説明

インクジェット記録装置

【課題】効率よく乾燥処理することができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】画像記録部18において水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像が記録された用紙Pは、チェーングリッパ64に受け渡されて排紙部24まで搬送される。チェーングリッパ64の内部には、インク乾燥処理ユニット68、UV照射ユニット74が設置されており、用紙Pは、チェーングリッパ64による搬送過程で乾燥処理、UV照射処理が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、特に水性UVインクを用いて画像を記録するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク(水性UVインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録する水性UVインクジェット記録装置が知られている(たとえば、特許文献1等)。
【0003】
水性UVインクジェット記録装置では、描画した画像を定着させるため、描画後の画像にUV(紫外線)を照射する処理が必要とされる。また、汎用の印刷用紙(インクジェット専用紙ではない一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙などのセルロースを主体とした用紙)を使用した場合には、更に描画後に乾燥処理が必要とされる。
【0004】
このUV照射処理及び乾燥処理を行うために、特許文献2では、用紙をドラム搬送するインクジェット記録装置において、描画用の搬送ドラムの後段に乾燥用の搬送ドラムを設置し、その乾燥用の搬送ドラムの周囲に設置した乾燥装置によって描画後の用紙を乾燥処理するとともに、乾燥用の搬送ドラムの後段に定着用の搬送ドラムを設置し、その定着用の搬送ドラムの周囲に設置したUV照射装置によってUV照射処理する構成としている。
【0005】
また、特許文献3では、用紙をドラム搬送するインクジェット記録装置において、描画用の搬送ドラムの周囲にインクジェットヘッドと共に乾燥装置を設置し、この乾燥装置によって描画後の用紙を乾燥処理する構成としている。そして、この乾燥処理した用紙をチェーングリッパによって排紙する過程でチェーングリッパに内蔵されたUVランプを用いてUV照射処理する構成としている。
【0006】
また、特許文献4では、用紙をベルト搬送するインクジェット記録装置において、搬送ベルトによる用紙の搬送経路上にインクジェットヘッド、ヒータ、UVランプを設置し、描画後の用紙を順次UV照射処理、乾燥処理する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−46872号公報
【特許文献2】特開2011−37195号公報
【特許文献3】特開2010−76872号公報
【特許文献4】特開2006−305773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、用紙を乾燥処理する際、特許文献2のように、用紙をドラムで搬送し、その搬送経路上に乾燥装置を配置する構成では、設置可能な乾燥装置の数に制限が生じ、短時間で効率よく乾燥させることが難しい。すなわち、描画後の用紙を短時間で効率よく乾燥させるためには、多数の乾燥装置を高密度に配置する必要があるが、多数の乾燥装置を高密度に配置するためには、搬送ドラムの径を大きくしなければならず、装置が大型化するという問題がある。
【0009】
また、描画後の用紙は、すぐに乾燥処理することが好ましいが、特許文献3のように、描画用の搬送ドラムによる搬送経路上に乾燥装置を設置すると、乾燥処理時に発生する熱で搬送ドラムが加熱され、その搬送ドラムの熱でインクジェットヘッドが乾燥して、打滴精度が低下するおそれがある。
【0010】
特許文献4についても同様に乾燥による熱で搬送ベルトが加熱され、その搬送ベルトの熱でインクジェットヘッドが乾燥して、打滴精度が低下するおそれがある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、効率よく乾燥処理することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0013】
[1]第1の態様は、枚葉の記録メディアの表面に水性インクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部と、表面に画像が記録された前記記録メディアを前記画像記録部から受け取り、先端を把持して前記記録メディアを搬送するチェーングリッパと、前記チェーングリッパによって搬送される前記記録メディアに対して乾燥処理を施す乾燥処理部と、を備えるインクジェット記録装置である。
【0014】
本態様によれば、画像記録部で表面に画像が記録された記録メディアは、チェーングリッパに受け渡され、先端を把持されながら所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程で乾燥処理が施される。チェーングリッパは、用紙の搬送経路の設定に自由度があり、乾燥処理部の長さを任意に設定することができる。また、用紙を平面状のガイドプレートに沿わせて搬送しながら乾燥処理を施すことができる。これにより、画像が記録された後の記録メディアを短時間で効率よく乾燥させることができ、用紙の変形を抑えて高品質な画像を記録することができる。また、その乾燥時に発生する熱で画像記録部の温度が上昇するのを抑えることができる。
【0015】
[2]第2の態様は、上記第1の態様のインクジェット記録装置において、前記画像記録部で使用する前記水性インクがUV硬化型の水性インクであり、前記チェーングリッパによって搬送される前記記録メディアに対して前記乾燥処理後にUV照射処理を施すUV照射処理部を更に備える。
【0016】
