説明

インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法

【課題】画像劣化やノズルの耐久性の低下を抑制しながらも、画質の変化を抑制する。
【解決手段】画像データに応じた印字色に所定の色が含まれているかどうかによって、使用ノズルの分散化制御を行うか行わないかを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを記録媒体に吐出して画像を形成するインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドに設けられた複数のノズルからインクを記録媒体上に吐出して画像を形成する。インクを吐出する方法として、ノズル近傍のヒータを用いてインクを加熱したときに生じる気泡圧力によってインクを押し出すものが一般的に知られている。インクの吐出量は、記録ヘッドの温度、直接的にはヒータ近傍のインクの温度に影響を受ける。記録ヘッドの温度が高いほど、インクの吐出量は多くなる傾向にある。
【0003】
ここで、記録ヘッドに設けられた複数のノズルのうちある特定のノズルから集中的にインクを吐出すると、そのノズルのみインクの温度が高くなり、それにより、そのノズルからのインクの吐出量が多くなり、形成する画像の画質に悪影響を及ぼすことがある。また、長期間に渡ってある特定のノズルから集中的にインクを吐出すると、インク中の染料や不純物が熱によって凝固して堆積し、そのノズルからのインクの吐出不良等の悪影響が生じる。
【0004】
図10は、ノズルの集中使用による画質・耐久性劣化を説明するための図である。
【0005】
図10に示すように、外枠のある画像を大量に印刷すると、頻繁に使用されるノズルができる(図10に示したものでは、外枠の上の線を印刷するノズルを例として挙げている)。この結果、頻繁に使用されるノズル周辺のヘッド温度が上がり、インクの吐出量が増えてしまい、そのノズルで形成される線が太くなる等の画質劣化が生じる。さらに、ノズルが頻繁に使われると、そのノズルの耐久寿命が短くなってしまうという問題も生じる。
【0006】
そこで、特許文献1には、画像データと画像データを形成するノズルとの対応関係を切り替えて、画像形成に使用するノズルを分散化する方法が開示されている。具体的には、インクを吐出しないノズルの数を変えていくことにより、画像データと複数のノズルとの対応関係をノズルの配列方向にずらしていく方法が開示されている。また、同じ階調値に対応したドットマトリクスのドットパターンを複数持ち、前記ドットパターンを切り替える方法も提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-66821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、画像データと複数のノズルとの対応関係を変えた場合、形成された画像の画質が変化してしまうことがある。ページ毎に画像データと複数のノズルの対応関係を変える場合、形成される画像のある1点に注目すると、その1点にインクを吐出するためのノズルがページ毎に変化する。インクの吐出特性はノズル毎に異なるので、その結果、ページ毎に画質が変化してしまうことがある。この画質の変化は、特に写真等の高画質・高精細を要求される画像を印刷する場合に問題になる。また、同じ画像を複数枚印刷する場合、同じ画像の印刷出力物を容易に比較できるため、画質の変化が目立ってしまう。
【0009】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、画像劣化やノズルの耐久性の低下を抑制しながらも、画質の変化を抑制することができるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、
インクを吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドを用い、入力された画像データを前記複数のノズルに対応づけ、該対応づけによる対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記画像データに応じた印字色の画像を記録媒体に形成するインクジェット記録装置であって、
前記画像データに応じた印字色に所定の色が含まれているかどうかを判定する色判定手段と、
前記画像データと前記複数のノズルとの対応関係を前記記録媒体のページ毎に変更する変更手段と、
