説明

インクジェット記録装置

【課題】インク吐出順序の違いによる記録画像の色の違いの発生を防止しつつ、記録速度の低下を少なくできる手段を提供する。
【解決手段】キャリッジ67の右移動時のみ液滴を吐出させる片方向記録処理と、キャリッジ67の左右移動時に液滴を吐出させる双方向記録処理とを選択実行する制御部130を備える。制御部130は、キャリッジ67の一回の移動時に用紙に記録可能な最大ライン数よりも少ないライン数の単位領域81毎に、カラードットの割合の大小を判定する判定手段と、上記割合が大きいと判定された単位領域81よりも用紙の搬送向き15の下流側において用紙に記録される第1記録データを、双方向記録処理によって用紙に記録し、上記割合が大きいと判定された単位領域81と当該単位領域81よりも搬送向き15の上流側において用紙に記録される第2記録データを、片方向記録処理によって用紙に記録する記録手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に液滴を吐出することによって画像記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液滴を吐出して被記録媒体に画像記録を行うインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置における画像記録は、ノズルから液滴の一例であるインク滴が吐出されることによって実現される。
【0003】
インクジェット記録装置による被記録媒体への画像記録は、以下のようにして実行される。つまり、複数のノズルが形成されたノズル面を有する記録部が、被記録媒体の搬送方向と交差する走査方向へ移動しながら、複数のノズルから被記録媒体へインク滴を吐出する。
【0004】
ここで、インクジェット記録装置が被記録媒体へカラー画像を記録可能に構成されている場合、複数のノズルには、複数種類のインクが供給される。詳細には、複数のノズルは、シアン(C)のインクが供給されるノズルと、マゼンタ(M)のインクが供給されるノズルと、イエロー(Y)のインクが供給されるノズルと、ブラック(Bk)のインクが供給されるノズルの4種類に分類される。また、ノズル面には、4種類のノズルが所定の順序で配列されている。そして、インクジェット記録装置においては、記録部が移動されながら、被記録媒体の同位置に、4種類のインクの少なくとも1種類が打ち付けられる。これにより、被記録媒体には、様々な色が記録可能となる。
【0005】
しかしながら、記録部が走査方向の一方の向きへ移動されながら、被記録媒体の同位置に、複数種類のインクが打ち付けられる場合と、記録部が走査方向の他方の向きへ移動されながら、被記録媒体の同位置に、複数種類のインクが打ち付けられる場合とでは、インクが打ち付けられる順序が逆となる。例えば、記録部が走査方向の一方の向きへ移動されながら、被記録媒体の同位置にインクが打ち付けられる順序が、シアン、マゼンタ、イエローの順序である場合、記録部が走査方向の他方の向きへ移動されながら、被記録媒体の同位置にインクが打ち付けられる順序は、イエロー、マゼンタ、シアンの順序となる。そして、インクが打ち付けられる順序が異なる場合、同じ種類のインクが同じ量だけ打ち付けられたとしても、被記録媒体に記録された画像の色に違いが生じてしまうおそれがある。
【0006】
このような問題を解決するために特許文献1には、異なる種類のインクによってドットが形成される領域を重複ドットの記録領域とし、その重複ドットの記録領域を少なくとも含む記録領域に関しては、記録部が走査方向に沿って一方向(走査範囲の一端から他端の向き)に移動するときにインクを吐出する記録走査を行う片方向記録動作によって記録を行い、その他の記録領域に関しては、記録部が走査方向に沿って一方向および他方向(走査範囲の他端から一端の向き)に移動するときにインクを吐出する記録走査を行う双方向記録動作によって記録を行うインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−50705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたインクジェット記録装置においては、被記録媒体に重複ドットの記録領域(例えば黒以外のカラーが含まれている記録領域)が多いほど、片方向記録動作による記録が行われる割合が増加する。そして、当該インクジェット記録装置においては、記録部が走査範囲の他端にいる状態で、片方向記録動作による記録が行われる場合、記録部は、片方向記録動作による記録を実行する前に、走査範囲の他端から一端まで移動される必要がある。このような移動が行われる結果、記録部による被記録媒体への画像の記録に要する時間が増加してしまう。このような時間の増加は、被記録媒体における重複ドットの記録領域が多いほど、大きくなる。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクの吐出順序の違いに起因する被記録媒体に記録された画像の色の違いの発生を防止しつつも、被記録媒体に画像を記録する速度の低下を少なくすることができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体を搬送路に沿った第1向きへ搬送する搬送部と、上記搬送路の上方に設けられており、上記第1向きと直交し且つ被記録媒体の画像記録面に沿った第2向き、及び上記第2向きと反対向きの第3向きへ往復移動可能なキャリッジと、上記キャリッジに搭載されており、上記第2向きに沿って所定順序で配置された異なる色を吐出する複数種類のノズルがそれぞれ上記第1向きに沿って所定数配置されたノズル面を有し、上記搬送路に向けて1色または複数色の液滴を上記ノズルから吐出することによって、被記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、上記搬送部による被記録媒体の搬送を停止させて、上記キャリッジを上記第2向きへ移動させつつ上記ノズルから液滴を吐出させ、かつ上記キャリッジを上記第3向きへ移動させるときに上記ノズルから液滴を吐出させない片方向記録処理、並びに上記キャリッジを上記第2向き及び上記第3向きに移動させつつ上記ノズルから液滴を吐出させる双方向記録処理を選択的に実行する制御部と、を備えている。上記制御部は、上記キャリッジが上記第2向きまたは上記第3向きへ一回移動されるときに被記録媒体に記録可能な最大ライン数である上記所定数のラインの記録データを、上記所定数よりも少ないライン数の単位領域毎に、上記単位領域を構成する全ドットに対する被記録媒体への記録に複数色の液滴の吐出を要するドットの割合が第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、上記所定数のラインの記録データのうち、上記第1判定手段によって上記第1閾値以上であると判定された単位領域よりも上記第1向きの下流側において被記録媒体に記録される第1記録データを、上記双方向記録処理によって被記録媒体に記録し、上記第1判定手段によって上記第1閾値以上であると判定された単位領域の記録データ、及び当該単位領域よりも上記第1向きの上流側において被記録媒体に記録される記録データを含む第2記録データを、上記片方向記録処理によって被記録媒体に記録する第1記録手段と、を備えている。
【0011】
本構成によれば、第1記録手段によって双方向記録処理で被記録媒体に記録される第1記録データは、被記録媒体への記録に複数色のインク滴の吐出を要するドットの割合が少ないデータである。つまり、当該記録データは、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が小さいデータである。以上より、本構成においては、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が小さい記録データは、片方向記録処理よりも記録に要する時間が短くなる双方向記録処理によって画像記録される。これにより、被記録媒体に画像を記録する速度を速くすることができる。
【0012】
一方、本構成においては、被記録媒体への記録に複数色のインク滴の吐出を要するドットの割合が多いデータは、片方向記録処理によって被記録媒体に記録される。換言すると、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が大きい記録データが被記録媒体に記録されるとき、キャリッジの移動向きは第2向きに固定される。これにより、インクの吐出順序の違いに起因する被記録媒体に記録された画像の色の違いの発生が防止可能である。
【0013】
(2) 上記第2記録データのライン数は上記所定数である。(1)に示されるとおり、所定数は、キャリッジが第2向きまたは第3向きへ一回移動されるときに被記録媒体に記録可能な最大ライン数である。つまり、第2記録データのライン数が所定数であることにより、被記録媒体への画像の記録を迅速に行うことができる。
【0014】
(3) 上記制御部は、上記キャリッジの移動向きが上記第3向きであることを条件として、上記第1判定手段を実行する。
【0015】
上述したように、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が大きい記録データが画像記録されるとき、キャリッジの移動向きが第2向きに固定される。よって、キャリッジの移動向きが第2向きのとき、第1判定手段の実行の有無にかかわらず、得られる効果(被記録媒体に記録された画像の色の違いの発生の防止)には相違がない。一方、キャリッジの移動向きが第2向きのときに第1判定手段が実行された場合、処理の増加によって、被記録媒体に画像を記録する速度が低下してしまう。
【0016】
そこで、本構成によれば、キャリッジの移動向きが第2向きでないこと、つまり第3向きであることを条件として、第1判定手段が実行される。この場合、第1判定手段の判定結果に基づいて第1記録手段が実行される。これにより、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が大きい記録データが画像記録されるときに、キャリッジが第3向きに移動することが防止される。その結果、被記録媒体に記録された画像の色の違いの発生を防止することができる。
【0017】
