説明

インクジェット記録装置

【課題】検出センサによる記録媒体の通過の正確な検出を安定化させ、検出センサによる記録媒体のジャム等の通過異常の誤検出を防止することができ、正確に記録媒体の通過異常を検出することができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に所定の処理を施す処理胴とその上流側及び下流側に渡し胴と、2つの渡し胴にそれぞれ対向して設けられ、記録媒体の通過をそれぞれ検出する第1及び第2検出センサと、これらのセンサからの第1及び第2出力信号から記録媒体の通過異常を検出する通過異常検出回路とを有し、この通過異常検出回路は、第1及び第2出力信号に対して、その検出論理と逆の論理を遅延させる第1及び第2逆論理遅延タイマとを備え、第1及び第2出力信号から、それぞれ第1及び第2逆論理遅延タイマの各タイマ設定時間より短い信号変化を削除し、通過異常検出回路によって記録媒体の通過異常の誤検出を防止することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、詳しくはインク液滴による画像が記録されたカットシート状の記録用紙等の記録媒体を乾燥する乾燥胴などの所定の処理を行う処理胴の前後に渡し胴を持ち、これらの2つの渡し胴にそれぞれ設けられた記録媒体の通過(通紙)を検出する検出センサによる記録媒体の通過異常(紙詰まり、即ちジャム)の誤検出を防止することができるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インク液滴をインクジェットヘッドのノズル孔から吐出させてカットシート状の記録用紙に画像を形成して記録するインクジェット記録装置が、プリンタとして用いられている。
このようなインクジェット記録装置では、給紙トレイ内の記録用紙を枚葉して給紙部から搬送ローラ等の搬送手段で画像形成部(記録部)のプラテン上に搬送し、プラテン上の記録用紙に対してインクジェットヘッドを相対的に走査移動させながらインクジェットヘッドのノズル孔からインク液滴を像様に吐出して記録用紙に画像を形成し、インク液滴による画像が形成された記録用紙を乾燥部に搬送して加熱乾燥し、画像が定着された記録用紙を排紙トレイに排紙している。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、記録用紙を枚葉して搬送手段で搬送しているため、様々な部位、例えば、給紙トレイからの枚葉部、画像形成部、乾燥部、排紙部、及び記録用紙に前処理や後処理等のその他の処理部などで紙詰まり、いわゆるジャムが発生する恐れがある。ジャムが発生すると、ジャムが発生した部位を開放し、記録用紙を引っ張り出す等して除去する必要がある。特に、画像形成時に吐出不良等の不具合起こす可能性のあるインクジェットヘッドを備える画像形成部や、異常加熱や異常昇温を起こす可能性のある乾燥部でのジャムは、重要であり、正確かつ迅速にジャムを検出し、インクジェットヘッドのノズルからの液滴の吐出や乾燥部での乾燥を停止する必要がある。
【0004】
特に、乾燥部では、異常加熱や異常昇温による記録用紙の焦げや火災や記録用紙を除去する際の火傷や構成部品の損傷を起こす可能性があるため、特許文献1では、乾燥領域(乾燥部)の異常、例えばジャムを検知する異常検知手段と、異常検知手段によって異常が検知された場合に、乾燥領域のヒータの駆動を停止させた後、乾燥領域が所定温度に下がるまで、あるいは一定時間だけ、冷却手段のみを駆動させる制御手段とを備えるインク乾燥装置を提案している。
特許文献1では、異常検知手段として、温度検知手段を用いるものの他、インク付着済記録媒体が装置内部に一定時間以上留まっていることを検知するジャム検知手段をも用いている。特許文献1では、インク乾燥装置(ドライヤ)の入口と出口に、ジャム検知手段として、それぞれ記録紙の進入、排出を検出する用紙検出センサを配設し、記録紙が挿入されてから排出されるまでのタイミングによって一定時間以上留まっているか否かでジャムを検知している。
【0005】
また、記録部では、画質の点からインクジェットヘッドと記録用紙との間隔は近接して短い方が良いことから、記録用紙の反りや浮きなどを考慮して、僅かな隙間しか持たせていないため、ジャムが発生すると、ジャムが発生した部位を開放した際に、紙粉やほこりなどがインクジェットヘッドのノズルに入り、また、記録用紙を引っ張りだして除去する際に、記録用紙がインクジェットヘッドにこすれて傷つけたりして、ノズルが吐出不良を起こす等の恐れがある。さらに、記録用紙がインクジェットヘッドやその他の部材に引っ掛って破れ、その紙片が残ってしまい、再びジャムの原因となったり、様々な部位で故障等の不具合を発生させる恐れがある。
【0006】
このため、特許文献2では、記録紙のジャムを検知するジャム検知手段と、ジャム検知手段の検知結果に基づいてインクジェットヘッドとプラテンの間の距離を可変する可変手段とを有するインクジェット記録装置を提案している。
こうして、特許文献2では、ジャム検知時ジャム記録紙を除去する際、インクジェットヘッドとプラテン間の距離を開けることにより、ジャム記録紙の除去を行いやすくし、記録紙がヘッドに擦れないようにすることができるとしている。
【0007】
なお、特許文献2では、ジャム検知手段として、記録紙の搬送路上に、入口側に設けられた入口センサと、印字領域の直前に設けられたレジストセンサと、出口側に設けられた出口センサと、タイマとを用い、入口センサとレジストセンサとの間の距離を一定速度で搬送する時間や、記録紙の長手方向の長さや画質モードや印字データ量などの印字条件に応じてレジストセンサと出口センサとの間の距離を搬送する時間や、両時間を加算した全搬送時間を求め、入口センサ又はレジストセンサ等の先のセンサが記録紙の先端又は後端を検知した時、若しくは印字のタイミングを取った時に、タイマをスタートさせて、2つのセンサ間の搬送時間の経過後に、後ろ側のセンサが記録紙の先端又は後端を検知できなかった時や、1つのセンサが記録紙の先端を検出してから、記録紙が1つのセンサを先端から後端までの通過する時間経過後に後端を検知できなかった時にジャムが発生したと判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−96727号公報
【特許文献2】特開2007−144633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1及び2に開示されたジャム検知手段による記録紙のジャムの検知は、記録紙の搬送上流側と下流側の2つの用紙検出センサ間の搬送時間と2つのセンサによる記録紙の先端や後端の検出タイミングを比較してジャムを検出している。なお、これらのジャム検出では、記録紙の先端や後端は、用紙検出センサによって正しく検出されていることが前提となっている。
【0010】
しかしながら、記録紙の搬送方法によっては、用紙検出センサによって記録紙の先端や後端を安定して正確に検出することができず、検出タイミングが正確でなくなる場合がある。例えば、用紙検出センサとして反射型センサを用いる場合、センサ部分を記録紙が通過する際、記録紙の条件(厚みによるばたつきの大きさ、検出面側の色味による反射率の低下など)によってはセンサで安定して検出できなくなる場合がある。特に、記録紙の先端のみを把持して搬送する場合、記録紙の厚みによるばたつきの発生が多くなり、記録紙の先端や後端の正確な検出が困難となるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、記録媒体検出センサによるカットシート状記録媒体の通過、すなわち記録媒体の先端や後端の正確な検出を安定化させ、検出センサによる記録媒体の紙詰まり、即ちジャム等の通過異常の誤検出を防止することができ、正確に記録媒体の通過異常を検出することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドのノズルから液滴を吐出してカットシート状記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転し、前記記録媒体に所定の処理を施す処理胴と、前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送上流側又は搬送下流側に配置され、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外表面に保持すると共に、前記記録媒体を前記処理胴に受け渡す又は前記処理胴から受け取る渡し胴と、前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送方向の、前記渡し胴と逆側に配置され、前記記録媒体を前記処理胴から搬送する又は前記