説明

インクジェット記録装置

【課題】表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体を加熱加圧してそのインク受容層を透明化するに際し、該記録媒体の幅方向に亘って均一に透明化し得るインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体1に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッド3と、記録媒体1を加熱加圧して該記録媒体1のインク受容層を透明化する加熱加圧手段4と、該加熱加圧手段4の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッド3により記録の行われた記録媒体1を前記加熱加圧手段4まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段4が、記録媒体1の幅方向に分割された複数の発熱体43を含んで構成され、前記温度制御手段は、該複数の発熱体43のそれぞれを独立に制御可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録装置に関し、詳しくは、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行った後に、加熱加圧手段により記録媒体を加熱加圧するようにしたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の記録面上に微小液滴状のインクを吐出させて画像記録を行うインクジェット記録方式は、近年の技術進歩により銀塩写真に迫る高画質化並びに装置の低価格化が可能となるに及び急速に普及するに至っている。
【0003】
かかるインクジェット記録において画像を記録形成した記録媒体表面に光沢を付与し、更に画像の水との接触による滲みを防止すると共に耐擦過性を向上させる目的で、表層(画像記録面側)に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体を用いて画像を記録形成し、その後、記録媒体を加熱加圧することにより上記インク受容層中の熱可塑性樹脂粒子を溶融及び平滑化させ、該インク受容層を透明化する方法が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる技術において、記録ヘッドにより画像が記録形成された記録媒体は、インク受容層を透明化するために搬送手段によって加熱加圧手段に搬送される。この加熱加圧手段には例えば発熱体を内蔵した加熱ローラが用いられ、記録媒体は搬送されつつその過程で加熱ローラにより加熱加圧されてインク受容層が透明化される。
【0005】
このとき、インク受容層は記録媒体の全面に亘って均一に透明化されることが望まれるが、発熱体自体に発熱ムラが存在すると加熱温度が不均一となり、このような加熱ローラによって記録媒体を搬送しながら加熱加圧すると、搬送方向と略直交する記録媒体の幅方向に亘って透明化にムラが発生する問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体を加熱加圧してそのインク受容層を透明化するに際し、該記録媒体の幅方向に亘って均一に透明化し得るインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、以下の手段によって達成される。
【0008】
請求項1記載の発明は、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段は、前記記録ヘッドにより記録の行われた複数の記録媒体を並列に並べて同時に処理可能な幅を有し、同時に加熱加圧する記録媒体の列数が相対的に少ないときは前記記録媒体の搬送方向の単位長さ当りの記録時間を相対的に短くすると共に、前記加熱加圧手段における加熱加圧時間を相対的に短くし且つ前記温度制御手段による前記加熱加圧手段の保持温度を相対的に高くすることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0009】
これにより、加熱加圧手段による加熱加圧時間を短縮させても、記録媒体のインク受容層を良好に透明化させることができようになるため、画像記録時間の短縮化と同時に加熱加圧時間の短縮化を図ることができ、高速に画像記録と加熱加圧処理を行うことができることで、画像プリント作成の高速化が可能である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記加熱加圧手段が、記録媒体の幅方向に分割された複数の発熱体を含んで構成され、前記温度制御手段は、該複数の発熱体のそれぞれを独立に制御可能としたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置である。
【0011】
