インクジェット記録装置及びその制御方法
【課題】ノズル開口の近傍に照射された活性光でノズル開口近傍における光硬化性インクの硬化を防止し、安定な記録性能を確保いること。
【解決手段】UVランプ16から放射される遠紫外光により硬化するKCMYの各光硬化性インクをインク滴として記録媒体11に向けて吐出す複数のノズルを有する各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に遠紫外光を減衰させる酸素ガスを供給する。
【解決手段】UVランプ16から放射される遠紫外光により硬化するKCMYの各光硬化性インクをインク滴として記録媒体11に向けて吐出す複数のノズルを有する各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に遠紫外光を減衰させる酸素ガスを供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録ヘッドのノズルから吐出し、このインク滴を記録媒体に着弾させて記録を行うインクジェット記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡便かつ安価に画像を形成する画像印刷方法として、インクジェットプリンタを用いた画像印刷方法が数多く採用されている。このインクジェットプリンタは、例えば紙、樹脂フィルムなどの記録媒体の幅方向に各記録ヘッドを配列し、これら記録ヘッドの下方に搬送されている記録媒体に対して各記録ヘッドからインク滴を吐出すことにより記録媒体に画像を印刷する。なお、記録ヘッドは、例えばピエゾ素子又はヒータの動作によってインク滴を吐出す。
【0003】
インクジェットプリンタに用いられるインクには、例えば紫外線(UV)又は電子線といった光(活性光)の照射により硬化する光硬化性インクがある。この光硬化性インクは、例えば顔料と、高分子化合物の前駆体となるモノマー或いはオリゴマーと、光エネルギーよりラジカル(活性種)を発生して当該ラジカルによってモノマー或いはオリゴマーの架橋反応或いは重合反応を進行させる光重合開始剤等とを含んで組成される。しかるに、この光硬化性インクは、活性光の照射による架橋反応或いは重合反応によって硬化する。
【0004】
このような光硬化性インクを用いて印刷するプリンタは、リルベント系インクで印刷するプリンタに比べて比較的低臭気であり、インク吸収性の無い記録媒体への記録ができる点で近年注目されている。
【0005】
光硬化性インクは、ある一定量以上の紫外線又は電子線等の活性光が照射されると、当該光硬化性インク中の光開始剤が紫外線又は電子線を吸収して反応活性種であるラジカルや酸を生じ、反応性オリゴマー・モノマーの重合反応を起こし瞬時に硬化塗膜を形成するという特徴がある。
【0006】
ラジカル重合系の光硬化性インクを用いた場合、印字中に空中の酸素により硬化阻害が生じるという問題がある。この対策として例えば特許文献1には、記録媒体上における光硬化性インクのインク滴が着弾し、かつ照射手段によって活性光が照射される箇所に、光硬化性インクに対して不活性な窒素ガスを供給することによって、インク滴が着弾した後のインク滴の広がりを抑え、光硬化性インクを用いて高精細な画像を形成することが開示されている。
【0007】
この特許文献1で用いる光硬化性インクは、硬化剤を含有しているため、ノズル開口及びその近傍に紫外線が直接又は記録媒体からの反射等により間接に照射されると、ノズル開口及びその近傍の光硬化性インクが硬化し、ノズル開口に回復不可能な目詰まりを生じるという問題がある。
【0008】
このような問題に対処する技術として例えば特許文献2がある。すなわち、図12に示すようにノズルプレート1は、遮光性を有し、かつノズル開口2の近傍にインク撥水性の共析メッキ層3を有する。ノズルプレート1のインク吐出側の面1aからノズル開口2のストレート部2a及びテーパ部2bに及ぶ領域には、ふつ素系高分子の共析メッキ層3が形成されている。この共析メッキ層3は、ノズルプレート1の本体を構成する金属の表面にニッケルやニッケルーコバルト合金、ニッケルーリン合金、ニッケルーホウ酸合金の下地を形成した後、ふつ素系樹脂、例えばポリテロラフルオロエチレン、ポリバーフルロアルコキシブタジエン、ポリフルオロビニデリン、ポリフルオロビニル、ポリジパーフルオロアルキルフマレートを単独又は混合した電解液に浸漬して電界を印加し、所定時間の経過後引き上げ、例えば350℃程度の温度で加熱することにより形成されている。
【0009】
印刷が終了すると、ノズル開口2の近傍に位置する光硬化性インクのメニスカスMは、ノズル開口2に形成された共析メッキ層3の撥水性により図13に示したように圧力発生室4の奥側に後退し、又紫外光がノズルプレート1に遮断されるからノズル開口2の近傍の光硬化性インク4及び圧力発生室4内の光硬化性インクKが受ける紫外光量は極めて少なくなる。これにより、光硬化性インクKは、紫外線の照射による硬化を生じることがなく、目詰まりに至るまでの時間が大幅に延長される。
【特許文献1】特開2003−285423号公報
【特許文献2】特開平11−10874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2は、ノズル開口2の近傍すなわちインク吐出側の面1aからノズル開口2のストレート部2a及びテーパ部2bに及ぶ領域にインク撥水性を有するふつ素系高分子の共析メッキ層3を形成したノズルプレート1を用いるために、記録ヘッドの製造工程が複雑になる。
【0011】
さらに、印字時、メニスカスMは、ノズル開口2におけるインク吐出側の面1a近傍まで上がってくる。このため、メニスカスMに紫外光が容易に照射され、かつ記録媒体等からの反射光でノズル開口2の近傍の光硬化性インクKが硬化し、安定な印字ができない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出するノズルを有する記録ヘッドと、記録媒体に着弾したインク滴に光を照射する光照射部と、光を減衰させる気体を記録ヘッドの周囲に供給する気体供給部とを具備したインクジェット記録装置である。
【0013】
本発明は、記録ヘッドのノズルから光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出し、記録媒体に着弾したインク滴に対して光を照射して硬化させて記録媒体への記録動作を行うインクジェット記録装置の制御方法において、記録ヘッドの周囲に光を減衰させる気体を供給するインクジェット記録装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ノズル開口の近傍に照射された活性光でノズル開口近傍における光硬化性インクの硬化を防止し、安定な記録性能を確保できるインクジェット記録装置及びその制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1はインクジェット記録装置の構成図である。搬送機構10は、例えば紙葉、フィルム等の記録媒体11を供給側Aから排出側Bに向う矢印T方向に一定の搬送速度で搬送する。この搬送機構10は、例えば無端のベルト12と、このベルト12を駆動するための各ローラ10a、10b、10cとを有する。これらローラ10a、10b、10cのうち例えばローラ10aが駆動モータ14に連結されている。
【0017】
インクジェット方式の各記録ヘッド15k、15c、15m、15yが搬送機構10の上方に配設されている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、それぞれブラック(K)用、シアン(C)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用であり、記録媒体11の搬送方向(矢印T方向)に所定間隔毎に配設されている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、図2に示すようにそれぞれ複数のノズル16が一定間隔で一方向に設けられている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yの個々は、それぞれ複数のノズル16を搬送方向(矢印T方向)に対して垂直方向になるように配設されている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、それぞれ各ノズル16からブラック(K)の光硬化性インク、シアン(C)の光硬化性インク、マゼンタ(M)の光硬化性インク、イエロー(Y)の光硬化性インクを例えばピエゾ素子又はヒータの動作によって各ノズル16からインク滴として吐出する。
【0018】
これらブラック(K)の光硬化性インク、シアン(C)の光硬化性インク、マゼンタ(M)の光硬化性インク及びイエロー(Y)の光硬化性インクは、活性光として例えば遠紫外光の照射を受けることによって硬化する紫外線硬化性インクである。これら紫外線硬化性インクは、例えばカチオン重合形であって、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色料及び助剤を有している。このカチオン重合形の紫外線硬化性インクは、酸素による硬化阻害を有しない。従って、これらブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各紫外線硬化性インクは、印字中に各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲の酸素濃度を上げても、硬化が阻害されることはない。
【0019】
遠紫外光を放射する光源として例えばUVランプ16が設けられている。このUVランプ16は、記録ヘッド15yと排出側Bとの間で、かつ記録ヘッド15yに対して並設されている。このUVランプ16は、例えば搬送方向(矢印T方向)に対して垂直方向のライン状の遠紫外光を放射する。このUVランプ16は、例えば図3に示すようにピーク波長172nmを有する波長特性の遠紫外光を放射するエキシマランプである。
【0020】
各記録ヘッド15k、15c、15m、15yにおける記録媒体11を搬送する各下流側には、それぞれ各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yが並設されている。これらメンテナンスステーション17k、17c、17m、17yは、図4に示すように図示しないメンテナンス駆動機構により各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各間に下降し、次に横ずれして各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各下部に接触して配置し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに対して摺動することによりクリーニングを行い、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yのメンテナンスを行う。
【0021】
各記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、覆い体18により覆われている。この覆い体18の上部には、酸素供給口19が設けられている。この覆い体18は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給する気体、例えば酸素濃度を所定濃度、例えば30%に確保するために設けられる。この覆い体18は、上面18aと、この上面18aの各辺に設けられた各側面18b〜18eとからなり、下部に開口部18fが形成されている。
【0022】
この覆い体18の酸素供給口19には、酸素供給チューブ20を介して酸素供給部としての酸素発生器又は酸素ボンベ(以下、酸素発生器として説明する)21が接続されている。この酸素発生器21は、覆い体18内に供給する酸素を含むガス(以下、酸素ガスと称する)の流量を制御可能である。酸素ガスは、紫外光の吸収率が空気による紫外光の吸収率よりも大きい。
【0023】
ここで、覆い体18内における各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲の酸素濃度を例えば25%に確保する方法について説明する。
【0024】
図5は遠紫外領域での酸素の吸収特性を示し、図6は波長172nmの大気中における減衰特性を示す。図5から分るように波長200nm以下の紫外光は酸素により吸収され、その照射照度は低下する。
【0025】
通常の空気の酸素濃度は約21%であり、図6から分るように波長172nmの紫外光は8mm離れたところで10%まで減衰する。
【0026】
一方、重合による各紫外線硬化性インクの硬化は、UVランプ16から放射される遠紫外光の照度に影響される。各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の開口近傍における各紫外線硬化性インクの硬化度は、UVランプ16と各記録ヘッド15k、15c、15m、15yとの位置関係、さらに記録媒体11の反射率、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yと記録媒体11との距離によっても影響される。つまり、例えばUVランプ16と各記録ヘッド15k、15c、15m、15yとの位置関係によっては、遠紫外光は十分に減衰されず、重合反応が促進され、各紫外線硬化性インクの硬化が進行する場合がある。しかるに、各ノズル16の近傍に届く遠紫外光の照度を低下させるには、遠紫外光をより多くの酸素中に通過させる必要がある。そのためには、通常の空気中の酸素濃度21%だけでは不十分であり、それ以上の酸素濃度が必要となる。
【0027】
一方、あまり酸素濃度を高くすると、紫外光によって発生するオゾン濃度が高くなる。又、安全性を考量して覆い体18内に供給する酸素濃度は、通常の空気の1.1〜1.7倍である約23〜35%がよく、本実施の形態では、例えば酸素濃度30%とする。なお、酸素濃度は、UVランプ16の照度、酸素発生器21の性能等により適宜設定すればよい。
【0028】
酸素ガスの流量は、覆い体18の容量、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yと覆い体18との各隙間から漏れ出る酸素ガスの流量等より各ノズル16の周辺の酸素濃度が所望の時間で所望の濃度になるように適宜設定すればよいが、本実施の形態では流量2L/min程度に設定している。
【0029】
