢感、光沢性、印字画像の滲み、インク吸収性を以下に示す方法によって評価した。
【0085】
<アート性のある光沢感>
白紙部、および、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色ベタ印刷部について、光の多重層反射によって起こる光の干渉で得られる深みのある光沢感を、紙面に対して直角の目線および斜め目線から目視にて評価した。本発明にかかるアート性のある光沢感としては、○または△の評価である。
○:直角の目線および斜め目線のいずれも深みのある光沢感がある。
△:斜め目線で深みのある光沢感がある。
×:深みのある光沢感が無い。
【0086】
<光沢性>
白紙のインクジェット記録材料を観察することで、以下のように目視で判断した。本発明にかかる優れた光沢性としては、○または△の評価である。
○:高い光沢性がある。
△:光沢性がある。
×:艶消しまたはマット調である。
【0087】
<印字画像の滲み>
セイコーエプソン製インクジェットプリンター(PM−G850)によりブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色ベタを印刷した後に、インクジェット記録材料を30℃、80%RHの環境下に1週間曝露し、各色の滲み度合いを目視にて観察し、下記の基準で評価した。本発明にかかる印字画像の滲み抑制に優れるとは○または△の評価である。
○:各色とも滲みは見られない。
△:いずれかの色でわずかに滲みが見られるが、実用上問題無いレベル。
×:いずれかの色で滲みが見られる。
【0088】
<インク吸収性>
セイコーエプソン製インクジェットプリンター(PM−G850)によりブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの2cm角のカラーパッチ評価画像を印刷し、インクジェット記録材料のインク吸収性を印字部のムラのレベル、パッチ間の境界の鮮明性を目視にて評価した。本発明にかかるインク吸収性としては、◎、○または△の評価である。
◎:印刷部にムラが無く、境界が鮮明である。
○:印刷部にムラが無く、レッド、グリーン、ブルーの境界で若干滲みがある。
△:印刷部にムラが無いが、境界部に若干滲みがある。
×:印字部にムラが認められ、境界部で滲みが確認できる。
【0089】
評価結果について表1に示した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1より、本発明にかかる実施例1〜10のインクジェット記録材料は、アート性のある光沢感を有し、光沢性にも優れ、画像部の滲みも少なく、インク吸収性も良好である。特に、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料の含有量がアルミナまたはアルミナ水和物の全含有量に対して5%以上25%以下であると本発明にかかる全ての効果に優れることが分かる。
【0092】
一方、本発明に該当しない比較例1〜8のインクジェット記録材料は、本発明にかかる全ての効果を満足することができない。また、比較例6では、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料が存在しないため、あるいは比較例7および8では、ポリウレア化合物を含有していないためにインク受容層内で薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した顔料が沈み込み極めて強い光沢性となってアート性のある光沢感が得られなかった。また、比較例3では、アルミナまたはアルミナ水和物に代えてシリカを用いており、アート性のある光沢感が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透気性支持体上の少なくとも一方の面に、一次粒子の平均粒径が10nm以上50nm以下であるアルミナまたはアルミナ水和物、薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した平均粒径10μm以上200μm以下である顔料、ポリウレア化合物並びに接着剤を含有するインク受容層を設けたことを特徴とするインクジェット記録材料。
【請求項2】
インク受容層の薄板状の雲母(マイカ)粒子の表面を酸化チタンで被覆した平均粒径10μm以上200μm以下である顔料の含有量が、インク受容層のアルミナまたはアルミナ水和物の全含有量に対して5質量%以上25質量%以下である請求項1に記載のインクジェット記録材料。
【請求項3】
透気性支持体とインク受容層の間に非晶質シリカを含有する中間層を設ける請求項1に記載のインクジェット記録材料。

【公開番号】特開2012−131198(P2012−131198A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287257(P2010−287257)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】