処理胴に搬送する搬送手段と、前記渡し胴及び前記搬送手段にそれぞれ対向して設けられ、前記記録媒体の通過をそれぞれ検出する第1検出センサ及び第2検出センサと、前記第1検出センサから出力される第1出力信号及び前記第2検出センサから出力される第2出力信号を受信し、受信した前記第1出力信号及び前記第2出力信号から前記記録媒体の通過異常を検出する通過異常検出回路とを有し、該通過異常検出回路は、前記第1出力信号に対して前記第1検出センサの検出論理と逆の論理のタイミングを遅延させる第1逆論理遅延タイマと、前記第2出力信号に対して前記第2検出センサの検出論理と逆の論理のタイミングを遅延させる第2逆論理遅延タイマとを備え、前記第1出力信号及び前記第2出力信号から、それぞれ前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマの各タイマ設定時間より短い信号変化を削除し、前記通過異常検出回路によって前記記録媒体の通過異常の誤検出を防止することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記第1検出センサ及び前記第2検出センサは、前記記録媒体の通過時に検出論理がオンとなるセンサであり、前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマは、前記第1検出信号及び前記第2検出信号にオフディレイを加えるオフディレイタイマであることが好ましい。若しくは、前記第1検出センサ及び前記第2検出センサは、前記記録媒体の通過時に検出論理がオフとなるセンサであり、前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマは、前記第1検出信号及び前記第2検出信号にオンディレイを加えるオンディレイタイマであることが好ましい。
【0014】
また、前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマでは、前記タイマ設定時間が切り替え可能であり、前記通過異常検出回路では、前記第1出力信号及び前記第2出力信号からそれぞれ前記記録媒体の通過を示す第1検出信号及び第2検出信号を検出する検出タイミングが切り替え可能であることが好ましい。
また、前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマのそれぞれの前記タイマ設定時間、並びに前記通過異常検出回路における、前記第1出力信号及び前記第2出力信号からそれぞれ前記記録媒体の通過を示す第1検出信号及び第2検出信号を検出する検出タイミングは、前記記録媒体の搬送方向の長さや、前記第1の渡し胴及び前記第2の渡し胴における前記記録媒体の搬送速度に応じて切り替えられることが好ましい。
また、前記検出タイミングを、前記第1出力信号の前記記録媒体の通過を示すタイミングから前記第1逆論理遅延タイマの前記タイマ設定時間以上遅延させることが好ましい。
【0015】
また、前記処理胴は、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外周面に保持しつつ前記記録媒体に前記所定の処理を施すことが好ましい。
また、前記渡し胴及び前記搬送手段の一方が、前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送上流側に配置され、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外表面に保持すると共に、前記記録媒体を前記処理胴に受け渡す第1渡し胴であり、前記渡し胴及び前記搬送手段の他方が、前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送下流側に配置され、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外表面に保持すると共に、前記記録媒体を前記処理胴から受け取る第2渡し胴であることが好ましい。
また、前記処理胴は、前記記録媒体の先端を保持する第1把持手段を備え、該第1把持手段によって前記先端が保持された前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転し、前記記録媒体に前記所定の処理を施すものであり、前記第1渡し胴は、前記記録媒体の先端を把持する第2把持手段を備え、該第2把持手段によって前記先端が保持された前記記録媒体をその外表面に保持しつつ前記処理胴と当接して回転し、前記記録媒体を、前記第2把持手段による把持から前記処理胴の前記第1把持手段の把持に変えることにより前記処理胴に受け渡すものであり、前記第2渡し胴は、前記記録媒体の先端を保持する第3保持手段を備え、該第3保持手段によって前記先端が保持された前記記録媒体をその外表面に保持しつつ前記処理胴と当接して回転し、前記記録媒体を、前記処理胴の前記第1把持手段の把持から前記第3把持手段による把持に変えることにより前記処理胴から受け取るものであることが好ましい。
【0016】
また、前記通過異常検出回路は、前記第1検出センサから出力され、前記第1逆論理遅延タイマで信号処理された前記第1出力信号から、所定の検出タイミング信号に基づいて、前記記録媒体の通過を示す第1検出信号を出力する第1検出回路と、該第1の検出回路から出力される前記第1検出信号を所定設定時間だけ遅延して、遅延第1検出信号を出力する遅延回路と、前記第2検出センサから出力され、前記第2逆論理遅延タイマで信号処理された前記第2出力信号から、前記所定の検出タイミング信号に基づいて、前記記録媒体の通過を示す第2検出信号を出力する第2検出回路と、前記遅延回路から出力される前記遅延第1検出信号と前記第2検出回路から出力される前記第2検出信号とから前記記録媒体の通過異常を判定する通過異常判定回路とを有することが好ましい。
【0017】
また、前記通過異常判定回路は、前記遅延第1検出信号と前記第2検出信号とを比較して前記記録媒体の通過異常を判定することが好ましい。
また、前記通過異常判定回路は、前記遅延第1検出信号と前記第2検出信号とを比較して、両信号が一致していれば前記記録媒体の通過は正常であると判定し、両信号が不一致であれば前記記録媒体の通過異常であると判定することが好ましい。
【0018】
また、前記処理胴は、前記インクジェットヘッドによって前記画像が記録された前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転し、前記記録媒体上の前記液滴からなる前記画像を乾燥するための乾燥胴であることが好ましい。
また、前記処理胴は、前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転して搬送し、前記記録媒体上に前記インクジェットヘッドの前記ノズルから液滴を吐出して前記画像を形成するための画像形成胴であることが好ましい。
【0019】
また、前記第1検出センサ及び第2検出センサは、反射型センサであることが好まし
い。
また、前記第1検出センサ及び第2検出センサは、前記記録媒体の先端を検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記構成により、検出センサによるカットシート状記録媒体の通過、例えば、記録媒体の先端や後端の正確な検出を安定化させ、記録媒体検出センサによる記録媒体の紙詰まり、即ちジャム等の通過異常の誤検出を防止することができ、正確に記録媒体の通過異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の一例の装置構成を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の要部の概略構成図である。
【図3】図2に示すインクジェット記録装置のジャム検出回路の一実施例のブロック図である。
【図4】(a)〜(i)は、それぞれ図3に示すジャム検出回路のジャム検出方式を説明するための各部の信号の一例のタイミングチャートである。
【図5】(a)〜(e)は、それぞれ図3に示すジャム検出回路のオフディレイタイマの効果を説明するためのタイミング信号及びセンサ出力信号の一例のタイミングチャートである。
【図6】(a)〜(e)は、それぞれ図3に示すジャム検出回路のオフディレイタイマの効果を説明するためのタイミング信号及びセンサ出力信号の他の例のタイミングチャートである。
