説明

インクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの駆動方法

【課題】本発明は、複数のインク吐出口の吐出特性に合わせて駆動素子に印加する駆動波形を容易に調整することができるインクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの駆動方法を提供することを目的とする。
【解決手段】インクが充填される圧力室に対応して設けられた駆動素子を駆動して圧力室内のインクに圧力変動を生じさせてインク吐出口からインク滴を吐出させる場合、駆動素子に印加する駆動波形を、駆動タイミング制御信号T2のパルスP1〜P4の立上りのタイミングで駆動波形の立上り波形及び立下り波形を出力する。立上り波形及び立下り波形は、予め設定された立上り時間及び立下り時間並びに波高値に基づいて生成し、両波形の間は波高値に相当する電位V1が維持されるようにして駆動波形を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクが充填された圧力室に連通したインク吐出口からインク滴を吐出させるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドのインク吐出口から微小なインク滴を記録媒体に対して吐出して印字や画像記録を行うもので、記録媒体から離間した状態で記録動作を行うことができることから、様々な材質の記録媒体や物品に記録することが可能で、幅広い用途に使用されている。
【0003】
こうしたインクジェット記録装置では、近年高精細の画像データを記録するために、記録画像の高密度化及び記録速度の高速化が求められている。そのため多数のインク吐出口及び圧力室を高密度で配列したインクジェットヘッドの開発が進められており、各インク吐出口から吐出されるインク滴の微小化及び均一化が求められている。
【0004】
インクジェット記録に用いるインクジェットヘッドは、種々のタイプのヘッドが開発されてきているが、例えば、圧電素子に電圧を印加して変形させることでインクが充填された圧力室を膨張及び収縮させてインクに圧力変動を生じさせ、インク滴を吐出させるピエゾタイプのインクジェットヘッドが開発されている。
【0005】
こうしたピエゾタイプのインクジェットヘッドでは、圧電素子に印加する電圧の駆動波形により圧電素子の変形を制御してインク滴の吐出特性を向上させることが提案されている。例えば、特許文献1では、吐出用充電信号及び吐出用放電信号を入力することで所定のピーク電圧で充放電を行う駆動電圧波形を生成する点が記載されており、生成される駆動電圧波形を制御することで高周波でのインク吐出動作を安定化するようにしている。また、特許文献2では、D/Aコンバータから出力される電圧レベルが所定電位より高いか低いかによって波形生成部において立上り波形及び立下り波形を生成するとともに電圧レベルが所定電位の場合に電圧が維持されるように電圧波形が生成されて、インクジェットヘッドの圧電アクチュエータを駆動するようにした点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−39228号公報
【特許文献2】再公表特許2002/034528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献では、インクジェットヘッドの駆動素子である圧電素子に印加する駆動波形を調整することが可能となっているが、駆動波形の立上り及び立下りの波形を調整するためには、回路構成の抵抗値や静電容量を変更する必要があり、容易に調整することは難しい。
【0008】
複数のインク吐出口及び各インク吐出口に連通する複数の圧力室が形成されたインクジェットヘッドでは、各圧力室に対応して複数の駆動素子が設けられているが、各インク吐出口の吐出特性は、圧力室及びインク流路の構造や駆動素子の違いにより異なったものとなっている。そのため、各インク吐出口の吐出特性に合わせて駆動素子に印加する駆動波形を個別にきめ細かく調整して吐出されるインク滴を均一化する必要があるが、上述した特許文献のような調整方法ではこうしたインク吐出口の吐出特性に合わせた調整を行うことは困難である。
【0009】
