説明

インクジェット記録用インクセット及びそれを用いたインクジェット記録方法

【課題】低照度光に対する安定性にすぐれ、かつ、被記録媒体上で画像を形成した時は重合反応性に優れ、硬化性の良いインクジェット記録用インクセット、及びそれを用いた、吐出不良が起きにくく、かつ、被記録媒体上での硬化性に優れたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】オキセタン化合物を含む液体(I)とオキシラン化合物を含む液体(II)との2種類の液体を有し、該液体(I)にはオキシラン化合物を含まないか、含んでも、オキセタン化合物の総量(p1)とオキシラン化合物の総量(q1)の比(質量比)p/qが90/10以上であり、かつ、該液体(II)にはオキセタン化合物を含まないか、含んでも、オキセタン化合物の総量(p2)とオキシラン化合物の総量(q2)の比(質量比)p2/q2が10/90以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクセット及び画像形成方法に関し、詳細には、吐出不良が起きにくく、かつ、被記録媒体上での硬化性に優れた多液型のインクジェット記録用インクセット及びそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル等のインク吐出口からインクを吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを吐出する熱インクジェット方式は高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
現在、インクジェットプリンターにより、プラスチックなど非浸透性の記録媒体に印字する際の画像保存性、高画質化が重要な課題となっている。特に、非浸透性記録媒体に印字した場合の深刻な問題としては、インクの被記録媒体への定着性が悪く、対擦性や耐水性に劣る点が知られている。また、印字後の液滴の乾燥に時間が掛かると、画像の滲みが生じやすく、また、隣接するインク液滴間の混合による打滴干渉が生じ、鮮鋭な画像形成の妨げとなる。
尚、打滴干渉とは、隣接して打滴された液滴同士が表面エネルギーを低下させるため(表面積を小さくするため)に、合一する現象である。隣接する液滴が合一するときに液滴の移動が起こるために、着弾した位置からずれ、特に着色剤を含むインクで細線を描く場合には、線幅の不均一が生じ、面を描写する場合には、ムラとなって現れる。
【0004】
上記に示すような非浸透記録媒体における定着性や滲みを改善するために、インクの硬化を促進させ、かつ、被記録媒体に対して固着させる方法の一つとして、インク溶媒の揮発ではなく、放射線によって硬化し定着させる重合硬化型インクジェット記録用インクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、重合硬化型インクジェット記録用インクに用いる材料は比較的粘度の高い材料であり、従来のプリンターにて吐出できるような粘度において、硬化性がよく安定性が良好なインクを得ることは困難であった。
【0005】
これに対して、低粘度で、かつ光重合性に優れ、被記録媒体上での硬化性に優れたインクとして、カチオン重合型のインクジェット記録用インクが提案されている。
即ち、オキシラン基を含む化合物10〜50重量%、オキセタン環を含む化合物50〜90重量%、および、ビニルエーテル化合物0〜40重量%からなる液状成分の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インクが開示されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
しかしながら、カチオン重合型インクジェット記録用インクを用いた場合は、少量の酸が発生した場合でも重合反応が進行するため、従来から用いられている紫外線硬化型インクジェットプリンターにおいて、該インクを用いた場合、該プリンターに設置されている紫外光光源の漏れ光によってノズル面に付着したインクが重合することに起因する吐出不良が生じるといった課題がある。
【0006】
また、カチオン重合型の多液型のインクジェット記録方法として、オキセタン化合物30〜90%、オキセタン化合物5〜70%、ビニルエーテル化合物0〜40%からなる液体を用いた記録方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。ここで開示されている手段でも、低照度光に対する光安定性を付与するには不十分である。
このように硬化性と低照度光に対する光安定性の両方を両立したインクジェット記録用インクおよび記録方法は確立されていない。
【特許文献1】特開平10−323975号公報
【特許文献2】特開2002−188025号公報
【特許文献3】特開2004−91552号公報
【特許文献4】特開2005−96254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低照度光に対する安定性にすぐれ、かつ、被記録媒体上で画像を形成した時は重合反応性に優れ、硬化性の良いインクジェット記録用インクセットを提供することを目的とする。
また、本発明は前記インクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記実情に鑑み本発明者らは鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0009】
<1>オキセタン環を有する化合物を少なくとも含む液体(I)とオキシラン基を有する化合物を少なくとも含む液体(II)との少なくとも2種類の液体を有するインクジェット記録用インクセットであって、該液体(I)にはオキシラン基を有する化合物を含まないか、含んでも、オキセタン環を有する化合物の総量(p1)とオキシラン基を有する化合物の総量(q1)の比(質量比)p1/q1が90/10以上であり、かつ、該液体(II)にはオキセタン環を有する化合物を含まないか、含んでも、オキセタン環を有する化合物の総量(p2)とオキシラン基を有する化合物の総量(q2)の比(質量比)p2/q2が10/90以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
<2>前記液体(I)又は(II)に重合開始剤を含有することを特徴とする上記<1>に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0010】
<3>前記重合開始剤を含有しない液体が増感剤を含有することを特徴とする上記<2>に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0011】
<4>前記液体(I)及び前記液体(II)のいずれか一方が着色剤を含む記録液であり、他方が処理液であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0012】
<5>前記処理液に界面活性剤を含有することを特徴とする上記<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
<6>上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットに含まれる少なくとも2種以上の液体を被記録媒体に噴射して画像を形成する工程と、形成された画像にエネルギーを付与して硬化させる工程と、を含むインクジェット記録方法。
【0013】
<7>前記エネルギーの付与が光照射または加熱により行われることを特徴とする上記<6>に記載のインクジェット記録方法。
<8>前記画像を形成する工程が、2種以上の液体に含まれるオキセタン環を有する化合物の総量(p)とオキシラン基を有する化合物の総量(q)の比(質量比)p/qが10/90以上90/10以下で前記2種類以上の液体を前記被記録媒体上に付与して画像を形成する工程であることを特徴とする上記<6>又は<7>にインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低照度光に対する安定性にすぐれ、かつ、被記録媒体上で画像を形成した時は重合反応性に優れ、硬化性の良いインクジェット記録用インクセット、および該インクジェット記録用インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、オキセタン環を有する化合物(以下、「オキセタン環含有化合物」ともいう。)を少なくとも含む液体(I)と、オキシラン基を有する化合物(以下、「オキシラン基含有化合物」ともいう。)を少なくとも含む液体(II)と、の2種類の液体とを少なくとも有するインクジェット記録用インクセットであって、該液体(I)にはオキシラン基を有する化合物を含まないか、含んでも、オキセタン環を有する化合物の総量(p1)とオキシラン基を有する化合物の総量(q1)の比(質量比)p1/q1が90/10以上であり、かつ、該液体(II)にはオキセタン環を有する化合物を含まないか、含んでも、オキセタン環を有する化合物の総量(p2)とオキシラン基を有する化合物の総量(q2)の比(質量比)p2/q2が10/90以下であることを特徴とする。
本発明のインクジェット記録用インクセットは、前記構成とすることにより、紫外光光源からの漏れ光のような極めて微量が光を照射しても重合反応又はゲル化が促進しない、即ち、低照度光に対する安定性に優れ、かつ、被記録媒体上で画像を形成した時は重合反応性に優れ、硬化性の良いインクジェット記録用インクセットとすることができる。
次に、本発明のインクジェット記録用インクセットの液物性、液体(I)及び(II)、並びにこれらを構成する主要成分等について、以下に詳細に説明する。
【0016】
−液体(I)−
オキセタン環を有する化合物を少なくとも含む液体(I)は、室温で液体であれば良いが、インクジェットによる打滴適正の観点から、25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は50mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は30mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが特に好ましい。
また、インクの被記録媒体への定着性やインクのにじみ防止の観点から、液体(I)は前記オキセタン環を含む化合物を50質量%〜98質量%含有することが好ましく、70質量%〜98質量%がより好ましく、80質量%〜98質量%が特に好ましい。
また、液体(I)は、水や水性溶剤を含むと定着に時間がかかるため、非水系であることが好ましい
【0017】
また、該液体(I)にはオキシラン基を有する化合物は含まないか、含まれていても、該液体(I)に含まれる前記オキセタン環を有する化合物の重量濃度p1とオキシラン基を有する化合物の重量濃度q1の関係が(p1/q1)≧90/10である。p1とq1の関係は好ましくは(p1/q1)≧99/1であり、さらに好ましくは該液体(I)にはオキシラン基を有する化合物は含まない。
【0018】
−液体(II)−
オキシラン基を有する化合物を少なくとも含む液体(II)は、室温で液体であれば良いが、インクジェットによる打滴適正の観点から25℃における粘度は100mPa・s以下又は60℃における粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25℃における粘度は50mPa・s以下又は60℃における粘度が20mPa・s以下であることがより好ましく、25℃における粘度は30mPa・s以下又は60℃における粘度が15mPa・s以下であることが特に好ましい。
また、インクの被記録媒体への定着性やインクのにじみ防止の観点から、液体(II)は前記オキシラン基を含む化合物を50質量%〜98質量%含有することが好ましく、70質量%〜98質量%がより好ましく、80質量%〜98質量%が特に好ましい。
また、液体(II)は、水や水性溶剤を含むと定着に時間がかかるため、非水系であることが好ましい。
また、該液体(II)にはオキセタン環を有する化合物は含まないか、含まれていても、該液体(II)に含まれる前記オキセタン環を有する化合物の重量濃度p2とオキシラン基を有する化合物の重量濃度q2の関係が(p2/q2)≦10/90である。p1とp2の関係は好ましくは(p2/q2)≦1/99であり、さらに好ましくは該液体(II)にはオキセタン環を有する化合物は含まない。
【0019】
〈オキセタン環含有化合物〉
前記オキセタン環含有化合物は、分子内に少なくとも1つのオキセタン環(オキセタニル基)を含む化合物の中から適宜選択することができる。
例えば、分子中に1つのオキセタン環を有する化合物としては下記一般式(1−a)で表される化合物が好適であり、分子中に2つ以上のオキセタン環を有する化合物としては下記一般式(1−b)で表される化合物が好適である。
【0020】
【化1】