【図7】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ検出センサの出力信号、本発明に用いられるオフディレイタイマ及びオンディレイタイマの出力信号の一例のタイミングチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係るインクジェット記録装置を、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態のインクジェット記録装置の一例の装置構成を示す概略構成図である。図2は、図1に示すインクジェット記録装置の要部の概略構成図である。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態のインクジェット記録装置10は、記録媒体としての枚葉紙(以下、記録用紙、又は単位用紙という)の搬送方向上流側に用紙を給紙搬送する給紙搬送部12、給紙搬送部12の下流側に用紙の搬送方向に沿って用紙の記録面に処理液を塗布する処理液塗布部14、用紙の記録面に画像を形成する画像形成部16、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部18、乾燥した画像を用紙に定着させる画像定着部20、及び画像が定着した用紙を排出する排出部21を備えている。
また、本実施の形態のインクジェット記録装置10は、本発明の特徴とするジャム検出部22を有する。
【0024】
以下、各処理部について説明する。
(給紙配送部)
給紙搬送部12には、用紙が積載される積載部24aが設けられており、積載部24aの用紙搬送方向下流側(以下、単に下流側ともいう)には、当該積載部24aに積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙部24bが設けられている。この給紙部24bによって、給紙された用紙は、複数の搬送ローラ対26aで構成された搬送部28を経て処理液塗布部14へ搬送される。
【0025】
(処理液塗布部)
処理液塗布部14では、本発明の処理胴である処理液塗布ドラム(胴)30が回転可能に配設されている。処理液塗布ドラム30は上流側の給紙搬送部12の最も下流側の搬送ローラ対26aと中間搬送部56aの中間搬送ドラム34aとの間に配置されている。この処理液塗布ドラム30には、用紙の先端部を把持する把持部材であるチャック32が設けられており、上流側の給紙搬送部12の搬送ローラ対26aから用紙を受け取り、当該チャック32によって用紙の先端部を把持することにより、処理液塗布ドラム30の外周面(外表面)に用紙を保持した状態で、処理液塗布ドラム30の回転によって当該用紙を下流側の中間搬送部56aの中間搬送ドラム34aに受け渡すことにより、上流側の給紙配送部12から下流側の中間搬送部56aへ搬送する。なお、図示例の実施形態においては、チャック32は、処理液塗布ドラム30の外表面近傍に点対称な位置に2つ設けられており、処理液塗布ドラム30は、その外表面に2枚の用紙を保持できるようになっている。
【0026】
なお、後述する中間搬送ドラム34a,34b,34c、並びに本発明の処理胴である画像形成ドラム36、インク乾燥ドラム38、及び画像定着ドラム40についても、処理液塗布ドラム30と同様に2つのチャック32が設けられている。そして、このチャック32によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙の受け渡しが行われる。
【0027】
処理液塗布ドラム30の上部には、処理液塗布ドラム30の周方向に沿って、処理液塗布装置42及び処理液乾燥装置44が配設されており、処理液塗布ドラム30をその外表面に用紙を保持した状態で回転させながら、処理液塗布装置42によって、用紙の記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置44によって、当該処理液が乾燥される。
ここで、処理液は、画像を形成するためのインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置42には、処理液が貯留している貯留部46が設けられており、グラビアローラ48の一部が処理液に浸されている。
【0028】
このグラビアローラ48には、ゴムローラ50が圧接して配置されており、当該ゴムローラ50が用紙の記録面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ48には、スキージ(図示省略)が接触しており、用紙の記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0029】
一方、処理液乾燥装置44には、熱風ノズル52及び赤外線ヒータ(以下、IRヒータという)54が処理液塗布ドラム30の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル52及びIRヒータ54により、処理液中の水等の溶媒を蒸発させ、固体薄層または薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部16でインク打滴した液滴ドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応して色材凝集し、用紙表面に固定する作用が得られやすい。
このようにして、処理液塗布部14で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙は、処理液塗布部14と画像形成部16との間に設けられた中間搬送部56aへ搬送される。
【0030】
(中間搬送部)
中間搬送部56aには、本発明に用いられる渡し胴である中間搬送ドラム34aが回転可能に設けられている。中間搬送ドラム34aは、処理液塗布14の処理液塗布ドラム30と画像形成部16の画像形成ドラム36との間に配置されている。中間搬送ドラム34aには、チャック32が設けられており、当該用紙を上流側の処理液塗布ドラム30から受け取り、チャック32によって用紙の先端を把持して、中間搬送ドラム34aの外表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム34aの回転によって用紙を、下流側の画像形成ドラム36に受け渡すことにより、上流側の処理液塗布部14から下流側の画像形成部16へ搬送する。
なお、画像形成部16とインク乾燥部18との間に設けられた中間搬送部56b、及びインク乾燥部18と画像定着部20との間に設けられた中間搬送部56cは、中間搬送部56aと同様の構成を有しているので、詳細な説明を省略する。
【0031】
(画像形成部)
画像形成部16には、画像形成ドラム36が回転可能に設けられている。画像形成ドラム36は、中間搬送ドラム34aと中間搬送ドラム34bとの間に配置されている。画像形成ドラム36には、チャック32が設けられており、当該用紙を上流側の中間搬送ドラム34aから受け取り、チャック32によって用紙の先端を把持して、画像形成ドラム36の外周表面に用紙を保持し、画像形成ドラム36の回転によって当該用紙を下流側の中間搬送ドラム34bに受け渡すことにより、上流側の中間搬送部56aから下流側の中間搬送部56bへ搬送する。
【0032】
画像形成ドラム36の上部には、画像形成ドラム36の表面に近接して、4つのインクジェットヘッド58で構成されたヘッドユニット60が配設されている。当該ヘッドユニット60では、少なくとも基本色であるYMCKの4色のインクジェットヘッド58が画像形成ドラム36の外周方向に沿って配列されている。各色のヘッドユニット60の各インクジェットヘッド58では、画像形成ドラム36をその外表面に用紙を保持した状態で回転させながら、処理液塗布部14で用紙の記録面に形成された処理液層上にノズルからインク(液滴)を吐出(打滴)することにより、各色の画像を形成する。
【0033】
処理液は、インク中に分散する色材とラテックス粒子とを処理液に凝集する効果を持たせ、用紙上で色材流れ等が発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用いて色材の滲み、各色インク間の混色、及びインク滴の着弾時の液合一等による打滴干渉を回避する。
【0034】
インクジェットヘッド58は、画像形成ドラム36に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期してインク液滴の打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム36の振れ、回転軸62の精度、及びドラム表面速度等に依存せず、打滴ムラを低減することが可能となる。
【0035】
なお、ヘッドユニット60は、画像形成ドラム36の上部から退避可能とされており、インクジェットヘッド58のノズル面清掃や増粘インク排出等のメンテナンス動作は、当該ヘッドユニット60を画像形成ドラム36の上部から退避させることで実施される。
画像形成部16において、記録面に画像が形成された用紙は、画像形成ドラム36の回転によって、画像形成部16とインク乾燥部18との間に設けられた中間搬送部56bを介してインク乾燥部18へ搬送される。