そこで、本発明は、複数のインク吐出口の吐出特性に合わせて駆動素子に印加する駆動波形を容易に調整することができるインクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インクが充填されるとともにインク吐出口に連通する圧力室に対応して駆動素子が設けられたインクジェットヘッドと、前記駆動素子を駆動して前記圧力室内のインクに圧力変動を生じさせて前記インク吐出口からインク滴を吐出させる駆動回路とを備えたインクジェット記録装置において、前記駆動回路は、前記駆動素子を駆動する駆動波形に関する立上り時間及び立下り時間を含む設定データを記憶する記憶手段と、前記駆動波形の立上り及び立下りに関するタイミング制御信号を生成するタイミング制御手段と、前記設定データ及び前記タイミング制御信号に基づいて立上り波形及び立下り波形並びに当該両波形の間に一定の波高値を有する前記駆動波形を生成する波形生成手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記記憶手段は、前記設定データとして前記波高値を記憶しており、前記波形生成手段は、記憶された前記波高値に基づいて前記駆動波形を生成することを特徴とする。さらに、前記記憶手段は、前記駆動素子に対応して前記駆動波形に関する補正データを記憶しており、前記波形生成手段は、前記補正データに基づいて前記駆動素子別の前記駆動波形を生成することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るインクジェットヘッドの駆動方法は、インクが充填されるとともにインク吐出口に連通する圧力室に対応して設けられた駆動素子を駆動して前記圧力室内のインクに圧力変動を生じさせて前記インク吐出口からインク滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動方法において、前記駆動素子を駆動する駆動波形に関する立上り時間及び立下り時間を含む設定データ及び当該駆動波形の立上り及び立下りに関するタイミング制御信号に基づいて立上り波形及び立下り波形並びに当該両波形の間に一定の波高値を有する前記駆動波形を生成し、生成された前記駆動波形を前記駆動素子に印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような構成を備えることで、設定データとして記憶された駆動波形に関する立上り時間に基づいて所定の波高値まで立ち上げる立上り波形を生成することができ、記憶された立下り時間に基づいて所定の波高値から立ち下げる立下り波形を生成することができる。そして、駆動波形の立上り及び立下りに関するタイミング制御信号に基づいて駆動波形の幅が決定されるので、設定データ及びタイミング制御信号に基づいて駆動波形を容易に変更することができる。
【0013】
したがって、各インク吐出口からのインク吐出特性に合わせた駆動波形をきめ細かく調整して各インク吐出口から吐出されるインク滴を均一化することができる。また、使用されるインクの粘度等の特性が異なるとインク吐出特性は変化するようになるが、そうした変化に対しても設定データ及びタイミング制御信号を変更することでインクの特性に最適な吐出動作を行なうように容易に調整することができる。
【0014】
また、駆動波形の波高値についても各インク吐出口からのインク吐出特性に合わせて設定できるようにすれば、インク吐出特性に対応したさらにきめ細かい駆動波形の調整を行うことができる。
【0015】
また、前記駆動素子に対応して設定データを記憶しておき、設定データをインク吐出特性に合わせて調整し、補正データにより駆動波形を精度良く生成するように微調整することで、効率よく駆動波形の生成処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】ノズルからインクを吐出するための構成を示す模式図である。
【図3】インクジェット記録装置の動作を制御する回路ブロック構成図である。
【図4】ヘッド駆動回路に関する機能ブロック構成図である。
【図5】駆動波形生成部に関する機能ブロック構成図である。
【図6】生成された駆動波形の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。シート状の記録媒体Pの全幅にわたってインクジェットヘッド100が配置されており、インクジェットヘッド100の下面には方向Xに沿ってライン状にインク吐出口が形成されている。インクジェットヘッド100の下方には、インク吐出口に対向配置された無端状の搬送ベルト101が一対の搬送ローラ102の間に張架されている。そして、記録媒体Pは、搬送ベルト101上に載置されて走査方向Yに搬送されるようになっている。インクジェットヘッド100のインク吐出口からインクを吐出して記録媒体Pの表面に所定のラインの記録動作を行った後、搬送ベルト101を走査方向Yに搬送制御して所定のライン分だけ記録媒体Pを搬送し、次のラインの記録動作を行なう。このような記録動作及び搬送制御を繰り返すことで記録媒体Pの表面に画像等を記録することができる。
【0019】