本態様によれば、画像記録部において、UV(紫外線)硬化型の水性インク(水性UVインク)を用いて画像の記録が行われる。UV硬化型のインクを使用する場合、画像の記録後にUV(紫外線)の照射処理が必要となる。本態様では、チェーングリッパによる搬送過程でUV照射処理が行われる。すなわち、本態様では、チェーングリッパによる搬送過程で乾燥処理とUV照射処理が行われる。上記のように、チェーングリッパは、用紙の搬送経路の設定に自由度があり、乾燥処理部、UV照射処理部の長さを任意に設定することができる。これにより、画像が記録された後の記録メディアを短時間で効率よく乾燥させることができ、用紙の変形を抑えて高品質な画像を記録することができる。また、その乾燥時やUV照射時に発生する熱で画像記録部の温度が上昇するのを抑えることができる。
【0017】
[3]第3の態様は、上記第1又は2の態様のインクジェット記録装置において、前記チェーングリッパよって搬送される前記記録メディアにバックテンションを付与するバックテンション付与手段が更に備えられる。
【0018】
本態様によれば、チェーングリッパによって記録メディアを搬送する際、記録メディアにバックテンションを付与することができる。これにより、記録メディアにバックテンションを付与しながら乾燥処理、UV照射処理することができ、用紙の変形を更に抑制することができる。
【0019】
[4]第4の態様は、上記第3の態様のインクジェット記録装置において、前記バックテンション付与手段は、前記チェーングリッパによる前記記録メディアの搬送経路に沿って配設され、前記チェーングリッパによって搬送される前記記録メディアの裏面が摺接されるとともに、前記記録メディアの摺接面に多数の吸引穴を有するガイドプレートと、前記ガイドプレートの前記吸引穴から空気を吸引して、前記ガイドプレートの前記摺接面上を摺接される前記記録メディアの裏面を吸引する吸引手段と、を備える。
【0020】
本態様によれば、記録メディアの搬送経路に沿ってガイドプレートが配設される。チェーングリッパによって先端を把持されながら搬送される記録メディアは、その裏面(画像が記録された面(表面)と反対側の面)が、ガイドプレートの上を摺接しながら搬送される。一方、ガイドプレートには、多数の吸引穴が形成されており、この吸引穴からは空気が吸引される。これにより、ガイドプレート上を摺接する記録メディアの裏面がガイドプレートに吸着される。これにより、チェーングリッパによって搬送される記録メディアにバックテンションが付与される。
【0021】
[5]第5の態様は、上記第1から4のいずれか1の態様のインクジェット記録装置において、前記乾燥処理部は、加熱及び/又は熱風により前記記録メディアに乾燥処理を施す乾燥処理手段と、排気手段と、を備える。
【0022】
本態様によれば、乾燥処理部が、加熱及び/又は熱風により記録メディアに乾燥処理を施す乾燥処理手段と、排気手段とを備えて構成される。チェーングリッパによって搬送される記録メディアは、加熱及び/又は熱風により乾燥処理が施される。また、乾燥処理時に発生する湿気は、排気手段によって排気される。これにより、記録メディアを効率よく乾燥させることができる。なお、乾燥処理手段及び排気手段の設置数は必要に応じて増減させることができる。この場合、乾燥処理手段及び排気手段の設置数に応じて、乾燥処理部を搬送するためのチェーングリッパの長さを調整する。
【0023】
[6]第6の態様は、上記第5の態様のインクジェット記録装置において、前記乾燥処理部は、前記水性インクの顔料又は染料のみを加熱する熱源を用いて前記記録メディアに乾燥処理を施す。
【0024】
本態様によれば、加熱手段で記録メディアを加熱して乾燥処理する際、水性インクの顔料又は染料のみを加熱する熱源が用いられる。これにより、記録メディアを加熱することによって生じる記録メディアの変形を抑制することができる。
【0025】
[7]第7の態様は、上記第2から6のいずれか1の態様のインクジェット記録装置において、前記UV照射処理部のUV光源で発生する熱を前記乾燥処理部に排熱する排熱手段が更に備えられる。
【0026】
本態様によれば、UV照射処理部のUV光源で発生する熱が乾燥処理部に排熱されて、乾燥に供される。これにより、より効率よく用紙を乾燥させることができるとともに、省電力化を図ることができる。
【0027】
[8]第8の態様は、上記第7の態様のインクジェット記録装置において、前記UV照射処理部が、オゾンレスタイプの光源を使用する。
【0028】
本態様によれば、UV照射処理部でUV照射処理する際、オゾンレスタイプの光源が使用される。これにより、有害なオゾンの発生させることなくUV照射処理することができる。また、たとえば、UV光源で発生する熱を乾燥処理部に排熱する際、送風により排熱した場合であっても、安全に運用することができる。
【0029】
[9]第9の態様は、上記第2から8のいずれか1の態様のインクジェット記録装置において、前記乾燥処理部と前記UV照射処理部とが、前記チェーングリッパの内部に配設されることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、乾燥処理部とUV照射処理部とが、チェーングリッパの内部に配設される。これにより、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0031】
[10]第10の態様は、上記第1から9のいずれか1の態様のインクジェット記録装置において、前記画像記録部は、前記記録メディアを周面に吸着保持して搬送する搬送ドラムと、前記搬送ドラムによって搬送される前記記録メディアの表面に前記水性インクを吐出して画像を記録するインクジェットヘッドと、を備え、前記チェーングリッパは、前記搬送ドラムから前記記録メディアを受け取る。
【0032】
本態様によれば、画像記録部において、記録メディアがドラム搬送されて、画像の記録が行われる。記録メディアは、搬送ドラムの周面に吸着保持されて搬送されるので、高い平坦性をもって高速搬送することができ、高品質な画像を高速に記録することができる。また、画像が記録された記録メディアは、搬送ドラムからチェーグリッパに受け渡され、直ちに乾燥処理が施されるので、用紙の変形を抑制することができる。また、乾燥処理部と画像記録部とが分離しているため、乾燥処理部で発生する熱によって画像記録部の温度が上昇するのを抑制することができる。特に、搬送ドラムが乾燥処理部の熱を直接受けるのを防止できるので、高品質な画像を安定して記録することができる。