これにより、発熱体の発熱ムラ等に起因する加熱加圧手段の加熱ムラをなくし、加熱加圧手段による加熱温度を記録媒体の幅方向に亘って適切な温度に一様に制御することができ、記録媒体の表面をムラなく透明化させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記複数の発熱体は、その長さ方向が記録媒体の幅方向に沿い且つ隣接する発熱体の端部同士が互いに重なるように並設されていることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置である。
【0013】
一般に発熱体の端部には、発熱体への通電を行うための電極等が設けられており、発熱体を長さ方向で見た場合、その端部付近は中央付近に比べて発熱量が低い傾向がある。このため、隣接する発熱体の端部同士を互いに重なるようにすることで、記録媒体の幅方向に沿って加熱加圧手段の発熱体端部に相当する部位の部分的な温度低下を防ぐことができる。また、隣接する発熱体の電極同士が対向状に配置されないため、互いの距離を確保することができ、電気的な短絡の危険を減らすこともできる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記加熱加圧手段が、種類の異なる複数の記録媒体を同時に処理する際には、記録媒体の加熱温度が各々の記録媒体の種類に応じた最適値となるよう、前記温度制御手段は前記複数の発熱体の制御を行うことを特徴とする請求項2又は3記載のインクジェット記録装置である。
【0015】
これにより、複数種類の記録媒体を同時並列的に加熱加圧処理する場合でも、それぞれの記録媒体の種類に応じた最適な温度で加熱加圧することができ、記録媒体の種類にかかわらず相互の透明化のムラをなくし、常に良質な画像プリントを形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体を加熱加圧してそのインク受容層を透明化するに際し、加熱加圧手段による加熱加圧時間を短縮させても、記録媒体のインク受容層を良好に透明化させることができようになるため、画像記録時間の短縮化と同時に加熱加圧時間の短縮化を図ることができ、高速に画像記録と加熱加圧処理を行うことができることで、画像プリント作成の高速化が可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明に係るインクジェット記録装置に主として用いられる記録媒体1は、図5に示すように、支持体1Aの表層に熱可塑性樹脂粒子を含有するインク受容層1Bを有している。このインク受容層1Bの内側に隣接して色材とインク溶媒成分がインク受容層1B表面で分離した後にインク溶媒成分が吸収される空隙層を有するインク溶媒吸収層1Cを有していても良い。
【0019】
支持体1Aとしては、従来からインクジェット用記録媒体として用いられている支持体を用いることができ、例えば、普通紙、アート紙、コート紙及びキャストコート紙等の紙製支持体の他、プラスチック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体、これらを貼り合せた複合支持体を用いることができる。
【0020】
インク受容層1Bに含有される熱可塑性樹脂粒子としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられる。熱可塑性樹脂粒子は、インク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮して適宜選択される。
【0021】
インク溶媒吸収層はインク溶媒吸収能を有しており、これは無機固体微粒子をインク溶媒吸収層中に含有させることによって発揮する。この目的で使用される無機固体微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等が挙げられる。
【0022】
後述する記録ヘッドから記録媒体1の上記インク受容層1Bに向けて吐出されたインクは、該インク受容層1B及びインク溶媒吸収層1Cに吸収され、画像が記録される。このようにして画像が記録された記録媒体1は、表面のインク受容層1Bが加熱加圧されることで、該インク受容層1B中に含有される熱可塑性樹脂粒子が溶融及び平滑化され、透明化されて、記録媒体1の表面に透明な保護層が形成される。
【0023】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。
【0024】
記録媒体1は、図示しない供給手段により供給され、記録媒体搬送手段(以下、単に搬送手段という。)2によって図示右方向へ搬送され、搬送手段2の下流側に配置された記録ヘッド3によって記録媒体1の記録面上に所定の画像が記録形成されるようになっている。
【0025】
記録媒体1は、図示例ではロール状に巻回された長尺状のロールペーパーを用いた例を示しているが、これに限らず、適宜サイズに裁断されたシート状の記録媒体であってもよい。
【0026】
