インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
【課題】主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度が異なる場合であっても、高い生産性をもち、高階調で光沢の異方性が少ない画像を記録する。
【解決手段】打滴したドットがX方向に繋がってドット列が形成される場合には、Y方向に連続してドットを間引く。これによりX方向に繋がったドット列が分断され、X方向の光沢が低下する。Y方向については、画素が間引かれた部分については、間引きが連続しているために周期が長く、間引きによる光沢低下が少ない。その結果、X方向の光沢とY方向の光沢との差が小さくなる。
【解決手段】打滴したドットがX方向に繋がってドット列が形成される場合には、Y方向に連続してドットを間引く。これによりX方向に繋がったドット列が分断され、X方向の光沢が低下する。Y方向については、画素が間引かれた部分については、間引きが連続しているために周期が長く、間引きによる光沢低下が少ない。その結果、X方向の光沢とY方向の光沢との差が小さくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に係り、特に主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度とが異なる画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汎用の画像形成装置として、インクジェットヘッドからカラーインクを打滴して、記録媒体上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。このような装置では、印字方法により打滴順や格子形状に異方性が発生する。
【0003】
特に、シャトルスキャン方式のインクジェット記録装置では、インクジェットヘッドの走査方向と記録媒体(基材)の送り方向で、着弾順と格子形状の差が大きく発生する。格子形状は、装置の制約条件と密接に関わり、主にインクジェットヘッドの打滴周波数、走査速度、ノズル密度、パス数(生産性)によって決定される。
【0004】
決定された格子形状は、ヘッド走査方向と基材送り方向とで、打滴密度が異なる場合がある。例えば、高周波吐出が可能でノズル密度が低密度なヘッドを用いる場合は、ヘッド走査方向を基材送り方向より高密度にすることで、単位面積当たりの吐出量を増やし、高濃度の画像を得ることができる。
【0005】
しかし、方向によって密度が異なる場合、格子密度が高い方向には液滴が繋がりやすく高い光沢が得られる。格子密度が低い方向には、凹凸が大きく相対的に低い光沢となるため、方向によって光沢が大きく異なる結果となる。この光沢の差は、特にパイルハイトの高くなる硬化型のインクを用いた場合に顕著となる。さらに、1パスで打滴されたドットが接触する密度で打滴した場合、光沢差はさらに顕著になる。
【0006】
また、マルチパス描画の場合、規則正しい打滴順で打滴すると、打滴順の入れ替わりにより、スワス毎の光沢バンディングが発生するため、方向性のないマスク処理により間引いてバンディングを抑制することが一般的である。
【0007】
例えば、特許文献1には、規則性のないマスクを用いてマルチパス記録を行う方法が開示されている。また特許文献2には、インクの吐出量が所定値以上の領域の記録ドットを間引きパターンを用いて間引く技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−56235号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/018987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、主走査方向に高密度な格子形状の画像を用いて、方向性のないランダムマスクによる間引き処理を行った画像を評価したところ、ヘッド走査方向と基材送り方向ともに光沢が下がり、光沢の方向性による差が残存するという結果を得た。
【0010】
このように、方向性のないマスク処理を用いた場合には、バンディングを抑制することはできるが、光沢の方向性の差は抑制することはできないという課題があった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度が異なる場合であっても、高い生産性をもち、高階調で光沢の異方性が少ない画像を記録可能なインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明のインクジェット記録装置は、入力画像データを取得する取得手段と、前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理手段と、前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理手段であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理手段と、活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録手段であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度が異なる場合であっても、高い生産性をもち、高階調で光沢の異方性が少ない画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェット記録装置の模式図
【図2】異方性の基本格子配置を示す図
【図3】長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図
【図4】記録媒体の表面に形成されたドット群を示す模式図
【図5】長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合の他の作画方法を示す図
【図6】間引きを行った場合の記録媒体の表面に形成されたドット群を示す模式図
【図7】Y方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図
【図8】異方性マスク処理により形成される間引き列の他の形態を示す図
【図9】全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図
【図10】主走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図
【図11】第2の実施形態の作画方法を示す図
【図12】主走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図
【図13】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図14】インクジェット記録装置における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図
【図15】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッド、仮硬化光源及び本硬化光源の配置例を示す平面図
【図16】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示すブロック図
【図17】インクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図
【図18】画像処理部の要部構成を示すブロック図
【図19】入力された画像データを印刷するまでの処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<格子形状と作画方法について(第1の実施形態)>
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100の模式図である。インクジェット記録装置100は、インクジェットヘッド110、インクジェットヘッド110をX方向(主走査方向)に走査可能に構成されたヘッド走査機構(不図示)、記録媒体120をY方向(副走査方向)に移動可能に構成された記録媒体搬送機構(不図示)から構成される。
【0017】
インクジェットヘッド110は、インクを吐出するための複数のノズル112が副走査方向に1列に配置されている。ここでは、ノズル112のピッチを100dpiとする。インクジェットヘッド110は、主走査方向に往復走査されるとともに、吐出制御手段(不図示)の制御に従って各ノズル112からインクを吐出することで、記録媒体120にドットを形成(打滴)し、記録媒体120上に画像を記録する。
【0018】
記録媒体120は、インクジェットヘッド110が主走査方向に走査される度に、記録媒体搬送機構により副走査方向に所定量だけ搬送(走査)される。
【0019】
上記のごとく構成されたインクジェット記録装置100は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度を変更することが可能である。ここでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される例を用いて説明する。
【0020】
この場合、主走査方向は2パス印字(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。すなわち、インクジェットヘッド110の1回の走査(往路)により、300dpiの解像度でドットが形成され、その後のインクジェットヘッド110の1回の走査(復路)により、往路で形成したドット間に300dpiの解像度でドットを形成(補間印字)することで、600dpiの解像度を実現する。
【0021】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、1回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。
【0022】
このように主走査方向と副走査方向とで解像度(画素の密度)が異なる画素の配置を、ここでは異方性の基本格子配置又は非等方性の基本格子配置と呼ぶ。この異方性の基本格子配置としては、図2(a)に示すような長方形の格子配置の他、図2(b)に示すように主走査方向の画素列が1列おきに主走査方向へ半ピッチ分ずらして配置される平行四辺形の格子配置(千鳥配置)等がある。なお、平行四辺形の格子配置は、画素間の繋ぎ方によっては菱形の格子配置とも考えることができる。
【0023】
図3は、図2(a)に示す長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図である。なお、図3に示すマス目は印字解像度における画素(基本打滴候補点)を示しており、円形状の破線は各画素に打滴されたドットの最外周の位置を示している。
【0024】
まず、インクジェットヘッド110が主走査方向に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図3(a)に示す「1」の画素にドットが形成される。前述のように、1回の主走査(1パス)において主走査方向に1画素おきにドットが形成されるが、この1画素おきのドットは、それぞれ主走査方向に繋がる大きさとなっている。
【0025】
したがって、この1回の主走査において形成されたドット群によって、主走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0026】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、再び主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図3(b)に示す「2」の画素にドットが形成される。ここで形成されたドット群によっても、主走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0027】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返すことで、図3(c)〜(h)に示す「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素の順にドットが形成される。図3(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。
【0028】
図4(a)は、図3のようにインクを吐出した場合の、記録媒体120の表面に形成されたドット群を示す模式図であり、図4(b)は、図4(a)に示すドット群のX方向の断面形状及びY方向の断面形状を示す図である。
【0029】
図3(a)を用いて説明したように、形成された各ドットは、X方向に繋がったドット列を形成している。したがって、X方向の表面は、図4(b)に示すように平らな状態となっている。この結果、X方向には高い光沢を得ることができる。
【0030】
これに対し、Y方向の表面は、X方向に繋がったインク列によって凹凸が大きい状態となる。この結果、Y方向はX方向よりも相対的に低い光沢となる。
【0031】
このように、1回の主走査において形成したドットが主走査方向に繋がる大きさとなっている条件で打滴する場合には、打滴順にかかわらず、X方向(主走査方向)に高い光沢となり、Y方向(副走査方向)に相対的に低い光沢となる。
【0032】
例えば、図5(a)、(b)は、図2(a)に示す長方形の格子配置の全画素にドットを形成する場合の他の作画方法の一例であり、各ドットを形成する際のパス数を示した図である。このように各ドットを形成した場合であっても、図3に示した作画方法と同様に、X方向(主走査方向)に高い光沢となり、Y方向(副走査方向)に相対的に低い光沢となる。
【0033】
このように、ドットの形成順にかかわらず光沢差が発生する課題に対し、本願発明者が鋭意検討した結果、ドットの密度(画素の密度)が高い方向とは異なる方向に繋がりが多い(隣接して連続した)画素の間引き(異方性マスク処理)を行うことで、光沢の差を抑制することを見出した。
