インクジェット記録装置及び方法
【課題】吐出性能が劣る不良ノズルが偶数ノズル又は奇数ノズルに偏在している場合にも、生産性や描画品質や落とさずに、ノズルを有効に活用する。
【解決手段】記録ヘッドを主走査方向に往復移動させ、記録ヘッドと記録媒体を副走査方向に相対的に間欠送りして作画を行うインクジェット記録装置において、主走査m回、副走査n回の走査によって所望の記録解像度の画像を完成させるN回(N=m×n)書きの作画を行う場合に、記録ヘッドのノズル配列における副走査方向のノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、偶数ノズル同士、又は奇数ノズル同士に揃うように副走査方向の送り量を制御する。
【解決手段】記録ヘッドを主走査方向に往復移動させ、記録ヘッドと記録媒体を副走査方向に相対的に間欠送りして作画を行うインクジェット記録装置において、主走査m回、副走査n回の走査によって所望の記録解像度の画像を完成させるN回(N=m×n)書きの作画を行う場合に、記録ヘッドのノズル配列における副走査方向のノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、偶数ノズル同士、又は奇数ノズル同士に揃うように副走査方向の送り量を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及び方法に係り、特に、複数のノズル(液滴の吐出口)が並んだノズル列を有するヘッドを記録媒体に対して往復移動させながら描画を行うマルチパス印字方式のインクジェット記録装置における打滴制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルが配列されたプリントヘッドを往復移動させながら記録媒体上に描画を行うインクジェット記録装置は広く知られている(特許文献1〜6)。特許文献1では、キャリッジスキャン型のインクジェットプリンタにおいて、往時のスキャンでは、奇数番目のノズルを使用して印字を行う一方、復時のスキャンでは偶数番目のノズルを使用して印字を行い、往復のスキャンにより全ノズルの印字を完了し、にじみや色調の変化を抑え、良好な印字画像を得ている。
【0003】
特許文献2では、64個のノズルの内、ある記録動作時には奇数番目のノズル(32個)だけが記録動作に用いられ、次の記録動作時には偶数番目のノズル(32個)だけが記録動作に用いられる。これによりマルチパス制御による記録において、高速記録と高品質画像記録とを両立することができる画像記録装置を提供している。
【0004】
特許文献3では、全ノズル使用から偶数列若しくは奇数列のノズルのみを使用して印字を行う。さらに、印刷媒体の副走査方向の送りピッチを印刷解像度ピッチの(2×n+1)倍の組合せのみ(ただし、n=正の整数)で構成して印字することを提案している。これにより印字性能の良好な印刷物を顧客に提供し、かつ高精細ヘッドの用紙送り機構を簡単化している。
【0005】
特許文献4では、キャリッジが往方向(F)に走査して記録する場合には奇数列のノズルで記録する記録データ(O)を間引き、キャリッジが復方向(R)に走査して記録する場合には偶数列のノズルで記録する記録データ(E)を間引いて記録を行う構成を開示している。これによりエッジの荒れを減少させ、記録品質を向上させている。
【0006】
特許文献5では、印字ヘッド(41)における複数の色インクに対するノズル配置をKCMYMCの順としたときに(同文献5の「図23」中段)、オーバーラップ印刷しない一例では往路で印刷するノズルと復路で印刷するノズルを変化させることによって双方向印字ムラの原因となる色インクの印刷順序を常に一定とする構成を開示している(同図下段)。また、オーバーラップ印刷する一例では奇数番目の画素と偶数番目の画素とで印刷するノズルを変化させることによって各画素での色インクの印刷順序が交互に逆転させて印刷順序による色変化を目立たなくさせることができる構成を開示している。
【0007】
特許文献6では、1列あたり32ノズルが並んだジェットパックを12列並べてなる多列構成のプリントヘッドを前提とし、各列の偶数番目のノズルと、奇数番目のノズルで滴サイズが異なる(偶数番目のノズルから打滴される滴サイズの方が小さい)という課題を述べている。そして、かかる課題に対して、副走査方向の送り量を変更することにより、奇数ドットの隣りは必ず偶数ドットで印字することによって、全体での印字結果におけるドットの大きさの違いを平均化し、印刷品質を改善するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−259566号公報
【特許文献2】特開平9−1862号公報
【特許文献3】特開平9−29974号公報
【特許文献4】特開2001−129981号公報
【特許文献5】特開2002−292908号公報
【特許文献6】特開2001−113689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図19〜図21は、インクジェットヘッドにおける典型的な吐出特性を例示したものである。横軸はヘッドのノズル列におけるノズル位置を表し、縦軸は各ノズルから吐出される液滴の吐出速度(滴速)を表している。
【0010】
ヘッドにおけるノズル列の一方の端から順番に、各ノズルに対して連続する整数によってノズル番号を付与し、ノズル番号が奇数となる「奇数ノズル」と、ノズル番号が偶数となる「偶数ノズル」とに分けて、それぞれのノズルの性能をプロットしたときに、図19〜図21のようなグラフが得られる。
【0011】
これらの奇数ノズルを追跡したグラフと、偶数ノズルを追跡したグラフと、を比較すると明らかなように、偶数ノズルのグループと、奇数ノズルのグループとでは吐出特性の傾向が異なる。
【0012】
例えば、図19に示されたヘッドAは、ノズル列の左側端部(ノズル位置0〜10mmの範囲)で奇数ノズルの吐出速度が低下している。
【0013】
また、図20に示されたヘッドBは、ノズル列の両側端部(ノズル位置0〜10mmの範囲、60mmを越える範囲)で奇数ノズルの吐出速度が低下している。
【0014】
図21に示されたヘッドCは、全体的に、奇数ノズルの吐出速度に比べて偶数ノズルの吐出速度が遅くなっている。
【0015】
仮に、吐出速度7〜9m/sの範囲が、着弾精度を満たすための許容範囲とすると、各図19〜図21の当該範囲(斜線部範囲)からはみ出した部分のノズルは、不良ノズルと判定される。各図中、白抜きの両向き矢印で示す範囲は正常なノズルの範囲であり、図中の斜線付きの両向き矢印で示す範囲は不良ノズルの範囲に該当する。通常、このような不良ノズルは、描画に使用しないことが望ましい。従来の打滴方法では、正常なノズルによる打滴に混ざって、不良ノズルからの打滴が存在すると、着弾位置ズレが目立ち、画像品質が低下する。これを避けるためには、不良ノズルを含むヘッドを使用しないこととするか、正常ノズルの範囲(各図中、白抜きの両向き矢印で示す範囲)で使用して、プリント生産性を犠牲とする、などの対策が考えられる。
【0016】
しかし、前者の対策は、ヘッド製造の歩留まりが著しく低下する。また、後者の対策は描画に使用できるノズルの範囲が制約され、プリント生産性が低下する。
【0017】
すなわち、シャトル走査型のインクジェットプリンタでは、用紙を間欠送りしながら、ヘッドを往復動作させてN回の記録で画像を完成させる。例えば、100npi(ノズル・パー・インチ)で並んだ正常な256個のノズルで構成されるヘッド(ノズル列の長さ=約64.8mm)を用いて600dpi(シャトル走査方向)×400dpi(用紙送り方向)の記録解像度で画像を形成する場合、主走査方向の走査線を2回、副走査方向の走査線を4回のヘッド走査(パス)で記録する。このような主走査×副走査=2×4の8回書きのマルチパス印字による作画モードの場合(図22の作画フォーマット「1」に該当)の平均スワス幅(間欠送りによる平均的な用紙送り量に相当)は、8.128mmである。
【0018】
また、同ヘッドを用いて、主走査600dpi×副走査800dpiの記録解像度を、主走査×副走査=2×8の16回書きで実現する場合(図22の作画フォーマット「2」に該当)、その平均スワス幅は4.064mmである。
【0019】
したがって、図23に示すように、ヘッドA(図19の特性を示すもの)は、作画フォーマット1(8回書き、平均スワス幅8.128mm)の場合に、図19におけるノズル列のうち左端の2スワス分は使用できない。また、作画フォーマット2(16回書き、平均スワス幅4.064mm)の場合には、ノズル列のうち左側3スワス分は使用できない。つまり、作画フォーマット1では、生産性が6/8に低下し、作画フォーマット2では生産性が13/16に低下する。
【0020】
一方、ヘッドB(図20の特性を示すもの)は、作画フォーマット1(8回書き、平均スワス幅8.128mm)の場合に、図20のノズル列のうち左端の2スワス分と右側1スワス分が使用できない。また、作画フォーマット2(16回書き、平均スワス幅4.064mm)の場合には、ノズル列のうち左側3スワス分と右側1スワス分が使用できない。つまり、作画フォーマット1では、生産性が5/8に低下し、作画フォーマット2では生産性が12/16に低下する。ヘッドC(図21の特性を示すもの)については、ノズル列のうち半数以上が使えないということになり、プリント生産性はさらに低下する。
【0021】
なお、特許文献6は、偶数ノズルと奇数ノズルの特性の違いに着目した打滴方法を提案しているが、上記の課題を解決できない。特許文献6に開示の技術では、副走査方向送り量がノズル列におけるノズルピッチの整数倍となっており、所定記録解像度の画像を完成させるための主走査方向と副走査方向のスキャン(走査)回数は、主×副=n×1の構成が前提である。これに対し、主走査及び副走査の各ラインをそれぞれ複数回(主×副=m×n)のスキャンで埋めるマルチパス印字の場合(m、nは2以上の整数)、主×副=n×1の場合と比べて、走査線上に並ぶノズル同士の組合せパターンが非常に多い。特許文献6に記載のようなノズル列のノズル数Mの半分(M/2)に相当する副走査送りを適用しても、送りシーケンスが破綻する。
【0022】
また、ヘッドの吐出特性に関する問題は、偶数ノズルの滴サイズが奇数ノズルの滴サイズと異なるという関係に限らず、図19〜図21で説明したように、偶数ノズルと奇数ノズルとで飛翔速度(滴速)が相違するという問題がある。すなわち、各ノズルの滴サイズを揃えたときに偶数ノズルと奇数ノズルで飛翔速度(滴速)が異なる特性を持つヘッドの場合に、着弾位置にズレが生じて走査線上で各打滴が整然と並ばないという課題がある。
【0023】
ヘッドにおける各ノズルの吐出性能が偶数ノズル、奇数ノズルに偏在するという問題は、ヘッド内部の構造に由来する。偶数ノズルと奇数ノズルは、ノズル径及び吐出機構としては共通の構成であり、同じノズル列に属して一列に並んでいるが、その上流側は、別体で構成されている場合がある(図24参照)。
【0024】
図24は、ヘッドの内部構造を示す模式図である。ここでは説明を簡単にするために、ノズル数を削減して描いており、各ノズルに対応する圧力室や吐出エネルギー発生素子(圧電素子など)の記載は省略した。同図において、丸で囲んだ数字1〜12はノズルの番号を表す。符号203は、奇数番号のノズルに対してインクを供給するための共通流路(液室)、符号205は共通流路203から各奇数ノズルにインクを供給するための個別流路である。符号206は、偶数番号のノズルに対してインクを供給するための共通流路(液室)、符号208は共通流路206から各偶数ノズルにインクを供給するための個別流路である。図示のように、奇数ノズルのユニット213と、偶数ノズルのユニット216とが別々に構成され、各ユニット213,216のノズルが吐出面(ノズル面)において交互に一列に並ぶように、ユニット213,215が組み合わされて配置される。ヘッド製造上の様々な要因によって、ユニット単位で種々のエラーが発生する可能性がある。
【0025】
各ユニットのエラー要因として、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0026】
(1)圧電体の厚みが均一でない。
【0027】
(2)圧電体の電気機械変換特性が一様でない。
【0028】
(3)流路プレートを積層する際の位置ずれがある。
【0029】
(4)流路プレートを積層接合する際における積層部材間の接着層の厚みにばらつきがある。
【0030】
これら各種要因により、ヘッドのエラーが偶数ノズル又は奇数ノズルに偏在する。
【0031】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、偶数ノズルと奇数ノズルの特性が異なるヘッドにおいて、吐出性能が劣る不良ノズル(weakノズル)が偶数ノズル又は奇数ノズルに偏在している場合にも、できるだけ不使用ノズルを設定することなく、生産性や描画品質や落とさずに、ヘッドの各ノズルを有効に活用できるインクジェット記録装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は前記目的を達成するために、液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査手段と、前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り手段と、前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り手段による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御手段と、を備え、前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、前記送り量制御手段は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0033】
本発明の他の態様については、本明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、N回書きによって所望の記録解像度の描画を完成させる作画方式において、ノズル配列の副走査方向のノズルピッチ間を埋める打滴を、ノズルピッチ間(m本の走査線の領域単位)ごとに、偶数ノズルならば偶数ノズル同士、奇数ノズルならば奇数ノズル同士に揃える。これにより、吐出性能の近い偶数ノズル同士又は奇数ノズル同士の打滴が隣接する構成となり、着弾位置ずれによるムラの視認性が低減される。
【0035】
この発明によれば、従来、不使用ノズルとして設定していた不良ノズルを有効に活用することができ、生産性を高めることができる。また、ヘッド製造の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図2】インクジェット記録装置における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図