インクジェットヘッド100は、複数のインク吐出ユニットを備えており、各インク吐出ユニットには、インク吐出口である複数のノズルが形成されている。図2は、各ノズルからインクを吐出するための構成を示す模式図である。インク吐出ユニット110の内部には、インクが充填される圧力室111が形成されており、インク吐出ユニット110の吐出面側にはノズル112が穿設されている。ノズル112と圧力室111との間はインクが流通する流路が形成されている。圧力室111には、図示せぬインクタンクと連通するインク供給路が接続されており、インクタンクからインクが供給されるようになっている。
【0020】
圧力室111の上部には振動板113が取り付けられており、振動板113の上面には圧力室111に対応して駆動素子である圧電素子114が接着固定されている。圧電素子114は、振動板113側の面に下部電極が形成されており、その反対側の面には上部電極が形成されている。
【0021】
圧電素子114は、下部電極及び上部電極の間に駆動信号を印加することで厚み方向と直交する方向に伸縮変形し、それに伴って圧電素子114に接着した振動板113が撓むようになる。振動板113が圧力室111を膨張させる方向に変形することで、圧力室111の膨張により内部圧力が低下して圧力室111内にインクが引き込まれる。その後、振動板113が圧力室111を収縮させる方向に変形することで、圧力室111の収縮により内部圧力が上昇して圧力室111内に滞留するインクがノズル112から吐出されるようになる。
【0022】
図3は、インクジェット記録装置の動作を制御する回路ブロック構成図である。記録動作を制御する記録制御回路30は、外部から入力された記録信号に基づいてヘッド駆動回路31及び搬送駆動回路32を制御して記録動作を行う。ヘッド駆動回路31は、記録制御回路30から送信される基準タイミング制御信号、設定データ及び記録データに基づいてインク吐出ユニット101〜10nの各圧電素子を駆動してインク吐出口からインク滴を吐出させる。
【0023】
基準タイミング制御信号は、記録動作を行うタイミングを決定する信号であり、設定データは、圧電素子の駆動電圧の駆動波形を生成するためのデータである。設定データは、駆動波形の立上り時間及び立下り時間並びに駆動波形の波高値といったパラメータを設定するためのものであり、駆動素子毎のインク吐出特性に合わせて調整される。補正データは、駆動波形を精度良く生成するように微調整するためのデータである。
【0024】
設定データについては、粘度等のインク特性や駆動素子毎のインク吐出特性に合わせてデータを予め決めておき、駆動素子毎の駆動波形を精度良く生成するように補正データで微調整して各駆動素子のインク吐出特性を最適化すればよい。
【0025】
搬送駆動回路32は、記録制御回路30から送信される基準タイミング制御信号及び搬送制御データに基づいて搬送ベルト101の搬送動作を行う搬送モータを駆動制御する。
【0026】
図4は、ヘッド駆動回路31に関する機能ブロック構成図である。記録データ処理部310は、基準タイミング制御信号T1及び記録データ等を記録制御回路30から受信して、記録データD1、設定データD2及び補正データD3をそれぞれ記録データメモリ311、設定データメモリ312及び補正データメモリ313に記憶し、基準タイミング制御信号T1をタイミング制御信号生成部314に送信する。
【0027】
タイミング制御信号生成部314は、受信した基準タイミング制御信号T1並びに記録データメモリ311及び設定データメモリ312から読み出した記録データD1及び設定データD2に基づいてに駆動波形生成部3201〜320nにそれぞれ駆動タイミング制御信号T2を送信する。駆動波形生成部3201〜320nは、それぞれインク吐出ユニット101〜10nに対応して設けられており、各インク吐出ユニットの圧電素子を駆動するための駆動波形をそれぞれ生成して圧電素子に印加する。
【0028】
タイミング制御信号生成部314は、駆動タイミング制御信号T2の送信タイミングをずらす遅延回路を備えている。例えば、カラー記録を行う場合に同一の記録ラインに異なる色のインクを順次吐出する際に、各色に対応するインク吐出ユニットが記録ラインに対向するタイミングに合わせて駆動タイミング制御信号T2を各インク吐出ユニットに送信する必要がある。そのため、各インク吐出ユニットの記録タイミングに合わせて駆動タイミング制御信号T2を遅延回路によりずらして送信することでカラー記録を正確に行うことができるようになる。
【0029】
駆動タイミング制御信号T2は、駆動波形の立上り及び立下りのタイミングを決める信号で、立ち上りに関するタイミング信号及び立下りに関するタイミング信号の間の間隔で駆動波形のパルス幅が決まるようになっている。
【0030】
駆動データ出力部315は、記録データメモリ311、設定データメモリ312及び補正データメモリ313から記録データD1、設定データD2及び補正データD3を読み出してそれぞれ対応する駆動波形に変換し、駆動波形生成部3201〜320nに送信する。
