説明

インクジェット記録装置、及び、そのインクジェット記録装置における記録制御方法

【課題】インク滴の着弾位置の二次元的なずれを防ぐインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 吸引手段によりプラテンに記録媒体を吸着する場合に、記録ヘッドから記録媒体へのインク滴の着弾位置に影響を及ぼすパラメータを取得する。その取得されたパラメータに基づき、着弾位置の補正量が記録ヘッドの走査方向及び記録媒体を搬送する搬送方向それぞれについて定められた複数の補正テーブルから1つを決定する。記録媒体をプラテンに吸着させて、決定された補正テーブルに従って着弾位置が補正されるように記録ヘッドの駆動タイミングを制御して、記録データに基づき記録媒体への記録を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体をプラテンに吸着させる構成を有するインクジェット記録装置、及び、そのインクジェット記録装置における記録制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置においては、安定した記録を行うために、記録媒体にインクが付着した際に発生するしわや波打ち等の変形(コックリングともいう)の影響を極力排除する必要がある。そこで、記録ヘッドと対向して配置されるプラテンに吸着する吸着構成を設け、記録媒体をプラテンに吸着させることによりカールやコックリングを抑えながら記録することが知られている。また、記録媒体としてのロール紙に余白なしで記録する縁なし記録を行う構成を有するインクジェット記録装置がある。これは、記録媒体の幅方向の端部を超えて外側領域までインクを吐出して記録し、記録媒体の搬送方向記録領域の後端でカッタにより切断するように構成されている。また、記録媒体の幅方向外側にはみ出して吐出されたインクを受けるためのインク受け部も設けられている。
上記インク受け部に対しても、上記吸着構成と同様に負圧吸引力を作用させることが行われている。これは、縁なし記録で吐出されたインクによる上記排出孔の目詰まりを防止したり、縁なし記録の際にインク受け部に滞留したインクミストによる記録媒体の裏汚れを防止したり、さらには、インク受け部で記録媒体が浮いてしまうことを防止するためである。 ただし、このときにインク受け部に負圧を発生させると、記録ヘッドから吐出されたインクがその負圧吸引力によって生じる気流の影響を受け、インク滴の着弾位置に乱れが生じ、画像品位が大幅に低下してしまうおそれがある。このため、インク受け部に生じる負圧を極力小さくする必要がある。
インク滴の着弾位置の乱れを補正する技術として、記録ヘッドからのインク滴の吐出タイミングをずらして行うことが一般的に知られている。特許文献1では複数のキャリッジの走査方向位置でテストパッチを記録し、測定することで着弾位置ずれを求め、その着弾位置ずれ量に基づいてキャリッジ走査方向での着弾位置を補正する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年の高画質化の要求を鑑みると、インク受け部に生じる負圧を極力小さくしてもインク滴着弾位置の乱れから生じる画像劣化は無視できるものでははく、裏汚れに関しても改善が望まれている。この着弾位置の乱れはキャリッジ走査方向のみのずれだけでなく、被記録材の搬送方向ずれを含んだ二次元的なずれとなるため、従来の補正技術では補正しきれない。インク滴着弾位置のキャリッジ走査方向のずれは端部における画像のぼやけ等を引き起こし、搬送方向のずれは搬送距離間隔ごとの白スジとして画像劣化を引き起こしてしまう。
本発明の目的は、このような従来の問題点を解決することにある。そこで、上記の点に鑑み、本発明は、インク滴の着弾位置の二次元的なずれを防ぐインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置における記録制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るインクジェット記録装置は、記録媒体をプラテンに吸着させる吸引手段を有し、記録データに基づき記録ヘッドを走査して前記記録媒体への記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記吸引手段により前記プラテンに前記記録媒体を吸着する場合に、前記記録ヘッドから前記記録媒体へのインク滴の着弾位置に影響を及ぼすパラメータを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得されたパラメータに基づき、前記着弾位置の補正量が前記記録ヘッドの走査方向及び前記記録媒体を搬送する搬送方向それぞれについて定められた複数の補正テーブルから1つを決定する決定手段と、