前記色判定手段にて前記所定の色が含まれていないと判定された場合、前記変更手段によって変更されていない対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出し、また、前記色判定手段にて前記所定の色が含まれていると判定された場合、前記変更手段によって変更された対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出するように前記画像データに応じた画像の形成を制御するモード制御手段とを有する。
【0011】
また、インクを吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドを用い、入力された画像データを前記複数のノズルに対応づけ、該対応づけによる対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記画像データに応じた印字色の画像を記録媒体に形成する記録方法であって、
前記画像データに応じた印字色に所定の色が含まれているかどうかを判定し、
前記画像データに応じた印字色に前記所定の色が含まれていない場合、前記対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出し、また、前記画像データに応じた印字色に前記所定の色が含まれている場合、前記対応関係を前記記録媒体のページ毎に変更した対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出して前記画像データに応じた画像を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述したように構成されているので、長期間に渡ってある特定のノズルから集中的に吐出されると熱によって染料や不純物が凝固して堆積して当該ノズルからの吐出不良等の悪影響が生じやすい組成からなるインクが含まれる印字色による印字については、画質劣化やノズル耐久性を向上させることができ、また、インクの吐出不良等の悪影響が生じやすい組成からなるインクが含まれていない印字色による印字については、画像データと画像形成に使用するノズルの対応関係を変更することによる画質変化を抑制することができ、それにより、画像劣化やノズルの耐久性の低下を抑制しながらも、画質の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の実施の一形態を示す斜視概略図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録装置のシステム概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した印刷制御部に設定された、インク色とそれによるノズル分散制御の要否を対応づけたテーブルを示す図である。
【図4】図1及び図2に示した記録ヘッドにおけるインク吐出を説明するための図である。
【図5】インクの色によるキャビテーション発生の有無と表面張力、粘度の関係を示す図である。
【図6】図1及び図2に示したインクジェット記録装置におけるページ印刷処理の実施の一形態を説明するためのフローチャートである。
【図7】画像データに応じた印字色に使用ノズル分散するインク色が含まれている場合、図6に示した処理によって画像データがどのように印刷されるかを説明する図である。
【図8】は、画像データに応じた印字色に使用ノズル分散するインク色が含まれていない場合、図6に示した処理によって画像データがどのように印刷されるかを説明する図である。
【図9】未使用ノズル数カウンタへの加算値を“1”以外にした方が適切な場合があることを説明するためのノズル形状の図である。
【図10】ノズルの集中使用による画質・耐久性劣化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明のインクジェット記録装置の実施の一形態を示す斜視概略図である。
【0016】
図1に示すように、本形態におけるインクジェット記録装置においては、記録ヘッド1がキャリッジ2上に搭載され、キャリッジ2はガイドシャフト3に沿って移動する。キャリッジ2が移動する方向を主走査方向と称する。印刷時には、記録媒体4をプラテン5で支持し、紙送りローラー6を使って断続的に搬送する。この記録媒体4を搬送する方向を副走査方向と称する。記録ヘッド1にはインクを吐出する複数のノズル(不図示)が配列されている。
【0017】
シリアル型のインクジェット記録装置においては、記録媒体4の副走査方向への搬送動作と、キャリッジ2を主走査方向に移動しながら記録ヘッド1からインクを吐出する動作とを繰り返して、記録媒体4上に画像を形成する。この動作をスキャンと言う。
【0018】