【0036】
(中間搬送部)
中間搬送部56bには、中間搬送ドラム34bが回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34bには、同様に、チャック32が設けられている。中間搬送ドラム34bは、画像形成ドラム36とインク乾燥ドラム38との間に配置され、当該用紙を上流側の画像形成ドラム36から受け取り、チャック32によって用紙の先端を把持して、中間搬送ドラム34bの外表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム34bの回転によって、用紙を下流側のインク乾燥ドラム38に受け渡すことにより、上流側の画像形成部16から下流側のインク乾燥部18へ搬送する。
【0037】
(インク乾燥部)
インク乾燥部18には、本発明に用いられる乾燥胴であるインク乾燥ドラム38が回転可能に設けられている。インク乾燥ドラム38の上部には、インク乾燥部の表面に近接して、熱風ノズル64及びIRヒータ66が複数配設されている。また、インク乾燥ドラム38は、中間搬送ドラム34bと中間搬送部56cの中間搬送ドラム34cとの間に配置されている。
インク乾燥ドラム38には、チャック32が設けられており、当該用紙を上流側の中間搬送ドラム34bから受け取り、チャック32によって用紙の先端を把持して、インク乾燥ドラム38の外周表面に用紙を保持し、インク乾燥ドラム38の回転によって当該用紙を下流側の中間搬送ドラム34cに受け渡すことにより、上流側の中間搬送部56bから下流側の中間搬送部56cへ搬送する。
【0038】
本実施の形態では、一例として、上流側と下流側に熱風ノズル64が配設されるようにして、熱風ノズル64と平行配列された一つのIRヒータ66を交互に配設している。これに限らず、例えば、上流側にIRヒータ66を多く配設して上流側で熱エネルギーを多く照射し水分の温度を上昇させ、下流側に熱風ノズル64を多く配設して、飽和水蒸気を吹き飛ばすようにしても良い。
【0039】
インク乾燥部18では、インク乾燥ドラム38をその外表面に用紙を保持した状態で回転させながら、熱風ノズル64及びIRヒータ66による温風によって、用紙の画像形成領域において、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
インク乾燥部18において、記録面の画像が乾燥された用紙は、インク乾燥ドラム38の回転によって、インク乾燥部18と画像定着部20との間に設けられた中間搬送部56cを介して画像定着部20へ搬送される。
【0040】
(中間搬送部)
中間搬送部56cには、中間搬送ドラム34cが回転可能に設けられており、中間搬送ドラム34cには、同様に、チャック32が設けられている。中間搬送ドラム34cは、インク乾燥ドラム38と画像定着ドラム40との間に配置され、当該用紙を上流側のインク乾燥ドラム38から受け取り、チャック32によって用紙の先端を把持して、中間搬送ドラム34cの外表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム34cの回転によって、用紙を下流側の画像定着ドラム40に受け渡すことにより、上流側のインク乾燥部18から下流側の画像定着部20へ搬送する。
【0041】
(画像定着部)
画像定着部20には、画像定着ドラム40が回転可能に設けられている。画像定着ドラム40は、中間搬送ドラム34cと排出部21の搬送ローラ対26bとの間に配置されている。画像定着ドラム40には、チャック32が設けられており、当該用紙を上流側の中間搬送ドラム34cから受け取り、チャック32によって用紙の先端を把持して、画像定着ドラム40の外周表面に用紙を保持し、画像定着ドラム40の回転によって当該用紙を下流側の排出部21の搬送ローラ対26bに受け渡すことにより、上流側の中間搬送部56cから下流側の排出部21へ搬送する。
【0042】
画像定着部20では、画像定着ドラム40をその外表面に用紙を保持した状態で回転させながら、インク乾燥ドラム38上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子を加熱及び加圧して溶融し、用紙上に固着定着する機能を有する。
画像定着ドラム40の上部には、画像定着ドラム40の表面に近接して、加熱ローラ68が配設されている。当該加熱ローラ68は熱伝導率の良いアルミ等の金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、当該加熱ローラ68によって、ラテックスのガラス転移温度Tg以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に、画像表面の凹凸をレベリングし、光沢性を得ることを可能とする。
【0043】
画像定着部20では、加熱ローラ68の下流側には定着ローラ69が設けられている。当該定着ローラ69は、画像定着ドラム40の表面に圧接した状態で配設され、画像定着ドラム40との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ69または画像定着ドラム40のうち少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙に対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
画像定着部20において、記録面の画像が定着された用紙は、画像定着ドラム40の回転によって、画像定着部20の下流側に設けられた排出部21側へ搬送される。
なお、本実施の形態では、画像定着部20について説明したが、インク乾燥部18で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば、当該画像定着部20を備えない構成としても良い。
【0044】
(ジャム検出部)
ジャム検出部22は、図2に示すように、ジャム検出回路70と、第1検出センサ72と、第2検出センサ74とを有する。
ここで、第1検出センサ72は、乾燥部18のインク乾燥ドラム38の上流側に配置される中間搬送部56bの中間搬送ドラム34bの外表面から所定間隔離隔して配置され、中間搬送ドラム34bのチャック32によって先端が把持された用紙の通過、例えば、用紙の先端又は後端を検出するためのものであり、第1センサ出力信号を出力する。
また、第2検出センサ74は、インク乾燥ドラム38の下流側に配置される中間搬送部56cの中間搬送部56cの中間搬送ドラム34cの外表面から所定間隔離隔して配置され、用紙の通過、即ち通紙、例えば用紙の先端又は後端を検出するためのものであり、第2センサ出力信号を出力する。
【0045】
ジャム検出回路70は、本発明に用いられる通過異常検出回路であって、第1検出センサ72からの第1センサ出力信号(以下、第1センサ信号という)及び第2検出センサ74からの第2センサ出力信号(以下、第2センサ信号という)からジャム、例えば、紙詰まり等の用紙の通過異常を検出するためのものであり、ジャム判定出力信号を出力する。
なお、ジャム検出回路70は、第1センサ信号及び第2センサ信号を用いて、ジャムを検出可能なものであればどのようなジャム検出方式であっても良い。例えば、後述する図3及び図4に示す本実施形態の第1センサ信号から検出された第1検出信号の遅延信号と第2センサ信号から検出された第2検出信号とを比較して一致及び不一致によって正常通紙及びジャムを判定する方式であっても良いし、上述した特許文献1及び2に記載のジャム検出方式のように、2つの検出センサによる用紙の検出タイミング間の時間を所定設定時間や所定算出時間と比較してジャムを判定する方式であっても良いし、1つの検出センサによる用紙の先後端の検出タイミング間の時間を所定設定時間や所定算出時間と比較してジャムを判定する方式であっても良い。
【0046】
なお、インクジェット記録装置10では、乾燥部18やそのインク乾燥ドラム38は、熱風ノズル64からの熱風やIRヒータ66からの熱により、非常に高温になっており、乾燥部18におけるジャムの発生を直接検知することは難しい。このため、本実施の形態においては、インク乾燥ドラム38の上流側及び下流側の中間搬送ドラム34b及び34cに、それぞれ通紙を検出する第1及び第2検出センサ72及び74を設け、第1及び第2検出センサ72及び74で、用紙の通過(先端及び/又は後端)をモニタすることにより、乾燥部18内やそのインク乾燥ドラム38でのジャムの発生の有無を検知している。