搬送手段2は、図示しない駆動手段により回転駆動される搬送ローラ21と、記録媒体1を該搬送ローラ21との間に挟みつけるための従動ローラ22とを有して構成され、記録媒体1を搬送ローラ21と従動ローラ22との間に挟持した状態で、搬送ローラ21の回転駆動により、後述する記録ヘッド3による画像記録に応じて図示右方向(副走査方向)へ所定量搬送するようになっている。
【0027】
記録ヘッド3は、搬送手段2の下流側に配置され、記録媒体1の幅方向に亘り該記録媒体1の搬送方向と略直交するように架設された走査ガイド31に移動可能に取り付けられ、図示しない駆動手段によって該走査ガイド31に沿って主走査移動可能に構成されている。
【0028】
記録ヘッド3には、例えばY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)等の各色のインクが貯留された複数のインクタンクを有しており、走査ガイド31に沿って主走査移動しながら、画像データに応じて所定のインクを所定のタイミングで吐出させることにより、上記搬送手段2による記録媒体1の搬送と協働して、記録媒体1の記録面上に所定の画像を記録形成する。
【0029】
記録媒体1を挟んで記録ヘッド3の反対側には、記録媒体保持部32が配置されており、図示しない吸引手段によりその表面に記録媒体1を吸着保持し、記録媒体1の記録面上に記録ヘッド3により画像を記録形成する際の記録媒体1の浮き上がりを防止する。
【0030】
加熱加圧手段4は、記録ヘッド3によって画像が記録形成された後の記録媒体1に対して加熱加圧するべく記録ヘッド3の下流側に配置されており、加熱ローラ41と、記録媒体1を該加熱ローラ41との間に挟み付けるための圧着ローラ42とを有して構成されている。
【0031】
加熱ローラ41は中空状のローラからなり、図示しない駆動手段により回転駆動可能に構成されると共に、熱源であるハロゲンランプヒーター、セラミックヒータ、ニクロム線等の発熱体43を内蔵しており、該発熱体43の熱により加熱ローラ41を加熱させ、記録媒体1のインク受容層中に含まれる熱可塑性樹脂粒子を溶融させる。この加熱ローラ41は、発熱体43から発せられる熱により効率良く記録媒体1を加熱することができるように熱伝導率の高い材質により形成されることが好ましく、金属ローラが好ましく用いられる。表面には記録媒体1を加熱加圧した際のインクによる汚染を防止するためフッ素樹脂コートされていることが好ましい。その他、耐熱シリコンを被覆したシリコンゴムローラを用いることもできる。
【0032】
また、圧着ローラ42は、図示しない付勢手段により記録媒体1を挟んで加熱ローラ41に対して所定の加圧力をもって圧着するように付勢され、加熱ローラ41との間で記録媒体1を加圧する。
【0033】
この圧着ローラ42と加熱ローラ41との間で形成されるニップ領域は、記録媒体1を加熱ローラ41の表面に対して大きな接触面積で圧接させて加熱加圧時間を多く稼ぐことができるように、ある程度の幅を有していることが望ましい。従って、圧着ローラ42は、少なくともその表面が弾性を有することが好ましく、例えば金属軸の表面に弾性ゴムを被覆した弾性ローラが好ましく用いられる。
【0034】
前記記録ヘッド3によって所定の画像が記録形成された記録媒体1は搬送手段2によってかかる加熱加圧手段4に搬送される。加熱加圧手段4では、加熱ローラ41及び圧着ローラ42の間に記録媒体1を挟持し、加熱ローラ41の回転駆動によって所定の速度で搬送しつつ、その過程で記録媒体1を加熱及び加圧させ、表層のインク受容層中の熱可塑性樹脂粒子を溶融及び平滑化させて透明化させる。
【0035】
図2に、発熱体43を内蔵した加熱ローラ41の構成を示す。図2(a)は加熱ローラ41の略全幅に亘る幅広の記録媒体1aを使用した場合を示している。
【0036】
発熱体43は、記録媒体1aの幅方向に分割された複数の発熱体43a、43b、43cによって構成され、それらが加熱ローラ41内において該加熱ローラ41の軸方向に沿って並設されている。なお、分割数は図示する3つに限定されない。また、各発熱体43a、43b、43cのそれぞれの長さも適宜任意に設定し得る。
【0037】
加熱加圧手段4は温度制御手段(図示せず)を含んでおり、各発熱体43a、43b、43cのそれぞれはこの温度制御手段によって独立に温度が制御可能とされる。加熱ローラ41には、該加熱ローラ41の表面に近接し且つ各発熱体43a、43b、43cにそれぞれ対応する位置及び数の温度センサ5a、5b、5cが設けられており、温度制御手段はこれら各温度センサ5a、5b、5cによって加熱ローラ41の表面温度を検出することによって、対応する各発熱体43a、43b、43cの温度を、記録媒体1a表層のインク受容層に含有される熱可塑性樹脂粒子を溶融させるために必要な所定の温度範囲にそれぞれ適切に保持し得るようになっている。
【0038】