図2は、図1に示したインクジェット記録装置のシステム概略構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示したインクジェット記録装置は図2に示すように、ホスト10に接続されたプリンタ11であり、I/F12と、プリンタ制御部13と、印刷制御部14と、プリンタ記憶装置15と、搬送制御部16と、キャリッジ制御部17と、ヘッド制御部18と、搬送モータ19と、キャリッジモータ20とを有している。
【0020】
ホスト10からは、プリンタ11に対して印刷データを送信する。印刷データは画像データとユーザからの指示等を表すための属性データとから構成され、属性データの例として、記録媒体4に形成する画像の種類を示す画像データ種類がある。画像データ種類の例としては、線画や写真等がある。プリンタ制御部13はプリンタ11内の処理全体を制御する。I/F12はホスト10から送信されてきた印刷データを受信する。プリンタ記憶装置15は、I/F12にて受信されることにより入力された印刷データを記憶する。印刷制御部14は、ホスト10から送信されてきて入力された印刷データに応じて印刷方法を決定する。画像データとこの画像データに応じてインクを吐出するノズルとの対応関係も決定する。また、印刷制御部14は、色判定手段と、変更手段と、モード制御手段とを有している。色判定手段は、ホスト10から送信されてきて入力された印刷データに応じた印字色に所定の色が含まれているかどうかを判定する。変更手段は、画像データと複数のノズルとの対応関係を記録媒体4のページ毎に変更する。モード制御手段は、色判定手段にて所定の色が含まれていないと判定された場合、変更手段によって変更されていない対応関係に基づいて複数のノズルからインクを吐出し、また、色判定手段にて所定の色が含まれていると判定された場合、変更手段によって変更された対応関係に基づいて複数のノズルからインクを吐出するように、搬送制御部16、キャリッジ制御部17及びヘッド制御部18を制御することによって、ホスト10から送信されてきた画像データに応じた印字色の画像の形成を制御する。搬送制御部16は、搬送モータ19を駆動して記録媒体4を副走査方向に移動させ、また、キャリッジ制御部17は、キャリッジモータ20を駆動してキャリッジ2を主走査方向に移動させる。ヘッド制御部18は、印刷制御部14から印刷開始通知を受け、印刷制御部14で決定された画像データとノズルの対応関係に基づいて、記録ヘッド1を駆動して記録ヘッド1のノズルからインクを吐出する。
【0021】
図3は、図2に示した印刷制御部14に設定された、インク色とそれによるノズル分散制御の要否を対応づけたテーブルを示す図である。
【0022】
本形態においては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの合計4色構成のインクジェット記録装置を例に挙げている。本形態においては、ブラックとマゼンタの2色が制御を適用すると使用ノズルの分散化の効果が大きいので、制御適用するとなっており、シアンとイエローの2色が制御を適用しても使用ノズルの分散化の効果が小さいので、制御適用しないとなっている。
【0023】
本形態では、大気連通方式の液体吐出方法を用いる。インクを吐出しながら気泡がいったん最大体積に成長し、その後の気泡の体積が減少していく段階で初めて気泡が大気と連通するインクの吐出方法によるインクの吐出工程の一例について説明する。
【0024】
図4は、図1及び図2に示した記録ヘッド1におけるインク吐出を説明するための図である。
【0025】
図4(a)に示すように、記録信号等に基づいた発熱素子7への通電に伴い発熱素子7上のインク流路9内に気泡が生成されると、気泡が急激に体積膨張して成長する。
【0026】
そして、図4(b)に示すように、気泡の生成によって得られる発泡圧によって、インクが吐出口8から吐出される。
【0027】
インクが吐出口8から吐出されると、気泡がいったん最大体積に達し、その後、図4(c)に示すように、気泡の体積が減少する方向に転じる。そして、これとほぼ同時に吐出口の内部ではメニスカスの形成が始まる。
【0028】
そして、インクが吐出されて発泡室内のインク量が減少することにより、図4(d)に示すようにメニスカスMが発熱素子7の方向へ移動する。
【0029】
このメニスカスMの移動速度は気泡の収縮速度よりも速く、図4(e),(f)に示すように、メニスカスMが気泡に追いついて吐出口8の下面近傍で気泡が大気に連通する。このとき、気泡と大気とは、発熱素子7の中心に近い位置で連通することになる。
【0030】