本実施の形態では、第1及び第2検出センサ72及び74として、反射型センサ、例えば、発光素子から用紙に照射された光を受光素子で受光する反射型光学センサを用いているが、本発明はこれに限定されず、他のタイプ反射型センサを始めとして、透過型センサを含め、各種のセンサを用いることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、2つの第1及び第2検出センサ72及び74をインク乾燥ドラム38の前後(上流側及び下流側)の中間搬送ドラム34b及び34cにそれぞれ設けているが、本発明はこれに限定されず、用紙に何らかの処理を行う処理胴の前後の2つの中間搬送ドラムにそれぞれ設けても良く、例えば、画像形成ドラム36の前後の2つの中間搬送ドラム34a及び34bにそれぞれ設けて、画像形成部16内やその画像形成ドラム36でのジャムの発生の有無を検知しても良い。
【0048】
また、2つの検出センサの内の一方を、処理胴の前後の一方のみの中間搬送ドラムに設け、他方の検出センサを、処理胴の他方の側にある用紙の搬送経路上に設けても良い。例えば、処理液塗布部12の処理液塗布ドラム30の場合には、上流側に中間搬送ドラムがないので、下流側の中間搬送ドラム34aに第2検出センサ74を設け、上流側の搬送部28の搬送ローラ対26aの一方のローラに第1検出センサ72を設けても良い。また、画像定着部20の画像定着ドラム40の場合には、下流側に中間搬送ドラムがないので、上流側の中間搬送ドラム34cに第1検出センサ72を設け、下流側の排出部21の搬送ローラ対26bの一方のローラに第2検出センサ74を設けても良い。
さらに、少しジャムの発生の有無の検知精度は低下するが、検知精度が許容できる範囲内であれば、2つの検出センサの内の一方を、処理胴の直前又は直後の一方のみの中間搬送ドラムに設け、他方の検出センサを、処理胴の他方の側の離れた位置にある中間搬送ドラムや搬送経路に設けても良い。
【0049】
次に、本実施の形態のジャム検出回路について詳細に説明する。図3は、図2に示すジャム検出回路の回路構成の一実施例のブロック図である。
図3に示すジャム検出回路70は、第1オフディレイタイマ76と、第2オフディレイタイマ78と、第1検出回路80と、第2検出回路82と、第1段遅延回路84a、第2段遅延回路84bと、ジャム判定回路86とを有する。
【0050】
第1オフディレイタイマ76は、第1検出センサ72の検出論理がオンである第1センサ信号S1に対して、逆の論理であるオフのタイミングを所定タイマ設定時間だけ遅延させ、第1センサ信号S1における、タイマ設定時間より短い信号変化、即ちオフ状態への変化をキャンセルする信号処理がなされた第1センサ信号を出力するものである。
第2オフディレイタイマ78は、第2検出センサ72の検出論理がオンである第2センサ信号S2に対して、逆の論理であるオフのタイミングを所定設定時間遅延させ、第2センサ信号S2における、タイマ設定時間より短い信号変化、即ちオフ状態への変化をキャンセルする信号処理がなされた第2センサ信号を出力するものである。
【0051】
第1検出回路80は、入力されるタイミング信号TMの所定の検出タイミング(センサチェックタイミング)において、第1オフディレイタイマ76で信号処理された第1センサ信号の状態を検出し、第1検出信号として取得して出力するものである。ここで、第1検出回路80は、入力される第1センサ信号の状態がオンであれば、第1検出信号として用紙検出を表すパルス信号(オンパルスやフラグ)を出力し、第1センサ信号の状態がオフであれば、第1検出信号はオフの状態を維持する。
第2検出回路82は、入力されるタイミング信号TMの所定の検出タイミング(センサチェックタイミング)において、第2オフディレイタイマ78で信号処理された第2センサ信号を取得して、第2検出信号として出力するものである。同様に、第2検出回路80も、入力される第2センサ信号の状態がオンであれば、第2検出信号として用紙検出を表すパルス信号(オンパルスやフラグ)を出力し、第2センサ信号の状態がオフであれば、第2検出信号はオフの状態を維持する。
【0052】
第1段遅延回路84a及び第2段遅延回路84bは、第1検出センサ72の検出による第1検出信号の検出タイミングと第2検出センサ74の検出による第2検出信号の検出タイミングとのずれを合わせるために、検出タイミングのずれの分だけ、本実施形態では、検出タイミングのずれを、検出タイミング2回分、即ち2段であるとしており、それぞれ1回分ずつ合計2回分、即ち、それぞれ1段ずつ2段分だけ、第1検出回路72から出力される第1検出信号のパルス信号を遅延させるためのものである。ここでは、例えば第1段遅延回路84a及び第2段遅延回路84bとしてFF(フリップフロップ)等を用い、これらをシフトレジスタとして構成し、所要の段数の遅延を行う。
【0053】
即ち、第1段遅延回路84a及び第2段遅延回路84bには、タイミング信号TMが入力されており、検出タイミングパルス(チェックパルス)が来る毎に、それぞれ1段ずつ第1検出信号が遅延される。こうして、後段の第2段遅延回路84bから、第1検出信号のパルス信号を2段遅延させた遅延第1検出信号が出力される。
なお、本実施形態では、検出タイミングのずれを2回分として、遅延回路を2段接続しているが、ずれの回数は、第1検出センサ72及び第2検出センサ74を設ける位置に応じて、1回である場合も、3回以上である場合もあるので、ずれの回数に応じて遅延回路の段数を設定すればよい。また、1つの遅延回路を用いて必要な段数の遅延を行うようにしても良い。
【0054】
ジャム判定回路86は、第2段遅延回路84bから出力される2段遅延された第1検出信号のパルス信号と、第2検出回路72から出力される第2検出信号のパルス信号との一致不一致を検出して、不一致の場合にはジャムと判定して、パルス信号(オンパルスやフラグ)からなるジャム判定出力信号を出力し、一致した場合には正常通紙と判定してオフの状態のジャム判定出力信号を出力するものである。なお、クリア信号CLは、ジャム判定回路86内の判定をリセットするためのものである。
【0055】
本実施の形態においては、ジャム検出回路70は、以上のように構成されるが、各構成要素を個々に構成しても良いし、FPGA(Field programmable gate array)で構成しても良い。
また、第1及び第2検出センサ72及び74として用いられる光学センサには、オフディレイタイマや、その逆のオンディレイタイマ等を備えているものもあるので、そのような場合には、ジャム検出回路70の内、第1及び第2オフディレイタイマ76及び78として、第1及び第2検出センサ72及び74にそれぞれ内蔵のものを用い、第1検出回路80、第2検出回路82、第1段遅延回路84a、第2段遅延回路84b、及びジャム判定回路86をFPGAで構成しても良い。
【0056】
次に、本実施の形態のジャム検出回路70のジャム検出方式について説明するが、説明を容易にするために、まず、図3に示す第1及び第2オフディレイタイマ76及び78のタイマ設定時間が0である場合の図4(a)〜(i)に示すタイミングチャートに基づいて説明する。なお、このタイマ設定時間が0である場合は、図3に示すジャム検出回路70において、第1及び第2オフディレイタイマ76及び78が設けられていない場合に相当する。
【0057】
図4(a)に示すタイミング信号TMは、センサチェックタイミング、即ち通紙の検出タイミングを表すチェックパルスが4回出力されたことを示す。なお、このようなタイミング信号TMを取得するために、第1及び第2検出センサ72及び74をチャック32が通過完了したタイミングを知るため、タイミングセンサ(図示せず)を設けておくのが好ましい。このタイミング信号TMは、タイミングセンサが反応したタイミングで第1及び第2検出センサ72及び74における用紙検知の有無を判定し、その間でジャムが発生したかどうか判定するためのものである。ここで、第1及び第2検出センサ72及び74によるセンサ誤検知が発生すると、正常であるにも関わらずジャム誤判定が発生するなど、不都合が生じるからである。なお、タイミング信号TMは、例えば、図示しないが、中間搬送ドラム34b又は34cの回転と同期して回転する円盤にドグを2か所設け、このドグが遮光位置になるように、フォトインタラプタ等のタイミングセンサを配置することにより、中間搬送ドラム34b又は34cの回転に応じて出力されるようにすることができる。この時、中間搬送ドラム34b又は34cにドグを設けた円盤を取り付ける角度は、センサ状態をモニタすべき位置でタイミング信号を出力できるように調整すれば良い。
【0058】
