説明

インクジェット記録装置

【課題】記録媒体の改行量やインクの種類が異なる場合であっても、適切な量の活性エネルギー線照射を実施することができるインクジェット記録装置を提供することである。
【解決手段】記録媒体Wに対し、キャリッジ8に搭載したインクジェットヘッド9を主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、インクジェットヘッド9から紫外線硬化インクを吐出させて、記録媒体Wに描画を行う描画部と、キャリッジ8に搭載され、紫外線を照射させて記録媒体上の紫外線硬化インクを硬化させる主照射部32と、キャリッジ8に搭載され、紫外線を照射させて主照射部32により硬化した紫外線硬化インクを、補充硬化させる副照射部33と、主照射部32とは別に、副照射部33の活性エネルギー線の照射光量を制御する副照射制御部45と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化インクを吐出して記録媒体に描画を行なうインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種インクジェット記録装置として、副走査方向に走査する印字媒体(記録媒体)と、主走査方向に走査し、紫外線硬化型インク(活性エネルギー線硬化インク)を記録媒体に吐出するインクジェット記録ヘッド(インクジェットヘッド)と、インクジェット記録ヘッドの主走査方向における両側に併設され、UVランプを有する紫外線照射装置と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
この紫外線照射装置は、印字媒体の送り方向(副走査方向)における下流側に、インクジェット記録ヘッドより長く延在しており、インクジェット記録ヘッドを主走査させると、印字媒体に対して印字と紫外線の照射が行われる。すなわち、印字直後に着弾したインクの紫外線硬化が行われる。また、この動作と並行して、改行(主走査)後の印字された領域にも紫外線が照射される。すなわち、紫外線の照射を主走査に合わせて2回行うことで、紫外線硬化型インクを確実に硬化させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−1326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のインクジェット記録装置では、いわゆる重ね打ちやマイクロウィーブ等の特殊な印刷方法を行う場合があり、副走査方向の送り量(改行量)を可変可能としている。
かかる場合、上記した従来のインクジェット記録装置では、記録媒体の送り量(改行量)が少ない場合に、実質的に2回以上の紫外線の照射を行うことになり、過剰に活性エネルギー線(紫外線)を照射してしまう。一方、2回の紫外線照射を行うために、最終行の印字領域に対しては、空スキャン(印字を行わない主走査)を行う必要がある。さらに、硬化特性の異なるインクを用いる場合には、照射量の過不足が生ずる。
【0005】
本発明は、記録媒体の改行量やインクの種類が異なる場合であっても、適切な量の活性エネルギー線照射を実施することができるインクジェット記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置は、記録媒体に対し、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドを主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、インクジェットヘッドから活性エネルギー線硬化インクを吐出させて、記録媒体に描画を行う描画部と、キャリッジに搭載され、活性エネルギー線を照射させて記録媒体上の活性エネルギー線硬化インクを硬化させる主照射部と、キャリッジに搭載され、活性エネルギー線を照射させて主照射部により硬化した活性エネルギー線硬化インクを、補充硬化させる副照射部と、主照射部とは別に、副照射部の活性エネルギー線の照射光量を制御する照射制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、副照射部の活性エネルギー線の照射光量を制御することができるため、例えば、記録モードによって異なる送り量の記録媒体に対応して、記録媒体の改行量を加味して活性エネルギー線を照射させることができる。これにより、過剰に活性エネルギー線を照射することを防止でき、適切に活性エネルギー線硬化インクを硬化させることができる。また、活性エネルギー線硬化インクの種類によって、適正に硬化する積算光量が異なるが、照射制御部によって、副照射部の活性エネルギー線の照射光量を活性エネルギー線硬化インクに合わせて制御することができ、適切に活性エネルギー線硬化インクを硬化させることができる。さらに、活性エネルギー線の照射光量を強くすることで、上記の空スキャンを省略することができる。