【0033】
[11]第11の態様は、上記第10の態様のインクジェット記録装置において、前記画像記録部は、前記インクジェットヘッドによって前記記録メディアの表面に記録された画像を読み取る画像読取手段を更に備える。
【0034】
本態様によれば、画像記録部に記録後の画像を読み取る画像読取手段が備えられる。このように、画像記録部に画像読取手段を設置し、インクジェットヘッドで記録された直後の画像を搬送ドラム上で読み取ることにより、精度よく画像を読み取ることができる。すなわち、搬送ドラムは、記録メディアを周面に吸着保持して搬送するので、高い平坦性をもって搬送することができ、用紙に変形のない状態で画像を読み取ることができる。また、画像を記録したときと同じ状態の記録メディアから画像を読み取るので、高精度に画像を読み取ることができる(他の搬送系に記録メディアを受け渡すことなく、同じ搬送ドラム上で画像を読み取るので、高精度に画像を読み取ることができる。)。さらに、画像記録直後に読み取りを行うことができるので、たとえば、読取画像から印字異常を検出する場合などには、直ちに異常を検出することができる。これにより、記録メディアの無駄な消費を防ぐことができる。
【0035】
[12]第12の態様は、上記第11の態様のインクジェット記録装置において、前記画像記録部は、前記インクジェットヘッドと前記画像読取手段との間にミストフィルタを更に備えることを特徴とする。
【0036】
本態様によれば、インクジェットヘッドと画像読取手段との間にミストフィルタが備えられる。これにより、インクジェットヘッドから発生するインクミストによって、画像読取手段による読み取り精度の低下や故障等の発生を防ぐことができる。
【0037】
[13]第13の態様は、上記第10から11のいずれか1の態様のインクジェット記録装置において、前記画像記録部が、前記搬送ドラムを冷却する冷却手段を更に備える。
【0038】
本態様によれば、画像記録部の搬送ドラムを冷却する冷却手段が備えられる。これにより、画像記録部の搬送ドラムが、乾燥処理部の熱を受けた場合であっても、その温度上昇を抑えることができる。これにより、搬送ドラムが、インクジェットヘッドよりも高温になってインクジェットヘッドに結露が誘発されるのを防止することができる。
【0039】
[14]第14の態様は、上記第1から13のいずれか1の態様のインクジェット記録装置において、前記記録メディアの表面に前記水性インク中の色材を凝集させる機能を有する処理液を付与する処理液付与部と、前記処理液が付与された前記記録メディアに乾燥処理を施す処理液乾燥処理部と、を備え、前記画像記録部は、前記処理液乾燥処理部で乾燥処理が施された前記記録メディアを受け取り、前記水性インクを用いてインクジェット方式で画像を記録することを特徴とする。
【0040】
本態様によれば、画像記録部の前段に水性インク中の色材を凝集させる機能を有する処理液を付与する処理液付与部と、その処理液が付与された記録メディアを乾燥処理する処理液乾燥処理部とが備えられる。これにより、記録メディアとして汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、高品質な画像を記録することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、描画後に効率よく乾燥処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図
【図2】インクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0044】
《装置構成》
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【0045】
このインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙(記録メディア)Pに水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置であり、主として、用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24とで構成される。
【0046】
〈給紙部〉
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成される。
【0047】
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
【0048】
記録メディアとしての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0049】
サッカー装置32は、給紙台30に積載されている用紙Pを上から順に1枚ずつ取り上げて、給紙ローラ対34に給紙する。サッカー装置32は、昇降自在かつ揺動自在に設けられたサクションフット32Aを備え、このサクションフット32Aによって用紙Pの上面を吸着保持して、用紙Pを給紙台30から給紙ローラ対34に移送する。この際、サクションフット32Aは、束の最上位に位置する用紙Pの先端側の上面を吸着保持して、用紙Pを引き上げ、引き上げた用紙Pの先端を給紙ローラ対34を構成する一対のローラ34A、34Bの間に挿入する。
【0050】
給紙ローラ対34は、互いに押圧当接された上下一対のローラ34A、34Bで構成される。上下一対のローラ34A、34Bは、一方が駆動ローラ(ローラ34A)、他方が従動ローラ(ローラ34B)とされ、駆動ローラ(ローラ34A)は、図示しないモータに駆動されて回転する。モータは、用紙Pの給紙に連動して駆動され、サッカー装置32から用紙Pが給紙されると、そのタイミングに合わせて駆動ローラ(ローラ34A)を回転させる。上下一対のローラ34A、34Bの間に挿入された用紙Pは、このローラ34A、34Bにニップされて、ローラ34A、34Bの回転方向(フィーダボード36の設置方向)に送り出される。
【0051】
フィーダボード36は、用紙幅に対応して形成され、給紙ローラ対34から送り出された用紙Pを受けて、前当て38までガイドする。このフィーダボード36は、先端側が下方に向けて傾斜して設置され、その搬送面の上に載置された用紙Pを搬送面に沿って滑らせて前当て38までガイドする。