図4(b)に示す第1検出センサ72から出力される第1センサ信号S1は、第1検出センサ72がチャック32に続いてチャック32に先端が把持された用紙を検出したことを示す検出論理がオンであるパルス信号であるが、後半部分で、用紙の後端のばたつき等によるものと類推されるような短い間隔の信号変化を示す。この第1センサ信号S1は、短い間隔の信号変化を含むものの、図4(a)に示すタイミング信号TMと同様に4回用紙が適正に検出されたことを示す。また、図示例の場合、後半部分の短い間隔の信号変化は、タイミング信号TMのチェックパルスのタイミングから外れているので、次の第1検出回路80における第1検出信号DS1のパルス生成には影響を与えない。
【0059】
図4(c)に示す第1検出信号DS1は、第1検出回路80から出力される信号で、第1検出回路80に入力された図4(a)に示すタイミング信号TMのチェックパルスのタイミングで、第1センサ信号S1のオン状態を示すオンパルスが出力されたことを示す。図示例では、第1検出信号DS1は、タイミング信号TMの4回のチェックパルスにそれぞれ対応して、4回オンパルスが出力されたことを示す。
図4(d)に示す遅延第1検出信号DD1は、第2段遅延回路84bから出力される信号であり、第1段遅延回路84a及び第2段遅延回路84bによって、これらに入力されたタイミング信号TMのチェックパルスに応じて第1検出信号DS1を2段遅延させた信号であることを示す。
【0060】
図4(e)に示す第2検出センサ74から出力される第2センサ信号S2は、第1センサ信号S1と同様に、第2検出センサ74がチャック32に続いてチャックに先端が把持された用紙が検出されたことを示すが、後半部分で、用紙の後端のばたつき等によるものと類推されるような短い間隔の信号変化を示す。しかしながら、この第2センサ信号S2は、第1センサ信号S1より、2段遅れていることを示し、タイミング信号TMの3段目のチェックパルスに対応する用紙検出オンパルスは出力されているが、タイミング信号TMの4段目のチェックパルスに対応する用紙検出オンパルスが出力されておらず、これは用紙が検出されなかったことを示す。
図4(f)に示す第2検出信号DS2は、第2検出回路82から出力される信号で、入力されたタイミング信号TMのチェックパルスのタイミングで、第2センサ信号S2のオン状態を示すオンパルスが出力されたことを示す。図示例では、第2検出信号DS2は、タイミング信号TMの3段目のチェックパルスに対応するオンパルスが存在するが、タイミング信号TMの4段目のチェックパルスに対応するパルスが存在しないことを示す。
【0061】
図4(g)に示すジャム判定信号JFSは、ジャム判定回路86内で生成される信号であり、タイミング信号TMのチェックパルス毎に、第2段遅延回路84bから出力された2段遅延された遅延第1検出信号DD1と、第2検出回路72から出力された第2検出信号DS2との一致不一致を判定した結果の信号であり、不一致の場合には、ジャムと判定されてオンパルスを生成し、一致した場合には、正常通紙と判定されてオフの状態が維持される信号である。図示例では、タイミング信号TMの3段目のチェックパルスに対応する遅延第1検出信号DD1のパルス信号及び第2検出信号DS2のパルス信号は共に存在しており、ジャム判定信号JFSは、一致と判定されて正常通紙を示すオフの状態が維持されるが、タイミング信号TMの4段目のチェックパルスに対応する遅延第1検出信号DD1にはパルス信号が存在するが、第2検出信号DS2のパルス信号は共に存在ししないため、ジャム判定信号JFSは、不一致と判定されてジャムを示す不一致パルスが生成されていることを示す。なお、タイミング信号TMの1段目及び2段目のチェックパルスに対応する第2検出信号DS2は存在しないため、オフの状態が維持されている。
【0062】
図4(h)に示すジャム除去入力信号JRIは、詰まった紙などのジャムが除去されたことを表すパルスであり、外部入力信号を示す。
図4(i)に示すジャム判定出力信号JFOは、ジャム判定回路86から出力される信号であり、ジャム判定信号JFSにおけるジャムを示す不一致パルスの立下り(オフ)で立上がり(オンし)、ジャム除去入力信号JRIの立下がり(オフ)で立下がり(オフしす)、ジャムが検出されてからジャムが除去されるまでジャムを示すオン状態が維持される。
図4(a)〜(i)に示すタイミングチャートでは、検出論理をオンとし、オンパルスを用いているが、検出論理をオフとし、オフパルスを用いても良い。
【0063】
上述したように、本実施の形態のジャム検出回路70のジャム検出方式は、図4のタイミングチャートに示すように、タイミング信号TMのチェックパルスに対応して、入力された第1センサ信号S1から第1検出回路80で第1検出信号DS1を取得し、第1検出信号DS1から第1段及び第2段遅延回路84a及び84bで2段遅延された遅延第1検出信号DD1を取得し、一方、入力された第2センサ信号S2から第2検出回路80で第2検出信号DS2を取得し、ジャム判定回路86で遅延第1検出信号DD1と第2検出信号DS2とを比較して、不一致を示すパルスを持つジャム判定信号JFSを生成し、ジャム判定信号JFSに基づくジャム判定出力信号JFOを出力し、外部からジャム除去入力信号JRIが入力されるまで維持するものである。
【0064】
次に、図5(a)〜(e)に示すタイミングチャートを用いて、本実施の形態のジャム検出回路70のジャム検出方式における第1及び第2オフディレイタイマ76及び78の機能について説明する。
まず、本発明者は、本実施の形態の図1に示すインクジェット記録装置10のインク乾燥ドラム38等の処理胴の前後に配置されている中間搬送ドラム34a,34b,34cのように、用紙の先端のみをチャック32で把持してドラム外表面に用紙を保持して搬送する場合には、検出センサ72及び74の部分を用紙が通過する際、用紙の厚みによっては用紙がばたつくために、用紙の通過を安定して検出できなくなる場合があることを知見した。
【0065】
また、本発明者は、ジャム検出のための第1及び第2検出センサ72及び74として、例えば反射型センサを用いる場合、これらの検出センサ72及び74の部分を用紙が通過する際、用紙の条件(用紙の厚みによるばたつきの大きさ、用紙の検出面側、特に両面印刷の場合の検出面側の色味による反射率の低下など)によっては、用紙の通過を安定して検出できなくなる場合があることを知見した。
特に、第1及び第2センサ信号S1及びS2において、タイミング信号TMのチェックパルスに対応する範囲に、用紙のばたつき等の用紙の条件に起因する短い間隔の信号変化があると、用紙の通過を安定して検出できなくなり、用紙の通過は正常であるにもかかわらず、ジャム検出回路70でジャムの誤検出が発生することを本発明者は知見した。
【0066】
このため、本実施の形態においては、第1及び第2検出センサ72及び74から出力される第1及び第2センサ信号S1及びS2に対して、それぞれ第1及び第2オフディレイタイマ76及び78を作用させることにより、用紙の条件に起因する短い間隔の信号変化を除去(キャンセル)し、用紙の通過を安定して検出できるようにしている。
図5(a)は、タイミング信号TMを示し、(b)は、用紙がない場合のセンサ信号Saを、(c)は、用紙があり、正常である場合のセンサ信号Sbを、(d)は、用紙のばたつきがある場合のセンサ信号Scを、(e)は、用紙のばたつきがあり、オフディレイを設定した場合のオフディレイセンサ信号Sdを示す。ここでは、第1及び第2センサ信号S1及びS2を区別せずに、両者に共通のセンサ信号Sa〜Sdとして説明する。
【0067】
図5(b)に示すセンサ信号Saは、用紙がない場合のセンサ信号であり、チャック32のみが検出されていることを示し、図5(a)に示すタイミング信号TMのセンサチェックタイミングでは、検出回路(80,82)において用紙がないこと(オフ)を正しく検出することができる。
次に、図5(c)に示すセンサ信号Sbは、チャック32に続いてチャック32に先端が把持された用紙を検出している場合のセンサ信号であり、チャック32及び用紙が正常に検出されていることを示し、図5(a)に示すタイミング信号TMのセンサチェックタイミングでは、検出回路(80,82)において用紙が通過したこと(オン)を正しく検出することができる。
【0068】
これに対し、図5(d)に示すセンサ信号Scは、チャック32に続いてチャック32に先端が把持された用紙を検出しているが、用紙のばたつきがある場合のセンサ信号であり、チャック32及び用紙先端が正常に検出されている途中で短い間隔の信号変化があることを示し、短い間隔の信号変化が図5(a)に示すタイミング信号TMのセンサチェックタイミングに発生しており、検出回路(80,82)において、用紙が通過したにもかかわらず、用紙がない(オフ)と検出してしまい、誤検出することを示す。
【0069】