(4) 上記制御部は、被記録媒体への記録が未実行である残存の記録データのライン数が上記所定数以上であることを条件として、上記第1判定手段を実行する。
【0018】
本構成の条件を満たさない場合(被記録媒体への記録が未実行である残存の記録データのライン数が所定数未満である場合)に、第1判定手段が実行されないとき、キャリッジは、残存の記録データを被記録媒体に記録するため、1回または2回移動される。一方、本構成の条件を満たさない場合に、第1判定手段が実行されるとき、キャリッジは、残存の記録データを被記録媒体に記録するために、2回または3回移動される。つまり、第1判定手段が実行されない場合の被記録媒体への画像の記録に要する時間は、第1判定手段が実行される場合の被記録媒体への画像の記録に要する時間よりも、キャリッジの移動回数が少なくなる分、及び第1判定手段が実行されない分だけ短くなる。
【0019】
そこで、本構成によれば、上記の条件を満たさない場合、第1判定手段が実行されない。これにより、上述したように、被記録媒体への画像の記録に要する時間を短くすることができる。
【0020】
(5) 上記第1判定手段は、記録データを構成するドットを間引いた記録データに基づいて、判定を実行する。
【0021】
本構成によれば、第1判定手段の判定対象である記録データのドット数が少なくなるため、第1判定手段が記録データを判定するために要する時間を短くすることができる。
【0022】
(6) 上記制御部は、上記所定数のラインの記録データにおいて、当該記録データを構成する全ドットに対する被記録媒体への記録に複数種類の液滴の吐出を要するドットの割合が第2閾値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、上記第2判定手段によって上記第2閾値以上であると判定されたときに、上記所定数のラインの記録データを上記片方向記録処理によって被記録媒体に記録し、上記第2判定手段によって上記第2閾値未満であると判定されたときに、上記所定数のラインの記録データを上記双方向記録処理によって被記録媒体に記録する第2記録手段と、上記第1判定手段及び上記第1記録手段を実行する第1処理において、被記録媒体に画像記録するために必要な第1時間を算出する第1算出手段と、上記第1判定手段及び上記第1記録手段を実行せずに、上記第2判定手段及び上記第2記録手段を実行する第2処理において、被記録媒体に画像記録するために必要な第2時間を算出する第2算出手段と、上記第1時間及び上記第2時間を比較して、上記第1処理及び上記第2処理のうち、被記録媒体に画像記録するために必要な時間が短い処理を実行する選択手段と、を更に備えている。
【0023】
被記録媒体に記録される記録データの内容によっては、本構成の第1処理が実行されず、代わりに本構成の第2処理が実行された方が、被記録媒体への画像の記録に要する時間を短くすることができる。本構成によれば、第1処理及び第2処理のうち、被記録媒体に画像を記録するために必要な時間が短い処理が実行される。これにより、被記録媒体への画像の記録に要する時間を短くすることができる。
【0024】
(7) 本発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体への画像記録の速度が被記録媒体に記録された画質よりも優先される速度優先モード、及び被記録媒体に記録された画質が被記録媒体への画像記録の速度よりも優先される画質優先モードの一方を選択的に受け付けるモード設定受付部を更に備えている。上記制御部は、上記モード設定受付部が上記速度優先モードを受け付けたことを条件として、上記双方向記録処理のみによって被記録媒体に画像を記録する。
【0025】
本構成によれば、制御部は、速度優先モードの場合、双方向記録処理のみによって画像を記録する。これにより、被記録媒体への画像の記録に要する時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、インクの吐出順序の違いに起因する被記録媒体に記録された画像の色の違いの発生を防止しつつも、被記録媒体に画像を記録する速度の低下を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機1の外観斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部2の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、記録ヘッド65の下面64を示す平面図である。
【図4】図4は、制御部130の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、記録制御の処理手順について説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、記録制御の処理手順について説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、変形例2における記録制御の処理手順について説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は、記録部24及び記録用紙19を模式的に示す平面図である。
【図9】図9は、記録用紙19に記録されるドットを示した模式図である。
【図10】図10は、変形例2における制御部130の処理の説明のために記録用紙19に記録されるドットを示した模式図である。
【図11】図11は、記録用紙19に記録された画像と当該画像の記録時における記録部24の移動向きとを示した模式図であり、(A)には記録用紙19に記録される画像が示されており、(B)には第1処理によって画像記録される場合の記録部24の移動軌跡が示されており、(C)には第2処理によって画像記録される場合の記録部24の移動軌跡が示されており、(D)には双方向記録処理のみが実行される場合の記録部24の移動軌跡が示されている。
【図12】図12は、第2処理の処理手順について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、ベクトルにおいて矢印を考慮して起点から終点に向かう進みが向きと表現され、ベクトルにおいて矢印を考慮せずに起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明では、複合機1が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向14が定義され、操作パネル9が設けられている側を手前側(正面)として前後方向12が定義され、複合機1を手前側(正面)から見て左右方向13が定義される。
【0029】
[複合機1]
図1に示されるように、本発明のインクジェット記録装置の一例である複合機1は、下部に配設されたプリンタ部2と、プリンタ部2の上部に配設されたスキャナ部3などを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。複合機1は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能などを有する。
【0030】
なお、本実施形態において、複合機1はプリンタ機能として片面画像記録機能のみ有しているが、複合機1は両面画像記録機能を有していてもよい。また、本発明を実現するうえで、スキャナ機能やファクシミリ機能などは任意の機能であり、例えば、本発明に係るインクジェット記録装置が、プリンタ機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。なお、本発明を実現するうえでスキャナ部3は関係しないため、ここでは、スキャナ部3の詳細な説明は省略される。
【0031】
複合機1は、主にコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と接続された状態で使用される。プリンタ部2は、外部情報機器から受信した記録データやスキャナ部3で読み取られた原稿の記録データに基づいて、記録用紙19に画像を記録する。
【0032】
複合機1の上面の前方側であって、スキャナ部3の正面側の上面には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル9が設けられている。操作パネル9は、各種操作ボタンや液晶表示部11から構成されている。複合機1は、操作パネル9からの指示情報、又は外部機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいて、複合機1の動作を統括する制御部130(本発明の制御部の一例、図4参照)により動作される。
【0033】
[プリンタ部2]
図1に示されるように、プリンタ部2は、正面に開口4が形成されたケーシング5を有する。ケーシング5内にプリンタ部2の各構成要素が配設されている。
【0034】
開口4を通じて、給紙トレイ20及び排紙トレイ21(図2参照)が複合機1に装着される。なお、図1では、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が省略されている。給紙トレイ20には、A4サイズやB5サイズ等の所望のサイズの記録用紙19(本発明の被記録媒体の一例)が収容される。排紙トレイ21は、給紙トレイ20に支持されて、給紙トレイ20の上方に配置される。
【0035】
図2に示されるように、給紙トレイ20の上側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に上下動する給紙アーム26の端部で軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給紙モータ76(図4参照)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上の記録用紙19に圧接して、その状態で回転する。これにより、積載された記録用紙19が、以下で説明される搬送路23(本発明の搬送路に相当)へ供給される。
【0036】