【0021】
まず、一般式(1−a)で表されるオキセタン環含有化合物を説明する。
前記一般式(1−a)において、Zは、酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子が好ましい。R1aは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、またはチエニル基を表し、炭素数1〜6個のアルキル基(特にメチル基、エチル基)が好ましい。
【0022】
2aは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6のアルケニル基(例えば、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等)、炭素数1〜6のアルキルカルボニル基(例えば、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブチロキシカルボニル基等)、炭素数1〜6のアルコキシカルバモイル基(例えば、エトキシカルバモイル基、プロポキシカルバモイル基、ブチルペンチロキシカルバモイル基等)、等を表す。
【0023】
前記一般式(1−a)で表されるオキセタン環含有化合物のうち、R1aが低級アルキル基(特にエチル基)であって、R2aが水素原子、ブチル基、フェニル基、ベンジル基であって、Zが酸素原子である態様が特に好ましい。ここで、前記低級アルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基をいう(以下同様)。
なお、前記一般式(1−a)で表されるオキセタン環含有化合物は一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
【0024】
次に、一般式(1−b)で表されるオキセタン環含有化合物について説明する。
前記一般式(1−b)において、mは2、3または4を表し、Zは酸素原子または硫黄原子を表し、前記Zとしては酸素原子が好ましい。
【0025】
前記一般式(1−b)において、R1bは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、フェニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、またはフリル基を表す。
【0026】
2bは、炭素数1〜12の線形若しくは分岐アルキレン基、線形若しくは分岐ポリ(アルキレンオキシ)基、または下記一般式(3)、(4)および(5)からなる群より選択される2価の基を表す。
【0027】
前記炭素数1〜12の線形若しくは分岐アルキレン基としては、下記一般式(2)で表される基が好ましい。下記一般式(2)中のR3は、メチレン基、エチレン基、またはプロピレン基等の低級アルキレン基を表す。
【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
前記一般式(3)において、nは、0または1〜2000の整数を表し、R4は炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)、または下記一般式(6)で表される基より選択される基を表す。R5は、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)を表し、好ましくはメチル基である。
【0031】
【化4】

【0032】
前記一般式(6)において、jは、0または1〜100の整数を表し、R6は炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)を表し、好ましくはメチル基である。
【0033】
【化5】

【0034】
前記一般式(4)において、R7は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、またはカルボキシル基を表す。
【0035】
【化6】

【0036】
前記一般式(5)において、R8は、酸素原子、硫黄原子、NH、SO、SO2、CH2、C(CH32、またはC(CF32を表す。
【0037】
前記一般式(1−b)で表されるオキセタン環含有化合物のうち、一般式(1−b)において、R1bが低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す態様が好ましく、特に好ましくはエチル基であって、R2bが、一般式(4)のR7が水素原子である基、ヘキサメチレン基、一般式(2)のR3がエチレン基、または一般式(3)のR5がメチル基でかつR4が一般式(6)のR6がメチル基である基であって、Zが酸素原子であって、mが2である態様が好ましい。
【0038】
更に、分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(7)または(8)で表される化合物を挙げることができる。
【0039】
【化7】