このような条件下において、覆い体18内における各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲の酸素濃度を例えば30%に確保する手段として酸素濃度計22及び制御部23が設けられている。覆い体18内に供給された酸素ガスは、空気よりも重いので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの上部から下方に向って拡散移動する。しかるに、酸素濃度計22は、拡散移動する酸素ガスの濃度を上記30%に制御するために、搬送方向(矢印T方向)に配設された各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの中心位置となる記録ヘッド15cと記録ヘッド15mとの間で、かつメンテナンスステーション17cの上方に設けられている。
【0030】
制御部23は、CPU、データメモリ、プログラムメモリ及び入出力ポートなどを有し、プログラムメモリに記憶されている記録動作プログラムを実行することにより、電源投入を受けて酸素発生器21から酸素ガスを各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給し、酸素濃度計22により検出される各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が所定濃度30%に達すると、UVランプ16から遠紫外光の放射を開始させて搬送機構10及び各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各動作による記録媒体11への記録動作可能な待機状態とし、当該記録動作を終了する場合には、UVランプ16を消灯させると共に、酸素発生器21による酸素ガスの供給を停止し、電源を遮断する。
【0031】
次に、上記の如く構成された装置の記録動作について図7に示す記録動作フローチャートに従って説明する。
【0032】
インクジェット記録装置本体の電源が投入されると、制御部23は、ステップ#1において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発する。この酸素発生器21は、酸素供給開始の指令を受けて、酸素ガスを酸素供給チューブ20を通して酸素供給口19から覆い体18内に供給する。このときの酸素ガスは、例えば流量2L/min程度に設定される。これにより、覆い体18の上部から当該覆い体18内に供給された酸素ガスは、空気よりも重いので、覆い体18内の上部から下方に向って拡散移動し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給される。
【0033】
次に、酸素濃度計22は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度を検出し、その検出信号を出力する。制御部23は、ステップ#2において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば30%以上に達したか否かを判断する。制御部23は、酸素濃度が例えば30%以上に達するまで待機状態になる。
【0034】
酸素濃度が例えば30%以上に達すると、制御部23は、ステップ#3において、UVランプ16に対して遠紫外光の照射開始指令を発する。これにより、UVランプ16は、遠紫外光を放射する。このUVランプ16は、放射される光量が安定するまで約10分ほどかかる。このUVランプ16が安定するまでの間に各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yに対するメンテナンスが行われる。
【0035】
制御部23は、ステップ#4において、図示しないメンテナンス駆動機構に対してメンテナンス開始指令を発する。このメンテナンス駆動機構は、各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yを図4に示すように各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各間に下降し、次に横ずらしして各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの下部に接触させて配置し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに対して摺動することにより各ノズル16の周辺に対するクリーニングを行う。なお、メンテナンスの間、搬送機構10は記録媒体11の搬送を停止し、かつ酸素発生器21は、覆い体18内に対する酸素ガスの供給を続けている。
【0036】
この待機状態において、UVランプ16から放射された遠紫外光は、記録媒体11の面上で反射し、この反射光が各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達しようとする。ところが、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺には、酸素ガスが供給されているので、遠紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰する。これによって各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0037】
メンテナンスが終了し、UVランプ16から放射される光量が安定すると、制御部23は、ステップ#5において、記録動作の待機状態に入る。なお、制御部23は、UVランプ16が安定するまで期間を例えば予め設定された期間をカウントアツプすることにより判断したり、又はUVランプ16から放射される遠紫外光の光量を検出し、この検出光量が一定光量になったことを判定することにより判断するようにしてもよい。
【0038】
この記録動作の待機状態に記録動作の指示が制御部23に入力されると、この制御部23は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに記録指令を発すると共に、搬送機構10に搬送指令を発する。これにより、搬送機構10は、記録媒体11を供給側Aから排出側Bに向う矢印T方向に一定の搬送速度で搬送する。これと共に各記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、それぞれ記録指示に応じてKCMYの各紫外線硬化性インクをインク滴として各ノズル16から吐出す。これらノズル16から吐出された各紫外線硬化性インクをインク滴は、搬送されている記録媒体11の面上に着弾される。
【0039】
記録媒体11の面上に着弾されたKCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴がUVランプ16の下方を通過するとき、これらKCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴は、UVランプ16から放射された遠紫外光の照射を受ける。ここで、KCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴が受光する紫外光は、光重合開始の反応を起こす照度を有するので、KCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴は、光重合開始の反応を起こして硬化し、記録媒体11の面上にで固定される。
【0040】
このような記録動作中、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺には、酸素ガスが供給されているので、上記同様に、遠紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰し、これによって各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0041】
一方、覆い体18の外部に設けられたいるUVランプ16と記録媒体11との間の空間における酸素濃度は、通常の空気の酸素濃度である約21%である。この空間においても遠紫外光は、酸素ガスにより減衰されるが、UVランプ16と記録媒体11との距離が近く、かつ酸素濃度が低いことから、KCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らない。
【0042】
記録媒体11上への記録を連続して行う場合、制御部23は、ステップ#6とステップ#7とを繰り替えし、記録動作を継続する。一旦、記録動作を中止してから再度記録動作を行う場合、制御部23は、ステップ#8から#5に戻り、記録動作の待機状態とする。
【0043】
記録動作する予定が全くない場合、制御部23は、ステップ#9に移り、UVランプ16に対して遠紫外光の照射の停止指令を発すると共に、酸素発生器21に対して酸素供給停止の指令を発する。これにより、UVランプ16は消灯し、酸素発生器21は覆い体18内への酸素ガスの供給を停止する。
【0044】
この後、制御部23は、インクジェット記録装置本体の電源を切って終了する。
【0045】
このように上記第1の実施の形態によれば、遠紫外光の照射により硬化するKCMYの各光硬化性インクをインク滴として記録媒体11に向けて吐出する複数のノズルを有する各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に遠紫外光を減衰させる酸素ガスを供給するので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の開口の近傍に照射された遠紫外光で当該ノズル16の開口近傍における光硬化性インクの硬化を防止でき、安定な記録性能を確保できる。すなわち、記録動作の待機状態において、UVランプ16から放射された遠紫外光は、直接又は記録媒体11の面上で反射し、この反射光が各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達しようとするが、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺に酸素ガスが供給されるので、紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰する。この結果、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。又、記録動作中においても各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺に酸素ガスが供給されているので、遠紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0046】
一方、UVランプ16と記録媒体11との間の空間でも遠紫外光は、酸素ガスにより減衰されるが、UVランプ16と記録媒体11との距離が近く、かつ酸素ガスの濃度が低いことから、KCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らず、各紫外線硬化性インクは硬化して記録媒体11上に記録される。
【0047】
従って、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0048】
なお、上記第1の実施の形態では、波長172nmの遠紫外光を放射するUVランプ16を用いているが、これに限らず、基本的に波長200nm以下の発光波長を持つランプであれば用いることができる。
【0049】
又、UVランプ16からミラー、光ファイバー等を用いて記録媒体11まで光を導いてもよい。
【0050】
又、UVランプ16を各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの直後に合計4つ配置してもよい。この場合、UVランプ16と記録媒体11との距離を例えば1mmと近く設定し、UVランプ16と各記録ヘッド15k、15c、15m、15yのノズルとの距離を例えば10mmと離すことにより同様の効果を得ることができる。
【0051】
遠紫外光を減衰させる気体として酸素ガスを用いているが、二酸化炭素を含むガス(以下、二酸化炭素ガスと称する)であっても上記同様の効果を奏することができる。但し、二酸化炭素ガスを用いる場合には、上記酸素濃度計22を二酸化炭素濃度計に代える。上記図5に示すように二酸化炭素は、遠紫外光の吸収特性が酸素の紫外光の吸収特性よりも低い特性を有する。従って、遠紫外光を減衰させるには、二酸化炭素濃度の濃度を酸素ガスの濃度よりも高くする必要がある。又、二酸化炭素ガスは、濃度100%にして制御することは難しいものの濃度90%以上に制御することは可能であり、従って、例えば二酸化炭素濃度を90%以上として制御する。
【0052】
又、記録媒体は、例えばフィルムを用いたが、どのような記録媒体であっても上記同様の効果が得られる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0054】
図8はインクジェット記録装置の構成図である。移動駆動部30は、覆い体18を各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆う第1の位置P1と、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの覆いを解除する第2の位置P2との間に移動させる。第1の位置P1は、例えば記録媒体11と接触するかしないかの近接位置である。第2の位置P2は、例えば記録媒体11の搬送の邪魔にならない高さ位置である。この第2の位置P2は、例えば第1の位置P1の真上に設けたり、又は斜め上方に設けてもよい。なお、第2の位置P2は、インクジェット記録装置本体を設置する周囲環境に応じて設定することが可能である。
【0055】
従って、第2の位置P2を例えば第1の位置P1の真上に設けた場合、移動駆動部30は、覆い体18を矢印A方向に上下移動する。第2の位置P2を第1の位置P1の斜め上方に設けた場合、移動駆動部30は、一旦、覆い体18を真上に移動し、この後に横方向に移動して各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの覆いを解除する。各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆うとき移動駆動部30は、覆い体18を横方向に移動し、この後に真下に移動する。
【0056】
制御部31は、CPU、データメモリ、プログラムメモリ及び入出力ポートなどを有し、プログラムメモリに記憶されている記録動作プログラムを実行することにより、電源の投入を受けて移動駆動部30を駆動制御して覆い体18を第2の位置P2に移動させ、記録動作を終了する際、UVランプ16の消灯及び酸素発生器21からの酸素ガスの供給の停止の後に、移動駆動部30を駆動制御して覆い体18を第1の位置P1に移動させてから電源を遮断する。
【0057】
次に、上記の如く構成された装置の記録動作について図9に示す記録動作フローチャートに従って説明する。
【0058】
インクジェット記録装置本体の電源が切られている状態では、覆い体18は第1の位置P1に設けられ、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆っている。
【0059】
インクジェット記録装置本体の電源が投入されると、制御部31は、ステップ#10において、移動駆動部30に対して上昇指令を発する。この上昇指令を受けた移動駆動部30は、覆い体18を真上で記録媒体11の搬送の邪魔にならない高さ位置である第2の位置P2まで上昇させる。
【0060】
次に、制御部31は、上記第1の実施の形態と同様に、ステップ#1において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発し、酸素発生器21から酸素ガスを覆い体18内に供給する。覆い体18内に供給された酸素ガスは、当該覆い体18内の上部から下方に向って拡散移動し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給される。
【0061】
次に、制御部31は、ステップ#2において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば25%以上に達するまで待機状態になる。
【0062】
酸素濃度が例えば30%以上に達すると、制御部31は、ステップ#3において、UVランプ16から紫外光を放射させ、かつこのUVランプ16から放射される遠紫外光の光量が安定するまでの間に、ステップ#4において、各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yをメンテナンスする。
【0063】
メンテナンスが終了し、UVランプ16から放射される遠紫外光の光量が安定すると、制御部31は、ステップ#5において、記録動作の待機状態に入る。
【0064】
この記録動作の待機状態に記録動作の指示が制御部31に入力されると、制御部31は、ステップ#6において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに記録指令を発すると共に、搬送機構10に搬送指令を発して記録媒体11の面上への記録動作を行う。
【0065】
記録媒体11上への記録を連続して行う場合、制御部31は、ステップ#6とステップ#7とを繰り替えし、記録動作を継続する。一旦、記録動作を中止してから再度記録動作を行う場合、制御部31は、ステップ#8から#5に戻り、記録動作の待機状態とする。
【0066】
記録動作する予定が全くない場合、制御部31は、ステップ#11に移り、UVランプ16に対して紫外光の照射の停止指令を発する。これにより、UVランプ16は消灯する。
【0067】
次に、制御部31は、ステップ#12において、覆い体18内を酸素ガスで満たすために一定時間の経過を待つ。すなわち、覆い体18内には、UVランプ16を消灯した状態で、酸素発生器21から酸素ガスの供給が続けられる。そして、一定時間経過すると、制御部31は、酸素発生器21に対して酸素ガスの供給の停止指令を発する。これにより、覆い体18内への酸素ガスの供給が停止される。
【0068】
次に、制御部31は、ステップ#13において、移動駆動部30に対して下降指令を発する。この下降指令を受けた移動駆動部30は、覆い体18を第2の位置P2から例えば記録媒体11と接触するかしないかの近接位置である第1の位置P1に移動させる。
【0069】
この後、制御部31は、インクジェット記録装置本体の電源を切って終了する。
【0070】
このように上記第2の実施の形態によれば、電源の投入により覆い体18を例えば記録媒体11の搬送の邪魔にならない第2の位置P2に移動させ、記録動作を終了する際、UVランプ16の消灯及び酸素発生器21からの酸素ガスの供給の停止の後に、覆い体18を例えば記録媒体11と接触するかしないかの近接位置である第1の位置P1に移動させから電源を遮断するので、記録動作を行わないときには各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆い体18で覆うことにより、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yへの自然光の入射を遮光できる。
【0071】
これにより、自然光の入射による各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺におけるKCMYの各紫外線硬化性インクの光重合開始の反応が起こらず、これら紫外線硬化性インクが硬化することはない。又、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆い体18で覆うことにより、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺における酸素濃度を高くできる。この結果、記録動作を行わないときに、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0072】
又、上記第1の実施の形態と同様に、記録動作中においても各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺に酸素ガスが供給されているので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。UVランプ16と記録媒体11との間の空間では、遠紫外光がKCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らず、各紫外線硬化性インクは硬化して記録媒体11上に記録される。
【0073】
従って、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0074】
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0075】
図10はインクジェット記録装置の構成図である。覆い体18は、搬送方向Tに対して垂直方向の長さを記録媒体11の幅方向の長さよりも長さSだけ長く形成されている。この長さSは、後述するファン筐体42の寸法よりも長く形成されている。この覆い体18の上面18aには、酸素ガス供給口40が設けられている。この酸素ガス供給口40には、酸素供給チューブ20を介して酸素発生器21が接続されている。又、覆い体18の上面18aには、酸素ガス再供給口41が設けられている。
【0076】
酸素ガスの流量は、覆い体18の容量、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yと覆い体18との隙間から漏れ出る酸素ガスの流量等よりノズル16の周辺の酸素濃度が所望の時間で所望の濃度になるように設定される。本実施の形態では、酸素ガスの流量2L/min程度としている。又、覆い体18内の各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺の酸素濃度は、覆い体18内に積極的にオゾンを発生させるために、例えば90%以上に制御される。酸素発生器21は、例えば酸素濃度100%の酸素ガスを流量2L/min程度で覆い体18に供給する。
【0077】
ファン筐体42の側面には、第1の開口部43が設けられている。なお、この第1の開口部43は、ファン筐体42の側面に限らず、他の側面又は下面に設けてもよい。この第1の開口部43に対峙するファン筐体42の内部には、第1の吸引ファン44が設けられている。又、第1の開口部43には、第1の配管系としての循環系チューブ45の一端口が取り付けられている。この循環系チューブ45の他端口は、覆い体18の酸素ガス再供給口41に取り付けられている。なお、第1の開口部43、第1の吸引ファン44及び循環系チューブ45により循環系が構成される。
【0078】
ファン筐体42の下面には、第2の開口部46が設けられている。この第2の開口部46に対峙するファン筐体42の内部には、第2の吸引ファン47が設けられている。又、ファン筐体42の外側の第2の開口部46には、オゾンフィルタ48が取り付けられている。なお、第2の開口部46、第2の吸引ファン47及びオゾンフィルタ48により排出系が構成されている。
【0079】
なお、第1の開口部43と第2の開口部46とには、それぞれこれら第1の開口部43と第2の開口部46とを開閉する各開閉機構を設けてもよい。第1の開口部43に設けられる開閉機構は、第1のファン44の駆動時に開放し、第1のファン44の停止時に閉じる。第2の開口部46に設けられる開閉機構も第2のファン47の駆動時に開放し、第2のファン47の停止時に閉じる。
【0080】
制御部49は、CPU、データメモリ、プログラムメモリ及び入出力ポートなどを有し、プログラムメモリに記憶されている記録動作プログラムを実行することにより、電源投入を受けて第1の吸引ファン44を駆動開始し、覆い体18内の酸素ガスの濃度を所定濃度になるように酸素ガスを循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給して酸素ガスの濃度が所定濃度、例えば90%に制御し、かつ記録動作を終了する際、UVランプ16の消灯及び酸素ガスの供給の停止の後に、第1の吸引ファン44の駆動を停止すると共に第2の吸引ファン47を駆動開始し、酸素濃度計22により検出される各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素ガスの濃度が所定濃度、例えば21%以下に低下したときに第2の吸引ファン47の駆動を停止する。
【0081】
次に、上記の如く構成された装置の記録動作について図11に示す記録動作フローチャートに従って説明する。
【0082】
インクジェット記録装置本体の電源が投入されると、制御部49は、ステップ#20において、第1の吸引ファン44に駆動指令を発する。第1の吸引ファン44は、駆動することによりファン筐体42内の酸素を含むガスを吸引し、循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給する。
【0083】
次に、制御部49は、上記第1の実施の形態と同様に、ステップ#1において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発し、酸素発生器21から酸素濃度100%の酸素ガスを流量2L/min程度で覆い体18に供給する。覆い体18内に供給された酸素ガスは、当該覆い体18内の上部から下方に向って拡散移動し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給される。
【0084】
次に、制御部49は、ステップ#21において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば90%以上に達するまで待機状態になる。
【0085】
酸素濃度が例えば90%以上に達すると、制御部49は、ステップ#3において、UVランプ16から紫外光を放射させ、かつこのUVランプ16から放射される光量が安定するまでの間に、ステップ#4において、各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yをメンテナンスする。
【0086】
メンテナンスが終了し、UVランプ16から放射される光量が安定すると、制御部49は、ステップ#5に移り、記録動作の待機状態に入る。
【0087】
この記録動作の待機状態に記録動作の指示が制御部49に入力されると、この制御部49は、ステップ#6において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに記録指令を発すると共に、搬送機構10に搬送指令を発して記録媒体11の面上への記録動作を行う。
【0088】
記録媒体11上への記録を連続して行う場合、制御部49は、ステップ#6とステップ#7とを繰り替えし、記録動作を継続する。一旦、記録動作を中止してから再度記録動作を行う場合、制御部49は、ステップ#8から#5に戻り、記録動作の待機状態とする。
【0089】
一方、制御部49は、上記ステップ#5〜#8の処理と並行して各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺の酸素濃度を所定濃度、例えば90%以上に制御する。すなわち、制御部49は、ステップ#22において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば90%以上に達したか否かを判断する。この判断の結果、酸素濃度が例えば90%以上に達していると、制御部49は、ステップ#23において、酸素発生器21に対して酸素供給の停止の指令を発する。これにより、酸素発生器21は、酸素濃度100%の酸素ガスの供給を停止する。
【0090】
この後、制御部49は、ステップ#24において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば90%以上であるか否かを判断する。この判断の結果、酸素濃度が例えば90%以下に低下していれば、制御部49は、ステップ#26において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発する。これにより、酸素発生器21は、再び酸素濃度100%の酸素ガスを流量2L/min程度で覆い体18に供給する。
【0091】
この状態で、制御部49は、上記の如く第1の吸引ファン44を駆動し、ファン筐体42内の酸素を含むガスを吸引し、循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給している。
【0092】
従って、制御部49は、記録動作する予定が全くなくなるまのでの間、上記ステップ#22〜#26を繰り返すことで、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度を90%以上に維持する。
【0093】
ところで、酸素は、波長172nmの光で分解して各酸素分子になり、これら酸素分子が結合してオゾンになりやすい。一方、オゾンは、図5に示すように波長240nm以下の紫外線を吸収する。
【0094】
従って、覆い体18内に生じたオゾンは、第1の吸引ファン44により吸引され、循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給される。これにより、覆い体18内には、高濃度のオゾンが存在する。
【0095】
従って、記録動作を行わないとき及び記録動作中、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲は、高濃度のオゾン雰囲気に維持される。この結果、記録動作を行わないとき、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応が起こらず、各紫外線硬化性インクは硬化しない。
【0096】