このように各発熱体43a、43b、43cを独立に温度制御可能とすることで、加熱ローラ41をその軸方向に亘ってきめ細かに温度制御することができる。従って、発熱体自体の発熱ムラ等に起因する加熱ローラ41の軸方向の加熱ムラをなくし、かかる加熱ローラ41を含む加熱加圧手段4による加熱温度を、記録媒体1aの幅方向に亘って適切な温度に一様に制御することができるようになり、記録媒体1a表面をムラなく透明化させることが可能である。
【0039】
図2(b)は、図2(a)と同一の加熱ローラ41を用いて相対的に幅狭の記録媒体1bに対する加熱加圧を行う場合を示している。
【0040】
この場合、記録媒体1bと加熱ローラ41との接触部41aは、該加熱ローラ41の軸方向の一部(図示例では略中央部)だけであるため、発熱体43も複数に分割されたうちの一部、ここでは記録媒体1bの幅と略同一長さを有する中央に位置する発熱体43aのみを温度制御手段によって適正温度に保持するようにし、その両端の発熱体43b、43cの温度を下げる或いはそれら発熱体43b、43cへの通電を停止するようにして、記録媒体1bの幅に応じて各発熱体43a、43b、43cの温度を図2(a)に示す状態から変更制御する。
【0041】
記録媒体1bと加熱ローラ41との接触部41a以外の記録媒体1bが通過しない加熱ローラ41の表面は、記録媒体1bによって熱が奪われないため、上述の如く記録媒体の幅に応じて各発熱体43a、43b、43cの温度制御を変更することで、加熱ローラ41において記録媒体1bの加熱に直接関与しない部位の部分的な温度の過上昇を防ぎ、結果として加熱加圧手段4と記録媒体1bとの接触面温度を該記録媒体1bの幅方向に亘って一様にすることができると共に、消費電力の無駄を低減させることができる。
【0042】
図3は、複数の記録媒体を並列に並べて一つの記録ヘッドによって同時に画像を記録形成するようにした態様を示している。
【0043】
図3(a)では、二つの記録媒体11、12が並列状に搬送可能とされ、一つの記録ヘッド3の走査範囲W1が二つの記録媒体11、12の幅方向に亘って延びていることで、該記録ヘッド3によって記録媒体11、12に対して同時に画像を記録形成するようになっている。なお、図示する態様では、各記録媒体11、12はそれぞれ幅が異なり、相対的に幅狭の記録媒体11と相対的に幅広の記録媒体12とに対して同時に画像を記録形成するようになっている。本発明に係る記録装置は、このように相対的に幅の異なる複数の記録媒体11、12を同時並列的に画像記録及び加熱加圧処理する場合に特に有効である。
【0044】
加熱加圧手段4は、加熱ローラ41及び圧着ローラ(図示せず)が並列状の記録媒体11、12のそれぞれを同時に加熱加圧可能な幅を有しており、記録ヘッド3によって画像が記録形成された後の各記録媒体11、12を同時に加熱加圧してそれぞれのインク受容層を透明化させることができるようになっている。
【0045】
この態様において、加熱ローラ41に内蔵された発熱体43は、43a、43b、43cの3つに分割されており、各発熱体43a、43b、43cにそれぞれ対応する位置及び数の温度センサ5a、5b、5cによって加熱ローラ41の表面温度を検出することで、温度制御手段によって各発熱体43a、43b、43cをそれぞれ独立に温度制御するようになっている。
【0046】
この図3(a)に示す態様では、幅狭の記録媒体11と幅広の記録媒体12の双方がそれぞれ接触部41a、41bにおいて加熱ローラ41と接触しているため、各発熱体43a、43b、43cの温度を温度制御手段によってそれぞれ制御し、加熱ローラ41をそれぞれ記録媒体11、12に対して適正温度に加熱保持させるようになっている。
【0047】
一方、かかる加熱加圧手段4を有するインクジェット記録装置において、図3(b)に示すように、幅広の記録媒体12を使用せず或いは記録媒体12に対する画像記録が終了したことにより、記録媒体11の1列のみを使用して記録ヘッド3により画像を記録形成する場合には、該幅狭の記録媒体11と加熱ローラ41とは接触部41aにおいて該記録媒体11の幅で接触するのみであるため、複数に分割された各発熱体43a、43b、43cの温度制御を、該接触部41aの位置に対応する発熱体43aを発熱させて温度制御手段により記録媒体11のインク受容層を透明化させるに必要な温度範囲に適正に制御すると同時に、記録媒体11の加熱に直接関与しない発熱体43b、43cの温度を低下させ或いは通電を停止させるように変更制御する。
【0048】
なお、ここでは2列の記録媒体11、12(図3(a))から1列の記録媒体11(図3(b))に変更された場合について例示しているが、温度制御手段は、同時に加熱加圧する記録媒体の数、各記録媒体の幅及び各記録媒体と加熱加圧手段4とが接触する幅方向の位置に応じて各発熱体43a、43b、43cの温度を変更制御する。
【0049】