このため、本実施形態では、図5(e)に示すオフディレイセンサ信号Sdが用いられる。このオフディレイセンサ信号Sdは、図5(d)に示すセンサ信号Scに対し、図示の長さのタイマ設定時間が設定されたオフディレイタイマ(76,78)を作用させて、タイマ設定時間より短い間隔の信号変化(オフ状態)をキャンセルして、図5(c)に示すセンサ信号Sbと同様な信号とされた信号である。したがって、センサ信号Scに短い間隔の信号変化が図5(a)に示すタイミング信号TMのセンサチェックタイミングに発生していたとしても、オフディレイセンサ信号Sdでは、検出回路(80,82)で、用紙が通過したこと(オン)を正しく検出することができる。
その結果、図5(e)に示すオフディレイセンサ信号Sdでは、図5(d)に示すセンサ信号Scの場合に発生する誤検出が解消できることが分かる。
【0070】
なお、上述した例では、タイミング信号TMのセンサチェックタイミングは、チャック32が第1及び第2検出センサ72および74を通過完了したタイミングに基づいて設定されているが、本発明はこれに限定されず、用紙の搬送速度が可変となる場合や、用紙長さが可変となる場合には、搬送速度や用紙の長さに応じて、タイミング信号TMのセンサチェックタイミングを変化させても良く、例えば、センサチェックタイミングにディレイを設け、チャック32に検出タイミングに対して遅延させても良い。
また、オフディレイタイマ(76、78)のオフディレイのタイマ設定時間を切り替えることで、特にタイミング信号TMのセンサチェックタイミングの変化や遅延に応じてオフディレイのタイマ設定時間を切り替えることで、用紙の搬送速度や用紙の長さや、用紙の条件等の様々な条件に対応することができる。
【0071】
本発明においては、例えば、オフディレイタイマ(76、78)のタイマ設定時間を極端に長く設定し、合わせて、タイミング信号TMのセンサチェックタイミングを遅らせることで、短い用紙の混入を検知することができる。
図6(a)〜(e)に、本発明の第2の実施形態におけるオフディレイタイマの効果を説明するためのタイミング信号及びセンサ出力信号のタイミングチャートを示す。
ここで、図6(a)は、タイミング信号TMを、(b)は、用紙がない場合のセンサ信号Saを、(c)は、用紙がない場合のオフディレイセンサ信号Seを、(d)は、短い用紙が進入してきた場合のセンサ信号Sfを、(e)は、短い用紙が進入しており、オフディレイを設定した場合のオフディレイセンサ信号Sgを示す。ここでも、第1及び第2センサ信号S1及びS2を区別せずに、両者に共通のセンサ信号Sa、Sb、Se〜Sgとして説明する。
【0072】
図6(a)に示すタイミング信号TMでは、(b)に示すチャック32の部分の検出を示すセンサ信号Saのパルスに対して、図5(a)及び(b)に示す場合よりも、センサチェックタイミングが遅延されていることを示す。
図6(b)に示すセンサ信号Saは、図5(b)に示すセンサ信号Saと同じであり、図6(a)に示すタイミング信号TMの遅延されたセンサチェックタイミングでも、検出回路(80,82)で、用紙がないこと(オフ)を正しく検出できることを示す。
次に、図6(c)に示すオフディレイセンサ信号Seは、図6(b)に示すセンサ信号Saに対して、オフディレイタイマ(76、78)を作用させ、そのタイマ設定時間を、図5(e)に示すタイマ設定時間より大幅に長く設定した場合の信号であり、図6(b)に示すセンサ信号Saと同様に、検出回路(80,82)で、用紙がないこと(オフ)を正しく検出できることを示す。
【0073】
なお、図6(d)に示すセンサ信号Sfは、チャック32部分を検出した後、オフとなるが、進入してきた短い用紙を検出したことを示す信号であり、検出回路(80,82)で、短い用紙が通過したにもかかわらず、センサチェックタイミングでは検知できず、用紙がない(オフ)と検出してしまい、誤検出することを示す。
これに対し、図6(e)に示すオフディレイセンサ信号Sgは、図6(d)に示すセンサ信号Sfに対し、図5(e)に示すタイマ設定時間より大幅に長く設定した図示の長さのタイマ設定時間が設定されたオフディレイタイマ(76,78)を作用させて、オフ状態への変化を遅延させて、図6(a)に示すタイミング信号TMのセンサチェックタイミングにおいて、検出回路(80,82)で、用紙が通過したこと(オン)を正しく検出できることを示す信号である。
【0074】
以上の結果から、図6(c)に示すオフディレイセンサ信号Sgでも、図6(b)に示すセンサ信号Sfと同様に、用紙がないこと(オフ)を正しく検出できる上に、図6(e)に示すオフディレイセンサ信号Sgでは、図6(d)に示すセンサ信号Sfでは検知できない短い用紙の進入を検出できることが分かる。
なお、第1及び第2検出センサ72及び74において、特に第1検出センサ72において、短い用紙等の異常な用紙の通過をも極力検知することで、ジャムの検出効果が高めることができる。その上、用紙の搬送方向と直交する幅方向にも、複数のセンサを設けることで、異常な用紙の検出効果をさらに向上させることができる。
【0075】
上述した例では、検出センサから出力されたセンサ信号に対して、検出センサ72及び74の検出論理と逆の論理のタイミングを遅延させる逆論理遅延タイマとして、第1及び第2検出センサ72及び74の検出論理をオンとして、第1及び第2オフディレイタイマ76及び78を用いているが、本発明はこれに限定されず、第1及び第2検出センサ72及び74の検出論理をオフとして、それぞれにオンディレイタイマを用いるようにしても良い。
【0076】
なお、オンディレイタイマの作用を、オフディレイタイマと比較するために、検出センサの出力信号、オフディレイタイマ及びオンディレイタイマの出力信号のタイミングチャートの一例を図7に示す。
図7(a)は、検出センサのセンサ出力信号を示し、検出対象の記録用紙がある部分においてのみに、オンパルスが存在する。
これに対し、図7(b)は、図7(a)に示すセンサ出力信号に対するオフディレイタイマの出力信号を示し、図7(a)に示すセンサ出力信号に対して、オフに変化する時間がタイマ設定時間だけ遅延されていることが分かる。
また、図7(c)は、図7(a)に示すセンサ出力信号に対するオンディレイタイマの出力信号を示し、図7(a)に示すセンサ出力信号に対して、オンに変化する時間がタイマ設定時間だけ遅延されていることが分かる。
【0077】
図5(e)、図6(c)、及び図6(e)に示す例で用いられるタイマ設定時間や、タイミング信号のセンサチェックタイミングの設定タイミングや遅延時間は、使用される用紙の厚さやこしや濃度、特に表面濃度等の用紙の条件や、用紙の先端を把持するチャックの構造や把持強度や、先端がチャックに把持された用紙を外表面に保持する中間搬送ドラム(渡し胴)の構造、用紙のばたつき等の条件に応じて設定することができる。例えば、画像形成ドラム36からインク液滴による画像が形成された記録用紙を受け取る中間搬送ドラムは、記録用紙の画像形成面が中間搬送ドラムの外表面側にして受け取ることになるので、中間搬送ドラムの外表面の所定領域は、記録用紙の画像形成面の画像形成領域と直接接触することがないようにしておく必要がある。このため、中間搬送ドラムの外表面に先端がチャックで把持されて保持された記録用紙はばたつきが生じる場合がある。このように、検出センサの検出信号を不安定にさせる要因を持つ上記の条件を考慮して、タイマ設定時間や、タイミング信号のセンサチェックタイミングの設定タイミングや遅延時間を予め決めておくのが好ましい。もちろん、中間搬送ドラムや用紙の組み合わせに応じて予め実験を行ってタイマ設定時間や、タイミング信号のセンサチェックタイミングの設定タイミングや遅延時間を決めておいても良い。
【0078】
以上、本発明に係るインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0079】
10 インクジェット記録装置
12 給紙搬送部
14 処理液塗布部
16 画像形成部
18 インク乾燥部
20 画像定着部
21 排出部
22 ジャム検出部
30 処理液塗布ドラム
32 把持部材
34a,34b,34c 中間搬送ドラム
36 画像形成ドラム
38 インク乾燥ドラム
40 画像定着ドラム
56a,56b,56c 中間搬送部
64 熱風ノズル
66 赤外線(IR)ヒータ
70 ジャム検出回路
72,74 検出センサ
76,78 オフディレイタイマ
80,82 検出回路
84a,84b 遅延回路
86 ジャム判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズルから液滴を吐出してカットシート状記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転し、前記記録媒体に所定の処理を施す処理胴と、
前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送上流側又は搬送下流側に配置され、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外表面に保持すると共に、前記記録媒体を前記処理胴に受け渡す又は前記処理胴から受け取る渡し胴と、
