説明

インクジェット記録装置

【課題】 インク吐出特性のばらつきを抑える。
【解決手段】 流路ユニットには、複数の圧力室と、複数の圧力室の各配列方向に関して最も外側にある圧力室から配列方向外側に離隔した空隙とが形成されている。アクチュエータユニット42は、各圧力室と対向する位置に形成された個別電極60と、各空隙と対向する位置に形成された周縁電極65と、共通電極とを有している。個別電極60、周縁電極65及び共通電極は、ドライバIC51と接続されている。ドライバIC51は、異なる電位を交互に繰り返すインク吐出信号を生成すると共に、個別電極60に供給する。また、ドライバIC51は、所定電位に保持されたスタンバイ信号及び基準電位に保持された基準信号を生成すると共に、個別電極60に吐出信号を供給しているときに、スタンバイ信号を周縁電極65に供給し、基準信号を共通電極に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドは、インクタンクから供給されたインクを複数の圧力室に分配し、各圧力室に選択的に圧力を付与することによりノズルからインクを吐出する。圧力室に選択的に圧力を付与するための一つの手段として、セラミックからなる積層された複数の圧電シートが用いられることがある。
【0003】
かかるインクジェットヘッドの一例として、マトリクス状に二次元配列された複数の圧力室に跨る複数枚の連続平板状の圧電シートが積層され、その少なくとも一枚の圧電シートを、多数の圧力室に共通であって接地(グランド)電位に保持される共通電極と、各圧力室に対向する位置に配置された多数の個別電極とで挟み込んだ1つのアクチュエータユニットを有するものが知られている(特許文献1参照)。このインクジェットヘッドにおいて、アクチュエータユニットの上面には、複数の個別電極とこれら個別電極を包囲するように配置された複数の接地用電極とが形成されており、各接地用電極と共通電極とがスルーホール内に充填された導電材料を介して電気的に接続されている。これら複数の接地用電極及び複数の個別電極は、ドライバICが実装されたフレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)の複数の給電パッドとそれぞれ接続されている。
【0004】
特許文献1に記載のインクジェットヘッドを有するインクジェトプリンタにおいては、いわゆる引き打ちによってインクが吐出される。つまり、予めすべての個別電極を一定の正電位(以下、「スタンバイ電位」と称する)とすることですべての圧力室の容積を減少させておき、インク吐出に係る個別電極だけを一旦接地電位とする。すると、対応する圧力室の容積が大きくなって、圧力室内に負圧の圧力波が発生する。そして、この圧力室が正圧の圧力波として圧力室の中心に戻ってくるタイミングで再び個別電極をスタンバイ電位とすることで、圧力室の容積を減少させる。このときに対応するノズルからインクが吐出される。かかる引き打ちを行うことによって、インク吐出速度を高めることが可能となる。
【特許文献1】特開2003−305852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような引き打ちが行われるインクジェトプリンタにおいては、非印刷時であっても圧電シートにおいて複数の個別電極に対向した領域がすべて変形状態にある。インク吐出に係る圧力室が配列方向に関して最も外側にある圧力室以外の圧力室の場合、圧電シートにおいて当該圧力室に対向する領域が配列方向の両側から受ける圧電シートの変形影響度合いは同じになる。一方、配列方向に関して最も外側にある圧力室の場合、当該圧力室に対しては配列方向内側にしか圧力室及び個別電極がないので、圧電シートにおいて当該圧力室に対向する領域が配列方向内側から受ける圧電シートの変形影響度合いと、配列方向外側から受ける変形影響度合いとは大幅に異なるものとなる。そのため、配列方向に関して最も外側にある圧力室に係るノズルとそれ以外の圧力室に係るノズルとで、インク吐出特性が大幅に相違してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、インク吐出特性のばらつきを抑えることが可能なインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、それぞれがノズルに連通した複数の圧力室と、前記複数の圧力室の各配列方向に関して最も外側にある前記圧力室から前記配列方向外側に離隔した周縁空隙とが形成された流路ユニットと、それぞれが前記圧力室に対向する複数の個別電極と、前記周縁空隙に対向する周縁電極と、前記複数の個別電極及び前記周縁電極に跨って形成された共通電極と、前記複数の個別電極及び前記周縁電極と前記共通電極とによって挟まれた圧電シートとを有するアクチュエータユニットと、画像データに基づいて、第1の電位及びこれとは異なる第2の電位を交互に繰り返すインク吐出信号を生成すると共に、生成された吐出信号を前記個別電極に供給する吐出信号供給手段と、所定電位に保持されたスタンバイ信号を生成すると共に、生成されたスタンバイ信号を前記周縁電極に供給するスタンバイ信号供給手段と、基準電位に保持された基準信号を生成すると共に、生成された基準信号を前記共通電極に供給する基準信号供給手段とを備えている。そして、少なくとも前記吐出信号供給手段が前記個別電極に前記吐出信号を供給しているときに、前記スタンバイ信号供給手段が前記周縁電極に前記スタンバイ信号を供給し、前記基準信号供給手段が前記共通電極に前記基準信号を供給する。
【0008】
これにより、配列方向に関して最も外側にある圧力室から配列方向外側に離隔した周縁空隙及びこの周縁空隙に対向する周縁電極を設けると共に、所定電位に保持されたスタンバイ信号が周縁電極に供給されるようにしたので、インク吐出時に、圧電シートにおいて配列方向に関して最も外側にある圧力室に対向する領域が当該圧力室の配列方向内側から受ける圧電シートの変形影響度合いは、当該圧力室に対向する領域が当該圧力室の配列方向外側から受ける圧電シートの変形影響度合いと近くなる。したがって、配列方向に関して最も外側にある圧力室に係るノズルとそれ以外の圧力室に係るノズルとのインク吐出特性のばらつきを抑えることができる。また、インク吐出時に周縁電極を浮遊電位にしないので、周縁電極が浮遊電位になることに起因した吐出への悪影響(例えば、周縁電極に接続された配線の電位が周縁電極に隣接した個別電極の電位の影響を受けて変動することによって生じるノイズ)が生じにくくなる。その結果、吐出性能が安定したものとなる。
【0009】
本発明において、前記スタンバイ信号が、前記第1の電位及び第2の電位のいずれか一方に保持されていることが好ましい。これにより、第1の電位及び第2の電位のいずれか一方に保持されたスタンバイ信号が周縁電極に供給されることになるので、インク吐出時に、圧電シートにおいて配列方向に関して最も外側にある圧力室に対向する領域が当該圧力室の配列方向内側から受ける圧電シートの変形影響度合いは、当該圧力室に対向する領域が当該圧力室の配列方向外側から受ける圧電シートの変形影響度合いとほとんど同じになる。したがって、配列方向に関して最も外側にある圧力室に係るノズルとそれ以外の圧力室に係るノズルとのインク吐出特性のばらつきをさらに抑えることができる。
【0010】
また、本発明において、前記スタンバイ信号供給手段が、前記吐出信号が前記個別電極に供給され始めるまで、すべての前記周縁電極に前記スタンバイ信号を供給していることが好ましい。これにより、配列方向に関して最も外側にある圧力室に係るノズルとそれ以外の圧力室に係るノズルとのインク吐出特性のばらつきを効果的に抑えることができる。
【0011】
また、本発明において、前記基準信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のいずれか一方の電位に保持された前記基準信号を生成し、前記スタンバイ信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のうち前記基準信号と異なる方の電位に保持された前記スタンバイ信号を生成することが好ましい。これによると、共通電極−個別電極間の電位差がない状態の圧力室の容積(基本容積)に対して、両電極間にスタンバイ信号に対応した電位差を与えておき、圧力室の容積を増加あるいは減少させた状態で待機させる場合、周縁空隙もこれと同じ容量変化をすることになる。すなわち、いずれの圧力室も配列方向の両側から受ける圧電シートの変形影響度合いがほとんど同じになり、インクの吐出特性のばらつきを抑えることができる。
【0012】
また、本発明において、前記基準信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のいずれか一方の電位に保持された前記基準信号を生成し、前記スタンバイ信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のうち前記基準信号と同じ方の電位に保持された前記スタンバイ信号を生成することが好ましい。これによると、スタンバイ信号により基準信号と同じ電位で個別電極が待機される。このような圧力室を基本容積で待機させるインクの吐出方法では、周縁空隙もこれと同じ容量変化、この場合は、周縁空隙がその基本容積で維持されることになる。すなわち、いずれの圧力室も配列方向の両側から受ける圧電シートの変形影響度合いがほとんど同じになり、インクの吐出特性のばらつきを抑えることができる。
【0013】
また、本発明において、前記周縁空隙が前記圧力室と同じ平面形状及び平面サイズを有し、前記周縁電極が前記個別電極と同じ平面形状及び平面サイズを有していることが好ましい。また、本発明において、前記配列方向に関して、前記周縁空隙と前記最も外側にある圧力室との間の距離が、隣接する前記圧力室間の距離に等しいことが好ましい。また、本発明においては、前記圧電シートにおいて、前記周縁電極と前記共通電極とに挟まれた領域が、前記個別電極と前記共通電極とに挟まれた領域と同様に分極していることが好ましい。これにより、配列方向に関して最も外側にある圧力室に係るノズルとそれ以外の圧力室に係るノズルとのインク吐出特性のばらつきをさらに抑えることができる。
【0014】
また、本発明において、前記複数の圧力室が、マトリクス状に二次元配列されており、
複数の前記周縁空隙が、前記複数の圧力室を取り囲んでいることが好ましい。これにより、多数の圧力室がマトリクス状に二次元配列されている場合においても、配列方向に関して最も外側にある圧力室に係るノズルとそれ以外の圧力室に係るノズルとのインク吐出特性のばらつきを抑えることができる。