ここで、図4(d)に示すように、メニスカスMが発熱素子7の方向へ移動する際には、発熱素子7の方向に移動する液面がメニスカスMと発熱素子7との間に存在するインク及び気泡を押さえつけて圧縮する。これにより、気泡が発熱素子7の略中心で圧縮されることで凹んで、気泡における発熱素子7の中心に対向した部位が環状になる。
【0031】
そして、図4(e)に示すように、環状部分を有する気泡が、大気と連通する前に、発泡室奥側部分とインク供給口側部分とに分断される。図4(e)においては、分断された気泡のうち大きな体積を有するインク供給口側部分は、大気と連通するので気泡内部の圧力が大気と同程度の圧力になる。
【0032】
そして、大気に連通した側の気泡は、図4(f)に示すように、大気に連通したままインクが発泡室内に再充填されて消泡していく。
【0033】
ところが、分断された気泡のうち発泡室奥側部分は大気と連通しないので、発泡室内に残されてキャビテーションが発生してしまう。このように、発熱素子7の中心に近い位置において気泡が大気と連通することで気泡が分断され易く、分断された気泡が大気に連通しないで残されることによりキャビテーションが発生してしまうことがあることを見出した。そして、このキャビテーションが発生することにより、発熱素子7の表面に形成された保護層に損傷が与えられ、発熱素子7の耐久性が低下することを引き起こすことがある。
【0034】
また、気泡がいったん最大体積に達し、その後、気泡の体積が減少する際に気泡と外気とが連通する現象は、発泡室におけるインク流路9の高さによっても変わる。この発泡室におけるインク流路9の高さが高ければ、インク吐出後、メニスカスMの移動速度と気泡の収縮速度の差が小さくなる。これにより、気泡と大気とが連通するまでの時間が長くなる。従って、大気と気泡とが連通するタイミングが遅くなり、気泡がより圧縮されてつぶされた状態で大気と連通することになる。これにより、気泡がより分断され易くなり、分断された気泡が発泡室内に残ってキャビテーションが発生し易くなる。
【0035】
図5は、インクの色によるキャビテーション発生の有無と表面張力、粘度の関係を示す図であり、図4(e)で示した分断された気泡のうち発泡室奥側部分の気泡によるキャビテーション発生の有無と表面張力、粘度の関係を示している。
【0036】
図5に示すように、ブラック及びマゼンタの2色は、シアン及びイエローの2色に比較して、粘度は低い数値であり、表面張力は高い数値となっている。そして、粘度が低く、表面張力が高いブラック及びマゼンタの2色にてキャビテーションが発生する。図4の説明により、キャビテーションが発生するインク色を吐出するノズルは発熱素子の表面に形成された保護層に損傷が与えられ、発熱素子の耐久性が低下するため、本形態においてはブラックとマゼンタのインク色が使われる場合にノズルの耐久性が低下する。
【0037】
図6は、図1及び図2に示したインクジェット記録装置におけるページ印刷処理の実施の一形態を説明するためのフローチャートである。
【0038】
なお、本形態では、使用ノズルの分散化方法として、インクを吐出しないノズル数を変えていき、画像データと複数のノズルとの対応関係を、記録媒体4のページ毎に複数のノズルの配列方向にずらしていく方法をとる。
【0039】
ホスト10から送信されてきた印刷データに基づいてページ印刷処理を開始すると、まず、印刷制御部14が、ホスト10から送信されてきた印刷データを受信し、色判定手段において、印刷データに含まれる画像データに応じた印字色を判定し、この印字色に、使用ノズル分散化制御を適用しなければならない所定のインク色が含まれているかを判定する(ステップ101)。なお、この所定のインク色は、上述したように、インクの粘度と表面張力とを条件として決められたものであり、本形態では、ブラック及びマゼンダである。
【0040】
インク色に、使用ノズル分散化制御を適用しなければならないインク色が含まれていない場合は、印刷制御部14が、モード制御手段において、未使用ノズル数カウンタに関係なく画像データとノズルとの対応関係を設定する(ステップ102)。
【0041】
また、インク色に、使用ノズル分散化制御を適用しなければならないインク色が含まれている場合は、印刷制御部14が、モード制御手段において、未使用ノズル数カウンタの値で画像データとノズルの対応関係を設定する(ステップ103)。具体的には、図3に示した例においては、ブラックとマゼンタのどちらか1つ、または両方が含まれている場合は、ステップ102における処理が行われ、ブラックとマゼンタのどちらも含まれない場合は、ステップ103における処理が行われる。ここで、未使用ノズル数カウンタとは、使用ノズル分散化処理時の未使用ノズル数を保存しておくカウンタで、プリンタ11の起動時に初期値の“0”にする。
【0042】