【0008】
この場合、副照射部は、複数の硬化用発光ダイオードを副走査方向に列設した硬化用ダイオードアレイを有し、照射制御部は、複数の硬化用発光ダイオードを個々に制御可能に構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、複数の硬化用発光ダイオードの一部あるいは全部を点灯・消灯制御することができ、例えば改行量(改行幅)に合致する照射幅で、活性エネルギー線を照射することができる。また、各硬化用発光ダイオードの照度調整や複数の硬化用発光ダイオードの間引き点灯により、活性エネルギー線の照射光量を強弱自在に制御することができる。
【0010】
この場合、主照射部は、複数の硬化用発光ダイオードを副走査方向に列設した硬化用ダイオードアレイを有し、主照射部と副照射部とは、副走査方向に延在する単一の照射ユニットで構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、主照射部による活性エネルギー線硬化インクの硬化と、副照射部による硬化を一つの装置で行うことができるため、装置構成の単純化とコストの削減を行うことができる。
【0012】
この場合、照射制御部は、記録媒体の各部が受光する積算光量が均一になるように、副照射部を制御することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、無駄な電力消費を抑制しつつ、記録媒体に吐出した活性エネルギー線硬化インクを適切に硬化させることができる。
【0014】
この場合、描画部は、副走査方向における改行距離を可変可能に構成され、照射制御部は、可変した改行距離に応じて、複数の硬化用発光ダイオードの一部を点灯させることが好ましい。
【0015】
この場合、照射制御部は、インクジェットヘッドから吐出する活性エネルギー線硬化インクの種別に応じて、複数の硬化用発光ダイオードの照度を調整することが好ましい。
【0016】
これらの構成によれば、無駄な電力消費を抑制しつつ、記録媒体に吐出した活性エネルギー線硬化インクを過不足なく適切に硬化させることができる。
【0017】
この場合、光照射ユニットは、主照射部を副照射部との間に挟みこむように副走査方向に延在し、記録媒体を予備加熱する予備加熱部を、更に有していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、例えば、活性化エネルギー線の照射により昇温された記録媒体との温度差が少なくなるように加熱することにより、描画前と描画時の温度条件がほぼ等しくなるので、記録媒体が描画時にほとんど膨張することがなく、安定した描画を実施することができる。したがって、インク硬化のために記録媒体が加熱されても、良好な印刷品質を維持することができる。
【0019】
この場合、予備加熱部は、活性エネルギー線を照射させて記録媒体を予備加熱する複数の加熱用発光ダイオードを副走査方向に列設した加熱用ダイオードアレイを有し、照射制御部は、複数の加熱用発光ダイオードを個々に制御可能に構成されていることが好ましい。
【0020】
この場合、描画部は、副走査方向における改行距離を可変可能に構成され、照射制御部は、可変した改行距離に応じて、複数の加熱用発光ダイオードの一部を点灯させることが好ましい。
【0021】
これらの構成によれば、記録媒体を過不足なく予備加熱することができる。
【0022】
この場合、活性エネルギー線が、所定の中心波長を有する紫外線であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係るインクジェット記録装置の(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】第1実施形態に係る描画動作を模式的に示した説明図である。
【図3】第1実施形態に係るインクジェット記録装置の制御方法を模式的に示した説明図である。
【図4】第2実施形態に係るインクジェット記録装置の(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図5】第2実施形態に係る描画動作を模式的に示した説明図である。