【0040】
前記一般式(7)において、rは、25〜200の整数を表し、R9は炭素数1〜4のアルキル基またはトリアルキルシリル基を表す。なお、一般式(7)および(8)中のR1および一般式(7)中のR6は各々、前記一般式(1−b)中のR1bおよび前記一般式(6)のR6と同義である。
【0041】
以下、前記一般式(1−a)または(1−b)で表されるオキセタン環含有化合物の好ましい具体例〔例示化合物1〜37並びに(a)〜(f)〕を列挙する。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
前記のオキセタン環含有化合物の合成は、(1)H.A.J.Curless,”Synthetic Organic Photochemistry”,Plenum,New York(1984)、(2)M.Braun,Nachr.Chem.Tech.Lab.,33,213(1985)、(3)S.H.Schroeter,J.Org.Chem.,34,5,1181(1969)、(4)D.R.Arnold,Adv.Photochem.,6,301(1968)、(5)”Heterocyclic Compounds with Three− and Four−membered Rings”,Part Two,Chapter IX,Interscience Publishers,John Wiley & Sons,New York(1964)、(6)Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,1653(1988)、(7)Pure Appl.Chem.,A29(10),915(1992)、(8)Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993)、(9)特開平6−16804号公報、(10)ドイツ特許第1,021,858号、等を参照することができる。
なお、前記一般式(1−b)で表されるオキセタン環含有化合物もまた、一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
【0047】
前記のオキセタン環含有化合物のうち、例示化合物(a)、例示化合物(b)、例示化合物(d)、例示化合物(f)が好ましい。
【0048】
〈オキシラン基含有化合物〉
前記オキシラン基含有化合物は、分子内に、下記オキシラン環を有する少なくとも1つのオキシラン基(オキシラニル基)を含む化合物、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができ、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。
【0049】
前記オキシラン基含有化合物の具体例としては、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。ここで、エポキシ樹脂とは、モノマー、オリゴマー、またはポリマーをいう。
【0050】
前記芳香族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、少なくとも1つの芳香族核を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ−またはポリ−グリシジルエーテルが挙げられる。例えば、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂などである。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
前記脂環族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、少なくとも1つのシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等である。
【0052】
前記脂肪族エポキシ樹脂としては、好適なものとしては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはポリ−グリシジルエーテル等が挙げられる。例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、または1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジ−またはトリ−グリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等である。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、またはプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0053】
前記オキシラン基含有化合物としては、上述の化合物以外に、分子内に1つのオキシラン環を有するモノマーである脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加体のモノグリシジルエーテル等も挙げられる。
なお、前記オキシラン基含有化合物は、一種単独で用いる以外に、二種以上を併用することもできる。
【0054】
以下、前記オキシラン基含有化合物の好ましい具体例(例示化合物(i)〜(viii))を列挙する。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0055】
【化12】

【0056】
前記のオキシラン基含有化合物のうち、前記例示化合物(i)および例示化合物(v)が好ましい。
【0057】
(重合開始剤)
本発明における液体は、速やかに重合反応を促進させるため、カチオン重合性の重合開始剤を含有することが好ましい。
前記重合開始剤は、特に限定されないが、液体(I)及び/又は液体(II)に含有することが好ましく、低照度安定性の観点からは、いずれか一方に含有することがより好ましい。
前記重合開始剤は、放射線の照射により酸を発生する化合物(適宜、光酸発生剤とも称する)を含有することがより好ましい。
本発明に用いうる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
【0058】
このような光酸発生剤としては、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。
【0059】
また、その他の本発明に用いられる活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物としては、たとえばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同 Re 27,992号、特開平3−140140号等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker etal,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、同第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号等に記載のヨードニウム塩、
【0060】
J.V.Crivello etal,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello etal.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt etal,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello etal,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello etal,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivelloetal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第3,902,114号、同4,933,377号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−28237号、同8−27102号等に記載のスルホニウム塩、
【0061】
J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meier et al,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、T.P.Gill et al,Inorg.Chem.,19,3007(1980)、D.Astruc,Acc.Chem.Res.,19(12),377(1986)、特開平2−161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、
【0062】
S.Hayase etal,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、E.Reichmanis etal,J.Pholymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,23,1(1985)、Q.Q.Zhu etal,J.Photochem.,36,85,39,317(1987)、B.Amit etal,Tetrahedron Lett.,(24)2205(1973)、D.H.R.Barton etal,J.Chem.Soc.,3571(1965)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein etal,Tetrahedron Lett.,(17),1445(1975)、J.W.Walker etal,J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busman etal,J.Imaging Technol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihan etal,Macormolecules,21,2001(1988)、P.M.Collins etal,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayase etal,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanis etal,J.Electrochem.Soc.,Solid State Sci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihan etal,Macromolcules,21,2001(1988)、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号等に記載のO−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、
【0063】
M.TUNOOKA etal,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner etal,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs etal,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachi etal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同044,115号、同第618,564号、同0101,122号、米国特許第4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平3−140109号等に記載のイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号、特開平2−71270号等に記載のジスルホン化合物、特開平3−103854号、同3−103856号、同4−210960号等に記載のジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0064】
また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に
導入した化合物、たとえば、M.E.Woodhouse et al,J.Am.Chem.Soc.,104,5586(1982)、S.P.Pappas et al,J.Imaging Sci.,30(5),218(1986)、S.Kondo etal,Makromol.Chem.,Rapid Commun.,9,625(1988)、Y.Yamada etal,Makromol.Chem.,152,153,163(1972)、J.V.Crivello et al,J.PolymerSci.,Polymer Chem.Ed.,17,3845(1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。たとえば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
【0065】
さらにV.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad etal,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem.Soc.,(C),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0066】
本発明に使用しうる光酸発生剤として好ましい化合物として、下記式(b1)、(b2
)、(b3)で表される化合物を挙げることができる。
【0067】
【化13】

【0068】
式(b1)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。 X-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-や以下に示す基などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0069】
【化14】

【0070】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0071】
【化15】

【0072】
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
【0073】
Rd1は、水素原子、アルキル基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
【0074】
Rc1、Rc3〜Rc5の有機基として、最も好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0075】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0076】
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(b1−1)、(b1−2)、(b1−3)における対応する基を挙げることができる。
【0077】
なお、式(b1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(b1)で表される化合物のR201〜R203のうち少なくともひとつが、式(b1)で表される他の化合物におけるR201〜R203の少なくともひとつと直接、又は、連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0078】
更に好ましい(b1)成分として、以下に説明する化合物(b1−1)、(b1−2)、及び(b1−3)を挙げることができる。
【0079】
化合物(b1−1)は、上記式(b1)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0080】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
【0081】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物等を挙げることができる。
【0082】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0083】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0084】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうち、いずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0085】
次に、化合物(b1−2)について説明する。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0086】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができ、直鎖、分岐2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0087】
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができ、環状2−オキソアルキル基がより好ましい。
【0088】
201〜R203の直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基としては、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0089】
化合物(b1−3)とは、以下の式(b1−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0090】
【化16】

【0091】
式(b1−3)に於いて、R1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
x及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。
Zc-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0092】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
【0093】
1c〜R7cのシクロアルキル基として、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0094】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0095】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
【0096】
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖状若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1cからR5cの炭素数の和が2〜15である。溶剤溶解性がより向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制されるので好ましい。
【0097】
x及びRyとしてのアルキル基、シクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。
x及びRyは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
【0098】
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基、シクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0099】
式(b2)、(b3)中、R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。X-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0100】
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0101】
使用してもよい活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、更に、下
記式(b4)、(b5)、(b6)で表される化合物を挙げることができる。
【0102】
【化17】

【0103】
式(b4)〜(b6)中、Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
206、R207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0104】
前記光酸発生剤のなかでも好ましくものとしては、式(b1)〜(b3)で表される化合物を挙げることができる。
本発明に用いうる光酸発生剤の好ましい化合物例〔(b−1)〜(b−96)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
【化18】