前記記録媒体を前記プラテンに吸着させて、前記決定手段により決定された前記補正テーブルに従って前記着弾位置が補正されるように前記記録ヘッドの駆動タイミングを制御して、前記記録データに基づき前記記録媒体への記録を行う記録制御手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、インク滴の着弾位置の二次元的なずれを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る実施例におけるインクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の記録ヘッド周辺の斜視図である。
【図3】プラテン付近の拡大図である。
【図4】本インクジェット記録装置の制御回路部周辺の概略ブロック図である。
【図5】記録媒体端部領域における着弾ずれの補正を説明するための模式図である。
【図6】記録ヘッドにおけるノズル列を説明するための模式図である。
【図7】着弾位置ずれを補正するための端部着弾補正テーブルを示す図である。
【図8】端部端部着弾補正テーブルの決定処理の手順を示す図である。
【図9】端部端部着弾補正テーブル選定のためのテーブルを示すである。
【図10】吸引から機外排気に至るまでの流路を示す図である。
【図11】吸引から機外排気に至るまでの流路を示す他の図である。
【図12】テストパターンにより端部着弾補正を行う処理の手順を示す図である。
【図13】テストパターンのパッチの生成方法を説明するための図である
【図14】テストパターンにより端部着弾補正を行う処理の他の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を詳しく説明する。尚、以下の実施例は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0009】
[実施例1]
図1は、本発明に係る実施例におけるインクジェット記録装置の斜視図である。本インクジェット記録装置は、記録データに基づき記録ヘッドを走査して記録媒体上にインクを吐出して記録を行う。図2は、インクジェット記録装置の記録ヘッド周辺の斜視図であり、図3は、プラテン付近の拡大図である。ロール紙自動給紙部からロール紙搬送通路を通って搬送されてきたロール状記録媒体P1の進行方向には、搬送ローラ1およびピンチローラ2、プラテン3、カッター10が順次配置されている。搬送ローラ1およびピンチローラ2は、ロール紙搬送通路を通って搬送されてきたロール状記録媒体P1を画像記録部へ搬送して記録を行う。画像記録部は、記録媒体P1を支持するプラテン3と、このプラテン3と対向して配置された、走査方向に移動してプラテン3上の記録媒体P1にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド4を備える。記録ヘッド4には、記録媒体P1と対向する面に、インクを吐出する複数のノズル列(不図示)を備える。また、ノズル列は記録媒体搬送方向に複数列並んでおり、ノズル列ごとに異なる色のインクを吐出するようになっている。各色のノズル列には、それぞれ供給チューブ14を介してインクタンク15より対応する色のインクが供給されるようになっている。記録ヘッド4を搭載したキャリッジ16は、両端部がインクジェット記録装置本体17のフレームに固定された、互いに平行なガイドシャフト18とガイドレール19に摺動可能に支持されている。また、キャリッジ16は、不図示のベルト駆動部およびモータによってガイドシャフト18とガイドレール19に沿った往復移動が可能である。キャリッジ16の移動方向は記録媒体搬送方向と交差する方向であり、主走査方向と呼ばれる。これに対し、記録媒体の搬送方向は副走査方向と呼ばれている。キャリッジ16にはテストパターン等の画像濃度を任意に検出することが可能な反射型の光学センサ20が取り付けられている。なお、光学センサ20は、記録媒体の端部検出等に利用することも可能である。
【0010】