【0034】
図6(a)は、Y方向に繋がりが多い画素の間引き(3画素連続間引き)を行ってドットを形成した場合の、記録媒体120の表面に形成されたドット群を示す模式図であり、図6(b)は、図6(a)に示すドット群のX方向の断面形状及びY方向の断面形状を示す図である。
【0035】
図6(a)に示すように、Y方向に連続してドットが間引かれていることにより、X方向に繋がったドット列が分断されている。したがって、図6(b)に示すように、X方向の断面形状は凹凸ができた状態となっている。この結果、図4に示す場合よりも、X方向の光沢が低下する。
【0036】
これに対し、Y方向については、X方向に繋がったドット列部分の光沢は図4に示す場合と同様である。さらに、画素が間引かれた部分については、間引きが連続しているために凹凸の周期が長く、間引きによる光沢低下が少ない。その結果、図4に示す場合よりも、X方向の光沢とY方向の光沢との差が小さくなる。
【0037】
図7は、図4(a)に示す長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する際に、副走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図である。図7に示すマス目は画素を示しており、円形状の破線は各画素に形成されたドットの最外周の位置を示している。
【0038】
図3における作画方法と同様に、インクジェットヘッド110が主走査方向に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図7(a)に示す「1」の画素にドットが形成される。ここで、「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、異方性マスク処理によりドットが間引かれて形成されていない画素を示している。
【0039】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図7(b)の「2」の位置にドットが形成される。ここでも「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0040】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返し、図7(c)〜(h)の「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素にドットが形成される。また、「0」の画素は、異方性マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0041】
図7(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。ここでは、異方性マスク処理によってドットが間引かれた画素は空欄となっており、副走査方向に連続した間引き列130及び132が形成されている。同図に示すように、間引き列130は主走査方向1画素×副走査方向3画素で形成され、間引き列132は主走査方向1画素×副走査方向4画素で形成される。
【0042】
このように、主走査方向に画素の密度が高い場合には、主走査方向以外の方向(図7の例では副走査方向)に繋がりが多い画素の間引きを行うことで、画素の密度の高い方向と低い方向との光沢の差を低減することができる。
【0043】
特に、本実施形態のように、1回の主走査において形成されたドット群によって、主走査方向に繋がったドット列が形成される場合には、画像を視認する方向によって光沢の差が発生する。したがって、ここでは、1回の主走査において1画素おきに形成されたドットが主走査方向に繋がる大きさとなっているが、1画素おきに限定されず、1回の主走査において主走査方向にドットが繋がる場合に適用可能である。
【0044】
即ち、1回の主走査において主走査方向にN画素おきにドットを形成し、格子配置の主走査方向の画素の間隔をP、形成されるドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たす場合には、主走査方向のドット列が形成されるため、異方性マスク処理を適用可能である。
【0045】
この異方性マスク処理により形成される間引き列は、主走査方向の繋がりよりも主走査方向以外の方向の繋がりが多ければよく、図7(i)に示す間引き列130や間引き列132の画素数に限定されるものではない。例えば、図8(a)に示す主走査方向2画素×副走査方向3画素の間引き列134、図8(b)に示す主走査方向3画素×副走査方向5画素の間引き列136等、ドット列を大きく分断させるように形成してもよい。
【0046】
また本実施形態では、600dpi×400dpiの解像度の長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合について説明したが、この解像度や格子配置、全画素にドットを形成する場合に限定されるものではない。即ち、形成したドットが繋がることで光沢に差が出る場合に異方性マスク処理を行えばよい。また記録する画像の全ての画素について異方性マスク処理を行う必要はなく、光沢に差が出る程度の密度でドットが形成される領域について行えばよい。
【0047】
また、平行四辺形の格子配置の場合には、格子形状に沿った方向に間引きを行えばよい。即ち、図2(b)に示す平行四辺形の格子配置であれば、X方向に画素の密度が高い(ドットが繋がる)ので、A方向に繋がりが多い画素の間引きを行えばよい。
【0048】
また、実際の画像記録においては、濃度の調整や打滴のランダム性を出してムラを無くす観点から、隣接したドット(連続したドット)を間引かない色調整用マスク処理が行われる。
【0049】
図9は、図4(a)に示す長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する際に、隣接ドットを間引かないマスク処理を行った場合の作画方法を示す図である。図9に示すマス目は画素を示しており、円形状の破線は各画素に形成されたドットの最外周の位置を示している。また図9(a)〜図9(h)において、「0」の画素は、本来であればその主走査においてドットが形成される画素であるが、マスク処理によりドットが間引かれて形成されていない画素を示している。作画方法についてはこれまでと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
図9(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図であり、マスク処理によってドットが間引かれた画素は空欄となっている。同図に示すように、色調整用マスク処理では、隣接したドットは間引かれない。
【0051】
このように、異方性マスク処理では隣接して連続した画素の間引きが行われ、色調整用マスク処理では隣接したドットは間引かれない。この2つのマスク処理を併用した場合のマスクの一例を図10に示す。
【0052】
図10(a)は、X方向には連続で間引かないマスクである。即ち、Y方向にのみ連続したドットが間引かれているか、又はX方向、Y方向のいずれにも隣接せずにドットが間引かれている。
【0053】
図10(b)は、X方向よりもY方向の繋がりが多いマスクである。即ち、X方向に隣接したドットの間引きを禁止してはいないが、Y方向に連続した間引きの方が多くなっている。
【0054】
このように、色調整用マスク処理と異方性マスク処理を併用することで、濃度の調整等と光沢差の抑制とを両立することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、主走査方向に画素の密度が高い場合に副走査方向に間引き列を形成する例について説明したが、本実施形態では、副走査方向に画素の密度が高い場合に主走査方向に間引き列を形成する例について説明する。
【0056】
本実施形態では、400dpi(主走査方向)×600dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。
【0057】
主走査方向は4パス印字(4回の走査)によって400dpiの解像度が実現される。すなわち、インクジェットヘッド110の1回の走査(往路)により、100dpiの解像度でドットが形成され、インクジェットヘッド110の4回の走査(2往復)により、400dpiの解像度を実現する。
【0058】
一方、副走査方向については、インクジェットヘッド110のノズル112のピッチが300dpiで構成されており、1回の主走査(1パス)により副走査方向に300dpiの解像度でドットが形成される。したがって、2パス印字(2回の走査)により補間印字を行うことで600dpiの解像度が実現される。
【0059】
図11は、400dpi×600dpiの長方形の基本格子において、全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図である。なお、図11に示すマス目は印字解像度における画素を示しており、円形状の破線は各画素に打滴されたドットの最外周の位置を示している。
【0060】
まず、インクジェットヘッド110が主走査方向(X方向)に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図11(a)の「1」の位置にドットが形成される。前述のように、1回の主走査(1パス)において副走査方向に1画素おきにドットが形成されるが、この1画素おきのドットは、それぞれ副走査方向に繋がる大きさとなっている。
【0061】
したがって、この1回の主走査において形成されたドット群によって、副走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0062】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、再び主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図11(b)に示す「2」の画素にドットが形成される。ここでは、最初の主走査において形成したドット(「1」の画素)の中間位置にドットを形成している。ここで形成されたドット群によっても、副走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0063】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返すことで、図11(c)〜(h)に示す「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素の順にドットが形成される。図11(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。
【0064】
このようにドットを形成した場合の記録媒体120の表面は、副走査方向に平らな状態となり、主走査方向に凹凸が大きい状態となる。その結果、副走査方向には高い光沢が得られ、主走査方向には副走査方向と比較して相対的に低い光沢となる。即ち、図4(a)において、主走査方向をY方向、副走査方向をX方向とした状態となる。
【0065】
したがって、両方向の光沢の差を低減するためには、主走査方向に繋がりの多い間引き処理を行えばよい。
【0066】
図12は、図9と同様の条件において、全画素にドットを形成する際に、主走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図である。図12に示すマス目は画素を示しており、円形状の破線は各画素に形成されたドットの最外周の位置を示している。
【0067】
図11における作画方法と同様に、インクジェットヘッド110が主走査方向に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図12(a)に示す「1」の画素にドットが形成される。ここで、「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、異方性マスク処理によりドットが間引かれて形成されていない画素を示している。
【0068】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図12(b)の「2」の位置にドットが形成される。ここでも「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、異方性マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0069】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返し、図12(c)〜(h)の「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素にドットが形成される。また、「0」の画素は、異方性マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0070】
図12(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。ここでは、異方性マスク処理によってドットが間引かれた画素は空欄となっており、主走査方向に連続した間引き列138及び140が形成されている。同図に示すように、間引き列138は主走査方向4画素×副走査方向1画素で形成され、間引き列140は主走査方向3画素×副走査方向1画素で形成される。
【0071】
このように、副走査方向に画素の密度が高い場合には、副走査方向以外の方向(図12の例では主走査方向)に繋がりが多い画素の間引きを行うことで、画素の密度の高い方向と低い方向との光沢の差を低減することができる。
【0072】
第1の実施形態と同様に、形成したドットが繋がることで光沢に差が出る場合や、光沢に差が出る領域に異方性マスク処理を行えばよい。例えば、1回の主走査において副走査方向にN画素おきにドットを形成し、格子配置の副走査方向の画素の間隔をP、形成されるドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たす場合には、副走査方向のドット列が形成されるため、異方性マスク処理を適用可能である。