【図3】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッドの配置形態の例を示す平面透視図。
【図4】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッドの配置例を示す斜視図
【図5】N回書きのマルチパス印字による作画動作を説明するための模式図
【図6】8回書の各走査により記録される打滴位置の説明図
【図7】8回書の各走査により記録される打滴位置の説明図
【図8】図8(a)〜(g)は2×4格子の埋め方の例を示した図
【図9】比較例1に係る記録方法の説明図
【図10】第1実施例に係る記録方法の説明図
【図11】第2実施例に係る記録方法の説明図
【図12】第3実施例に係る記録方法の説明図
【図13】インクジェットヘッド(ヘッドC)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図14】インクジェットヘッド(ヘッドA)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図15】第4実施例に係る記録方法の基本単位格子の埋め方(打滴順)の例を示す図
【図16】第4実施例に係る記録方法の基本単位格子の埋め方(打滴順)の他の例を示す図
【図17】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示すブロック図
【図18】インクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図
【図19】インクジェットヘッド(ヘッドA)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図20】インクジェットヘッド(ヘッドB)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図21】インクジェットヘッド(ヘッドC)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図22】記録解像度と重ね書き回数、及び平均スワス幅の関係の例を示した図表
【図23】ヘッドA、Bによる生産性の低下を説明するための図表
【図24】ヘッドの内部構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0038】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0039】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24(「記録ヘッド」に相当)と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0040】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0041】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0042】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)が「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)が「副走査方向」に相当する。
【0043】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0044】
図1において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0045】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0046】
〔記録媒体搬送路の説明〕
図2は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図2に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0047】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0048】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0049】
〔インクジェットヘッドの説明〕
図3は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0050】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図3ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0051】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列のいずれか一方を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、Wのノズル列に代わりメタルインクのノズル列を具備する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0052】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0053】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0054】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
【0055】
〔作画モードについて〕
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度(記録解像度)を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0056】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0057】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により、ノズルピッチ間の間を埋める補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0058】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
【0059】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1200dpi×1200dpiの解像度を得ている。
【0060】
<シングリング走査によるスワス幅について>
ワイドフォーマット機の作画モードでは、解像度設定毎に、それぞれシングリング(インターレス)する作画条件が決定されている。具体的には、インクジェットヘッドの吐出ノズル列の幅Lw(ノズル列の長さ)をパス数(スキャン繰り返し回数)だけ分割してシングリング作画するので、インクジェットヘッドのノズル列幅、並びに、主走査方向及び副走査方向のパス数(インターレースする分割数)によってスワス幅が異なる。なお、マルチパス方式によるシングリング作画の詳細については、例えば、特開2004−306617号公報に説明されている。
【0061】
一例として、FUJIFILM Dimatix社製のQS-10ヘッド(100dpi,256ノズル)を用いた場合のシングリング作画によるパス数とスワス幅の関係は下表(表1)の様になる。作画によって想定されるスワス幅は使用するノズル列幅を主走査方向パス数と副走査方向パス数の積で分割した値となる。
【0062】
【表1】
【0063】
<紫外線照射装置の配置について>
図3及び図4に示したように、インクジェットヘッド24の走査方向(Y方向)の左右両脇に、仮硬化光源32A、32Bが配置される。さらに、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)の下流側に本硬化光源34A、34Bが配置されている。
【0064】
インクジェットヘッド24のノズルから吐出されて記録媒体12上に着弾したインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A、34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。
【0065】
仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24による印字動作中、2つ同時に点灯しても良いが、主走査方向のキャリッジ移動において後側となる仮硬化光源のみ点灯させることで光源の寿命を延ばすことを図っても良い。また、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中、2つ同時に点灯される。走査速度の遅い作画モードでは、片方を消灯することも可能であり、仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bの発光開始タイミングは、同時でもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
<本硬化光源の構成例について>
図4に示したように、本硬化光源34A、34Bは、それぞれ複数個のUV−LED素子35が並べられた構造を有している。2つの本硬化光源34A、34Bは、共通の構成である。本例では、本硬化光源34A、34Bとして、Y方向に6個、X方向に2個のUV−LED素子35がマトリクス状に配置されたLED素子配列(6×2)を例示したが、LED素子数及びその配列形態はこの例に限定されない。例えば、複数個のLED素子をY方向に沿って1列に並べた構成も可能である。
【0067】
また、本硬化光源34A、34Bの発光源としては、UV−LED素子35に限らず、UVランプなどを用いることも可能である。
【0068】
<仮硬化光源について>
仮硬化光源32A、32Bについても、UV−LED素子やUVランプを用いることができる。なお、複数個のUV−LED素子を用いる場合、ノズル列方向に沿ってLEDを配列させる態様に限らず、仮硬化光源32A,32Bのユニットの端面(上流側端面、又は下流側端面、若しくは、その両方の端面)にLED素子を配置する形態もあり得る。
【0069】
<作画方法の説明>
図5は、マルチパス印字方式による作画動作の模式図である。ここでは説明を簡単にするために、1列のノズル列を有するヘッド240を例に説明する。また、記録媒体を副走査方向へ間欠送りする構成について、図示の便宜上、記録媒体を停止させ、ヘッド240を副走査方向に相対的に間欠移動させるものとして説明する。
【0070】
このヘッド240は、複数のノズル242が副走査方向に一定のノズルピッチで並んだ1列のノズル列を有する。このノズル列が図3で説明した各色のノズル列61Y、61M、61C、61K等に対応している。
【0071】
ヘッド240が主走査方向(図5左右方向)に移動している時にノズル242から打滴が行われる。主走査方向に沿ったヘッド240の往復移動と、副走査方向(図5の縦方向)への記録媒体の間欠送りの組合せによって記録媒体上に2次元の描画が行われる。
【0072】
N回のスキャン(走査)で所望の記録解像度の画像を完成させる場合、N回の副走査方向の間欠移動(相対移動)によるN+1走査目のときの用紙とヘッドの副走査方向の相対位置は、図示のような関係となる。つまり、N回書きを行うために、1回目、2回目、3回目・・・と間欠送りを行い、N+1回目に丁度、ヘッド(ノズル列)の長さ分に対応した位置につながるようにする。N回書きの動作がシームレスにつながるためには、1走査目の副走査位置から「ノズル列長+1ノズルピッチ」分だけ副走査方向に移動してN+1走査目が行われる。
【0073】
一例として、ノズル配列密度100npi(ノズル・パー・インチ)、256個のノズル102が並んだノズル列を有するヘッド100を用いて、主走査方向2パス、副走査方向4パス(主2×副4)の8パス(8回書き)で主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度を実現する場合を考える。
【0074】
記録解像度から定まる打滴点(画素)の間隔を「打滴点間隔」或いは「画素間隔」、若しくは「ドット間隔」と呼び、記録可能な打滴点の位置を表す格子(マトリクス)を「打滴点格子」或いは「画素格子」と呼ぶ。主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度の場合、主走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/600≒42.3μm、副走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/400=63.5μmである。これは、打滴点格子の1セル(1画素相当)の大きさ「42.3μm×63.5μm」を表している。記録媒体の送り制御やヘッド240からの打滴位置(打滴タイミング)の制御については、この記録解像度から定まる打滴点間隔を単位として送り量や位置が制御される。なお、記録解像度から定まる打滴点間隔を「解像度ピッチ」、或いは「画素ピッチ」と呼ぶ場合がある。
【0075】
N=8(主2×副4)の場合、主走査方向の打滴点ライン(走査線)を2回の走査で埋め、副走査方向の打滴点ライン(走査線)を4回の走査で埋めるように、8回の走査(パス)で2×4個の打滴点格子の記録が行われる。
【0076】
このような8回書きの描画動作による各走査の番号(1〜8)と、その走査によって記録される打滴位置の関係を模式的に示したものが図6である。図6において1〜8の数字が付された各セルは、ノズル242によって記録される打滴位置(画素位置)を表し、1〜8の数字は、その画素位置が第何回目の走査時に記録されるかという走査の番号を表している。「1」の数字が付されたセル(画素)は、1走査目で記録する打滴位置を表している。図7から明らかなように、各打滴位置を記録する走査順番を表す1〜8の数字の配置分布は、主2×副4の「2×4」の格子が繰り返しの基本単位となっている。この2×4の格子を「基本単位格子」、或いは「2×4格子」と呼ぶことにする。2×4格子の埋め方(打滴順序)は、図6〜7に示した例に限らず、種々想定できる。図8(a)〜(g)に2×4格子の埋め方の例を示した。もちろん、ここに例示したもの以外の埋め方もある。
【0077】
以下、このような基本格子とその打滴順序を表す記載方法を用いて、本発明の実施形態による打滴制御方法の具体的な例を説明する。
【0078】
<比較例1>
はじめに、図9を用いて、従来構成による課題を整理する。
【0079】
