説明

インクジェット記録用インク組成物、インクセット、インクカートリッジおよびインクジェット記録装置

【課題】硬化性、耐擦過性に優れたインクジェット記録用インク組成物を提供する。
【解決手段】インクジェット記録用インク組成物は、エネルギー線によって硬化するインク組成物であって、カチオン重合性およびラジカル重合性を有する重合性化合物と、エネルギー線を受けることによって、カチオン重合における活性種、すなわち、酸を生じることができる二種類のスルホニル基を有する化合物を有するインクジェット記録用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インク組成物、インクセット、インクカートリッジお
よびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光などのエネルギー線照射によって硬化するインク組成物の開発が種々行わ
れている。このようなインク組成物は、エネルギー線の照射によって速やかに硬化し、か
つ、十分に硬化する性能が求められている。
【0003】
ラジカル重合型のインク組成物は、光ラジカル開始剤等によって組成物中にラジカルが
発生すると、比較的速やかに重合が進行する。しかしながら、ラジカル重合型のインク組
成物は、停止反応や空気中の酸素によって、ラジカルが失活する場合があり、完全に硬化
させることは難しかった。たとえば、特開2006−241194号公報には、ラジカル
重合性化合物、および重合開始剤を含有するインク組成物が提案されている。同公報のイ
ンク組成物は、エネルギー線の照射による硬化性が良好であるとの記載がある。しかし、
一般的に、ラジカル重合性インク組成物の転化率(コンバージョン)は、70〜80%程
度に留まることが分かっている。
【0004】
また、カチオン重合型のインク組成物は、ラジカル重合型に比較して、重合の開始が緩
やかで、重合速度も小さいことから、インクジェット記録用のインク組成物としては、未
だ技術的に不十分な状況にある。しかし、カチオン重合型のインク組成物は、その重合機
構から後硬化する性質もあり、転化率が高まる可能性があると考えられる。
【特許文献1】特開2006−241194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラジカル重合型の重合速度の大きさと、カチオン重合型の転化率の高さを兼ね備えたイ
ンク組成物は、たとえば、ラジカル重合型およびカチオン重合型のモノマーを各開始剤と
共にインク組成物に配合するだけでは得られないと考えられる。その理由として、本発明
者は、両モノマーが互いに希釈剤の関係となること、および、カチオン重合開始剤による
カチオンの発生が緩慢であることに起因しているという知見を得た。
【0006】
本発明のいくつかの態様における目的の1つは、硬化性、耐擦過性に優れたインクジェ
ット記録用インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるインクジェット記録用インク組成物は、
エネルギー線によって硬化するインク組成物であって、
カチオン重合性およびラジカル重合性を有する重合性化合物と、
下記一般式(1)で表される化合物と、
下記一般式(2)で表される化合物と、
を含有する。
【0008】
【化3】

【0009】
【化4】

【0010】
(ただし、式中R1、R2は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
このようなインクジェット記録用インク組成物は、硬化性、耐擦過性に優れている。
【0011】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、
さらに、前記エネルギー線によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含有する
ことができる。
【0012】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、
前記ラジカル重合開始剤は、ベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド誘導体
であることができる。
【0013】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、
前記重合性化合物は、オキセタンアクリレート類、オキソランアクリレート類、ジオキ
ソランアクリレート類から選択される少なくとも1種であることができる。
【0014】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、
さらに、ラジカル重合性化合物を含有することができる。
【0015】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、
さらに、カチオン重合性化合物を含有することができる。
【0016】
本発明にかかるインクセットは、
上述のインクジェット記録用インク組成物を備える。
【0017】
本発明にかかるインクカートリッジは、
上述のインクセットを備える。
【0018】
本発明にかかるインクジェット記録装置は、
上述のインクカートリッジを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に好適な実施形態について、詳細に説明する。
【0020】
1.インクジェット記録用インク組成物
本発明にかかるインクジェット記録用インク組成物は、重合性化合物と、一般式(1)
で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物と、を含有する。
【0021】
1.1.重合性化合物
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に含有される重合性化合物は、カチオ
ン重合性およびラジカル重合性を有する。以下本明細書において、このような重合性化合
物を「ハイブリッド型重合性化合物」と称する場合がある。本実施形態のインクジェット
記録用インク組成物に含有される重合性化合物としては、一分子内にカチオン重合性の官
能基およびラジカル重合性の官能基を有する化合物を挙げることができる。本実施形態の
重合性化合物は、カチオン重合反応およびラジカル重合反応の少なくとも一方によって、
重合硬化する特性を有し、その性状としては、モノマー状、オリゴマー状、直鎖状ポリマ
ー状、樹枝状ポリマー状の種を問わず使用することができる。
【0022】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物において用いる重合性化合物が有する
カチオン重合性の官能基としては、エポキシ環(芳香族エポキシ基、脂環式エポキシ基の
構造を有する基など)、オキセタン環、オキソラン環、ジオキソラン環、およびビニルエ
ーテル構造、およびこれらの構造を有する官能基が挙げられる。エポキシ環については、
芳香族系および脂環系が硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシ
環が好ましい。また、重合性化合物は、カチオン重合性の官能基を複数有することが、反
応速度、硬化性の観点からより好ましい。
【0023】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物において用いる重合性化合物が有する
ラジカル重合性の官能基としては、二重結合を構造中に有する官能基が挙げられ、たとえ
ば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル
基、芳香族ビニル基、アリル基、N−ビニル基、ビニルエステル基(酢酸ビニル、プロピ
オン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の構造を有する基など)、アリルエステル基(酢
酸アリルの構造を有する基など)、ハロゲン含有ビニル基(塩化ビニリデン、塩化ビニル
の構造を有する基など)、ビニルエーテル構造を有する基(メチルビニルエーテル、ブチ
ルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキ
シルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、
クロロエチルビニルエーテル構造を有する基など)、シアン化ビニル基((メタ)アクリ
ロニトリルの構造を有する基など)などが挙げられる。なお、本明細書において、「アク
リレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレ
ート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)
アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0024】
上記例示したラジカル重合性の官能基の中でも、エチレン性不飽和二重結合を含む官能
基は、重合性が高く、印刷面の硬化速度や硬化性を向上させるためにさらに好ましい。ま
た、このような基は、酸素阻害を受けにくいため、比較的低エネルギーでの硬化が可能と
なるためより好ましい。エチレン性不飽和二重結合を含む官能基としては、ビニル基やア
リル基が挙げられる。また、重合性化合物は、ラジカル重合性の官能基を複数有すること
が、反応速度、硬化性の観点からより好ましい。
【0025】
本実施形態の重合性化合物は、例示したカチオン重合性の官能基の少なくとも1種、お
よび例示したラジカル重合性の官能基の少なくとも1種を有している。そして、本実施形
態の重合性化合物は、一分子内にカチオン重合性の官能基およびラジカル重合性の官能基
を、それぞれ少なくとも1つずつ有している。
【0026】
本実施形態の重合性化合物としては、カチオン重合性の官能基を有する化合物に、ラジ
カル重合性の官能基を導入したもの、および、ラジカル重合性の官能基を有する化合物に
カチオン重合性の官能基を導入したものを例示することができる。
【0027】
本実施形態の重合性化合物の具体的な例としては、オキセタンアクリレート、オキセタ
ンメタクリレート、1,3−ジオキソラン系(メタ)アクリレート、エポキシ化合物の(
メタ)アクリル変性体、などが挙げられる。オキセタン系アクリレートは、たとえば、商
品名「OXE−10」(3−エチル−3−アクリロイロキシメチルオキセタン)として大
阪有機化学工業株式会社から市販され入手可能である。オキセタン系メタアクリレートは
、たとえば、商品名「OXE−30」として大阪有機化学工業株式会社から市販され入手
可能である。また、1,3−ジオキソラン系アクリレートは、商品名「MEDOL10」
(4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン)、