印刷制御部14は、ステップ103における処置の後、変更手段において、未使用ノズル数カウンタの値に“1”を加算する(ステップ104)。
【0043】
そして、印刷制御部14は、未使用ノズル数カウンタが上限値に達しているかを判定し(ステップ105)。上限値に達している場合、未使用ノズル数カウンタの値を“0”に初期化する(ステップ106)。
【0044】
また、未使用ノズル数カウンタが上限値に達していなければ、未使用ノズル数カウンタの値を“0”にする初期化は行わない。
【0045】
そして、印刷制御部14が、ステップ103で設定した画像データとノズルの対応関係に基づいて、搬送制御部16、キャリッジ制御部17及びヘッド制御部18を制御し、記録媒体4に画像を形成することにより印刷を実行し(ステップ107)、記録媒体4のそのページに対するページ印刷処理を終了する。
【0046】
その後、記録媒体4の次のページについて、印字色に、使用ノズル分散化制御を適用しなければならないインク色が含まれている場合、ステップ104にて未使用ノズル数カウンタに“1”が加算されているので、画像データと複数のノズルとの対応関係が変更された状態で印刷が実行されることになる。すなわち、変更手段においては、画像データと複数のノズルとの対応関係を記録媒体4のページ毎に変更することになる。
【0047】
図7は、画像データに応じた印字色に使用ノズル分散するインク色が含まれている場合、図6に示した処理によって画像データがどのように印刷されるかを説明する図である。
【0048】
図6に示したステップ104における処理により、記録媒体4のページ毎に画像データとノズルとの対応関係が変化して未使用ノズル数が“1”増えていくことになる。図6に示したステップ105,106における処理により、未使用ノズル数は“0”〜“31”の範囲になり、“31”の次は“0”に戻る。未使用ノズル数のパターンを増やすと、使用ノズルの分散化の効果は大きくなる。しかし、未使用ノズル数が大きくなると、1スキャン目で画像形成に使われないノズルが増えることになり、印刷の効率が悪くなる。これらの事情を鑑みて、未使用ノズル数を“0”〜“31”の範囲にしている。
【0049】
図6に示したステップ107にて行う実際のプリンタ動作の搬送制御では、未使用ノズル数分、1スキャン目印刷前の記録媒体4の副走査方向への送り量を少なくする。また、画像データの上端をノズル上端から未使用ノズル数+1番目のノズルに対応させるように、画像データとノズルの対応関係を決める。未使用ノズルからインク吐出を行わないように、未使用ノズルにはNULLデータを送るようにする。このように、印刷に使われるノズルをずらしていくことにより、使用ノズルを分散化することができる。
【0050】
図7に示すように、未使用ノズル数をページ毎に変えると、画像データとノズルとの対応関係がページ毎に変わっていく。画像の一点に着目すると、ページ毎に異なる特性のノズルを使うことになるので、ページ毎に画質が変化する場合がある。特に、写真等の高画質・高精細を要求される画像を印刷する場合には、画質の変化を抑制すべきである。
【0051】
そこで、図6に示したステップ101において、ホスト10から送信されてきた印刷データに含まれる画像データに応じた印字色に、使用ノズル分散化制御を適用しなければならない所定のインク色が含まれているかを判定し、使用ノズル分散化制御を適用しなければならないインク色が含まれていない場合は、ステップ102における処理で未使用ノズル数カウンタに関係なく画像データとノズルとの対応関係を設定することで、使用ノズルを分散化する制御を行わないようにする。
【0052】
図8は、画像データに応じた印字色に使用ノズル分散するインク色が含まれていない場合、図6に示した処理によって画像データがどのように印刷されるかを説明する図である。
【0053】
ホスト10から送信されてきた印刷データに含まれる画像データに応じた印字色に、使用ノズル分散化制御を適用しなければならない所定のインク色が含まれていない場合に、常に未使用ノズル数カウンタに関係なく画像データとノズルとの対応関係を設定することで、図8に示すように、画像データとノズルとの対応関係が変化せずに、画質の変化を抑制できる。
【0054】
また、ノズルの形状によっては、図6に示したステップ104で未使用ノズル数カウンタに加算する値を“1”以外にした方が適切な場合がある。
【0055】
図9は、未使用ノズル数カウンタへの加算値を“1”以外にした方が適切な場合があることを説明するためのノズル形状の図である。
【0056】