【0073】
なお、主走査方向に画素の密度が高い場合と同様に、主走査方向4画素×副走査方向2画素等の間引き列を形成してドット列を大きく分断させるように形成してもよい。
【0074】
また、前述の色調整用マスク処理を併用することで、濃度の調整等と光沢差の抑制とを両立することができる。
【0075】
<インクジェット記録装置の全体構成>
次に、インクジェット記録装置の具体的な構成について説明する。
【0076】
図13は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタとは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0077】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0078】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bとが搭載されている。
【0079】
仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A、34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0080】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30と共に一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)を「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向、以下、「メディア搬送方向」という。)を「副走査方向」と呼ぶ場合がある。
【0081】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図14参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図13中不図示、図14の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A、32B、本硬化光源34A、34Bから紫外線が照射される。
【0082】
図13において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0083】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0084】
<記録媒体搬送路の説明>
図14は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図14に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(「媒体支持面」という。)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向(X方向)へ移動させる。
【0085】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(「送り出し供給ロール」という。)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、X方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0086】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0087】
<インクジェットヘッドの説明>
図15は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0088】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、透明インク(CL)、白(W)の各色のインク毎に、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図15ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0089】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列を省略する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。
【0090】
色別のノズル列61毎にヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMを、それぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0091】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(「ノズル列の長さ」に相当、「ノズル列幅」という場合がある。)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。即ち、小ドット、中ドット、大ドットの3種類の大きさのドットを形成することができる。
【0092】
本実施形態の異方性マスク処理は、少なくとも大ドットを形成する際に隣接ドットが繋がる場合に行ってもよい。
【0093】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。
【0094】
<紫外線照射装置の配置について>
図15に示したように、インクジェットヘッド24の走査方向(Y方向)の左右両脇に、仮硬化光源32A、32Bが配置される。さらに、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)の下流側に本硬化光源34A、34Bが配置されている。
【0095】
インクジェットヘッド24のノズルから吐出されて記録媒体12上に着弾したインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A、34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。
【0096】
なお、仮硬化光源32A、32B、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中は常時点灯しているものとする。
【0097】
<仮硬化光源の構成例について>
図15に示したように、仮硬化光源32A、32Bは、それぞれ複数個のUV−LED素子33が並べられた構造を有している。2つの仮硬化光源32A、32Bは、共通の構成である。本例では、仮硬化光源32A、32Bとして、X方向に沿って6個のUV−LED素子33が1列に並べたLED素子配列を例示したが、LED素子数及びその配列形態はこの例に限定されない。例えば、複数個のLED素子をX/Y方向にマトリクス状に配置した構成も可能である。
【0098】
この6個のUV−LED素子33は、インクジェットヘッド24のノズル列幅Lwと同じ幅の領域に対して一度にUV照射を行うことができるように並べられている。
【0099】
<本硬化光源の構成例について>
図15に示したように、本硬化光源34A、34Bは、それぞれ複数個のUV−LED素子35が並べられた構造を有している。2つの本硬化光源34A、34Bは、共通の構成である。本例では、本硬化光源34A、34Bとして、Y方向に6個、X方向に2個のUV−LED素子35がマトリクス状に配置されたLED素子配列(6×2)を例示している。
【0100】
UV−LED素子35のX方向の配置は、後述するスワス幅と関連し、キャリッジ30の一度の走査において、ノズル列幅Lwのn分の1(nは正の整数)に対応する幅の領域に対して一度にUV照射を行うことができるように決められる。図3の例では、ノズル列幅Lwの1/2(n=2)の幅の領域を一度に照射可能にUV−LED素子35が配置されている。
【0101】
なお、本硬化光源のLED素子数及びその配列形態は、図15の例に限定されない。また、仮硬化光源32A、32B、本硬化光源34A、34Bの発光源としては、UV−LED素子33、35に限らず、UVランプなどを用いることも可能である。
【0102】
<作画モードについて>
上記のごとく構成されたインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0103】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。まず、1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では、1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0104】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、1回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。
【0105】
なお、本明細書では、主走査方向のパス数と副走査方向のパス数との積を、その作画モードにおけるパス数と呼ぶ。したがって、高生産モードのパス数は、主走査2パス印字×副走査4パス印字=8パスとなる。
【0106】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行される。この解像度は、主走査方向は2パス印字、副走査方向は8パス印字とすることにより得られる。即ち、標準モードのパス数は、主走査2パス印字×副走査8パス印字=16パスとなる。
【0107】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向は12パスによりこの解像度を得ている。即ち、高画質モードのパス数は、主走査4パス印字×副走査12パス印字=48パスとなる。
【0108】
なお、キャリッジ30の主走査速度は、各モードとも1270mm/secである。
【0109】
<インク供給系の説明>
図16は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクカートリッジ36に収容されているインクは、供給ポンプ70によって吸引され、サブタンク72を介してインクジェットヘッド24に送られる。サブタンク72には、内部のインクの圧力を調整するための圧力調整部74が設けられている。
【0110】
圧力調整部74は、バルブ76を介してサブタンク72と連通される加減圧用ポンプ77と、バルブ76と加減圧用ポンプ77との間に設けられる圧力計78と、を具備している。
【0111】
通常の印字時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを吸引する方向に動作し、サブタンク72の内部圧力及びインクジェットヘッド24の内部圧力が負圧に維持される。一方、インクジェットヘッド24のメンテナンス時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを加圧する方向に動作し、サブタンク72の内部及びインクジェットヘッド24の内部が強制的に加圧され、インクジェットヘッド24内のインクがノズルを介して排出される。インクジェットヘッド24から強制的に排出されたインクは、上述したキャップ(図示せず)のインク受けに収容される。
【0112】
<インクジェット記録装置の制御系の説明>
図17はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置202が設けられている。制御装置202としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置202は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置202には、記録媒体搬送制御部204、キャリッジ駆動制御部206、光源制御部208、画像処理部210、吐出制御部212が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0113】
記録媒体搬送制御部204は、記録媒体12(図13参照)の搬送を行うための搬送駆動部214を制御する。搬送駆動部214は、図14に示すニップローラ40駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図13参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、スワス幅単位で副走査方向へ間欠送りされる。
【0114】
図17に示すキャリッジ駆動制御部206は、キャリッジ30(図13参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部216を制御する。主走査駆動部216は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。
【0115】
光源制御部208は、LED駆動回路218を介して仮硬化光源32A、32BのUV−LED素子33の発光量を調整するとともに、LED駆動回路219を介して本硬化光源34A、34BのUV−LED素子35の発光量を調整する制御手段である。
【0116】
LED駆動回路218は、光源制御部208からの指令に応じた電圧値の電圧を出力して、UV−LED素子33の発光量を調整する。また、LED駆動回路219は、光源制御部208からの指令に応じた電圧値の電圧を出力して、UV−LED素子35の発光量を調整する。LEDの発光量の調整は、電圧を変更するのではなく、PWM(Pulse Width Modulation)を用いて駆動波形のDuty比を変更することによって行ってもよいし、電圧値とDuty比の両方を変更してもよい。
【0117】
制御装置202は、操作パネル等の入力装置220、表示装置222が接続されている。