記録動作中、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺が高濃度のオゾン雰囲気に維持されるので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。UVランプ16と記録媒体11との間の空間では、遠紫外光がKCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らず、各紫外線硬化性インクは硬化して記録媒体11上に記録される。
【0097】
従って、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0098】
記録動作する予定が全くない場合、制御部49は、ステップ#27に移り、UVランプ16に対して遠紫外光の照射の停止指令を発する。これにより、UVランプ16は消灯する。
【0099】
次に、制御部49は、ステップ#28において、第1の吸引ファン44に対して停止指令を発すると共に、第2の吸引ファン47に対して駆動指令を発する。これにより、第1の吸引ファン44は停止すると共に、第2の吸引ファン47が駆動を開始する。この第2の吸引ファン47が駆動すると、ファン筐体42内のオゾンが吸引され、オゾンフィルター48を通して、インクジェット記録装置本体の外部に排出される。
【0100】
次に、制御部49は、ステップ#29において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば21%以下に低下したか否かを判断する。この判断の結果、酸素濃度が例えば21%以下に低下していれば、制御部49は、ステップ#30において、第2の吸引ファン47に停止指令を発し、第2の吸引ファン47の駆動を停止する。
【0101】
この後、制御部49は、インクジェット記録装置本体の電源を切って終了する。
【0102】
このように上記第3の実施の形態によれば、電源投入を受けて第1の吸引ファン44を駆動開始し、覆い体18内の酸素濃度を所定濃度90%以上になるように酸素ガスを循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給するので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲を高濃度のオゾン雰囲気にすることができる。オゾンは、波長240nm以下の遠紫外線を吸収するので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16に入射しようとする遠紫外光を吸収する。これによって記録動作を行わないとき及び記録動作中において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応が起こらず、各紫外線硬化性インクは硬化しない。この結果、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0103】
記録動作を終了する際は、UVランプ16の消灯及び酸素ガスの供給の停止の後に、第1の吸引ファン44の駆動を停止すると共に第2の吸引ファン47を駆動開始し、酸素濃度計22により検出される各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素ガスの濃度が所定濃度、例えば21%以下に低下したときに第2の吸引ファン47の駆動を停止するので、安全性も高い。
【0104】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、次のように変形してもよい。例えば、酸素濃度計22は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの搬送方向Tの中心位置に設けているが、例えば各記録ヘッド15k、15c、15m、15y毎に4個設け、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各位置で各酸素濃度を検出し、これら酸素濃度の平均値を求めるようにしてもよい。
【0105】
第1及び第2の吸引ファン44、47を収納するファン筐体42は、搬送機構10の一側面に1つ設けているが、搬送機構10の両側に2つ設けてもよい。これにより、酸素ガスの循環効率を向上でき、オゾンの発生を促進し、より確実に、記録動作を行わないとき及び記録動作中において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応を起こさずに、各紫外線硬化性インクを硬化させない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置における記録ヘッドに設けられた複数のノズルを示す図。
【図3】同装置におけるUVランプの波長特性を示す図。
【図4】同装置におけるメンテナンスステーションの配置を示す図。
【図5】遠紫外領域における酸素、オゾン及び二酸化酸素の吸収特性を示す図。
【図6】波長172nmの大気中における紫外光の減衰特性を示す図。
【図7】同装置における記録動作フローチャート。
【図8】本発明に係るインクジェット記録装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図9】同装置における記録動作フローチャート。
【図10】本発明に係るインクジェット記録装置の第3の実施の形態を示す構成図。
【図11】同装置における記録動作フローチャート。
【図12】従来のインクジェットプリンタのノズルプレートを示す構成図。
【図13】同ノズルプレートに生じるメニスカスを示す図。
【符号の説明】
【0107】
10:搬送機構、11:記録媒体、12:ベルト、13a,13b,13c:ローラ、14:駆動モータ、15k,15c,15m,15y:記録ヘッド、16:ノズル、17k,17c,17m,17y:メンテナンスステーション、18:覆い体、18a:上面、18b〜18e:側面、18f:開口部、19:酸素供給口、20:酸素供給チューブ、21:酸素発生器又は酸素ボンベ、22:酸素濃度計、23,31:制御部、30:移動駆動部、40:酸素ガス供給口、41:酸素ガス再供給口、42:ファン筐体、43:第1の開口部、44:第1の吸引ファン、45:循環系チューブ、46:第2の開口部、47:第2の吸引ファン、48:オゾンフィルタ、49:制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録ヘッドのノズルから吐出し、このインク滴を記録媒体に着弾させて記録を行うインクジェット記録装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、簡便かつ安価に画像を形成する画像印刷方法として、インクジェットプリンタを用いた画像印刷方法が数多く採用されている。このインクジェットプリンタは、例えば紙、樹脂フィルムなどの記録媒体の幅方向に各記録ヘッドを配列し、これら記録ヘッドの下方に搬送されている記録媒体に対して各記録ヘッドからインク滴を吐出すことにより記録媒体に画像を印刷する。なお、記録ヘッドは、例えばピエゾ素子又はヒータの動作によってインク滴を吐出す。
【0003】
インクジェットプリンタに用いられるインクには、例えば紫外線(UV)又は電子線といった光(活性光)の照射により硬化する光硬化性インクがある。この光硬化性インクは、例えば顔料と、高分子化合物の前駆体となるモノマー或いはオリゴマーと、光エネルギーよりラジカル(活性種)を発生して当該ラジカルによってモノマー或いはオリゴマーの架橋反応或いは重合反応を進行させる光重合開始剤等とを含んで組成される。しかるに、この光硬化性インクは、活性光の照射による架橋反応或いは重合反応によって硬化する。
【0004】
このような光硬化性インクを用いて印刷するプリンタは、リルベント系インクで印刷するプリンタに比べて比較的低臭気であり、インク吸収性の無い記録媒体への記録ができる点で近年注目されている。
【0005】
光硬化性インクは、ある一定量以上の紫外線又は電子線等の活性光が照射されると、当該光硬化性インク中の光開始剤が紫外線又は電子線を吸収して反応活性種であるラジカルや酸を生じ、反応性オリゴマー・モノマーの重合反応を起こし瞬時に硬化塗膜を形成するという特徴がある。
【0006】
ラジカル重合系の光硬化性インクを用いた場合、印字中に空中の酸素により硬化阻害が生じるという問題がある。この対策として例えば特許文献1には、記録媒体上における光硬化性インクのインク滴が着弾し、かつ照射手段によって活性光が照射される箇所に、光硬化性インクに対して不活性な窒素ガスを供給することによって、インク滴が着弾した後のインク滴の広がりを抑え、光硬化性インクを用いて高精細な画像を形成することが開示されている。
【0007】
この特許文献1で用いる光硬化性インクは、硬化剤を含有しているため、ノズル開口及びその近傍に紫外線が直接又は記録媒体からの反射等により間接に照射されると、ノズル開口及びその近傍の光硬化性インクが硬化し、ノズル開口に回復不可能な目詰まりを生じるという問題がある。
【0008】
このような問題に対処する技術として例えば特許文献2がある。すなわち、図12に示すようにノズルプレート1は、遮光性を有し、かつノズル開口2の近傍にインク撥水性の共析メッキ層3を有する。ノズルプレート1のインク吐出側の面1aからノズル開口2のストレート部2a及びテーパ部2bに及ぶ領域には、ふつ素系高分子の共析メッキ層3が形成されている。この共析メッキ層3は、ノズルプレート1の本体を構成する金属の表面にニッケルやニッケルーコバルト合金、ニッケルーリン合金、ニッケルーホウ酸合金の下地を形成した後、ふつ素系樹脂、例えばポリテロラフルオロエチレン、ポリバーフルロアルコキシブタジエン、ポリフルオロビニデリン、ポリフルオロビニル、ポリジパーフルオロアルキルフマレートを単独又は混合した電解液に浸漬して電界を印加し、所定時間の経過後引き上げ、例えば350℃程度の温度で加熱することにより形成されている。
【0009】
印刷が終了すると、ノズル開口2の近傍に位置する光硬化性インクのメニスカスMは、ノズル開口2に形成された共析メッキ層3の撥水性により図13に示したように圧力発生室4の奥側に後退し、又紫外光がノズルプレート1に遮断されるからノズル開口2の近傍の光硬化性インク4及び圧力発生室4内の光硬化性インクKが受ける紫外光量は極めて少なくなる。これにより、光硬化性インクKは、紫外線の照射による硬化を生じることがなく、目詰まりに至るまでの時間が大幅に延長される。
【特許文献1】特開2003−285423号公報
【特許文献2】特開平11−10874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2は、ノズル開口2の近傍すなわちインク吐出側の面1aからノズル開口2のストレート部2a及びテーパ部2bに及ぶ領域にインク撥水性を有するふつ素系高分子の共析メッキ層3を形成したノズルプレート1を用いるために、記録ヘッドの製造工程が複雑になる。
【0011】
さらに、印字時、メニスカスMは、ノズル開口2におけるインク吐出側の面1a近傍まで上がってくる。このため、メニスカスMに紫外光が容易に照射され、かつ記録媒体等からの反射光でノズル開口2の近傍の光硬化性インクKが硬化し、安定な印字ができない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出するノズルを有する記録ヘッドと、記録媒体に着弾したインク滴に光を照射する光照射部と、光を減衰させる気体を記録ヘッドの周囲に供給する気体供給部とを具備したインクジェット記録装置である。
【0013】
本発明は、記録ヘッドのノズルから光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出し、記録媒体に着弾したインク滴に対して光を照射して硬化させて記録媒体への記録動作を行うインクジェット記録装置の制御方法において、記録ヘッドの周囲に光を減衰させる気体を供給するインクジェット記録装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ノズル開口の近傍に照射された活性光でノズル開口近傍における光硬化性インクの硬化を防止し、安定な記録性能を確保できるインクジェット記録装置及びその制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1はインクジェット記録装置の構成図である。搬送機構10は、例えば紙葉、フィルム等の記録媒体11を供給側Aから排出側Bに向う矢印T方向に一定の搬送速度で搬送する。この搬送機構10は、例えば無端のベルト12と、このベルト12を駆動するための各ローラ10a、10b、10cとを有する。これらローラ10a、10b、10cのうち例えばローラ10aが駆動モータ14に連結されている。
【0017】
インクジェット方式の各記録ヘッド15k、15c、15m、15yが搬送機構10の上方に配設されている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、それぞれブラック(K)用、シアン(C)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用であり、記録媒体11の搬送方向(矢印T方向)に所定間隔毎に配設されている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、図2に示すようにそれぞれ複数のノズル16が一定間隔で一方向に設けられている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yの個々は、それぞれ複数のノズル16を搬送方向(矢印T方向)に対して垂直方向になるように配設されている。これら記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、それぞれ各ノズル16からブラック(K)の光硬化性インク、シアン(C)の光硬化性インク、マゼンタ(M)の光硬化性インク、イエロー(Y)の光硬化性インクを例えばピエゾ素子又はヒータの動作によって各ノズル16からインク滴として吐出する。
【0018】
これらブラック(K)の光硬化性インク、シアン(C)の光硬化性インク、マゼンタ(M)の光硬化性インク及びイエロー(Y)の光硬化性インクは、活性光として例えば遠紫外光の照射を受けることによって硬化する紫外線硬化性インクである。これら紫外線硬化性インクは、例えばカチオン重合形であって、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色料及び助剤を有している。このカチオン重合形の紫外線硬化性インクは、酸素による硬化阻害を有しない。従って、これらブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各紫外線硬化性インクは、印字中に各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲の酸素濃度を上げても、硬化が阻害されることはない。
