インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法
【課題】バンド毎に記録色順を合わせた場合であっても、1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なることによる時間差ムラを抑制する。
【解決手段】それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを、往方向の走査と復方向の走査の間にノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録装置であって、往方向の走査の後の記録媒体の相対移動量と、復方向の走査の後の記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させ、所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成し、2回の走査で記録を完成するいずれの走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする。
【解決手段】それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを、往方向の走査と復方向の走査の間にノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録装置であって、往方向の走査の後の記録媒体の相対移動量と、復方向の走査の後の記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させ、所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成し、2回の走査で記録を完成するいずれの走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関し、特に所定の領域を往復2回の走査で記録するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置でカラー記録を行なう場合、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクを吐出する記録ヘッドを主走査方向に横並びに並べたものがある。このような記録ヘッドにより往復2パス記録を行なう場合、マゼンタインクとイエローインクに着目すると、まず往方向の1回目の走査で記録ヘッドの下半分のノズルを用いてマゼンタ→イエローの記録色順で画像の約50%デューティの記録を行う。次に、記録ヘッド幅の半分長さの紙送りを行う。そして、復方向の2回目の走査で記録ヘッドの上半分のノズルを用いてイエロー→マゼンタの記録色順で画像の約50%の記録を行なう。この往復による1回目の走査と2回目の走査を行なうことにより記録ヘッド幅の半分の幅を有した1バンド分の記録を完成する。このような記録を行なうと、あるバンドでは、マゼンタ→イエロー→イエロー→マゼンタの順序で記録が行なわれ、これに隣接するバンドでは、イエロー→マゼンタ→マゼンタ→イエローの順序で記録が行なわれる。その結果、どの色のインクが最初に記録されるかに応じて、2パスで記録を完成するバンド毎に色味が異なるという問題が生じる。
【0003】
以上説明したような記録色順によるバンド間の色味の違いを低減するために、2パス記録において、インクの記録色順を揃えた記録方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この記録方法では、往方向の記録走査後に行う記録媒体の搬送と復方向の記録走査後に行なう記録媒体の搬送を、方向と量を異ならせることにより、インクの記録色順を揃えることにより、バンド間の色ムラを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第03176130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の記録方法では、第一のバンドは第一走査と第二走査で記録が完成されるのに対して、第二のバンドは第一の走査と第四の走査で記録が完成される。そのため、第一のバンドと第二のバンドとでは、そのバンドを記録する2パスのうち1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なり、かかる時間差によりバンド間に時間差ムラが生じることがある。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、バンド毎に記録色順を合わせた場合であっても、1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なることによる時間差ムラを抑制することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを前記複数のノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、前記往方向の走査と前記復方向の走査の間に前記ノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録装置であって、前記往方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量と、前記復方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる搬送手段と、前記所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成する生成手段と、前記2回の走査で記録を完成するいずれの前記走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする記録制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、所定の領域を2回の走査で記録を行なう記録方法であって、記録色順が各領域で同じ場合、1回目の走査の記録Dutyを2回目の記録Dutyよりも高くする。これにより、バンド毎に1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なる場合であっても、時間差ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の記録装置と記録ヘッドを示す図である。
【図2】第1の実施形態の記録装置の記録制御回路の概略構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態の記録方法で使用する間引きマスクである。
【図4】第1の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図5】第1の実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【図6】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【図7】記録用紙をモデル化した模式図である。
【図8】第2の実施形態の記録方法で使用する間引きマスクである。
【図9】第2の実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図11】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【図12】第3の実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。
【図13】第4の実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。
【図14】第4の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図15】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【図16】第5の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図17】第5の実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【図18】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1(a)は、本実施形態のインクジェット記録装置を示す概要斜視図であり、図1(b)は、本実施形態の記録ヘッドを示す図である。
【0011】
図1(a)に示す本実施形態の記録装置のインクタンク205〜208には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色の4つのインクがそれぞれ収容されている。これらの4つのインクは、記録ヘッド101〜104に供給される。
【0012】
図1(b)では、黒丸がインク滴を吐出する吐出口を示しており、y方向に8個のノズルが並んでいる。記録ヘッド101はブラックインクを吐出するノズル列、記録ヘッド102はシアンインクを吐出するノズル列、記録ヘッド103はマゼンタインクを吐出するノズル列、記録ヘッド104はイエローインクを吐出するノズル列を示している。
【0013】
搬送ローラ209、210は、補助ローラ211、212とともに記録用紙等の記録媒体214を挟持しながら回転して搬送するとともに、記録媒体を保持する役割も担っている。キャリッジ213は、インクタンク205〜208および記録ヘッド101〜104を搭載している。キャリッジ213は、X方向に沿って往復移動しながら記録ヘッドからインクが吐出され、記録媒体に画像が記録される。
【0014】
記録ヘッド101〜104の回復動作時等の非記録動作時には、キャリッジ213は図中の点線で示したホームポジション位置hに待機するように制御される。ホームポジションhに待機している記録ヘッド101〜104は、記録開始命令が入力されると、キャリッジ213と共に図中X方向に移動しつつ、インクを吐出して記録媒体214上に画像を記録する。この記録ヘッドの1回の移動(走査)によって、記録ヘッド201〜204の吐出口の配列範囲に対応した幅を有する領域に対して記録が行われる。
【0015】
キャリッジ213の主走査方向(Xの正の方向)への1回の走査に伴う記録が終了すると、キャリッジ213は逆方向(Xの負の方向)へ走査しながら、記録ヘッド201〜204で記録を行う。前回の記録走査が終了してから続く記録走査が始まる前には、搬送ローラ209、210が回転して、主走査方向と交差するノズルの配列方向(副走査方向、Y方向)へと記録媒体が搬送される。このように記録ヘッドをの記録走査と記録媒体の搬送とを繰り返すことにより記録媒体214に対する画像の記録が完成する。すなわち、ノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、往方向の走査と復方向の走査の間にノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成る。記録ヘッド201〜204からインクを吐出する記録動作は、後述の制御手段による制御に基づいて行われる。