【0015】
また、このとき、複数の前記周縁電極が、前記アクチュエータユニット上に配置された導電部材を介して互いに電気的に接続されていてもよい。これにより、一つの周縁電極にスタンバイ信号を供給するだけで複数の周縁電極にもスタンバイ信号を供給することが可能になる。したがって、スタンバイ信号供給手段の構成が簡易となる。
【0016】
また、このとき、前記導電部材が、前記周縁電極において最も前記個別電極から離隔した領域同士を連結していてもよい。これにより、圧電シートにおいて配列方向に関して最も外側にある圧力室に対向する領域が圧電シートにおいて導電部材に対向する領域が変形することによって受ける悪影響を、最小限に抑えることができる。
【0017】
また、このとき、前記アクチュエータユニットにおいて前記流路ユニットに接する面とは反対側の面上には、前記個別電極及び前記周縁電極のさらに外側に、前記共通電極に電気的に接続された表面電極が形成されていてもよい。これにより、同一平面上において個別電極と表面電極との間に周縁電極が形成されるので、個別電極と表面電極とがマイグレーションに起因して電気的に接続されるのを防止することができる。
【0018】
また、このとき、前記流路ユニットにはインクが貯溜される複数の共通インク室が形成されていると共に、前記複数の圧力室が対応する前記ノズルとは反対側においていずれかの前記共通インク室に連通することで、当該共通インク室に関連した圧力室群がそれぞれ形成されており、前記吐出信号供給手段が、前記複数の圧力室群にそれぞれ関連した個別電極群に対して選択的に前記吐出信号を供給し、前記スタンバイ信号供給手段が、選択された前記圧力室群に関連した前記個別電極群に対応する周縁電極にのみ前記スタンバイ信号を供給していてもよい。これにより、すべての周縁電極に電圧を印加しなくてもよいので消費電力が小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるカラーインクジェットプリンタの内部構成を描いた概略斜視図である。図1において、カラーインクジェットプリンタ1内には、ヘッドユニット2が配置されている。ヘッドユニット2のホルダ3には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のインクを貯溜するインクタンク4と4色のインクを吐出するインクジェットヘッド5(図3参照)とが固着されている。ホルダ3は、駆動機構10により直線方向(主走査方向)に往復移動するキャリッジ11に固着されている。記録媒体たる用紙Pを搬送する搬送手段としてのプラテンローラ18は、その軸線がキャリッジ11の往復移動方向に沿うように配置され、インクジェットヘッド5と対向している。
【0021】
キャリッジ11は、プラテンローラ18の支軸と平行に配設されるガイド軸12及びガイド板13によって摺動自在に支持されている。ガイド軸12の両端部の近傍には、プーリー14,15が支持され、これらプーリー14,15の間に無端ベルト16が架け渡されている。キャリッジ11は、この無端ベルト16の適宜の位置に固定されている。
【0022】
このような駆動機構10の構成において、一方のプーリー14がモータ17の駆動により正逆回転すると、キャリッジ11がガイド軸12及びガイド板13に沿って直線方向に往復移動するため、これに伴ってヘッドユニット2も往復移動する。
【0023】
用紙Pは、インクジェットプリンタ1の側方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙され、インクジェットヘッド5とプラテンローラ18との間の空間に導かれて、インクジェットヘッド5から吐出されるインクにより印刷が施された後に排紙される。なお、図1においては、用紙Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
【0024】
また、インクジェットプリンタ1内には、図1中左下方に示すパージ機構20が設けられている。パージ機構20は、パージキャップ21でインクジェットヘッド5の下面の一部を覆ってインクジェットヘッド5の内部に溜まる気泡やゴミなどを含んだ不良インクを強制的に吸引して除去するためのものである。
【0025】
つまり、カム22の駆動によりポンプ23によって吸引して廃インク溜め24へ廃棄することにより、インクジェットヘッド5の復旧を行うようにしている。なお、図1に示す4つのキャップ25は、印刷が終了してリセット位置(パージ機構20に対向する位置)に戻されるキャリッジ11上のインクジェットヘッド5のノズル53をすべて覆って、インクの乾燥を防止するためのものである。
【0026】
図2は、図1に示すヘッドユニット2の斜視図である。図3は、図2のII−II線における断面図であり、ヘッドユニット2を構成するホルダ3にインクタンク4及びインクジェットヘッド5が組み付けられた状態を示している。図4は、図3に示すインクジェットヘッド5にフレームが接着された状態を示す斜視図である。ヘッドユニット2は、図2に示すように、略直方体形状を有するホルダ3と、ホルダ3内に配置されたインクタンク4と、インクタンク4の下方に配置されたインクジェットヘッド5(図3参照)とを備えている。
【0027】
インクタンク4には、図3中左方からマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのインクが順にそれぞれ貯留された4つのインク室6が形成されている。インク室6は、対応するチューブ29(図2参照)と接続されており、各色のインクが供給されるようになっている。インクタンク4は、平面矩形形状のフレーム30に組み付けられている。このフレーム30は、ホルダ3に紫外線硬化型接着剤31で固着されている。このフレーム30には、アクチュエータユニット42が窓32内に配置されるようにしてインクジェットヘッド5が固着されている。
【0028】
インクジェットヘッド5は、それぞれの色ごとに複数のインク流路が形成された流路ユニット41と流路ユニット41の上面にエポキシ系の熱硬化性接着剤によって接着されたアクチュエータユニット42とで構成されたヘッド本体40と、ヘッド本体40の上方に接合されたフレキシブルプリント配線板(FPC)50とを含んでいる。図4に示すように、流路ユニット41及びアクチュエータユニット42はともに、長方形平面形状を有する複数の薄板を積層して構成され、インクタンク4の下方に配置されている。流路ユニット41の上面には、アクチュエータユニット42を避けて、平面形状が楕円形状の4つのインク供給口41a(図5参照)が形成されている。フレーム30には、フレーム30に形成された貫通孔33と流路ユニット41に形成されたインク供給口41aとがそれぞれ連なるようにして流路ユニット41が接着されている。この構成により、インクタンク4内のインクが、インクタンク4のインク導出口7及びフレーム30の貫通孔33を通ってそれぞれに対応する流路ユニット41のインク供給口41aから流路ユニット41内に供給される。
【0029】
図3に示すように、ヘッド本体40は、インク吐出面40aが外部に露出するようにホルダ3の段付き状の窓8aに配置されている。ホルダ3と流路ユニット41との隙間には、シール剤35が配置されている。なお、ヘッド本体40の底面は微小径を有する多数のノズル53が配列されたインク吐出面40aとなっている。
【0030】
アクチュエータユニット42の上面に接合されたFPC50は、図3に示すように主走査方向の一方に引き出されるとともに、屈曲しながら上方に引き出されている。FPC50の上面には、FPC50及びアクチュエータユニット42を保護しつつ、アクチュエータユニット42が発する熱を放散するアルミプレート34が貼付されている。アルミプレート34は、駆動時のアクチュエータユニット42が発する熱によって、個別電極60(図8参照)近傍部分ごとの温度に大きなバラツキが生じないにように、均一にしている。これにより、インクの吐出特性がそろうことになる。
【0031】
また、アクチュエータユニット42に接合されたFPC50は、スポンジなどの弾性部材27を介してインクタンク4の側面に沿うように引き出され、このFPC50上にドライバIC51が設置されている。一方で、FPC50は、ドライバIC51から出力された吐出信号、スタンバイ信号及び基準信号をアクチュエータユニット42に伝達するように、ハンダ付けによって電気的にアクチュエータユニット42に接合されている。
【0032】
FPC50の基端は、インクジェットプリンタ1内に設けられた制御部101(図11参照)に接続されている。後述するように、制御部101は、各ノズル53からのインク吐出量を順次指示すると共に周縁電極65の電位を順次指示する印刷信号、互いに異なる3種類のインク吐出量に対応した3つの波形パターン信号、スタンバイ電位(例えば20V)と称される正電位に保持された高電位信号、高電位信号よりも低い正電位(例えば、3.3V)に保持された低電位信号、及び、接地電位に保持された基準信号をドライバIC51に供給する。そして、ドライバIC51は、これらの信号に基づいて、スタンバイ電位と接地電位とを交互に繰り返す吐出信号を各個別電極について生成する。また、低電位信号に基づいて、スタンバイ信号を各周縁電極65について生成する。
【0033】
図3において、ホルダ3のドライバIC51に対向する側壁には、ドライバIC51の熱を外部に放散する為の窓8bが形成されている。さらに、ドライバIC51と窓8bとの間には、略直方体形状のアルミ板からなるヒートシンク28が配置されている。さらに、ドライバIC51は、間にFPC50を挟んで弾性部材27によりヒートシンク28に対して押圧されている。これらヒートシンク28及び窓8bにより、ドライバIC51で発生した熱を効率的に散逸させることができる。また、窓8b内には、ホルダ3の側壁とヒートシンク28の隙間を埋めるためのシール剤36が配置されており、ヘッドユニット2内にゴミやインクが外部から侵入することを防いでいる。
【0034】