画像記録動作は、例えば、記録ヘッド4による1走査分の印刷が終了すると、一旦印刷動作を中断し、プラテン3上のロール紙を搬送ローラ1にて所定量だけ搬送する。そして、再びキャリッジ16をガイドシャフト18に沿って移動させながら次の1走査分の印刷を行うといった手順で行われる。このようにして、キャリッジ16を往復移動させながら、記録ヘッド4からインクを吐出することにより、記録媒体P1上に所望の画像が記録される。キャリッジ16は、ガイドシャフト18を不図示の昇降機構にて上下させることで、記録ヘッド4とプラテン3との間の距離が変更可能となっている。詳細には、記録媒体種類および温湿度センサ434(図4)により検出された温度と湿度によって変更する。例えば、厚紙で巻き癖が強い記録媒体でかつ低温、低湿度の場合、剛性が高くなり紙浮きを生じやすい。よって、記録ヘッド4とプラテン3の間隔は広めに設定される。また、薄紙で剛性の弱い記録媒体の場合には狭めに設定される。記録媒体の種類によってはインクを吸収した際のコックリングにより記録ヘッド4と衝突する可能性があるため、記録モードやインク打ち込み量に応じて記録ヘッド4とプラテン3との間隔を変更する構成にしてもよい。
【0011】
プラテン3上に記録媒体を吸着支持するための記録媒体吸着部5には、負圧発生部6(図11)に連通して負圧(吸引力)を発生させるための吸引孔7を設けて記録媒体P1の浮き上がりを防止する。負圧発生部6には、高い負圧を省スペースで実現するためにシロッコファンを用いる。また、負圧発生部6は、ロール状記録媒体P1の特性に応じた回転数で動作させる。詳細には、記録媒体種類および温湿度センサ434により検出された温度と湿度によって変更する。例えば、厚紙で巻き癖が強い記録媒体でかつ低温、低湿度の場合、剛性が高くなり紙浮きを生じやすい。紙浮きを抑えるために高い回転数でより強く吸着支持する。また、薄紙で剛性の弱い被記録材を搬送する場合には搬送精度を向上させるために低い回転数で弱く吸着支持する。また、記録媒体左右端に対応する位置には通紙面に対して凹のインク吸引回収部8があり、打ち捨てられたインクの回収および浮遊ミストを吸引するためのインク吸引穴9を備えている。インク吸引回収部8の底面は斜面で形成されており、打ち捨てられたインクは斜面を流れてインク吸引穴9に流れ落ちて回収される。このインク吸引回収部8は、インクジェット記録装置が余白なし記録に対応する各記録媒体幅のそれぞれの左右端に設けられる。記録を終えた記録媒体P1は、搬送ローラ1によって搬送され、記録画像後端の所望の位置でカッター10によってカットされる。
【0012】
図4は、本インクジェット記録装置の制御回路部周辺の概略ブロック図である。コントローラ400は主制御部であり、例えばマイクロコンピュータであるCPU401を有する。また、本実施例において端部着弾位置の予測および補正で用いられる所要のテーブル、各種プログラム、その他の固定データを格納したROM403、画像データを展開する領域や作業用の領域等を設けたRAM405を含む。ホスト装置410は、画像データの供給源である。具体的には、プリントに係る画像等のデータの作成、処理等を行うコンピュータの他、画像読み取り用のリーダ部等の形態であってもよい。画像データ、その他のコマンド、ステータス信号等は、インタフェース(I/F)412を介してコントローラ400と送受信される。操作部420は、操作者による指示入力を受容するスイッチ群である。操作部420は、電源スイッチ422、プリント開始を指示するためのスイッチ424、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ426を含む。また、マニュアルで各種レジスト調整を行うためのレジスト調整起動スイッチ427、マニュアルで該調整値を入力するためのレジスト調整値設定入力部429等を含む。センサ群430は、インクジェット記録装置の状態を検出するためのセンサ群であり、上述の反射型光学センサ130、および環境温度および湿度を検出するために適宜の部位に設けられた温湿度センサ434等を含む。
【0013】
ヘッドドライバ440は、記録データ等に応じて記録ヘッド4内の吐出ヒータ441を駆動する。ヘッドドライバ440は、プリントデータを吐出ヒータ441の位置に対応させて整列させるシフトレジスタ、適宜のタイミングでラッチするラッチ回路を含む。また、ヘッドドライバ440は、駆動タイミング信号に同期して吐出ヒータ441を作動させる論理回路素子の他、ドット形成位置合わせのために駆動タイミング(吐出タイミング)を適切に設定するタイミング設定部等を含む。記録ヘッド4は、サブヒータ442を含む。サブヒータ442は、インクの吐出特性を安定させるための温度調整を行うものであり、吐出ヒータ441と同時に記録ヘッド基板上に形成された形態や、記録ヘッド4の本体またはヘッドカートリッジに取り付けられる形態とすることができる。モータドライバ450は主走査モータ452を駆動するドライバであり、副走査モータ462は記録媒体P1を搬送(副走査)するために用いられるモータであり、モータドライバ460はモータ462を駆動するためのドライバである。