前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送方向の、前記渡し胴と逆側に配置され、前記記録媒体を前記処理胴から搬送する又は前記処理胴に搬送する搬送手段と、
前記渡し胴及び前記搬送手段にそれぞれ対向して設けられ、前記記録媒体の通過をそれぞれ検出する第1検出センサ及び第2検出センサと、
前記第1検出センサから出力される第1出力信号及び前記第2検出センサから出力される第2出力信号を受信し、受信した前記第1出力信号及び前記第2出力信号から前記記録媒体の通過異常を検出する通過異常検出回路とを有し、
該通過異常検出回路は、前記第1出力信号に対して前記第1検出センサの検出論理と逆の論理のタイミングを遅延させる第1逆論理遅延タイマと、前記第2出力信号に対して前記第2検出センサの検出論理と逆の論理のタイミングを遅延させる第2逆論理遅延タイマとを備え、
前記第1出力信号及び前記第2出力信号から、それぞれ前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマの各タイマ設定時間より短い信号変化を削除し、前記通過異常検出回路によって前記記録媒体の通過異常の誤検出を防止することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1検出センサ及び前記第2検出センサは、前記記録媒体の通過時に検出論理がオンとなるセンサであり、
前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマは、前記第1検出信号及び前記第2検出信号にオフディレイを加えるオフディレイタイマである請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1検出センサ及び前記第2検出センサは、前記記録媒体の通過時に検出論理がオフとなるセンサであり、
前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマは、前記第1検出信号及び前記第2検出信号にオンディレイを加えるオンディレイタイマである請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマでは、前記タイマ設定時間が切り替え可能であり、前記通過異常検出回路では、前記第1出力信号及び前記第2出力信号からそれぞれ前記記録媒体の通過を示す第1検出信号及び第2検出信号を検出する検出タイミングが切り替え可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1逆論理遅延タイマ及び前記第2逆論理遅延タイマのそれぞれの前記タイマ設定時間、並びに前記通過異常検出回路における、前記第1出力信号及び前記第2出力信号からそれぞれ前記記録媒体の通過を示す第1検出信号及び第2検出信号を検出する検出タイミングは、前記記録媒体の搬送方向の長さや、前記渡し胴及び前記搬送手段における前記記録媒体の搬送速度に応じて切り替えられる請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記検出タイミングを、前記第1出力信号の前記記録媒体の通過を示すタイミングから前記第1逆論理遅延タイマの前記タイマ設定時間以上遅延させる請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記処理胴は、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外周面に保持しつつ前記記録媒体に前記所定の処理を施す請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記渡し胴及び前記搬送手段の一方が、
前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送上流側に配置され、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外表面に保持すると共に、前記記録媒体を前記処理胴に受け渡す第1渡し胴であり、
前記渡し胴及び前記搬送手段の他方が、
前記処理胴に対して前記記録媒体の搬送下流側に配置され、前記記録媒体の先端を把持して回転することにより、前記記録媒体をその外表面に保持すると共に、前記記録媒体を前記処理胴から受け取る第2渡し胴である請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記処理胴は、前記記録媒体の先端を保持する第1把持手段を備え、該第1把持手段によって前記先端が保持された前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転し、前記記録媒体に前記所定の処理を施すものであり、
前記第1渡し胴は、前記記録媒体の先端を把持する第2把持手段を備え、該第2把持手段によって前記先端が保持された前記記録媒体をその外表面に保持しつつ前記処理胴と当接して回転し、前記記録媒体を、前記第2把持手段による把持から前記処理胴の前記第1把持手段の把持に変えることにより前記処理胴に受け渡すものであり、
前記第2渡し胴は、前記記録媒体の先端を保持する第3保持手段を備え、該第3保持手段によって前記先端が保持された前記記録媒体をその外表面に保持しつつ前記処理胴と当接して回転し、前記記録媒体を、前記処理胴の前記第1把持手段の把持から前記第3把持手段による把持に変えることにより前記処理胴から受け取るものである請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記通過異常検出回路は、
前記第1検出センサから出力され、前記第1逆論理遅延タイマで信号処理された前記第1出力信号から、所定の検出タイミング信号に基づいて、前記記録媒体の通過を示す第1検出信号を出力する第1検出回路と、
該第1の検出回路から出力される前記第1検出信号を所定設定時間だけ遅延して、遅延第1検出信号を出力する遅延回路と、
前記第2検出センサから出力され、前記第2逆論理遅延タイマで信号処理された前記第2出力信号から、前記所定の検出タイミング信号に基づいて、前記記録媒体の通過を示す第2検出信号を出力する第2検出回路と、
前記遅延回路から出力される前記遅延第1検出信号と前記第2検出回路から出力される前記第2検出信号とから前記記録媒体の通過異常を判定する通過異常判定回路とを有する請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記通過異常判定回路は、前記遅延第1検出信号と前記第2検出信号とを比較して前記記録媒体の通過異常を判定する請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記通過異常判定回路は、前記遅延第1検出信号と前記第2検出信号とを比較して、両信号が一致していれば前記記録媒体の通過は正常であると判定し、両信号が不一致であれば前記記録媒体の通過異常であると判定する請求項10又は11に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記処理胴は、前記インクジェットヘッドによって前記画像が記録された前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転し、前記記録媒体上の前記液滴からなる前記画像を乾燥するための乾燥胴である請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記処理胴は、前記記録媒体をその外周面に保持しつつ回転して搬送し、前記記録媒体上に前記インクジェットヘッドの前記ノズルから液滴を吐出して前記画像を形成するための画像形成胴である請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記第1検出センサ及び第2検出センサは、反射型センサである請求項1〜14のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記第1検出センサ及び第2検出センサは、前記記録媒体の先端を検出する請求項1〜15のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213895(P2012−213895A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79870(P2011−79870)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】