【0019】
遠紫外光を放射する光源として例えばUVランプ16が設けられている。このUVランプ16は、記録ヘッド15yと排出側Bとの間で、かつ記録ヘッド15yに対して並設されている。このUVランプ16は、例えば搬送方向(矢印T方向)に対して垂直方向のライン状の遠紫外光を放射する。このUVランプ16は、例えば図3に示すようにピーク波長172nmを有する波長特性の遠紫外光を放射するエキシマランプである。
【0020】
各記録ヘッド15k、15c、15m、15yにおける記録媒体11を搬送する各下流側には、それぞれ各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yが並設されている。これらメンテナンスステーション17k、17c、17m、17yは、図4に示すように図示しないメンテナンス駆動機構により各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各間に下降し、次に横ずれして各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各下部に接触して配置し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに対して摺動することによりクリーニングを行い、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yのメンテナンスを行う。
【0021】
各記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、覆い体18により覆われている。この覆い体18の上部には、酸素供給口19が設けられている。この覆い体18は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給する気体、例えば酸素濃度を所定濃度、例えば30%に確保するために設けられる。この覆い体18は、上面18aと、この上面18aの各辺に設けられた各側面18b〜18eとからなり、下部に開口部18fが形成されている。
【0022】
この覆い体18の酸素供給口19には、酸素供給チューブ20を介して酸素供給部としての酸素発生器又は酸素ボンベ(以下、酸素発生器として説明する)21が接続されている。この酸素発生器21は、覆い体18内に供給する酸素を含むガス(以下、酸素ガスと称する)の流量を制御可能である。酸素ガスは、紫外光の吸収率が空気による紫外光の吸収率よりも大きい。
【0023】
ここで、覆い体18内における各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲の酸素濃度を例えば25%に確保する方法について説明する。
【0024】
図5は遠紫外領域での酸素の吸収特性を示し、図6は波長172nmの大気中における減衰特性を示す。図5から分るように波長200nm以下の紫外光は酸素により吸収され、その照射照度は低下する。
【0025】
通常の空気の酸素濃度は約21%であり、図6から分るように波長172nmの紫外光は8mm離れたところで10%まで減衰する。
【0026】
一方、重合による各紫外線硬化性インクの硬化は、UVランプ16から放射される遠紫外光の照度に影響される。各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の開口近傍における各紫外線硬化性インクの硬化度は、UVランプ16と各記録ヘッド15k、15c、15m、15yとの位置関係、さらに記録媒体11の反射率、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yと記録媒体11との距離によっても影響される。つまり、例えばUVランプ16と各記録ヘッド15k、15c、15m、15yとの位置関係によっては、遠紫外光は十分に減衰されず、重合反応が促進され、各紫外線硬化性インクの硬化が進行する場合がある。しかるに、各ノズル16の近傍に届く遠紫外光の照度を低下させるには、遠紫外光をより多くの酸素中に通過させる必要がある。そのためには、通常の空気中の酸素濃度21%だけでは不十分であり、それ以上の酸素濃度が必要となる。
【0027】
一方、あまり酸素濃度を高くすると、紫外光によって発生するオゾン濃度が高くなる。又、安全性を考量して覆い体18内に供給する酸素濃度は、通常の空気の1.1〜1.7倍である約23〜35%がよく、本実施の形態では、例えば酸素濃度30%とする。なお、酸素濃度は、UVランプ16の照度、酸素発生器21の性能等により適宜設定すればよい。
【0028】
酸素ガスの流量は、覆い体18の容量、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yと覆い体18との各隙間から漏れ出る酸素ガスの流量等より各ノズル16の周辺の酸素濃度が所望の時間で所望の濃度になるように適宜設定すればよいが、本実施の形態では流量2L/min程度に設定している。
【0029】
このような条件下において、覆い体18内における各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲の酸素濃度を例えば30%に確保する手段として酸素濃度計22及び制御部23が設けられている。覆い体18内に供給された酸素ガスは、空気よりも重いので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの上部から下方に向って拡散移動する。しかるに、酸素濃度計22は、拡散移動する酸素ガスの濃度を上記30%に制御するために、搬送方向(矢印T方向)に配設された各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの中心位置となる記録ヘッド15cと記録ヘッド15mとの間で、かつメンテナンスステーション17cの上方に設けられている。
【0030】
制御部23は、CPU、データメモリ、プログラムメモリ及び入出力ポートなどを有し、プログラムメモリに記憶されている記録動作プログラムを実行することにより、電源投入を受けて酸素発生器21から酸素ガスを各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給し、酸素濃度計22により検出される各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が所定濃度30%に達すると、UVランプ16から遠紫外光の放射を開始させて搬送機構10及び各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各動作による記録媒体11への記録動作可能な待機状態とし、当該記録動作を終了する場合には、UVランプ16を消灯させると共に、酸素発生器21による酸素ガスの供給を停止し、電源を遮断する。
【0031】
次に、上記の如く構成された装置の記録動作について図7に示す記録動作フローチャートに従って説明する。
【0032】
インクジェット記録装置本体の電源が投入されると、制御部23は、ステップ#1において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発する。この酸素発生器21は、酸素供給開始の指令を受けて、酸素ガスを酸素供給チューブ20を通して酸素供給口19から覆い体18内に供給する。このときの酸素ガスは、例えば流量2L/min程度に設定される。これにより、覆い体18の上部から当該覆い体18内に供給された酸素ガスは、空気よりも重いので、覆い体18内の上部から下方に向って拡散移動し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給される。
【0033】
次に、酸素濃度計22は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度を検出し、その検出信号を出力する。制御部23は、ステップ#2において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば30%以上に達したか否かを判断する。制御部23は、酸素濃度が例えば30%以上に達するまで待機状態になる。
【0034】
酸素濃度が例えば30%以上に達すると、制御部23は、ステップ#3において、UVランプ16に対して遠紫外光の照射開始指令を発する。これにより、UVランプ16は、遠紫外光を放射する。このUVランプ16は、放射される光量が安定するまで約10分ほどかかる。このUVランプ16が安定するまでの間に各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yに対するメンテナンスが行われる。
【0035】
制御部23は、ステップ#4において、図示しないメンテナンス駆動機構に対してメンテナンス開始指令を発する。このメンテナンス駆動機構は、各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yを図4に示すように各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各間に下降し、次に横ずらしして各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの下部に接触させて配置し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに対して摺動することにより各ノズル16の周辺に対するクリーニングを行う。なお、メンテナンスの間、搬送機構10は記録媒体11の搬送を停止し、かつ酸素発生器21は、覆い体18内に対する酸素ガスの供給を続けている。
【0036】
この待機状態において、UVランプ16から放射された遠紫外光は、記録媒体11の面上で反射し、この反射光が各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達しようとする。ところが、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺には、酸素ガスが供給されているので、遠紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰する。これによって各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0037】
メンテナンスが終了し、UVランプ16から放射される光量が安定すると、制御部23は、ステップ#5において、記録動作の待機状態に入る。なお、制御部23は、UVランプ16が安定するまで期間を例えば予め設定された期間をカウントアツプすることにより判断したり、又はUVランプ16から放射される遠紫外光の光量を検出し、この検出光量が一定光量になったことを判定することにより判断するようにしてもよい。
【0038】
この記録動作の待機状態に記録動作の指示が制御部23に入力されると、この制御部23は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに記録指令を発すると共に、搬送機構10に搬送指令を発する。これにより、搬送機構10は、記録媒体11を供給側Aから排出側Bに向う矢印T方向に一定の搬送速度で搬送する。これと共に各記録ヘッド15k、15c、15m、15yは、それぞれ記録指示に応じてKCMYの各紫外線硬化性インクをインク滴として各ノズル16から吐出す。これらノズル16から吐出された各紫外線硬化性インクをインク滴は、搬送されている記録媒体11の面上に着弾される。
【0039】
記録媒体11の面上に着弾されたKCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴がUVランプ16の下方を通過するとき、これらKCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴は、UVランプ16から放射された遠紫外光の照射を受ける。ここで、KCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴が受光する紫外光は、光重合開始の反応を起こす照度を有するので、KCMYの各紫外線硬化性インクのインク滴は、光重合開始の反応を起こして硬化し、記録媒体11の面上にで固定される。
【0040】
このような記録動作中、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺には、酸素ガスが供給されているので、上記同様に、遠紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰し、これによって各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0041】
一方、覆い体18の外部に設けられたいるUVランプ16と記録媒体11との間の空間における酸素濃度は、通常の空気の酸素濃度である約21%である。この空間においても遠紫外光は、酸素ガスにより減衰されるが、UVランプ16と記録媒体11との距離が近く、かつ酸素濃度が低いことから、KCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らない。
【0042】
記録媒体11上への記録を連続して行う場合、制御部23は、ステップ#6とステップ#7とを繰り替えし、記録動作を継続する。一旦、記録動作を中止してから再度記録動作を行う場合、制御部23は、ステップ#8から#5に戻り、記録動作の待機状態とする。
【0043】
記録動作する予定が全くない場合、制御部23は、ステップ#9に移り、UVランプ16に対して遠紫外光の照射の停止指令を発すると共に、酸素発生器21に対して酸素供給停止の指令を発する。これにより、UVランプ16は消灯し、酸素発生器21は覆い体18内への酸素ガスの供給を停止する。
【0044】
この後、制御部23は、インクジェット記録装置本体の電源を切って終了する。
【0045】
このように上記第1の実施の形態によれば、遠紫外光の照射により硬化するKCMYの各光硬化性インクをインク滴として記録媒体11に向けて吐出する複数のノズルを有する各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に遠紫外光を減衰させる酸素ガスを供給するので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の開口の近傍に照射された遠紫外光で当該ノズル16の開口近傍における光硬化性インクの硬化を防止でき、安定な記録性能を確保できる。すなわち、記録動作の待機状態において、UVランプ16から放射された遠紫外光は、直接又は記録媒体11の面上で反射し、この反射光が各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達しようとするが、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺に酸素ガスが供給されるので、紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰する。この結果、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。又、記録動作中においても各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺に酸素ガスが供給されているので、遠紫外光は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺に到達するまでに減衰し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0046】