【0031】
図5は、駆動波形生成部3201〜320nに関する機能ブロック構成図である。駆動波形生成部320は、立上り波形生成部321、立下り波形生成部322、波高生成部323及び波形合成部324を備えている。
【0032】
立上り波形生成部321は、設定データD2のうち立上り時間データ及び波高値に基づいて立上り波形を生成する。例えば、ベースとなる電位から波高値の電位に上昇するまでの時間が立上り時間となるように線形的に電位が変化する立上り波形を生成し、駆動タイミング制御信号T2の立上りタイミングに合わせて生成した立上り波形を出力する。
【0033】
立下り波形生成部322は、設定データD2のうち立下り時間データ及び波高値に基づいて立下り波形を生成する。例えば、波高値の電位からベースとなる電位まで低下する時間が立下り時間となるように線形的に電位が変化する立下り波形を生成し、駆動タイミング制御信号T2の立下りタイミングに合わせて生成した立下り波形を出力する。
【0034】
波高生成部323は、立上り波形及び立下り波形の間を波高値の電位が維持されるように生成された波形を出力する。
【0035】
なお、以上説明した例では、波高値を設定データとして記憶して駆動波形生成部に送信するようにしているが、波高値を変更する必要のない場合には駆動波形生成部に予め記憶しておくようにしてもよい。
【0036】
波形合成部324は、立上り波形生成部321、立下り波形生成部322及び波高生成部323で生成された波形を合成して駆動波形を合成し、合成した駆動波形をインク吐出ユニット10の各圧電素子に出力して駆動する。
【0037】
図6は、生成された駆動波形の一例を示すタイミングチャートである。基準タイミング制御信号T1は、記録動作のタイミングに応じて所定時間オンとなる。そして、基準タイミング制御信号T1がオンとなるタイミングから時間t0だけ遅延して駆動タイミング制御信号T2がオンとなる。遅延時間t0は、インク吐出ユニットに対応して設定される時間で、上述したようにカラー記録を行う場合等に記録タイミングをずらすために設定される。
【0038】
駆動タイミング制御信号T2は、駆動波形の立上り及び立下りのタイミングを設定するパルスを有する。この例では、基準タイミング制御信号T1がオンとなってから最初のパルスP1が立ち上るタイミングが第一駆動波形の立上りタイミングとなり、次のパルスP2が立ち上るタイミングが第一駆動波形の立下りタイミングとなる。図6に示す例では、第一駆動波形の次に第二駆動波形が生成されるようになっており、第二駆動波形についても、パルスP3が立ち上るタイミングが第二駆動波形の立上りタイミングとなり、次のパルスP4が立ち上るタイミングが第二駆動波形の立下りタイミングとなる。そして、パルスP1及びP2の間隔W1で第一駆動波形のパルス幅が決まり、パルスP3及びP4の間隔W2で第二駆動波形のパルス幅が決まるようになっている。また、第二駆動波形のタイミングについてもパルスP2及びP3の間隔W3に基づいて設定されるようになる。
【0039】
また、第一駆動波形の立上り波形は、予め設定された立上り時間及び波高値並びにそれらの補正データに基づいて生成され、ベース電位V0から波高値に相当する電位V1まで線形的に上昇するように生成される。この例では、立上り時間は、パルスP1の幅と同一に設定されているが、パルスP1の幅よりも短い時間、あるいは長い時間に設定されていてもよい。また、パルスP1の立下りのタイミングで強制的に電位V1になるようにしてもよい。
【0040】
第一駆動波形の立下り波形は、予め設定された立下り時間及び波高値並びにそれらの補正データに基づいて生成され、波高値に相当する電位V1からベース電位V0まで線形的に低下するように生成される。この例では、立下り時間は、パルスP2の幅と同一に設定されているが、パルスP2の幅よりも短い時間、あるいは長い時間に設定されていてもよい。また、パルスP2の立下りのタイミングで強制的に電位V0になるようにしてもよい。
【0041】
そして、生成された立上り波形はパルスP1の立上りのタイミングで出力され、立下り波形はパルスP2の立上りのタイミングで出力されて、立上り波形及び立下り波形の間を電位V1で維持するように第一駆動波形を生成する。
【0042】
第二駆動波形についても、予め設定された立上り時間及び波高値並びにそれらの補正データに基づいてベース電位V0から波高値に相当する電位V2まで線形的に上昇するように立上り波形が生成され、予め設定された立下り時間及び波高値並びにそれらの補正データに基づいて電位V2からベース電位V0まで線形的に低下するように立下り波形が生成される。そして、パルスP3の立上りのタイミングで立上り波形が出力され、パルスP4の立上りのタイミングで立下り波形が出力されて、立上り波形及び立下り波形の間を電位V2で維持するように第二駆動波形を生成する。