図5は、インクジェットヘッド5の平面図である。図5に示すように、インクジェットヘッド5のヘッド本体40は、流路ユニット41の長手方向(副走査方向)に延在した矩形平面形状を有している。図5において、流路ユニット41内には、流路ユニット41の長手方向に沿って互いに平行に延在した4つのマニホールド(共通インク室)45が形成されている。これらマニホールド45には、流路ユニット41の4つのインク供給口41aを通じてインクタンク4のインク室6からそれぞれインクが供給される。本実施の形態では、図5中の4つのマニホールド45は上方から下方に向かって順にマゼンタ、イエロー、シア及びブラックに対応するマニホールド45M,45Y,45C,45Kとなっている。これら4つのマニホールド45M,45Y,45C,45Kのうち、3つのマニホールド45M,45Y,45Cは流路ユニット41の幅方向(主走査方向)において等間隔に配置されており、マニホールド45Kは、3つのマニホールド45M,45Y,45Cの配置間隔より大きい間隔でマニホールド45Cから離隔された位置(図5中流路ユニット41の下方位置)に形成されている。また、流路ユニット41の上面であって4つのインク供給口41aを覆う位置には、フィルタ44が配置されている。フィルタ44は、各インク供給口41aと重なる位置に複数の微小孔が形成されている。これにより、インクタンク4から流路ユニット41内に供給されるインク中のゴミなどがフィルタ44によって捕獲される。
【0035】
流路ユニット41の上面には、平面形状が長方形形状のアクチュエータユニット42が、インク供給口41aを避けたほぼ中央部分に接着されている。アクチュエータユニット42に対向する流路ユニット41の接着領域には、マトリクス状に配列された多数の圧力室46(図7参照)及び空隙55(図6参照)が形成されている。言い換えると、アクチュエータユニット42はすべての圧力室46及び空隙55に跨る寸法を有している。
【0036】
図6は、図5内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。流路ユニット41には、複数の圧力室46がマニホールド45の延在方向(配列方向A)と平行に配列された16本の圧力室列47と、多数の空隙55が圧力室列47と平行に配列された6本の空隙列56と、多数の空隙55がマニホールド45の延在方向と直交する方向(配列方向C)に配列された4本の空隙列57とが形成されている。なお、図6に示すように、アクチュエータユニット42に対向する流路ユニット41の接着領域において、副走査方向の一端部には、2本の空隙列57が配設されている。実際には、その接着領域の両端部にそれぞれ2本の空隙列57が形成されており、合計4本の配列方向C(主走査方向)に延びる空隙列57が流路ユニット41に形成されている。16本の圧力室列47は、隣接して形成された4本の空隙列56の集団によって、12本の集団と4本の集団とに隔てられている。これにより、圧力室列47の12本の集団と4本の集団は、6本の空隙列56と4本の空隙列57とによってそれぞれ囲まれている。図6に示すように、圧力室46及び空隙55は平面形状及び平面サイズが同じである。多数の圧力室46及び空隙55は、両者を区別のないものと考えたときに、流路ユニット41において1つの配列パターンが形成されるように規則的に配列されている。
【0037】
流路ユニット41に形成された圧力室46は、角部にアールが施された略菱形の平面形状を有しており、その長い方の対角線は流路ユニット41の幅方向(主走査方向)に平行である。各圧力室46の一端はノズル53に連通しており、他端はアパーチャ54を介してマニホールド45に連通している。これにより、各マニホールド45には、ノズル53に連通して圧力室46ごとに形成された多数の個別インク流路9(図7参照)が接続されている。図6には、図面を分かりやすくするために流路ユニット41内にあって破線で描くべき圧力室46、空隙55、アパーチャ54及びノズル53等を実線で描いている。
【0038】
図7は、個別インク流路を示す断面図であり、図6に示すVII−VII線に沿った断面図である。図7から分かるように、各ノズル53は、圧力室46及びアパーチャ(すなわち絞り)54を介してマニホールド45と連通している。すなわち、マニホールド45の出口からアパーチャ54、圧力室46を経てノズル53に至る1つの流路が構成されている。このようにして、ヘッド本体40には、個別インク流路9が圧力室46ごとに形成されている。
【0039】
ヘッド本体40は、流路ユニット41とアクチュエータユニット42とを含んでいる。このうち、流路ユニット41は、上から、キャビティプレート81、ベースプレート82、アパーチャプレート83、サプライプレート84、マニホールドプレート85〜88及びノズルプレート89の合計9枚のシート材が積層された積層構造となっている。
【0040】
アクチュエータユニット42は、後で詳述するように、4枚の圧電シート91〜94(図8参照)の積層体である。4枚の圧電シート91〜94のうちの最上層だけが電界印加時に活性部となる部分を有する層(以下、単に「活性部を有する層」というように記する)とされ、残り3層が活性部を有しない非活性層とされたものである。なお、活性部を有する層となる総数は、要求されるアクチュエータユニット42の変位量に応じて適宜決められるものであり、本実施の形態のように1層に限るものではない。すなわち、複数層積層することもできる。
【0041】
キャビティプレート81は、圧力室46及び空隙55を構成するほぼ菱形の孔が、アクチュエータユニット42の貼付範囲(接着領域)内に多数設けられた金属プレートである。ベースプレート82は、キャビティプレート81の1つの圧力室46について、圧力室46とアパーチャ54との連絡孔及び圧力室46からノズル53への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。
【0042】
アパーチャプレート83は、キャビティプレート81の1つの圧力室46について、アパーチャ54となる孔のほかに圧力室46からノズル53への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。サプライプレート84は、キャビティプレート81の1つの圧力室46について、アパーチャ54とマニホールド45との連絡孔及び圧力室46からノズル53への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。マニホールドプレート85〜88は、マニホールド45に加えて、キャビティプレート81の1つの圧力室46について、圧力室46からノズル53への連絡孔がそれぞれ設けられた金属プレートである。ノズルプレート89は、キャビティプレート81の1つの圧力室46について、ノズル53がそれぞれ設けられた金属プレートである。
【0043】
これら9枚のシート81〜89とアクチュエータユニット42は、図7に示すような個別インク流路9が形成されるように、互いに位置合わせして積層されている。この個別インク流路9は、マニホールド45からまず上方へ向かい、アパーチャ54において水平に延在し、それからさらに上方に向かい、圧力室46において再び水平に延在し、それからしばらくアパーチャ54から離れる方向に斜め下方に向かってから垂直下方にノズル53へと向かう。
【0044】
図7から明らかなように、各プレートの積層方向において圧力室46とアパーチャ54とは異なるレベルに設けられている。これにより、図6に示すように、アクチュエータユニット42に対向した流路ユニット41内において、1つの圧力室46と連通したアパーチャ54を、当該圧力室46に隣接する別の圧力室46と平面視で同じ位置に配置することが可能となっている。この結果、圧力室46同士が密着して高密度に配列されるため、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド5により高解像度の画像印刷が実現される。
【0045】
図6に戻って、各圧力室46は、その長い対角線の一端においてノズル53に連通していると共に、長い対角線の他端においてアパーチャ54を介してマニホールド45に連通している。後述するように、アクチュエータユニット42上には、平面形状がほぼひし形で圧力室46よりも一回り小さい個別電極60(図8参照)が、圧力室46と対向するようにマトリクス状に配列されている。さらに、アクチュエータユニット42上には、個別電極60と同じ平面形状及び平面サイズの周縁電極65が、各空隙55と対向するように配置されている。複数の圧力室46は、複数の空隙55によってその周囲を囲まれているため、複数の個別電極60も複数の周縁電極65によってその周囲を囲まれている。なお、図6には、図面を簡略にするために、複数の個別電極60及び周縁電極65のうちの幾つかだけを描いているとともに、個別電極60のみハッチングを施している。
【0046】
また、キャビティプレート81に形成された複数の空隙55は、アクチュエータユニット42及びベースプレート82によって塞がれることによって画定されている。そのため、空隙55にはインク流路が接続されておらず、複数の空隙55はインクで満たされることがない。6本の空隙列56のうち、隣接した4本の空隙列56を構成する複数の空隙55は、配列方向A(副走査方向)及び配列方向Bの2方向に千鳥状配列パターンでマトリクス状に隣接配置されている。また、他の2本の空隙列56を構成する複数の空隙55は、それぞれ配列方向Aに沿って隣接配置されている。圧力室列47の両端部外側にそれぞれ位置する2本の空隙列57は、各空隙列56の端部に位置する1つの空隙55と、各圧力室列47の端部外側において配列方向Aに沿って圧力室46と連続して配置された1つの空隙55とをそれぞれ含んでいる。すなわち、これら空隙列57を構成する複数の空隙55は、配列方向C(主走査方向)及び配列方向Bの2方向に千鳥状配列パターンで2列に隣接配置されている。
【0047】
なお、本実施の形態では、圧力室46も空隙55もその形状、サイズ、配置状態に区別なく形成されている。つまり、隣接する圧力室46同士、空隙55同士及び圧力室46と空隙55との離隔距離がすべて同じ距離となっており、全体的には、圧力室46と空隙55とが、配列方向A及び配列方向Bの2方向に千鳥状配列パターンでマトリクス状に隣接配置されている。配列方向Aは、流路ユニット41の長手方向であって、圧力室46の短い方の対角線と平行である。配列方向Bは、配列方向Aと鈍角θをなす圧力室46の一斜辺方向である。このような構成により、空隙55は、圧力室46とほぼ同様な変形状態をとることが可能になっている。このことは、各圧力室46から見た周囲の構造がその設置位置によらず同じとなるので、各圧力室46が受ける構造面からの吐出特性への影響が均一化される。すなわち、インクの吐出特性の均一化に寄与している。
【0048】