一方、UVランプ16と記録媒体11との間の空間でも遠紫外光は、酸素ガスにより減衰されるが、UVランプ16と記録媒体11との距離が近く、かつ酸素ガスの濃度が低いことから、KCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らず、各紫外線硬化性インクは硬化して記録媒体11上に記録される。
【0047】
従って、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0048】
なお、上記第1の実施の形態では、波長172nmの遠紫外光を放射するUVランプ16を用いているが、これに限らず、基本的に波長200nm以下の発光波長を持つランプであれば用いることができる。
【0049】
又、UVランプ16からミラー、光ファイバー等を用いて記録媒体11まで光を導いてもよい。
【0050】
又、UVランプ16を各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの直後に合計4つ配置してもよい。この場合、UVランプ16と記録媒体11との距離を例えば1mmと近く設定し、UVランプ16と各記録ヘッド15k、15c、15m、15yのノズルとの距離を例えば10mmと離すことにより同様の効果を得ることができる。
【0051】
遠紫外光を減衰させる気体として酸素ガスを用いているが、二酸化炭素を含むガス(以下、二酸化炭素ガスと称する)であっても上記同様の効果を奏することができる。但し、二酸化炭素ガスを用いる場合には、上記酸素濃度計22を二酸化炭素濃度計に代える。上記図5に示すように二酸化炭素は、遠紫外光の吸収特性が酸素の紫外光の吸収特性よりも低い特性を有する。従って、遠紫外光を減衰させるには、二酸化炭素濃度の濃度を酸素ガスの濃度よりも高くする必要がある。又、二酸化炭素ガスは、濃度100%にして制御することは難しいものの濃度90%以上に制御することは可能であり、従って、例えば二酸化炭素濃度を90%以上として制御する。
【0052】
又、記録媒体は、例えばフィルムを用いたが、どのような記録媒体であっても上記同様の効果が得られる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0054】
図8はインクジェット記録装置の構成図である。移動駆動部30は、覆い体18を各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆う第1の位置P1と、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの覆いを解除する第2の位置P2との間に移動させる。第1の位置P1は、例えば記録媒体11と接触するかしないかの近接位置である。第2の位置P2は、例えば記録媒体11の搬送の邪魔にならない高さ位置である。この第2の位置P2は、例えば第1の位置P1の真上に設けたり、又は斜め上方に設けてもよい。なお、第2の位置P2は、インクジェット記録装置本体を設置する周囲環境に応じて設定することが可能である。
【0055】
従って、第2の位置P2を例えば第1の位置P1の真上に設けた場合、移動駆動部30は、覆い体18を矢印A方向に上下移動する。第2の位置P2を第1の位置P1の斜め上方に設けた場合、移動駆動部30は、一旦、覆い体18を真上に移動し、この後に横方向に移動して各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの覆いを解除する。各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆うとき移動駆動部30は、覆い体18を横方向に移動し、この後に真下に移動する。
【0056】
制御部31は、CPU、データメモリ、プログラムメモリ及び入出力ポートなどを有し、プログラムメモリに記憶されている記録動作プログラムを実行することにより、電源の投入を受けて移動駆動部30を駆動制御して覆い体18を第2の位置P2に移動させ、記録動作を終了する際、UVランプ16の消灯及び酸素発生器21からの酸素ガスの供給の停止の後に、移動駆動部30を駆動制御して覆い体18を第1の位置P1に移動させてから電源を遮断する。
【0057】
次に、上記の如く構成された装置の記録動作について図9に示す記録動作フローチャートに従って説明する。
【0058】
インクジェット記録装置本体の電源が切られている状態では、覆い体18は第1の位置P1に設けられ、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆っている。
【0059】
インクジェット記録装置本体の電源が投入されると、制御部31は、ステップ#10において、移動駆動部30に対して上昇指令を発する。この上昇指令を受けた移動駆動部30は、覆い体18を真上で記録媒体11の搬送の邪魔にならない高さ位置である第2の位置P2まで上昇させる。
【0060】
次に、制御部31は、上記第1の実施の形態と同様に、ステップ#1において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発し、酸素発生器21から酸素ガスを覆い体18内に供給する。覆い体18内に供給された酸素ガスは、当該覆い体18内の上部から下方に向って拡散移動し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給される。
【0061】
次に、制御部31は、ステップ#2において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば25%以上に達するまで待機状態になる。
【0062】
酸素濃度が例えば30%以上に達すると、制御部31は、ステップ#3において、UVランプ16から紫外光を放射させ、かつこのUVランプ16から放射される遠紫外光の光量が安定するまでの間に、ステップ#4において、各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yをメンテナンスする。
【0063】
メンテナンスが終了し、UVランプ16から放射される遠紫外光の光量が安定すると、制御部31は、ステップ#5において、記録動作の待機状態に入る。
【0064】
この記録動作の待機状態に記録動作の指示が制御部31に入力されると、制御部31は、ステップ#6において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに記録指令を発すると共に、搬送機構10に搬送指令を発して記録媒体11の面上への記録動作を行う。
【0065】
記録媒体11上への記録を連続して行う場合、制御部31は、ステップ#6とステップ#7とを繰り替えし、記録動作を継続する。一旦、記録動作を中止してから再度記録動作を行う場合、制御部31は、ステップ#8から#5に戻り、記録動作の待機状態とする。
【0066】
記録動作する予定が全くない場合、制御部31は、ステップ#11に移り、UVランプ16に対して紫外光の照射の停止指令を発する。これにより、UVランプ16は消灯する。
【0067】
次に、制御部31は、ステップ#12において、覆い体18内を酸素ガスで満たすために一定時間の経過を待つ。すなわち、覆い体18内には、UVランプ16を消灯した状態で、酸素発生器21から酸素ガスの供給が続けられる。そして、一定時間経過すると、制御部31は、酸素発生器21に対して酸素ガスの供給の停止指令を発する。これにより、覆い体18内への酸素ガスの供給が停止される。
【0068】
次に、制御部31は、ステップ#13において、移動駆動部30に対して下降指令を発する。この下降指令を受けた移動駆動部30は、覆い体18を第2の位置P2から例えば記録媒体11と接触するかしないかの近接位置である第1の位置P1に移動させる。
【0069】
この後、制御部31は、インクジェット記録装置本体の電源を切って終了する。
【0070】
このように上記第2の実施の形態によれば、電源の投入により覆い体18を例えば記録媒体11の搬送の邪魔にならない第2の位置P2に移動させ、記録動作を終了する際、UVランプ16の消灯及び酸素発生器21からの酸素ガスの供給の停止の後に、覆い体18を例えば記録媒体11と接触するかしないかの近接位置である第1の位置P1に移動させから電源を遮断するので、記録動作を行わないときには各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆い体18で覆うことにより、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yへの自然光の入射を遮光できる。
【0071】
これにより、自然光の入射による各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺におけるKCMYの各紫外線硬化性インクの光重合開始の反応が起こらず、これら紫外線硬化性インクが硬化することはない。又、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yを覆い体18で覆うことにより、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺における酸素濃度を高くできる。この結果、記録動作を行わないときに、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。
【0072】
又、上記第1の実施の形態と同様に、記録動作中においても各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺に酸素ガスが供給されているので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。UVランプ16と記録媒体11との間の空間では、遠紫外光がKCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らず、各紫外線硬化性インクは硬化して記録媒体11上に記録される。
【0073】
従って、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0074】
次に、本発明の第3の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
【0075】
図10はインクジェット記録装置の構成図である。覆い体18は、搬送方向Tに対して垂直方向の長さを記録媒体11の幅方向の長さよりも長さSだけ長く形成されている。この長さSは、後述するファン筐体42の寸法よりも長く形成されている。この覆い体18の上面18aには、酸素ガス供給口40が設けられている。この酸素ガス供給口40には、酸素供給チューブ20を介して酸素発生器21が接続されている。又、覆い体18の上面18aには、酸素ガス再供給口41が設けられている。
【0076】
酸素ガスの流量は、覆い体18の容量、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yと覆い体18との隙間から漏れ出る酸素ガスの流量等よりノズル16の周辺の酸素濃度が所望の時間で所望の濃度になるように設定される。本実施の形態では、酸素ガスの流量2L/min程度としている。又、覆い体18内の各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺の酸素濃度は、覆い体18内に積極的にオゾンを発生させるために、例えば90%以上に制御される。酸素発生器21は、例えば酸素濃度100%の酸素ガスを流量2L/min程度で覆い体18に供給する。
【0077】
ファン筐体42の側面には、第1の開口部43が設けられている。なお、この第1の開口部43は、ファン筐体42の側面に限らず、他の側面又は下面に設けてもよい。この第1の開口部43に対峙するファン筐体42の内部には、第1の吸引ファン44が設けられている。又、第1の開口部43には、第1の配管系としての循環系チューブ45の一端口が取り付けられている。この循環系チューブ45の他端口は、覆い体18の酸素ガス再供給口41に取り付けられている。なお、第1の開口部43、第1の吸引ファン44及び循環系チューブ45により循環系が構成される。
【0078】
ファン筐体42の下面には、第2の開口部46が設けられている。この第2の開口部46に対峙するファン筐体42の内部には、第2の吸引ファン47が設けられている。又、ファン筐体42の外側の第2の開口部46には、オゾンフィルタ48が取り付けられている。なお、第2の開口部46、第2の吸引ファン47及びオゾンフィルタ48により排出系が構成されている。
【0079】
なお、第1の開口部43と第2の開口部46とには、それぞれこれら第1の開口部43と第2の開口部46とを開閉する各開閉機構を設けてもよい。第1の開口部43に設けられる開閉機構は、第1のファン44の駆動時に開放し、第1のファン44の停止時に閉じる。第2の開口部46に設けられる開閉機構も第2のファン47の駆動時に開放し、第2のファン47の停止時に閉じる。
【0080】
制御部49は、CPU、データメモリ、プログラムメモリ及び入出力ポートなどを有し、プログラムメモリに記憶されている記録動作プログラムを実行することにより、電源投入を受けて第1の吸引ファン44を駆動開始し、覆い体18内の酸素ガスの濃度を所定濃度になるように酸素ガスを循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給して酸素ガスの濃度が所定濃度、例えば90%に制御し、かつ記録動作を終了する際、UVランプ16の消灯及び酸素ガスの供給の停止の後に、第1の吸引ファン44の駆動を停止すると共に第2の吸引ファン47を駆動開始し、酸素濃度計22により検出される各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素ガスの濃度が所定濃度、例えば21%以下に低下したときに第2の吸引ファン47の駆動を停止する。
【0081】
次に、上記の如く構成された装置の記録動作について図11に示す記録動作フローチャートに従って説明する。