【図6】第2実施形態に係るインクジェット記録装置の制御方法を模式的に示した説明図(1)である。
【図7】第2実施形態に係るインクジェット記録装置の制御方法を模式的に示した説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明のインクジェット記録装置について説明する。このインクジェット記録装置は、いわゆるリール・ツー・リール形式で除給材される薄いフィルム状の記録媒体に対して、紫外線硬化インク(活性エネルギー線硬化インク)をインクジェットヘッドにより吐出することで、所望の画像等を印刷するものである。なお、以下の説明では、記録媒体の搬送方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する方向をY軸方向と規定する。
【0025】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、機台2と、ロール状に巻回された長尺の記録媒体Wを繰り出す繰出装置3と、印刷済みの記録媒体Wを巻き取る巻取装置4と、機台2上に配設され、給材された記録媒体Wを吸着セットするワークステージ5と、X軸方向に延在し、ワークステージ5を介して記録媒体WをX軸方向に間欠送りするX軸テーブル6と、X軸テーブル6を跨ぐようにY軸方向に架け渡されたY軸テーブル7と、Y軸テーブル7に移動自在に搭載されたキャリッジ8と、キャリッジ8に搭載され、紫外線硬化インクを吐出して記録媒体Wに描画を行うインクジェットヘッド9と、キャリッジ8に搭載され、描画後の記録媒体Wに紫外線を照射して紫外線硬化インクを硬化させると共に、紫外線を照射させて硬化した紫外線硬化インクを、補充硬化させる紫外線照射装置10と、を備えている。なお、請求項に言う描画部は、X軸テーブル6と、Y軸テーブル7と、キャリッジ8およびインクジェットヘッド9から構成されている。
【0026】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド9に紫外線硬化インクを供給するインク供給装置(図示省略)と、インクジェットヘッド9の機能の保守および回復を図る保守装置(図示省略)と、インクジェット記録装置1を統括制御する制御装置11と、を備えている。
【0027】
このインクジェット記録装置1では、繰出装置3により繰り出された記録媒体Wをワークステージ5で吸着セットした後、X軸テーブル6によりワークステージ5を介して記録媒体WをX軸方向に間欠送り(副走査)すると共に、吸着セットされた記録媒体Wの描画可能領域に対し、キャリッジ8を往復動作(主走査)させながらインクジェットヘッド9から紫外線硬化インクを吐出して描画を行う。また、キャリッジ8に搭載された紫外線照射装置10により、描画直後に紫外線を照射して紫外線硬化インクを硬化させると共に、記録媒体Wの改行量dに対応して照射幅または照度を調整して紫外線硬化インクを補充硬化するようになっている。なお、記録媒体Wは、連続的に供給可能なロール状のものに限定されるものではなく、枚葉の記録媒体Wを用いてもよい。
【0028】
繰出装置3および巻取装置4は、機台2やワークステージ5を挟むようにしてX軸方向上流側および下流側にそれぞれ配設されている。記録媒体Wは、軽いテンションを付与された状態で繰出装置3から繰り出され、巻取装置4に巻き取られる。
【0029】
ワークステージ5は、その表面に複数形成された孔(図示省略)を介して、繰出装置3から送られてきた記録媒体Wを吸着セットする。ワークステージ5の搬送(X軸)方向上流端部および下流端部には、送込ローラー12と送出ローラー13とが、それぞれ添設されている。なお、詳細な説明は省略するが、ワークステージ5に形成された複数の孔は、図外の真空吸引設備および圧縮エアー供給設備にそれぞれ連通している。
【0030】
送込ローラー12および送出ローラー13は、それぞれ昇降可能に設けられた自由回転するニップローラーであり、X軸方向に並んで配設され、記録媒体Wを挟み込んで、ワークステージ5の上面に記録媒体Wを臨ませる。そして、ワークステージ5は、記録媒体Wを吸着セットした状態で、X軸テーブル6によりX軸方向(上流側から下流側)に改行量d分、間欠送りされる。
【0031】