搬送路23は、給紙トレイ20の後側の端部から上方且つ複合機1の前側へ曲がって、複合機1の背面側(後側)から正面側(前側)へ延出されている。搬送路23は、搬送ローラ対54(本発明の搬送部の一例)による挟持位置、記録部24の下側、及び排出ローラ対55(本発明の搬送部の一例)による挟持位置を通過して排紙トレイ21へ通じている。給紙トレイ20から繰り出された記録用紙19は、搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて記録部24に至る。記録用紙19は、記録部24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。搬送路23は、記録部24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面29と内側ガイド面28によって形成されている。
【0037】
以下、記録用紙19が、搬送ローラ対54による挟持位置から記録部24の下方及び排出ローラ対55による挟持位置を通過して排紙トレイ21へ搬送される向き(図2に破線の矢印で示される方向)を、搬送向き15(本発明の第1向きに相当)として説明を行う。
【0038】
図2に示されるように、記録部24よりも搬送向き15の上流側には、搬送ローラ対54が設けられている。搬送ローラ対54は、搬送ローラ47とピンチローラ48とが一体にユニット化されたものである。記録部24よりも搬送向き15の下流側には、排紙ローラ49と拍車50とを有する排出ローラ対55が設けられている。
【0039】
搬送ローラ47及び排紙ローラ49は、搬送モータ59(図4参照)から駆動伝達機構(不図示)を介して駆動力が伝達されて回転される。搬送ローラ47が正転駆動(図2における反時計回りに駆動)されることで、給紙トレイ20から給紙された記録用紙19は、搬送ローラ対54により狭持されて、搬送向き15へ搬送される。排紙ローラ49が正転駆動されることで、記録部24による画像記録済みの記録用紙19は、排出ローラ対55により狭持されて、搬送向き15へ搬送される。
【0040】
図2に示されるように、搬送ローラ47の回転量を検出するロータリーエンコーダ68が設けられている。ロータリーエンコーダ68は、搬送ローラ47と同軸に設けられて搬送ローラ47と共に回転するエンコーダディスク51と光学センサ60とからなる。エンコーダディスク51には、その円周方向に一定間隔で光を透過する透過部と光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。搬送ローラ47と共にエンコーダディスク51が回転すると、光学センサ60によってロータリーエンコーダ68のマークが検出される毎にパルス信号が生成される。パルス信号は制御部130へと出力される。
【0041】
[記録部24]
記録部24は、搬送路23を搬送向き15へ搬送される記録用紙19に対して、画像を記録するものである。記録部24は、インクジェット方式で画像記録を行う。記録部24は、主として記録ヘッド65(本発明の記録ヘッドに相当)、プラテン66、及びキャリッジ67(本発明のキャリッジに相当)によって構成されている。
【0042】
キャリッジ67は、搬送路23の上方に設けられている。キャリッジ67は、例えば、プリンタ部2の内部に設けられたフレーム(不図示)に取り付けられた2本のガイドレール(不図示)によって支持されている。詳細には、2本のガイドレールは、左右方向13に延設されている。また、2本のガイドレールは、前後方向12に所定間隔をあけて配置されている。キャリッジ40は、2本のガイドレールを跨ぐようにして配置されている。これにより、キャリッジ40は、2本のガイドレール上を左右方向13に摺動可能である。ガイドレールの上面に、ベルト駆動機構(不図示)が配設されている。また、ベルト駆動機構を構成するベルトは、キャリッジ67と連結されている。そして、キャリッジ駆動モータ103(図4参照)からベルト駆動機構に駆動力が伝達されることにより、キャリッジ67は左右方向13に摺動される。
【0043】
つまり、本実施形態において、キャリッジ67は、搬送向き15と直交し且つ記録用紙19の画像記録面に沿った右向き(本発明の第2向きの一例)、及び左向き(本発明の第3向きの一例)へ往復移動可能である。キャリッジ67は、後述する制御部130に制御されることによって、右向きへの移動と左向きへの移動を交互に繰り返す。なお、左向きが本発明の第2向きで、右向きが本発明の第3向きであってもよい。
【0044】
ガイドレールには、リニアエンコーダ42(図4参照)のエンコーダストリップ(不図示)が配設されている。エンコーダストリップには、光を透過する透過部と、光を透過しない非透過部とが等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。キャリッジ67には、エンコーダストリップのパターンを検出するための光学センサ(不図示)が搭載されている。光学センサによってエンコーダストリップのマークが検出される毎にパルス信号が生成される。パルス信号は、制御部130へと出力される。
【0045】
記録ヘッド65には、インクタンク(不図示)からインクチューブ(不図示)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。各インクチューブは、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ67の移動に応じて撓むような可撓性を有する。インクチューブは、4色のインクに対応して4本が設けられている。
【0046】
記録ヘッド65は、キャリッジ67に搭載されている。記録ヘッド65は、キャリッジ67の下面側に露出され、プラテン66と対向されている。プラテン66は、搬送路23の下側にキャリッジ67と対向して配置されており、記録用紙19を支持する。なお、プラテン66の左右方向13の幅は、記録用紙19の最大幅より十分に大きいものである。キャリッジ67が往復移動することにより、記録ヘッド65がプラテン66上の記録用紙19に対して走査され、記録ヘッド65から吐出されたインク滴が記録用紙19に着弾して画像記録が行われる。
【0047】
図3に示されるように、記録ヘッド65は、その下面64(本発明のノズル面に相当)に、複数のノズル(本発明のノズルに相当)を備えている。各ノズルの端が記録ヘッド65の下面に開口して吐出口70を形成している。各吐出口70は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インクごとに設けられている。なお、図3において、下側から上側へ向かって記録用紙19が搬送され(搬送向き15)、左右方向13に沿ってキャリッジ67が往復移動される。
【0048】
CMYBkの各色インクに対応する吐出口70は、各々が搬送向き15に沿って一列に整列されており、各色インクに対応する吐出口70の各列が、キャリッジ67の左右方向13に並べられている。各吐出口70の数や搬送向き15のピッチは、記録画像の解像度等に応じて適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じて吐出口70の列数が増減され得る。つまり、記録ヘッド65は、左右方向13に沿って所定順序で配置された異なる色を吐出する複数種類のノズルがそれぞれ搬送向き15に沿って所定数配置された下面64を有している。
【0049】
記録用紙19は、制御部130に制御された搬送ローラ47及び排紙ローラ49によって、記録部24のプラテン66上を、搬送向き15へ所定の改行幅で間欠搬送される。記録用紙19の搬送が停止されている間に、記録ヘッド65が、左右方向13に移動されながらインク滴を選択的に記録用紙19へ吐出する。記録用紙19の間欠搬送と記録ヘッド65の移動とが繰り返されて、記録用紙19に画像が記録される。
【0050】
例えば、記録用紙19の所定位置に黒色の画像が記録される場合、記録ヘッド65は、記録用紙19の所定位置に向けて、ブラックのインク滴のみを吐出し、他の色のインク滴を吐出しない。また、記録用紙19の所定位置にカラーの画像が記録される場合、記録ヘッド65は、記録用紙19の所定位置に向けて、シアン、マゼンタ、及びイエローのうち少なくとも1色のインク滴を吐出する。記録ヘッド65が右向きに移動されながらインク滴が吐出される場合、所定位置には、イエロー、マゼンタ、シアンの順序でインク滴が吐出される。一方、記録ヘッド65が左向きに移動されながらインク滴が吐出される場合、所定位置には、シアン、マゼンタ、イエローの順序でインク滴が吐出される。
【0051】
以上より、記録ヘッド65は、搬送路23に向けて1色または複数色のインク滴をノズルから吐出することによって、記録用紙19に画像を記録する。
【0052】
[制御部130]
以下、図4が参照されて、制御部130の概略構成が説明される。制御部130が後述するフローチャートにしたがって記録制御を行うことによって、本発明が実現される。
【0053】
制御部130は、複合機1の全体動作を制御するものである。制御部130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、ASIC135を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。これらは内部バス137によって接続されている。
【0054】
ROM132には、CPU131が複合機1の記録制御を含む各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0055】
ASIC135には、給紙モータ76、キャリッジ駆動モータ103、搬送モータ59、及び記録ヘッド65が接続されている。ASIC135には、それぞれのモータを制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131から所定のモータに応じた駆動回路に各モータを回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から対応するモータへ出力される。これにより、対応するモータが所定の回転速度で正転又は逆転する。つまり、制御部130は、給紙モータ76、キャリッジ駆動モータ103、及び搬送モータ59を制御する。
【0056】