図9は、比較例1に係る従来の打滴方法(記録方法)を示すものである。同図の左上には、2×4格子の埋め方が示され、その右には、各走査の一回の送り量が示されている。送り量の単位は、記録解像度で定まる画素ピッチである。
【0080】
図9の下側は、8回書きによる描画で使用されるノズルの番号と、打滴位置を表している。副走査方向に4ノズルピッチ分の範囲が示されている。図中、255、256、223等の数字は、対応する打滴位置を記録するノズル番号を表している。その番号が記載されている位置は、副走査方向の打滴位置を表している。この図の上部において横方向に並んだ1,2,・・8,1という数字は、走査(印字パス)の番号を表している。
【0081】
1走査目でノズル番号255、256の記録が行われる。ノズル番号255と256の間は、ノズルピッチ相当の距離だけ離れている。このノズルピッチ間の各打滴点が8回書き(主2×副4)によって埋められることになる。
【0082】
1走査目の記録後に、副走査方向に所定量の間欠送りが行われる。この時の送り量は、右上の表に示したとおり、副走査方向の画素ピッチを単位として、「130」画素分である。100npi、256ノズルのヘッドにより8回書きで画像を完成させる場合、一回の副走査送り量は、平均的に約130画素ピッチ分となる。
【0083】
次いで、2走査目でノズル番号223,224、225、226による記録が行われる。その後、副走査方向に「131」画素分の間欠送りを行い、3走査目でノズル番号190、191、192、193により記録が行われる。以下同様にして、右上の表に示した送り量にしたがい、順次、間欠送りをしながら2×4格子の打滴点の記録が行われる。
【0084】
このような手順によれば、図中、ノズルピッチ単位で帯状に示した4段分の描画範囲のうち、最上段の領域の2×4格子は、当該単位格子の左側列の副走査ライン(1,3,5,7走査目)がノズル番号255、190、126、63で記録され、右側列の副走査ライン(6,8,2,4走査目)がノズル番号94、31、223、158で記録されることになる。
【0085】
しかしながら、このような打滴方法では、2×4格子内で、特性の異なるノズル(偶数ノズルと奇数ノズル)の打滴同士が隣接することになる。図19〜図22で説明したように、滴速が著しく異なる打滴が隣接すると、着弾位置のずれ量がまちまちとなり、ムラが視認されやすくなる。
【0086】
このような、課題を解決するために、本発明の実施形態では、次のような打滴方法が採用される。
【0087】
<第1実施例>
第1実施例では、ノズルピッチ間の打滴を、そのノズルピッチの領域単位で偶数ノズルならば偶数同士、奇数ノズルならば奇数ノズル同士に揃える作画フォーマットとする。
【0088】
図10にその例を示す。図10は第1実施例に係る記録方法の説明図である。図10における記載のルールは図9の比較例1で説明したとおりである。
【0089】
比較例1(図9)との違いは、一回の送り量を修正した点にある。すなわち、副走査方向の間欠送りの送り量をノズルピッチと等しい「4」画素分を単位として増減調整し、2×4格子内を記録するノズル(ノズル番号)を変更している。これにより、各ノズルピッチ間ごとに(副走査の4行ごとに)、2×4格子内を記録するノズルを全て偶数ノズル又は奇数ノズルに揃えている。
【0090】
副走査送り量は、N回の走査で2×4格子を埋め尽くす条件から定まる。具体的には、次の2つの条件を満たすように定められる。
【0091】
(条件1)N回の走査で元のヘッドのノズル列にシームレスにノズルがつながる。
【0092】
(条件2)各副走査送りは、2×4格子の打滴順番に沿って、次の打滴位置にノズルが到達する分とする。
【0093】
さらに、より具体的には、各回の送り量は、ノズルピッチを単位として、その整数倍だけ、増減させる自由度がある。2×4格子の場合、格子点の±4、±8、±12・・・という単位で送り量を増減しても、記録を行うことができる。つまり、ノズルピッチの整数倍の自由度の範囲で送り量を調整することで、2×4格子内を全て偶数ノズル、或いは全て奇数ノズルとすることができる。
【0094】
例えば、図10では、2回目の送り量を「127」としている。これは比較例1の構成と比べて、「−4」だけ送り量が修正されている。これにより、3走査目で記録に使用するノズル番号が変更になり、図10に示すように、ノズル番号191、192、193、194のノズルで記録が行われる。
【0095】
また、6回目の送り量についても、図示のように、送り量を「131」としている。これは比較例1の構成と比べて、「+4」だけ送り量が修正されている。こうして、8回の走査を行うことにより、図10に示した4段の帯状の描画範囲のうち、最上段の帯状領域の2×4格子の各打滴位置は全て奇数ノズルで記録され、上から2番目の帯状領域の2×4格子は全て偶数ノズルで記録される。上から3番目の帯状領域の2×4格子は全て奇数ノズルで記録され、最下段の帯状領域の2×4格子は全て偶数ノズルで記録される。つまり、副走査方向にノズルピッチ間の単位で(副走査の4行毎に)、偶奇が揃った打滴が実現される。
【0096】
このような打滴方法を採用することにより、同じ基本格子内で偶奇を混在させず、基本格子単位で偶奇を分離して使うことができるため、着弾位置のばらつきによるムラの視認性は低減される。
【0097】
<第2実施例>
偶数ノズルと奇数ノズルで吐出性能が異なるヘッドを用いる場合の画質改善に役立つ他の打滴方法として、次の方法も好ましい。
【0098】
図8(a)〜(g)で説明したように、2×4格子の埋め方(順序)は種々想定できる。主走査方向の1走査線(主走査ライン)上に並ぶ打滴点に注目すると、例えば、「1と6」が隣接する場合(図8(a)参照)の各打滴は、ヘッドの往路で「1」の打滴位置が記録され、ヘッドの復路で「6」の位置が記録される。このように、1走査線上で往路と復路の打滴が混在すると、偶数ノズル、奇数ノズルによる滴速の違いによる着弾位置のずれがヘッド移動方向の違いによって一層助長され、ムラが視認されやすくなるという課題がある。
【0099】
かかる課題を改善する観点から、第2実施例では、1走査線上の打滴の向き(記録を行うときのヘッドの移動方向)を揃える。つまり、主走査ライン上の各打滴点を複数回のパスで埋める場合、各走査線を往路のみ、又は、往路のみで記録する。具体的には、図8(f)、(g)で示した打滴方法がこの第2実施例に該当する。また、図11に示した記録方法もこの第2実施例に該当する。図11における記載ルールは図9、図10で説明したとおりである。
【0100】
図8(f)、図8(g)、図11に例示したとおり、1主走査線上に並ぶ各打滴点を記録する走査の番号が(1,3)、(6,8)、(4,2)、・・・という具合に、奇数同士、又は偶数同士が並んでいる。走査番号の奇数/偶数は、ヘッドの主走査方向移動の往路/復路(又はその逆)に対応している。したがって、第2実施例によれば、同一走査線上で隣接するドットは、往路同士、又は復路同士という関係になる。かかる打滴制御を採用し、滴速が遅い打滴同士を同一方向に揃えたので、1走査線上では、着弾位置のズレ量の方向が揃ったドットが並ぶことになり、隙間が空きにくく、ムラの視認性が低減される。
【0101】
<第3実施例>
次に、第3実施例を説明する。図12は第3実施例に係る記録方法の説明図である。記載のルールは図9、図10で説明したとおりである。
【0102】
第3実施例は、第1実施例と第2実施例を組み合わせた態様である。図11の記録方法と比較して、一回の送り量が修正され、図10と同様に、4行毎(ノズルピッチ間毎)に偶奇が揃ったものとなっている。図11の例によれば、第1実施例による効果と第2実施例による効果の両方の効果を達成できる。
【0103】
例えば、図13に示すヘッドC(図21と同等)のように、吐出力の弱いノズルが偶数ノズル又は奇数ノズルに偏在している場合、弱いノズル同士、正常ノズル同士の打滴を同じ走査線上に集めることができる。これにより、1走査線上の着弾精度を向上させることができる。特に、ヘッドCの場合、偶数ノズル同士、奇数ノズル同士の中で速度のばらつきが小さいので、この第3実施例の適用による効果は、より大きいものである。
【0104】
<第4実施例>
次に、第4実施例を説明する。
【0105】
第4実施例では、ノズル列内における吐出特性の近いノズル同士の打滴(例えば、吐出速度が遅いノズル同士の打滴)が1走査線上で隣接するような作画フォーマットとする。
【0106】
図14〜図16にその例を示す。
【0107】
図14は、図19で説明したヘッドAの特性である。図14中、長円で囲んだように、ノズル列の片側端部(ノズル位置0〜16mmの範囲)は、奇数ノズルの吐出速度が許容基準(7〜9m/s)よりも遅い。また、偶数ノズルについては、全範囲で許容基準を満たしているものの、ノズル列の片側端部(ノズル位置0〜16mmの範囲)で若干速度が低下する傾向が見られる。
【0108】
このようなヘッドAを用いる場合の記録方法(2×4格子の埋め方)の例を図15及び図16に示した。図15に示す記録方法によれば、1回目の走査と、2回目の走査による打滴が主走査線上で隣接するようになっている。
【0109】
基本単位格子上で、走査番号が近いものが横に隣り合って隣接するため、当該走査ラインは、ノズル列における特性の近いノズルによって記録される。また、第1実施例の技術の適用により、4行毎に偶奇を分けて使用する。これにより、着弾位置のずれによるムラが目立ちにくい作画が可能である。
【0110】
図16は、第1実施例、第2実施例及び第4実施例の技術を組み合わせて適用する態様である。すなわち、第1実施例の技術を適用して、4行毎に偶奇を分けて打滴を行うとともに、さらに、図16に示す打滴順に従い、奇数ノズルの1バンド目(1走査目)と3バンド目(3走査目)を1走査線上で使用する作画フォーマットとする。
【0111】
図14に示す特性をもつヘッドAの場合、奇数ノズルの1〜3バンド目は、吐出速度が遅いノズルを用いることになるため、これらのノズルを同一走査線上で使用することにより、滴速の遅いノズル同士の打滴を1走査線上で隣接させる。
【0112】
これにより、ドット間の隙間が空きにくく、ムラの視認性を低減することができる。
【0113】
第1実施例、第2実施例、第3実施例、第4実施例の技術を適宜組み合わせることができ、これらの組合せによって、それぞれの作用効果が重畳的に組み合わされて、より好ましい効果が得られる。
【0114】
なお、図13〜図15の例では、ノズル列の左端部分の領域における吐出速度が遅い場合を例示したが、両端部が遅い場合には、1走査目と8走査目(又は7走査目)を並べるという対応も可能である。つまり、ノズル列を平均スワスの長さで区切ったときに、特性が近いものを同一主走査線上に並べるという対応を採用することができる。
【0115】
使用するヘッドの吐出特性(図19〜図22など)は、例えば、ヘッド製造時に性能確認のためにデータが取得される。この情報を基に、各ノズルを有効に活用できる作画フォーマットが設計される。
【0116】
<インク供給系の説明>
図17は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクカートリッジ36に収容されているインクは、供給ポンプ70によって吸引され、サブタンク72を介してインクジェットヘッド24に送られる。サブタンク72には、内部のインクの圧力を調整するための圧力調整部74が設けられている。
【0117】
圧力調整部74は、バルブ76を介してサブタンク72と連通される加減圧用ポンプ77と、バルブ76と加減圧用ポンプ77との間に設けられる圧力計78と、を具備している。
【0118】
通常の印字時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを吸引する方向に動作し、サブタンク72の内部圧力及びインクジェットヘッド24の内部圧力が負圧に維持される。一方、インクジェットヘッド24のメンテナンス時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを加圧する方向に動作し、サブタンク72の内部及びインクジェットヘッド24の内部が強制的に加圧され、インクジェットヘッド24内のインクがノズルを介して排出される。インクジェットヘッド24から強制的に排出されたインクは、上述したキャップ(図示せず)のインク受けに収容される。
【0119】
<インクジェット記録装置の制御系の説明>
図18はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置102が設けられている。制御装置102としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置102は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置102には、記録媒体搬送制御部104、キャリッジ駆動制御部106、光源制御部108、画像処理部110、吐出制御部112が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0120】
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12(図1参照)の搬送を行うための搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、図2に示すニップローラ40駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図1参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、副走査方向へ間欠送りされる。送り量の制御例については、第1実施例〜第4実施例等で説明した方法が採用される。
【0121】
図18に示すキャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30(図1参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部108は、LED駆動回路118を介して仮硬化光源32A、32BのUV−LED素子の発光を制御するとともに、LED駆動回路119を介して本硬化光源34A、34BのUV−LED素子の発光を制御する制御手段である。
【0122】
制御装置102は、操作パネル等の入力装置120、表示装置122が接続されている。入力装置120は、手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置122には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置120を操作することにより、作画モード(「作画フォーマット」と同義)の選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置122の表示を通じて確認することができる。