X軸テーブル6は、機台2上に配設され、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール14と、ワークステージ5をX軸ガイドレール14に沿ってスライド自在に移動させるX軸移動機構15と、を有している。X軸テーブル6は、往動(または復動)時には停止したキャリッジ8を、次の復動(または往動)までに、描画幅(改行量d)分、記録媒体WをX軸方向(副走査方向)の下流側に送る(改行送り)。なお。X軸テーブル6は、副走査方向における改行量dを、記録モードに対応して可変可能に構成されている。
【0032】
Y軸テーブル7は、機台2をY軸方向に跨ぐように架け渡されたY軸ガイドレール16と、キャリッジ8をY軸ガイドレール16に沿ってスライド自在に移動させるY軸移動機構17と、を有している。Y軸テーブル7は、キャリッジ8を介してインクジェットヘッド9および紫外線照射装置10をY軸方向(主走査方向)に往復動させる。
【0033】
キャリッジ8は、インクジェットヘッド9および紫外線照射装置10を搭載し、X軸方向上流側においてY軸ガイドレール16にスライド自在に係合している。詳細は後述するが、紫外線照射装置10は、一対の光照射ランプ31,31(照射ユニット)を有し、一対の光照射ランプ31,31は、インクジェットヘッド9のY軸方向における両側部に配設された状態で、キャリッジ8に搭載されている。
【0034】
インクジェットヘッド9は、複数の吐出ノズル21が開口したノズル面22を有し、ノズル面22には、複数の吐出ノズル21が等間隔で並んで構成された複数本のノズル列23が、相互に平行に列設されている。このインクジェットヘッド9では、ノズル列23ごとに、異なる種類(色)の紫外線硬化インクを、それぞれ吐出するようになっている。
【0035】
本実施形態では、いわゆる紫外線硬化型のインクを用いており、ノズル面22には、クリアー(CL)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)から成る複数本のノズル列23が主走査方向(Y軸方向)に順に配設されている。なお、紫外線硬化インクの色、色数および各色の配列は、その用途により任意に設定してよい。また、インクは、紫外線硬化型のものに限られず、赤外線硬化型や可視光硬化型等のインクであってもよい。
【0036】
紫外線照射装置10は、インクジェットヘッド9を挟むようにしてキャリッジ8に搭載された一対の光照射ランプ31,31を有している。各光照射ランプ31は、複数の発光ダイオード(LED)がX軸方向に等間隔に並んだLEDアレイで構成され、その照射面は、インクジェットヘッド9のノズル面22より高い位置に配設されている。各光照射ランプ31は、紫外線硬化インクの吐出直後の記録媒体Wに臨み、所定の中心波長を有する紫外線を照射させて紫外線硬化インクを硬化させる主照射部32と、紫外線を照射させて主照射部32により硬化した紫外線硬化インクを、補充硬化させる副照射部33と、をX軸方向(副走査方向に)に連ねて構成されている。なお、本実施形態では、各紫外線照射装置10は、所定の中心波長を有する複数の発光ダイオードにより構成されているが、水銀ランプやメタルハライドランプ等を用いてもよい。また、インクジェットヘッド9の主走査方向への移動における、往路のみ、もしくは復路のみで印刷を行う場合には、紫外線照射装置10を片側の光照射ランプ31のみで構成してもよい。
【0037】
主照射部32は、インクジェットヘッド9のY軸方向における両側に併設されており、主照射部32による副走査方向の有効照射幅は、インクジェットヘッド9のノズル列23長に対応するように設計されている。この場合、主照射部32は、インクジェットヘッド9と共に主走査(往動または復動)することで、紫外線硬化インク吐出直後の記録媒体W上に臨み、1の主走査で描画が行われた領域に紫外線を照射して、記録媒体W上に吐出された紫外線硬化インクを硬化させる。すなわち、実施形態のものは、一対の主照射部32を常時点灯としてインク硬化を実施し、複数回の主走査でインク硬化のために必要な光量(積算光量)が得られるものとなっている。
【0038】
副照射部33は、インクジェットヘッド9のY軸方向における両側に、且つインクジェットヘッド9(実質的には、ノズル列23)より記録媒体Wの搬送方向下流側にはみ出して、主照射部32と一体に形成されている。また、副照射部33による副走査方向の有効照射幅は、少なくともX軸テーブル6による記録媒体Wの最大間欠送り分(改行量d分)に対応するように設計されている。副照射部33は、複数の硬化用発光ダイオードを副走査方向に列設した硬化用ダイオードアレイを有しており個々に制御可能に構成されている。すなわち、照射する紫外線の照度および点灯する硬化用発光ダイオードを調整可能に構成されている。副照射部33は、キャリッジ8の主走査(往動あるいは復動)に伴い、描画後の記録媒体W上を走査され、主照射部32により紫外線照射された紫外線硬化インクを補充硬化させる。