【0016】
なお、本実施形態の記録ヘッドとインクタンクは分離可能にキャリッジに搭載されているが、記録ヘッドとインクタンクとが一体になったカートリッジをキャリッジに搭載するものであってもよい。また、一つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な複数色一体型の記録ヘッドをキャリッジに搭載するものであってもよい。
【0017】
図2は、図1(a)に示すインクジェット記録装置の記録制御回路の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置300は、インターフェイス302を介して、ホストコンピュータ(以下、ホストPC)303等のデータ供給装置に接続されている。データ供給装置から送信される各種データや記録に関連する制御信号等は、インクジェット記録装置300の記録制御部301に入力される。記録制御部301は、インターフェイス302を介して入力された制御信号に従って後述のモータドライバ304、305やヘッドドライバ306を制御する。また、記録制御部301は、入力される画像データの処理を行う。搬送モータ307は、記録媒体218の搬送のために搬送ローラ209、210を回転させるためのモータである。キャリッジモータ308は、記録ヘッド201〜204を搭載するキャリッジ213を往復移動させるためのモータである。モータドライバ304、305は、搬送モータ307、キャリッジモータ308をそれぞれ駆動するためのモータドライバである。ヘッドドライバ306は記録ヘッド201〜204を駆動するためのものであり、記録ヘッドの数に対応して複数設けられている。
【0018】
次に、本実施形態の記録方法について説明する。本実施形態では、往方向の走査の後の記録媒体の相対移動量と、復方向の走査の後の記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる。この搬送動作によりバンド毎に記録される色順を合わせ、その時発生する時間差ムラを低減するために、1回目の走査で記録する記録デューティ(Duty)を2回目の走査で記録する記録デューティ(Duty)よりも高くするものである。
【0019】
図3は、本実施形態の記録方法で使用する間引きマスクであり、黒塗りつぶし部は、データを記録する画素である。また、画素の大きさ401および402は、ノズルピッチ105と同じである。
【0020】
本実施形態の記録は1バンドを2回の走査で画像の形成を行なう2パス記録であり、図3(a)に示されたマスクにより1回目の走査で記録するデータを生成し、図3(b)に示されたマスクにより2回目の走査で記録データを生成する。
【0021】
本実施形態では、図3(a)に示すマスクと、図3(b)に示すマスクを使用して記録データを間引くと、1回目の走査で記録するデータの方が2回目の走査で記録するデータよりも3倍多くなる。
【0022】
図4は、画像データの例を示す図である。501、502は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を表している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは24インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸は記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0023】
図5は、本実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【0024】
まず、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、図3(a)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(a)は、第一走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(a)において、黒マルは第一走査で記録されたドットを示している。
【0025】
なお、間引きマスクは、4画素×4画素であり、それ以上の画素に対しては繰り返し同じパターンが適用されるものとする。
【0026】
ここでは、シアンのデータの37.5%Duty、イエローのデータの37.5%Dutyの合計75%Dutyの画像がシアン⇒イエローの順で記録されることになる。
【0027】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって−方向に走査され、図3(b)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引したデータが記録される。図5(b)は、第二走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(b)において、斜線模様のマルは第二走査で記録されたドットを示している。
【0028】
ここでは、シアンのデータの12.5%Duty、イエローのデータの12.5%Dutyの合計25%Dutyの画像がイエロー⇒シアンの順で記録されることになる。
【0029】
次に、記録媒体を12ノズル分Yの+方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、図3(a)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(c)は、第三走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(c)において、格子模様のマルは第三走査で記録されたドットを示している。
【0030】
ここでは、シアンのデータの37.5%Duty、イエローのデータの37.5%Dutyの合計75%Dutyの画像がシアン⇒イエローの順で記録されることになる。
【0031】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドをX方向であって−方向に走査され、図3(b)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(d)は、第四走査後終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(d)において、ドット模様のマルは第四走査で記録されたドットを示している。
【0032】
ここでは、シアンのデータの12.5%Duty、イエローのデータの12.5%Dutyの合計25%Dutyの画像がイエロー⇒シアンの順で記録されることになる。
【0033】
次に、本実施形態の記録データはY方向に16画素であるため、第五走査では記録媒体の搬送も記録を行なわない。すなわち、第四走査で記録を行なった記録媒体の上を、記録を行なわずに走査する。
【0034】
次に、記録媒体を8ノズル分Yの−方向に搬送する。そして記録ヘッドはX方向の−方向走査され、図3(b)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(e)は、第六走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(e)において、太線で囲まれたマルは第六走査で記録されたドットを示している。
【0035】
ここでは、シアンのデータの37.5%Duty、イエローのデータの37.5%Dutyの合計75%Dutyの画像がシアン⇒イエローの順で記録されることになる。
【0036】
以上の動作により、図4に示した画像データを記録することができる。
【0037】
なお、本実施形態の画像データはY方向に16画素のものであったが、Y方向に17画素以上あるものであれば、さらに記録動作を続ける。この場合、第四走査が終わると、記録媒体をY方向であって+方向に12ノズル分搬送する。そして、記録ヘッドをX方向であって+方向に走査され、図3(a)の間引きマスクを用いて記録データを間引いたデータが記録される。
【0038】
図6は、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す図である。各バンド間では、記録色順と記録Dutyは一致している。しかしながら、補完走査の間の走査時間が異なっている。例えば第一バンドでは第一走査と第二走査で記録が終了するが、第二バンドでは第一走査と第四走査で記録が行われる。したがって、各バンドで記録を開始する走査から記録が完了する走査までの時間が異なっている。
【0039】
ここで、走査間の時間差によって発生するバンド毎の発色の違いのメカニズムを説明する。
【0040】
図7は、記録用紙をモデル化した模式図であり、用紙の中の大毛管と小毛管を表している。まず、図7(a)および(b)では、各走査において均等なDutyで記録した場合の模式図を示している。図7(a)は、1回目の走査から記録時間を空けずに2回目の走査を行なった場合の模式図であり、図7(b)は、1回目の走査から記録時間を空けて2回目の走査を行なった場合の模式図である。
【0041】
図7(a)において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に記録時間差をあけることなく2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると1回目の走査で記録されたインクをよけて2回目の走査で記録されたインクが記録用紙の奥に浸透し、定着する。この時の浸透深さを801で示している。
【0042】
図7(b)において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に走査間の記録時間差が十分にある状態で、2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると1回目の走査で記録されたインクは小毛管まで到達、吸収されるため、2回目の走査で記録されたインクは記録用紙表層の大毛管へ浸透し、定着する。この時の浸透深さを802で示している。
【0043】
図7(a)および(b)に示す801と802の浸透深さの違いにより発色が異なり、第一バンドと第二バンドの間で時間差ムラが発生する。
【0044】