配列方向A及び配列方向Bの2方向にマトリクス状に隣接配置された圧力室46は、配列方向Aに沿って解像度に対応した間隙に配置されている。本実施の形態では、各圧力室列47に属する圧力室46に連通するノズル53が配列方向Aに関して37.5dpiに相当する距離ずつ離隔している。各ノズル53の配列方向Aに延びる直線に対する射影点は、印字解像度である150dpiに相当する間隔ずつ離隔している。これは、後述する4つの圧力室列群内で相対位置関係が同じ4つのノズル53は、配列方向Aに延びる直線上の同じ位置に射影されるからである。なお、すべてのノズル53の射影した点の位置が重ならないようにすれば、ノズル53の射影点の間隔を600dpiに相当する間隔ずつ離隔させることができるが、本実施の形態では色ごと(圧力室列群ごと)に複数のノズル53を4つの集団に分け、さらにノズル53の射影点の間隔が600dpiの1/4の解像度(150dpi)に相当する間隔としている。このような解像度に対応して隣接する圧力室46は配列方向Aに沿って37.5dpiに相当する距離ずつ離隔している。また、圧力室46は、流路ユニット41の接着領域内において、配列方向Bに沿って4つの空隙55を挟むようにして16個並べられているとともに、図6の紙面に対して垂直な方向から見て、配列方向Cに沿って2つの空隙55を挟むようにして8個並べられている。
【0049】
マトリクス状に配置された多数の圧力室46は、図6に示す配列方向Aに沿って、複数の圧力室列47を形成している。複数の圧力室列47は、図6の紙面に対して垂直な方向から見て、各マニホールド45との相対位置に応じて、第1の圧力室列47a、第2の圧力室列47b、第3の圧力室列47c、及び、第4の圧力室列47dに分けられる。これら第1〜第4の圧力室列47a〜47dは、流路ユニット41の幅方向(主走査方向)における一方から他方(図6中下方から上方)に向けて、47c→47a→47d→47b→47c→47a→・・・47bという順番で周期的に4個ずつ配置されている。これら周期的に配置されて隣接した第1〜第4の圧力室列47が1つの圧力室列群(圧力室群)48を形成している。そのため、流路ユニット41の接着領域には、4つの圧力室列群48が形成されている。
【0050】
各圧力室列群48に属するすべての圧力室46は、同じマニホールド45とそれぞれアパーチャ54を介して連通している。つまり、各圧力室列群48はマニホールド45毎に形成されているため、4つの圧力室列群48は4色のインクに対応する圧力室列群48M,48Y,48C,48Kとなっている。これら4つの圧力室列群48M,48Y,48C,48Kのそれぞれに属する圧力室46がアクチュエータユニット42によって容積変化されることで4色のインクを各圧力室列群48に属する圧力室46と連通したノズル53から吐出することが可能になる。
【0051】
図6に示すように圧力室列群48の第1の圧力室列47aを構成する圧力室46a及び第3の圧力室列47cを構成する圧力室46cにおいては、図6の紙面に対して垂直な方向から見て、配列方向Cに関して、ノズル53が図6の紙面下側に偏在している。そして、ノズル53が、それぞれ対応する圧力室46の下端部の左側付近と隣接している。一方、第2の圧力室列47bを構成する圧力室46b及び第4の圧力室列47dを構成する圧力室46dにおいては、配列方向Cに関して、ノズル53が図6の紙面上側に偏在している。そして、ノズル53が、それぞれ対応する圧力室46の上端部の右側付近と隣接している。第1及び第4の圧力室列47a、47dにおいては、図6の紙面に対して垂直な方向から見て、圧力室46a、46dの半分以上の領域が、マニホールド45と重なっている。第2及び第3の圧力室列47b、47cにおいては、図6の紙面に対して垂直な方向から見て、圧力室46b、46cのほぼ全領域が、マニホールド45と重なっていない。そのため、いずれの圧力室列47に属する圧力室46についてもこれに連通するノズル53がマニホールド45と重ならないようにしつつ、マニホールド45の幅を可能な限り広くして各圧力室46にインクを円滑に供給することが可能となっている。
【0052】
また、流路ユニット41のインク吐出面40aにおいて、ノズル53が隣接した4本の空隙列56に属する空隙55と対向する位置に形成されていないため、インク吐出面40aにはブラック色のインクを吐出する複数のノズル53によって構成されたブラック領域と、マゼンタ、イエロー及びシアン色のインクを吐出する複数のノズル53によって構成された有彩色領域とに分けられることになる。
【0053】
このように、インク吐出面40aにおいて隣接した4本の空隙列56と対向する領域を挟んで有彩色領域とブラック領域とに分けられることで、ブラックインクが吐出される複数のノズル53と有彩色インクが吐出される複数のノズル53とが隔離された構成となる。そのため、流路ユニット41のインク吐出面40aのメンテナンス時において、ブラックインクと有彩色インクとの混色を抑制することができる。つまり、インク吐出面40aのメンテナンスは、板状の弾性部材からなるブレード(図示せず)でインク吐出面40aに付着した各色のインクを拭き取る。ブラック領域と有彩色領域とが近接していると、ブラックインクがブレードに沿って有彩色領域に移動し、有彩色インクを吐出するノズル53の出口付近にブラックインクが残留してブラックインクと有彩色インクとが混色を起こしてしまう。しかし、本実施の形態のように、ブラック領域と有彩色領域とが離隔されることで、インク吐出時のメンテナンス時にブラックインクがブレードに沿って移動しても有彩色領域にまで到達しにくくなり、ブラックインクと有彩色インクとの混色が起こりにくくなる。
【0054】
次に、アクチュエータユニット42及びFPC50の構成について説明する。アクチュエータユニット42上には、圧力室46と同じ配列パターンで配置された複数の個別電極60と、空隙55と同じ配列パターンで配置された複数の周縁電極65とが形成されている。各個別電極60は、平面視において圧力室46と対向する位置に配置されている。各周縁電極65は、平面視において空隙55と対向する位置に配置されている。
【0055】
図8は、アクチュエータユニット42を示しており、(a)は図7における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図であり、(b)は個別電極の平面図である。図9は、アクチュエータユニット46の部分拡大平面図である。図10は、図5に示すインクジェットヘッド5の部分拡大平面図である。なお、図9においては、個別電極60にのみハッチングを施し、周縁電極65と区別しやすくしている。また、図10には、図面を分かりやすくするために破線で描くべき配線パターン112や端子113を実線で描いている。図8(a)、(b)に示すように、個別電極60は、平面視において圧力室46の平面領域内に形成された主電極領域61aと、主電極領域61aにつながっており且つ圧力室46の平面領域外に形成された補助電極領域61bとから構成されている。
【0056】
図8(a)に示すように、アクチュエータユニット46は、それぞれ厚みが15μm程度で同じになるように形成された4枚の圧電シート91,92,93,94を含んでいる。これら圧電シート91〜94は、複数の圧力室46及び空隙55に跨って配置されるように連続した層状の平板(連続平板層)となっている。圧電シート91〜94が連続平板層として複数の圧力室46及び空隙55に跨って配置されることで、例えばスクリーン印刷技術を用いることにより圧電シート91上に個別電極60及び周縁電極65を高密度に配置することが可能となっている。そのため、個別電極46及び周縁電極65にそれぞれ対応する位置に形成される圧力室46及び空隙55をも高密度に配置することが可能となって、高解像度画像の印刷ができるようになる。圧電シート91〜94は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなるものである。
【0057】
最上層の圧電シート91上に形成された個別電極60の主電極領域61aは、図8(b)に示すように、圧力室46とほぼ相似である略菱形の平面形状を有している。補助電極領域61bは、主電極領域61aの一方の鋭角部から圧力室46の長い方の対角線と平行な方向(すなわち、配列方向C)に延出されている。補助電極領域61bの先端には、円形のランド62が設けられている。図8(b)に示すように、ランド62は、キャビティプレート81において圧力室46が形成されていない領域に対向している。ランド62は、例えばガラスフリットを含む金からなり、図8(a)に示すように、補助電極領域61bにおける先端表面上に形成されている。また、周縁電極65は、図9に示すように、個別電極60と同じ構成を有している。つまり、周縁電極65は、空隙55の平面領域内に形成された主電極領域66aと、主電極領域66aにつながっており且つ空隙55の平面領域外に形成された補助電極領域66bとを有し、補助電極領域66bの先端上にランド67が設けられている。
【0058】
図9に示すように、キャビティプレート81の圧力室46の配列態様に対応して、複数の個別電極60は配列方向A(副走査方向)に沿って互いに平行に配列された複数の個別電極列63を形成している。複数の個別電極列63は圧力室列47a〜47dのそれぞれに対応するように個別電極列63a〜63dに分けられている。さらに、これら個別電極列63a〜63dを1つの群として、4つの圧力室列群48に対応する4つの個別電極列群64M,64Y,64C,64Kが形成されている。なお、本実施の形態において、4つの個別電極列群64のうち、図9において上方に位置する2つの個別電極列群64M,64Yに属する個別電極60の補助電極領域61bが上方側に配置されており、他の2つの個別電極列群64C,64Kに属する個別電極60の補助電極領域61bが下方側に配置されている。
【0059】
また、複数の周縁電極65もキャビティプレート81の空隙55の配列態様に対応して配列方向A及び配列方向C(主走査方向)に沿って平行に配列された複数の周縁電極列68,69を形成している。つまり、複数の周縁電極65は、個別電極列群64Cと個別電極列群64Kとの間にある互いに隣接した4列の周縁電極列68と、この互いに隣接した4列の周縁電極列68との間で3つの個別電極列群64M,64Y,64Cと1つの個別電極列群64Kとをそれぞれ挟む位置に配列された2列の周縁電極列68と、各個別電極列63の配列方向Aの両端部外側にそれぞれ位置する2列の周縁電極列69とを構成するように配列されている。
【0060】