「MIBDOL10」、および「CHDOL10」として大阪有機化学工業株式会社から
市販され入手可能である。また、エポキシ化合物のアクリル変性体は、たとえば、商品名
「UVACURE1533」としてダイセル・サイテック株式会社から市販され入手可能
である。
【0028】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物中の重合性化合物の含量は、組成物全
体に対して5質量%〜95質量%が適当であり、好ましくは、7質量%〜90質量%、さ
らに好ましくは、10質量%〜80質量%の範囲である。
【0029】
1.2.一般式(1)で表される化合物、および一般式(2)で表される化合物
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、一般式(1)で表される化合物、
および一般式(2)で表される化合物を含有する。
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、エネルギー線を受けることによって、カチオン重合
における活性種、すなわち、酸を生じることができる。一般式(1)で表される化合物は
、式中R1がメチル基である場合、トシル基(p−トルエンスルホニル基)を有する構造
であり、エネルギー線を受けることによって、酸が発生するものと考えられる。これによ
り、一般式(1)で表される化合物は、重合性化合物のカチオン重合性を有する官能基の
重合開始剤としての機能を有することができる。
【0031】
一般式(2)で表される化合物は、エネルギー線を受けることによって、カチオン重合
における活性種、すなわち、酸を生じることができる。一般式(2)で表される化合物は
、式中R2がメチル基である場合、トシル基(p−トルエンスルホニル基)を有する構造
であり、エネルギー線を受けることによって、酸が発生するものと考えられる。これによ
り、一般式(2)で表される化合物は、重合性化合物のカチオン重合性を有する官能基の
重合開始剤としての機能を有することができる。
【0032】
一般式(1)で表される化合物、および一般式(2)で表される化合物は、互いに相乗
的に働くことができる。すなわち、両者がインクジェット記録用インク組成物に含有され
た状態で、エネルギー線を受けると、カチオン重合のための活性種を短時間に大量に発生
することができる。これにより、重合性化合物のカチオン重合の初期反応速度を高めるこ
とができる。また、インクジェット記録用インク組成物中の重合性化合物の転化率(コン
バージョン)を高めることができる。一方、一般式(1)で表される化合物、および一般
式(2)で表される化合物のいずれか一方のみをインクジェット記録用インク組成物に配
合するだけでは、このような効果は小さい。
【0033】
一般式(1)で表される化合物、および一般式(2)で表される化合物が共存すること
によって上記の効果が得られるメカニズムについては、極めて明らかとは言えないが、一
般式(2)で表される化合物が触媒的な作用を有するものと考えられる。
【0034】
式中R1およびR2は、水素または炭素数1〜6のアルキル基であるが、アルキル鎖の
長さは、たとえば、インクジェット記録用インク組成物における、一般式(1)および一
般式(2)で表される化合物の分散性をそれぞれ制御するために適宜選択することができ
る。式中R1およびR2は、エネルギー線による活性種の生成速度およびインクジェット
記録用インク組成物中での該化合物の分散性の観点から、炭素数1〜4のアルキル基であ
ることがさらに好ましい。
【0035】
1.3.その他の成分
1.3.1ラジカル重合開始剤
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、ラジカル重合開始剤を含有するこ
とができる。ラジカル重合開始剤は、エネルギー線を受けることによって、ラジカル重合
における活性種を生じることができる。これにより、ラジカル重合開始剤は、重合性化合
物のラジカル重合性を有する官能基の重合開始剤としての機能を有することができる。
【0036】
エネルギー線によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤は、当業者間で公知のも
のを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、C
hemical Review,93,435(1993)や、R.S.Davidso
n著、Journal of Photochemistry and biology
A:Chemistry,73.81(1993)や、J.P.Faussier“P
hotoinitiated Polymerization−Theory and
Applications”:Rapra Review vol.9,Report,
Rapra Technology(1998)や、M.Tsunooka et al
.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996)に多く記載されている。ま
た、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」(ぶんしん出版(
1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重
合に利用される化合物が多く記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topi
cs in Current Chemistry,156,59(1990)、G.G
.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,
1(1993)、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(
1990)、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(19
80)等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的
もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0037】
好ましいラジカル重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩
化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケト
オキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタ
ロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(
k)アシルフォスフィンオキサイド系の化合物等が挙げられる。
【0038】
(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING
IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FO
UASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェ
ノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。
【0039】
より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、α−チオベンゾフェノン化合物、ベ
ンゾインエーテル化合物、α−置換ベンゾイン化合物、ベンゾイン誘導体、アロイルホス
ホン酸エステル、ジアルコキシベンゾフェノン、ベンゾインエーテル類、α−アミノベン
ゾフェノン類、p−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、チオ置換芳香族ケトン、
アシルホスフィンスルフィド、アシルホスフィン、チオキサントン類、クマリン類等を挙
げることができる。
【0040】
(b)芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V、VI及び、VII族の元素、具体
的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が
含まれる。例えば、スルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼ
ンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒ
ド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等で、具体的には1−メトキシ−4−フェ
ニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)等の化合物が好適に使用される。
【0041】
(c)「有機過酸化物」としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物
のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’4,4’−テトラ−(t−ブチ
ルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパ
ーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパー
オキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオ
キシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカル
ボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオ
キシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過
酸化エステル系が好ましい。
【0042】
(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、例えば2,2’−ビス(o−クロロフ
ェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−
ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビ
ス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール
、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシ
フェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’
,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−
4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェ
ニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ト
リフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げら
れる。
【0043】
(e)ケトオキシムエステルとしては3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3
−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン
、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロ
パン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p
−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイ
ミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0044】
本実施形態におけるラジカル重合開始剤の他の例である(f)ボレート塩の例としては
米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,77
2号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の
他の例である(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特
開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号
記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0045】
本実施形態におけるラジカル重合開始剤の他の例である(h)メタロセン化合物の例と
しては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41
484号、特開平2−249号、特開平2−4705号記載のチタノセン化合物ならびに
、特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体を挙げ
ることができる。
【0046】
上記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロ
ライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル
−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペン
タジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シク
ロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シク
ロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエ
ニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエ
ニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチル
シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル
、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル
、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)
フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−
(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,
6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げるこ
とができる。
【0047】
(i)活性エステル化合物の例としては、ニトロベンズルエステル化合物、イミノスル
ホネート化合物、等が挙げられる。
【0048】
(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、Vicure 10、
30(Stauffer Chemical社製)、Irgacure 127、184
、500、651、2959、907、369、379、754、1700、1800、
1850、819、OXE01、Darocure 1173、ITX(チバ・スペシャ
ルティ・ケミカルズ社製)、Quantacure CTX(Aceto Chemic
al社製)、Kayacure DETX−S(日本化薬社製)、ESACURE KI
P150(Lamberti社製)の商品名で入手可能な化合物を挙げることができる。
【0049】
(k)アシルフォスフィンオキサイド系の化合物の好ましい例としては、2,4,6−
トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドが挙げられ、Darocu
re TPOの商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から入手可能な化合物が挙
げられる。
【0050】
ラジカル重合開始剤は、本実施形態にかかるインク組成物中、1〜20重量%含まれる
ことが好ましく、3〜15重量%含まれることがより好ましい。上記範囲とすることによ
り、硬化後の組成物の機械的強度を低下させることなく硬化性を保持する効果を奏する。
ラジカル重合開始剤は、照射されるエネルギー線に感度を有するものを適宜選択して使用
することができる。
【0051】
1.3.2.ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、上述のハイブリッド重合性化合物
の他に、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有する
ことができる。ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物は、重合の反応速度や
、インク物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種または複数を混合して用いることがで
きる。また、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物は単官能化合物であって
も、多官能化合物であってもよい。
【0052】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に使用可能なラジカル重合性化合物と
しては、ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル
重合性の化合物が挙げられる。
【0053】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類
、芳香族ビニル類、アリル基を有する化合物類、およびN−ビニル基を有する化合物類等
が挙げられる。さらにラジカル重合性化合物としては、ビニルエステル類[酢酸ビニル、
プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリル等]
、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、ビニルエーテル類[メチル
ビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエー
テル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキ
シルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル等]、シアン化ビニル[(メタ)アク
リロニトリル等]、オレフィン類[エチレン、プロピレン等]などが挙げられる。
【0054】
本実施形態で使用可能な(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げら
れる。
【0055】
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル基(メタ)アクリレート、2−エチル
ヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル
(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート
、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキ
シル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボル
ニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アク
リレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ
)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)ア
クリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブト
シキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキ
シメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メ
トキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(
メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1
H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)ア
クリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)
アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)ア
クリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート
、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレ
ート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)
アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ
)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシ
ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチル
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメ
チルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレー
ト、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メ
タ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オ
リゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド
(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレン
オキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキ
ルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ
プロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキ
シドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸
、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−
ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、
トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレー
ト、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノー
ル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフ
ェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO
変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)
アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ
ールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)
アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロ
ヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリ
レート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフ
ェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレ
ート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル
−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アク
リレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシク
ロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)
アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパ
ンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(
メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロー
ルプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アル
キレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトール
トリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレー
ト、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、
ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
【0058】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)
アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテ
トラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリ
レート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることが
できる。
【0059】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレ
ート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0060】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ
)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレ
ンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリト
ールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0061】
本実施形態で使用可能な(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルア
ミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プ
ロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチ
ル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロ
ピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチ
ル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリ
ロイルモルフォリンが挙げられる。
【0062】
以上例示した化合物のうち、本実施形態においては、硬化速度の点から、(メタ)アク
リレート類、(メタ)アクリルアミド類を使用することがより好ましい。また、インク組
成物の粘度の観点から上記多官能(メタ)アクリレート、と単官能もしくは2官能の(メ
タ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することも好ましい。
【0063】
本実施形態で使用可能な芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン
、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ク
ロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロ
ルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4
−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、
4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレ
ン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−
エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イ
ソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカル
ボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0064】
本実施形態で使用可能なアリル基を有する化合物は、2−プロペニル構造(−CH2C
H=CH2)を持つ化合物である。2−プロペニル基はアリル基とも呼ばれ、IUPAC
命名法では慣用名とされる。
【0065】
アリル基を有する化合物としては、例えば、アリルグリコール(日本乳化剤製)、トリ
メチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリ
セリンモノアリルエーテル(以上、ダイソー株式会社)やユニオックス、ユニルーブ、ポ
リセリン、ユニセーフの商品名であるアリル基を持つポリオキシアルキレン化合物(日本
油脂製)等が挙げられる。
【0066】
本実施形態で使用可能なN−ビニル基を有する化合物としては、たとえば、N−ビニル
フォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリ
ドン、N−ビニルカプロラクタム、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0067】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物において、アリル基を有する化合物や
N−ビニル基を有する化合物を使用する場合、ので、20質量%〜80質量%が好ましい
。より好ましくは20質量%〜70質量%程度の範囲である。
【0068】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物にラジカル重合性化合物を含有させる