【0118】
入力装置220は、手動による外部操作信号を制御装置202へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置222には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置220を操作することにより、作画モードの選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置222の表示を通じて確認することができる。
【0119】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部224と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース226が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0120】
画像入力インターフェース226を介して入力された画像データは、画像処理部210にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。
【0121】
図18は、画像処理部210の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理部210は、色変換処理部302、ハーフトーン処理部304、及びマスク処理部306から構成される。
【0122】
また図19は、入力された画像データを印刷するまでの処理を示すフローチャートである。前述のように、インクジェット記録装置10は、画像入力インターフェース226を介して印刷用の画像データを取得する(図19のステップS1)。
【0123】
ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理部302は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する(図19のステップS2)。
【0124】
ハーフトーン処理部304は、色変換処理部302により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理を行い、所定の格子形状に配置された各画素の色毎のドットデータに変換する(図19のステップS3)。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0125】
マスク処理部306は、ハーフトーン処理部304において生成されたドットデータに基づいて、異方性マスク処理及び色調整用マスク処理を行う(図19のステップS4)。なお、これらのマスク処理は、各色のドットデータについて、それぞれ同じ位置の画素を間引くように行われる。
【0126】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0127】
吐出制御部212は、画像処理部210において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路228に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部212は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド25の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部224に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路228に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0128】
ヘッド駆動回路228を介してインクジェットヘッド25の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される(図19のステップS5)。
【0129】
情報記憶部224は、制御装置202のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部224は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの発光量情報などが格納されている。
【0130】
エンコーダ230は、主走査駆動部216の駆動用モータ、及び搬送駆動部214の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置202に送られる。エンコーダ230から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12(図13参照)の位置が把握される。
【0131】
センサ232は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ232から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0132】
上記実施形態では、描画ヘッド部(インクジェットヘッド24)が色別に1列のノズル列を有する例を説明したが、ノズルの配列形態はこの例に限定されない。例えば、各色について、2列の千鳥配列、或いは、さらに多列のマトリクス配列その他の2次元配列でもよい。
【0133】
図15のインクジェットヘッド24は、色別のノズル列61が主走査方向(Y方向)に沿って一定のノズル列間ピッチで複数列(インク色数と同数の列)配列されているが、Y方向のノズル列間隔は必ずしも一定でなくてもよい。
【0134】
上記実施形態では、主走査方向についてインクジェットヘッド24の両側に仮硬化光源32A、32Bと本硬化光源34A、34Bを対称的に配置し(中心線に対して線対称に配置)、往復走査(双方向)で打滴及びUV露光を行う例を述べたが、インクジェットヘッド24の片側のみに仮硬化光源、本硬化光源を配置して、一方向走査時に描画を行う態様も可能である。
【0135】
また、上記実施形態では、紫外線硬化型インクを用いて画像を形成したが、紫外線以外の活性光線により硬化するインクを用いる態様も可能である。この場合は、仮硬化光源及び本硬化光源として、当該活性光線を照射可能な光源を用いればよい。
【0136】
上述の実施形態では、ワイドフォーマットインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。ワイドフォーマット以外のインクジェット記録装置への適用も可能である。また、本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々な画像形成装置に適用可能である。
【0137】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0138】
(発明1):入力画像データを取得する取得手段と、前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理手段と、前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理手段であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理手段と、活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録手段であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【0139】
発明1によれば、主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度が異なる場合であっても、高い生産性をもち、高階調で光沢の異方性が少ない画像を記録することができる。
【0140】
(発明2):発明1のインクジェット記録装置において、前記異方性マスク処理手段は、形成するドットが所定の密度以上の場合にドットを間引くことを特徴とする。
【0141】
これにより、必要な部分のみドットを間引くことができ、処理の負荷を減らしつつ、光沢の差を抑制することができる。
【0142】
(発明3):発明1又は2のインクジェット記録装置において、前記生成されたドットデータから隣接したドットを間引かないようにドットを間引く色調整用マスク処理手段を備えたことを特徴とする。
【0143】
これにより、濃度調整を行いつつ、光沢の差を抑制することができる。
【0144】
(発明4):発明1から3のいずれかのインクジェット記録装置において、前記所定の格子形状は、長方形の格子、又は平行四辺形の格子であり、前記第1の方向とは異なる方向は、前記格子に沿った方向であることを特徴とする。
【0145】
このように、長方形の格子や平行四辺形の格子に適用可能であり、適切に異方性マスク処理を行うことができる。
【0146】
(発明5):発明1から4のいずれかのインクジェット記録装置において、前記ノズルを有するインクジェットヘッドを前記記録媒体に対して相対的に前記第1の方向及び第2の方向に走査させる走査手段を備え、前記記録手段は、前記走査手段の1回の走査において前記第1の方向にN画素おきにドットを形成し、前記第1の間隔をP、前記ドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たすことを特徴とする。
【0147】
これにより、ドットが繋がりやすい打滴を行ったときでも光沢の差を抑制することができる。
【0148】
(発明6):発明5のインクジェット記録装置において、前記ノズルは複数のサイズのドットを形成可能であり、最大のドットサイズの直径がRであることを特徴とする。
【0149】
これにより、最大のドットサイズで打滴した場合に光沢の差を抑制することができる。
【0150】
(発明7):発明1から6のいずれかのインクジェット記録装置において、前記記録媒体上に吐出されたインク滴に対して前記活性エネルギーを付与して前記インク滴を硬化させる活性エネルギー付与手段を備えたことを特徴とする。
【0151】
(発明8):発明1から7のいずれかのインクジェット記録装置において、前記活性エネルギーが紫外線であることを特徴とする。
【0152】
(発明9):入力画像データを取得する取得工程と、前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理工程と、前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理工程であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理工程と、活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録工程であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録工程とを備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【符号の説明】
【0153】
10,100…インクジェット記録装置、12,120…記録媒体、24,110…インクジェットヘッド、112…ノズル、210…画像処理部、302…色変換処理部、304…ハーフトーン処理部、306…マスク処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に係り、特に主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度とが異なる画像形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汎用の画像形成装置として、インクジェットヘッドからカラーインクを打滴して、記録媒体上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。このような装置では、印字方法により打滴順や格子形状に異方性が発生する。
【0003】
特に、シャトルスキャン方式のインクジェット記録装置では、インクジェットヘッドの走査方向と記録媒体(基材)の送り方向で、着弾順と格子形状の差が大きく発生する。格子形状は、装置の制約条件と密接に関わり、主にインクジェットヘッドの打滴周波数、走査速度、ノズル密度、パス数(生産性)によって決定される。
【0004】
決定された格子形状は、ヘッド走査方向と基材送り方向とで、打滴密度が異なる場合がある。例えば、高周波吐出が可能でノズル密度が低密度なヘッドを用いる場合は、ヘッド走査方向を基材送り方向より高密度にすることで、単位面積当たりの吐出量を増やし、高濃度の画像を得ることができる。
【0005】
しかし、方向によって密度が異なる場合、格子密度が高い方向には液滴が繋がりやすく高い光沢が得られる。格子密度が低い方向には、凹凸が大きく相対的に低い光沢となるため、方向によって光沢が大きく異なる結果となる。この光沢の差は、特にパイルハイトの高くなる硬化型のインクを用いた場合に顕著となる。さらに、1パスで打滴されたドットが接触する密度で打滴した場合、光沢差はさらに顕著になる。
【0006】
また、マルチパス描画の場合、規則正しい打滴順で打滴すると、打滴順の入れ替わりにより、スワス毎の光沢バンディングが発生するため、方向性のないマスク処理により間引いてバンディングを抑制することが一般的である。
【0007】
例えば、特許文献1には、規則性のないマスクを用いてマルチパス記録を行う方法が開示されている。また特許文献2には、インクの吐出量が所定値以上の領域の記録ドットを間引きパターンを用いて間引く技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−56235号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/018987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、主走査方向に高密度な格子形状の画像を用いて、方向性のないランダムマスクによる間引き処理を行った画像を評価したところ、ヘッド走査方向と基材送り方向ともに光沢が下がり、光沢の方向性による差が残存するという結果を得た。