【0082】
インクジェット記録装置本体の電源が投入されると、制御部49は、ステップ#20において、第1の吸引ファン44に駆動指令を発する。第1の吸引ファン44は、駆動することによりファン筐体42内の酸素を含むガスを吸引し、循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給する。
【0083】
次に、制御部49は、上記第1の実施の形態と同様に、ステップ#1において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発し、酸素発生器21から酸素濃度100%の酸素ガスを流量2L/min程度で覆い体18に供給する。覆い体18内に供給された酸素ガスは、当該覆い体18内の上部から下方に向って拡散移動し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲に供給される。
【0084】
次に、制御部49は、ステップ#21において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば90%以上に達するまで待機状態になる。
【0085】
酸素濃度が例えば90%以上に達すると、制御部49は、ステップ#3において、UVランプ16から紫外光を放射させ、かつこのUVランプ16から放射される光量が安定するまでの間に、ステップ#4において、各メンテナンスステーション17k、17c、17m、17yをメンテナンスする。
【0086】
メンテナンスが終了し、UVランプ16から放射される光量が安定すると、制御部49は、ステップ#5に移り、記録動作の待機状態に入る。
【0087】
この記録動作の待機状態に記録動作の指示が制御部49に入力されると、この制御部49は、ステップ#6において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yに記録指令を発すると共に、搬送機構10に搬送指令を発して記録媒体11の面上への記録動作を行う。
【0088】
記録媒体11上への記録を連続して行う場合、制御部49は、ステップ#6とステップ#7とを繰り替えし、記録動作を継続する。一旦、記録動作を中止してから再度記録動作を行う場合、制御部49は、ステップ#8から#5に戻り、記録動作の待機状態とする。
【0089】
一方、制御部49は、上記ステップ#5〜#8の処理と並行して各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺の酸素濃度を所定濃度、例えば90%以上に制御する。すなわち、制御部49は、ステップ#22において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば90%以上に達したか否かを判断する。この判断の結果、酸素濃度が例えば90%以上に達していると、制御部49は、ステップ#23において、酸素発生器21に対して酸素供給の停止の指令を発する。これにより、酸素発生器21は、酸素濃度100%の酸素ガスの供給を停止する。
【0090】
この後、制御部49は、ステップ#24において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば90%以上であるか否かを判断する。この判断の結果、酸素濃度が例えば90%以下に低下していれば、制御部49は、ステップ#26において、酸素発生器21に対して酸素供給開始の指令を発する。これにより、酸素発生器21は、再び酸素濃度100%の酸素ガスを流量2L/min程度で覆い体18に供給する。
【0091】
この状態で、制御部49は、上記の如く第1の吸引ファン44を駆動し、ファン筐体42内の酸素を含むガスを吸引し、循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給している。
【0092】
従って、制御部49は、記録動作する予定が全くなくなるまのでの間、上記ステップ#22〜#26を繰り返すことで、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度を90%以上に維持する。
【0093】
ところで、酸素は、波長172nmの光で分解して各酸素分子になり、これら酸素分子が結合してオゾンになりやすい。一方、オゾンは、図5に示すように波長240nm以下の紫外線を吸収する。
【0094】
従って、覆い体18内に生じたオゾンは、第1の吸引ファン44により吸引され、循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給される。これにより、覆い体18内には、高濃度のオゾンが存在する。
【0095】
従って、記録動作を行わないとき及び記録動作中、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲は、高濃度のオゾン雰囲気に維持される。この結果、記録動作を行わないとき、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応が起こらず、各紫外線硬化性インクは硬化しない。
【0096】
記録動作中、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周辺が高濃度のオゾン雰囲気に維持されるので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺では、KCMYの各紫外線硬化性インクは、光重合開始の反応が起こらず、硬化しない。UVランプ16と記録媒体11との間の空間では、遠紫外光がKCMYの各紫外線硬化性インクの硬化を阻害するまでの減衰には至らず、各紫外線硬化性インクは硬化して記録媒体11上に記録される。
【0097】
従って、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0098】
記録動作する予定が全くない場合、制御部49は、ステップ#27に移り、UVランプ16に対して遠紫外光の照射の停止指令を発する。これにより、UVランプ16は消灯する。
【0099】
次に、制御部49は、ステップ#28において、第1の吸引ファン44に対して停止指令を発すると共に、第2の吸引ファン47に対して駆動指令を発する。これにより、第1の吸引ファン44は停止すると共に、第2の吸引ファン47が駆動を開始する。この第2の吸引ファン47が駆動すると、ファン筐体42内のオゾンが吸引され、オゾンフィルター48を通して、インクジェット記録装置本体の外部に排出される。
【0100】
次に、制御部49は、ステップ#29において、酸素濃度計22から出力された検出信号を入力し、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素濃度が例えば21%以下に低下したか否かを判断する。この判断の結果、酸素濃度が例えば21%以下に低下していれば、制御部49は、ステップ#30において、第2の吸引ファン47に停止指令を発し、第2の吸引ファン47の駆動を停止する。
【0101】
この後、制御部49は、インクジェット記録装置本体の電源を切って終了する。
【0102】
このように上記第3の実施の形態によれば、電源投入を受けて第1の吸引ファン44を駆動開始し、覆い体18内の酸素濃度を所定濃度90%以上になるように酸素ガスを循環系チューブ45を通して覆い体18内に再供給するので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲を高濃度のオゾン雰囲気にすることができる。オゾンは、波長240nm以下の遠紫外線を吸収するので、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16に入射しようとする遠紫外光を吸収する。これによって記録動作を行わないとき及び記録動作中において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応が起こらず、各紫外線硬化性インクは硬化しない。この結果、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16の詰まりを防止でき、記録にノズル抜けのない、快適な記録を達成できる。
【0103】
記録動作を終了する際は、UVランプ16の消灯及び酸素ガスの供給の停止の後に、第1の吸引ファン44の駆動を停止すると共に第2の吸引ファン47を駆動開始し、酸素濃度計22により検出される各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの周囲における酸素ガスの濃度が所定濃度、例えば21%以下に低下したときに第2の吸引ファン47の駆動を停止するので、安全性も高い。
【0104】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、次のように変形してもよい。例えば、酸素濃度計22は、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの搬送方向Tの中心位置に設けているが、例えば各記録ヘッド15k、15c、15m、15y毎に4個設け、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各位置で各酸素濃度を検出し、これら酸素濃度の平均値を求めるようにしてもよい。
【0105】
第1及び第2の吸引ファン44、47を収納するファン筐体42は、搬送機構10の一側面に1つ設けているが、搬送機構10の両側に2つ設けてもよい。これにより、酸素ガスの循環効率を向上でき、オゾンの発生を促進し、より確実に、記録動作を行わないとき及び記録動作中において、各記録ヘッド15k、15c、15m、15yの各ノズル16及びその周辺においてKCMYの各紫外線硬化性インクで光重合開始の反応を起こさずに、各紫外線硬化性インクを硬化させない。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置における記録ヘッドに設けられた複数のノズルを示す図。
【図3】同装置におけるUVランプの波長特性を示す図。
【図4】同装置におけるメンテナンスステーションの配置を示す図。
【図5】遠紫外領域における酸素、オゾン及び二酸化酸素の吸収特性を示す図。
【図6】波長172nmの大気中における紫外光の減衰特性を示す図。
【図7】同装置における記録動作フローチャート。
【図8】本発明に係るインクジェット記録装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図9】同装置における記録動作フローチャート。
【図10】本発明に係るインクジェット記録装置の第3の実施の形態を示す構成図。
【図11】同装置における記録動作フローチャート。
【図12】従来のインクジェットプリンタのノズルプレートを示す構成図。
【図13】同ノズルプレートに生じるメニスカスを示す図。
【符号の説明】
【0107】
10:搬送機構、11:記録媒体、12:ベルト、13a,13b,13c:ローラ、14:駆動モータ、15k,15c,15m,15y:記録ヘッド、16:ノズル、17k,17c,17m,17y:メンテナンスステーション、18:覆い体、18a:上面、18b〜18e:側面、18f:開口部、19:酸素供給口、20:酸素供給チューブ、21:酸素発生器又は酸素ボンベ、22:酸素濃度計、23,31:制御部、30:移動駆動部、40:酸素ガス供給口、41:酸素ガス再供給口、42:ファン筐体、43:第1の開口部、44:第1の吸引ファン、45:循環系チューブ、46:第2の開口部、47:第2の吸引ファン、48:オゾンフィルタ、49:制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録媒体に着弾した前記インク滴に前記光を照射する光照射部と、
前記光を減衰させる気体を前記記録ヘッドの周囲に供給する気体供給部と、
を具備したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
光を照射する光源と、
前記光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出すノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に搬送させる搬送機構と、
前記記録媒体に着弾した前記インク滴に前記光を照射して前記インク滴を硬化させる光照射部と、
前記光を減衰させる気体を前記記録ヘッドの周囲に供給する気体供給部と、
前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度を検出する濃度計と、
電源投入を受けて前記気体供給部から前記気体を前記記録ヘッドの周囲に供給し、前記濃度計により検出される前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度が所定濃度に達すると、前記光源から前記光の照射を開始させて前記搬送機構及び前記記録ヘッドの各動作による前記記録媒体への記録動作可能な待機状態とし、前記記録動作を終了する場合には、前記光源を消灯させると共に、前記気体供給部による前記気体の供給を停止し、前記電源を遮断する制御部と、
を具備したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記気体は、前記光の吸収率が空気による前記光の吸収率よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記気体は、当該気体の濃度の上昇により前記光硬化性インクの硬化を阻害しないことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記気体は、酸素、二酸化炭素又はオゾンのうち少なくともいずれか1つを有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記酸素の濃度は、所定濃度23%〜35%を有することを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記酸素の濃度は、前記光の照度及び/又は前記気体供給部による前記気体の供給性能に応じて設定変更されることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素の濃度は、所定濃度90%〜100%を有することを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記光硬化性インクは、カチオン重合形を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記光は、遠紫外光であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