【0039】
図2に示すように、制御装置11は、制御用のプログラムやデータ等が記憶されたメモリー部41と、所定の描画データが記憶された画像メモリー部46と、メモリー部41および画像メモリー部46を制御するコントローラー部42と、コントローラー部42からの指令によりインクジェット記録装置1を構成する各装置を駆動するドライバー部43と、を有している。ドライバー部43の光源ドライバーには、主照射部32を制御する主照射制御部44と、副照射部33の紫外線の照射光量を制御する副照射制御部45と、を有している。副照射制御部45は、記録媒体Wの各部が受光する積算光量が均一になるように、主照射部32の照射光量を参照しつつ副照射部33の硬化用発行ダイオードの点灯位置や照度を調整する。また、副照射制御部45は、各硬化用発行ダイオードに印加する電圧を調整することで、照射する紫外線の照度と調整すると共に、各硬化用発光ダイオードをON−OFFスイッチングして点灯させる硬化用発光ダイオードを選択するようになっている。
【0040】
次に、図3を参照して、一連の描画動作について説明する。ここでは、記録媒体Wの送り量(改行量d)がキャリッジ8幅(実質的には、ノズル列23)の1/2の場合について説明する。まず、ホーム位置にあるキャリッジ8は、紫外線照射装置10を駆動して発光ダイオードを点灯した状態で、Y軸テーブル7によって主走査方向に往動すると共に、紫外線硬化インクの吐出が行われた直後、主照射部32によって紫外線の照射が行われる。(図3(a)および(b))。そして、X軸テーブル6により記録媒体WをX軸方向に改行量d分副走査する(図3(c))。
【0041】
そして、キャリッジ8を往動(または復動)させる際に、最初に描画された領域がインクジェットヘッド9を通過するまで上記工程を繰り返す。最初に描画された領域がインクジェットヘッド9を通過した後の走査では、描画領域に対してはインクジェットヘッド9による描画が行われると共に、描画後における描画領域に対しては副照射部33により紫外線の照射が行われ、紫外線硬化インクの補充硬化が行われる(図3(d))。この際、キャリッジ8幅に対して記録媒体Wの送り量(改行量d)が狭いため、記録媒体Wの送り量に対応した主照射部32側の硬化用発行ダイオードを点灯させる。これにより、過剰に紫外線を照射することを防止でき、適切に紫外線硬化インクを硬化させることができる。
【0042】
最後に、キャリッジ8は、Y軸テーブル7によって主走査方向に往(復)動すると共に、描画後の描画領域に対して、紫外線を照射する。すなわち、最終パスとなるnパス目は、補充硬化のみ行い、主照射部32による紫外線の照射および描画動作は行わない(空スキャン)。以上の工程を繰り返すことにより、記録媒体Wに対して描画が行われる。
【0043】
なお、記録媒体Wの送り量(改行量d)がキャリッジ8の幅と同じであれば、副照射部33の硬化用発行ダイオードを全て点灯させて、上記の描画動作を行う(図4(a))。また、紫外線硬化インクの種類によって、硬化するのに必要な積算光量が異なるが、紫外線硬化インクに応じて(例えば、制御テーブルを参照して)、印加する電圧を調整することで、照度を調整して、適切に紫外線硬化インクを硬化させることができる(図4(b)および(c))。具体的には、紫外線の照射により硬化しやすい紫外線硬化インクの場合では、照度を下げて、硬化しにくい紫外線硬化インクの場合では、照度を上げる。
【0044】
以上の構成によれば、副照射部33の紫外線の照射光量を制御することができるため、記録媒体Wの改行量dを加味して紫外線を照射させることができる。これにより、過剰に紫外線を照射することを防止でき、適切に紫外線硬化インクを硬化させることができる。また、異なる種類の紫外線硬化インクを適切に硬化させることができる。
【0045】
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分を主として説明する。このインクジェット記録装置1の紫外線照射装置10は、各光照射ランプ31が、上記の主照射部32と、副照射部33と、主照射部32を副照射部33との間に挟みこむように副走査方向に延在し、紫外線の照射により昇温された記録媒体Wとの温度差が少なくなるように、記録媒体Wを予備加熱する予備加熱部34と、を有している。この場合も、光照射ランプ31は、一連のLEDアレイで構成されている。