これにより、同時に加熱加圧処理する記録媒体の数及び幅にかかわらず、記録媒体と加熱加圧手段4との接触面温度を幅方向に亘って一様にすることが可能となる。すなわち、複数の記録媒体11、12を同時に加熱加圧処理する場合では、各記録媒体11、12相互での透明化のムラの発生を防止することができるようになり、また、複数の記録媒体11、12のうちのいずれか(記録媒体11)を加熱加圧手段4の幅方向の一部のみに接触させて加圧加熱処理する場合では、記録媒体11の加熱に直接関与しない部位の発熱体43b、43cの温度低下或いは通電停止により加熱ローラ41の部分的な温度の過上昇を防ぎ、結果として加熱加圧手段4と記録媒体11との接触面温度を該記録媒体11の幅方向に亘って一様にすることができると共に、消費電力の無駄を低減させることができる。
【0050】
図示例では、発熱体43を43a、43b、43cの3つに分割したが、各発熱体43a、43b、43cのそれぞれを更に複数に分割してもよい。各発熱体43a、43b、43cのそれぞれを更に複数に分割して独立に温度制御可能とすることにより、加熱ローラ41を各記録媒体11、12のそれぞれの幅方向に亘って更にきめ細かに温度制御することが可能であり、各記録媒体11、12のインク受容層の透明化を一層良好に行うことができる。
【0051】
ところで、図2(b)に示すように相対的に記録媒体の幅が狭くなる場合や、図3(b)に示すように相対的に記録媒体の列数が少なくなる場合には、画像記録時に記録ヘッド3が動作する記録幅(本実施形態に示すように記録ヘッド3が記録媒体の幅方向に沿って走査移動する場合にはその走査範囲)Wを、幅広の記録媒体1aに記録する際(図2(a))及び複数列の記録媒体11、12を同時に記録する際(図3(a))の記録幅W1に対して、幅狭の記録媒体1bに記録する際(図2(b))及び1列の記録媒体11のみに記録する際(図3(b))の記録幅W2が、W1>W2となるようにすることで、記録幅W1の場合の記録ヘッド3の走査周期t1に対して、記録幅W2の場合の記録ヘッド3の走査周期t2をt1>t2とし、画像記録時間を短縮化することが可能である。このとき加熱加圧手段4による加熱加圧処理も高速化することにより処理時間の短縮化を図ることが望まれるが、単に加熱加圧時間を短縮しようとすると、記録媒体11のインク受容層を透明化するために十分な加熱加圧処理を行うことができなくなる虞れがある。
【0052】
そこで、記録ヘッドが動作するに必要な記録幅Wが小さくなるのに応じて、すなわち、図2(a)(b)に示すように記録媒体の幅が狭くなるのに応じて、或いは図3(a)(b)に示すように同時に加熱加圧処理される記録媒体の列数が少なくなるのに応じて、記録媒体の搬送方向の単位長さ当りの記録時間を相対的に短くしたときは、加熱加圧手段4における記録媒体の加熱加圧時間もそれに応じて相対的に短くし且つ温度制御手段により各発熱体43a、43b、43cの温度を制御して、加熱ローラ41の保持温度を相対的に高くすることが好ましい。加熱加圧手段4による記録媒体の加熱加圧時間を短くするには、加熱ローラ41の回転速度を相対的に速くすることで調整可能である。
【0053】
これにより、加熱加圧手段4による加熱加圧時間を短縮させた場合でも、そのインク受容層を良好に透明化させることができるようになるため、画像記録時間の短縮化と同時に加熱加圧時間の短縮化を図り得るものとなり、高速に画像記録と加熱加圧処理を行うことができるようになり、画像プリント作成の高速化が可能である。
【0054】
更に、図3(a)に示す態様において、同時に加熱加圧処理される各記録媒体11、12にはそれぞれ種類が異なるものを用いることもできる。
【0055】
ここでいう記録媒体の種類が異なるとは、記録媒体の支持体の材質が異なる場合、支持体の厚さが異なる場合、記録媒体のインク受容層中に含有される熱可塑性樹脂粒子が異なる場合、記録媒体表面の面質(絹目、光沢等)が異なる場合等が挙げられる。
【0056】
このように記録媒体11と12とで種類が異なるものを同時に処理する場合には、記録媒体11、12の加熱温度が各々の記録媒体11、12の種類に応じた最適値となるように、温度制御手段を制御して各発熱体43a、43b、43cの制御を行うことが好ましい。例えば支持体が厚手の記録媒体11と薄手の記録媒体12を同時並列的に処理する場合、熱容量の相違によりそれぞれインク受容層を良好に透明化させるに必要な加熱温度が異なる場合があるため、それらを一様に制御すると記録媒体11、12相互の透明化にムラが生じる虞れがある。このため、記録媒体11と加熱ローラ41との接触部41aの目標制御温度T1と記録媒体12と加熱ローラ41との接触部41bの目標制御温度T2とを、T1>T2に設定することで、それぞれの記録媒体11、12に適した加熱温度に制御する。
【0057】
これにより、複数種類の記録媒体11、12を同時並行的に加熱加圧処理する場合でも、それぞれの記録媒体11、12の種類に応じた最適な温度で加熱加圧することができ、記録媒体11、12相互の種類にかかわらず透明化のムラをなくし、常に良質な画像プリントを形成することができる。
【0058】