互いに異なる各色別の複数の前記記録ヘッドが前記搬送機構による前記記録媒体と前記記録ヘッドとの相対的な前記搬送方向に配置され、
前記濃度計は、複数の前記記録ヘッドの前記配置方向の中央部に設けられた、
ことを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドを覆い、前記記録ヘッドの周囲に供給する前記気体の濃度を所定濃度に確保する覆い体を有することを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記覆い体は、前記記録ヘッドを覆う第1の位置と前記記録ヘッドの覆いを解除する第2の位置との間に移動可能であることを特徴とする請求項12記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記覆い体を前記第1の位置と前記第2の位置との間に移動駆動する移動駆動部を有し、
前記制御部は、電源投入を受けて前記移動駆動部を駆動制御して前記覆い体を前記第2の位置に移動させ、前記記録動作を終了する際、前記光源の消灯及び前記気体の供給の停止の後に前記移動駆動部を駆動制御して前記覆い体を前記第1の位置に移動させから前記電源を遮断する、
ことを特徴とする請求項13記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記記録ヘッドを覆い、前記記録ヘッドの周囲に供給する前記気体の濃度を所定濃度に確保する覆い体と、
前記覆い体内の前記気体を吸引すると共に、当該吸引した前記気体を前記覆い体内に再供給する循環系と、
前記覆い体内の前記気体を吸引してインクジェット記録装置本体の外部に排出する排出系と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記循環系は、前記覆い体内の前記気体を吸引する第1のファンと、
前記第1のファンにより吸引された前記気体を前記覆い体内に再供給する第1の配管系と、
を有することを特徴とする請求項15記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記排出系は、前記覆い体内の前記気体を吸引する第2のファンと、
前記気体をフィルタリングするフィルタと、
前記第2のファンにより吸引された前記気体を前記フィルタに通して前記インクジェット記録装置本体の外部に排出する第1の配管系と、
を有することを特徴とする請求項15記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
前記気体は、オゾンを有することを特徴とする請求項17記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
前記フィルタは、オゾンフィルターを有することを特徴とする請求項17記載のインクジェット記録装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記電源投入を受けて前記第1のファンを駆動開始し、前記前記覆い体内の前記気体の濃度を所定濃度になるように前記気体を供給制御し、前記記録動作を終了する際、前記光源の消灯及び前記気体の供給の停止の後に前記第1のファンの駆動を停止すると共に前記第2のファンを駆動開始し、前記濃度計により検出される前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度が所定濃度以下に低下したときに前記第2のファンの駆動を停止する、
ことを特徴とする請求項13記載のインクジェット記録装置。
【請求項21】
前記所定濃度は、90%以上であることを特徴とする請求項20記載のインクジェット記録装置。
【請求項22】
記録ヘッドのノズルから光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出し、前記記録媒体に着弾した前記インク滴に対して光を照射して硬化させて前記記録媒体への記録動作を行うインクジェット記録装置の制御方法において、
前記記録ヘッドの周囲に前記光を減衰させる気体を供給することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項23】
電源が遮断されている状態で前記記録ヘッドを覆い体により覆い、
前記電源の投入により前記記録ヘッドを覆っている前記覆い体の覆いを解いてから前記記録ヘッドの周囲に前記気体を供給し、
この状態で前記記録媒体に対する前記記録動作を行い、
前記記録媒体に対する前記記録動作を終了するに際に、前記光の照射を停止及び前記気体の供給を停止させてから前記記録ヘッドを前記覆い体により覆い、この後に前記電源を遮断する、
ことを特徴とする請求項22記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項24】
前記電源の投入により前記第1のファンを駆動開始し、循環系を通して前記覆い体内の前記気体を吸引すると共に、当該吸引した前記気体を前記覆い体内に再供給し、
前記覆い体内の前記気体の濃度が所定濃度に達すると前記記録動作の待機状態とし、
前記記録動作を終了する際、前記光源の消灯及び前記気体の供給の停止の後に前記第1のファンの駆動を停止すると共に、第2のファンを駆動開始して排出系を通して前記覆い体内の前記気体を吸引してインクジェット記録装置本体の外部に排出し、
前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度が所定濃度以下に低下すると前記第2のファンの駆動を停止する、
ことを特徴とする請求項22記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項1】
光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録媒体に着弾した前記インク滴に前記光を照射する光照射部と、
前記光を減衰させる気体を前記記録ヘッドの周囲に供給する気体供給部と、
を具備したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
光を照射する光源と、
前記光の照射により硬化する光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出すノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対的に搬送させる搬送機構と、
前記記録媒体に着弾した前記インク滴に前記光を照射して前記インク滴を硬化させる光照射部と、
前記光を減衰させる気体を前記記録ヘッドの周囲に供給する気体供給部と、
前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度を検出する濃度計と、
電源投入を受けて前記気体供給部から前記気体を前記記録ヘッドの周囲に供給し、前記濃度計により検出される前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度が所定濃度に達すると、前記光源から前記光の照射を開始させて前記搬送機構及び前記記録ヘッドの各動作による前記記録媒体への記録動作可能な待機状態とし、前記記録動作を終了する場合には、前記光源を消灯させると共に、前記気体供給部による前記気体の供給を停止し、前記電源を遮断する制御部と、
を具備したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記気体は、前記光の吸収率が空気による前記光の吸収率よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記気体は、当該気体の濃度の上昇により前記光硬化性インクの硬化を阻害しないことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記気体は、酸素、二酸化炭素又はオゾンのうち少なくともいずれか1つを有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記酸素の濃度は、所定濃度23%〜35%を有することを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記酸素の濃度は、前記光の照度及び/又は前記気体供給部による前記気体の供給性能に応じて設定変更されることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記二酸化炭素の濃度は、所定濃度90%〜100%を有することを特徴とする請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記光硬化性インクは、カチオン重合形を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記光は、遠紫外光であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
互いに異なる各色別の複数の前記記録ヘッドが前記搬送機構による前記記録媒体と前記記録ヘッドとの相対的な前記搬送方向に配置され、
前記濃度計は、複数の前記記録ヘッドの前記配置方向の中央部に設けられた、
ことを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドを覆い、前記記録ヘッドの周囲に供給する前記気体の濃度を所定濃度に確保する覆い体を有することを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記覆い体は、前記記録ヘッドを覆う第1の位置と前記記録ヘッドの覆いを解除する第2の位置との間に移動可能であることを特徴とする請求項12記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記覆い体を前記第1の位置と前記第2の位置との間に移動駆動する移動駆動部を有し、
前記制御部は、電源投入を受けて前記移動駆動部を駆動制御して前記覆い体を前記第2の位置に移動させ、前記記録動作を終了する際、前記光源の消灯及び前記気体の供給の停止の後に前記移動駆動部を駆動制御して前記覆い体を前記第1の位置に移動させから前記電源を遮断する、
ことを特徴とする請求項13記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記記録ヘッドを覆い、前記記録ヘッドの周囲に供給する前記気体の濃度を所定濃度に確保する覆い体と、
前記覆い体内の前記気体を吸引すると共に、当該吸引した前記気体を前記覆い体内に再供給する循環系と、
前記覆い体内の前記気体を吸引してインクジェット記録装置本体の外部に排出する排出系と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記循環系は、前記覆い体内の前記気体を吸引する第1のファンと、
前記第1のファンにより吸引された前記気体を前記覆い体内に再供給する第1の配管系と、
を有することを特徴とする請求項15記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記排出系は、前記覆い体内の前記気体を吸引する第2のファンと、
前記気体をフィルタリングするフィルタと、
前記第2のファンにより吸引された前記気体を前記フィルタに通して前記インクジェット記録装置本体の外部に排出する第1の配管系と、
を有することを特徴とする請求項15記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
前記気体は、オゾンを有することを特徴とする請求項17記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
前記フィルタは、オゾンフィルターを有することを特徴とする請求項17記載のインクジェット記録装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記電源投入を受けて前記第1のファンを駆動開始し、前記前記覆い体内の前記気体の濃度を所定濃度になるように前記気体を供給制御し、前記記録動作を終了する際、前記光源の消灯及び前記気体の供給の停止の後に前記第1のファンの駆動を停止すると共に前記第2のファンを駆動開始し、前記濃度計により検出される前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度が所定濃度以下に低下したときに前記第2のファンの駆動を停止する、
ことを特徴とする請求項13記載のインクジェット記録装置。
【請求項21】
前記所定濃度は、90%以上であることを特徴とする請求項20記載のインクジェット記録装置。
【請求項22】
記録ヘッドのノズルから光硬化性インクをインク滴として記録媒体に向けて吐出し、前記記録媒体に着弾した前記インク滴に対して光を照射して硬化させて前記記録媒体への記録動作を行うインクジェット記録装置の制御方法において、
前記記録ヘッドの周囲に前記光を減衰させる気体を供給することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項23】
電源が遮断されている状態で前記記録ヘッドを覆い体により覆い、
前記電源の投入により前記記録ヘッドを覆っている前記覆い体の覆いを解いてから前記記録ヘッドの周囲に前記気体を供給し、
この状態で前記記録媒体に対する前記記録動作を行い、
前記記録媒体に対する前記記録動作を終了するに際に、前記光の照射を停止及び前記気体の供給を停止させてから前記記録ヘッドを前記覆い体により覆い、この後に前記電源を遮断する、
ことを特徴とする請求項22記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項24】
前記電源の投入により前記第1のファンを駆動開始し、循環系を通して前記覆い体内の前記気体を吸引すると共に、当該吸引した前記気体を前記覆い体内に再供給し、
前記覆い体内の前記気体の濃度が所定濃度に達すると前記記録動作の待機状態とし、
前記記録動作を終了する際、前記光源の消灯及び前記気体の供給の停止の後に前記第1のファンの駆動を停止すると共に、第2のファンを駆動開始して排出系を通して前記覆い体内の前記気体を吸引してインクジェット記録装置本体の外部に排出し、
前記記録ヘッドの周囲における前記気体の濃度が所定濃度以下に低下すると前記第2のファンの駆動を停止する、
ことを特徴とする請求項22記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−27230(P2006−27230A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213259(P2004−213259)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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