【0106】
【化19】

【0107】
【化20】

【0108】
【化21】

【0109】
【化22】

【0110】
【化23】

【0111】
【化24】

【0112】
【化25】

【0113】
【化26】

【0114】
【化27】

【0115】
また、特開2002−122994号公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体なども好適に用いられる。
特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も本発明に好適に使用しうる。
【0116】
重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。液体中の重合開始剤の含有量は、液体の全固形分換算で、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは1〜7重量%である。
【0117】
(増感剤)
本発明における液体のうち重合開始剤を含有しない液体に、低照度安定性の観点から、増感剤を含有することが好ましい。
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0118】
より好ましい増感剤の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0119】
【化28】

【0120】
式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。
【0121】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同してして色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0122】
一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0123】
【化29】

【0124】
【化30】

【0125】
(共増感剤)
さらに本発明における液体(I)及び/又は液体(II)には、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。該共増感剤も前記増感剤と同様に、前記光重合開始剤が含有される液体(II)に含有することが液体安定性の観点から好ましい。
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0126】
別の例としてはチオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0127】
(着色剤)
本発明における液体(I)及び液体(II)の少なくともいずれか一方が着色剤を含有することが好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の顔料、染料を適宜選択して用いることができるが、特に耐光性に優れるとの観点から顔料であることが好ましい。
【0128】
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。さらに、市販の顔料分散体や表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
【0129】
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0130】
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0131】
青あるいはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0132】
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
【0133】
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
【0134】
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0135】
着色剤の分散には、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
着色剤の分散を行う際には、前記分散剤を添加することが特に好ましい。
また、着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。分散助剤は、着色剤100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0136】
前記液体(I)又は(II)が着色剤を含有するとき、着色剤などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、前記液体(I)及び(II)は、活性エネルギー線硬化型の液体であることが好ましく、液体(I)及び(II)を被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化された液体(I)及び(II)から形成された画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、なかでも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが分散適性や前記液体(I)及び(II)のハンドリング性向上の観点から好ましい。
【0137】
ここで用いる着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.2μmの範囲である。最大粒径は3μm以下、好ましくは1μm以下となるよう、(a)着色剤、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、液体(I)及び(II)の保存安定性、透明性および硬化感度を維持することができる。本発明においては分散性、安定性に優れた前記分散剤を用いることにより微粒子着色剤を用いた場合でも、均一で安定な分散物が得られる。
液体(I)又は(II)中における着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。本発明においては、レーザー回折・散乱法を用いた測定により得られた値を採用する。
液体(I)又は(II)に用いる着色剤の添加濃度としては、分散安定性または溶解性の観点から、50質量%以下であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、2〜50質量%であることが特に好ましい。
本発明において、着色剤を含有する液体が記録液となり、他方の液体が処理液となる。即ち、液体(I)が着色剤を含有するとき、液体(I)は記録液、液体(II)は処理液となる。但し、前記処理液が着色剤を含有してもよいが、記録液の着色剤の含有量を上回らないことが必要である。処理液に着色剤を含む場合は、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、特に好ましくは処理液に着色剤を含有しない。
【0138】
本発明において、前述の通り、前記液体(I)及び前記液体(II)のいずれか一方が着色剤を含む記録液であり、他方が処理液である好ましい。
被記録媒体上で該記録液と該処理液を混合し、画像を形成した場合、記録滴が滲んだり、また、液滴サイズが拡大したりして乱れた画像が得られることがある。このように記録液の滲みや拡大による画像の乱れがない高精細な優れた画像を形成するために、該記録液の表面張力γ1と該処理液の表面張力γ2の関係を、γ2<γ1(mN/m)とすることが好ましく、γ2<γ1−3(mN/m)とすることが更に好ましく、γ2<γ1−5(mN/m)とすることが特に好ましい。
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、液温20℃にて測定した値である。
【0139】
前記記録液および前記処理液の前記表面張力値を得るために、該記録液と処理液の組成を選択する必要があるが、これらの表面張力の調製に界面活性剤を用いることが好ましい。
上記の中でも、処理液に界面活性剤を添加することが高精細な画像を得られる観点から好ましい。
界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウムなど)、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、シリコン系界面活性剤(ポリオキシエチレン−メチルポリシロキサン共重合体など)等が挙げられる。
なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いることも好ましい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、フッ素系界面活性剤(例、メガファックシリーズ(F444、F445、F446
F470、F471、F475、F477など)大日本インキ(株)製、等)、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号(p.3右上欄13行目〜p.6左下欄13行目)の各公報に記載されたものが挙げられる。
特に本発明において使用できる界面活性剤は上記界面活性剤に限定されることはなく、添加濃度に対して効率的に該記録液と該処理液の表面張力を低下させる能力のある添加剤であれば良い。
本発明における界面活性剤の添加量としては、前記表面張力値を満たすように添加されることが必要であることから、特に限定されないが、0.01質量%〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05質量%〜5質量%であり、特に好ましくは0.1質量%〜3質量%である。
【0140】
本発明における液体(I)及び/又は液体(II)には、必須成分、任意成分である前記重合開始剤成分や重合開始剤成分とともに用いられる増感剤、共増感剤に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、液体(I)及び/又は液体(II)の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
本発明における液体(I)及び/又は液体(II)には、さらに、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、射出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することができる。
【0141】
液体(I)及び/又は液体(II)には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、液物性調整のためにノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や、有機フルオロ化合物などを添加することもできる
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
【0142】
(高沸点有機溶媒)
本発明において、高沸点有機溶媒を含有することができるが、前述の通り、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制の観点から、高沸点有機溶媒であることが好ましい。
前記高沸点有機溶媒としては、(1)25℃での粘度が100mPa・s以下又は60℃での粘度が30mPa・s以下であり、かつ(2)沸点が100℃よりも高いものが好ましい。
【0143】
前記(1)の粘度条件のいずれをも満たさない高沸点有機溶媒では、粘度が高くなって、被記録媒体上への付与に支障を来すことがあり、前記(2)の沸点条件を満たさない高沸点有機溶媒では、沸点が低くなりすぎて画像記録中に蒸発し、本発明の効果が低下することがある。
【0144】
前記(1)の条件のうち、25℃での粘度は、更に70mPa・s以下の範囲が好ましく、40mPa・s以下の範囲がより好ましく、20mPa・s以下の範囲が特に好ましい。60℃での粘度は、更に20mPa・s以下の範囲が好ましく、10mPa・s以下の範囲が特に好ましい。また、前記(2)の条件については、沸点は150℃以上の範囲がより好ましく、170℃以上の範囲が特に好ましい。また、融点の下限値としては80℃以下の範囲が好ましい。更には、水の溶解度(25℃)が4g以下であるものが好ましく、3g以下の範囲がより好ましく、2g以下の範囲がさらに好ましく、1g以下の範囲が特に好ましい。
【0145】
ここでの「粘度」は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10r.p.m.の回転数にて測定を行なった。但し、60mPa・sより高粘なものについては、必要により回転数を5r.p.m.、2.5r.p.m.、1r.p.m.、0.5r.p.m.等に変化させて測定を行なった。
【0146】
なお、「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
【0147】
前記高沸点有機溶媒としては、下記式〔S−1〕〜〔S−9〕で表される化合物が好ましい。
【0148】
【化31】