また、ASIC135には、ロータリーエンコーダ68から出力されるパルス信号、及びリニアエンコーダ42から出力されるパルス信号が入力される。制御部130は、ロータリーエンコーダ68からのパルス信号に基づいて、搬送ローラ47の回転量を算出し、算出した回転量を目標回転量に一致するよう搬送モータ59を回転させる駆動回路に駆動信号を出力する。つまり、制御部130は、ロータリーエンコーダ68からのパルス信号に基づいて、搬送ローラ47の回転量を制御する。また、制御部130は、リニアエンコーダからのパルス信号に基づいて、キャリッジ67の速度及び位置を算出し、算出した速度または位置を目標速度または目標位置に一致するようキャリッジ駆動モータ103を回転させる駆動回路に駆動信号を出力する。つまり、制御部130は、リニアエンコーダ42からのパルス信号に基づいて、キャリッジ67の移動を制御する。
【0057】
制御部130は、記録用紙19に画像を記録する際、搬送モータ59を制御して、搬送ローラ対54及び排出ローラ対55による記録用紙19の搬送を一時停止させる。そして、制御部130は、記録用紙19の搬送が一時停止されている間に、片方向記録処理(本発明の片方向記録処理に相当)、及び双方向記録処理(本発明の双方向記録処理に相当)を選択的に実行する。片方向記録処理が選択される条件、及び双方向記録処理が選択される条件については、後に図5及び図6のフローチャートにおいて説明される。
【0058】
片方向記録処理は、キャリッジ67を右向きへ移動させつつノズルからインク滴を吐出させ、かつキャリッジ67を左向きへ移動させるときにノズルからインク滴を吐出させない処理である。以下に詳述する。制御部130は、片方向記録処理を実行する際、リニアエンコーダ42からのパルス信号によって、キャリッジ67の現在位置を把握する。キャリッジ67の現在位置がこれから画像を記録しようとしている記録用紙19上の領域よりも右側である場合、制御部130は、ノズルからインク滴を吐出させることなく、キャリッジ67を左向きに移動させる。これにより、キャリッジ67は、当該領域よりも左側へ移動される。その後、制御部130は、ノズルからインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を右向きに移動させる。一方、キャリッジ67の現在位置が、これから画像を記録しようとしている記録用紙19上の領域よりも左側である場合、制御部130は、ノズルからインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を右向きに移動させる。
【0059】
双方向記録処理は、キャリッジ67を右向き及び左向きに移動させつつノズルからインク滴を吐出させる処理である。以下に詳述する。制御部130は、片方向記録処理を実行する際、リニアエンコーダ42からのパルス信号によって、キャリッジ67の現在位置を把握する。制御部130は、キャリッジ67の現在位置がこれから画像を記録しようとしている記録用紙19上の領域よりも右側である場合、ノズルからインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を左向きに移動させる。一方、制御部130は、キャリッジ67の現在位置が当該領域よりも左側である場合、ノズルからインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を右向きに移動させる。つまり、制御部130は、キャリッジ67の移動向きが左右いずれの向きであっても、ノズルからインク滴を吐出させながら、キャリッジ67を移動させる。
【0060】
図8に示されるように、キャリッジ67が、左右方向13に移動する間に、記録ヘッド65に形成されたノズル(図8において複数の円で示されている。)は、記録用紙19の上方を破線で示されたライン80(本発明のラインに相当)に沿って移動する。なお、図8には、搬送向き15の最下流に形成されたノズルの移動経路としてのライン80のみが記されているが、実際には、全てのノズルがライン80と平行な経路に沿って移動する。
【0061】
キャリッジ67が移動されるとき、各ノズルからインク滴が吐出されることによって、記録用紙19の面上においてライン80に沿って画像が記録される。なお、ライン80は、図8には示されていないが、左右方向13に沿って一列に並んだドット(例えば図9に黒円またはハッチング円で示されている。)の集まりである。
【0062】
制御部130は、記録データに基づいて、各ドットに4種類のインクのうち何種類のインクを吐出するかを決定する。そして、制御部130は、記録ヘッド65を制御して、当該決定に従ったインクを吐出させる。これにより、記録用紙19には、ライン80に沿って画像が記録される。
【0063】
[記録制御]
上述の如く構成されたプリンタ部2においては、制御部130によって用紙を給紙し、記録を行う一連の記録制御が実行される。以下、図5及び図6のフローチャートに基づいて、記録制御の処理手順について説明する。
【0064】
外部機器や操作パネル9から、複合機1に画像記録指示が入力されると、制御部130は、給紙モータ76を駆動し、給紙ローラ25を回転させる。これにより、給紙トレイ20に収納された記録用紙19は、搬送ローラ対54に向かって搬送路23に沿って搬送される。また、制御部130は、搬送モータ59を駆動し、搬送ローラ47を回転させる。これにより、給紙ローラ25によって搬送路23を搬送されてきた記録用紙19は、記録ヘッド65の直下に向かって搬送される。
【0065】
制御部130は、記録用紙19を画像記録の開始位置まで搬送させる。ここで、画像記録の開始位置は、搬送される記録用紙19の先端(搬送向き15の下流端)とノズルとの前後方向12の位置が同じとなる位置である。換言すると、画像記録の開始位置は、搬送される記録用紙19の先端とノズルとが対向可能な位置である。
【0066】
制御部130は、搬送される記録用紙19が記録ヘッド65の直下に到達するまでの間に、記録制御において使用される各パラメータを初期化する。各パラメータは、パス数N、1頁の終了ライン数、1パスの終了ライン数、パスの先頭ライン、カラーが少ない領域数、カラーが多い領域数、分割フラグ、及びパス内のカラードット合計数である。
【0067】
制御部130は、1頁の終了ライン数及びパス数Nを0にセットし、分割フラグをOFFにセットする(S10)。また、制御部130は、パスの先頭ラインを1頁の終了ライン数に1を加えた値にセットする(S20)。また、制御部130は、1パスの終了ライン数、カラーが少ない領域数、カラーが多い領域数、及びパス内のカラードット合計数を0にセットする(S30)。
【0068】
パス数N(以下、Nパスとも称される。)は、記録用紙19に画像を記録する過程におけるパスの数である。ここで、パスとは、キャリッジ67が右向きまたは左向きに1回移動する間に、記録ヘッド65からインク滴が噴出されて画像記録される単位である。例えば、パス数Nが0の状態において、キャリッジ67が右向きに移動する間に画像記録されると、当該画像記録は1パスであり、次にキャリッジ67が左向きに移動する間に画像記録されると、当該画像記録は2パスである。
【0069】
1頁の終了ライン数は、記録用紙19の1頁を構成するライン(図8における前後方向12の範囲Aに含まれるライン)に対応する記録データのうち、所定の判定が制御部130によって実行された記録データに対応するラインの数である。ここで、所定の判定とは、後述するステップS40以降において実行される判定である。
【0070】
1パスの終了ライン数は、1パスにおいて画像が記録されるラインに対応する記録データのうち、所定の判定が制御部130によって実行された記録データに対応するラインの数である。ここで、所定の判定とは、ステップS40以降において実行される判定である。また、1パスにおいて画像が記録されるラインの数は、キャリッジ67が右向きまたは左向きへ一回移動されるときに記録用紙19に記録可能な最大ライン数である。本実施形態において、1パスにおいて画像が記録されるラインの数は、記録ヘッド65の下面において搬送向き15に沿って配置されたノズルの数、つまり図3において説明されたノズルの所定数に相当する。具体的には、1パスにおいて画像が記録される最大ライン数は、図8における前後方向12の範囲Bに含まれるライン数である。
【0071】
パスの先頭ラインは、当該パスにおいて、搬送向き15の最下流に位置するノズルからインク滴が吐出されることによって形成されるラインである。例えば、図8に示される状態の場合、パスの先頭ラインは、破線で示されたライン80である。
【0072】
カラーが少ない領域数は、記録用紙19における画像記録範囲を複数の単位領域81(図8参照、本発明の単位領域に相当)に分割した場合において、黒以外の色のドットが後述する所定の割合以上存在する単位領域81の数である。ここで、単位領域81は、図8に示されるように、左右方向13の長さがキャリッジ67の移動可能範囲に基づいて決定される記録ヘッド65による画像記録可能範囲D(図8では記録用紙19の左右方向13の長さ)であり、前後方向12の長さが範囲Bに対応するライン数(上記のノズルの所定数)よりも少ないライン数に対応する範囲Cである領域である。なお、範囲Cに対応するライン数は、少なくとも1ラインである。また、図8においては、記録用紙19上の一部の単位領域81のみが示されている。
【0073】
カラーが多い領域数は、記録用紙19における画像記録範囲を複数の単位領域81(図8参照)に分割した場合において、黒以外の色のドットが所定の割合未満存在する単位領域81の数、換言するとカラードットが所定の割合以上存在する単位領域81の数である。
【0074】
分割フラグは、カラーが少ない領域に対する画像記録がステップS210において実行されたことを示すフラグである。
【0075】
パス内のカラードット合計数は、1パスにおいて画像が記録されるライン(図8における前後方向12の範囲Bに含まれるライン)に対応する記録データを構成するドットのうち、黒以外のドット、つまりカラードットの合計数である。
【0076】
以下、図5のステップS40以降の処理が説明される。まず、全体的な処理の流れについて説明する。制御部130は、最初に、複数の単位領域81のうち、搬送向き15の最下流の単位領域81Aについて、ステップS40やステップS140の判定を行う。次に、ステップS70またはステップS250を介して再びステップS40が実行される際、制御部130は、ステップS50及びステップS240において増加された1頁の終了ライン数の値に対応するラインを搬送向き15の最下流端とする単位領域81Bについて、ステップS40やステップS140の判定を行う。以後、制御部130は、単位領域81C、単位領域81Dというように図8及び図9のアルファベットの順序でステップS40やステップS140の判定を行う。