本実施の形態では、以上の説明のように、有彩色のインク吐出に係る個別電極列群64M,64Y,64Cと無彩色のインク吐出に係る個別電極列群64Kが、それぞれ周縁電極列68,69により取り囲まれている。そのため、各領域に属する圧力室46は、その配設位置にかかわらず周囲から受ける圧電シートの変形影響度合いがほとんど同じになり、インク吐出特性がさらに均一なものになっている。さらに、複数の周縁電極65は、1つの個別電極列群64Kの周囲を取り囲む無彩色用周縁電極群97と、3つの個別電極列群64M,64Y,64Cの周囲を取り囲む有彩色用周縁電極群98と、両電極群97,98の間に配置され前述の周縁電極列68のうちの内側の2列がなす境界用周縁電極群99とを構成している。つまり、無彩色用周縁電極群97は、図9において、最も下方に位置する周縁電極列68に属する周縁電極65と、隣接した4列のうちの下方に位置する周縁電極列68に属する周縁電極65と、これら2列の周縁電極列68間に存在する周縁電極列69に属する周縁電極65とによって構成されている。有彩色用周縁電極群98は、図9において、最も上方に位置する周縁電極列68に属する周縁電極65と、隣接した4列のうちの上方に位置する周縁電極列68に属する周縁電極65と、これら2列の周縁電極列68間に存在する周縁電極列69に属する周縁電極65とによって構成されている。
【0061】
また、複数の周縁電極65の補助電極領域66bは、隣接する個別電極60の補助電極領域61bと同方向を向くように形成されている。例えば、図9に示すように、最も上方に位置する周縁電極列68では、これに属する周縁電極65の補助電極領域66bが、隣接する個別電極60と同様に、図9中上方に配置されている。逆に、最も下方に位置する周縁電極68では、その補助電極領域66bが図9中下方に配置されている。さらに、個別電極列63の配列方向Aの延長線上に位置する周縁電極65においても、これに隣接する個別電極60と同様にそれぞれの補助電極領域66bが配置されている。そのため、周縁電極列69は、隣接する個別電極60に対応して、互いに反対方向に配置された補助電極領域66bを有する2種類の周縁電極68から構成されている。
【0062】
図9に示すように、複数の周縁電極65は、アクチュエータユニット42の上面上に形成された導電部材75,76によってそれぞれ連結されている。このうち、導電部材75は、個別電極列群64Kを取り囲むように配設されている。この導電部材75は、全体的には無彩色用周縁電極群97に属する周縁電極65を連結するものである。さらに、導電部材75は、境界用周縁電極群99の下側に配列された周縁電極65とも連結している。また、導電部材75は、無彩色用周縁電極群97に属する周縁電極65に関して、これと隣接する個別電極60から最も離れた領域どうしを連結するように形成されている。
【0063】
導電部材76も導電部材75と同様に、有彩色用周縁電極群98を構成する周縁電極65を電気的に連結し、境界用周縁電極群99の上方側に配列された周縁電極65とも連結している。また、導電部材76は、有彩色用周縁電極群98に属する周縁電極65に関して、これと隣接する個別電極60から最も離れた領域どうしを連結するように形成されている。
【0064】
アクチュエータユニット42の上面には、図9に示すように、配列方向Cに沿って断続的に形成された表面電極70が周縁電極列69の外側近傍に形成されている。表面電極70は、アクチュエータユニット42の厚み方向に貫通したスルーホール(図示せず)内に充填された導体を介して後述の共通電極72と電気的に接続されている。また、複数の表面電極70のうち、図9中最も下方に位置する表面電極70には、FPC50と電気的に接続されるランド71が形成されている。このランド71も上述したランド62,67と同じ材料から構成されている。
【0065】
図8(a)に戻って、最上層の圧電シート91とその下側の圧電シート92との間には、圧電シート91と同じ外形及び略2μmの厚みを有する共通電極72が介在している。個別電極60、周縁電極65及び共通電極72は共に、例えばAg−Pd系などの金属材料からなる。
【0066】
圧電シート91において、複数の個別電極60及び複数の周縁電極65とそれぞれ対向する領域は、同じ方向で同じ程度の大きさに分極が施された状態になっている。つまり、インクジェットヘッド5の製造時に、共通電極72を接地電位に保持し、個別電極60と周縁電極65とに同じ高い正電位(例えば、40V程度の電位)を与えて分極処理が行われているとする。これにより、圧電シート91において分極した領域の分極方向は、圧電シート91の厚み方向と平行であって個別電極60及び周縁電極65から共通電極72に向かう方向となっている。なお、分極方向を逆方向にする場合は、個別電極60及び周縁電極65を接地電位とし、共通電極72に高い正電位を与えればよい。
【0067】
FPC50は、図8(a)に示すように、ベースフィルム111と、その下面に形成された配線パターン112と、ベースフィルム111の下面のほぼ全体を覆うカバーフィルム115とを含んでいる。図10に示すように、配線パターン112は、複数の個別電極60のそれぞれと電気的に接続される複数の個別配線117と、複数の周縁電極65と導電部材75,76毎にそれぞれ電気的に接続される複数の周縁配線118と、表面電極70と電気的に接続される共通配線119とを有している。個別配線117、周縁配線118及び共通配線119はともに、FPC50の延在方向に沿って延在しており、それらの基端側がドライバIC51に電気的に接続されている。
【0068】
カバーフィルム115には、各配線117〜119の先端と対向する位置に貫通孔116がそれぞれ形成されている。ベースフィルム111、各配線117〜119、及び、カバーフィルム115は、各貫通孔116の中心と各配線117〜119の中心線とが対応し、各配線117〜119の先端外周縁部分がカバーフィルム115に覆われるように、互いに位置合わせして積層されている。FPC50の複数の端子113は、各貫通孔116を介して、配線117〜119とそれぞれ接続されている。
【0069】
ベースフィルム111及びカバーフィルム115は、いずれも絶縁性を有するシート部材である。本実施の形態において、ベースフィルム111はポリイミド樹脂からなり、カバーフィルム115は感光性材料からなる。このようにカバーフィルム115を感光性材料から構成することで、多数の貫通孔116を形成するのが容易になる。
【0070】
また、配線パターン112の各配線117〜119は、銅箔により形成されている。端子113は、例えばニッケルなどの導電性材料から構成されている。端子113は、貫通孔116を塞ぐと共に、貫通孔116の外側周縁を覆い、カバーフィルム115の下面より若干突出して形成されている。
【0071】
図10に示すように、複数の端子113は、個別電極60のランド62、周縁電極65のランド67及び表面電極70のランド71とにそれぞれ対向する位置に配置されている。これら端子113が各ランド62,67,71と半田114によって接合されることで、個別配線117が個別電極60と、周縁配線118が周縁電極65と、共通配線119が表面電極70を介して共通電極72と電気的に接続される。この構成により、ドライバIC51から各配線117〜119を介して吐出信号、スタンバイ信号及び基準信号が対応する個別電極60、周縁電極65及び共通電極72に供給される。
【0072】
次に、アクチュエータユニット42の駆動方法について述べる。アクチュエータユニット42における圧電シート91の分極方向は上述したようにその厚み方向である。つまり、アクチュエータユニット42は、上側の1枚の圧電シート91を活性層が存在する層とし且つ下側の3枚の圧電シート92〜94を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。したがって、個別電極60を基準となる電位、例えば接地電位に対して正又は負の所定電位とすると、例えば電界と分極方向とが同方向であれば圧電シート91中の個別電極60及び共通電極72とに挟まれた電界印加部分が活性層として働き、圧電横効果により分極方向と直角方向に縮む。一方、圧電シート92〜94は、電界の影響を受けないため自発的には縮まないので、上層の圧電シート91と下層の圧電シート92〜94との間で、分極方向と垂直な方向に変形しようとする(ユニモルフ変形)。このとき、圧電シート91〜94の下面は圧力室46を区画するキャビティプレート81の上面に固定されているので、結果的に圧電シート91〜94は圧力室46側へ凸になるように変形する。このため、圧力室10の容積が低下して、インクの圧力が上昇し、ノズル53からインク滴が吐出される。その後、個別電極60を共通電極72と同じ電位に戻すと、圧電シート91〜94は元の形状になって圧力室46の容積が元の容積に戻るので、インクをマニホールド45側から吸い込む。
【0073】
本実施の形態において、実際の駆動手順は、予め個別電極60及び周縁電極65を接地電位と異なるスタンバイ電位に保持しておき、圧力室46の容積を減少させておく。そして、吐出要求がある毎に個別電極60のみを接地電位とする。このとき、圧電シート91〜94が元の形状に戻り、圧力室46の容積が初期状態と比較して増大するので、圧力室46内に負圧が発生する。さらに、個別インク流路9内を負圧の圧力波が伝搬し、インクがマニホールド45側から圧力室46内に吸い込まれる。その後、正圧となった圧力波が圧力室46の中央に戻ってくるタイミングで、再び個別電極60をスタンバイ電位にする。これにより、圧電シート91〜94が圧力室46側へ凸となるように変形し、圧力室46の容積低下により圧力室46内の圧力が上昇し、インク滴が吐出される。つまり、インク滴を吐出させるため、スタンバイ電位→接地電位→スタンバイ電位となる吐出信号を個別電極60に供給することになる。これに対応して、個別電極60がスタンバイ電位にあるとき、圧力室46の容積は、個別電極60が接地電位にあるときの基本容積に比べて減少したものになっている。
【0074】
また、階調印刷においては、ノズル53から連続的に吐出されて用紙上で実質的に1ドットを形成するインク滴の数、つまりインク量(体積)で階調表現が行われる。このため、指定された階調度に対応する回数のインク吐出を、指定されたドット領域に対応するノズル53から1回又は連続して複数回行う。一般に、インク吐出を連続して行う場合は、インク滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をAL(Acoustic Length)とすることが好ましい。これにより、先に吐出されたインク滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させるインク滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳してインク滴を吐出するため圧力が増幅する。本実施の形態においては、後述するようにノズル53からのインク滴の連続吐出回数を3回以下の任意の回数とすることが可能であり、これにより階調表現が実現されている。
