説明

インクジェット記録装置

【課題】 本発明は、インクジェット記録装置において、プラテンのインク汚れをクリーニングすることを目的とする。
【解決手段】 本発明は、複数層から成る記録用紙であり、かつ印字されるべき表面と逆側の裏面も水分を吸収する層から成る記録用紙に対して、記録用紙表面に記録用紙の許容しうる最大のデューティーで帯状のパターンを印字して記録用紙がカールした後、プラテン傾斜部に記録用紙先端部を通過させてプラテンおよびプラテン傾斜部をクリーニングすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インク滴を被記録材に吐出し画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録装置は、数pl〜数十plという微小な液滴を吐出するため、記録のためのインク滴(主滴)以外に、主滴より更に細かいインク滴(ミスト)も同時に噴霧される。通常、ミストは極めて微小であって、吐出後の減速も速いため、ミストの大部分は記録媒体に付着せず記録装置内を浮遊する。
【0003】
浮遊したミストは拡散し、記録装置内のいたる所に付着する。
【0004】
従来例としては、例えば特許文献1と特許文献2をあげることが出来る。
【特許文献1】特開2004−66713号公報
【特許文献2】特開2005−144943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミストは非常に小さい液滴であるため、少量の付着では汚れはほとんど問題にならないが、長期にわたる使用の後や、比較的大きなデューティー比(ヘビーデューティー)のパターンを繰り返し記録した後では、汚れが堆積して様々な問題を引き起こす。その1つとして、紙、フィルムなどのシート状の記録媒体を支持して平面状に保つプラテンと、シート状の記録媒体が引っかかる事なくスムーズにプラテン上に誘導される事を目的としたプラテン傾斜部があり、そのプラテン傾斜部と、の汚れが挙げられる。記録媒体の搬送通過面であるプラテンが汚れると記録媒体そのものに汚れが転写してしまうため、記録品位を著しく劣化させるという深刻な事態を引き起こす。また何らかの方法を以ってプラテンをクリーニングして記録媒体への転写を防いだとしても、プラテン傾斜部が汚れていると、記録媒体の状態によって、記録媒体の先端部や後端部がプラテン傾斜部に誘導されながらプラテンに搬送されることにより、記録媒体先端部や後端部に汚れが転写してしまい、記録品位を劣化させることに変わりはない。前述の記録媒体の状態とは、例えば腰のある記録媒体で印刷面を上にして平面に置いたときに凸方向にある程度大きくカールしている状態などを指している。
【0006】
したがって、クリーニングする際には、プラテンとプラテン傾斜部とを両方クリーニングする必要がある。
【0007】
本発明では、プラテン傾斜部を容易にクリーニングできるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の構成は、
インクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッド下流側に傾斜部を有するプラテンと、
記録用紙を搬送する搬送手段と、
複数層から成る記録用紙であって、印字されるべき表面と逆側の裏面も水分を吸収する層から成る記録用紙に前記記録ヘッドによって記録用紙の許容しうる最大のデューティーで帯状のパターンを印字し、記録用紙がカールした後に前記搬送手段によって記録用紙先端部が前記傾斜部を通過するように制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プラテン傾斜部を容易にクリーニングできるインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1〜図4はインクジェット記録装置の印刷領域のプラテンに対しての断面図である。記録用紙5は、上流側プラテン2に支持されながらA方向に搬送され(図1参照)、ふちなし印字用のプラテン開口部6を通り、そして下流側プラテン3に到達し(図3参照)、最後にはインクジェット記録装置から排紙される。記録用紙5は先端部がプラテン開口部6に到達した時から、後端部がプラテン開口部6を抜けるまでヘッド1のインク吐出による記録が行われる。
【0012】
記録用紙5は、インク受容層を含む複数層から成り、表面のみでなく裏面でもインクを吸収する比較的一般的なインクジェット用記録用紙であり、また表面にインクを吸収することにより、表面側の層が膨潤するような特徴を持っている。
【0013】
次にクリーニングについて、記録用紙の一連の搬送方法と併せて説明する。
【0014】
被クリーニング対象は、上流側プラテン2、下流側プラテン3、およびプラテン傾斜部4である。
【0015】
<上流側プラテンのクリーニング>
上流側プラテン2は記録用紙5を通紙して、そのままA方向へ搬送するだけで、記録用紙5の裏面でインク汚れをクリーニングすることとなり、上流側プラテン2のクリーニングは終了となる。
【0016】
<プラテン傾斜部のクリーニング>
記録用紙5の先端部がプラテン開口部6に到達したときから、図5に示すような、先頭部分と左右に微小な余白を設けて、記録用紙5の許容される最大のデューティーで帯状のパターンを印字する。
【0017】
印字が行われると記録用紙5の先端は大きく下側にカールする。これは記録用紙5の表面の層が大量のインクにより膨潤する反面、裏側の複数層が膨潤しないままでいることによって生じるカールである(図2参照)。
【0018】
印刷する帯状パターンの長さC(図5参照)を余裕をもって用意しているため(詳しくは後述する)、記録用紙5の先端は被クリーニング対象であるプラテン傾斜部4の先端をA方向に通り過ぎてしまっているので、一旦方向Aと逆方向に搬送して記録用紙5の先端が少なくともプラテン誘い部4の先端まで戻し(図3)、そこから再度A方向に搬送を開始する。記録用紙5の先端はプラテン傾斜部4に誘導されると同時に、プラテン傾斜部4のインク汚れをクリーニングを行うこととなる。このままプラテン傾斜部4が終わるまで記録用紙5を搬送することでプラテン傾斜部4のクリーニングは終了となる。
【0019】
ここで記録用紙5に印字する帯状パターンについて説明する。