【0010】
このように、方向性のないマスク処理を用いた場合には、バンディングを抑制することはできるが、光沢の方向性の差は抑制することはできないという課題があった。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度が異なる場合であっても、高い生産性をもち、高階調で光沢の異方性が少ない画像を記録可能なインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明のインクジェット記録装置は、入力画像データを取得する取得手段と、前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理手段と、前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理手段であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理手段と、活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録手段であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度が異なる場合であっても、高い生産性をもち、高階調で光沢の異方性が少ない画像を記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェット記録装置の模式図
【図2】異方性の基本格子配置を示す図
【図3】長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図
【図4】記録媒体の表面に形成されたドット群を示す模式図
【図5】長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合の他の作画方法を示す図
【図6】間引きを行った場合の記録媒体の表面に形成されたドット群を示す模式図
【図7】Y方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図
【図8】異方性マスク処理により形成される間引き列の他の形態を示す図
【図9】全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図
【図10】主走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図
【図11】第2の実施形態の作画方法を示す図
【図12】主走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図
【図13】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図14】インクジェット記録装置における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図
【図15】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッド、仮硬化光源及び本硬化光源の配置例を示す平面図
【図16】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示すブロック図
【図17】インクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図
【図18】画像処理部の要部構成を示すブロック図
【図19】入力された画像データを印刷するまでの処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<格子形状と作画方法について(第1の実施形態)>
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100の模式図である。インクジェット記録装置100は、インクジェットヘッド110、インクジェットヘッド110をX方向(主走査方向)に走査可能に構成されたヘッド走査機構(不図示)、記録媒体120をY方向(副走査方向)に移動可能に構成された記録媒体搬送機構(不図示)から構成される。
【0017】
インクジェットヘッド110は、インクを吐出するための複数のノズル112が副走査方向に1列に配置されている。ここでは、ノズル112のピッチを100dpiとする。インクジェットヘッド110は、主走査方向に往復走査されるとともに、吐出制御手段(不図示)の制御に従って各ノズル112からインクを吐出することで、記録媒体120にドットを形成(打滴)し、記録媒体120上に画像を記録する。
【0018】
記録媒体120は、インクジェットヘッド110が主走査方向に走査される度に、記録媒体搬送機構により副走査方向に所定量だけ搬送(走査)される。
【0019】
上記のごとく構成されたインクジェット記録装置100は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度を変更することが可能である。ここでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される例を用いて説明する。
【0020】
この場合、主走査方向は2パス印字(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。すなわち、インクジェットヘッド110の1回の走査(往路)により、300dpiの解像度でドットが形成され、その後のインクジェットヘッド110の1回の走査(復路)により、往路で形成したドット間に300dpiの解像度でドットを形成(補間印字)することで、600dpiの解像度を実現する。
【0021】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、1回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。
【0022】
このように主走査方向と副走査方向とで解像度(画素の密度)が異なる画素の配置を、ここでは異方性の基本格子配置又は非等方性の基本格子配置と呼ぶ。この異方性の基本格子配置としては、図2(a)に示すような長方形の格子配置の他、図2(b)に示すように主走査方向の画素列が1列おきに主走査方向へ半ピッチ分ずらして配置される平行四辺形の格子配置(千鳥配置)等がある。なお、平行四辺形の格子配置は、画素間の繋ぎ方によっては菱形の格子配置とも考えることができる。
【0023】
図3は、図2(a)に示す長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図である。なお、図3に示すマス目は印字解像度における画素(基本打滴候補点)を示しており、円形状の破線は各画素に打滴されたドットの最外周の位置を示している。
【0024】
まず、インクジェットヘッド110が主走査方向に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図3(a)に示す「1」の画素にドットが形成される。前述のように、1回の主走査(1パス)において主走査方向に1画素おきにドットが形成されるが、この1画素おきのドットは、それぞれ主走査方向に繋がる大きさとなっている。
【0025】
したがって、この1回の主走査において形成されたドット群によって、主走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0026】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、再び主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図3(b)に示す「2」の画素にドットが形成される。ここで形成されたドット群によっても、主走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0027】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返すことで、図3(c)〜(h)に示す「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素の順にドットが形成される。図3(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。
【0028】
図4(a)は、図3のようにインクを吐出した場合の、記録媒体120の表面に形成されたドット群を示す模式図であり、図4(b)は、図4(a)に示すドット群のX方向の断面形状及びY方向の断面形状を示す図である。
【0029】
図3(a)を用いて説明したように、形成された各ドットは、X方向に繋がったドット列を形成している。したがって、X方向の表面は、図4(b)に示すように平らな状態となっている。この結果、X方向には高い光沢を得ることができる。
【0030】
これに対し、Y方向の表面は、X方向に繋がったインク列によって凹凸が大きい状態となる。この結果、Y方向はX方向よりも相対的に低い光沢となる。
【0031】
このように、1回の主走査において形成したドットが主走査方向に繋がる大きさとなっている条件で打滴する場合には、打滴順にかかわらず、X方向(主走査方向)に高い光沢となり、Y方向(副走査方向)に相対的に低い光沢となる。
【0032】
例えば、図5(a)、(b)は、図2(a)に示す長方形の格子配置の全画素にドットを形成する場合の他の作画方法の一例であり、各ドットを形成する際のパス数を示した図である。このように各ドットを形成した場合であっても、図3に示した作画方法と同様に、X方向(主走査方向)に高い光沢となり、Y方向(副走査方向)に相対的に低い光沢となる。
【0033】
このように、ドットの形成順にかかわらず光沢差が発生する課題に対し、本願発明者が鋭意検討した結果、ドットの密度(画素の密度)が高い方向とは異なる方向に繋がりが多い(隣接して連続した)画素の間引き(異方性マスク処理)を行うことで、光沢の差を抑制することを見出した。
【0034】
図6(a)は、Y方向に繋がりが多い画素の間引き(3画素連続間引き)を行ってドットを形成した場合の、記録媒体120の表面に形成されたドット群を示す模式図であり、図6(b)は、図6(a)に示すドット群のX方向の断面形状及びY方向の断面形状を示す図である。
【0035】
図6(a)に示すように、Y方向に連続してドットが間引かれていることにより、X方向に繋がったドット列が分断されている。したがって、図6(b)に示すように、X方向の断面形状は凹凸ができた状態となっている。この結果、図4に示す場合よりも、X方向の光沢が低下する。
【0036】
これに対し、Y方向については、X方向に繋がったドット列部分の光沢は図4に示す場合と同様である。さらに、画素が間引かれた部分については、間引きが連続しているために凹凸の周期が長く、間引きによる光沢低下が少ない。その結果、図4に示す場合よりも、X方向の光沢とY方向の光沢との差が小さくなる。
【0037】
図7は、図4(a)に示す長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する際に、副走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図である。図7に示すマス目は画素を示しており、円形状の破線は各画素に形成されたドットの最外周の位置を示している。
【0038】
図3における作画方法と同様に、インクジェットヘッド110が主走査方向に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図7(a)に示す「1」の画素にドットが形成される。ここで、「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、異方性マスク処理によりドットが間引かれて形成されていない画素を示している。
【0039】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図7(b)の「2」の位置にドットが形成される。ここでも「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0040】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返し、図7(c)〜(h)の「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素にドットが形成される。また、「0」の画素は、異方性マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0041】
図7(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。ここでは、異方性マスク処理によってドットが間引かれた画素は空欄となっており、副走査方向に連続した間引き列130及び132が形成されている。同図に示すように、間引き列130は主走査方向1画素×副走査方向3画素で形成され、間引き列132は主走査方向1画素×副走査方向4画素で形成される。
【0042】
このように、主走査方向に画素の密度が高い場合には、主走査方向以外の方向(図7の例では副走査方向)に繋がりが多い画素の間引きを行うことで、画素の密度の高い方向と低い方向との光沢の差を低減することができる。
【0043】
特に、本実施形態のように、1回の主走査において形成されたドット群によって、主走査方向に繋がったドット列が形成される場合には、画像を視認する方向によって光沢の差が発生する。したがって、ここでは、1回の主走査において1画素おきに形成されたドットが主走査方向に繋がる大きさとなっているが、1画素おきに限定されず、1回の主走査において主走査方向にドットが繋がる場合に適用可能である。
【0044】