次に、1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyが高い場合について説明する。図7(c)および(d)は、1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyを高くして記録した場合の模式図を示している。図7(c)は、において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に記録時間差をあけることなく2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると、1回目の走査で記録されたインクをよけて記録用紙の奥にインクが浸透し、定着する。この時の浸透深さを901で示している。
【0045】
この際、2回目の走査でのインク量が少ないため、図7(a)に比べて、より記録用紙表層付近でインクが定着する。
【0046】
図7(d)において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に走査間の記録時間差が十分にある状態で、2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると1回目の走査で記録されたインクは小毛管まで到達、吸収される。このため2回目の走査で記録されたインクは記録用紙表層の大毛管へ浸透し、定着する。この時の浸透深さを902で示している。
【0047】
ここで、901と902の浸透深さの違いは、801と802の浸透深さの違いに比べて小さい。すなわち、各走査において均等なDutyで記録した場合より1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyを高くして記録した方が、発色の差が小さくなる。その結果、第一バンドと第二バンドの走査間時間差によるムラが低減される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、記録される色順を全てのバンドで合わせて記録する記録方法であって、各バンドごとに、先行する記録走査での記録Dutyを後に記録する記録走査での記録Dutyを高くすることで時間差ムラを低減することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、1回目の走査で記録される記録Dutyは75%、2回目の走査で記録される記録Dutyは25.5%になるようなマスクパターンを使用したが、本発明はこのようなマスクパターンに限定されるものではない。すなわち、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0050】
また、本実施形態の記録方法では、記録ヘッドの半分の幅のバンドごとに、1回目の走査から2回目の走査までの記録時間が異なるものであたが、本発明はこのような記録方法に限定されるものではない。すなわち、各バンドは同じ幅である必要はなく、所定の領域を2回の走査で記録を行なう方法であって、全てのバンド(領域)で記録される色順が同じになるような記録方法であればよい。
【0051】
また、本実施形態では1回目の走査方向は往走査方向であり、2回目の走査方向は復走査方向であったが、本発明はこれらの方向に限定されるものではない。すなわち、往走査方向および復走査方向のうち一方の走査1回目の走査を行なえば、2回目の走査は他方の走査方向で記録を行なうものである。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、すべての領域の記録される色順を合わせて記録する場合であって、往復走査で記録を行なう領域のうち、1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyのDutyを高くするものであった。本実施形態は、さらに記録媒体ごとに、Dutyを選択するものである。
【0053】
すなわち、本発明では、記録媒体のインクの浸透特性の影響により、色ムラを低減すべく1回目の走査と2回目の走査を異ならせている。そこで本実施形態は、浸透挙動の異なる記録媒体毎に1回目の走査と2回目の走査の記録Dutyを変更するものとする。
【0054】
図8は、本実施形態の記録方法で使用する間引きマスクであり、黒塗りつぶし部は、データを記録する画素である。図8(a)に示すマスクは記録Dutyが75%、図8(b)に示すマスクは記録Dutyが25%である。また、図8(c)および(d)に示すマスクは記録Dutyが50%の間引きマスクである。図8(a)に示すマスクと図8(b)に示すマスクは補完関係にあり、図8(c)に示すマスクと図8(d)に示すマスクは補完関係にある。
【0055】
図9は、本実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。ホストPCから記録動作開始の指示がされると、記録がスタートする(ステップ1100)。次に、記録装置にセットされている記録用紙の種類を特定し(ステップ1101)、記録用紙の種類に基づき間引きマスクを選択する(ステップ1102)。本実施形態で選択できるマスクは図8(a)および(b)に示すマスクのセットか、図8(c)および(d)に示すマスクのセットである。
【0056】
浸透速度の速い記録用紙である場合、時間差の影響を受け難いため、図8(c)および(d)に示すマスクのセットを選択する。一方、浸透速度の遅い記録用紙である場合、時間差の影響を受けやすいため、図8(a)および(b)に示すマスクセットを選択する。
【0057】
次に、本実施形態の画像データの例と、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す。
【0058】
図10は、本実施形態の画像データの例を示す図である。501、502は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を示している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは24インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸が記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0059】
図11(a)は、図8(a)および(b)に示す間引きマスクを用いて実施形態1と同様な記録方法で記録を行なった結果である。図11(a)に示す記録結果は、1回目の走査と2回目の走査の間の時間がバンド間で異なっており、また1回目の走査のDutyがと2回目の走査のDutyより高くなるように記録されている。このように記録を行なうことにより、浸透速度の遅い記録媒体では、第1の実施形態で図7を用いて説明したとおり、バンド間の時間差ムラを低減することができる。
【0060】
図11(b)は、図8(c)および(d)に示す間引きマスクを用いて実施形態1と同様な記録方法で記録を行なった結果である。図11(b)に示す記録結果は、図11(a)に示す記録結果と同様に、1回目の走査と2回目の走査の間の時間がバンド間で異なっている。しかしながら、1回目の走査と2回目の走査のDutyは等しく50%である。これは、ある程度浸透速度が速い記録媒体の場合、記録Dutyが等しかったとしても、記録走査の時間差による記録ムラは小さく、目立ち難い。
【0061】
以上のように、本実施形態では、記録媒体のインクの浸透速度により、1回目の走査と2回目の走査のDutyを異ならせるか否かを決定して、バンドムラの低減を達成することができる。
【0062】
なお、本実施形態では選択するマスクは2組であったが、マスクパターンは3組以上であってもよい。また、マスクパターンのDutyは、浸透速度の異なる記録媒体ごとに、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0063】
(第3の実施形態)
上述の実施形態で説明したように、本発明は、記録される色順を全てのバンドで合わせて記録する記録方法であって、1回目の走査のDutyを2回目の走査のDutyより高くすることにより時間差ムラを低減するものである。この時間差によるムラは、記録媒体の走査方向のサイズにより異なる。すなわち、記録媒体の走査方向の長さが長ければ、記録媒体の走査方向の長さが短いものよりも、バンド間で1回目の走査と2回目の走査の時間の長さが長くなる。
【0064】
したがって、本実施形態では、記録媒体の走査方向のサイズごとに、1回目の走査のDutyと2回目の走査のDutyを異ならせるものとする。
【0065】
本実施形態では、第2の実施形態で使用した図8(a)と(b)に示すマスクのセットと、図8(c)と(d)に示すマスクのセットを使用する。
【0066】
図12は、本実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。ホストPCから記録動作開始の指示がされると、記録がスタートする(ステップ1400)。次に、記録装置にセットされている記録媒体の走査方向のサイズ(横サイズ)を特定する(ステップ1401)。そして、記録媒体の横サイズに基づいて間引きマスクのセットを選択する(ステップ1402)。すなわち、本実施形態では、図8(a)と(b)に示すマスクのセットか、図8(c)と(d)に示すマスクのセットかを選択する。
【0067】
1回目の走査から2回目の走査までの時間の差がバンド間で短い幅の記録媒体では、図8(c)と(d)に示すマスクのセットが選択される。また、1回目の走査から2回目の走査までの時間の差がバンド間で長い幅の記録媒体では、図8(a)と(b)に示すマスクのセットが選択される。
【0068】
以上のように、記録媒体の横サイズによって、1回目の走査と2回目の走査の記録Duty比率を変更することで記録媒体の横サイズ毎に時間差ムラをさらに低減することができる。
【0069】
なお、本実施形態では選択するマスクは2組であったが、マスクパターンは3組以上であってもよい。また、マスクパターンのDutyは、記録媒体の横サイズの異なる記録媒体ごとに、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0070】
(第4の実施形態)
本発明は、記録される色順を全てのバンドで合わせて記録する記録方法であって、かかる記録方法により発生するバンド間の時間差ムラを低減するものである。本実施形態では、バンド毎の1回目の走査から2回目の走査までの時間の差が異なる画像幅である場合に、さらにマスクパターンセットの記録Dutyを変更するものである。
【0071】
本実施形態では、第2の実施形態で使用した図8(a)と(b)に示すマスクのセットと、図8(c)と(d)に示すマスクのセットを使用する。
【0072】