【0014】
次に、本実施例における記録媒体端部領域の端部着弾位置の予測および補正について説明する。図5は、記録媒体端部領域における着弾ずれを補正して吐出する位置を説明するための模式図である。なお、図5においては記録媒体の左側端部(以下BP側:バックポジション側と呼ぶ)における模式図となっている。記録媒体端部においては吸引穴9に発生する吸引負圧力によって、目標着弾位置D2に向けて吐出されたインク滴は吸引穴9中心方向に引きよせられ、着弾予想位置D3に着弾すると予想される。そこで、目標着弾位置D2に対して着弾ずれが予想される着弾予想位置D3とのずれ量を予想し、補正吐出位置D1にて吐出を行うことで最終的に目標着弾位置D2に着弾させることが可能となる。この目標着弾位置D2に対して着弾ずれが予想される着弾予想位置D3とのずれ量はキャリッジ16の主走査方向および交差する副走査方向の二次元的なずれとなる。なお、右側端部(以下HP側:ホームポジション側と呼ぶ)に関しても主走査方向の着弾位置ずれ方向は逆になるが、左側端部と同様のずれが発生する。
【0015】
図6は、記録ヘッド4におけるノズル列を説明するための模式図である。本実施例の記録ヘッド4はそのノズルピッチが2400dpi(dot/inch)の間隔で並ぶ2576個のノズルによって構成されている。これらのノズルのうち上端、下端の8ノズルずつの合計16ノズルは調整用の予備ノズルとして準備されている。一度の走査にて記録可能なノズル長は2560ノズル分となる。さらに記録ヘッド4は、副走査方向をN1〜N8まで順番に8分割して(320ノズル単位で)吐出タイミングを補正可能としている。さらに、吐出タイミングの補正解像度としては4800dpi(dot/inch)単位で変更可能である。つまり、キャリッジ16の主走査方向の着弾ずれに対し、320ノズル長単位でのノズル領域N1〜N8各々にて4800dpi(dot/inch)単位にずらしての吐出が可能ということになる。搬送方向である副走査方向にもノズル列の上端、下端の予備ノズルを用いることで吐出位置を補正することが可能である。副走査方向に関しても同様に記録ヘッド4のノズル列を8分割したノズル領域N1〜N8各々に対して吐出位置の補正が可能である。吐出位置の補正解像度としてはノズルピッチの2400dpi(dot/inch)であり、最大ずらし量は8ノズル分となる。以上説明した分割数について、本実施例では8分割としたが、この分割数を必要に応じて増減可能であることはいうまでもない。
【0016】
図7は、着弾位置ずれを補正して記録制御を行うための端部着弾補正テーブルである。図7(a)のテーブル1、図7(b)のテーブル2、図7(c)のテーブル3はそれぞれ、インク滴が着弾可能な記録ドットの各位置においてドット単位での移動量で示される補正量の異なったテーブルとなっている。図7(b)のテーブル2のBP側の補正パラメータを例に挙げて説明する。図7に示す符号は上述したものと同一のものであり、図5、図6内に示される主走査方向矢印の両端および副走査方向矢印の両端に示してあるものと対応する。図5における副走査方向上流側の目標着弾位置D2に対して、着弾ずれが予想される着弾予想位置D3は主走査方向である図中左側(図中+方向)に、副走査方向である図中下側(図中+方向)へのずれが予想される。よって、上流側のノズル領域N1の補正吐出位置D1としてはキャリッジ16の主走査方向で図中右側(図中−方向)および副走査方向で図中上側(図中−方向)となる。つまりノズル領域N1では主走査方向で2ドット(4800dpi)−方向にずらした位置、副走査方向で2ドット(2400dpi)−方向にずらした位置で吐出することを示している。図5からわかるように副走査方向中央付近のノズル領域N4、N5に関しては、目標着弾位置D2に対して着弾予想位置D3の副走査方向へのずれが予想されないので補正量としては0となる。以上説明を省いた他のノズル領域を含めN1からN8それぞれの主走査方向補正値と副走査方向補正値が設定されている。またHP側に関してはインク吸引穴9に対しての被記録材の端部位置が逆になるため主走査方向の符号も逆になる。図7では、BP側とHP側だけしか例示されていないが、記録ヘッドにより記録可能な全ての着弾位置について補正量が定められていても良い。
【0017】