【0077】
各単位領域81に対するステップS40やステップS140の判定は、当該判定が実行された単位領域81の合計ライン数が範囲Bに対応するライン数(上記のノズルの所定数)に到達するまで、上記順序で繰り返し実行される。上記到達の判定は、ステップS250において実行される。上記到達されたと判定されると(S250:Yes)、ステップS300において、各単位領域81に対して記録データに基づいたインク滴が吐出される。その後、ステップS320において記録用紙の1頁の全てに対して画像記録が終了したと判断されるまで、上述の処理が繰り返し実行される。以上より、制御部130は、範囲Bに対応する記録データ(所定数のラインの記録データ)に対して、単位領域81毎にステップS40やステップS140の判定を実行する。
【0078】
例えば、図8においては、当該判定は、最初に単位領域81Aから単位領域81Eの順序で繰り返し実行され、その後、単位領域81A〜81Eにインク滴が吐出される。次に、当該判定は、単位領域81Fから単位領域81Jの順序で繰り返し実行され、その後、単位領域81F〜81Jにインク滴が吐出される。なお、後述するように、ステップS190以降が実行される場合、上記とは異なる単位領域81に対してインク滴が吐出される。
【0079】
次に、各ステップが詳細に説明される。制御部130は、1頁の終了ライン数(最初はステップS10で設定された0)に対応するライン(最初は0行目のライン)を搬送向き15の最下流端とする単位領域81(例えば図8及び図9(A)における81A)の記録データが空白データであるか否かを判定する(S40)。ここで、空白データは、全てのドットにおいてインクが吐出されないことが示されたデータである。なお、図9において、それぞれの円が記録データのドットを示しており、黒色の円が黒色のドットを示しており、ハッチングされた円が黒色以外のカラードットを示している。
【0080】
ステップS40において、単位領域81の記録データが空白データである場合(S40:Yes)、制御部130は、1頁の終了ライン数に単位領域81のライン数を加える(S50)。次に、制御部130は、カラーが少ない領域数及びカラーが多い領域数が両方共に0であるか否かを判定する(S60)。ここで、カラーが少ない領域数及びカラーが多い領域数が両方共に0である場合とは(S60:Yes)、例えば、単位領域81が、記録用紙19の搬送向き15の先端部及び後端部における余白部分に対応する領域の場合である。一方、カラーが少ない領域数またはカラーが多い領域数のいずれかが0でない場合とは(S60:No)、例えば、単位領域81が、記録用紙19の搬送向き15の中央部に存在する余白部分に対応する領域の場合である。
【0081】
カラーが少ない領域数及びカラーが多い領域数が両方共に0である場合(S60:Yes)、制御部130は、1頁の終了ライン数が頁全体のライン数(図8における前後方向12の範囲Aに相当するライン数)と等しいか否かを判定する(S70)。1頁の終了ライン数が頁全体のライン数と等しい場合(S70:Yes)、制御部130は、1頁の記録用紙19の全てに記録データが記録されたと判定し、一連の処理を終了する。1頁の終了ライン数が頁全体のライン数と異なる場合(S70:No)、制御部130は、記録用紙19に記録データの未記録領域が存在すると判定し、再びステップS40が実行される。
【0082】
一方、カラーが少ない領域数またはカラーが多い領域数が0でない場合(S60:No)、制御部130は、1パスの終了ライン数に単位領域81のライン数を加える(S80)。次に、制御部130は、1パスの終了ライン数が上記のノズルの所定数、つまり範囲Bに含まれるライン数と等しいか否かを判定する(S250)。1パスの終了ライン数が上記のノズルの所定数と等しくない場合(S250:No)、制御部130は、範囲Bに対応するラインのうち、ステップS40の判定が未実行であるラインが存在していると判定し、再びステップS40が実行される。1パスの終了ライン数が上記のノズルの所定数と等しい場合(S250:Yes)、制御部130は、範囲Bに対応するラインの全てについてステップS40の判定が実行されたと判定し、後述するステップS260の処理が実行される。これにより、後述するステップS300において、範囲Bに対応するラインに対応する記録データが、記録用紙19に記録される。
【0083】
ステップ40において、単位領域81の記録データが空白データでない場合(S40:No)、制御部130は、単位領域81に含まれるカラードットの数を算出する(S90)。例えば、記録データのドット構成が図9(A)に示されるような構成である場合、制御部130は、単位領域81(ここでは、最初に判定が実行される単位領域81Aであるとする。)のカラードットの数である「2」を算出する。次に、制御部130は、パス内のカラードット合計数にステップS90において算出したカラードットの数を加える(S100)。これにより、カラードットの数が累積加算される。
【0084】
次に、制御部130は、前回のパスにおけるキャリッジ67の移動向きが右向きであるか否か、つまり今回のパスにおけるキャリッジ67の移動向きが左向きであるか否かを判定する(S110)。前回のパスにおけるキャリッジ67の移動向きが左向きである場合、つまり今回のパスにおけるキャリッジ67の移動向きが右向きである場合(S110:No)、ステップS230の処理が次に実行される。つまり、ステップS140の処理は実行されない。一方、前回のパスにおけるキャリッジ67の移動向きが右向きである場合、つまり今回のパスにおけるキャリッジ67の移動向きが左向きである場合(S110:Yes)、以下で説明するステップS120、S130の条件を満たさないことを条件として、ステップS140の処理が実行される。
【0085】
ステップS120において、制御部130は、頁全体のライン数から1頁の終了ライン数を減じた値が前後方向12の範囲Bに対応するライン数(上記のノズルの所定数)未満であるか否かを判定する。換言すると、制御部130は、現時点において、キャリッジ67の一回の移動のみで記録用紙全体に対する画像記録が完了できる状態であるか否かを判定する。頁全体のライン数から1頁の終了ライン数を減じた値が前後方向12の範囲Bに対応するライン数未満である場合(S120:Yes)、ステップS230の処理が実行される。つまり、ステップS140の処理は実行されない。一方、頁全体のライン数から1頁の終了ライン数を減じた値が前後方向12の範囲Bに対応するライン数以上である場合(S120:No)、以下で説明するステップS130の条件を満たさないことを条件として、ステップS140の処理が実行される。
【0086】
ステップS130において、制御部130は、分割フラグがON及びOFFのいずれであるかを判定する。分割フラグがONの場合(S130:Yes)、ステップS230の処理が実行される。一方、分割フラグがOFFの場合(S130:No)、ステップS140の処理が実行される。
【0087】
ステップS140において、制御部130は、単位領域81中のカラードットの割合が第1閾値(本発明の第1閾値の一例)未満であるか否かを判定する。ここで、第1閾値は、判定対象の単位領域81がカラーが多い領域とカラーが少ない領域との何れの領域であるかを設定するための値である。本実施形態において、第1閾値の単位はパーセント(%)であり、具体的には、20(%)に設定されている。なお、第1閾値は、本実施形態において設定された単位及び値に限らない。単位領域81中のカラードットの割合が第1閾値未満である場合(S140:Yes)、制御部130は、当該単位領域81をカラーが少ない領域であると判定する。単位領域81中のカラードットの割合が第1閾値以上である場合(S140:No)、制御部130は、当該単位領域81をカラーが多い領域であると判定する。
【0088】
例えば、記録データのドット構成が図9(A)に示されるような構成である場合、単位領域81(ここでは、最初に判定が実行される単位領域81Aであるとする。)のカラードットの割合は、(2/40)×100=5(%)である。この値は、第1閾値の20(%)よりも小さい。よって、制御部130は、単位領域81Aをカラーが少ない領域であると判定する。
【0089】
以上より、制御部130は、ステップS140において、所定数のラインの記録データ(範囲Bに含まれるラインに対応する記録データ)を、単位領域81(範囲Cに含まれるラインに対応する記録データ)毎に、単位領域81を構成する全ドットに対する記録用紙19への記録に複数色のインク滴の吐出を要するドット(本実施形態ではカラードット)の割合が第1閾値以上であるか否かを判定している。つまり、ステップS140の処理は、本発明の第1判定手段に相当する。また、制御部130は、キャリッジ67の移動向きが左向きであることを条件として(S110:Yes)、ステップS140の処理を実行する。また、制御部130は、記録用紙19への記録が未実行である残存の記録データのライン数が上記のノズルの所定数以上であることを条件として(S120:No)、ステップS140の処理を実行する。
【0090】
制御部130は、ステップS140における判定の結果、単位領域81をカラーが少ない領域であると判定すると(S140:Yes)、カラーが多い領域数が0であるか否かを判定する(S150)。そして、カラーが多い領域数が0である場合(S150:Yes)、カラーが少ない領域数に1が加えられ(S160)、カラーが多い領域数が0でない場合(S150:No)、ステップS230の処理が実行される。
【0091】
一方、制御部130は、ステップS140における判定の結果、単位領域81をカラーが多い領域であると判定すると(S140:No)、カラーが少ない領域数が0であるか否かを判定する(S170)。そして、カラーが少ない領域数が0である場合(S170:Yes)、カラーが多い領域数に1が加えられ(S180)、カラーが少ない領域数が0でない場合(S170:No)、ステップS190の処理が実行される。
【0092】