【0123】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部124と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース126が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0124】
画像入力インターフェース126を介して入力された画像データは、画像処理部110にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0125】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0126】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0127】
吐出制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路128に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部112は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部124に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路128に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0128】
ヘッド駆動回路128を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0129】
情報記憶部124は、制御装置102のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部124は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、副走査送り量の制御に必要な送り量情報、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの制御情報などが格納されている。
【0130】
エンコーダ130は、主走査駆動部116の駆動用モータ、及び搬送駆動部114の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置102に送られる。エンコーダ130から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12(図1参照)の位置が把握される。
【0131】
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ132から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0132】
なお、本実施形態における吐出制御部112は「打滴制御手段」に相当し、記録媒体搬送制御部104は「送り量制御手段」に相当する。
【0133】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、ヘッドから吐出された液滴が付着される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体、ブリントメディアなど様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0134】
<本発明の実施形態による効果>
上述の各実施例で説明した実施形態によれば、図19〜図21で説明したような特性をもつヘッドであっても、吐出性能が近いノズル(弱いノズル)同士を組み合わせて描画に使用することにより、従来は不使用ノズルとして設定されたノズル領域(図中、斜線付き両向き矢印で示した領域)のノズルを活かすことができる。
【0135】
これにより、生産性の犠牲を最小限に抑えることができる。また、ヘッド製造の歩留まり向上が可能である。
【0136】
<変形例1>
上述の実施形態では、主×副=2×4の8回書きによって2×4格子を埋める場合を例に説明したが、主×副=2×8の16回書き、主×副=4×12の48回書きなど、一般にN回書き(N=m×n)によってm×n格子を埋める場合について、第1実施例〜第4実施例の技術を適用することができる。
【0137】
<変形例2>
ノズル配列に関して、複数のノズルが副走査方向に一定間隔で並ぶ1列のノズル列を例示したが、ノズルの配列形態はこの例に限定されない。例えば、2列の千鳥配列のような2次元ノズル配列についても、同様に適用できる。例えば、2列の千鳥配列の場合、この2次元ノズル配列の各ノズルを副走査方向の直線に対して正射影して得られる投影ノズル列は、実質的に副走査方向の直線上に一定の間隔でノズルが並ぶ1列ノズルと等価なものとして取り扱うことができる。2列の千鳥配列についても、偶数ノズル、奇数ノズルを定義することが可能である。
【0138】
<変形例3>
上記実施形態では、主走査方向についてインクジェットヘッド24の両側に仮硬化光源32A、32Bと本硬化光源34A、34Bを対称的に配置し(中心線に対して線対称に配置)、往復走査(双方向)で打滴及びUV露光を行う例を述べたが、インクジェットヘッド24の片側のみに仮硬化光源、本硬化光源を配置して、一方向走査時に描画を行う態様も可能である。
【0139】
また、本発明の実施に際しては、紫外線硬化型インクを利用することは必ずしも要求されない。すなわち、通常のインクを用い、仮硬化光源32A、32Bや本硬化光源34A,34Bの構成を省略する形態も可能である。
【0140】
<変形例4:副走査方向への送り手段について>
図1のインクジェット記録装置10では、記録媒体12を副走査方向に搬送する例を述べたが、ヘッドと記録媒体を副走査方向に相対的に移動させる手段は、この例に限定されない。例えば、図で説明したように、媒体を停止させて、ヘッドを副走査方向に移動させる態様も可能であるし、ヘッドの移動と記録媒体の搬送とを組み合わせて、副走査送りを実現する態様も可能である。
【0141】
<主走査方向と副走査方向の関係について>
図1で説明したように、主走査方向と副走査方向は、互いに直交関係であることが制御上、好ましい。ただし、発明の実施に際して、必ずしも厳密に垂直に交わる関係であることは要求されない。2次元の描画(作画)を行うためには、主走査方向と副走査方向は互いに交差する関係であればよい(平行でなければよい)。
【0142】
<装置応用例>
上述の実施形態では、ドロップオンデマンド型のワイドフォーマットインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。ワイドフォーマット以外のインクジェット記録装置への適用も可能である。また、本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々な画像形成装置に適用可能である。
【0143】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【0144】
<付記;開示する発明の態様について>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0145】
(発明1):液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査手段と、
前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り手段と、前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り手段による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御手段と、を備え、前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、前記送り量制御手段は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0146】
この発明によれば、ノズルピッチ間の打滴を、ノズルピッチ単位(m本の走査線の単位)ですべて偶数ノズルのみ、または、奇数ノズルのみとする作画が行われる。これにより、吐出特性が近いノズルによる打滴が互いに隣接することとなり、ムラの視認性が低減する。
【0147】
この技術により、不良ノズルを有効に活用することができ、生産性の向上、及びヘッド歩留まりの向上を達成できる。
【0148】
(発明2):発明1に記載のインクジェット記録装置において、前記主走査方向に沿った1走査線上の各打滴点を記録するときの前記記録ヘッドの移動方向が同じ方向に揃うように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする。
【0149】
1走査線上の打滴点を往路、又は復路のいずれかに揃えて記録することにより、1走査線上の打滴の着弾位置ずれ方向が全て一定の方向に揃う。これにより、ムラの視認性が一層低減する。
【0150】
(発明3):発明1又は2に記載のインクジェット記録装置において、前記ノズル配列のうち、吐出性能が近いノズル同士の打滴が1走査線上で隣接するように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする。
【0151】
例えば、滴速が遅いノズル同士の打滴が1走査線上で隣接するような作画フォーマットとする。発明3によれば、ムラの視認性を抑えることができ、不良ノズルを有効に活用できる。
【0152】
(発明4):発明1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、 前記送り量制御手段は、前記ノズルピッチの単位で送り量を増減調整することを特徴とする。
【0153】
平均的なスワス幅に対して、ノズルピッチの整数倍の単位で送り量を調整することで、記録に使用するノズル番号をずらすことが可能である。
【0154】
(発明5):液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査工程と、前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り工程と、前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を行う打滴制御工程と、前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り工程による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御工程と、を有し、前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、前記送り量制御工程は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0155】
発明5において、発明1から4の特徴を適宜組み合わせる態様も可能である。また、発明5のインクジェット記録方法を実施することによって、印刷物や回路基板、デバイス、微細構造物などを製造することができる。したがって、発明5の方法発明は、これら印刷物等の製造方法という観点で把握することも可能である。
【符号の説明】
【0156】
10…インクジェット記録装置、12…記録媒体、24…インクジェットヘッド、26…プラテン、28…ガイド機構、30…キャリッジ、36…インクカートリッジ、240…ヘッド、242ノズル、61,61C,61M,61Y,61K,61CL,61W…ノズル列、102…制御装置、104…記録媒体搬送制御部、106…キャリッジ駆動制御部、112…吐出制御部、114…搬送駆動部、116…主走査駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置及び方法に係り、特に、複数のノズル(液滴の吐出口)が並んだノズル列を有するヘッドを記録媒体に対して往復移動させながら描画を行うマルチパス印字方式のインクジェット記録装置における打滴制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルが配列されたプリントヘッドを往復移動させながら記録媒体上に描画を行うインクジェット記録装置は広く知られている(特許文献1〜6)。特許文献1では、キャリッジスキャン型のインクジェットプリンタにおいて、往時のスキャンでは、奇数番目のノズルを使用して印字を行う一方、復時のスキャンでは偶数番目のノズルを使用して印字を行い、往復のスキャンにより全ノズルの印字を完了し、にじみや色調の変化を抑え、良好な印字画像を得ている。
【0003】
特許文献2では、64個のノズルの内、ある記録動作時には奇数番目のノズル(32個)だけが記録動作に用いられ、次の記録動作時には偶数番目のノズル(32個)だけが記録動作に用いられる。これによりマルチパス制御による記録において、高速記録と高品質画像記録とを両立することができる画像記録装置を提供している。
【0004】
特許文献3では、全ノズル使用から偶数列若しくは奇数列のノズルのみを使用して印字を行う。さらに、印刷媒体の副走査方向の送りピッチを印刷解像度ピッチの(2×n+1)倍の組合せのみ(ただし、n=正の整数)で構成して印字することを提案している。これにより印字性能の良好な印刷物を顧客に提供し、かつ高精細ヘッドの用紙送り機構を簡単化している。
【0005】
特許文献4では、キャリッジが往方向(F)に走査して記録する場合には奇数列のノズルで記録する記録データ(O)を間引き、キャリッジが復方向(R)に走査して記録する場合には偶数列のノズルで記録する記録データ(E)を間引いて記録を行う構成を開示している。これによりエッジの荒れを減少させ、記録品質を向上させている。
【0006】
特許文献5では、印字ヘッド(41)における複数の色インクに対するノズル配置をKCMYMCの順としたときに(同文献5の「図23」中段)、オーバーラップ印刷しない一例では往路で印刷するノズルと復路で印刷するノズルを変化させることによって双方向印字ムラの原因となる色インクの印刷順序を常に一定とする構成を開示している(同図下段)。また、オーバーラップ印刷する一例では奇数番目の画素と偶数番目の画素とで印刷するノズルを変化させることによって各画素での色インクの印刷順序が交互に逆転させて印刷順序による色変化を目立たなくさせることができる構成を開示している。
【0007】
特許文献6では、1列あたり32ノズルが並んだジェットパックを12列並べてなる多列構成のプリントヘッドを前提とし、各列の偶数番目のノズルと、奇数番目のノズルで滴サイズが異なる(偶数番目のノズルから打滴される滴サイズの方が小さい)という課題を述べている。そして、かかる課題に対して、副走査方向の送り量を変更することにより、奇数ドットの隣りは必ず偶数ドットで印字することによって、全体での印字結果におけるドットの大きさの違いを平均化し、印刷品質を改善するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−259566号公報