【0075】
続いて、インクジェットプリンタ1の制御について以下に説明する。図11は、インクジェットプリンタ1の制御構成を示すブロック図である。図12は、インクジェットヘッド5に与えられる各信号に対応する波形パターンを描いた図である。図11に示すように、インクジェットプリンタ1の内部には、制御部101が設けられている。制御部101は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)とを備えており、これらによって以下に説明する各機能部が構築されている。
【0076】
制御部101は、PC100からの印刷データに基づいて動作するものであり、図11に示すように、通信部102と、動作制御部103と、印刷制御部104とを備えている。このうち、通信部102は、PC100との通信を行うものである。PC100から送信される印刷データには画像データと動作データとが含まれている。通信部102は、動作データを動作制御部103に出力し、画像データを印刷制御部104に出力する。動作制御部103は、PC100及び印刷制御部104からの指示に基づいて、プーリ14を駆動するモータ17、プラテンローラ18を駆動するモータ及びカム22などを駆動制御する。
【0077】
制御部101には電源108が接続されている。電源108は、スタンバイ電位に保持された高電位信号、接地電位に保持された基準信号、及び、高電位信号よりも低い正電位に保持された低電位信号の3つの信号に必要な電圧を商用交流電源から生成し、制御部101に供給する。本実施の形態では、高電位信号134用の20V、低電位信号用の3.3V及び接地電位が電源108により生成される。なお、基準信号用の配線は、高電位信号と低電位信号とのそれぞれについて1つずつ設けられてもよい。
【0078】
印刷制御部104は、画像データを記憶するための画像データ記憶部105と、波形パターン記憶部106と、印刷信号生成部107とを備えている。画像データ記憶部101には、画像データを構成する各画素の階調値(8ビット(256階調))のビットマップデータがマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの各色毎に記憶される。波形パターン記憶部106は、ノズル53からインク滴を吐出して用紙上にドットを形成するために個別電極60にのみ供給される吐出信号の波形パターンを示す3種類の波形パターン信号131〜133を記憶している。
【0079】
印刷信号生成部107は、画像データ記憶部105に記憶された色毎のデータに基づいて、各ノズル53からのインク吐出量(連続インク吐出回数)を順次指示する印刷信号を生成する。この印刷信号には、インク吐出時の周縁電極65に印加する電位をどのレベルにするかを指示する信号も含まれている。この維持すべき電位の指示は、無彩色用周縁電極群97及び有彩色用周縁電極群98毎に行うことができるようになっており、本実施の形態において、印刷信号生成部107は、全色のインクが吐出されているときには、すべての周縁電極65をスタンバイ電位とする。さらに、ブラックインクだけが吐出されているときには、無彩色用周縁電極群97に属する周縁電極65だけをスタンバイ電位とし且つ有彩色用周縁電極群98に属する周縁電極65を接地電位とするような印刷信号を生成する。なお、印刷信号は2ビットのシリアル信号である。
【0080】
図12(a)〜(c)には、階調制御用の3種類の波形パターン信号131〜133が示されており、図12(d)には、高電位信号134(後述するスタンバイ信号に等しい)が示されており、図12(e)には、基準信号135が示されている。なお、縦軸は電位を、横軸は時刻をそれぞれ示している。
【0081】
図12(a)に示す波形パターン信号131は、印刷用紙上においてインク滴1滴分のドットを形成するために用いられる。図12(b)に示す波形パターン信号132は、印刷用紙上においてインク滴2滴分のドットを形成するために用いられる。図12(c)に示す波形パターン信号133は、印刷用紙上においてインク滴3滴分のドットを形成するために用いられる。図12(a)〜(c)に示す波形パターン信号131〜133において、ハイレベル電位は例えば3.3Vである。そして、後述するように、波形パターン信号131〜133は、ドライバIC51において、ハイレベル電位が20Vとなるように増幅される。
【0082】
図12(a)〜(c)に示すように、波形パターン信号131〜133はともに、パルス幅及びパルス間が実質的にALとなっており、さらに最後のパルスがインク吐出後に個別インク流路9内に残留する圧力を除去するためのキャンセルパルスとなっている。キャンセルパルスは、残留圧力と正負が反転した新たな圧力を個別インク流路9に発生させる。これにより、残留圧力が相殺される。
【0083】
図11に示すように、印刷制御部104は、FPC50上のドライバIC51と接続されている。印刷制御部104は、印刷信号生成部107が生成した印刷信号、及び、波形パターン記憶部106に記憶された3つの波形パターン信号131〜133と共に、電源108が生成した低電位信号、高電位信号134及び基準信号135をドライバIC51に供給する。ドライバIC51は、基準信号135(接地電位)を常に共通配線119を介して共通電極72に供給する。このドライバIC51は、波形選択部141と吐出信号生成部142とを含んでいる。波形選択部141は、印刷信号に基づいて、各個別電極60に供給すべき波形パターンを、3つの波形パターン信号131〜133及び高電位信号134の4つの信号中から順次選択すると共に、無彩色用周縁電極群97及び有彩色用周縁電極群98に供給すべき波形パターンを、低電位信号及び基準信号135の2つの信号の中から順次選択する。
【0084】
吐出信号生成部142は、各個別電極60について印刷信号に基づいて上記4つの信号の中から波形選択部141が選択した信号を、そのハイレベル電位が20Vとなるように高電位信号134を用いて変調増幅する。ドライバIC51は、このようにして生成された吐出信号を、FPC50の個別配線117を介して対応する各個別電極60に供給する。さらに、吐出信号生成部142は、無彩色用周縁電極群97及び有彩色用周縁電極群98について印刷信号に基づいて上記2つの信号の中から波形選択部141が選択した信号のうち低電位信号を、その電位が20Vとなるように高電位信号134を用いて増幅することでスタンバイ信号(図12(d)に示された高電位信号134と同じ信号)を生成する。そして、ドライバIC51は、スタンバイ信号又は基準信号135(接地電位)を、FPC50の周縁配線118を介して無彩色用周縁電極群97及び有彩色用周縁電極群98に供給する。これにより、全色のインクが吐出されるようなカラー印刷時においては、すべての周縁電極65にスタンバイ信号が与えられる。一方、ブラックインクだけが吐出されるような単色印刷時においては、無彩色用周縁電極群97にはスタンバイ信号が与えられるが、有彩色用周縁電極群98には基準信号135が与えられることになる。したがって、スタンバイ信号をすべての周縁電極65に供給する必要がなくなるので、消費電力が小さくなる。
【0085】
さらに、吐出信号が個別電極60に供給されるまでの待ち受け期間において、吐出信号生成部142は、すべての個別電極60とすべての周縁電極65に対してスタンバイ信号を供給する。このうち、個別電極60については、高電位信号134がスタンバイ信号として供給される。一方、周縁電極65に対しては、吐出信号生成部142が、低電位信号に基づいて高電位信号134から電位が20Vのスタンバイ信号を生成して供給する。すなわち、吐出信号の供給を待ち受けるために、本実施の形態では、周縁電極65にも個別電極60と同様にスタンバイ信号が供給される。なお、吐出信号が供給された後には、無彩色用周縁電極群97及び有彩色用周縁電極群98に対して、上述のようにスタンバイ信号を選択的に供給する。
【0086】
以上のように、本実施の形態のインクジェットプリンタ1によると、周縁電極65が複数の個別電極60のうち、配列方向に関して最も外側にある個別電極60に隣接した位置に配置されており、ノズル53からインク滴が吐出される前に、複数の個別電極60のみならず周縁電極65にも高電位に保持されたスタンバイ信号が供給されている。そのため、圧電シート91〜94において、配列方向に関して最も外側にある個別電極60に対向する領域と当該個別電極60に隣接した周縁電極65に対向する領域とが同じように圧力室46側に凸変形する。一方、圧電シート91〜94において、配列方向に関してより内側の個別電極60に対向する領域も同様に圧力室46側に凸変形する。これにより、ノズル53からのインク吐出時に、個別電極60の位置にかかわらず、その両側から受ける圧電シート91〜94の変形影響度合いがほぼ等しくなる。したがって、配列方向に関して最も外側にある圧力室46に係るノズル53とそれ以外の圧力室46に係るノズル53とのインク吐出特性のばらつきを抑えることができる。加えて、インク吐出時にもスタンバイ信号が引き続き周縁電極65に供給されているので、周縁電極65が浮遊電位になりにくくなる。仮に周縁電極65にスタンバイ信号を与えずに周縁電極65に隣接した個別電極60に電位を与えると、周縁電極65やこれに接続された周縁配線118などが個別配線117の電位や個別電極60からの電界の影響を受けて、周縁電極65が不安定な浮遊電位になる可能性がある。そのため、ときとして意図しない圧電シート91〜94の変形が生じ、インク吐出に悪影響を与える。しかし、本実施の形態では、周縁電極65にスタンバイ信号が供給されているので、周縁電極65が浮遊電位になることに起因した吐出への悪影響が生じにくくなる。その結果、吐出性能が安定したものとなる。
【0087】
また、吐出信号が、スタンバイ信号が供給された状態の個別電極60に供給されるので、上記効果が確実になる。つまり、吐出信号が個別電極60に供給される直前に、周縁電極65に供給されたスタンバイ信号が解除されず、その状態の個別電極60に吐出信号が供給されるからである。
【0088】
また、スタンバイ信号の電位が吐出信号の高電位と同じ電位とされ、基準信号の電位が吐出信号の低電位と同じ接地電位とされることで、インク不吐出時には共通電極72−個別電極60間に電圧を印加して圧力室46の容積を減少させた状態で待機し、インク吐出時には共通電極72−個別電極60間の電圧印加を一旦解除してから共通電極72−個別電極60間に電圧を印加して圧力室46の容積を再び減少させることによってノズル53からインクを吐出させる場合において、インク吐出特性のばらつきを抑えるのに有効である。