即ち、1回の主走査において主走査方向にN画素おきにドットを形成し、格子配置の主走査方向の画素の間隔をP、形成されるドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たす場合には、主走査方向のドット列が形成されるため、異方性マスク処理を適用可能である。
【0045】
この異方性マスク処理により形成される間引き列は、主走査方向の繋がりよりも主走査方向以外の方向の繋がりが多ければよく、図7(i)に示す間引き列130や間引き列132の画素数に限定されるものではない。例えば、図8(a)に示す主走査方向2画素×副走査方向3画素の間引き列134、図8(b)に示す主走査方向3画素×副走査方向5画素の間引き列136等、ドット列を大きく分断させるように形成してもよい。
【0046】
また本実施形態では、600dpi×400dpiの解像度の長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する場合について説明したが、この解像度や格子配置、全画素にドットを形成する場合に限定されるものではない。即ち、形成したドットが繋がることで光沢に差が出る場合に異方性マスク処理を行えばよい。また記録する画像の全ての画素について異方性マスク処理を行う必要はなく、光沢に差が出る程度の密度でドットが形成される領域について行えばよい。
【0047】
また、平行四辺形の格子配置の場合には、格子形状に沿った方向に間引きを行えばよい。即ち、図2(b)に示す平行四辺形の格子配置であれば、X方向に画素の密度が高い(ドットが繋がる)ので、A方向に繋がりが多い画素の間引きを行えばよい。
【0048】
また、実際の画像記録においては、濃度の調整や打滴のランダム性を出してムラを無くす観点から、隣接したドット(連続したドット)を間引かない色調整用マスク処理が行われる。
【0049】
図9は、図4(a)に示す長方形の格子配置において、全画素にドットを形成する際に、隣接ドットを間引かないマスク処理を行った場合の作画方法を示す図である。図9に示すマス目は画素を示しており、円形状の破線は各画素に形成されたドットの最外周の位置を示している。また図9(a)〜図9(h)において、「0」の画素は、本来であればその主走査においてドットが形成される画素であるが、マスク処理によりドットが間引かれて形成されていない画素を示している。作画方法についてはこれまでと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
図9(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図であり、マスク処理によってドットが間引かれた画素は空欄となっている。同図に示すように、色調整用マスク処理では、隣接したドットは間引かれない。
【0051】
このように、異方性マスク処理では隣接して連続した画素の間引きが行われ、色調整用マスク処理では隣接したドットは間引かれない。この2つのマスク処理を併用した場合のマスクの一例を図10に示す。
【0052】
図10(a)は、X方向には連続で間引かないマスクである。即ち、Y方向にのみ連続したドットが間引かれているか、又はX方向、Y方向のいずれにも隣接せずにドットが間引かれている。
【0053】
図10(b)は、X方向よりもY方向の繋がりが多いマスクである。即ち、X方向に隣接したドットの間引きを禁止してはいないが、Y方向に連続した間引きの方が多くなっている。
【0054】
このように、色調整用マスク処理と異方性マスク処理を併用することで、濃度の調整等と光沢差の抑制とを両立することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、主走査方向に画素の密度が高い場合に副走査方向に間引き列を形成する例について説明したが、本実施形態では、副走査方向に画素の密度が高い場合に主走査方向に間引き列を形成する例について説明する。
【0056】
本実施形態では、400dpi(主走査方向)×600dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。
【0057】
主走査方向は4パス印字(4回の走査)によって400dpiの解像度が実現される。すなわち、インクジェットヘッド110の1回の走査(往路)により、100dpiの解像度でドットが形成され、インクジェットヘッド110の4回の走査(2往復)により、400dpiの解像度を実現する。
【0058】
一方、副走査方向については、インクジェットヘッド110のノズル112のピッチが300dpiで構成されており、1回の主走査(1パス)により副走査方向に300dpiの解像度でドットが形成される。したがって、2パス印字(2回の走査)により補間印字を行うことで600dpiの解像度が実現される。
【0059】
図11は、400dpi×600dpiの長方形の基本格子において、全画素にドットを形成する場合の作画方法を示す図である。なお、図11に示すマス目は印字解像度における画素を示しており、円形状の破線は各画素に打滴されたドットの最外周の位置を示している。
【0060】
まず、インクジェットヘッド110が主走査方向(X方向)に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図11(a)の「1」の位置にドットが形成される。前述のように、1回の主走査(1パス)において副走査方向に1画素おきにドットが形成されるが、この1画素おきのドットは、それぞれ副走査方向に繋がる大きさとなっている。
【0061】
したがって、この1回の主走査において形成されたドット群によって、副走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0062】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、再び主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図11(b)に示す「2」の画素にドットが形成される。ここでは、最初の主走査において形成したドット(「1」の画素)の中間位置にドットを形成している。ここで形成されたドット群によっても、副走査方向に繋がったドット列が形成される。
【0063】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返すことで、図11(c)〜(h)に示す「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素の順にドットが形成される。図11(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。
【0064】
このようにドットを形成した場合の記録媒体120の表面は、副走査方向に平らな状態となり、主走査方向に凹凸が大きい状態となる。その結果、副走査方向には高い光沢が得られ、主走査方向には副走査方向と比較して相対的に低い光沢となる。即ち、図4(a)において、主走査方向をY方向、副走査方向をX方向とした状態となる。
【0065】
したがって、両方向の光沢の差を低減するためには、主走査方向に繋がりの多い間引き処理を行えばよい。
【0066】
図12は、図9と同様の条件において、全画素にドットを形成する際に、主走査方向に繋がりが多くなるように画素を間引くマスク処理を行った場合の作画方法を示す図である。図12に示すマス目は画素を示しており、円形状の破線は各画素に形成されたドットの最外周の位置を示している。
【0067】
図11における作画方法と同様に、インクジェットヘッド110が主走査方向に1回走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図12(a)に示す「1」の画素にドットが形成される。ここで、「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、異方性マスク処理によりドットが間引かれて形成されていない画素を示している。
【0068】
次に、インクジェットヘッド110が副走査方向に所定量走査された後、主走査方向に走査され、ノズル112からインクが吐出されることで、図12(b)の「2」の位置にドットが形成される。ここでも「0」の画素は、本来であれば今回の主走査においてドットが形成される画素であるが、異方性マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0069】
以後、同様に主走査と副走査を繰り返し、図12(c)〜(h)の「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」の画素にドットが形成される。また、「0」の画素は、異方性マスク処理によりドットが間引かれた画素を示している。
【0070】
図12(i)は、ドットが形成された画素について、形成された際のパス数を示した図である。ここでは、異方性マスク処理によってドットが間引かれた画素は空欄となっており、主走査方向に連続した間引き列138及び140が形成されている。同図に示すように、間引き列138は主走査方向4画素×副走査方向1画素で形成され、間引き列140は主走査方向3画素×副走査方向1画素で形成される。
【0071】
このように、副走査方向に画素の密度が高い場合には、副走査方向以外の方向(図12の例では主走査方向)に繋がりが多い画素の間引きを行うことで、画素の密度の高い方向と低い方向との光沢の差を低減することができる。
【0072】
第1の実施形態と同様に、形成したドットが繋がることで光沢に差が出る場合や、光沢に差が出る領域に異方性マスク処理を行えばよい。例えば、1回の主走査において副走査方向にN画素おきにドットを形成し、格子配置の副走査方向の画素の間隔をP、形成されるドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たす場合には、副走査方向のドット列が形成されるため、異方性マスク処理を適用可能である。
【0073】
なお、主走査方向に画素の密度が高い場合と同様に、主走査方向4画素×副走査方向2画素等の間引き列を形成してドット列を大きく分断させるように形成してもよい。
【0074】
また、前述の色調整用マスク処理を併用することで、濃度の調整等と光沢差の抑制とを両立することができる。
【0075】
<インクジェット記録装置の全体構成>
次に、インクジェット記録装置の具体的な構成について説明する。
【0076】
図13は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタとは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0077】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0078】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bとが搭載されている。
【0079】
仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A、34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0080】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30と共に一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)を「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向、以下、「メディア搬送方向」という。)を「副走査方向」と呼ぶ場合がある。
【0081】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図14参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図13中不図示、図14の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A、32B、本硬化光源34A、34Bから紫外線が照射される。
【0082】
図13において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0083】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0084】
<記録媒体搬送路の説明>
図14は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図14に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(「媒体支持面」という。)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向(X方向)へ移動させる。
【0085】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(「送り出し供給ロール」という。)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、X方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0086】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0087】
<インクジェットヘッドの説明>
図15は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0088】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、透明インク(CL)、白(W)の各色のインク毎に、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図15ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0089】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列を省略する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。