場合、ラジカル重合性化合物の含量は、インクジェット記録用インク組成物の全固形分に
対し50〜95質量%が適当であり、好ましくは60〜92質量%、さらに好ましくは7
0〜90質量%の範囲である。ラジカル重合性化合物の含有量が上記範囲よりも小さいと
、インクジェット記録用インク組成物の粘度、分散安定性、保存安定性等の問題が生じる
場合があり、上記範囲を超えるとインクジェット記録用インク組成物の硬化性、皮膜強度
が不十分となる場合がある。
【0069】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に使用可能なカチオン重合性化合物と
しては、一般式(1)および/または一般式(2)から発生する開始種(酸)により重合
反応を生じる各種公知のカチオン重合性の化合物が挙げられる。
【0070】
カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン
化合物等が挙げられる。
【0071】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。
【0072】
本実施形態に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジ
ルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエー
テル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブ
チレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エ
ピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキ
サイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイル
オキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げ
られる。
【0073】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエ
ーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテ
ル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジ
ルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、
水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテ
ル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチ
ル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシク
ロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、
ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキ
サイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシク
ロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',
4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−
エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコール
ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキ
シシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポ
キシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジ
ルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジ
ルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール
ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3
−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシ
オクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0074】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び、脂環式エポキシドが、硬
化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0075】
本実施形態に用いうる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエー
テル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t
−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテ
ル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビ
ニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテ
ル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテ
ル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビ
ニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニル
エーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビ
ニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエ
ーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメ
チルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコー
ルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロル
エトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレ
ングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0076】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエー
テル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテ
ル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘ
キサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエー
テル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル
類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエー
テル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル
、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエ
ーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメ
チロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパ
ントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニル
エーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、
エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサ
イド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタ
エリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトー
ルヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0077】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、硬化後
の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0078】
本実施形態で使用可能なオキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物が挙
げられ、たとえば、特開2001−220526、同2001−310937、同200
3−341217の各公報に記載されている、オキセタン化合物類を例示することができ
る。
【0079】
本実施形態で使用可能なオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタ
ン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組
成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後の
インクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0080】
本実施形態で使用可能な単官能オキセタンの例としては、例えば、2−エチルヘキシル
オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシ
メチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベン
ゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼ
ン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン
、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブ
トキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエ
チル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3
−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニル
メチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル
)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、
ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジ
シクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフル
フリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−
エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−
エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オ
キセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキ
セタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチ
ル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテ
ル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフ
ェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−
エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニル
メチル)エーテル等が挙げられる。
【0081】
多官能オキセタンの例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オ
キサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメ
チレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセ
タニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメ
トキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メ
チル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エー
テル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリ
エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチ
レングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカ
ンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロール
プロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−
エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタ
ニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニル
メチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメ
チル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)
エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)
エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)
エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)
エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オ
キセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(
3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス
(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3
−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エ
チル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エ
チル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エ
チル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3
−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0082】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217
号公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物
は本実施形態にも好適に使用しうる。
【0083】
上記例示したオキセタン化合物のなかでも、インクジェット記録用インク組成物の粘度
と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
【0084】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物において、カチオン重合性化合物を含
有させる場合、カチオン重合性化合物の含量は、インクジェット記録用インク組成物の全
固形分に対し50〜95質量%が適当であり、好ましくは60〜92質量%、さらに好ま
しくは70〜90質量%の範囲である。カチオン重合性化合物の含有量が上記範囲よりも
小さいと、インクジェット記録用インク組成物の粘度、分散安定性、保存安定性等の問題
が生じる場合があり、上記範囲を超えるとインクジェット記録用インク組成物の硬化性、
皮膜強度が不十分となる場合がある。
【0085】
1.3.3.色材
また、本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、色材を含有することができ
る。色材としては、染料、顔料のいずれであってもよい。
【0086】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に使用可能な染料としては、直接染料
、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料
、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することがで
きる。
【0087】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に使用可能な顔料としては、無機顔料
、有機顔料を挙げることができる。
【0088】
無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サ
ーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる
。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キ
レートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料
、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオイン
ジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩
基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリン
ブラックなどを使用することができる。
【0089】
顔料の具体例としては、カーボンブラックとして、C.I.ピグメントブラック7、三
菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、N
o.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビ
ア社製のRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同7
00等が、キャボット社製のRegal 400R、同330R、同660R、Mogu
l L、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同110
0、同1300、同1400等が、デグッサ社製のColor Black FW1、同
FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、Color Black S150、
同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同140U、Speci
al Black 6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0090】
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、
16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、11
4、120、128、129、138、150、151、154、155、180、18
5、213、およびCHROMOPHTAL YELLOW LA2(チバ・スペシャル
ティー・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0091】