図8は、端部端部着弾補正テーブルの決定処理の手順を示すフローチャートである。図9は、インク滴の着弾位置に影響を及ぼすパラメータと補正テーブルとが対応付けられた対応テーブルを示す図である。図8のS1にて、ユーザが所望の記録媒体をセット時に本体パネル(不図示)から記録媒体の種類を入力する。次にS2にてインクジェット記録装置本体上に設置された温湿度センサ434により、セット時の温度、湿度が検出されて本体内に記憶される。S3にて記録媒体の種類および温湿度の組み合わせによって負圧発生部6のファン回転数が決定される。S4にて同じく記録媒体の種類および温湿度の組み合わせによって記録ヘッド4の高さが決定される。次にS5にてキャリッジ16を主操作方向に動かし、キャリッジ16に取り付けられた光学センサ20により記録媒体の両側端部位置を検出する。すなわち記録媒体の幅が検出される。以上のインク滴の着弾位置に影響を及ぼす情報を取得すると、S6にて本体内に記憶されている図9に示す端部着弾補正テーブル選定表に基づいて図7(a)〜(c)に示す端部着弾補正テーブルを決定する。図9に示す記録媒体幅に関して、「小」は本体記録領域幅の略半分未満の幅に適用され、「大」は略半分以上の幅に適用される。記録媒体左右端の着弾位置ずれ量に関して記録媒体幅が「小」である場合、記録媒体吸着部5の面積に対して記録媒体が吸着される面積が小さくなるため、それ以外の記録媒体吸着部5から空気が漏れてしまい負圧吸引力は小さくなる。よって記録媒体左右端の着弾位置ずれ量も記録媒体幅が「大」の場合と比較して小さくなる。また、負圧発生部6のファン回転数が高い場合、負圧吸引力が大きくなり、記録媒体左右端の着弾位置ずれ量は大きくなる。また、記録ヘッド4の高さが高い場合、記録媒体左右端に発生する負圧吸引力が同じ場合でも、記録ヘッド4から記録媒体への距離が遠くなるため、着弾位置ずれ量は大きくなる。以上の現象を考慮して端部端部着弾補正テーブルを決定している。例えば記録媒体幅が「大」、ファン回転数が高い、記録ヘッド高さが高い条件の場合には記録媒体左右端の着弾位置ずれ量は最も大きくなる。よって、図7(a)〜(c)において最も補正量の多いテーブル3が決定されることとなる。他の組み合わせについても同様に最適なテーブルを設定可能で、端部着弾位置補正が行われる。以上説明したテーブルについて、本実施例ではテーブル数を3としたが、このテーブル数を必要に応じて増減可能であることはいうまでもない。テーブルが決定されるとそのテーブルに従って、記録ヘッドの駆動タイミングが制御されて記録が行われる。
【0018】
なお、本実施例において記録媒体端部領域におけるキャリッジ16の走査速度をその他の記録領域の走査速度と比較して遅く設定しても良い。キャリッジ16の走査速度を遅くした場合、記録媒体端部領域に着弾するインク滴のドット形状がより形状的に真円形状に近く安定することが知られており、走査速度が速い場合にはインク滴が微小ドットに分割してしまうことが知られている。微小ドットに分割された場合には、インク吸引穴9からの吸引負圧による着弾位置ずれがばらついてしまう可能性がある。つまり図7で設定したテーブルの補正量からずれてしまうこととなる。よって被記録材端部領域におけるキャリッジ16の走査速度をその他の記録領域の走査速度と比較して遅く設定することでより最適な端部着弾位置補正が行われる。記録媒体端部領域におけるキャリッジ16の走査速度をその他の記録領域の走査速度と比較して遅く設定する構成を設けて、加減速領域での記録を行うようにしても良い。以上説明したように、本実施例の端部着弾補正を行うことで、裏汚れや紙浮きのない状態でかつ着弾位置ずれのない記録が可能となる。この結果、良好な画像を得られるインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
【0019】
[実施例2]
以下、前述した実施例と同様の構成については説明を省略する。次に、本実施例のインクジェット記録装置における、記録媒体吸着部5およびインク吸引回収部8a〜8d(図10)を吸引するための流路(伝達路)構成について図を参照して説明する。図10、図11はプラテン3における吸引から負圧発生部6を介して機外排気に至るまでの流路を示した概略図である。記録媒体吸着部5に負圧を発生させて記録媒体P1を吸引するための各吸引孔7のそれぞれは、プラテン3の下部の記録媒体吸着流路Aに接続され、負圧発生部6に常時連通されている。各記録媒体幅のそれぞれ左右端に設けられたインク吸引回収部8a〜8dのそれぞれはインク吸引回収流路Bに接続され、合流部11で記録媒体吸着流路Aと合流した後、負圧発生部6により吸引される。記録媒体吸着流路Aとインク吸引回収流路Bの合流部11には、アクチュエータ21により駆動伝達部22を介して自動開閉するシャッター12を備え、合流部11の開口断面積を全閉状態から全開状態まで連続的に変化させることができる。負圧発生部6により吸引した空気はフィルタ13を介してインクジェット記録装置の機外へと排気される。