【0046】
予備加熱部34は、インクジェットヘッド9のY軸方向における両側に、且つインクジェットヘッド9(実質的には、ノズル列23)により記録媒体Wの搬送方向下流側にはみ出して配設されている。また、予備加熱部34による副走査方向の有効照射幅は、少なくともX軸テーブル6による記録媒体Wの最大間欠送り分(改行量d分)に対応するように設計されている。すなわち、予備加熱部34は、1の主走査分の加熱領域に対し紫外線照射を行い、続く改行送りの後、この加熱領域が描画領域として、インクジェットヘッド9および主照射部32に臨むようになっている。また、予備加熱部34は、複数の加熱用発行ダイオードを有しており、副照射制御部45によって、各加熱用発行ダイオードを個別に制御可能に構成されている。
【0047】
予備加熱部34は、キャリッジ8の主走査(往動あるいは復動)に伴い、描画前の記録媒体W上を走査され、続く主照射部32による紫外線の照射により昇温される記録媒体Wとの温度差が少なくなるように記録媒体Wを加熱する。すなわち、予備加熱部34は、その1の主走査による領域(副走査方向における改行距離分)を、描画時における領域と同じ温度になるように描画前に予備加熱する。なお、予備加熱部34をY軸方向に十分に長く形成し、改行量dに応じて点灯する発光ダイオードの数を調整するようにしてもよい。この場合も、光照射ランプ31は、一連のLEDアレイで構成されている。
【0048】
次に、図6を参照して、一連の描画動作について説明する。ここでは、記録媒体Wの改行量dがキャリッジ8幅(実質的には、ノズル列23)の1/2である場合について説明する。まず、ホーム位置にあるキャリッジ8は、Y軸テーブル7によって主走査方向に往動すると共に、加熱領域に対して予備加熱を行う(図6(a)および(b))。すなわち、1パス目は、予備加熱のみ行い、描画動作は行わない(空スキャン)。
【0049】
そして、X軸テーブル6により記録媒体WをX軸方向に改行量d分副走査する(図6(c))。次に、キャリッジ8をY軸テーブル7によって復動させる(2パス目)。この際、描画領域では紫外線硬化インクの吐出が行われた直後、主照射部32によって紫外線の照射が行われる。また、この動作と並行して、新たな加熱領域では予備加熱部34により予備加熱が行われる(図6(d))。
【0050】
そして、キャリッジ8を往動(または復動)させる際に、最初に予備加熱された領域がインクジェットヘッド9を通過するまで上記工程を繰り返す。最初に予備加熱された領域がインクジェットヘッド9を通過した後の走査では、描画領域では紫外線硬化インクの吐出が行われた直後、主照射部32によって紫外線の照射が行われる。また、この動作と並行して、新たな加熱領域では予備加熱部34により予備加熱が行われる。さらに、描画後における描画領域に対しては副照射部33により紫外線の照射が行われ、紫外線硬化インクの補完硬化が行われる(図6(e)および(f))。以上の工程を繰り返すことにより、記録媒体Wに対して描画が行われる。
最後に、キャリッジ8は、Y軸テーブル7によって主走査方向に往(復)動すると共に、描画後の描画領域に対して、紫外線を照射する。すなわち、最終パスとなるnパス目は、補充硬化のみ行い、予備加熱部34による予備加熱、主照射部32による紫外線の照射および描画動作は行わない(空スキャン)。
【0051】
なお、記録媒体Wの改行量dがキャリッジ8の幅と同じであれば、予備加熱部34の加熱用発行ダイオードおよび副照射部33の硬化用発行ダイオードを全て点灯させて、上記の描画動作を行う(図7(a))。また、紫外線硬化インクの種類によって、硬化するのに必要な積算光量が異なるが、紫外線硬化インクに応じて、印加する電圧を調整することで、照度を調整して、適切に紫外線硬化インクを硬化させることができる(図7(b)および(c))。さらに、記録媒体Wの改行量dがキャリッジ8幅の1/2であった場合、加熱領域において、主照射部32側の予備加熱部34の加熱用発光ダイオードの半分を点灯させ、副照射部33の硬化用発行ダイオードを全て点灯させるようにしてもよい。すなわち、予備加熱の2倍の紫外線を照射して紫外線硬化インクを硬化させる(図7(d))。
【0052】