また、マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)
、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、
202、209、C.I.ピグメントヴァイオレット 19、およびHostaperm
Pink E02(クラリアントジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0092】
さらに、シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15
:4、60、16、22、およびTGR−SD(DIC株式会社製)が挙げられる。
【0093】
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はそ
の平均粒径が10〜200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜15
0nm程度のものである。本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に色材を含有
させる場合は、色材の添加量は、0.1〜25質量%程度の範囲が好ましく、より好まし
くは0.5〜15質量%程度の範囲である。
【0094】
また、本実施形態のインクジェット記録用インク組成物に顔料を含有させる際には、こ
れらの顔料と、分散剤または界面活性剤を含有させることができる。好ましい分散剤とし
ては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用する
ことができる。このような分散剤としては、Lubrizol社製のSOLSPERSE
13940が例示できる。
【0095】
1.3.4.他の添加剤
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物には重合促進剤が含まれていても良い
。重合促進剤としては、特に限定されないが、Darocur EHA、EDB(チバ・
スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0096】
また、本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、熱ラジカル重合禁止剤を含
有してもよい。これにより、インク組成物の保存安定性を向上させることができる。なお
、熱ラジカル重合禁止剤としては、Irgastab UV−10、UV−22(チバ・
スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0097】
さらに本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、界面活性剤を含有すること
ができ、例えばシリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエー
テル変性シリコーンを用いることが可能で、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又
はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることもできる。界面活性剤の具体例
としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、353
0、3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を挙げることができる。
【0098】
さらに、本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、一般的なインクに使用し
得る、公知公用の成分を含有することができる。そのような成分としては、たとえば、湿
潤剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤等が挙げられる。またさらに、本実施形
態のインクジェット記録用インク組成物は、必要に応じて、レベリング添加剤、マット剤
、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ア
クリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有することができる。
【0099】
1.4.エネルギー線
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物を硬化させるエネルギー線としては、
例えば、400nm〜200nmの範囲の紫外線、可視光、遠紫外線、g線、h線、i線
、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、またはX線等の電磁波、およ
び電子線、α線等の粒子線が挙げられる。
【0100】
エネルギー線の照射光源としては、特に制限されないが、350〜450nmの波長の
光が好ましい。
【0101】
エネルギー線として紫外線を用いる場合は、インクジェット記録用インク組成物への紫
外線の照射量は、10mJ/cm以上、20,000mJ/cm以下であり、また好
ましくは50mJ/cm以上、15,000mJ/cm以下の範囲で行う。かかる程
度の範囲内における紫外線照射量であれば、十分硬化反応を行うことができる。
【0102】
エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線の照射は、メタルハライドランプ、キ
セノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等
のランプが挙げられる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、
Vランプ、Integration社製のSubZero 055等の市販されているも
のを用いて行うことができる。また、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や紫外線発
光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子によっても、紫外線照射を行うことができる。
【0103】
エネルギー線の照射は、インクジェット記録装置を用いて該装置内で行われてもよいし
、照射装置を備えていないインクジェット記録装置によってドット群を形成した後、他の
照射装置を用いて行われてもよい。
【0104】
1.5.インクジェット記録方法
本実施形態のインクジェット記録用インク組成物は、インクジェット記録方法に用いら
れる。インクジェット記録方法としては、記録媒体上にインクジェット記録用インク組成
物を吐出し、記録媒体上に付着させてドット群を形成するものを例示する。
【0105】
本実施形態にかかるインクジェット記録方法では、インクジェット記録装置を用いて、
記録媒体上にインクジェット記録用インク組成物を吐出する。本実施形態で使用するイン
クジェット記録装置は、インクの液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて情報の記
録を行うことができるものであれば、特に限定されない。
【0106】
インクジェット記録装置の記録方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた
加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク
滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはイン
ク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型
ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより
、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時
に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にし
たがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット
方式)等が挙げられる。
【0107】
なお、インクジェット記録装置に、エネルギー線としての紫外線の照射を行うことがで
きる機構が備えられているものは、本実施形態のインクジェット記録用インク組成物を硬
化させるために、より好適に用いることができる。そのような装置としては、たとえば、
インクジェット記録装置内のキャリッジ側面に搭載された紫外線照射装置を適用すること
ができる。
【0108】
なお、本実施形態のインクジェット記録用インク組成物の粘度は、上記のようなインク
ジェット記録方法に対してより好適に使用できるように、たとえば、25℃で10mPa
・s以下であることがより好ましい。
【0109】
以上説明した本実施形態にかかるインクジェット記録用インク組成物は、カチオン重合
性およびラジカル重合性を有する重合性化合物と、一般式(1)で表される化合物と、一
般式(2)で表される化合物と、を含有することにより、エネルギー線によって速やかに
硬化することができ、耐擦過性の優れた画像を提供することができる。
【0110】
2.インクセット
本実施形態にかかるインクセットとして、少なくとも1種類の上記インクジェット記録
用インク組成物を備えたものを例示する。
【0111】
上記のインクジェット記録用インク組成物を単独または複数備えたインクセットとして
もよいし、さらに一または複数の他のインク組成物を含むインクを備えたインクセットと
してもよい。インクジェット記録用インクセットに備えることができる他のインク組成物
としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロ
ー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のカラーインク組成物、ブラ
ックインク組成物、ライトブラックインク組成物等が挙げられる。
【0112】
3.インクカートリッジおよびインクジェット記録装置
本実施形態にかかるインクカートリッジとして、上記のインクセットを備えたものを例
示する。これによれば、上記のインクジェット記録用インク組成物を備えたインクセット
を容易に運搬することができる。本実施形態にかかるインクジェット記録装置は、上述の
インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録用インクセット、またはインク
カートリッジを備えたものであり、たとえば、「1.5.インクジェット記録方法」の項