【0020】
次に、記録媒体端部領域における着弾位置を補正するために行うテストパターン処理についての説明を行う。図12は、テストパターンを用いて端部着弾補正を行う処理の手順を示したフローチャートである。図13は、テストパターンのパッチの生成方法を説明する模式拡大図である。ここでは例として図7にて示した記録媒体幅が「大」、ファン回転数が低い、記録ヘッド高さが低い状態での処理を説明する。まずS11にてユーザによるテストパターン指示が本体パネルから入力される。この際、記録媒体種類も同時に入力される。この時、図8に示す決定フローと図9に示す端部着弾補正テーブル選定表に基づいて図7に示す端部着弾補正テーブルが仮決定される。今回はテーブル1が仮決定されるとする。次に、S12にてシャッター12を閉状態にすることでインク吸引回収部8a〜8dに吸引負圧が発生しない状態にする。この状態にてS13にて第1のテストパッチを記録媒体の両端部領域に記録する(第1のテスト記録の一例)。図13(a)は1回目のテストパターン記録を説明する拡大模式図であり、具体的にはBP側の副走査方向上流側の吐出ドット位置を示している。具体的には図13において、拡大領域1203a内に示されるようにドット1201aが等間隔に吐出される。なお、図中の一点鎖線は基準線であり、図13の拡大領域1203〜1205において同じ位置を示している。次にS14にてシャッター12を開状態にすることでインク吸引回収部8a〜8dに吸引負圧を発生させる。この状態にてS15にて第2のテストパッチを記録媒体の両端部領域に記録する(第2のテスト記録の一例)。この場合、S11の時点で決定された端部着弾補正テーブルから一段階補正量が小さい補正量のテーブルを決定(第2の補正テーブル決定の一例)してそのテーブルによりテストパッチを記録する。しかし、テーブル1より補正値の小さいテーブルが設定され得ない場合は補正しない状態にて第2のテストパッチを記録する。具体的には図13において、拡大領域1204a内に示されるようにドット1202aが等間隔に吐出される。次にS16で副走査方向に記録媒体を搬送し、つまり、S12及びS15での記録とは別々の記録媒体端部領域に2回目のテストパターン記録が可能な状態にする。S17にてS12〜S16を繰り返し3回目のテストパターン記録を行う。合計3回のテストパターン記録それぞれにおいて、第1のテストパッチは毎回同じ位置で吐出される。第2のテストパッチの吐出位置に関して、端部着弾補正テーブルとして2回目はS11にて仮決定されたテーブル1を決定する。また、3回目は仮決定されたテーブルよりも一段階補正量が大きいテーブル2を決定し(第1の補正テーブル決定の一例)、各補正された吐出位置にて吐出を行う。拡大領域1204bでは基準の一点鎖線よりも右上に補正された状態でドットが吐出される様子が、拡大領域1204cではさらに右上に補正されている様子が示されている。次にS18にて第1のテストパッチと第2のテストパッチとを重ねたテストパターンを光学センサ20によりその画像濃度を読み取ることで最適な端部着弾補正テーブルの決定が行われる。具体的には図12の拡大領域1205a〜1205cのような単位面積当たりの画像濃度を測定して比較判定することで行われる。拡大領域1205aの第1のテストパッチと第2のテストパッチのずれ量は比較的多いため、単位面積あたりにしめるドット1201aおよび1202aの面積は大きいため濃度としては高くなる。これと比較して拡大領域1205bの濃度は若干低く、さらに拡大領域1205cにおいてはほぼドット1201aおよび1202bが重なっているためその濃度は低くなる。よって、テーブル2が最適な端部着弾補正テーブルということとなる。次にS19にて端部着弾補正テーブルの決定となる。その場合、本体内に記憶されている図9に示す端部着弾補正テーブル選定表のうち記録媒体幅が「大」、ファン回転数が低い、記録ヘッド高さが低い場合のテーブルが、テーブル1からテーブル2に書き換えられて本体に記憶される。
【0021】