図9(a)に示すように、1列のノズル列からインクを吐出する場合は、カウンタへの加算値は“1”でよい。しかし、図9(b)に示すように、縦に少しずらした2列(evenノズル列、oddノズル列)からインクを吐出する場合、加算値が“1”では問題がある。未使用ノズル数が奇数になると、evenノズル列で形成される画像データと、oddノズル列で形成される画像データとの対応関係が入れ替わる。対応関係が入れ替わると、evenノズル列、oddノズル列は物理的に離れた位置にあるので、例え線画であっても、印刷結果の画質変化が顕著に表れることがある。
【0057】
そこで、ノズルが図9(b)に示すような形状の場合は、図6に示したステップ104で未使用ノズル数カウンタへの加算値を“2”にすればよい。これにより、未使用ノズル数が常に偶数になり、even、oddノズル列と画像データの対応関係が入れ替わることがなくなる。
【符号の説明】
【0058】
1 記録ヘッド
2 キャリッジ
3 ガイドシャフト
4 記録媒体
5 プラテン
6 紙送りローラー
7 発熱素子
8 吐出口
9 インク流路
10 ホスト
11 プリンタ
12 I/F
13 プリンタ制御部
14 印刷制御部
15 プリンタ記憶装置
16 搬送制御部
17 キャリッジ制御部
18 ヘッド制御部
19 搬送モータ
20 キャリッジモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドを用い、入力された画像データを前記複数のノズルに対応づけ、該対応づけによる対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記画像データに応じた印字色の画像を記録媒体に形成するインクジェット記録装置であって、
前記画像データに応じた印字色に所定の色が含まれているかどうかを判定する色判定手段と、
前記画像データと前記複数のノズルとの対応関係を前記記録媒体のページ毎に変更する変更手段と、
前記色判定手段にて前記所定の色が含まれていないと判定された場合、前記変更手段によって変更されていない対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出し、また、前記色判定手段にて前記所定の色が含まれていると判定された場合、前記変更手段によって変更された対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出するように前記画像データに応じた画像の形成を制御するモード制御手段とを有するインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記変更手段は、前記画像データと前記複数のノズルとの対応関係を前記記録媒体のページ毎に前記複数のノズルの配列方向にずらすことにより、前記対応関係を変更するインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置において、
前記色判定手段は、インクの粘度と表面張力とを条件として決められた所定の色が前記印字色に含まれているかどうかを判定するインクジェット記録装置。
【請求項4】
インクを吐出する複数のノズルが配列された記録ヘッドを用い、入力された画像データを前記複数のノズルに対応づけ、該対応づけによる対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記画像データに応じた印字色の画像を記録媒体に形成する記録方法であって、
前記画像データに応じた印字色に所定の色が含まれているかどうかを判定し、
前記画像データに応じた印字色に前記所定の色が含まれていない場合、前記対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出し、また、前記画像データに応じた印字色に前記所定の色が含まれている場合、前記対応関係を前記記録媒体のページ毎に変更した対応関係に基づいて前記複数のノズルからインクを吐出して前記画像データに応じた画像を形成する記録方法。
【請求項5】
請求項4に記載の記録方法において、
前記画像データと前記複数のノズルとの対応関係を前記記録媒体のページ毎に前記複数のノズルの配列方向にずらすことにより、前記対応関係を変更する記録方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の記録方法において、
前記画像データに応じた印字色に所定の色が含まれているかどうかを判定する処理は、インクの粘度と表面張力とを条件として決められた所定の色が前記印字色に含まれているかどうかを判定する記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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