【0089】
また、個別電極60と周縁電極65とが同じ平面形状及び平面サイズになっているので、圧電シート91において、個別電極60及び周縁電極65と対向するそれぞれの領域が同じ平面形状及び同じ平面サイズとなる。さらに、空隙55と圧力室46とが同じ平面形状及び平面サイズになっている。そのため、圧電シート91〜94において、個別電極60及び周縁電極65と対向するそれぞれの領域が、各電極にスタンバイ信号が供給されたときに、対応する圧力室46及び空隙55側に同じように凸変形する。これにより、ノズル53からのインク吐出時に、圧電シート91〜94において配列方向に関して最も外側にある個別電極60とその内側にある個別電極60とが、それぞれ両側から受ける圧電シート91〜94の変形影響度合いとほとんど同じになる。したがって、配列方向に関して最も外側にある圧力室46に係るノズル53とそれ以外の圧力室46に係るノズル53とのインク吐出特性のばらつきをさらに抑えることができる。
【0090】
また、配列方向に関して周縁電極65と最も外側にある個別電極60との離隔距離が個別電極60どうしの離隔距離と同じになっている。そのため、圧電シート91〜94において、個別電極60及び周縁電極65と対向するそれぞれの領域間の距離の差による変形影響度合いの差がなくなる。また、圧電シート91において、個別電極60及び周縁電極65と対向するそれぞれの領域が同じ方向で同じ程度に分極しているので、これら領域の分極状態の差による変形影響度合いの違いもなくなる。したがって、配列方向に関して最も外側にある個別電極60に係るノズル53とそれ以外の個別電極60に係るノズル53とのインク吐出特性のばらつきをさらに抑えることができる。
【0091】
また、複数の周縁電極65が導電部材75,76によって連結されているので、各導電部材75,76に連結された複数の周縁電極65のうち、1つの周縁電極65にスタンバイ信号を供給するだけで、各導電部材75,76に連結された複数の周縁電極65にスタンバイ信号を供給することが可能になる。したがって、FPC50の周縁配線本数が少なくなり、FPC50の構成が簡易となる。
【0092】
また、導電部材75,76は、周縁電極65において隣接した個別電極60から最も離れた領域を連結しているので、圧電シート91〜94において配列方向に関して最も外側にある個別電極60に対向する領域が、導電部材75,76に対向する領域が変形することによって誘起される不必要な変形を、最小限に抑えることができる。つまり、導電部材75,76が隣接する個別電極60から離れているので、周縁電極65にスタンバイ信号を供給したときに、導電部材75,76と対向するそれぞれの領域の変形による影響が、配列方向に関して最も外側にある個別電極60に対向する領域に影響しにくくなる。
【0093】
また、アクチュエータユニット21の上面(圧電シート91上)には、配列方向Aの一端部側に、個別電極60とで周縁電極65を挟むようにして表面電極70が形成されている。つまり、同一平面上において個別電極60と表面電極70との間に周縁電極65が形成されている。そのため、個別電極60と表面電極70とがマイグレーションに起因して電気的に接続されるのを防止することができる。これは、共通電極72に基準信号を供給して接地電位としたときに表面電極70も接地電位となる。そして、この状態で個別電極60にスタンバイ信号や吐出信号を供給しても、個別電極60と表面電極70との間には、周縁電極65が存在するので、個別電極60と表面電極70との間に直接的なマイグレーションが生じなくなる。これにより、個別電極60と表面電極70とが直接電気的に接続されることがなくなる。
【0094】
上述した実施の形態の第1変形例として、基準信号の電位を接地電位に保持し且つスタンバイ信号の電位を−20Vに保持すると共に、吐出信号を−20Vと接地電位とを繰り返すような信号としてもよい。このとき、圧電シートの分極方向が、上述した実施の形態とは逆に共通電極72から個別電極60又は周縁電極65に向かう方向になっているとする。そのため、−20Vのスタンバイ信号が個別電極60及び周縁電極65に供給されると、個別電極60及び周縁電極65に対向する領域が対応する圧力室側及び空隙側に凸に湾曲する。この状態で吐出信号の供給を待ち受ける。吐出信号が供給されると、印刷信号に基づいて、まず個別電極60に対して接地電位が供給され、圧力室46の容積が増大する。さらに、再び個別電極60の電位が−20Vにされると、圧力室46の容積は減少して元の状態に戻り、ノズルからはインクが吐出されることになる。この変形例でも、共通電極−個別電極間の電位差がない状態の圧力室46の容積(基本容積)に対して、両電極間にスタンバイ信号に対応した電位差を与えておき、圧力室46の容積を減少させた状態で待機させているが、周縁空隙もこれと同じ容量変化をしている。そのため、いずれの圧力室46も配列方向の両側から受ける圧電シートの変形影響度合いがほとんど同じになり、インクの吐出特性のばらつきを抑えることができる。
【0095】
上述した実施の形態の第2変形例として、基準信号及びスタンバイ信号の電位を接地電位に保持すると共に、吐出信号を20Vと接地電位とを繰り返すような信号としてもよい。このとき圧電シートの分極方向は、本実施の形態とは逆に共通電極72から個別電極60又は周縁電極65に向かう方向になっているとする。スタンバイ信号が個別電極60及び周縁電極65に供給されても、圧電シート91〜94において個別電極60及び周縁電極65に対向する領域はほぼ平板状である。この状態で吐出信号の供給を待ち受ける。吐出信号が供給されると、印刷信号に基づいて、まず個別電極60に対して20Vのハイレベル電位が供給され、圧力室46の容積が増大する。このとき、圧力室46内に負圧が生じてインクが供給される。さらに、再び個別電極60の電位が接地電位にされると、圧力室46の容積は減少して元の状態に戻り、ノズルからはインクが吐出されることになる。この変形例では、共通電極−個別電極間の電位差がない状態の圧力室46の容積(基本容積)に対して、両電極間にスタンバイ信号に対応した電位差を与えている。この場合は、スタンバイ電位は接地電位に等しく、圧力室46の容積を基本容積の状態で待機させているが、周縁空隙もこれと同じ基本容積に保持されている。圧力室46の両側から受ける変形影響度合いの均一化という観点からは、前述の実施形態や第1変形例には及ばないが、いずれの空隙も常にその基本容積に保持されている分、インクの吐出特性のばらつきを抑えることに寄与する。なお、外部電界による不安定な浮遊電位にすることがない点は共通している。
【0096】
上述した実施の形態の第3変形例として、基準信号及びスタンバイ信号の電位を接地電位に保持すると共に、吐出信号を−20Vと接地電位とを繰り返すような信号としてもよい。このとき圧電シートの分極方向は本実施の形態と同じで個別電極60又は周縁電極65から共通電極72に向かう方向になっているとする。スタンバイ信号が個別電極60及び周縁電極65に供給されても、圧電シート91〜94において個別電極60及び周縁電極65に対向する領域はほぼ平板状である。この状態で吐出信号の供給を待ち受ける。吐出信号が供給されると、印刷信号に基づいて、まず個別電極60に対して−20Vの電位が供給される点が、上述の第2変形例と異なっている。しかし、インク吐出に至るまでの圧力室や空隙の変形状態や、このように駆動されることによる効果は第2変形例と同様である。
【0097】
これまで説明してきた実施形態及び第1〜第3変形例は、いずれも、スタンバイ状態の圧力室の容積を、一旦増大した後に再び元の容積にまで戻すことでインクを吐出させる点で共通している。しかし、本発明は、これらの形態に限られるものではない。例えば、スタンバイ状態の圧力室の容積を、増大せずに直接減少させてインク吐出をするインクジェットヘッドにも適用できる。
【0098】
第4変形例として、基準信号の電位を接地電位に保持し、スタンバイ信号の電位を20Vに保持すると共に、吐出信号を接地電位と20Vとを繰り返すような信号としてもよい。このとき、圧電シートの分極方向は、上述した実施形態とは逆で、共通電極72から個別電極60又は周縁電極65の方向を向いている。そのため、スタンバイ信号が個別電極60及び周縁電極65に供給されると、圧電シートは圧力室46及び空隙と反対側に凸に湾曲する。この状態から、吐出信号(接地電位)の供給に対応して、圧力室の容積が減少し、インクが吐出される。この変形例では、共通電極−個別電極間の電位差がない状態の圧力室46の容積(基本容積)に対して、両電極間に圧力室の容積が予め増大されるようにスタンバイ信号に対応した電位差を与えている。このとき、周縁空隙もこれと同じ容量変化をしている。そのため、いずれの圧力室46も配列方向の両側から受ける圧電シートの変形影響度合いがほとんど同じになり、インクの吐出特性のばらつきを抑えることができる。
【0099】
第5変形例として、基準信号の電位を接地電位に保持し、スタンバイ信号の電位を−20Vに保持すると共に、吐出信号を接地電位と−20Vとを繰り返すような信号としてもよい。このとき、圧電シートの分極方向は、上述した実施形態とは同じで、個別電極60または周縁電極65から共通電極72の方向を向いている。この場合、インク吐出に至るまでの圧力室や空隙の変形状態や、このように駆動されることによる効果は第4変形例と同様である。
【0100】
第6変形例として、基準信号及びスタンバイ信号の電位を接地電位に保持すると共に、吐出信号を20Vと接地電位を繰り返すような電位としてもよい。このとき、圧電シートの分極方向は、上述した実施形態と同じで、個別電極60又は周縁電極65から共通電極72の方向である。そのため、スタンバイ信号(接地電位)が個別電極60及び周縁電極65に供給されると、圧力室46は共通電極−個別電極間の電位差がない状態の容積(基本容積)となる。すなわち、圧電シートはほぼ平板状になっている。この状態から、吐出信号の供給に対応して、圧力室の容積が減少し、インクが吐出される。この変形例では、スタンバイ電位は接地電位に等しいので、共通電極−個別電極間の電位差がない状態の圧力室46の容積(基本容積)の状態で待機される。周縁空隙もこれと同じ基本容積に保持されている。圧力室46の両側から受ける変形影響度合いの均一化という観点からは、第4及び第5変形例には及ばないが、いずれの空隙も常にその基本容積に保持されている分、インクの吐出特性のばらつきを抑えることに寄与する。なお、外部電界による不安定な浮遊電位にすることがない点は共通している。
【0101】