【0043】
このように、駆動タイミング制御信号T2により駆動波形の出力タイミング及びパルス幅を決めることができるので、駆動タイミング制御信号T2の設定を変更することで駆動波形を容易に変更することが可能となる。また、駆動波形の立上り時間、立下り時間及び波高値といったデータを設定して駆動波形を生成するようにしているので、インク特性やインク吐出ユニットのインク吐出特性に合わせて設定データを適宜変更してきめ細かく駆動波形を調整することができる。
【0044】
以上説明した例では、駆動波形として2つの台形状の波形を組み合せたものを生成しているが、1つの台形状の波形や複数の波形を組み合せたものについても駆動タイミング制御信号T2を適宜設定することにより容易に生成することができる。そのため、上記の例に限定されることなく、様々な駆動波形の生成が可能となる。
【0045】
記録動作を行う場合には、まず記録制御回路30が設定データ及び補正データを生成してヘッド駆動回路31に送信する。ヘッド駆動回路31は、送信された設定データ及び補正データを一旦メモリに記憶しておき、記録制御回路30からのデータ更新指令に基づいて駆動波形生成部320に設定データ及び補正データを送信し、データ更新を行う。
【0046】
設定データ及び補正データがセットされた後、記録制御回路30から基準タイミング制御信号T1及び記録データD1がヘッド駆動回路31に送信される。ヘッド駆動回路31では、基準タイミング制御信号に基づいて駆動タイミング制御信号T2が生成されて、生成された駆動タイミング制御信号T2及び記録データD1が駆動波形生成部320に送信され、記録データD1に対応して駆動波形が生成されてインク吐出ユニットに出力される。以後、記録制御回路30から基準タイミング制御信号T1及び新たな記録データD1が送信されて記録動作が行われる。
【符号の説明】
【0047】
100 インクジェットヘッド
101 搬送ベルト
102 搬送ローラ
110 インク吐出ユニット
111 圧力室
112 ノズル
113 振動板
114 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが充填されるとともにインク吐出口に連通する圧力室に対応して駆動素子が設けられたインクジェットヘッドと、前記駆動素子を駆動して前記圧力室内のインクに圧力変動を生じさせて前記インク吐出口からインク滴を吐出させる駆動回路とを備えたインクジェット記録装置において、前記駆動回路は、前記駆動素子を駆動する駆動波形に関する立上り時間及び立下り時間を含む設定データを記憶する記憶手段と、前記駆動波形の立上り及び立下りに関するタイミング制御信号を生成するタイミング制御手段と、前記設定データ及び前記タイミング制御信号に基づいて立上り波形及び立下り波形並びに当該両波形の間に一定の波高値を有する前記駆動波形を生成する波形生成手段とを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記設定データとして前記波高値を記憶しており、前記波形生成手段は、記憶された前記波高値に基づいて前記駆動波形を生成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記駆動素子に対応して前記駆動波形に関する補正データを記憶しており、前記波形生成手段は、前記補正データに基づいて前記駆動素子別の前記駆動波形を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
インクが充填されるとともにインク吐出口に連通する圧力室に対応して設けられた駆動素子を駆動して前記圧力室内のインクに圧力変動を生じさせて前記インク吐出口からインク滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動方法において、前記駆動素子を駆動する駆動波形に関する立上り時間及び立下り時間を含む設定データ及び当該駆動波形の立上り及び立下りに関するタイミング制御信号に基づいて立上り波形及び立下り波形並びに当該両波形の間に一定の波高値を有する前記駆動波形を生成し、生成された前記駆動波形を前記駆動素子に印加することを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−51190(P2011−51190A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201288(P2009−201288)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】