【特許文献2】特開平9−1862号公報
【特許文献3】特開平9−29974号公報
【特許文献4】特開2001−129981号公報
【特許文献5】特開2002−292908号公報
【特許文献6】特開2001−113689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図19〜図21は、インクジェットヘッドにおける典型的な吐出特性を例示したものである。横軸はヘッドのノズル列におけるノズル位置を表し、縦軸は各ノズルから吐出される液滴の吐出速度(滴速)を表している。
【0010】
ヘッドにおけるノズル列の一方の端から順番に、各ノズルに対して連続する整数によってノズル番号を付与し、ノズル番号が奇数となる「奇数ノズル」と、ノズル番号が偶数となる「偶数ノズル」とに分けて、それぞれのノズルの性能をプロットしたときに、図19〜図21のようなグラフが得られる。
【0011】
これらの奇数ノズルを追跡したグラフと、偶数ノズルを追跡したグラフと、を比較すると明らかなように、偶数ノズルのグループと、奇数ノズルのグループとでは吐出特性の傾向が異なる。
【0012】
例えば、図19に示されたヘッドAは、ノズル列の左側端部(ノズル位置0〜10mmの範囲)で奇数ノズルの吐出速度が低下している。
【0013】
また、図20に示されたヘッドBは、ノズル列の両側端部(ノズル位置0〜10mmの範囲、60mmを越える範囲)で奇数ノズルの吐出速度が低下している。
【0014】
図21に示されたヘッドCは、全体的に、奇数ノズルの吐出速度に比べて偶数ノズルの吐出速度が遅くなっている。
【0015】
仮に、吐出速度7〜9m/sの範囲が、着弾精度を満たすための許容範囲とすると、各図19〜図21の当該範囲(斜線部範囲)からはみ出した部分のノズルは、不良ノズルと判定される。各図中、白抜きの両向き矢印で示す範囲は正常なノズルの範囲であり、図中の斜線付きの両向き矢印で示す範囲は不良ノズルの範囲に該当する。通常、このような不良ノズルは、描画に使用しないことが望ましい。従来の打滴方法では、正常なノズルによる打滴に混ざって、不良ノズルからの打滴が存在すると、着弾位置ズレが目立ち、画像品質が低下する。これを避けるためには、不良ノズルを含むヘッドを使用しないこととするか、正常ノズルの範囲(各図中、白抜きの両向き矢印で示す範囲)で使用して、プリント生産性を犠牲とする、などの対策が考えられる。
【0016】
しかし、前者の対策は、ヘッド製造の歩留まりが著しく低下する。また、後者の対策は描画に使用できるノズルの範囲が制約され、プリント生産性が低下する。
【0017】
すなわち、シャトル走査型のインクジェットプリンタでは、用紙を間欠送りしながら、ヘッドを往復動作させてN回の記録で画像を完成させる。例えば、100npi(ノズル・パー・インチ)で並んだ正常な256個のノズルで構成されるヘッド(ノズル列の長さ=約64.8mm)を用いて600dpi(シャトル走査方向)×400dpi(用紙送り方向)の記録解像度で画像を形成する場合、主走査方向の走査線を2回、副走査方向の走査線を4回のヘッド走査(パス)で記録する。このような主走査×副走査=2×4の8回書きのマルチパス印字による作画モードの場合(図22の作画フォーマット「1」に該当)の平均スワス幅(間欠送りによる平均的な用紙送り量に相当)は、8.128mmである。
【0018】
また、同ヘッドを用いて、主走査600dpi×副走査800dpiの記録解像度を、主走査×副走査=2×8の16回書きで実現する場合(図22の作画フォーマット「2」に該当)、その平均スワス幅は4.064mmである。
【0019】
したがって、図23に示すように、ヘッドA(図19の特性を示すもの)は、作画フォーマット1(8回書き、平均スワス幅8.128mm)の場合に、図19におけるノズル列のうち左端の2スワス分は使用できない。また、作画フォーマット2(16回書き、平均スワス幅4.064mm)の場合には、ノズル列のうち左側3スワス分は使用できない。つまり、作画フォーマット1では、生産性が6/8に低下し、作画フォーマット2では生産性が13/16に低下する。
【0020】
一方、ヘッドB(図20の特性を示すもの)は、作画フォーマット1(8回書き、平均スワス幅8.128mm)の場合に、図20のノズル列のうち左端の2スワス分と右側1スワス分が使用できない。また、作画フォーマット2(16回書き、平均スワス幅4.064mm)の場合には、ノズル列のうち左側3スワス分と右側1スワス分が使用できない。つまり、作画フォーマット1では、生産性が5/8に低下し、作画フォーマット2では生産性が12/16に低下する。ヘッドC(図21の特性を示すもの)については、ノズル列のうち半数以上が使えないということになり、プリント生産性はさらに低下する。
【0021】
なお、特許文献6は、偶数ノズルと奇数ノズルの特性の違いに着目した打滴方法を提案しているが、上記の課題を解決できない。特許文献6に開示の技術では、副走査方向送り量がノズル列におけるノズルピッチの整数倍となっており、所定記録解像度の画像を完成させるための主走査方向と副走査方向のスキャン(走査)回数は、主×副=n×1の構成が前提である。これに対し、主走査及び副走査の各ラインをそれぞれ複数回(主×副=m×n)のスキャンで埋めるマルチパス印字の場合(m、nは2以上の整数)、主×副=n×1の場合と比べて、走査線上に並ぶノズル同士の組合せパターンが非常に多い。特許文献6に記載のようなノズル列のノズル数Mの半分(M/2)に相当する副走査送りを適用しても、送りシーケンスが破綻する。
【0022】
また、ヘッドの吐出特性に関する問題は、偶数ノズルの滴サイズが奇数ノズルの滴サイズと異なるという関係に限らず、図19〜図21で説明したように、偶数ノズルと奇数ノズルとで飛翔速度(滴速)が相違するという問題がある。すなわち、各ノズルの滴サイズを揃えたときに偶数ノズルと奇数ノズルで飛翔速度(滴速)が異なる特性を持つヘッドの場合に、着弾位置にズレが生じて走査線上で各打滴が整然と並ばないという課題がある。
【0023】
ヘッドにおける各ノズルの吐出性能が偶数ノズル、奇数ノズルに偏在するという問題は、ヘッド内部の構造に由来する。偶数ノズルと奇数ノズルは、ノズル径及び吐出機構としては共通の構成であり、同じノズル列に属して一列に並んでいるが、その上流側は、別体で構成されている場合がある(図24参照)。
【0024】
図24は、ヘッドの内部構造を示す模式図である。ここでは説明を簡単にするために、ノズル数を削減して描いており、各ノズルに対応する圧力室や吐出エネルギー発生素子(圧電素子など)の記載は省略した。同図において、丸で囲んだ数字1〜12はノズルの番号を表す。符号203は、奇数番号のノズルに対してインクを供給するための共通流路(液室)、符号205は共通流路203から各奇数ノズルにインクを供給するための個別流路である。符号206は、偶数番号のノズルに対してインクを供給するための共通流路(液室)、符号208は共通流路206から各偶数ノズルにインクを供給するための個別流路である。図示のように、奇数ノズルのユニット213と、偶数ノズルのユニット216とが別々に構成され、各ユニット213,216のノズルが吐出面(ノズル面)において交互に一列に並ぶように、ユニット213,215が組み合わされて配置される。ヘッド製造上の様々な要因によって、ユニット単位で種々のエラーが発生する可能性がある。
【0025】
各ユニットのエラー要因として、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0026】
(1)圧電体の厚みが均一でない。
【0027】
(2)圧電体の電気機械変換特性が一様でない。
【0028】
(3)流路プレートを積層する際の位置ずれがある。
【0029】
(4)流路プレートを積層接合する際における積層部材間の接着層の厚みにばらつきがある。
【0030】
これら各種要因により、ヘッドのエラーが偶数ノズル又は奇数ノズルに偏在する。
【0031】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、偶数ノズルと奇数ノズルの特性が異なるヘッドにおいて、吐出性能が劣る不良ノズル(weakノズル)が偶数ノズル又は奇数ノズルに偏在している場合にも、できるだけ不使用ノズルを設定することなく、生産性や描画品質や落とさずに、ヘッドの各ノズルを有効に活用できるインクジェット記録装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は前記目的を達成するために、液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査手段と、前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り手段と、前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り手段による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御手段と、を備え、前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、前記送り量制御手段は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0033】
本発明の他の態様については、本明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、N回書きによって所望の記録解像度の描画を完成させる作画方式において、ノズル配列の副走査方向のノズルピッチ間を埋める打滴を、ノズルピッチ間(m本の走査線の領域単位)ごとに、偶数ノズルならば偶数ノズル同士、奇数ノズルならば奇数ノズル同士に揃える。これにより、吐出性能の近い偶数ノズル同士又は奇数ノズル同士の打滴が隣接する構成となり、着弾位置ずれによるムラの視認性が低減される。
【0035】
この発明によれば、従来、不使用ノズルとして設定していた不良ノズルを有効に活用することができ、生産性を高めることができる。また、ヘッド製造の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図2】インクジェット記録装置における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図
【図3】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッドの配置形態の例を示す平面透視図。
【図4】キャリッジ上に配置されるインクジェットヘッドの配置例を示す斜視図
【図5】N回書きのマルチパス印字による作画動作を説明するための模式図
【図6】8回書の各走査により記録される打滴位置の説明図
【図7】8回書の各走査により記録される打滴位置の説明図
【図8】図8(a)〜(g)は2×4格子の埋め方の例を示した図
【図9】比較例1に係る記録方法の説明図
【図10】第1実施例に係る記録方法の説明図
【図11】第2実施例に係る記録方法の説明図
【図12】第3実施例に係る記録方法の説明図
【図13】インクジェットヘッド(ヘッドC)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図14】インクジェットヘッド(ヘッドA)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図15】第4実施例に係る記録方法の基本単位格子の埋め方(打滴順)の例を示す図
【図16】第4実施例に係る記録方法の基本単位格子の埋め方(打滴順)の他の例を示す図
【図17】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示すブロック図
【図18】インクジェット記録装置の要部構成を示すブロック図
【図19】インクジェットヘッド(ヘッドA)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図20】インクジェットヘッド(ヘッドB)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図21】インクジェットヘッド(ヘッドC)における吐出特性の一例を示したグラフ
【図22】記録解像度と重ね書き回数、及び平均スワス幅の関係の例を示した図表
【図23】ヘッドA、Bによる生産性の低下を説明するための図表
【図24】ヘッドの内部構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0038】
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0039】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22とを備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24(「記録ヘッド」に相当)と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0040】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0041】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0042】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)が「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)が「副走査方向」に相当する。
【0043】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0044】
図1において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0045】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0046】
〔記録媒体搬送路の説明〕
図2は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図2に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0047】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0048】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0049】