第7変形例として、基準信号及びスタンバイ信号の電位を接地電位に保持すると共に、吐出信号を−20Vと接地電位を繰り返すような電位としてもよい。このとき、圧電シートの分極方向は、上述した実施形態とは逆で、共通電極72から個別電極60又は周縁電極65の方向を向いている。この状態で吐出信号の供給を待ち受ける。吐出信号が供給されると、印刷信号に基づいて、まず個別電極60に対して−20Vの電位が供給される点が、上述の第2変形例と異なっている。しかし、インク吐出に至る間での圧力室や空隙の変形状態や、このように駆動されることによる効果は第6変形例と同様である。
【0102】
以上説明した第1〜第7変形例によっても、上述した実施の形態と同様の利益が得られる。
【0103】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述した本実施の形態によるインクジェットプリンタ1は、スタンバイ信号が吐出信号の高電位と同じ電位に保持されているが、吐出信号の高電位及び低電位以外の電位に保持されていてもよい。また、基準信号も吐出信号の高電位及び低電位以外の電位に保持されていてもよい。
【0104】
無彩色用周縁電極群97及び有彩色用周縁電極群98を区別せずに印刷時にはすべての周縁電極65にスタンバイ信号を供給するようにしてもよい。上述した実施の形態では、電源108、制御部101、ドライバIC51及びFPC50が吐出信号供給手段、スタンバイ信号供給手段及び基準信号供給手段を構成しているが、これら3つの手段は別の部材から構成されていてもよい。また、圧力室が一方向にだけ配列されたヘッドにも適用可能である。上述したインクジェットプリンタは、ヘッドが往復移動するシリアルプリンタであるが、ヘッドが固定されたラインプリンタでもよい。
【0105】
上述した本実施の形態による圧力室46と空隙55とが同じ平面形状及び平面サイズに形成されていなくてもよい。また、個別電極60と周縁電極65も同じ平面形状及び平面サイズに形成されていなくてもよい。また、複数の圧力室46がマトリクス状に形成されていなくてもよい。また、複数の空隙55が複数の圧力室46を取り囲んでいなくてもよい。また、導電部材75,76が周縁電極65において個別電極60から最も離隔した領域どうしを連結していなくてもよい。また、複数の周縁電極65が導電部材75,76によって接続されていなくてもよく、複数の周縁電極が複数の周縁配線とそれぞれ電気的に接続されていてもよい。また、流路ユニット41に複数のマニホールド45を形成していなくてもよいし、複数の圧力室46が圧力室列群48を構成していなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態によるカラーインクジェットプリンタの内部構成を描いた概略斜視図である。
【図2】図1に示すヘッドユニットの斜視図である。
【図3】図2のII−II線における断面図である。
【図4】図3に示すインクジェットヘッドにフレームが接着された状態を示す斜視図である。
【図5】インクジェットヘッドの平面図である。
【図6】図5内に描かれた一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図7】図6に示すVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】アクチュエータユニットを示しており、(a)は図7における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図であり、(b)は個別電極の平面図である。
【図9】アクチュエータユニットの拡大平面図である。
【図10】図5に示すインクジェットヘッドの拡大平面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタの制御構成を示すブロック図である。
【図12】インクジェットヘッドに与えられる各信号に対応する波形パターンを描いた図である。
【符号の説明】
【0107】
1 インクジェットプリンタ
5 インクジェットヘッド
41 流路ユニット
42 アクチュエータユニット
45 マニホールド(共通インク室)
46 圧力室
48 圧力室列群(圧力室群)
50 フレキシブルプリント配線板(吐出信号供給手段、スタンバイ信号供給手段、基準信号供給手段の一部)
51 ドライバIC(吐出信号供給手段、スタンバイ信号供給手段、基準信号供給手段の一部)
53 ノズル
55 空隙(周縁空隙)
60 個別電極
64 個別電極列群
65 周縁電極
68、69 周縁電極列
70 表面電極
72 共通電極
75,76 導電部材
101 制御部(吐出信号供給手段、スタンバイ信号供給手段、基準信号供給手段の一部)
108 電源(吐出信号供給手段、スタンバイ信号供給手段、基準信号供給手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがノズルに連通した複数の圧力室と、前記複数の圧力室の各配列方向に関して最も外側にある前記圧力室から前記配列方向外側に離隔した周縁空隙とが形成された流路ユニットと、
それぞれが前記圧力室に対向する複数の個別電極と、前記周縁空隙に対向する周縁電極と、前記複数の個別電極及び前記周縁電極に跨って形成された共通電極と、前記複数の個別電極及び前記周縁電極と前記共通電極とによって挟まれた圧電シートとを有するアクチュエータユニットと、
画像データに基づいて、第1の電位及びこれとは異なる第2の電位を交互に繰り返すインク吐出信号を生成すると共に、生成された吐出信号を前記個別電極に供給する吐出信号供給手段と、
所定電位に保持されたスタンバイ信号を生成すると共に、生成されたスタンバイ信号を前記周縁電極に供給するスタンバイ信号供給手段と、
基準電位に保持された基準信号を生成すると共に、生成された基準信号を前記共通電極に供給する基準信号供給手段とを備えており、
少なくとも前記吐出信号供給手段が前記個別電極に前記吐出信号を供給しているときに、前記スタンバイ信号供給手段が前記周縁電極に前記スタンバイ信号を供給し、前記基準信号供給手段が前記共通電極に前記基準信号を供給することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記スタンバイ信号が、前記第1の電位及び第2の電位のいずれか一方に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記スタンバイ信号供給手段が、前記吐出信号が前記個別電極に供給され始めるまで、すべての前記周縁電極に前記スタンバイ信号を供給していることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記基準信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のいずれか一方の電位に保持された前記基準信号を生成し、
前記スタンバイ信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のうち前記基準信号と異なる方の電位に保持された前記スタンバイ信号を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記基準信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のいずれか一方の電位に保持された前記基準信号を生成し、
前記スタンバイ信号供給手段が、前記第1の電位及び前記第2の電位のうち前記基準信号と同じ方の電位に保持された前記スタンバイ信号を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記周縁空隙が前記圧力室と同じ平面形状及び平面サイズを有し、前記周縁電極が前記個別電極と同じ平面形状及び平面サイズを有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記配列方向に関して、前記周縁空隙と前記最も外側にある圧力室との間の距離が、隣接する前記圧力室間の距離に等しいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記圧電シートにおいて、前記周縁電極と前記共通電極とに挟まれた領域が、前記個別電極と前記共通電極とに挟まれた領域と同様に分極していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記複数の圧力室が、マトリクス状に二次元配列されており、
複数の前記周縁空隙が、前記複数の圧力室を取り囲んでいることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
複数の前記周縁電極が、前記アクチュエータユニット上に配置された導電部材を介して互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記導電部材が、前記周縁電極において最も前記個別電極から離隔した領域同士を連結していることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記アクチュエータユニットにおいて前記流路ユニットに接する面とは反対側の面上には、前記個別電極及び前記周縁電極のさらに外側に、前記共通電極に電気的に接続された表面電極が形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記流路ユニットにはインクが貯溜される複数の共通インク室が形成されていると共に、前記複数の圧力室が対応する前記ノズルとは反対側においていずれかの前記共通インク室に連通することで、当該共通インク室に関連した圧力室群がそれぞれ形成されており、
前記吐出信号供給手段が、前記複数の圧力室群にそれぞれ関連した個別電極群に対して選択的に前記吐出信号を供給し、
前記スタンバイ信号供給手段が、選択された前記圧力室群に関連した前記個別電極群に対応する周縁電極にのみ前記スタンバイ信号を供給することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−137580(P2010−137580A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65703(P2010−65703)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2004−268842(P2004−268842)の分割
【原出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】