次段落において詳述するステップS200、S210の処理、及び後述するステップS270、S280、S300の処理は、本発明の第1記録手段に相当する処理である。つまり、ステップS200、S210において、制御部130は、上記のノズルの所定数のライン(範囲Bに対応するライン)の記録データのうち、ステップS140において第1閾値以上であると判定された単位領域81よりも搬送向き15の下流側において記録用紙19に記録される記録データ(本発明の第1記録データに相当し、以下の説明において第1記録データとも称される。)を、双方向記録処理によって記録データに記録する。また、ステップS270、S280、S300において、制御部130は、ステップS140において第1閾値以上であると判定された単位領域81の記録データ、及び当該単位領域81よりも搬送向き15の上流側において記録用紙19に記録される記録データを含む記録データ(本発明の第2記録データに相当し、以下の説明において第2記録データとも称される。)を、片方向記録処理によって記録用紙19に記録する。
【0093】
制御部130は、パス数Nに1を加える(S190)。次に、制御部130は、記録用紙19に第1記録データを画像記録する際の処理を、上述した双方向記録処理とすることを決定する(S200)。次に、制御部130は、ステップS20で設定されたパスの先頭ラインから現時点における1頁の終了ライン数までの記録データを、Nパス目の記録データとして、記録用紙19に記録する(S210)。つまり、制御部130は、キャリッジ67を左向きに移動させつつ(ステップS110において前回パスにおけるキャリッジ67の移動向きは右向きであるため、今回パスにおけるキャリッジ67の移動向きは左向きである。)、当該記録データに基づいて、記録ヘッド65にノズルからインク滴を吐出させる。次に、制御部130は、分割フラグをONに切り替える(S220)。
【0094】
その後、制御部130は、1頁の終了ライン数が頁全体のライン数(図8における前後方向12の範囲Aに相当するライン数)と等しいか否かを判定する(S320)。1頁の終了ライン数が頁全体のライン数と等しい場合(S320:Yes)、制御部130は、記録用紙19の全てに記録データが記録されたと判定し、一連の処理を終了する。1頁の終了ライン数が頁全体のライン数と異なる場合(S320:No)、再びステップS20が実行される。
【0095】
次に、ステップS230以降の処理が説明される。制御部130は、1パスの終了ライン数に単位領域81のライン数を加える(S230)。また、制御部130は、1頁の終了ライン数に単位領域81のライン数を加える(S240)。その後、制御部130は、1パスの終了ライン数が上記のノズルの所定数、つまり範囲Bに含まれるライン数と等しいか否かを判定する(S250)。1パスの終了ライン数が上記のノズルの所定数と等しくない場合(S250:No)、再びステップS40が実行される。
【0096】
1パスの終了ライン数が上記のノズルの所定数と等しい場合(S250:Yes)、制御部130は、ノズルの所定数のライン(範囲Bに対応するライン)の記録データにおいて、当該記録データを構成する全ドットに対するカラードットの割合が第2閾値(本発明の第2閾値の一例)未満であるか否かを判定する(S260)。ここで、第2閾値は、範囲Bに対応するラインを構成する記録データにおけるカラードットの多少を判定するための値である。本実施形態において、第2閾値の単位は第1閾値と同様にパーセント(%)であり、具体的には、20(%)に設定されている。なお、第2閾値は、本実施形態において設定された単位及び値に限らない。以上より、ステップS260の処理は、本発明の第2判定手段に相当する。
【0097】
範囲Bのラインに対応する記録データ中のカラードットの割合が第2閾値未満である場合(S260:Yes)、制御部130は、範囲Bに対応するラインの記録データを記録用紙19に画像記録する際の処理を、上述した双方向記録処理とすることを決定する(S270)。一方、範囲Bのラインに対応する記録データ中のカラードットの割合が第2閾値以上である場合(S260:No)、制御部130は、範囲Bに対応するラインの記録データを記録用紙19に画像記録する際の処理を、上述した片方向記録処理とすることを決定する(S280)。
【0098】
その後、制御部130は、パス数Nに1加える(S290)。次に制御部130は、ステップS20で設定されたパスの先頭ラインから現時点における1頁の終了ライン数までの記録データを、Nパス目の記録データとして、記録用紙19に記録する(S300)。制御部130は、片方向記録処理を実行する場合、キャリッジ67を記録用紙19における画像の記録領域よりも左側へ移動させてから、キャリッジ67を右向きに移動させつつ、当該記録データに基づいて、記録ヘッド65にノズルからインク滴を吐出させる。一方、制御部130は、双方向記録処理を実行する場合、キャリッジ67を現在位置から右向きまたは左向きに移動させつつ、当該記録データに基づいて、記録ヘッド65にノズルからインク滴を吐出させる。以上より、ステップS270、S280、S300の処理は、本発明の第2記録手段に相当する。なお、上述したように、本実施形態においては、ステップS270、S280、S300の処理は、本発明の第1記録手段に相当する。
【0099】
次に、制御部130は、分割フラグをOFFに切り替える(S310)。その後、制御部130は、上述したようにステップS320の処理を実行する。
【0100】
以上説明した図5及び図6のフローチャートに従って、図9(A)に示されるような記録データが記録用紙19に記録される場合の処理が、以下簡単に説明される。
【0101】
最初の判定対象である単位領域81Aは、ステップS10〜S130の実行後、ステップS140においてカラーが少ない領域であると判定される(S140:Yes)。カラーが多い領域数は0であるために(S150:Yes)、カラーが少ない領域数は0から1となる(S160)。
【0102】
その後、ステップS230〜S250を介して再びステップS40以降が実行される。このときの判定対象は単位領域81Bである。単位領域81Aは、ステップS140においてカラーが少ない領域であると判定される(S140:Yes)。カラーが多い領域数は0であるために(S150:Yes)、カラーが少ない領域数は1から2となる(S160)。
【0103】
その後、ステップS230〜S250を介して再びステップS40以降が実行される。このときの判定対象は単位領域81Cである。単位領域81Cに対しても、単位領域81Bと同様の処理が実行され、カラーが少ない領域数は2から3となる(S160)。
【0104】
次にステップS40が実行されるときの判定対象は単位領域81Dである。単位領域Dは、ステップS140においてカラーが多い領域であると判定される(S140:No)。カラーが少ない領域数は3であるために(S170:No)、ステップS190以降が実行される。つまり、パス数Nが1となる(S190)。その後、双方向記録処理によって(S200)、図9(A)の単位領域81A〜81Cのデータ、つまり第1記録データが1パス目のデータとして記録用紙19に記録される(S210)。分割フラグがONにセットされる(S220)。その後、ステップS320を介して再びステップS20以降が実行される。これにより、カラーが少ない領域数は0にリセットされる(S30)。
【0105】
次にステップS40が実行されるときの判定対象は単位領域81Dである。以後、単位領域81D〜81Gが判定対象である場合、分割フラグがONであるために(S130:Yes)、ステップS140〜S220が実行されることはない。そして、判定対象が単位領域81GであるときのステップS250において、1パスの終了ライン数と上記のノズルの所定数(範囲Bに含まれるライン数)とが同一であると判定される(S250:Yes)。これにより、ステップS260以降が実行され、ステップS300において、図9(A)の単位領域81D〜81Gまでのデータ、つまり第2記録データが2パス目のデータとして記録用紙19に記録される。以上より、本実施形態において、第2記録データのライン数は、上記のノズルの所定数である。
【0106】
次に、図5及び図6のフローチャートに従って、図9(B)に示されるような記録データが記録用紙19に記録される場合の処理が、以下簡単に説明される。
【0107】
最初の判定対象である単位領域81Hは、ステップS10〜S130の実行後、ステップS140においてカラーが多い領域であると判定される(S140:No)。カラーが少ない領域数は0であるために(S170:Yes)、カラーが多い領域数は0から1となる(S180)。その後、ステップS230〜S250を介して再びステップS40以降が実行される。このときの判定対象は単位領域81Iである。
【0108】
単位領域81Iは、ステップS140においてカラーが多い領域であると判定される(S140:No)。カラーが少ない領域数は0であるために(S170:Yes)、カラーが多い領域数は1から2となる(S180)。その後、ステップS230〜S250を介して再びステップS40以降が実行される。このときの判定対象は単位領域81Jである。
【0109】
単位領域81Jは、ステップS140においてカラーが少ない領域であると判定される(S140:Yes)。カラーが多い領域数は2であるために(S150:No)、ステップS230が実行される。その後、ステップS230〜S250を介して再びステップS40以降が実行される。このときの判定対象は単位領域81Kである。
【0110】
単位領域81Kが判定対象である場合、処理は、単位領域81Iのときと同様にして、ステップS240まで実行される。そして、ステップS250において、1パスの終了ライン数と上記のノズルの所定数(範囲Bに含まれるライン数)とが同一であると判定される(S250:Yes)。これにより、ステップS260以降が実行され、ステップS300において、図9(B)の単位領域81H〜81Kまでのデータが1パス目のデータとして記録用紙19に記録される。
【0111】
以上より、本実施形態における記録制御においては、最初に、記録データの先頭の単位領域81Aからカラーが多い単位領域81Dの手前の単位領域81Cまでの第1記録データが、他の記録データから分割される。そして、分割された第1記録データ(単位領域81A〜81Cに対応する記録データ)が、画像記録される。次に、カラーが多い単位領域81Dを先頭とした所定数のラインで構成される単位領域81D〜81Gの第2記録データが、画像記録される。