【0052】
フィーダボード36には、用紙Pを搬送するためのテープフィーダ36Aが幅方向に間隔をおいて複数設置される。テープフィーダ36Aは、無端状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。フィーダボード36の搬送面に載置された用紙Pは、このテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を搬送される。
【0053】
また、フィーダボード36の上には、リテーナ36Bとコロ36Cとが設置される。
【0054】
リテーナ36Bは、用紙Pの搬送面に沿って前後に縦列して複数配置される(本例では2つ)。このリテーナ36Bは、用紙幅に対応した幅を有する板バネで構成され、搬送面に押圧当接されて設置される。テープフィーダ36Aによってフィーダボード36の上を搬送される用紙Pは、このリテーナ36Bを通過することにより、凹凸が矯正される。なお、リテーナ36Bは、フィーダボード36との間に用紙Pを導入しやすくするため、後端部がカールして形成される。
【0055】
コロ36Cは、前後のリテーナ36Bの間に配設される。このコロ36Cは、用紙Pの搬送面に押圧当接されて設置される。前後のリテーナ36Bの間を搬送される用紙Pは、このコロ36Cによって上面が抑えられながら搬送される。
【0056】
前当て38は、用紙Pの姿勢を矯正する。この前当て38は、板状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。また、図示しないモータに駆動されて、揺動可能に設けられる。フィーダボード36の上を搬送された用紙Pは、その先端が前当て38に当接されて、姿勢が矯正される(いわゆる、スキュー防止)。前当て38は、給紙ドラム40への用紙の給紙に連動して揺動し、姿勢を矯正した用紙Pを給紙ドラム40に受け渡す。
【0057】
給紙ドラム40は、前当て38を介してフィーダボード36から給紙される用紙Pを受け取り、処理液付与部14へと搬送する。給紙ドラム40は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。給紙ドラム40の外周面上には、グリッパ40Aが備えられ、このグリッパ40Aによって用紙Pの先端が把持される。給紙ドラム40は、グリッパ40Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液付与部14へと用紙Pを搬送する。
【0058】
給紙部12は、以上のように構成される。給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
【0059】
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成される。
【0060】
処理液付与ドラム42は、給紙部12の給紙ドラム40から用紙Pを受け取り、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する。処理液付与ドラム42は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液付与ドラム42の外周面上には、グリッパ42Aが備えられ、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液付与ドラム42は、このグリッパ42Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、処理液乾燥処理部16へと用紙Pを搬送する(1回転で1枚の用紙Pを搬送する。)。処理液付与ドラム42と給紙ドラム40は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0061】
処理液付与ユニット44は、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液をローラ塗布する。この処理液付与ユニット44は、主として、用紙Pに処理液を塗布する塗布ローラ44Aと、処理液が貯留される処理液槽44Bと、処理液槽44Bに貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラ44Aに供給する汲み上げローラ44Cとで構成される。汲み上げローラ44Cは、塗布ローラ44Aに押圧当接して設置されるとともに、一部を処理液槽44Bに貯留された処理液に浸漬させて設置される。この汲み上げローラ44Cは、処理液を計量して汲み上げ、塗布ローラ44Aの周面に一定の厚さで処理液を付与する。塗布ローラ44Aは、用紙幅に対応して設けられ、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。塗布ローラ44Aは、図示しない当接離間機構に駆動されて、処理液付与ドラム42の周面に当接する当接位置と、処理液付与ドラム42の周面から離間する離間位置との間を移動する。当接離間機構は、用紙Pの通過タイミングに合わせて、塗布ローラ44Aを移動させ、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの表面に処理液を塗布する。
【0062】
なお、本例では、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
【0063】
処理液付与部14は、以上のように構成される。給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
【0064】
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0065】
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成される。
【0066】