【0149】
前記式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表す。また、a,b,cは、各々独立に0又は1を表す。
【0150】
式〔S−2〕においてR4及びR5は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R6は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I以下同じ)、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、dは0〜3の整数を表す。dが複数のとき、複数のR6は同じでも異なっていてもよい。
【0151】
式〔S−3〕においてArはアリール基を表し、eは1〜6の整数を表し、R7はe価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0152】
式〔S−4〕においてR8は脂肪族基を表し、fは1〜6の整数を表し、R9はf価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0153】
式〔S−5〕においてgは2〜6の整数を表し、R10はg価の炭化水素基(ただしアリール基を除く)を表し、R11は脂肪族基又はアリール基を表す。
【0154】
式〔S−6〕においてR12、R13及びR14は各々独立に、水素原子、脂肪族基又はアリール基を表す。Xは−CO−又は−SO2−を表す。R12とR13又はR13とR14は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0155】
式〔S−7〕においてR15は脂肪族基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリール基又はシアノ基を表し、R16はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、hは0〜3の整数を表す。hが複数のとき、複数のR16は同じでも異なっていてもよい。
【0156】
式〔S−8〕においてR17及びR18は、各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R19はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、iは0〜5の整数を表す。iが複数のとき、複数のR19は同じでも異なっていてもよい。
【0157】
式〔S−9〕においてR20及びR21は、各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表す。jは1又は2を表す。R20及びR21は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0158】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21が脂肪族基又は脂肪族基を含む基であるとき、脂肪族基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、また不飽和結合を含んでいても置換基を有していてもよい。置換基の例として、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、エポキシ基等がある。
【0159】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21が環状脂肪族基、すなわちシクロアルキル基であるか、又はシクロアルキル基を含む基であるとき、シクロアルキル基は3〜8員の環内に不飽和結合を含んでよく、また置換基や架橋基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、脂肪族基、ヒドロキシル基、アシル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基等があり、架橋基の例としてメチレン、エチレン、イソプロピリデン等が挙げられる。
【0160】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21、Arがアリール基又はアリール基を含む基であるとき、アリール基はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0161】
式〔S−3〕、〔S−4〕、〔S−5〕においてR7、R9又はR10が炭化水素基であるとき、炭化水素基は環状構造(例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環)や不飽和結合を含んでいてもよく、また置換基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基等がある。
【0162】
以下に、式〔S−1〕〜〔S−9〕で表される高沸点有機溶媒の中でも、特に好ましい高沸点有機溶媒について述べる。
式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は、各々独立して、炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えばn−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、EH−オクチル、2−エチルヘキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、ベンジル、オレイル、2−クロロエチル、2,3−ジクロロプロピル、2−ブトキシエチル、2−フェノキシエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、クレジル、p−ノニルフェニル、キシリル、クメニル、p−メトキシフェニル、p−メトキシカルボニルフェニル)が好ましい。これらの中でも、R1、R2及びR3は特に、n−ヘキシル、n−オクチル、EH−オクチル、2−エチルヘキシル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデシル、2−クロロエチル、2−ブトキシエチル、シクロヘキシル、フェニル、クレジル、p−ノニルフェニル、クメニルが好ましい。
a、b、cは各々独立に0又は1であり、より好ましくはa、b、cすべて1である。
【0163】
式〔S−2〕においてR4及びR5は、各々独立して、炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えば前記R1について挙げた脂肪族基と同じ基、ヘプチル、エトキシカルボニルメチル、1,1−ジエチルプロピル、2−エチル−1−メチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、1−エチル−1,5−ジメチルヘキシル、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、メンチル、ボルニル、1−メチルシクロヘキシル)、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R1について挙げたアリール基、4−t−ブチルフェニル、4−t−オクチルフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル、2,4,−ジ−t−ブチルフェニル、2,4,−ジ−t−ペンチルフェニル)が好ましい。これらの中でも、R4及びR5は更に、脂肪族基が好ましく、特に、n−ブチル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、2−ブトキシエチル、エトキシカルボニルメチルが好ましい。
6はハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、炭素原子数1〜18のアルキル基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ドデシル)、炭素原子数1〜18のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ベンジルオキシ)、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−トリルオキシ、4−メトキシフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ)又は炭素原子数2〜19のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル)又は炭素原子数6〜25のアリールオキシカルボニル基が好ましい。これらの中でも、R6は更に、アルコキシカルボニル基が好ましく、特に、n−ブトキシカルボニルが好ましい。
dは0又は1である。
【0164】
式〔S−3〕においてArは炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、4−n−ブトキシフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル、2−(2−n−ブトキシカルボニルフェニル)フェニル)が好ましく、これらの中でも、Arは特に、フェニル、2,4−ジクロロフェニル、2−(2−n−ブトキシカルボニルフェニル)フェニルが好ましい。
eは1〜4(好ましくは1〜3)の整数である。
7はe価の炭素原子数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基〔例えば前記R4について挙げた脂肪族基、n−オクチル、前記R4について挙げたアリール基、−(CH22−、
【0165】
【化32】

【0166】
〕又はe価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに結合した炭化水素基〔例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2(OCH2CH23−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、
【0167】
【化33】

【0168】
〕が好ましい。これらの中でも、R7は、更にアルキル基が好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0169】
式〔S−4〕においてR8は炭素原子数1〜24(好ましくは1〜17)の脂肪族基(例えばメチル、n−プロピル、1−ヒドロキシエチル、1−エチルペンチル、n−ヘプチル、n−ウンデシル、n−トリデシル、ペンタデシル、8,9−エポキシヘプタデシル、シクロプロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)が好ましく、これらの中でも、R8は特に、n−ヘプチル、n−トリデシル、1−ヒドロキシエチル、1−エチルペンチル、8,9−エポキシヘプタデシルが好ましい。
fは1〜4(好ましくは1〜3)の整数である。
9はf価の炭素原子数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基又はf価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに連結した炭化水素基(例えば前記R7について挙げた基、1―メチル−2−メトキシエチル、2−ヘキシルデシル)が好ましく、これらの中でも、R9は特に、2−エチルヘキシル、2−ヘキシルデシル、1―メチル−2−メトキシエチル、
【0170】
【化34】

【0171】
が好ましい。
【0172】
式〔S−5〕においてgは2〜4(好ましくは2又は3)である。
10はg価の炭化水素基〔例えば、−CH2−、−(CH22−、−(CH24−、−(CH27−、−(CH28−、
【0173】
【化35】