【0020】
基本的には記録用紙5の幅方向(短手方向)のほぼ全長および長さ方向(長手方向)のある程度の長さで形成される領域に対して、十分な量のインクを吐出することにより表面の層が膨潤して記録用紙5はカールする。しかしこの印字領域があまりにも大きいと、例えば図6のように搬送方向Aに対して先端側のほぼ半分くらいだと、記録用紙5は同様にカールはするが、それだけ吐出するインク量が多くなるという無駄が生じる。そのためインクを吐出する領域は必要なカール量になる最低限で済ませた方が望ましい。そこで図5のCの長さを適切に設定する必要がある。記録用紙5がプラテン傾斜部4をクリーニングするのに、少なくともカールした記録用紙5の先端がプラテン傾斜部4の先端部に当接しなければならないので、上流側プラテン2の端部とプラテン傾斜部4の先端部との距離Bよりは必要となる(図1参照)。よって印字領域の長さCを前記距離Bとほぼ同等以上に設定しておくことが適正量と言える。
【0021】
次に記録用紙5に印字する帯状パターンの位置について説明する。
【0022】
前述したある程度の領域で十分なインク吐出をすることで記録用紙5はカールする。記録用紙5がカールして、先端部がプラテン傾斜部4の先端部に当接することができれば、この帯状パターンの印字位置は問わない。しかし、帯状パターンとして印字する際に、何らかの原因で記録用紙5の許容しうる最大インク量よりも多く印字してしまった場合(例えば、保証外の高湿度環境での使用やユーザーのミスによる不適合記録用紙の使用など)、記録用紙5が排出される際に、下流側プラテン3の下流にある不図示の排紙ローラーに、吸収されなかったインクが転写して汚してしまう可能性がある。排紙ローラーがインクで汚れてしまうと、次からの印字も排紙の際に排紙ローラーから記録用紙にインクが転写してしまい、結局印刷品位を著しく落としてしまうこととなり、クリーニングの意味がなくなってしまう。たとえこのような失敗があったとしても、図5に示すように、記録用紙5の帯状パターンから記録用紙後端側に十分な未印字領域があれば、帯状パターンによって汚してしまった排紙ローラーの転写インクを未印字領域によって再びクリーニングすることができ、次の印字に影響を与えなくてすむわけである。このような理由により、本提案では帯状パターンより後ろ側には未印字領域を多く取るべく、先端部に印字しているわけである。
【0023】
しかし帯状パターンを後端部に印字することによって、本提案の本旨であるプラテンおよびプラテン傾斜部のクリーニングができないかと言うとそうではなく、同様にクリーニングは可能である。
【0024】
また、本提案では記録用紙5の短手方向に微小に余白を設けて帯状パターンを印字している。これは余白のない印字(ふちなし印字、図7参照)をした場合に、記録用紙外にインクが吐出されるとミストが増加することがよく知られているので、無駄にミストを増加させないための措置である。また本提案では、同様に記録用紙5の長手方向先端部にも微小余白を設けて帯状パターンを印字している。これも同様な理由によるものと、さらに加えて後述の理由によるものである。それは、記録用紙5の先端部によって、プラテン傾斜部4のインク汚れをクリーニングする際に、記録用紙5の先端はプラテン傾斜部4の傾斜面にどこが当接するかはカールの状態などで、変わることもあり、例えば記録用紙5の裏面側の角が当接することもあれば、表面側の角が当接することもあり、同様に先端の面が当接することもあるからである。記録用紙5の先端部の表面の角がプラテン傾斜部4に当接したときに、記録用紙5の先端部まで帯状パターンにより十分な量のインクが吸収されている(図7参照)と、まったく吸収されていない場合と比較して、インク吸収量が格段に減ってしまいクリーニングにならなくなってしまう。このような理由から、記録用紙5の先端部のどこがプラテン傾斜部4に当接してもクリーニング効果が得られるように余白を設けているわけである。
【0025】
<下流側プラテン>
下流側プラテン3も同じ平面部である上流側プラテン2とクリーニング方法は同じである。すなわちプラテン傾斜部4のクリーニングに続けて、そのまま記録用紙5を搬送し続けることで(図4参照)、記録用紙5の裏面により下流側プラテン3のインク汚れをクリーニングすることとなり、下流側プラテン3のクリーニングは終了となる。
【0026】
以上の上流側プラテン、プラテン傾斜部、下流側プラテンのクリーニングは、記録用紙5の連続した搬送によって1度で行われており、この動作により上流側プラテン、プラテン傾斜部および下流側プラテンのインク汚れをクリーニングすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インクジェット記録装置の印刷領域のプラテンに対しての断面図である。
【図2】インクジェット記録装置の印刷領域のプラテンに対しての断面図である。
【図3】インクジェット記録装置の印刷領域のプラテンに対しての断面図である。
【図4】インクジェット記録装置の印刷領域のプラテンに対しての断面図である。
【図5】記録用紙に印字された帯状のパターン。
【図6】記録用紙に印字された帯状のパターン。
【図7】記録用紙に印字されたフチ無し画像。
【符号の説明】
【0028】
1 ヘッド
2 上流側プラテン
3 下流側プラテン
4 プラテン傾斜部
5 記録用紙
6 プラテン開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッド下流側に傾斜部を有するプラテンと、
記録用紙を搬送する搬送手段と、
複数層から成る記録用紙であって、印字されるべき表面と逆側の裏面も水分を吸収する層から成る記録用紙に前記記録ヘッドによって記録用紙の許容しうる最大のデューティーで帯状のパターンを印字し、記録用紙がカールした後に前記搬送手段によって記録用紙先端部が前記傾斜部を通過するように制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−160614(P2007−160614A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357825(P2005−357825)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】