処理液乾燥処理ドラム46は、処理液付与部14の処理液付与ドラム42から用紙Pを受け取り、画像記録部18へと用紙Pを搬送する。処理液乾燥処理ドラム46は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液乾燥処理ドラム46の外周面上には、グリッパ46Aが備えられ、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端が把持される。処理液乾燥処理ドラム46は、このグリッパ46Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、画像記録部18と用紙Pを搬送する。なお、本例の処理液乾燥処理ドラム46は、外周面上の2カ所にグリッパ42Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。処理液乾燥処理ドラム46と処理液付与ドラム42は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0067】
用紙搬送ガイド48は、処理液乾燥処理ドラム46による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
【0068】
処理液乾燥処理ユニット50は、処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。本例では、2台の処理液乾燥処理ユニット50が、処理液乾燥処理ドラム内に配設され、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの表面に向けて熱風を吹き当てる構成とされている。
【0069】
処理液乾燥処理部16は、以上のように構成される。処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
【0070】
〈画像記録部〉
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成される。
【0071】
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平坦性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0072】
なお、この吸引穴からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間で作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される(たとえば、インク乾燥処理部20に用紙を受け渡す位置に設定される。)。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように設定される。
【0073】
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
【0074】
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0075】
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
【0076】
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
【0077】
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
【0078】
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
【0079】
なお、インラインセンサ58の下流側には、インラインセンサ58に近接して接触防止板59が設置される。この接触防止板59は、搬送の不具合等によって用紙Pに浮きが生じた場合に、用紙Pがインラインセンサ58に接触するのを防止する。
【0080】
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
【0081】
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアコン(図示せず)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成される。ダクト62Aは、画像記録ドラム52に対して、用紙Pの搬送領域以外の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。本例では、画像記録ドラム52のほぼ上側半分の円弧面に沿って用紙Pが搬送されるので、ダクト62Aは、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する構成とされている。具体的には、ダクト62Aの吹出口が、画像記録ドラム52のほぼ下側半分を覆うように円弧状に形成され、画像記録ドラム52のほぼ下側半分の領域に冷気が吹き当てられる構成とされている。
【0082】
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
【0083】
画像記録部18は、以上のように構成される。処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
【0084】
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。
【0085】
この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
【0086】
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、画像が記録された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット68とで構成される。
【0087】
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
【0088】