【0174】
〕が好ましく、これらの中でも、R10は特に、−(CH24−、−(CH28−、
【0175】
【化36】

【0176】
が好ましい。
11は炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R4について挙げた脂肪族基、アリール基)が好ましく、これらの中でも、R11は、更にアルキル基が好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0177】
式〔S−6〕において、R12は水素原子、炭素原子数1〜24の脂肪族基(好ましくは3〜20)〔例えばn−プロピル、1−エチルペンチル、n−ウンデシル、n−ペンタデシル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシメチル、4−t−オクチルフェノキシメチル、3−(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)プロピル、1−(2,4−ジ−t−ブチルフェキシ)プロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、8−N,N−ジエチルカルバモイルオクチル〕、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記Arについて挙げたアリール基、3−メチルフェニル、2−(N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル)フェニル)が好ましく、これらの中でも、R12は特に、n−ウンデシル、8−N,N−ジエチルカルバモイルオクチル、3−メチルフェニル、2−(N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル)フェニルが好ましい。
13及びR14は、水素原子、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)の脂肪族基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、シクロペンチル、シクロプロピル)又は炭素原子数6〜18(好ましくは6〜15)のアリール基(例えばフェニル、1−ナフチル、p−トリル)が好ましく、これらの中でも、R13及びR14は特に、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチル、n−テトラデシル、フェニルが好ましい。
13とR14とが互いに結合し、Nとともにピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成してもよく、R12とR13とが互いに結合し、Nとともにピロリドン環、ピペリジン環を形成してもよい。
Xは−CO−又は−SO2−であり、好ましくはXは−CO−である。
【0178】
式〔S−7〕においてR15は炭素原子数1〜24(好ましくは3〜18)の脂肪族基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシル、t−オクチル、2−ブチル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ドデシル、2−ヘキサデシル、t−ペンタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、炭素原子数2〜24(好ましくは5〜17)のアルコキシカルボニル基(例えばn−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル)、炭素原子数7〜24(好ましくは7〜18)のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、クレジルオキシカルボニル基)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)のアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル、n−ブチルスルホニル、n−ドデシルスルホニル)、炭素原子数6〜30(好ましくは6〜24)のアリールスルホニル基(例えばp−トリルスルホニル、p−ドデシルフェニルスルホニル、p−ヘキサデシルオキシフェニルスルホニル)、炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)又はシアノ基が好ましく、これらの中でも、R15は、更に炭素原子数1〜24の脂肪族基、炭素原子数2〜24のアルコキシカルボニル基がより好ましく、特に、炭素原子数1〜24の脂肪族基が好ましい。
16はハロゲン原子(好ましくはCl)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)の脂肪族基{より好ましくは、アルキル基(例えば前記R15について挙げたアルキル基)、炭素原子数3〜18(更に好ましくは5〜17)のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)}、炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ベンジルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ)又は炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−t−ブチルフェノキシ、p−t−オクチルフェノキシ、m−ペンタデシルフェノキシ、p−ドデシルオキシフェノキシ)であり、これらの中でも、R16は、更に炭素原子数1〜24の脂肪族基がより好ましく、特に炭素原子数1〜12の脂肪族基が好ましい。
hは1〜2の整数である。
【0179】
式〔S−8〕においてR17及びR18の好ましい例は、前記R13及びR14における水素原子以外の例と同じであり、これらの中でも、R17及びR18は、更に脂肪族基がより好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、n−ドデシルが好ましい。但し、R17及びR18は互いに結合して環を形成することはない。
19の好ましい例は、前記R16と同じであり、これらの中でもR19は、更にアルキル基及びアルコキシ基がより好ましく、特に、n−オクチル、メトキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシが好ましい。
iは1〜5の整数である。
【0180】
式〔S−9〕においてR20及びR21の好ましい例は、結合して環を形成しない場合には、前記R1、R2及びR3と同じであり、これらの中でもR20及びR21は、特に、炭素原子数1〜24の置換又は無置換の脂肪族基が好ましい。
20とR21とが互いに結合し環を形成してもよく、形成される環としては、3〜10員環が好ましく、5〜7員環が特に好ましい。
jは1又は2を表し、好ましくは、jは1である。
【0181】
以下、高沸点有機溶媒の具体例(例示化合物S−1〜S−53)並びに、各高沸点有機溶媒の粘度(25℃及び60℃の環境下、前記手段により測定した値;mPa・s)及び沸点(℃)を示す。
ここで、高沸点有機溶媒の沸点は、減圧蒸留時の沸点から常圧に換算した値である。なお、下記具体例において、沸点の記載のないものは170℃で沸騰しないことが確認されたものであり、25℃における粘度の記載のないものは25℃で固体であることを表す。
【0182】
【化37】