〔インクジェットヘッドの説明〕
図3は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0050】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図3ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0051】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列のいずれか一方を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、Wのノズル列に代わりメタルインクのノズル列を具備する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0052】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wとをキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0053】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って1列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、1列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0054】
インクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いる形態(静電アクチュエータ方式)の他、ヒータなどの発熱体(加熱素子)を用いてインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばす形態(サーマルジェット方式)を採用することも可能である。ただし、紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、紫外線硬化型インクを使用する場合には、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式を採用することが好ましい。
【0055】
〔作画モードについて〕
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度(記録解像度)を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0056】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0057】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により、ノズルピッチ間の間を埋める補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0058】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
【0059】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1200dpi×1200dpiの解像度を得ている。
【0060】
<シングリング走査によるスワス幅について>
ワイドフォーマット機の作画モードでは、解像度設定毎に、それぞれシングリング(インターレス)する作画条件が決定されている。具体的には、インクジェットヘッドの吐出ノズル列の幅Lw(ノズル列の長さ)をパス数(スキャン繰り返し回数)だけ分割してシングリング作画するので、インクジェットヘッドのノズル列幅、並びに、主走査方向及び副走査方向のパス数(インターレースする分割数)によってスワス幅が異なる。なお、マルチパス方式によるシングリング作画の詳細については、例えば、特開2004−306617号公報に説明されている。
【0061】
一例として、FUJIFILM Dimatix社製のQS-10ヘッド(100dpi,256ノズル)を用いた場合のシングリング作画によるパス数とスワス幅の関係は下表(表1)の様になる。作画によって想定されるスワス幅は使用するノズル列幅を主走査方向パス数と副走査方向パス数の積で分割した値となる。
【0062】
【表1】
【0063】
<紫外線照射装置の配置について>
図3及び図4に示したように、インクジェットヘッド24の走査方向(Y方向)の左右両脇に、仮硬化光源32A、32Bが配置される。さらに、インクジェットヘッド24の記録媒体搬送方向(X方向)の下流側に本硬化光源34A、34Bが配置されている。
【0064】
インクジェットヘッド24のノズルから吐出されて記録媒体12上に着弾したインク滴は、その直後にその上を通過する仮硬化光源32A(又は32B)によって仮硬化のための紫外線が照射される。また、記録媒体12の間欠搬送に伴ってインクジェットヘッド24の印字領域を通過した記録媒体12上のインク滴は、本硬化光源34A、34Bにより本硬化のための紫外線が照射される。
【0065】
仮硬化光源32A、32Bは、インクジェットヘッド24による印字動作中、2つ同時に点灯しても良いが、主走査方向のキャリッジ移動において後側となる仮硬化光源のみ点灯させることで光源の寿命を延ばすことを図っても良い。また、本硬化光源34A、34Bは、インクジェット記録装置10の印刷動作中、2つ同時に点灯される。走査速度の遅い作画モードでは、片方を消灯することも可能であり、仮硬化光源32A、32Bと、本硬化光源34A、34Bの発光開始タイミングは、同時でもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
<本硬化光源の構成例について>
図4に示したように、本硬化光源34A、34Bは、それぞれ複数個のUV−LED素子35が並べられた構造を有している。2つの本硬化光源34A、34Bは、共通の構成である。本例では、本硬化光源34A、34Bとして、Y方向に6個、X方向に2個のUV−LED素子35がマトリクス状に配置されたLED素子配列(6×2)を例示したが、LED素子数及びその配列形態はこの例に限定されない。例えば、複数個のLED素子をY方向に沿って1列に並べた構成も可能である。
【0067】
また、本硬化光源34A、34Bの発光源としては、UV−LED素子35に限らず、UVランプなどを用いることも可能である。
【0068】
<仮硬化光源について>
仮硬化光源32A、32Bについても、UV−LED素子やUVランプを用いることができる。なお、複数個のUV−LED素子を用いる場合、ノズル列方向に沿ってLEDを配列させる態様に限らず、仮硬化光源32A,32Bのユニットの端面(上流側端面、又は下流側端面、若しくは、その両方の端面)にLED素子を配置する形態もあり得る。
【0069】
<作画方法の説明>
図5は、マルチパス印字方式による作画動作の模式図である。ここでは説明を簡単にするために、1列のノズル列を有するヘッド240を例に説明する。また、記録媒体を副走査方向へ間欠送りする構成について、図示の便宜上、記録媒体を停止させ、ヘッド240を副走査方向に相対的に間欠移動させるものとして説明する。
【0070】
このヘッド240は、複数のノズル242が副走査方向に一定のノズルピッチで並んだ1列のノズル列を有する。このノズル列が図3で説明した各色のノズル列61Y、61M、61C、61K等に対応している。
【0071】
ヘッド240が主走査方向(図5左右方向)に移動している時にノズル242から打滴が行われる。主走査方向に沿ったヘッド240の往復移動と、副走査方向(図5の縦方向)への記録媒体の間欠送りの組合せによって記録媒体上に2次元の描画が行われる。
【0072】
N回のスキャン(走査)で所望の記録解像度の画像を完成させる場合、N回の副走査方向の間欠移動(相対移動)によるN+1走査目のときの用紙とヘッドの副走査方向の相対位置は、図示のような関係となる。つまり、N回書きを行うために、1回目、2回目、3回目・・・と間欠送りを行い、N+1回目に丁度、ヘッド(ノズル列)の長さ分に対応した位置につながるようにする。N回書きの動作がシームレスにつながるためには、1走査目の副走査位置から「ノズル列長+1ノズルピッチ」分だけ副走査方向に移動してN+1走査目が行われる。
【0073】
一例として、ノズル配列密度100npi(ノズル・パー・インチ)、256個のノズル102が並んだノズル列を有するヘッド100を用いて、主走査方向2パス、副走査方向4パス(主2×副4)の8パス(8回書き)で主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度を実現する場合を考える。
【0074】
記録解像度から定まる打滴点(画素)の間隔を「打滴点間隔」或いは「画素間隔」、若しくは「ドット間隔」と呼び、記録可能な打滴点の位置を表す格子(マトリクス)を「打滴点格子」或いは「画素格子」と呼ぶ。主走査600dpi×副走査400dpiの記録解像度の場合、主走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/600≒42.3μm、副走査方向の打滴点間隔は、25.4[mm]/400=63.5μmである。これは、打滴点格子の1セル(1画素相当)の大きさ「42.3μm×63.5μm」を表している。記録媒体の送り制御やヘッド240からの打滴位置(打滴タイミング)の制御については、この記録解像度から定まる打滴点間隔を単位として送り量や位置が制御される。なお、記録解像度から定まる打滴点間隔を「解像度ピッチ」、或いは「画素ピッチ」と呼ぶ場合がある。
【0075】
N=8(主2×副4)の場合、主走査方向の打滴点ライン(走査線)を2回の走査で埋め、副走査方向の打滴点ライン(走査線)を4回の走査で埋めるように、8回の走査(パス)で2×4個の打滴点格子の記録が行われる。
【0076】
このような8回書きの描画動作による各走査の番号(1〜8)と、その走査によって記録される打滴位置の関係を模式的に示したものが図6である。図6において1〜8の数字が付された各セルは、ノズル242によって記録される打滴位置(画素位置)を表し、1〜8の数字は、その画素位置が第何回目の走査時に記録されるかという走査の番号を表している。「1」の数字が付されたセル(画素)は、1走査目で記録する打滴位置を表している。図7から明らかなように、各打滴位置を記録する走査順番を表す1〜8の数字の配置分布は、主2×副4の「2×4」の格子が繰り返しの基本単位となっている。この2×4の格子を「基本単位格子」、或いは「2×4格子」と呼ぶことにする。2×4格子の埋め方(打滴順序)は、図6〜7に示した例に限らず、種々想定できる。図8(a)〜(g)に2×4格子の埋め方の例を示した。もちろん、ここに例示したもの以外の埋め方もある。
【0077】
以下、このような基本格子とその打滴順序を表す記載方法を用いて、本発明の実施形態による打滴制御方法の具体的な例を説明する。
【0078】
<比較例1>
はじめに、図9を用いて、従来構成による課題を整理する。
【0079】
図9は、比較例1に係る従来の打滴方法(記録方法)を示すものである。同図の左上には、2×4格子の埋め方が示され、その右には、各走査の一回の送り量が示されている。送り量の単位は、記録解像度で定まる画素ピッチである。
【0080】
図9の下側は、8回書きによる描画で使用されるノズルの番号と、打滴位置を表している。副走査方向に4ノズルピッチ分の範囲が示されている。図中、255、256、223等の数字は、対応する打滴位置を記録するノズル番号を表している。その番号が記載されている位置は、副走査方向の打滴位置を表している。この図の上部において横方向に並んだ1,2,・・8,1という数字は、走査(印字パス)の番号を表している。
【0081】
1走査目でノズル番号255、256の記録が行われる。ノズル番号255と256の間は、ノズルピッチ相当の距離だけ離れている。このノズルピッチ間の各打滴点が8回書き(主2×副4)によって埋められることになる。
【0082】
1走査目の記録後に、副走査方向に所定量の間欠送りが行われる。この時の送り量は、右上の表に示したとおり、副走査方向の画素ピッチを単位として、「130」画素分である。100npi、256ノズルのヘッドにより8回書きで画像を完成させる場合、一回の副走査送り量は、平均的に約130画素ピッチ分となる。
【0083】
次いで、2走査目でノズル番号223,224、225、226による記録が行われる。その後、副走査方向に「131」画素分の間欠送りを行い、3走査目でノズル番号190、191、192、193により記録が行われる。以下同様にして、右上の表に示した送り量にしたがい、順次、間欠送りをしながら2×4格子の打滴点の記録が行われる。
【0084】
このような手順によれば、図中、ノズルピッチ単位で帯状に示した4段分の描画範囲のうち、最上段の領域の2×4格子は、当該単位格子の左側列の副走査ライン(1,3,5,7走査目)がノズル番号255、190、126、63で記録され、右側列の副走査ライン(6,8,2,4走査目)がノズル番号94、31、223、158で記録されることになる。
【0085】
しかしながら、このような打滴方法では、2×4格子内で、特性の異なるノズル(偶数ノズルと奇数ノズル)の打滴同士が隣接することになる。図19〜図22で説明したように、滴速が著しく異なる打滴が隣接すると、着弾位置のずれ量がまちまちとなり、ムラが視認されやすくなる。
【0086】
このような、課題を解決するために、本発明の実施形態では、次のような打滴方法が採用される。
【0087】
<第1実施例>
第1実施例では、ノズルピッチ間の打滴を、そのノズルピッチの領域単位で偶数ノズルならば偶数同士、奇数ノズルならば奇数ノズル同士に揃える作画フォーマットとする。
【0088】
図10にその例を示す。図10は第1実施例に係る記録方法の説明図である。図10における記載のルールは図9の比較例1で説明したとおりである。
【0089】
比較例1(図9)との違いは、一回の送り量を修正した点にある。すなわち、副走査方向の間欠送りの送り量をノズルピッチと等しい「4」画素分を単位として増減調整し、2×4格子内を記録するノズル(ノズル番号)を変更している。これにより、各ノズルピッチ間ごとに(副走査の4行ごとに)、2×4格子内を記録するノズルを全て偶数ノズル又は奇数ノズルに揃えている。
【0090】
副走査送り量は、N回の走査で2×4格子を埋め尽くす条件から定まる。具体的には、次の2つの条件を満たすように定められる。
【0091】
(条件1)N回の走査で元のヘッドのノズル列にシームレスにノズルがつながる。
【0092】
(条件2)各副走査送りは、2×4格子の打滴順番に沿って、次の打滴位置にノズルが到達する分とする。
【0093】