図13は、本実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。ホストPCから記録動作開始の指示がされると、記録がスタートする(ステップ1500)。次に、第Nおよび第(N+1)バンドの画像幅サイズを判定する(ステップ1501)。画像幅サイズに基づいて、第Nおよび第(N+1)バンドに適用するマスクセットを選択(ステップ1502)。すなわち、本実施形態では、図8(a)と(b)に示すマスクのセットか、図8(c)と(d)に示すマスクのセットかを選択する。続いて、選択されたマスクを用いて第Nおよび第(N+1)バンドの記録を実施する(ステップS1503)。そして、記録が終了したかどうか判定し(ステップ1504)、記録が終了していれば、記録動作を完了する(ステップ1506)。記録が終了していなければ、次の走査のバンドの間引きマスクがセットされているかどうか判定する(ステップ1505)。間引きマスクがセットされていれば、記録動作を開始する(ステップ1503)。間引きマスクがセットされていなければ、画像幅サイズを判定し(ステップ1501)、以下同様の手順で記録を続ける。
【0073】
図14は、本実施形態の画像データの例を示す図である。1601、1602は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を示している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは、上方は24インチ幅の画素数であり、下方は8画素が12インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸が記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0074】
本実施形態でも、第2の実施形態で使用した図8(a)と(b)に示すマスクのセットと、図8(c)と(d)に示すマスクのセットを使用する。1回目の走査から2回目の走査までの時間が長くなる上部の16画素には、図8(a)と(b)に示すマスクのセットが割り当てられる。また、1回目の走査から2回目の走査までの時間が短くなる下部の16画素には、図8(c)と(d)に示すマスクのセットが割り当てられる。
【0075】
図15は、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す図である。黒マルは第一走査で記録されるドット、斜線模様のマルが第二走査で記録されるドット、格子模様のマルは第三走査で記録されるドット、ドット模様のマルは第四走査で記録されるドット、太線で囲まれたマルは第六走査で記録されるドットを示している。
【0076】
第1と第2のバンドは、1回目の走査のシアンとイエローのDutyはそれぞれ37.5%になっており、2回目の走査のシアンとイエローのDutyはそれぞれ12.5%である。一方、画像幅が小さく1回目の走査から2回目の走査までの時間が第1および第2より少ない第3および第4バンドは、シアンとイエローの1回目の走査のDutyと2回目の走査のDutyはともに25%と均等になっている。
【0077】
以上のように、画像幅が異なるものが1つの記録データの中に混在している場合、画像幅のサイズによって、1回目の走査と2回目の走査の記録Duty比率を変更することで画像幅のサイズ毎に時間差ムラをさらに低減することができる。
【0078】
なお、本実施形態では選択するマスクは2組であったが、マスクパターンは3組以上であってもよい。また、マスクパターンのDutyは、いくつかの画像幅の大きさごとに、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0079】
(第5の実施形態)
第1の実施形態では、1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なるバンド間の時間差ムラを抑制するために、1回目の走査の記録Dutyを2回目の走査の記録Dutyより高くするものであった。本実施形態ではさらに、1回目の走査から2回目の走査までの時間が長い場合、すなわち同じDutyで記録を行なうと図7(a)で説明したような現象が生じるような場合のみ1回目の走査と2回目の走査のDutyを変えるものである。したがって、本実施形態では、図8(a)と(b)のマスクセットと図8(b)と(c)のマスクセットを使用する。
【0080】
図16は、画像データの例を示す図である。1801、1802は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を表している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは24インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸は記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0081】
図17は、本実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【0082】
まず、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、上4ノズルは図8(c)の間引きマスクを用い、下4ノズルは図8(a)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(a)は、第一走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(a)において、黒マルは第一走査で記録されたドットを示している。
【0083】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって−方向に走査され、上4ノズルは図8(b)の間引きマスクを用い、下4ノズルは図8(d)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引したデータが記録される。図17(b)は、第三走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(b)において、斜線模様のマルは第三走査で記録されたドットを示している。
【0084】
次に、記録媒体を12ノズル分Yの+方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、上4ノズルは図8(c)の間引きマスクを用い、下4ノズルは図8(a)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(c)は、第三走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(c)において、格子模様のマルは第三走査で記録されたドットを示している。
【0085】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドをX方向であって−方向に走査され、上4ノズルは図8(b)の間引きマスクを用いて、下4ノズルは図8(d)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(d)は、第四走査後終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(d)において、ドット模様のマルは第四走査で記録されたドットを示している。
【0086】
次に、本実施形態の記録データはY方向に16画素であるため、第五走査では記録媒体の搬送も記録を行なわない。すなわち、第四走査で記録を行なった記録媒体の上を、記録を行なわずに走査する。
【0087】
最後に、記録媒体を8ノズル分Yの−方向に搬送する。そして記録ヘッドはX方向の−方向走査され、図8(b)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(e)は、第六走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(e)において、太線で囲まれたマルは第六走査で記録されたドットを示している。
【0088】
図18は、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す図である。各バンド間では、記録色順と記録Dutyは一致している。そして、1回目の走査から2回目の走査までの時間が短い第1バンドと第3バンドは1回目の走査と2回目の走査のDutyが同じである。一方、1回目の走査から2回目の走査までの時間が長い第2バンドと第4バンドは1回目の走査のDutyが2回目の走査のDutyよりも高くなっている。
【0089】
以上により、バンド毎に記録媒体に対するインクの浸透深さを制御することができ、バンドによって1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なることによるバンドムラを抑制することができる。
【符号の説明】
【0090】
201、202、204、204 記録ヘッド
205、206,207、208 インクタンク
300 インクジェット記録装置
301 記録制御部
302 インターフェイス
303 ホストPC
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関し、特に所定の領域を往復2回の走査で記録するインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置でカラー記録を行なう場合、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクを吐出する記録ヘッドを主走査方向に横並びに並べたものがある。このような記録ヘッドにより往復2パス記録を行なう場合、マゼンタインクとイエローインクに着目すると、まず往方向の1回目の走査で記録ヘッドの下半分のノズルを用いてマゼンタ→イエローの記録色順で画像の約50%デューティの記録を行う。次に、記録ヘッド幅の半分長さの紙送りを行う。そして、復方向の2回目の走査で記録ヘッドの上半分のノズルを用いてイエロー→マゼンタの記録色順で画像の約50%の記録を行なう。この往復による1回目の走査と2回目の走査を行なうことにより記録ヘッド幅の半分の幅を有した1バンド分の記録を完成する。このような記録を行なうと、あるバンドでは、マゼンタ→イエロー→イエロー→マゼンタの順序で記録が行なわれ、これに隣接するバンドでは、イエロー→マゼンタ→マゼンタ→イエローの順序で記録が行なわれる。その結果、どの色のインクが最初に記録されるかに応じて、2パスで記録を完成するバンド毎に色味が異なるという問題が生じる。
【0003】