【0183】
【化38】

【0184】
【化39】

【0185】
【化40】

【0186】
【化41】

【0187】
【化42】

【0188】
【化43】

【0189】
【化44】

【0190】
【化45】

【0191】
高沸点有機溶媒は、1種類を単独で用いても、2種以上〔例えば、トリクレジルホスフェートとジブチルフタレート、トリオクチルホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレートとポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)〕を混合して使用してもよい。
【0192】
高沸点有機溶媒の前記以外の化合物例、及び/又はこれら高沸点有機溶媒の合成方法については、例えば、米国特許第2,322,027号、同第2,533,514号、同第2,772,163号、同第2,835,579号、同第3,594,171号、同第3,676,137号、同第3,689,271号、同第3,700,454号、同第3,748,141号、同第3,764,336号、同第3,765,897号、同第3,912,515号、同第3,936,303号、同第4,004,928号、同第4,080,209号、同第4,127,413号、同第4,193,802号、同第4,207,393号、同第4,220,711号、同第4,239,851号、同第4,278,757号、同第4,353,979号、同第4,363,873号、同第4,430,421号、同第4,430,422号、同第4,464,464号、同第4,483,918号、同第4,540,657号、同第4,684,606号、同第4,728,599号、同第4,745,049号、同第4,935,321号、同第5,013,639号、欧州特許第276,319A号、同第286,253A号、同第289,820A号、同第309,158A号、同第309,159A号、同第309,160A号、同第509,311A号、同第510,576A号、東独特許第147,009号、同第157,147号、同第159,573号、同第225,240A号、英国特許第2,091,124A号等の各明細書、特開昭48−47335号、同50−26530号、同51−25133号、同51−26036号、同51−27921号、同51−27922号、同51−149028号、同52−46816号、同53−1520号、同53−1521号、同53−15127号、同53−146622号、同54−91325号、同54−106228号、同54−118246号、同55−59464号、同56−64333号、同56−81836号、同59−204041号、同61−84641号、同62−118345号、同62−247364号、同63−167357号、同63−214744号、同63−301941号、同64−9452号、同64−9454号、同64−68745号、特開平1−101543号、同1−102454号、同2−792号、同2−4239号、同2−43541号、同4−29237号、同4−30165号、同4−232946号、同4−346338号等の各公報に記載されている。
【0193】
本発明においては、沸点が100℃よりも高い高沸点有機溶剤が好適であり、更には沸点が170℃よりも高い高沸点有機溶剤が好ましい。
【0194】
高沸点有機溶媒の液体(II)中における添加量としては、該液体の全質量に対して、50%質量以上100質量%以下の範囲が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0195】
〈その他成分〉
上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
〜貯蔵安定剤〜
本発明における液体には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性の化合物と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0196】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0197】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性の化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算で、0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0198】
〜導電性塩類〜
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性が良い場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0199】
〜溶剤〜
本発明においては、既述の高沸点溶剤以外の溶剤を用いることができる。溶剤としては、液(インク)の極性や粘度、表面張力、着色材料の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、中でも既述した高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
【0200】
100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0201】
溶剤は一種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量は各液中0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、実質的に含まないのが好ましい。本発明に係る液体(I)及び液体(II)に水を含有すると、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性の点、及び非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性の点で好ましくない。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0202】
〜その他添加剤〜
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0203】
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明に係る液体(I)と液体(II)とに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
前記1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
【0204】
〔インクジェット記録方法〕
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、前記本発明のインクジェット記録用インクセットに含まれる少なくとも2種以上の液体を被記録媒体に噴射して画像を形成する工程と、形成された画像にエネルギーを付与して硬化させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0205】
前記の如く、被記録媒体上でインクジェット記録用インクセットの少なくとも2種類の液体が混合され、重合性の化合物の重合硬化反応が進行して画像形成されるが、このとき、エネルギーを付与することで、重合、硬化反応を促進させ、より強固な画像をより効率よく形成することができる。このようなエネルギー付与は光照射又は加熱により行われることが好ましい。
【0206】
−画像形成工程−
画像形成工程においては、前記インクジェット記録用インクセットに含まれる少なくとも2種の液体を用いて、被記録媒体に噴射して画像を形成する。
【0207】
前記インクジェット記録用インクセットに含まれる少なくとも2種の液体を被記録媒体に噴射する方法は、インクジェットノズルを用いた、いかなるインクジェット記録方式をも適用できる。例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等に好適に使用される。
なお、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0208】
画像形成工程は、前記インクジェット記録方式により、前記液体(I)及び液体(II)を被記録媒体に噴射、打滴するが、同時に、又は順次に打滴する。
即ち、被記録媒体の上に、インクジェットプリンタにおけるインク吐出口(ヘッド)から、液体(I)及び液体(II)に基づく液滴を同時に、又は、順次に吐出し、被記録媒体上でそれぞれの液滴が混合して所望の画像を形成する。
ただし、前記液体(I)及び液体(II)のどちらか一方が着色剤を含む記録液であり、もう一方が、処理液である場合、処理液の後に記録液を打滴することがより好ましい。
即ち、被記録媒体の上に、インクジェットプリンタにおけるインク吐出口(ヘッド)から、処理液の後に記録液を吐出し、被記録媒体上でそれぞれの液滴が混合して所望の画像を形成する。この場合、処理液の液滴を打滴した後、記録液の液滴を前記処理液の液滴と重なり部をもって打滴することが好ましい。
【0209】
前記少なくとも2種の液体としては、前述のオキセタン環含有化合物を含有する液体(I)、及びオキシラン基含有化合物を含有する液体(II)を少なくとも含み、更にその他の液体を含むことができる。
前記2種の液体に含まれるオキセタン環を有する化合物の総量(p)とオキシラン基を有する化合物の総量(q)の比(質量比)p/qが10/90以上90/10以下となるように、前記2種の液体を前記被記録媒体上に噴射して画像を形成することが好ましい。
前記質量比p/qは、より硬化性を向上させる観点から、15/85以上85/15であることがより好ましく、20/80以上80/20以下が特に好ましい。
【0210】
前記被記録媒体は、後述の通り、特に限定されず、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体であっても用いることができる。
ここで、前記非浸透性の記録媒体とは、実質的に液滴が浸透しない媒体をいう。「実質的に浸透しない」とは、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、緩浸透性記録媒体とは、10pl(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100m秒以上である媒体をいい、具体的にはアート紙などが挙げられる。非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体の詳細については後述する。
なお、浸透性の記録媒体は、10plの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に全液量が浸透するまでの時間が100m秒以下である媒体であり、具体的には普通紙、多孔質紙などである。
【0211】
画像形成における液体(I)及び(II)の液滴は、各々0.1pL(ピコリットル;以下同様)以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されるのが好ましい。液滴サイズが前記範囲内であると、高先鋭度の画像を濃度で描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
【0212】
画像記録の際、液体(II)の液滴の1打滴当たりの液体(I)の付与量のバランスとしては、液体(II)の液滴を1とした場合の液体(I)の付与量(質量比)は0.05〜5の範囲が好ましく、0.07〜1の範囲がより好ましく、0.1〜1の範囲が特に好ましい。
【0213】
また、液体(II)の付与後、液体(I)の液滴が打滴されるまでの打滴間隔、あるいは液体(I)の付与後、液体(II)の液滴が打適されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上400m秒以下の範囲内であるのが好ましい。打滴間隔が前記範囲内であると、本発明の効果を顕著に奏し得る点で有効である。打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上300m秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上200μ秒以下である。
【0214】
また、液体(I)及び液体(II)は被記録媒体上に噴射して付与されるが、前記液体(I)、(II)以外の他の液体については、該他の液体の目的に応じて、後述の塗布装置による塗布や、前記インクジェットノズルによる噴射など、いかなる方法で被記録媒体上に付与してもよい。また、付与のタイミングも特に限定されるものではない。着色剤を含有する場合には、インクジェットノズルでの噴射によるのが好ましく、液体(I)をノズルから噴射した後に更に噴射して付与されることが好ましい。
【0215】
(塗布装置を用いた塗布)
塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
【0216】
−固定化工程−
本発明において、優れた定着性を得る観点から、液体(I)及び液体(II)の液滴の付与後の記録画像にエネルギーを付与して記録画像を固定化する工程を設ける。
エネルギーの付与により、含まれる重合性の化合物の重合による硬化反応を促進させ、より強固な画像をより効率よく形成することができる。例えば重合開始剤を含む系では、活性光や加熱などの活性エネルギーの付与により重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性の化合物の重合による硬化反応が促進される。
エネルギーの付与は、活性光の照射、又は加熱によって好適に行なうことができる。
【0217】
前記活性光としては、例えば、紫外線、可視光線など、並びにα線、γ線、X線、電子線などが使用できる。これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点で好ましく、紫外線が特に好ましい。
硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般には1〜500mJ/cm2程度である。
【0218】
また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
加熱は、非接触型の加熱手段を使用して行なうことができ、オーブン等の加熱炉内を通過させる加熱手段や、紫外光〜可視光〜赤外光等の全面露光による加熱手段等が好適である。加熱手段としての露光に好適な光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯等が挙げられる。
【0219】
−被記録媒体−
被記録媒体としては、特に限定されず用いることができるが、発明の効果が顕著に奏される観点より、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いることが好ましい。
非浸透性の記録媒体としては、例えば、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。また、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した基材も使用できる。
【0220】
前記合成樹脂としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。合成樹脂を用いた場合の厚みや形状としては、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれでもよく、特に限定されるものではなく、透明又は不透明のいずれであってもよい。
【0221】
前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状にして用いることも好ましく、各種非吸収性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることができる。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等が挙げられる。その他プラスチックスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
【0222】
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。特に好ましいのは、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
【0223】
前記金属としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等、又はステンレス等、及びこれらの複合材料が好適である。
【0224】
また更に、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることも可能であり、レーベル面側にインク受容層および光沢付与層を付与することもできる。
【実施例】
【0225】
以下、本発明を、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0226】
<シアン顔料分散物の調製>
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)16g、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル(OXT−221;東亞合成(株)製)48g、及びBYK−168(ビックケミー社製)16gを混合し、スターラーで1時間攪拌した。攪拌後の混合物をアイガーミルにて分散し、顔料分散物Aを得た。
PB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)16g、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000ダイセル・サイテック(株)製)48g、及びBYK−168(ビックケミー社製)16gを混合し、スターラーで1時間攪拌した。攪拌後の混合物をアイガーミルにて分散し、顔料分散物Bを得た。
ここで、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間1時間とした。
【0227】
<インクの調製>
下記表1、2に示す成分を攪拌混合溶解し、インク1〜20を得た。また、インク1〜20の表面張力をウィルヘルミー法(表面張力計CBVP−Z、協和界面科学(株)製)で20℃、60%RHにて測定したところ、表1、2に示す値であった。
【0228】
【表1】