【0112】
なお、本実施形態においては、記録データは、黒のドットであるか黒以外のカラーのドットであるかによって区別された。そして、当該区別に基づいて、ステップS140、S260の判定が実行された。しかし、記録データは、画像記録の際に吐出を要するインクの種類数によって区別されるのであれば、黒のドットと黒以外のカラーのドットとで区別されなくてもよい。例えば、記録データは、画像記録の際に黒インク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクのみの吐出を要するドットと、画像記録の際に上述の4種類のインクのうち少なくとも2種類のインクの吐出を要するドットとによって区別されてもよい。
【0113】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、ステップS200、S210の処理によって双方向記録処理で記録用紙19に記録される第1記録データは、記録用紙19への記録に複数色のインク滴の吐出を要するドットの割合が少ないデータである。つまり、第1記録データは、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が小さいデータである。以上より、本実施形態においては、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が小さい記録データは、片方向記録処理よりも記録に要する時間が短くなる双方向記録処理によって画像記録される。これにより、記録用紙19に画像を記録する速度を速くすることができる。
【0114】
一方、本実施形態においては、記録用紙19への記録に複数色のインク滴の吐出を要するドットの割合が多いデータは、ステップS280、S300の処理によって、片方向記録処理によって記録用紙19に記録される。換言すると、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が大きい記録データが記録用紙19に記録されるとき、キャリッジ67の移動向きは右向きに固定される。これにより、インクの吐出順序の違いに起因する記録用紙19に記録された画像の色の違いの発生が防止可能である。
【0115】
また、本実施形態によれば、第2記録データのライン数は上記のノズルの所定数である。ここで、当該所定数は、キャリッジ67が右向きまたは左向きへ一回移動されるときに記録用紙19に記録可能な最大ライン数である。つまり、第2記録データのライン数が所定数であることにより、記録用紙19への画像の記録を迅速に行うことができる。
【0116】
上述したように、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が大きい記録データが画像記録されるとき、キャリッジ67の移動向きが右向きに固定される。よって、キャリッジ67の今回の移動向きが右向きのとき、ステップS140の実行の有無にかかわらず、得られる効果(記録用紙19に記録された画像の色の違いの発生の防止)には相違がない。一方、キャリッジ67の今回の移動向きが右向きのときにステップS140が実行された場合、処理の増加によって、記録用紙19に画像を記録する速度が低下してしまう。
【0117】
そこで、本実施形態によれば、キャリッジ67の今回の移動向きが右向きでないこと、つまり左向きであることを条件として、ステップS140が実行される。この場合、ステップS140の判定結果に基づいてステップS190〜S220或いはステップ260〜300が実行される。これにより、インクの吐出順序による記録された画像の色の違いの影響が大きい記録データが画像記録されるときに、キャリッジ67が左向きに移動することが防止される。その結果、記録用紙19に記録された画像の色の違いの発生を防止することができる。
【0118】
本実施形態のように、ステップS120の条件を満たす場合に(S120:Yes)、ステップS140が実行されないとき、キャリッジ67は、残存の記録データを記録用紙19に記録するため、1回または2回移動される。一方、仮に、ステップS120の条件を満たす場合に(S120:Yes)、ステップS140が実行されるとすると、キャリッジ67は、残存の記録データを被記録媒体に記録するために、2回または3回移動される。つまり、ステップS140が実行されない場合の記録用紙19への画像の記録に要する時間は、ステップS140が実行される場合の記録用紙19への画像の記録に要する時間よりも、キャリッジ67の移動回数が少なくなる分、及びステップS140が実行されない分だけ短くなる。
【0119】
そして、本実施形態によれば、ステップS120の条件を満たす場合(S120:Yes)、ステップS140が実行されない。これにより、上述したように、記録用紙19への画像の記録に要する時間を短くすることができる。
【0120】
[実施例の変形例1]
上述の実施形態においては、制御部130は、図5及び図6の判定処理(例えば、ステップS90、S140、S260)において、単位領域81中の全てのドットに対するカラードットの割合を判定した。しかし、制御部130は、図5及び図6の判定処理において、記録データを構成するドットを間引いた記録データに基づいて、単位領域81中の全てのドットに対するカラードットの割合を判定してもよい。例えば、記録データのドット構成が図9に示されるような構成である場合、制御部130は、単位領域81Aを構成する40個のドットのうち、破線の円で囲まれた10個のドットのみに基づいて、判定を実行してもよい。この場合、単位領域81Aのカラードットの割合は、(1/10)×100=10(%)である。この値は、第1閾値の20(%)よりも小さい。よって、制御部130は、単位領域81Aをカラーが少ない領域であると判定する。なお、制御部130は、単位領域81B以降の領域の記録データを構成するドットについても、間引いて判定してもよいことは言うまでもない。
【0121】
変形例1によれば、判定対象である記録データのドット数が少なくなるため、判定処理に要する時間を短くすることができる。
【0122】
[実施例の変形例2]
図10に示されるように、前回のパスにおいてインク滴が吐出された領域P1におけるインク滴の吐出右端位置82が、今回のパスにおいてインク滴が吐出される領域P2におけるインク滴の吐出左端位置83よりも左側である場合、ステップS190〜S220の処理が実行されなくてもよい。この場合の処理は、例えば、図7に示される手順に従って実行される。ここで、図7は、破線で示されたステップS510、S520が図5のフローチャートに追加されたフローチャートである。以下、記録データが図10の状態である場合における図7で追加された処理の手順が、説明される。
【0123】
制御部130は、領域P1に対応するパスにおけるインク滴の吐出右端位置82を、インク滴の吐出時(S300、図6参照)などにおいてRAM133に記憶しておく。その後、ステップS320を介して再びステップS20(図5参照)以降の処理が実行される。このときの判定対象は単位領域81Pである。単位領域Dは、ステップS140においてカラーが少ない領域であると判定される(S140:Yes)。このとき、制御部130は、単位領域81Pの各ラインについてのインク滴の吐出左端位置83をRAM133に記憶する(S510)。
【0124】
その後、判定対象が単位領域81Qである場合、単位領域81Qは、ステップS140においてカラーが多い領域であると判定される(S140:No)。このとき、カラーが少ない領域数は1であるために(S170:No)、ステップS190以降が実行される前にステップS520が実行される。ステップS520において、制御部130は、前回のパスにおいて記憶した吐出右端位置82と、今回のパスにおけるステップS510で記憶した吐出左端位置83とを比較する。そして、吐出左端位置83が吐出右端位置82よりも右側である場合、ステップS190〜S220は実行されず、ステップS230が実行される。
【0125】
記録データが図10に示されるような場合に、ステップS190〜S220が実行された場合、記録部24は、単位領域81Pへ画像記録しつつ右向きへ移動した後、カラーが多い単位領域81Qへの片方向記録処理のために再び左向きに移動する必要がある。一方、記録データが図10に示されるような場合に、ステップS190以降が実行されない場合、記録部24は、ステップS300において、右向きへ移動するだけで、単位領域81P、81Qへ画像記録することができる。よって、図7のような処理手順とすることによって、画像記録に要する時間を短くすることができる。
【0126】
[実施例の変形例3]
制御部130は、図5及び図6に示されるフローチャートに従う第1処理(本発明の第1処理に相当)において、記録用紙19に画像記録するために必要な第1時間(本発明の第1時間に相当)を算出する処理(本発明の第1算出手段に相当する処理)を実行してもよい。ここで、第1処理においては、本発明の第1判定手段及び第1記録手段に相当するステップS140、S210、S220、S270、S280、S300の処理が実行される。また、制御部130は、図12に示されるフローチャートに従う第2処理(本発明の第2処理に相当)において、記録用紙19に画像記録するために必要な第2時間(本発明の第2時間に相当)を算出する処理(本発明の第2算出手段に相当する処理)を実行してもよい。ここで、第2処理においては、本発明の第1判定手段及び第1記録手段に相当する図5及び図6のステップS140、S210、S220の処理は実行されず、本発明の第2判定手段及び第2記録手段に相当するステップS260、S270、S280、S300の処理が実行される。そして、制御部130は、算出した第1時間及び第2時間を比較して、第1処理及び第2処理のうち、記録用紙19に画像記録するために必要な時間が短い処理を実行してもよい。なお、前述の処理は、本発明の選択手段に相当する。
【0127】