以上説明したような記録色順によるバンド間の色味の違いを低減するために、2パス記録において、インクの記録色順を揃えた記録方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この記録方法では、往方向の記録走査後に行う記録媒体の搬送と復方向の記録走査後に行なう記録媒体の搬送を、方向と量を異ならせることにより、インクの記録色順を揃えることにより、バンド間の色ムラを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第03176130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の記録方法では、第一のバンドは第一走査と第二走査で記録が完成されるのに対して、第二のバンドは第一の走査と第四の走査で記録が完成される。そのため、第一のバンドと第二のバンドとでは、そのバンドを記録する2パスのうち1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なり、かかる時間差によりバンド間に時間差ムラが生じることがある。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、バンド毎に記録色順を合わせた場合であっても、1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なることによる時間差ムラを抑制することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを前記複数のノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、前記往方向の走査と前記復方向の走査の間に前記ノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録装置であって、前記往方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量と、前記復方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる搬送手段と、前記所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成する生成手段と、前記2回の走査で記録を完成するいずれの前記走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする記録制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、所定の領域を2回の走査で記録を行なう記録方法であって、記録色順が各領域で同じ場合、1回目の走査の記録Dutyを2回目の記録Dutyよりも高くする。これにより、バンド毎に1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なる場合であっても、時間差ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の記録装置と記録ヘッドを示す図である。
【図2】第1の実施形態の記録装置の記録制御回路の概略構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態の記録方法で使用する間引きマスクである。
【図4】第1の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図5】第1の実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【図6】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【図7】記録用紙をモデル化した模式図である。
【図8】第2の実施形態の記録方法で使用する間引きマスクである。
【図9】第2の実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図11】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【図12】第3の実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。
【図13】第4の実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。
【図14】第4の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図15】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【図16】第5の実施形態の画像データの例を示す図である。
【図17】第5の実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【図18】記録終了後の画像の記録ドットと記録色順と記録Dutyを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1(a)は、本実施形態のインクジェット記録装置を示す概要斜視図であり、図1(b)は、本実施形態の記録ヘッドを示す図である。
【0011】
図1(a)に示す本実施形態の記録装置のインクタンク205〜208には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色の4つのインクがそれぞれ収容されている。これらの4つのインクは、記録ヘッド101〜104に供給される。
【0012】
図1(b)では、黒丸がインク滴を吐出する吐出口を示しており、y方向に8個のノズルが並んでいる。記録ヘッド101はブラックインクを吐出するノズル列、記録ヘッド102はシアンインクを吐出するノズル列、記録ヘッド103はマゼンタインクを吐出するノズル列、記録ヘッド104はイエローインクを吐出するノズル列を示している。
【0013】
搬送ローラ209、210は、補助ローラ211、212とともに記録用紙等の記録媒体214を挟持しながら回転して搬送するとともに、記録媒体を保持する役割も担っている。キャリッジ213は、インクタンク205〜208および記録ヘッド101〜104を搭載している。キャリッジ213は、X方向に沿って往復移動しながら記録ヘッドからインクが吐出され、記録媒体に画像が記録される。
【0014】
記録ヘッド101〜104の回復動作時等の非記録動作時には、キャリッジ213は図中の点線で示したホームポジション位置hに待機するように制御される。ホームポジションhに待機している記録ヘッド101〜104は、記録開始命令が入力されると、キャリッジ213と共に図中X方向に移動しつつ、インクを吐出して記録媒体214上に画像を記録する。この記録ヘッドの1回の移動(走査)によって、記録ヘッド201〜204の吐出口の配列範囲に対応した幅を有する領域に対して記録が行われる。
【0015】
キャリッジ213の主走査方向(Xの正の方向)への1回の走査に伴う記録が終了すると、キャリッジ213は逆方向(Xの負の方向)へ走査しながら、記録ヘッド201〜204で記録を行う。前回の記録走査が終了してから続く記録走査が始まる前には、搬送ローラ209、210が回転して、主走査方向と交差するノズルの配列方向(副走査方向、Y方向)へと記録媒体が搬送される。このように記録ヘッドをの記録走査と記録媒体の搬送とを繰り返すことにより記録媒体214に対する画像の記録が完成する。すなわち、ノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、往方向の走査と復方向の走査の間にノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成る。記録ヘッド201〜204からインクを吐出する記録動作は、後述の制御手段による制御に基づいて行われる。
【0016】
なお、本実施形態の記録ヘッドとインクタンクは分離可能にキャリッジに搭載されているが、記録ヘッドとインクタンクとが一体になったカートリッジをキャリッジに搭載するものであってもよい。また、一つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な複数色一体型の記録ヘッドをキャリッジに搭載するものであってもよい。
【0017】
図2は、図1(a)に示すインクジェット記録装置の記録制御回路の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置300は、インターフェイス302を介して、ホストコンピュータ(以下、ホストPC)303等のデータ供給装置に接続されている。データ供給装置から送信される各種データや記録に関連する制御信号等は、インクジェット記録装置300の記録制御部301に入力される。記録制御部301は、インターフェイス302を介して入力された制御信号に従って後述のモータドライバ304、305やヘッドドライバ306を制御する。また、記録制御部301は、入力される画像データの処理を行う。搬送モータ307は、記録媒体218の搬送のために搬送ローラ209、210を回転させるためのモータである。キャリッジモータ308は、記録ヘッド201〜204を搭載するキャリッジ213を往復移動させるためのモータである。モータドライバ304、305は、搬送モータ307、キャリッジモータ308をそれぞれ駆動するためのモータドライバである。ヘッドドライバ306は記録ヘッド201〜204を駆動するためのものであり、記録ヘッドの数に対応して複数設けられている。
【0018】
次に、本実施形態の記録方法について説明する。本実施形態では、往方向の走査の後の記録媒体の相対移動量と、復方向の走査の後の記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる。この搬送動作によりバンド毎に記録される色順を合わせ、その時発生する時間差ムラを低減するために、1回目の走査で記録する記録デューティ(Duty)を2回目の走査で記録する記録デューティ(Duty)よりも高くするものである。
【0019】
図3は、本実施形態の記録方法で使用する間引きマスクであり、黒塗りつぶし部は、データを記録する画素である。また、画素の大きさ401および402は、ノズルピッチ105と同じである。
【0020】
本実施形態の記録は1バンドを2回の走査で画像の形成を行なう2パス記録であり、図3(a)に示されたマスクにより1回目の走査で記録するデータを生成し、図3(b)に示されたマスクにより2回目の走査で記録データを生成する。
【0021】
本実施形態では、図3(a)に示すマスクと、図3(b)に示すマスクを使用して記録データを間引くと、1回目の走査で記録するデータの方が2回目の走査で記録するデータよりも3倍多くなる。
【0022】
図4は、画像データの例を示す図である。501、502は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を表している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは24インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸は記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0023】