で述べたインクジェット記録装置を例示できる。
【0113】
4.実施例および比較例
以下、本発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定
されるものではない。各実施例および各比較例の組成物の配合は、表1に示した。
【0114】
【表1】

【0115】
4.1.実施例のインクジェット記録用インク組成物の調製
4.1.1.実施例1
実施例1の各色のインクジェット記録用インク組成物は、以下のように調製した。
【0116】
(イエローインク)
最初に、ラジカル重合性化合物である大阪有機化学工業株式会社から入手した型番V#
230(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート)を68質量部、イエロー顔料である
チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から入手したCHROMOPHTAL LA2を
3質量部、分散剤であるLubrizol社から入手したSOLSPERSE 1394
0を2質量部、および重合禁止剤であるチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から入手
したIRGASTAB UV−22を1質量部となるように、ガラス容器に入れた。そし
て、T.K.ロボミックス(PRIMIX社製)にT.K.ホモディスパーと上記ガラス
容器を装着し、回転数5000rpmで30分間攪拌してミルベースを作製した。次に、
上記ミルベースを、乳化分散機(型名スターバーストミニ、株式会社スギノマシン製)に
充填し、圧力200MPaで3passさせてイエロー分散液を作製した。そして、上記
イエロー分散液に、ハイブリッド重合性化合物であるオキセタンアクリレート(商品名O
XE−10として大阪有機化工業株式会社から入手)を10質量部、ラジカル重合開始剤
であるDAROCURE TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フ
ォスフィンオキサイド)(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から入手)を5質量部
、一般式(1)で表される化合物(R1は、メチル基)を10質量部、一般式(2)で表
される化合物(R2は、メチル基)を1質量部となるように添加し、T.K.ロボミック
スを用いて30分間攪拌した。その後、メンブレンフィルター(目開き3μm、品番TA
300A/アドバンテック株式会社から入手)で吸引濾過し、実施例に用いるイエローの
インクジェット記録用インク組成物を調製した。
【0117】
(マゼンタインク)
イエローのインクジェット記録用インク組成物のイエロー顔料をマゼンタ顔料(Hos
tperm Pink E02/クラリアントジャパン株式会社から入手)に変更し、イ
エローと同様の方法により、実施例に用いるマゼンタのインクジェット記録用インク組成
物を調製した。
【0118】
(シアンインク)
イエローのインクジェット記録用インク組成物のイエロー顔料をシアン顔料(TGR−
SD/DIC株式会社から入手)に変更し、イエローと同様の方法により、実施例に用い
るシアンのインクジェット記録用インク組成物を調製した。
【0119】
(ブラックインク)
イエローのインクジェット記録用インク組成物のイエロー顔料をカーボンブラック(型
番FW−18/デグサ社から入手)に変更し、イエローと同様の方法により、実施例に用
いるブラックのインクジェット記録用インク組成物を調製した。
【0120】
4.1.2.実施例2
実施例2の各色のインクジェット記録用インク組成物は、以下のように調製した。
【0121】
実施例2では、実施例1で用いたハイブリッド重合性化合物である「OXE−10」の
代わりに、ハイブリッド重合性化合物である4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル
ー2−エチル−1,3−ジオキソラン(商品名MEDOL−10として大阪有機化工業株
式会社から入手)を用い、その他の組成および調製条件は同じにして、イエロー、マゼン
ダ、シアン、およびブラックのインクジェット記録用インク組成物を調製した。
【0122】
4.1.3.実施例3
実施例3の各色のインクジェット記録用インク組成物は、以下のように調製した。
【0123】
実施例3では、実施例1で用いたラジカル重合性化合物であるV#230(1,6−ヘ
キサンジオールジアクリレート)の代わりに、カチオン重合性化合物である2−エチルヘ
キシルオキセタン商品名OXT−212として東亞合成株式会社から入手)を用い、その
他の組成および調製条件は同じにして、イエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの
インクジェット記録用インク組成物を調製した。
【0124】
4.2.比較例のインク組成物の調製
4.2.1.比較例1
比較例1の各色のインク組成物は、以下のように作成した。
【0125】
実施例1の各色のインクジェット記録用インク組成物において、一般式(1)で表され
る化合物、および一般式(2)で表される化合物の代わりに、一般的なカチオン重合開始
剤であるIRGACURE 250(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から入手)
を用い、その他の組成および調製条件は同じにして、イエロー、マゼンダ、シアン、およ
びブラックのインク組成物を調製した。
【0126】
4.2.2.比較例2
比較例2の各色のインク組成物は、以下のように作成した。
【0127】
実施例1の一般式(1)で表される化合物の添加量を11質量部とし、一般式(2)で
表される化合物を加えない点以外は、実施例1と同様にしてイエロー、マゼンダ、シアン
、およびブラックのインク組成物を調製した。
【0128】
4.2.3.比較例3
比較例3の各色のインク組成物は、以下のように作成した。
【0129】
実施例1の一般式(2)で表される化合物の添加量を11質量部とし、一般式(1)で
表される化合物を加えない点以外は、実施例1と同様にしてイエロー、マゼンダ、シアン
、およびブラックのインク組成物を調製した。
【0130】
4.3.評価方法
セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンターPX−G920のインクカート
リッジに各色のインク組成物を、実施例および比較例ごとに、それぞれ充填した。各例に
ついて、OKトップコート紙(王子製紙株式会社製)に、10cm×10cmの正方形ベ
タパターン(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、ブルー、グリーン各色)
を高精細モードで印刷した。各色のベタパターンの組成物の膜厚は、10μmであった。
すべての例について、印刷後、印字部に紫外線照射機(Integration社製 S
ubZero 055)を用いて紫外光を照射し、印刷部を硬化させた。
【0131】
そして、硬化した印刷部の耐擦過耐久性を指触により評価し、硬化している場合を○、
未硬化の場合を×とし、表1に評価結果を記載した。
【0132】
4.4.評価結果
表1に示したように、各実施例のインクジェット記録用インク組成物は、硬化性に優れ
るとともに、耐擦過性に優れていた。これに対して、一般式(1)で表される化合物、お
よび一般式(1)で表される化合物の少なくとも一方を欠いている各比較例の組成物は、
ため、未硬化で耐擦過性が不十分であった。
【0133】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例
えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法お
よび結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は
、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は
、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成するこ
とができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した
構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線によって硬化するインク組成物であって、
カチオン重合性およびラジカル重合性を有する重合性化合物と、
下記一般式(1)で表される化合物と、
下記一般式(2)で表される化合物と、
を含有する、インクジェット記録用インク組成物。
【化1】

【化2】

(ただし、式中R1、R2は、水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
さらに、前記エネルギー線によってラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含有する
、インクジェット記録用インク組成物。
【請求項3】
請求項2において、
前記ラジカル重合開始剤は、ベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド誘導体
である、インクジェット記録用インク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記重合性化合物は、オキセタンアクリレート類、オキソランアクリレート類、ジオキ
ソランアクリレート類から選択される少なくとも1種である、インクジェット記録用イン
ク組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
さらに、ラジカル重合性化合物を含有する、インクジェット記録用インク組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
さらに、カチオン重合性化合物を含有する、インクジェット記録用インク組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録用インク組成物を
備えたインクセット。
【請求項8】
請求項7に記載のインクセットを備えたインクカートリッジ。
【請求項9】
請求項8に記載のインクカートリッジを備えたインクジェット記録装置。

【公開番号】特開2010−132787(P2010−132787A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310584(P2008−310584)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】