以下、図11(A)に示されるような画像を記録用紙19に記録する場合について、詳述する。図11(A)〜(D)において81A〜81Eは、単位領域81を示す。また、単位領域81の領域内において、ハッチングが施された領域は、カラー画像であることを示し、ハッチングが施されていない領域は、白及び黒のみで構成された画像であることを示す。また、実線矢印は、記録部24がインク滴を吐出しながら移動する経路を示し、破線矢印は、記録部24がインク滴を吐出することなく移動する経路を示す。そして、図11(B)には、第1処理によって画像記録される場合の状況が示されており、図11(C)には、第2処理によって画像記録される場合の状況が示されている。
【0128】
制御部130は、実際に第1処理または第2処理を開始する前に、図11(A)に示されるような画像を、第1処理によって記録用紙19に記録した場合(図11(B)参照)の第1時間t1、及び第2処理によって記録用紙19に記録した場合(図11(C)参照)の第2時間t2を算出する。例えば、制御部130は、記録部24がインク滴を吐出しながら右向きまたは左向きに移動する場合の時間、つまり実線矢印だけ移動する場合の時間(本例では300(msec)とする。)、及び記録部24がインク滴を吐出することなく右向きまたは左向きに移動する時間、つまり破線矢印だけ移動する場合の時間(本例では150(msec)とする。)を、予めRAM133に記憶しておく。この場合、制御部130は、第1時間t1を、t1=300×5+150×3=1950(msec)と算出し、第2時間t2を、t2=300×5+150×1=1650(msec)と算出する。そして、制御部130は、算出した第1時間t1及び第2時間t2を比較し、短い時間に対応する処理を実行する。つまり、制御部130は、第1時間t1が短い場合、図5及び図6のフローチャートに従って記録処理を行い、第2時間t2が短い場合、図12のフローチャートに従って記録処理を行う。
【0129】
なお、本例では、制御部130は、記録部24の移動時間のみによって第1時間t1及び第2時間t2を算出したが、搬送ローラ対54及び排出ローラ対55による記録用紙19の搬送に要する時間も加味して、第1時間t1及び第2時間t2を算出してもよい。
【0130】
記録用紙19に記録される記録データの内容によっては、第1処理が実行されず、代わりに第2処理が実行された方が、記録用紙19への画像の記録に要する時間を短くすることができる。本実施形態によれば、第1処理及び第2処理のうち、記録用紙19に画像を記録するために必要な時間が短い処理が実行される。これにより、記録用紙19への画像の記録に要する時間を短くすることができる。
【0131】
[実施例の変形例4]
操作パネル9は、記録用紙19への画像記録の速度が記録用紙19に記録された画質よりも優先される速度優先モード、及び記録用紙19に記録された画質が記録用紙19への画像記録の速度よりも優先される画質優先モードの一方を選択的に受け付けるように構成されていてもよい。この場合、操作パネル9は、本発明のモード設定受付部に相当する。
【0132】
例えば、操作パネル9の液晶表示部11に、速度優先モードまたは画質優先モードの一方を指定するように指示するメッセージと、各モードに対応する操作ボタンを指定するメッセージとを表示する。液晶表示部11がタッチパネルである場合、各モードに対応する操作ボタンが液晶表示部11に表示される。ユーザは、当該メッセージに従って、速度優先モードまたは画質優先モードのいずれかに対応した操作ボタンを押圧する。これにより、操作パネル9から制御部130に、いずれのモードが指定されたかの情報が伝達される。
【0133】
制御部130は、操作パネル9からの情報が速度優先モードが指定された旨を示している場合、図5及び図6に示される処理を実行せず、全ての単位領域81において双方向記録処理を実行する。この場合の処理の状況が図11(D)に示される。一方、制御部130は、操作パネル9からの情報が画質優先モードが指定された旨を示している場合、図5及び図6に示される処理を実行する。つまり、変形例4において、制御部130は、操作パネル9が速度優先モードを受け付けたことを条件として、記録データが示す色の種類にかかわらず、双方向記録処理のみによって記録用紙19に画像を記録する。
【0134】
本実施形態によれば、制御部130は、速度優先モードの場合、双方向記録処理のみによって画像を記録する。これにより、記録用紙19への画像の記録に要する時間を短くすることができる。
【0135】
[実施例の変形例5]
上述の実施形態では、図5のステップS90、S100において、パス内のカラードット合計数が算出され、ステップS260〜S280において、パス内のカラードット合計数に応じて、画像記録する際の処理が決定されていた。しかし、パス内のカラードット合計数が算出されなくてもよい。この場合、ステップS90、S100、S260〜S280は実行されない。そして、ステップS300では、片方向記録処理によって画像記録される。
【符号の説明】
【0136】
1・・・複合機
54・・・搬送ローラ対
55・・・排出ローラ対
65・・・記録ヘッド
67・・・キャリッジ
81・・・単位領域
130・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送路に沿った第1向きへ搬送する搬送部と、
上記搬送路の上方に設けられており、上記第1向きと直交し且つ被記録媒体の画像記録面に沿った第2向き、及び上記第2向きと反対向きの第3向きへ往復移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されており、上記第2向きに沿って所定順序で配置された異なる色を吐出する複数種類のノズルがそれぞれ上記第1向きに沿って所定数配置されたノズル面を有し、上記搬送路に向けて1色または複数色の液滴を上記ノズルから吐出することによって、被記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、
上記搬送部による被記録媒体の搬送を停止させて、上記キャリッジを上記第2向きへ移動させつつ上記ノズルから液滴を吐出させ、かつ上記キャリッジを上記第3向きへ移動させるときに上記ノズルから液滴を吐出させない片方向記録処理、並びに上記キャリッジを上記第2向き及び上記第3向きに移動させつつ上記ノズルから液滴を吐出させる双方向記録処理を選択的に実行する制御部と、を備え、
上記制御部は、
上記キャリッジが上記第2向きまたは上記第3向きへ一回移動されるときに被記録媒体に記録可能な最大ライン数である上記所定数のラインの記録データを、上記所定数よりも少ないライン数の単位領域毎に、上記単位領域を構成する全ドットに対する被記録媒体への記録に複数色の液滴の吐出を要するドットの割合が第1閾値以上であるか否かを判定する第1判定手段と、
上記所定数のラインの記録データのうち、上記第1判定手段によって上記第1閾値以上であると判定された単位領域よりも上記第1向きの下流側において被記録媒体に記録される第1記録データを、上記双方向記録処理によって被記録媒体に記録し、上記第1判定手段によって上記第1閾値以上であると判定された単位領域の記録データ、及び当該単位領域よりも上記第1向きの上流側において被記録媒体に記録される記録データを含む第2記録データを、上記片方向記録処理によって被記録媒体に記録する第1記録手段と、を備えているインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記第2記録データのライン数は上記所定数である請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記キャリッジの移動向きが上記第3向きであることを条件として、上記第1判定手段を実行する請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記制御部は、被記録媒体への記録が未実行である残存の記録データのライン数が上記所定数以上であることを条件として、上記第1判定手段を実行する請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
上記第1判定手段は、記録データを構成するドットを間引いた記録データに基づいて、判定を実行する請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
上記制御部は、
上記所定数のラインの記録データにおいて、当該記録データを構成する全ドットに対する被記録媒体への記録に複数種類の液滴の吐出を要するドットの割合が第2閾値以上であるか否かを判定する第2判定手段と、
上記第2判定手段によって上記第2閾値以上であると判定されたときに、上記所定数のラインの記録データを上記片方向記録処理によって被記録媒体に記録し、上記第2判定手段によって上記第2閾値未満であると判定されたときに、上記所定数のラインの記録データを上記双方向記録処理によって被記録媒体に記録する第2記録手段と、
上記第1判定手段及び上記第1記録手段を実行する第1処理において、被記録媒体に画像記録するために必要な第1時間を算出する第1算出手段と、
上記第1判定手段及び上記第1記録手段を実行せずに、上記第2判定手段及び上記第2記録手段を実行する第2処理において、被記録媒体に画像記録するために必要な第2時間を算出する第2算出手段と、
上記第1時間及び上記第2時間を比較して、上記第1処理及び上記第2処理のうち、被記録媒体に画像記録するために必要な時間が短い処理を実行する選択手段と、を更に備えている請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
被記録媒体への画像記録の速度が被記録媒体に記録された画質よりも優先される速度優先モード、及び被記録媒体に記録された画質が被記録媒体への画像記録の速度よりも優先される画質優先モードの一方を選択的に受け付けるモード設定受付部を更に備え、
上記制御部は、上記モード設定受付部が上記速度優先モードを受け付けたことを条件として、上記双方向記録処理のみによって被記録媒体に画像を記録する請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−183666(P2012−183666A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46773(P2011−46773)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】