図5は、本実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【0024】
まず、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、図3(a)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(a)は、第一走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(a)において、黒マルは第一走査で記録されたドットを示している。
【0025】
なお、間引きマスクは、4画素×4画素であり、それ以上の画素に対しては繰り返し同じパターンが適用されるものとする。
【0026】
ここでは、シアンのデータの37.5%Duty、イエローのデータの37.5%Dutyの合計75%Dutyの画像がシアン⇒イエローの順で記録されることになる。
【0027】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって−方向に走査され、図3(b)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引したデータが記録される。図5(b)は、第二走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(b)において、斜線模様のマルは第二走査で記録されたドットを示している。
【0028】
ここでは、シアンのデータの12.5%Duty、イエローのデータの12.5%Dutyの合計25%Dutyの画像がイエロー⇒シアンの順で記録されることになる。
【0029】
次に、記録媒体を12ノズル分Yの+方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、図3(a)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(c)は、第三走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(c)において、格子模様のマルは第三走査で記録されたドットを示している。
【0030】
ここでは、シアンのデータの37.5%Duty、イエローのデータの37.5%Dutyの合計75%Dutyの画像がシアン⇒イエローの順で記録されることになる。
【0031】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドをX方向であって−方向に走査され、図3(b)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(d)は、第四走査後終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(d)において、ドット模様のマルは第四走査で記録されたドットを示している。
【0032】
ここでは、シアンのデータの12.5%Duty、イエローのデータの12.5%Dutyの合計25%Dutyの画像がイエロー⇒シアンの順で記録されることになる。
【0033】
次に、本実施形態の記録データはY方向に16画素であるため、第五走査では記録媒体の搬送も記録を行なわない。すなわち、第四走査で記録を行なった記録媒体の上を、記録を行なわずに走査する。
【0034】
次に、記録媒体を8ノズル分Yの−方向に搬送する。そして記録ヘッドはX方向の−方向走査され、図3(b)の間引きマスクを用いて図4に示す記録データを間引いたデータが記録される。図5(e)は、第六走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図5(e)において、太線で囲まれたマルは第六走査で記録されたドットを示している。
【0035】
ここでは、シアンのデータの37.5%Duty、イエローのデータの37.5%Dutyの合計75%Dutyの画像がシアン⇒イエローの順で記録されることになる。
【0036】
以上の動作により、図4に示した画像データを記録することができる。
【0037】
なお、本実施形態の画像データはY方向に16画素のものであったが、Y方向に17画素以上あるものであれば、さらに記録動作を続ける。この場合、第四走査が終わると、記録媒体をY方向であって+方向に12ノズル分搬送する。そして、記録ヘッドをX方向であって+方向に走査され、図3(a)の間引きマスクを用いて記録データを間引いたデータが記録される。
【0038】
図6は、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す図である。各バンド間では、記録色順と記録Dutyは一致している。しかしながら、補完走査の間の走査時間が異なっている。例えば第一バンドでは第一走査と第二走査で記録が終了するが、第二バンドでは第一走査と第四走査で記録が行われる。したがって、各バンドで記録を開始する走査から記録が完了する走査までの時間が異なっている。
【0039】
ここで、走査間の時間差によって発生するバンド毎の発色の違いのメカニズムを説明する。
【0040】
図7は、記録用紙をモデル化した模式図であり、用紙の中の大毛管と小毛管を表している。まず、図7(a)および(b)では、各走査において均等なDutyで記録した場合の模式図を示している。図7(a)は、1回目の走査から記録時間を空けずに2回目の走査を行なった場合の模式図であり、図7(b)は、1回目の走査から記録時間を空けて2回目の走査を行なった場合の模式図である。
【0041】
図7(a)において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に記録時間差をあけることなく2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると1回目の走査で記録されたインクをよけて2回目の走査で記録されたインクが記録用紙の奥に浸透し、定着する。この時の浸透深さを801で示している。
【0042】
図7(b)において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に走査間の記録時間差が十分にある状態で、2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると1回目の走査で記録されたインクは小毛管まで到達、吸収されるため、2回目の走査で記録されたインクは記録用紙表層の大毛管へ浸透し、定着する。この時の浸透深さを802で示している。
【0043】
図7(a)および(b)に示す801と802の浸透深さの違いにより発色が異なり、第一バンドと第二バンドの間で時間差ムラが発生する。
【0044】
次に、1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyが高い場合について説明する。図7(c)および(d)は、1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyを高くして記録した場合の模式図を示している。図7(c)は、において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に記録時間差をあけることなく2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると、1回目の走査で記録されたインクをよけて記録用紙の奥にインクが浸透し、定着する。この時の浸透深さを901で示している。
【0045】
この際、2回目の走査でのインク量が少ないため、図7(a)に比べて、より記録用紙表層付近でインクが定着する。
【0046】
図7(d)において、1回目の走査でシアン⇒イエローの順にインク滴が記録用紙に着弾すると大毛管を通ってインクが吸収される。次に走査間の記録時間差が十分にある状態で、2回目の走査でイエロー⇒シアンの順にインク滴が記録用紙に着弾する。すると1回目の走査で記録されたインクは小毛管まで到達、吸収される。このため2回目の走査で記録されたインクは記録用紙表層の大毛管へ浸透し、定着する。この時の浸透深さを902で示している。
【0047】
ここで、901と902の浸透深さの違いは、801と802の浸透深さの違いに比べて小さい。すなわち、各走査において均等なDutyで記録した場合より1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyを高くして記録した方が、発色の差が小さくなる。その結果、第一バンドと第二バンドの走査間時間差によるムラが低減される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、記録される色順を全てのバンドで合わせて記録する記録方法であって、各バンドごとに、先行する記録走査での記録Dutyを後に記録する記録走査での記録Dutyを高くすることで時間差ムラを低減することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、1回目の走査で記録される記録Dutyは75%、2回目の走査で記録される記録Dutyは25.5%になるようなマスクパターンを使用したが、本発明はこのようなマスクパターンに限定されるものではない。すなわち、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0050】
また、本実施形態の記録方法では、記録ヘッドの半分の幅のバンドごとに、1回目の走査から2回目の走査までの記録時間が異なるものであたが、本発明はこのような記録方法に限定されるものではない。すなわち、各バンドは同じ幅である必要はなく、所定の領域を2回の走査で記録を行なう方法であって、全てのバンド(領域)で記録される色順が同じになるような記録方法であればよい。
【0051】
また、本実施形態では1回目の走査方向は往走査方向であり、2回目の走査方向は復走査方向であったが、本発明はこれらの方向に限定されるものではない。すなわち、往走査方向および復走査方向のうち一方の走査1回目の走査を行なえば、2回目の走査は他方の走査方向で記録を行なうものである。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、すべての領域の記録される色順を合わせて記録する場合であって、往復走査で記録を行なう領域のうち、1回目の走査の方が2回目の走査よりDutyのDutyを高くするものであった。本実施形態は、さらに記録媒体ごとに、Dutyを選択するものである。
【0053】
すなわち、本発明では、記録媒体のインクの浸透特性の影響により、色ムラを低減すべく1回目の走査と2回目の走査を異ならせている。そこで本実施形態は、浸透挙動の異なる記録媒体毎に1回目の走査と2回目の走査の記録Dutyを変更するものとする。