このチェーングリッパ64は、主として、画像記録ドラム52に近接して設置される第1スプロケット64Aと、排紙部24に設置される第2スプロケット64Bと、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる無端状のチェーン64Cと、チェーン64Cの走行をガイドする複数のチェーンガイド(図示せず)と、チェーン64Cに一定の間隔をもって取り付けられる複数のグリッパ64Dとで構成される。第1スプロケット64Aと、第2スプロケット64Bと、チェーン64Cと、チェーンガイドとは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの幅方向の両側に配設される。グリッパ64Dは、一対で設けられるチェーン64Cに掛け渡されて設置される。
【0089】
第1スプロケット64Aは、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pをグリッパ64Dで受け取ることができるように、画像記録ドラム52に近接して設置される。この第1スプロケット64Aは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられるとともに、図示しないモータが連結される。第1スプロケット64A及び第2スプロケット64Bに巻き掛けられるチェーン64Cは、このモータを駆動することにより走行する。
【0090】
第2スプロケット64Bは、画像記録ドラム52から受け取った用紙Pを排紙部24で回収できるように、排紙部24に設置される。すなわち、この第2スプロケット64Bの設置位置が、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路の終端とされる。この第2スプロケット64Bは、図示しない軸受に軸支されて、回転自在に設けられる。
【0091】
チェーン64Cは、無端状に形成され、第1スプロケット64Aと第2スプロケット64Bとに巻き掛けられる。
【0092】
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする(=用紙Pが所定の搬送経路を走行して搬送されるようにガイドする。)。本例のインクジェット記録装置10では、第2スプロケット64Bが第1スプロケット64Aよりも高い位置に配設される。このため、チェーン64Cが、途中で傾斜するような走行経路が形成される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとで構成される。
【0093】
第1水平搬送経路70Aは、第1スプロケット64Aと同じ高さに設定され、第1スプロケット64Aに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0094】
第2水平搬送経路70Cは、第2スプロケット64Bと同じ高さに設定され、第2スプロケット64Bに巻き掛けられたチェーン64Cが、水平に走行するように設定される。
【0095】
傾斜搬送経路70Bは、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間に設定され、第1水平搬送経路70Aと第2水平搬送経路70Cとの間を結ぶように設定される。
【0096】
チェーンガイドは、この第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとを形成するように配設される。具体的には、少なくとも第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとの接合ポイント、及び、傾斜搬送経路70Bと第2水平搬送経路70Cとの接合ポイントに配設される。
【0097】
グリッパ64Dは、チェーン64Cに一定の間隔をもって複数取り付けられる。このグリッパ64Dの取り付け間隔は、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。すなわち、画像記録ドラム52から順次受け渡される用紙Pをタイミングを合わせて画像記録ドラム52から受け取ることができるように、画像記録ドラム52からの用紙Pの受け取り間隔に合わせて設定される。
【0098】
チェーングリッパ64は、以上のように構成される。上記のように、第1スプロケット64Aに接続されたモータ(図示せず)を駆動すると、チェーン64Cが走行する。チェーン64Cは、画像記録ドラム52の周速度と同じ速度で走行する。また、画像記録ドラム52から受け渡される用紙Pが、各グリッパ64Dで受け取れるようにタイミングが合わせられる。
【0099】
バックテンション付与機構66は、チェーングリッパ64によって先端を把持されながら搬送される用紙Pにバックテンションを付与する。このバックテンション付与機構66は、主として、ガイドプレート72と、そのガイドプレート72に形成される吸引穴(図示せず)から空気を吸引する吸引機構(図示せず)とで構成される。
【0100】
ガイドプレート72は、用紙幅に対応した幅を有する中空状のボックスプレートで構成される。このガイドプレート72は、チェーングリッパ64による用紙Pの搬送経路(=チェーンの走行経路)に沿って配設される。具体的には、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設され、チェーン64Cから所定距離離間して配設される。チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pは、その裏面(画像が記録されていない側の面)が、このガイドプレート72の上面(チェーン64Cと対向する面:摺接面)の上を摺接しながら搬送される。
【0101】
ガイドプレート72の摺接面(上面)には、多数の吸引穴(図示せず)が所定のパターンで多数形成される。上記のように、ガイドプレート72は、中空のボックスプレートで形成される。吸引機構(図示せず)は、このガイドプレート72の中空部(内部)を吸引する。これにより、摺接面に形成された吸引穴から空気が吸引される。
【0102】
ガイドプレート72の吸引穴から空気が吸引されることにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pの裏面が吸引穴に吸引される。これにより、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションが付与される。
【0103】