【0090】
色別のノズル列61毎にヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMを、それぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0091】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(「ノズル列の長さ」に相当、「ノズル列幅」という場合がある。)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。即ち、小ドット、中ドット、大ドットの3種類の大きさのドットを形成することができる。
【0092】
本実施形態の異方性マスク処理は、少なくとも大ドットを形成する際に隣接ドットが繋がる場合に行ってもよい。
【0093】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。
【0094】
<紫外線照射装置の配置について>
図15に示したように、インクジェットヘッド24の走査方向(Y方向)の左右両脇に、仮硬化光源32A、32Bが配置される。さらに、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)の下流側に本硬化光源34A、34Bが配置されている。
【0095】
インクジェットヘッド24のノズルから吐出されて記録媒体12上に着弾したインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A、34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。
【0096】
なお、仮硬化光源32A、32B、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中は常時点灯しているものとする。
【0097】
<仮硬化光源の構成例について>
図15に示したように、仮硬化光源32A、32Bは、それぞれ複数個のUV−LED素子33が並べられた構造を有している。2つの仮硬化光源32A、32Bは、共通の構成である。本例では、仮硬化光源32A、32Bとして、X方向に沿って6個のUV−LED素子33が1列に並べたLED素子配列を例示したが、LED素子数及びその配列形態はこの例に限定されない。例えば、複数個のLED素子をX/Y方向にマトリクス状に配置した構成も可能である。
【0098】
この6個のUV−LED素子33は、インクジェットヘッド24のノズル列幅Lwと同じ幅の領域に対して一度にUV照射を行うことができるように並べられている。
【0099】
<本硬化光源の構成例について>
図15に示したように、本硬化光源34A、34Bは、それぞれ複数個のUV−LED素子35が並べられた構造を有している。2つの本硬化光源34A、34Bは、共通の構成である。本例では、本硬化光源34A、34Bとして、Y方向に6個、X方向に2個のUV−LED素子35がマトリクス状に配置されたLED素子配列(6×2)を例示している。
【0100】
UV−LED素子35のX方向の配置は、後述するスワス幅と関連し、キャリッジ30の一度の走査において、ノズル列幅Lwのn分の1(nは正の整数)に対応する幅の領域に対して一度にUV照射を行うことができるように決められる。図3の例では、ノズル列幅Lwの1/2(n=2)の幅の領域を一度に照射可能にUV−LED素子35が配置されている。
【0101】
なお、本硬化光源のLED素子数及びその配列形態は、図15の例に限定されない。また、仮硬化光源32A、32B、本硬化光源34A、34Bの発光源としては、UV−LED素子33、35に限らず、UVランプなどを用いることも可能である。
【0102】
<作画モードについて>
上記のごとく構成されたインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0103】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。まず、1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では、1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0104】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、1回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。
【0105】
なお、本明細書では、主走査方向のパス数と副走査方向のパス数との積を、その作画モードにおけるパス数と呼ぶ。したがって、高生産モードのパス数は、主走査2パス印字×副走査4パス印字=8パスとなる。
【0106】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行される。この解像度は、主走査方向は2パス印字、副走査方向は8パス印字とすることにより得られる。即ち、標準モードのパス数は、主走査2パス印字×副走査8パス印字=16パスとなる。
【0107】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向は12パスによりこの解像度を得ている。即ち、高画質モードのパス数は、主走査4パス印字×副走査12パス印字=48パスとなる。
【0108】
なお、キャリッジ30の主走査速度は、各モードとも1270mm/secである。
【0109】
<インク供給系の説明>
図16は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクカートリッジ36に収容されているインクは、供給ポンプ70によって吸引され、サブタンク72を介してインクジェットヘッド24に送られる。サブタンク72には、内部のインクの圧力を調整するための圧力調整部74が設けられている。
【0110】
圧力調整部74は、バルブ76を介してサブタンク72と連通される加減圧用ポンプ77と、バルブ76と加減圧用ポンプ77との間に設けられる圧力計78と、を具備している。
【0111】
通常の印字時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを吸引する方向に動作し、サブタンク72の内部圧力及びインクジェットヘッド24の内部圧力が負圧に維持される。一方、インクジェットヘッド24のメンテナンス時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを加圧する方向に動作し、サブタンク72の内部及びインクジェットヘッド24の内部が強制的に加圧され、インクジェットヘッド24内のインクがノズルを介して排出される。インクジェットヘッド24から強制的に排出されたインクは、上述したキャップ(図示せず)のインク受けに収容される。
【0112】
<インクジェット記録装置の制御系の説明>
図17はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置202が設けられている。制御装置202としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置202は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置202には、記録媒体搬送制御部204、キャリッジ駆動制御部206、光源制御部208、画像処理部210、吐出制御部212が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0113】
記録媒体搬送制御部204は、記録媒体12(図13参照)の搬送を行うための搬送駆動部214を制御する。搬送駆動部214は、図14に示すニップローラ40駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図13参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、スワス幅単位で副走査方向へ間欠送りされる。
【0114】
図17に示すキャリッジ駆動制御部206は、キャリッジ30(図13参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部216を制御する。主走査駆動部216は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。
【0115】
光源制御部208は、LED駆動回路218を介して仮硬化光源32A、32BのUV−LED素子33の発光量を調整するとともに、LED駆動回路219を介して本硬化光源34A、34BのUV−LED素子35の発光量を調整する制御手段である。
【0116】
LED駆動回路218は、光源制御部208からの指令に応じた電圧値の電圧を出力して、UV−LED素子33の発光量を調整する。また、LED駆動回路219は、光源制御部208からの指令に応じた電圧値の電圧を出力して、UV−LED素子35の発光量を調整する。LEDの発光量の調整は、電圧を変更するのではなく、PWM(Pulse Width Modulation)を用いて駆動波形のDuty比を変更することによって行ってもよいし、電圧値とDuty比の両方を変更してもよい。
【0117】
制御装置202は、操作パネル等の入力装置220、表示装置222が接続されている。
【0118】
入力装置220は、手動による外部操作信号を制御装置202へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置222には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置220を操作することにより、作画モードの選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置222の表示を通じて確認することができる。
【0119】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部224と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース226が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0120】
画像入力インターフェース226を介して入力された画像データは、画像処理部210にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。
【0121】
図18は、画像処理部210の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理部210は、色変換処理部302、ハーフトーン処理部304、及びマスク処理部306から構成される。
【0122】
また図19は、入力された画像データを印刷するまでの処理を示すフローチャートである。前述のように、インクジェット記録装置10は、画像入力インターフェース226を介して印刷用の画像データを取得する(図19のステップS1)。
【0123】
ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理部302は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する(図19のステップS2)。
【0124】
ハーフトーン処理部304は、色変換処理部302により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理を行い、所定の格子形状に配置された各画素の色毎のドットデータに変換する(図19のステップS3)。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0125】
マスク処理部306は、ハーフトーン処理部304において生成されたドットデータに基づいて、異方性マスク処理及び色調整用マスク処理を行う(図19のステップS4)。なお、これらのマスク処理は、各色のドットデータについて、それぞれ同じ位置の画素を間引くように行われる。
【0126】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0127】
吐出制御部212は、画像処理部210において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路228に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部212は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド25の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部224に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路228に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0128】
ヘッド駆動回路228を介してインクジェットヘッド25の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される(図19のステップS5)。
【0129】
情報記憶部224は、制御装置202のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部224は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの発光量情報などが格納されている。