【0054】
図8は、本実施形態の記録方法で使用する間引きマスクであり、黒塗りつぶし部は、データを記録する画素である。図8(a)に示すマスクは記録Dutyが75%、図8(b)に示すマスクは記録Dutyが25%である。また、図8(c)および(d)に示すマスクは記録Dutyが50%の間引きマスクである。図8(a)に示すマスクと図8(b)に示すマスクは補完関係にあり、図8(c)に示すマスクと図8(d)に示すマスクは補完関係にある。
【0055】
図9は、本実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。ホストPCから記録動作開始の指示がされると、記録がスタートする(ステップ1100)。次に、記録装置にセットされている記録用紙の種類を特定し(ステップ1101)、記録用紙の種類に基づき間引きマスクを選択する(ステップ1102)。本実施形態で選択できるマスクは図8(a)および(b)に示すマスクのセットか、図8(c)および(d)に示すマスクのセットである。
【0056】
浸透速度の速い記録用紙である場合、時間差の影響を受け難いため、図8(c)および(d)に示すマスクのセットを選択する。一方、浸透速度の遅い記録用紙である場合、時間差の影響を受けやすいため、図8(a)および(b)に示すマスクセットを選択する。
【0057】
次に、本実施形態の画像データの例と、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す。
【0058】
図10は、本実施形態の画像データの例を示す図である。501、502は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を示している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは24インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸が記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0059】
図11(a)は、図8(a)および(b)に示す間引きマスクを用いて実施形態1と同様な記録方法で記録を行なった結果である。図11(a)に示す記録結果は、1回目の走査と2回目の走査の間の時間がバンド間で異なっており、また1回目の走査のDutyがと2回目の走査のDutyより高くなるように記録されている。このように記録を行なうことにより、浸透速度の遅い記録媒体では、第1の実施形態で図7を用いて説明したとおり、バンド間の時間差ムラを低減することができる。
【0060】
図11(b)は、図8(c)および(d)に示す間引きマスクを用いて実施形態1と同様な記録方法で記録を行なった結果である。図11(b)に示す記録結果は、図11(a)に示す記録結果と同様に、1回目の走査と2回目の走査の間の時間がバンド間で異なっている。しかしながら、1回目の走査と2回目の走査のDutyは等しく50%である。これは、ある程度浸透速度が速い記録媒体の場合、記録Dutyが等しかったとしても、記録走査の時間差による記録ムラは小さく、目立ち難い。
【0061】
以上のように、本実施形態では、記録媒体のインクの浸透速度により、1回目の走査と2回目の走査のDutyを異ならせるか否かを決定して、バンドムラの低減を達成することができる。
【0062】
なお、本実施形態では選択するマスクは2組であったが、マスクパターンは3組以上であってもよい。また、マスクパターンのDutyは、浸透速度の異なる記録媒体ごとに、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0063】
(第3の実施形態)
上述の実施形態で説明したように、本発明は、記録される色順を全てのバンドで合わせて記録する記録方法であって、1回目の走査のDutyを2回目の走査のDutyより高くすることにより時間差ムラを低減するものである。この時間差によるムラは、記録媒体の走査方向のサイズにより異なる。すなわち、記録媒体の走査方向の長さが長ければ、記録媒体の走査方向の長さが短いものよりも、バンド間で1回目の走査と2回目の走査の時間の長さが長くなる。
【0064】
したがって、本実施形態では、記録媒体の走査方向のサイズごとに、1回目の走査のDutyと2回目の走査のDutyを異ならせるものとする。
【0065】
本実施形態では、第2の実施形態で使用した図8(a)と(b)に示すマスクのセットと、図8(c)と(d)に示すマスクのセットを使用する。
【0066】
図12は、本実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。ホストPCから記録動作開始の指示がされると、記録がスタートする(ステップ1400)。次に、記録装置にセットされている記録媒体の走査方向のサイズ(横サイズ)を特定する(ステップ1401)。そして、記録媒体の横サイズに基づいて間引きマスクのセットを選択する(ステップ1402)。すなわち、本実施形態では、図8(a)と(b)に示すマスクのセットか、図8(c)と(d)に示すマスクのセットかを選択する。
【0067】
1回目の走査から2回目の走査までの時間の差がバンド間で短い幅の記録媒体では、図8(c)と(d)に示すマスクのセットが選択される。また、1回目の走査から2回目の走査までの時間の差がバンド間で長い幅の記録媒体では、図8(a)と(b)に示すマスクのセットが選択される。
【0068】
以上のように、記録媒体の横サイズによって、1回目の走査と2回目の走査の記録Duty比率を変更することで記録媒体の横サイズ毎に時間差ムラをさらに低減することができる。
【0069】
なお、本実施形態では選択するマスクは2組であったが、マスクパターンは3組以上であってもよい。また、マスクパターンのDutyは、記録媒体の横サイズの異なる記録媒体ごとに、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0070】
(第4の実施形態)
本発明は、記録される色順を全てのバンドで合わせて記録する記録方法であって、かかる記録方法により発生するバンド間の時間差ムラを低減するものである。本実施形態では、バンド毎の1回目の走査から2回目の走査までの時間の差が異なる画像幅である場合に、さらにマスクパターンセットの記録Dutyを変更するものである。
【0071】
本実施形態では、第2の実施形態で使用した図8(a)と(b)に示すマスクのセットと、図8(c)と(d)に示すマスクのセットを使用する。
【0072】
図13は、本実施形態のマスクを選択する手順を示すフローチャートである。ホストPCから記録動作開始の指示がされると、記録がスタートする(ステップ1500)。次に、第Nおよび第(N+1)バンドの画像幅サイズを判定する(ステップ1501)。画像幅サイズに基づいて、第Nおよび第(N+1)バンドに適用するマスクセットを選択(ステップ1502)。すなわち、本実施形態では、図8(a)と(b)に示すマスクのセットか、図8(c)と(d)に示すマスクのセットかを選択する。続いて、選択されたマスクを用いて第Nおよび第(N+1)バンドの記録を実施する(ステップS1503)。そして、記録が終了したかどうか判定し(ステップ1504)、記録が終了していれば、記録動作を完了する(ステップ1506)。記録が終了していなければ、次の走査のバンドの間引きマスクがセットされているかどうか判定する(ステップ1505)。間引きマスクがセットされていれば、記録動作を開始する(ステップ1503)。間引きマスクがセットされていなければ、画像幅サイズを判定し(ステップ1501)、以下同様の手順で記録を続ける。
【0073】
図14は、本実施形態の画像データの例を示す図である。1601、1602は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を示している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは、上方は24インチ幅の画素数であり、下方は8画素が12インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸が記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0074】
本実施形態でも、第2の実施形態で使用した図8(a)と(b)に示すマスクのセットと、図8(c)と(d)に示すマスクのセットを使用する。1回目の走査から2回目の走査までの時間が長くなる上部の16画素には、図8(a)と(b)に示すマスクのセットが割り当てられる。また、1回目の走査から2回目の走査までの時間が短くなる下部の16画素には、図8(c)と(d)に示すマスクのセットが割り当てられる。
【0075】
図15は、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す図である。黒マルは第一走査で記録されるドット、斜線模様のマルが第二走査で記録されるドット、格子模様のマルは第三走査で記録されるドット、ドット模様のマルは第四走査で記録されるドット、太線で囲まれたマルは第六走査で記録されるドットを示している。
【0076】
第1と第2のバンドは、1回目の走査のシアンとイエローのDutyはそれぞれ37.5%になっており、2回目の走査のシアンとイエローのDutyはそれぞれ12.5%である。一方、画像幅が小さく1回目の走査から2回目の走査までの時間が第1および第2より少ない第3および第4バンドは、シアンとイエローの1回目の走査のDutyと2回目の走査のDutyはともに25%と均等になっている。
【0077】
以上のように、画像幅が異なるものが1つの記録データの中に混在している場合、画像幅のサイズによって、1回目の走査と2回目の走査の記録Duty比率を変更することで画像幅のサイズ毎に時間差ムラをさらに低減することができる。
【0078】
なお、本実施形態では選択するマスクは2組であったが、マスクパターンは3組以上であってもよい。また、マスクパターンのDutyは、いくつかの画像幅の大きさごとに、図7(c)および(d)のような状態になるようなDutyであればよい。
【0079】
(第5の実施形態)
第1の実施形態では、1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なるバンド間の時間差ムラを抑制するために、1回目の走査の記録Dutyを2回目の走査の記録Dutyより高くするものであった。本実施形態ではさらに、1回目の走査から2回目の走査までの時間が長い場合、すなわち同じDutyで記録を行なうと図7(a)で説明したような現象が生じるような場合のみ1回目の走査と2回目の走査のDutyを変えるものである。したがって、本実施形態では、図8(a)と(b)のマスクセットと図8(b)と(c)のマスクセットを使用する。