なお、上述したテストパターン記録の繰り返し回数に関しては3回に限ることは無く、必要に応じて増減しても良い。さらに負圧発生部6のファンの回転数や記録ヘッド4の高さを変えてテストパターン記録を複数回行うことで図9の端部着弾補正テーブル選定表において決定された補正テーブルを複数箇所書き換えることが可能となる。よって温湿度環境が変動した際にファンの回転数が変更されたり記録ヘッド4の高さが変更された場合にも、最適な端部着弾補正テーブルが決定可能になる。
【0022】
以上説明したように、本実施例のテストパターン記録を行うことで、より最適な端部着弾補正を行える。よって、裏汚れや紙浮きのない状態にて着弾位置ずれのない記録が可能となる。この結果、良好な画像を得られるインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
【0023】
[実施例3]
前述した実施例と同様の構成については説明を省略する。以上では、インク吸引回収部8a〜8dの吸引負圧をシャッター12により切り換えることで、記録媒体端部領域における着弾位置を補正するために行うテストパターン記録を行う形態について説明してきた。以下に定型外のロール状被記録材の補正に関する実施例を説明する。
【0024】
図14は、カット状被記録材にテストパターンを記録して端部着弾補正を行う処理の手順を示したフローチャートである。まずS21にてユーザによるテストパターン指示が本体パネルから入力される。この際、所望のロール状記録媒体種類、幅を同時に入力する。この時、図8に示す決定フローと図9に示す端部着弾補正テーブル選定表に基づいて図7に示す端部着弾補正テーブルが仮決定される。次にS22で使用するカット状記録媒体をセットする。ここでは所望のロール状記録媒体ではなくカット状記録媒体を使用することで、負圧発生部6のファンは動作しない状態も浮きが生じて記録不可能荷になることがないからである。記録媒体の種類としては光沢系の記録媒体が望ましい。光沢系のカット状記録媒体はカール等が少なく、特にプラテン上に負圧が作用していない状態でも浮きが生じることはない。S23にて第1のテストパッチを記録媒体の両端部領域に記録した後、S24にて負圧発生部6のファンを所定の回転数にて回転させる。次にS25で第2のテストパッチを記録媒体の両端部領域に記録する。次にS26で副走査方向に記録媒体を搬送し、記録媒体端部領域に2回目のテストパターン記録が可能な状態にする。S27にてS23〜S26を繰り返し3回目のテストパターン記録を行う。次にS28にて第1のテストパッチと第2のテストパッチを重ねたテストパターンを光学センサ20によりその画像濃度を読み取ることで最適な端部着弾補正テーブルの決定が行われる。次にS29にて端部着弾補正テーブルの決定となる。次にS30にてカット状記録媒体を排出し、所望のロール状被記録材のセットを可能にする。以上説明したように、本実施例のテストパターン記録を行うことで定型外のロール状被記録材にも最適な端部着弾補正を行え、着弾位置ずれのない記録が可能となる。この結果、良好な画像を得られるインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
【0025】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体をプラテンに吸着させる吸引手段を有し、記録データに基づき記録ヘッドを走査して前記記録媒体への記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記吸引手段により前記プラテンに前記記録媒体を吸着させて前記記録を行う場合に、前記記録ヘッドから前記記録媒体へのインク滴の着弾位置に影響を及ぼすパラメータを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記パラメータに基づき、前記着弾位置の補正量が前記記録ヘッドの走査方向及び前記記録媒体を搬送する搬送方向それぞれについて定められた複数の補正テーブルから1つを決定する決定手段と、
前記記録媒体を前記プラテンに吸着させて、前記決定手段により決定された前記補正テーブルに従って前記着弾位置が補正されるように前記記録ヘッドの駆動タイミングを制御して、前記記録データに基づき前記記録媒体への記録を行う記録制御手段と
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記記録媒体の幅と、前記吸引手段であるファンの回転数と、前記記録ヘッドと前記記録媒体の間の距離とを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体の幅と前記ファンの回転数と前記距離との組み合わせと、前記複数の補正テーブルのいずれかとが対応付けされた対応テーブルをさらに備え、