さらに、より具体的には、各回の送り量は、ノズルピッチを単位として、その整数倍だけ、増減させる自由度がある。2×4格子の場合、格子点の±4、±8、±12・・・という単位で送り量を増減しても、記録を行うことができる。つまり、ノズルピッチの整数倍の自由度の範囲で送り量を調整することで、2×4格子内を全て偶数ノズル、或いは全て奇数ノズルとすることができる。
【0094】
例えば、図10では、2回目の送り量を「127」としている。これは比較例1の構成と比べて、「−4」だけ送り量が修正されている。これにより、3走査目で記録に使用するノズル番号が変更になり、図10に示すように、ノズル番号191、192、193、194のノズルで記録が行われる。
【0095】
また、6回目の送り量についても、図示のように、送り量を「131」としている。これは比較例1の構成と比べて、「+4」だけ送り量が修正されている。こうして、8回の走査を行うことにより、図10に示した4段の帯状の描画範囲のうち、最上段の帯状領域の2×4格子の各打滴位置は全て奇数ノズルで記録され、上から2番目の帯状領域の2×4格子は全て偶数ノズルで記録される。上から3番目の帯状領域の2×4格子は全て奇数ノズルで記録され、最下段の帯状領域の2×4格子は全て偶数ノズルで記録される。つまり、副走査方向にノズルピッチ間の単位で(副走査の4行毎に)、偶奇が揃った打滴が実現される。
【0096】
このような打滴方法を採用することにより、同じ基本格子内で偶奇を混在させず、基本格子単位で偶奇を分離して使うことができるため、着弾位置のばらつきによるムラの視認性は低減される。
【0097】
<第2実施例>
偶数ノズルと奇数ノズルで吐出性能が異なるヘッドを用いる場合の画質改善に役立つ他の打滴方法として、次の方法も好ましい。
【0098】
図8(a)〜(g)で説明したように、2×4格子の埋め方(順序)は種々想定できる。主走査方向の1走査線(主走査ライン)上に並ぶ打滴点に注目すると、例えば、「1と6」が隣接する場合(図8(a)参照)の各打滴は、ヘッドの往路で「1」の打滴位置が記録され、ヘッドの復路で「6」の位置が記録される。このように、1走査線上で往路と復路の打滴が混在すると、偶数ノズル、奇数ノズルによる滴速の違いによる着弾位置のずれがヘッド移動方向の違いによって一層助長され、ムラが視認されやすくなるという課題がある。
【0099】
かかる課題を改善する観点から、第2実施例では、1走査線上の打滴の向き(記録を行うときのヘッドの移動方向)を揃える。つまり、主走査ライン上の各打滴点を複数回のパスで埋める場合、各走査線を往路のみ、又は、往路のみで記録する。具体的には、図8(f)、(g)で示した打滴方法がこの第2実施例に該当する。また、図11に示した記録方法もこの第2実施例に該当する。図11における記載ルールは図9、図10で説明したとおりである。
【0100】
図8(f)、図8(g)、図11に例示したとおり、1主走査線上に並ぶ各打滴点を記録する走査の番号が(1,3)、(6,8)、(4,2)、・・・という具合に、奇数同士、又は偶数同士が並んでいる。走査番号の奇数/偶数は、ヘッドの主走査方向移動の往路/復路(又はその逆)に対応している。したがって、第2実施例によれば、同一走査線上で隣接するドットは、往路同士、又は復路同士という関係になる。かかる打滴制御を採用し、滴速が遅い打滴同士を同一方向に揃えたので、1走査線上では、着弾位置のズレ量の方向が揃ったドットが並ぶことになり、隙間が空きにくく、ムラの視認性が低減される。
【0101】
<第3実施例>
次に、第3実施例を説明する。図12は第3実施例に係る記録方法の説明図である。記載のルールは図9、図10で説明したとおりである。
【0102】
第3実施例は、第1実施例と第2実施例を組み合わせた態様である。図11の記録方法と比較して、一回の送り量が修正され、図10と同様に、4行毎(ノズルピッチ間毎)に偶奇が揃ったものとなっている。図11の例によれば、第1実施例による効果と第2実施例による効果の両方の効果を達成できる。
【0103】
例えば、図13に示すヘッドC(図21と同等)のように、吐出力の弱いノズルが偶数ノズル又は奇数ノズルに偏在している場合、弱いノズル同士、正常ノズル同士の打滴を同じ走査線上に集めることができる。これにより、1走査線上の着弾精度を向上させることができる。特に、ヘッドCの場合、偶数ノズル同士、奇数ノズル同士の中で速度のばらつきが小さいので、この第3実施例の適用による効果は、より大きいものである。
【0104】
<第4実施例>
次に、第4実施例を説明する。
【0105】
第4実施例では、ノズル列内における吐出特性の近いノズル同士の打滴(例えば、吐出速度が遅いノズル同士の打滴)が1走査線上で隣接するような作画フォーマットとする。
【0106】
図14〜図16にその例を示す。
【0107】
図14は、図19で説明したヘッドAの特性である。図14中、長円で囲んだように、ノズル列の片側端部(ノズル位置0〜16mmの範囲)は、奇数ノズルの吐出速度が許容基準(7〜9m/s)よりも遅い。また、偶数ノズルについては、全範囲で許容基準を満たしているものの、ノズル列の片側端部(ノズル位置0〜16mmの範囲)で若干速度が低下する傾向が見られる。
【0108】
このようなヘッドAを用いる場合の記録方法(2×4格子の埋め方)の例を図15及び図16に示した。図15に示す記録方法によれば、1回目の走査と、2回目の走査による打滴が主走査線上で隣接するようになっている。
【0109】
基本単位格子上で、走査番号が近いものが横に隣り合って隣接するため、当該走査ラインは、ノズル列における特性の近いノズルによって記録される。また、第1実施例の技術の適用により、4行毎に偶奇を分けて使用する。これにより、着弾位置のずれによるムラが目立ちにくい作画が可能である。
【0110】
図16は、第1実施例、第2実施例及び第4実施例の技術を組み合わせて適用する態様である。すなわち、第1実施例の技術を適用して、4行毎に偶奇を分けて打滴を行うとともに、さらに、図16に示す打滴順に従い、奇数ノズルの1バンド目(1走査目)と3バンド目(3走査目)を1走査線上で使用する作画フォーマットとする。
【0111】
図14に示す特性をもつヘッドAの場合、奇数ノズルの1〜3バンド目は、吐出速度が遅いノズルを用いることになるため、これらのノズルを同一走査線上で使用することにより、滴速の遅いノズル同士の打滴を1走査線上で隣接させる。
【0112】
これにより、ドット間の隙間が空きにくく、ムラの視認性を低減することができる。
【0113】
第1実施例、第2実施例、第3実施例、第4実施例の技術を適宜組み合わせることができ、これらの組合せによって、それぞれの作用効果が重畳的に組み合わされて、より好ましい効果が得られる。
【0114】
なお、図13〜図15の例では、ノズル列の左端部分の領域における吐出速度が遅い場合を例示したが、両端部が遅い場合には、1走査目と8走査目(又は7走査目)を並べるという対応も可能である。つまり、ノズル列を平均スワスの長さで区切ったときに、特性が近いものを同一主走査線上に並べるという対応を採用することができる。
【0115】
使用するヘッドの吐出特性(図19〜図22など)は、例えば、ヘッド製造時に性能確認のためにデータが取得される。この情報を基に、各ノズルを有効に活用できる作画フォーマットが設計される。
【0116】
<インク供給系の説明>
図17は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクカートリッジ36に収容されているインクは、供給ポンプ70によって吸引され、サブタンク72を介してインクジェットヘッド24に送られる。サブタンク72には、内部のインクの圧力を調整するための圧力調整部74が設けられている。
【0117】
圧力調整部74は、バルブ76を介してサブタンク72と連通される加減圧用ポンプ77と、バルブ76と加減圧用ポンプ77との間に設けられる圧力計78と、を具備している。
【0118】
通常の印字時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを吸引する方向に動作し、サブタンク72の内部圧力及びインクジェットヘッド24の内部圧力が負圧に維持される。一方、インクジェットヘッド24のメンテナンス時は、加減圧用ポンプ77がサブタンク72内のインクを加圧する方向に動作し、サブタンク72の内部及びインクジェットヘッド24の内部が強制的に加圧され、インクジェットヘッド24内のインクがノズルを介して排出される。インクジェットヘッド24から強制的に排出されたインクは、上述したキャップ(図示せず)のインク受けに収容される。
【0119】
<インクジェット記録装置の制御系の説明>
図18はインクジェット記録装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置102が設けられている。制御装置102としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置102は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置102には、記録媒体搬送制御部104、キャリッジ駆動制御部106、光源制御部108、画像処理部110、吐出制御部112が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0120】
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12(図1参照)の搬送を行うための搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、図2に示すニップローラ40駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図1参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、副走査方向へ間欠送りされる。送り量の制御例については、第1実施例〜第4実施例等で説明した方法が採用される。
【0121】
図18に示すキャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30(図1参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部108は、LED駆動回路118を介して仮硬化光源32A、32BのUV−LED素子の発光を制御するとともに、LED駆動回路119を介して本硬化光源34A、34BのUV−LED素子の発光を制御する制御手段である。
【0122】
制御装置102は、操作パネル等の入力装置120、表示装置122が接続されている。入力装置120は、手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置122には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置120を操作することにより、作画モード(「作画フォーマット」と同義)の選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置122の表示を通じて確認することができる。
【0123】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部124と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース126が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0124】
画像入力インターフェース126を介して入力された画像データは、画像処理部110にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0125】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、2値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0126】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0127】
吐出制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路128に対して吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部112は、不図示の駆動波形生成部を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧信号を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは、予め情報記憶部124に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された信号(駆動波形)は、ヘッド駆動回路128に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0128】
ヘッド駆動回路128を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧信号が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0129】
情報記憶部124は、制御装置102のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部124は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、副走査送り量の制御に必要な送り量情報、仮硬化光源32A、32B及び本硬化光源34A、34Bの制御情報などが格納されている。
【0130】
エンコーダ130は、主走査駆動部116の駆動用モータ、及び搬送駆動部114の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置102に送られる。エンコーダ130から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12(図1参照)の位置が把握される。
【0131】
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ132から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。
【0132】
なお、本実施形態における吐出制御部112は「打滴制御手段」に相当し、記録媒体搬送制御部104は「送り量制御手段」に相当する。