【0080】
図16は、画像データの例を示す図である。1801、1802は、ノズルピッチ105と同じ間隔であり、一つの四角が一つの画素を表している。記録媒体搬送方向yに16画素、キャリッジ走査方向xは24インチ幅の画素数となっている。図の中の黒丸は記録データを示し、この画像をシアンとイエローで記録するものとする。
【0081】
図17は、本実施形態の記録動作を説明する説明図である。
【0082】
まず、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、上4ノズルは図8(c)の間引きマスクを用い、下4ノズルは図8(a)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(a)は、第一走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(a)において、黒マルは第一走査で記録されたドットを示している。
【0083】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって−方向に走査され、上4ノズルは図8(b)の間引きマスクを用い、下4ノズルは図8(d)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引したデータが記録される。図17(b)は、第三走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(b)において、斜線模様のマルは第三走査で記録されたドットを示している。
【0084】
次に、記録媒体を12ノズル分Yの+方向に搬送する。そして、記録ヘッドはX方向であって+方向に走査され、上4ノズルは図8(c)の間引きマスクを用い、下4ノズルは図8(a)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(c)は、第三走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(c)において、格子模様のマルは第三走査で記録されたドットを示している。
【0085】
次に、記録媒体を4ノズル分Yの−方向に搬送する。そして、記録ヘッドをX方向であって−方向に走査され、上4ノズルは図8(b)の間引きマスクを用いて、下4ノズルは図8(d)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(d)は、第四走査後終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(d)において、ドット模様のマルは第四走査で記録されたドットを示している。
【0086】
次に、本実施形態の記録データはY方向に16画素であるため、第五走査では記録媒体の搬送も記録を行なわない。すなわち、第四走査で記録を行なった記録媒体の上を、記録を行なわずに走査する。
【0087】
最後に、記録媒体を8ノズル分Yの−方向に搬送する。そして記録ヘッドはX方向の−方向走査され、図8(b)の間引きマスクを用いて図16に示す記録データを間引いたデータが記録される。図17(e)は、第六走査終了後の記録データと記録ヘッドの位置を示している。図17(e)において、太線で囲まれたマルは第六走査で記録されたドットを示している。
【0088】
図18は、記録終了後の画像の記録ドットと記録色順および記録Dutyを示す図である。各バンド間では、記録色順と記録Dutyは一致している。そして、1回目の走査から2回目の走査までの時間が短い第1バンドと第3バンドは1回目の走査と2回目の走査のDutyが同じである。一方、1回目の走査から2回目の走査までの時間が長い第2バンドと第4バンドは1回目の走査のDutyが2回目の走査のDutyよりも高くなっている。
【0089】
以上により、バンド毎に記録媒体に対するインクの浸透深さを制御することができ、バンドによって1回目の走査から2回目の走査までの時間が異なることによるバンドムラを抑制することができる。
【符号の説明】
【0090】
201、202、204、204 記録ヘッド
205、206,207、208 インクタンク
300 インクジェット記録装置
301 記録制御部
302 インターフェイス
303 ホストPC
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを前記複数のノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、前記往方向の走査と前記復方向の走査の間に前記ノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録装置であって、
前記往方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量と、前記復方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる搬送手段と、
前記所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成する生成手段と、
前記2回の走査で記録を完成するいずれの前記走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする記録制御手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記1回目の走査から2回目の走査までの時間が短いとき、前記1回目の走査の記録デューティと前記2回目の記録デューティは同じであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記1回目の記録デューティと前記2回目の記録デューティは、記録を行なう記録媒体ごとに異なることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記1回目の記録デューティと前記2回目の記録デューティは、記録を行なう記録媒体の走査方向の長さ毎に異なることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを前記複数のノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、前記往方向の走査と前記復方向の走査の間に前記ノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録方法であって、
前記往方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量と、前記復方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる搬送工程と、
前記所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成する生成工程と、
前記2回の走査で記録を完成するいずれの前記走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする記録制御工程と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項1】
それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを前記複数のノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、前記往方向の走査と前記復方向の走査の間に前記ノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録装置であって、
前記往方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量と、前記復方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる搬送手段と、
前記所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成する生成手段と、
前記2回の走査で記録を完成するいずれの前記走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする記録制御手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記1回目の走査から2回目の走査までの時間が短いとき、前記1回目の走査の記録デューティと前記2回目の記録デューティは同じであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記1回目の記録デューティと前記2回目の記録デューティは、記録を行なう記録媒体ごとに異なることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記1回目の記録デューティと前記2回目の記録デューティは、記録を行なう記録媒体の走査方向の長さ毎に異なることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
それぞれ異なる色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを前記複数のノズル列が配列された方向における、往方向の走査および復方向の走査を行なうとともに、前記往方向の走査と前記復方向の走査の間に前記ノズル列のノズルの配列方向に記録媒体の記録ヘッドに対する相対移動を行なうことによりノズル列の所定の長さに対応した幅の走査領域を2回の走査で記録を完成するインクジェット記録方法であって、
前記往方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量と、前記復方向の走査の後の前記記録媒体の相対移動量が異なるように記録媒体を移動させる搬送工程と、
前記所定の長さに対応した幅の走査領域の記録を完成する2回の走査のうち、1回目の走査の記録デューティは、2回目の走査の記録デューティより高くするよう記録データを生成する生成工程と、
前記2回の走査で記録を完成するいずれの前記走査領域でも、同じ方向で1回目の走査をする記録制御工程と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−236287(P2012−236287A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105242(P2011−105242)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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