上記のように、ガイドプレート72は、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを走行するチェーン64Cに沿って配設されるので、第1水平搬送経路70Aと傾斜搬送経路70Bとを搬送されている間、バックテンションが付与される。
【0104】
インク乾燥処理ユニット68は、チェーングリッパ64の内部(特に第1水平搬送経路70Aを構成する部位)に設置され、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施す。このインク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aを搬送される用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する。インク乾燥処理ユニット68は、第1水平搬送経路70Aに沿って複数台配置される。この設置数は、インク乾燥処理ユニット68の処理能力や用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、画像記録部18から受け取った用紙Pが第1水平搬送経路70Aを搬送されている間に乾燥させることができるように設定される。したがって、第1水平搬送経路70Aの長さも、このインク乾燥処理ユニット68の能力を考慮して設定される。
【0105】
なお、乾燥処理を行うことにより、インク乾燥処理部20の湿度が上がる。湿度が上がると、効率よく乾燥処理することができなくなるので、インク乾燥処理部20には、インク乾燥処理ユニット68と共に排気手段を設置し、乾燥処理によって発生する湿り空気を強制的に排気することが好ましい。排気手段は、たとえば、排気ダクトをインク乾燥処理部20に設置し、この排気ダクトによってインク乾燥処理部20の空気を排気する構成とすることができる。
【0106】
インク乾燥処理部20は、以上のように構成される。画像記録部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ64Dで把持して、平面状のガイドプレート72に沿わせて用紙Pを搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。この第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたインク乾燥処理ユニット68によって乾燥処理が施される。すなわち、表面(画像記録面)に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理することができる。
【0107】
〈UV照射処理部〉
UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、主として、乾燥処理された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線を照射するUV照射ユニット74とで構成される。
【0108】
上記のように、チェーングリッパ64とバックテンション付与機構66は、インク乾燥処理部20及び排紙部24と共に共通して使用される。
【0109】
UV照射ユニット74は、チェーングリッパ64の内部(特に傾斜搬送経路70Bを構成する部位)に設置され、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に紫外線を照射する。このUV照射ユニット74は、紫外線ランプ(UVランプ)を備え、傾斜搬送経路70Bに沿って複数配設される。そして、傾斜搬送経路70Bを搬送される用紙Pの表面に向けて紫外線を照射する。このUV照射ユニット74の設置数は、用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて設定される。すなわち、用紙Pが傾斜搬送経路70Bを搬送されている間に照射した紫外線によって画像を定着させることができるように設定される。したがって、傾斜搬送経路70Bの長さも、この用紙Pの搬送速度等を考慮して設定される。
【0110】
UV照射処理部22は、以上のように構成される。チェーングリッパ64に搬送されてインク乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、次いで、傾斜搬送経路70Bを搬送される。この傾斜搬送経路70Bを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。すなわち、UV照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながらUV照射処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながらUV照射処理を施すことができる。また、UV照射処理部22は、傾斜搬送経路70Bに設置されており、傾斜搬送経路70Bには傾斜したガイドプレート72が設置されているため、たとえ、用紙Pが搬送途中でグリッパ64Dから落下した場合であっても、ガイドプレート72上を滑らせて排出させることができる。
【0111】
〈排紙部〉
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成される。
【0112】
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
【0113】
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
【0114】
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
【0115】
《制御系》
図2は、本実施の形態のインクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0116】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液付与制御部114、処理液乾燥制御部116、画像記録制御部118、インク乾燥制御部120、UV照射制御部122、排紙制御部124、操作部130、表示部132等が備えられる。