【0130】
エンコーダ230は、主走査駆動部216の駆動用モータ、及び搬送駆動部214の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置202に送られる。エンコーダ230から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12(図13参照)の位置が把握される。
【0131】
センサ232は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ232から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0132】
上記実施形態では、描画ヘッド部(インクジェットヘッド24)が色別に1列のノズル列を有する例を説明したが、ノズルの配列形態はこの例に限定されない。例えば、各色について、2列の千鳥配列、或いは、さらに多列のマトリクス配列その他の2次元配列でもよい。
【0133】
図15のインクジェットヘッド24は、色別のノズル列61が主走査方向(Y方向)に沿って一定のノズル列間ピッチで複数列(インク色数と同数の列)配列されているが、Y方向のノズル列間隔は必ずしも一定でなくてもよい。
【0134】
上記実施形態では、主走査方向についてインクジェットヘッド24の両側に仮硬化光源32A、32Bと本硬化光源34A、34Bを対称的に配置し(中心線に対して線対称に配置)、往復走査(双方向)で打滴及びUV露光を行う例を述べたが、インクジェットヘッド24の片側のみに仮硬化光源、本硬化光源を配置して、一方向走査時に描画を行う態様も可能である。
【0135】
また、上記実施形態では、紫外線硬化型インクを用いて画像を形成したが、紫外線以外の活性光線により硬化するインクを用いる態様も可能である。この場合は、仮硬化光源及び本硬化光源として、当該活性光線を照射可能な光源を用いればよい。
【0136】
上述の実施形態では、ワイドフォーマットインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。ワイドフォーマット以外のインクジェット記録装置への適用も可能である。また、本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々な画像形成装置に適用可能である。
【0137】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0138】
(発明1):入力画像データを取得する取得手段と、前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理手段と、前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理手段であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理手段と、活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録手段であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【0139】
発明1によれば、主走査方向の記録密度と副走査方向の記録密度が異なる場合であっても、高い生産性をもち、高階調で光沢の異方性が少ない画像を記録することができる。
【0140】
(発明2):発明1のインクジェット記録装置において、前記異方性マスク処理手段は、形成するドットが所定の密度以上の場合にドットを間引くことを特徴とする。
【0141】
これにより、必要な部分のみドットを間引くことができ、処理の負荷を減らしつつ、光沢の差を抑制することができる。
【0142】
(発明3):発明1又は2のインクジェット記録装置において、前記生成されたドットデータから隣接したドットを間引かないようにドットを間引く色調整用マスク処理手段を備えたことを特徴とする。
【0143】
これにより、濃度調整を行いつつ、光沢の差を抑制することができる。
【0144】
(発明4):発明1から3のいずれかのインクジェット記録装置において、前記所定の格子形状は、長方形の格子、又は平行四辺形の格子であり、前記第1の方向とは異なる方向は、前記格子に沿った方向であることを特徴とする。
【0145】
このように、長方形の格子や平行四辺形の格子に適用可能であり、適切に異方性マスク処理を行うことができる。
【0146】
(発明5):発明1から4のいずれかのインクジェット記録装置において、前記ノズルを有するインクジェットヘッドを前記記録媒体に対して相対的に前記第1の方向及び第2の方向に走査させる走査手段を備え、前記記録手段は、前記走査手段の1回の走査において前記第1の方向にN画素おきにドットを形成し、前記第1の間隔をP、前記ドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たすことを特徴とする。
【0147】
これにより、ドットが繋がりやすい打滴を行ったときでも光沢の差を抑制することができる。
【0148】
(発明6):発明5のインクジェット記録装置において、前記ノズルは複数のサイズのドットを形成可能であり、最大のドットサイズの直径がRであることを特徴とする。
【0149】
これにより、最大のドットサイズで打滴した場合に光沢の差を抑制することができる。
【0150】
(発明7):発明1から6のいずれかのインクジェット記録装置において、前記記録媒体上に吐出されたインク滴に対して前記活性エネルギーを付与して前記インク滴を硬化させる活性エネルギー付与手段を備えたことを特徴とする。
【0151】
(発明8):発明1から7のいずれかのインクジェット記録装置において、前記活性エネルギーが紫外線であることを特徴とする。
【0152】
(発明9):入力画像データを取得する取得工程と、前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理工程と、前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理工程であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理工程と、活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録工程であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録工程とを備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【符号の説明】
【0153】
10,100…インクジェット記録装置、12,120…記録媒体、24,110…インクジェットヘッド、112…ノズル、210…画像処理部、302…色変換処理部、304…ハーフトーン処理部、306…マスク処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データを取得する取得手段と、
前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理手段と、
前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理手段であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理手段と、
活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録手段であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記異方性マスク処理手段は、形成するドットが所定の密度以上の場合にドットを間引くことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記生成されたドットデータから隣接したドットを間引かないようにドットを間引く色調整用マスク処理手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記所定の格子形状は、長方形の格子、又は平行四辺形の格子であり、前記第1の方向とは異なる方向は、前記格子に沿った方向であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ノズルを有するインクジェットヘッドを前記記録媒体に対して相対的に前記第1の方向及び第2の方向に走査させる走査手段を備え、
前記記録手段は、前記走査手段の1回の走査において前記第1の方向にN画素おきにドットを形成し、
前記第1の間隔をP、前記ドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ノズルは複数のサイズのドットを形成可能であり、最大のドットサイズの直径がRであることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体上に吐出されたインク滴に対して前記活性エネルギーを付与して前記インク滴を硬化させる活性エネルギー付与手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記活性エネルギーが紫外線であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
入力画像データを取得する取得工程と、
前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理工程と、
前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理工程であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理工程と、
活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録工程であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項1】
入力画像データを取得する取得手段と、
前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理手段と、
前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理手段であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理手段と、
活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録手段であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記異方性マスク処理手段は、形成するドットが所定の密度以上の場合にドットを間引くことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記生成されたドットデータから隣接したドットを間引かないようにドットを間引く色調整用マスク処理手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記所定の格子形状は、長方形の格子、又は平行四辺形の格子であり、前記第1の方向とは異なる方向は、前記格子に沿った方向であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ノズルを有するインクジェットヘッドを前記記録媒体に対して相対的に前記第1の方向及び第2の方向に走査させる走査手段を備え、
前記記録手段は、前記走査手段の1回の走査において前記第1の方向にN画素おきにドットを形成し、
前記第1の間隔をP、前記ドットの直径をRとしたとき、P≦R/Nを満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ノズルは複数のサイズのドットを形成可能であり、最大のドットサイズの直径がRであることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体上に吐出されたインク滴に対して前記活性エネルギーを付与して前記インク滴を硬化させる活性エネルギー付与手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記活性エネルギーが紫外線であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
入力画像データを取得する取得工程と、
前記取得した入力画像データから、所定の格子形状に配置された各画素であって、第1の方向に第1の間隔で配置され、前記第1の方向と直交する第2の方向に前記第1の間隔より大きい第2の間隔で配置された各画素のドット形成の状態を示すドットデータを生成する画像処理工程と、
前記生成されたドットデータから隣接したドットを連続して間引く異方性マスク処理工程であって、前記第1の方向に連続して間引かれたドットよりも前記第1の方向とは異なる方向に連続して間引かれたドットの方が多くなるようにドットを間引く異方性マスク処理工程と、
活性エネルギーの付与により硬化する硬化性インクをノズルから吐出する記録工程であって、前記ドットが間引かれたドットデータに基づいて各画素にドットを形成して記録媒体上に画像を記録する記録工程と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−6285(P2013−6285A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138812(P2011−138812)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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