以上の構成によれば、描画前と描画時の温度条件がほぼ等しくなるので、記録媒体Wが描画時にほとんど膨張することがなく、安定した描画を実施することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、主照射部32と副照射部33が一体に形成されている場合について説明したが、主照射部32と副照射部33が別体として形成されていてもよい。また、副照射部33がインクジェットヘッド9や主照射部32と共通のキャリッジ8に搭載されている場合について説明したが、別のキャリッジ8に搭載されていてもよい。係る場合には、副照射部33をY軸ガイドレール16に沿って自在に移動させる副照射部移動機構を備えるようにする(図示省略)。
【符号の説明】
【0054】
1…インクジェット記録装置 6…X軸テーブル 7…Y軸テーブル 8…キャリッジ 9…インクジェットヘッド 32…主照射部 33…副照射部 34…予備加熱部 45…副照射制御部 W…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対し、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドを主走査方向および副走査方向に相対的に移動させながら、前記インクジェットヘッドから活性エネルギー線硬化インクを吐出させて、前記記録媒体に描画を行う描画部と、
前記キャリッジに搭載され、活性エネルギー線を照射させて前記記録媒体上の前記活性エネルギー線硬化インクを硬化させる主照射部と、
前記キャリッジに搭載され、活性エネルギー線を照射させて前記主照射部により硬化した前記活性エネルギー線硬化インクを、補充硬化させる副照射部と、
前記主照射部とは別に、前記副照射部の活性エネルギー線の照射光量を制御する照射制御部と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記副照射部は、複数の硬化用発光ダイオードを副走査方向に列設した硬化用ダイオードアレイを有し、
前記照射制御部は、前記複数の硬化用発光ダイオードを個々に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記主照射部は、複数の硬化用発光ダイオードを副走査方向に列設した硬化用ダイオードアレイを有し、
前記主照射部と前記副照射部とは、副走査方向に延在する単一の照射ユニットで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記照射制御部は、前記記録媒体の各部が受光する積算光量が均一になるように、前記副照射部を制御することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記描画部は、前記副走査方向における改行距離を可変可能に構成され、
前記照射制御部は、可変した前記改行距離に応じて、前記複数の硬化用発光ダイオードの一部を点灯させることを特徴とする請求項3または4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記照射制御部は、前記インクジェットヘッドから吐出する前記活性エネルギー線硬化インクの種別に応じて、前記複数の硬化用発光ダイオードの照度を調整することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記光照射ユニットは、前記主照射部を前記副照射部との間に挟みこむように副走査方向に延在し、前記記録媒体を予備加熱する予備加熱部を、更に有していることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記予備加熱部は、活性エネルギー線を照射させて前記記録媒体を予備加熱する複数の加熱用発光ダイオードを副走査方向に列設した加熱用ダイオードアレイを有し、
前記照射制御部は、前記複数の加熱用発光ダイオードを個々に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記描画部は、副走査方向における改行距離を可変可能に構成され、
前記照射制御部は、可変した前記改行距離に応じて、前記複数の加熱用発光ダイオードの一部を点灯させることを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記活性エネルギー線が、所定の中心波長を有する紫外線であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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