【0229】
【表2】

【0230】
≪表1、2の記号の説明≫
・OXT−221:ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル(東亞合成(株)製、オキセタン環を有する化合物)
・Cel3000:1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(ダイセル・サイテック(株)製、オキシラン基を有する化合物)
・開始剤A:Irgacure250(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
・増感剤A:9,10−ジブトキシアントラセン
・界面活性剤A:メガファックF475(大日本インキ化学工業製)
【0231】
<低照度光に対する安定性>
上記で作製したシアンインク用記録液(液体(I))及び処理液(液体(II)(インク1〜20)をインクジェットプリンター(東芝TEC社製ヘッドを搭載した実験機;ノズル密度300dpi)の2つのインクヘッド(インクヘッド1およびインクヘッド2)に充填した状態にし、紫外線光源(365nm波長のメタルハライドランプ;照射照度は被記録媒体上で1000mJ/cm2)を照射中にしておき、一定時間後この状態で待機し、その後吐出性について下記評価基準に従って評価し、その結果を表3に示す。なお、インクヘッド1および2のノズル面における漏れ光の照度は約0.1mWであった。尚、インクヘッド1には液体(I)を、インク2には液体(II)を充填した。
【0232】
<評価基準>
◎:待機状態が100000秒を超えても50%以上のノズルから吐出できる
○:待機状態が1500秒を超えて100000秒以内で50%のノズルから不吐出が生じる
△:待機状態が1000秒を超えて1500秒以内で50%のノズルから不吐出が生じる
×:待機状態が1000秒以内で50%のノズルから不吐出が生じる
【0233】
【表3】

【0234】
≪表1、2の記号の説明≫
・ p1/q1:液体(I)におけるオキセタン化合物(p1)とオキシラン化合物(q1)の質量比が、90/10を超えれば“>90/10”とし、90/10未満であれば“<90/10”とし、90/10と等しければ“=90/10”とした。
・ p2/q2:液体(II)におけるオキセタン化合物(p2)とオキシラン化合物(q2)の質量比が、10/90を超えれば“>10/90”とし、10/90未満であれば“<10/90を”とし、10/90と等しければ“=10/90”とした。
【0235】
上記表3のインクセット1〜29の結果より、液体(I)もしくは液体(II)に含有するオキセタン化合物とオキシラン化合物がある割合の範囲で混合していると光安定性が悪化することが分かった。すなわち、液体(I)もしくは液体(II)に含有するオキセタン化合物(p1もしくはp2)とオキシラン化合物(q1もしくはq2)の質量比(p1/q1もしくはp2/q2)が、90/10以上または10/90以下だと低照度での光安定性は良好であるが、90/10または10/90の質量比(p1/q1もしくはp2/q2)では光安定性の悪化が確認でき、質量比(p1/q1もしくはp2/q2)が10/90を超え90/10未満の範囲では光安定性は非常に悪く、待機状態が1000秒以内で50%のノズルから不吐出が生じることが分かった。
尚、開始剤を添加しない(インク12、13、16)では、待機状態が100000秒を超えても吐出不良が起きないことが明らかになった。
【0236】
<硬化性の評価>
上記で作製した記録液(インク1、2、12)および処理液(インク14、15、16)をインクジェットプリンター(東芝TEC社製ヘッド(CA3)を搭載した実験機、画像解像度300×300 dpi(1色につき2ヘッド使用)、印字範囲:53.583mm、ノズル数:636/2ヘッド、印字速度:0.41 m/sec 、印字方式:シングルパス方式)で、被記録媒体上に処理液の液滴に記録液の液滴が重なるようにベタ画像を印字した。
印字後、メタルハライドランプ(365nm波長のもの)を使い、積算光量を変えて紫外線照射を行い、前記ベタ画像を硬化させた。
尚、処理液および記録液の打滴密度は表4に示す通りである。また、被記録媒体としては、厚さ、60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用いた。
【0237】
硬化性の判定は、上記印字サンプルの印字面を普通紙(富士ゼロックス社製コピー用紙C2)と重ね合わせてローラーにて圧着させた後、印字サンプルと普通紙を剥がし、普通紙側に転写するインクがあれば未硬化であり、転写しなければ硬化したと判断した。
また、硬化性の評価は下記基準で行った。結果を表4に示す。
<評価基準>
○:積算光量50mJ/cm2以内硬化した
△:積算光量50mJ/cm2超100mJ/cm2以内硬化した
×:積算光量100mJ/cm2以内で硬化しない
【0238】
【表4】

【0239】
上記表4の結果より、被記録媒体上でのオキセタン化合物(p)とオキシラン化合物(q)の質量比(p/q)が、90/10以下10/90以上の範囲で積算光量100mJ/cm2以内で硬化し、質量比(p/q)が90/10を超えるか、もしくは、10/90より小さい範囲では硬化性が悪化することが分かった。
また、表4のインクセット3、20の結果より、非記録媒体上で、開始剤を添加しない液体と開始剤を添加した液体を混合させることによって、良好な硬化性が得られることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン環を有する化合物を少なくとも含む液体(I)とオキシラン基を有する化合物を少なくとも含む液体(II)との少なくとも2種類の液体を有するインクジェット記録用インクセットであって、該液体(I)にはオキシラン基を有する化合物を含まないか、含んでも、オキセタン環を有する化合物の総量(p1)とオキシラン基を有する化合物の総量(q1)の比(質量比)p1/q1が90/10以上であり、かつ、該液体(II)にはオキセタン環を有する化合物を含まないか、含んでも、オキセタン環を有する化合物の総量(p2)とオキシラン基を有する化合物の総量(q2)の比(質量比)p2/q2が10/90以下であることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【請求項2】
前記液体(I)又は(II)に重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項3】
前記重合開始剤を含有しない液体が増感剤を含有することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項4】
前記液体(I)及び前記液体(II)のいずれか一方が着色剤を含む記録液であり、他方が処理液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項5】
前記処理液に界面活性剤を含有することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットに含まれる少なくとも2種以上の液体を被記録媒体に噴射して画像を形成する工程と、形成された画像にエネルギーを付与して硬化させる工程と、を含むインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記エネルギーの付与が光照射または加熱により行われることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記画像を形成する工程が、2種以上の液体に含まれるオキセタン環を有する化合物の総量(p)とオキシラン基を有する化合物の総量(q)の比(質量比)p/qが10/90以上90/10以下で前記2種類以上の液体を前記被記録媒体上に付与して画像を形成する工程であることを特徴とする請求項6又は7に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2007−270078(P2007−270078A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100739(P2006−100739)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】