前記決定手段は、前記対応テーブルに従って前記複数の補正テーブルから1つを決定することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記補正テーブルは、前記補正量を、前記記録媒体上で着弾可能な各位置について定めており、
前記補正量は、前記走査方向及び前記搬送方向それぞれへのドット単位の移動量で表されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記取得手段により取得された前記パラメータに基づき、前記着弾位置の補正量が前記記録ヘッドの走査方向及び前記記録媒体を搬送する搬送方向それぞれについて定められた複数の補正テーブルから1つを仮決定し、
前記インクジェット記録装置は、
前記記録媒体上の記録ドットを読み取るセンサと、
前記複数の補正テーブルから、前記決定手段により仮決定された補正テーブルの前記各位置について定められた前記補正量より大きい補正量を有する第1の補正テーブルを決定する第1の補正テーブル決定手段と、
前記複数の補正テーブルから、前記決定手段により仮決定された補正テーブルの前記各位置について定められた前記補正量より小さい補正量を有する第2の補正テーブルを決定する第2の補正テーブル決定手段と、
前記決定手段により仮決定された補正テーブルと前記第1の補正テーブルと前記第2の補正テーブルそれぞれに従って、別々の前記記録媒体への記録を前記プラテンに吸着させずに行う第1のテスト記録手段と、
前記決定手段により仮決定された補正テーブルと前記第1の補正テーブルと前記第2の補正テーブルそれぞれに従って、前記第1のテスト記録手段により記録が行われた前記各記録媒体への記録を前記プラテンに吸着させて行う第2のテスト記録手段と、
前記第2のテスト記録手段により記録された前記各記録媒体上の記録ドットを前記センサにより読み取って記録ドットの単位面積当たりの濃度をそれぞれ測定し、いずれの前記記録媒体についての濃度が最も低いかを判定する判定手段とをさらに備え、
前記記録制御手段は、前記判定手段により最も濃度が低いと判定された前記記録媒体について用いられた、前記補正テーブルと前記第1の補正テーブルと前記第2の補正テーブルのいずれかに従って、前記記録媒体を前記プラテンに吸着させて、前記着弾位置が補正されるように前記記録ヘッドの駆動タイミングを制御して、前記記録データに基づき前記記録媒体への記録を行うことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記吸引手段は、前記記録媒体を前記プラテンに吸着させるための吸引力を発生し、当該吸引力を伝達するための伝達路を介して前記プラテンの下部に位置しており、
前記伝達路は、前記記録媒体の前記搬送方向についての幅より広い範囲に前記吸引力を伝達するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
記録媒体をプラテンに吸着させる吸引手段を有し、記録データに基づき記録ヘッドを走査して前記記録媒体への記録を行うインクジェット記録装置において実行される記録制御方法であって、
前記インクジェット記録装置の取得手段が、前記吸引手段により前記プラテンに前記記録媒体を吸着させて前記記録を行う場合に、前記記録ヘッドから前記記録媒体へのインク滴の着弾位置に影響を及ぼすパラメータを取得する取得工程と、
前記インクジェット記録装置の決定手段が、前記取得工程において取得された前記パラメータに基づき、前記着弾位置の補正量が前記記録ヘッドの走査方向及び前記記録媒体を搬送する搬送方向それぞれについて定められた複数の補正テーブルから1つを決定する決定工程と、
前記インクジェット記録装置の記録制御手段が、前記記録媒体を前記プラテンに吸着させて、前記決定工程において決定された前記補正テーブルに従って前記着弾位置が補正されるように前記記録ヘッドの駆動タイミングを制御して、前記記録データに基づき前記記録媒体への記録を行う記録制御工程と
を有することを特徴とするインクジェット記録装置の記録制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−171199(P2012−171199A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35180(P2011−35180)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】