なお、以上の説明では、記録媒体1の記録面側に加熱ローラ41が配設されているが、加熱ローラ41は記録媒体1の記録面とは反対側に配置されてもよい。また、圧着ローラ42も中空状のローラによって形成すると共に発熱体を内蔵して加熱機能を持たせるようにすることも好ましい。このようにすると記録媒体1を加熱ローラ41と加熱機能を有する圧着ローラ42との双方で加熱加圧することができるようになり、それだけ加熱加圧時間の短縮化を図ることができ、一層の高速処理が可能である。
【0059】
また、以上の説明では、複数の各発熱体43a、43b、43c…の長さ方向が加熱ローラ41の軸方向に沿って略一軸状に並設されるものについて説明したが、図4に示すように、複数の発熱体43a、43b、43c、43d…を、その長さ方向が記録媒体1の幅方向に沿い且つ隣接する発熱体の端部同士が互いに重なるように並設することも好ましい。
【0060】
一般に発熱体43の端部には、発熱体43への通電を行うための電極等が設けられており、発熱体43を長さ方向で見た場合、その端部付近は中央付近に比べて発熱量が低い傾向があるため、各発熱体43a、43b、43c…の長さ方向が略一軸状に並設されるようにすると、記録媒体1の幅方向に沿って加熱加圧手段4の発熱体端部に相当する部位の温度が部分的に低くなる場合がある。このような場合、隣接する発熱体43a、43b、43c、43d…の端部同士を互いに重なるようにすることで、記録媒体1の幅方向に沿って加熱加圧手段4の発熱体端部に相当する部位(図中一点鎖線で示す部位A1、A2、A3…)の部分的な温度低下を防ぐことができる。また、隣接する発熱体の電極同士が対向状に配置されないため、互いの距離を確保することができ、電気的な短絡の危険を減らすこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図
【図2】加熱ローラの断面構成を示し、(a)は幅広の記録媒体を使用した場合を示す平面断面図、(b)は幅狭の記録媒体を使用した場合を示す平面断面図
【図3】加熱ローラの断面構成を示し、(a)は2列の記録媒体を使用した場合を示す平面断面図、(b)は1列の記録媒体を使用した場合を示す平面断面図
【図4】加熱ローラの他の態様を示す平面断面図
【図5】記録媒体の積層構成を示す断面図
【符号の説明】
【0062】
1、1a、1b、11、12 記録媒体
2 記録媒体搬送手段
3 記録ヘッド
4 加熱加圧手段
41 加熱ローラ
42 圧着ローラ
43、43a、43b、43c、43d 発熱体
5a〜5c 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層に熱可塑性樹脂粒子を含むインク受容層を有する記録媒体に対してインクを吐出して記録を行う記録ヘッドと、記録媒体を加熱加圧して該記録媒体のインク受容層を透明化する加熱加圧手段と、該加熱加圧手段の温度を所定の温度範囲に保持する温度制御手段と、前記記録ヘッドにより記録の行われた記録媒体を前記加熱加圧手段まで搬送する記録媒体搬送手段とを有するインクジェット記録装置において、前記加熱加圧手段は、前記記録ヘッドにより記録の行われた複数の記録媒体を並列に並べて同時に処理可能な幅を有し、同時に加熱加圧する記録媒体の列数が相対的に少ないときは前記記録媒体の搬送方向の単位長さ当りの記録時間を相対的に短くすると共に、前記加熱加圧手段における加熱加圧時間を相対的に短くし且つ前記温度制御手段による前記加熱加圧手段の保持温度を相対的に高くすることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記加熱加圧手段が、記録媒体の幅方向に分割された複数の発熱体を含んで構成され、前記温度制御手段は、該複数の発熱体のそれぞれを独立に制御可能としたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記複数の発熱体は、その長さ方向が記録媒体の幅方向に沿い且つ隣接する発熱体の端部同士が互いに重なるように並設されていることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記加熱加圧手段が、種類の異なる複数の記録媒体を同時に処理する際には、記録媒体の加熱温度が各々の記録媒体の種類に応じた最適値となるよう、前記温度制御手段は前記複数の発熱体の制御を行うことを特徴とする請求項2又は3記載のインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−12480(P2009−12480A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215156(P2008−215156)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2000−265073(P2000−265073)の分割
【原出願日】平成12年9月1日(2000.9.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】