【0133】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、ヘッドから吐出された液滴が付着される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体、ブリントメディアなど様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フィルム、布、不織布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0134】
<本発明の実施形態による効果>
上述の各実施例で説明した実施形態によれば、図19〜図21で説明したような特性をもつヘッドであっても、吐出性能が近いノズル(弱いノズル)同士を組み合わせて描画に使用することにより、従来は不使用ノズルとして設定されたノズル領域(図中、斜線付き両向き矢印で示した領域)のノズルを活かすことができる。
【0135】
これにより、生産性の犠牲を最小限に抑えることができる。また、ヘッド製造の歩留まり向上が可能である。
【0136】
<変形例1>
上述の実施形態では、主×副=2×4の8回書きによって2×4格子を埋める場合を例に説明したが、主×副=2×8の16回書き、主×副=4×12の48回書きなど、一般にN回書き(N=m×n)によってm×n格子を埋める場合について、第1実施例〜第4実施例の技術を適用することができる。
【0137】
<変形例2>
ノズル配列に関して、複数のノズルが副走査方向に一定間隔で並ぶ1列のノズル列を例示したが、ノズルの配列形態はこの例に限定されない。例えば、2列の千鳥配列のような2次元ノズル配列についても、同様に適用できる。例えば、2列の千鳥配列の場合、この2次元ノズル配列の各ノズルを副走査方向の直線に対して正射影して得られる投影ノズル列は、実質的に副走査方向の直線上に一定の間隔でノズルが並ぶ1列ノズルと等価なものとして取り扱うことができる。2列の千鳥配列についても、偶数ノズル、奇数ノズルを定義することが可能である。
【0138】
<変形例3>
上記実施形態では、主走査方向についてインクジェットヘッド24の両側に仮硬化光源32A、32Bと本硬化光源34A、34Bを対称的に配置し(中心線に対して線対称に配置)、往復走査(双方向)で打滴及びUV露光を行う例を述べたが、インクジェットヘッド24の片側のみに仮硬化光源、本硬化光源を配置して、一方向走査時に描画を行う態様も可能である。
【0139】
また、本発明の実施に際しては、紫外線硬化型インクを利用することは必ずしも要求されない。すなわち、通常のインクを用い、仮硬化光源32A、32Bや本硬化光源34A,34Bの構成を省略する形態も可能である。
【0140】
<変形例4:副走査方向への送り手段について>
図1のインクジェット記録装置10では、記録媒体12を副走査方向に搬送する例を述べたが、ヘッドと記録媒体を副走査方向に相対的に移動させる手段は、この例に限定されない。例えば、図で説明したように、媒体を停止させて、ヘッドを副走査方向に移動させる態様も可能であるし、ヘッドの移動と記録媒体の搬送とを組み合わせて、副走査送りを実現する態様も可能である。
【0141】
<主走査方向と副走査方向の関係について>
図1で説明したように、主走査方向と副走査方向は、互いに直交関係であることが制御上、好ましい。ただし、発明の実施に際して、必ずしも厳密に垂直に交わる関係であることは要求されない。2次元の描画(作画)を行うためには、主走査方向と副走査方向は互いに交差する関係であればよい(平行でなければよい)。
【0142】
<装置応用例>
上述の実施形態では、ドロップオンデマンド型のワイドフォーマットインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。ワイドフォーマット以外のインクジェット記録装置への適用も可能である。また、本発明は、グラフフィック印刷用途に限らず、電子回路基板の配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体(「インク」に相当)として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、微細構造物形成装置など、各種の画像パターンを形成し得る様々な画像形成装置に適用可能である。
【0143】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【0144】
<付記;開示する発明の態様について>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0145】
(発明1):液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査手段と、
前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り手段と、前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り手段による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御手段と、を備え、前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、前記送り量制御手段は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0146】
この発明によれば、ノズルピッチ間の打滴を、ノズルピッチ単位(m本の走査線の単位)ですべて偶数ノズルのみ、または、奇数ノズルのみとする作画が行われる。これにより、吐出特性が近いノズルによる打滴が互いに隣接することとなり、ムラの視認性が低減する。
【0147】
この技術により、不良ノズルを有効に活用することができ、生産性の向上、及びヘッド歩留まりの向上を達成できる。
【0148】
(発明2):発明1に記載のインクジェット記録装置において、前記主走査方向に沿った1走査線上の各打滴点を記録するときの前記記録ヘッドの移動方向が同じ方向に揃うように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする。
【0149】
1走査線上の打滴点を往路、又は復路のいずれかに揃えて記録することにより、1走査線上の打滴の着弾位置ずれ方向が全て一定の方向に揃う。これにより、ムラの視認性が一層低減する。
【0150】
(発明3):発明1又は2に記載のインクジェット記録装置において、前記ノズル配列のうち、吐出性能が近いノズル同士の打滴が1走査線上で隣接するように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする。
【0151】
例えば、滴速が遅いノズル同士の打滴が1走査線上で隣接するような作画フォーマットとする。発明3によれば、ムラの視認性を抑えることができ、不良ノズルを有効に活用できる。
【0152】
(発明4):発明1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、 前記送り量制御手段は、前記ノズルピッチの単位で送り量を増減調整することを特徴とする。
【0153】
平均的なスワス幅に対して、ノズルピッチの整数倍の単位で送り量を調整することで、記録に使用するノズル番号をずらすことが可能である。
【0154】
(発明5):液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査工程と、前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り工程と、前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を行う打滴制御工程と、前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り工程による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御工程と、を有し、前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、前記送り量制御工程は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【0155】
発明5において、発明1から4の特徴を適宜組み合わせる態様も可能である。また、発明5のインクジェット記録方法を実施することによって、印刷物や回路基板、デバイス、微細構造物などを製造することができる。したがって、発明5の方法発明は、これら印刷物等の製造方法という観点で把握することも可能である。
【符号の説明】
【0156】
10…インクジェット記録装置、12…記録媒体、24…インクジェットヘッド、26…プラテン、28…ガイド機構、30…キャリッジ、36…インクカートリッジ、240…ヘッド、242ノズル、61,61C,61M,61Y,61K,61CL,61W…ノズル列、102…制御装置、104…記録媒体搬送制御部、106…キャリッジ駆動制御部、112…吐出制御部、114…搬送駆動部、116…主走査駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査手段と、
前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り手段と、
前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、
前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り手段による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御手段と、
を備え、
前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、
前記送り量制御手段は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記主走査方向に沿った1走査線上の各打滴点を記録するときの前記記録ヘッドの移動方向が同じ方向に揃うように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記ノズル配列のうち、吐出性能が近いノズル同士の打滴が1走査線上で隣接するように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記送り量制御手段は、前記ノズルピッチの単位で送り量を増減調整することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査工程と、
前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り工程と、
前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を行う打滴制御工程と、
前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り工程による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御工程と、
を有し、
前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、
前記送り量制御工程は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査手段と、
前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り手段と、
前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、
前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り手段による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御手段と、
を備え、
前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、
前記送り量制御手段は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記主走査方向に沿った1走査線上の各打滴点を記録するときの前記記録ヘッドの移動方向が同じ方向に揃うように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記ノズル配列のうち、吐出性能が近いノズル同士の打滴が1走査線上で隣接するように前記送り量及び各ノズルの打滴が制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記送り量制御手段は、前記ノズルピッチの単位で送り量を増減調整することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
液滴を吐出する複数のノズルが並べられたノズル配列を有する記録ヘッドを記録媒体に対して主走査方向に往復移動させるヘッド走査工程と、
前記記録ヘッドと前記記録媒体を副走査方向に相対移動させる副走査送り工程と、
前記主走査方向に沿った走査線上の打滴位置をm回の走査で記録し、前記副走査方向に沿った走査線上の打滴位置をn回の走査で記録することにより(m、nは2以上の整数)、前記ノズル配列における前記副走査方向のノズルピッチよりも小さい打滴点間隔となる所望の記録解像度の画像を記録するように、N回(N=m×n)の走査による前記記録ヘッドの打滴を行う打滴制御工程と、
前記N回の走査を構成する各走査ごとに前記副走査送り工程による前記副走査方向の相対移動の送り量を制御する送り量制御工程と、
を有し、
前記ノズル配列における前記副走査方向の一方の端から他方の端に向かって各ノズルに対して、順番に、連続する整数によってノズル番号を付与したときに偶数番号となるノズルを偶数ノズル、奇数番号となるノズルを奇数ノズルと呼ぶとき、
前記送り量制御工程は、前記N回の走査により、前記ノズルピッチ間を埋めるように記録されるm本の走査線上の各打滴位置を記録するノズルが、当該m本の走査線の領域単位ごとに、前記偶数ノズル同士、又は前記奇数ノズル同士に揃うように前記送り量を制御することを特徴とするインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図23】
【図24】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−213909(P2012−213909A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80561(P2011−80561)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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