【0117】
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ100が、実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0118】
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0119】
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ104に格納される。
【0120】
搬送制御部110は、インクジェット記録装置10における用紙Pの搬送系を制御する。すなわち、給紙部12におけるテープフィーダ36A、前当て38、給紙ドラム40の駆動を制御するとともに、処理液付与部14における処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像記録部18における画像記録ドラム52の駆動を制御する。また、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22及び排紙部24で共通して用いられるチェーングリッパ64及びバックテンション付与機構66の駆動を制御する。
【0121】
搬送制御部110は、システムコントローラ100からの指令に応じて、搬送系を制御し、給紙部12から排紙部24まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
【0122】
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて給紙部12を制御する。具体的には、サッカー装置32及び給紙台昇降機構等の駆動を制御して、給紙台30に積載された用紙Pが、重なることなく1枚ずつ順に給紙されるように制御する。
【0123】
処理液付与制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液付与部14を制御する。具体的には、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pに処理液が塗布されるように、処理液付与ユニット44の駆動を制御する。
【0124】
処理液乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液乾燥処理部16を制御する。具体的には、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pが乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット50の駆動を制御する。
【0125】
画像記録制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて画像記録部18を制御する。具体的には、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御する。また、記録された画像が読み取られるように、インラインセンサ58の動作を制御する。
【0126】
インク乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じてインク乾燥処理部20を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるようにインク乾燥処理ユニット68の駆動を制御する。
【0127】
UV照射制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じてUV照射処理部22を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線が照射されるようにUV照射ユニット74の駆動を制御する。
【0128】
排紙制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて排紙部24を制御する。具体的には、排紙台昇降機構等の駆動を制御して、排紙台76に用紙Pがスタックされるように制御する。
【0129】
操作部130は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ100に出力する。システムコントローラ100は、この操作部130から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0130】
表示部132は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0131】
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部102を介してインクジェット記録装置10に取り込まれる。取り込まれた画像データは、画像メモリ104に格納される。
【0132】
システムコントローラ100は、この画像メモリ104に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。そして、生成したドットデータに従って画像記録部18の各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御し、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0133】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
【0134】
システムコントローラ100は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0135】
《作用》
以上のように構成される本実施の形態のインクジェット記録装置10の作用は、次のとおりである。
【0136】
操作部130を介してシステムコントローラ100に印刷ジョブの開始が指示されると、サイクルアップの処理が行われる。すなわち、安定した動作を行うことができるように、各部で準備動作が行われる。
【0137】
サイクルアップが完了すると、印刷処理が開始される。すなわち、給紙部12から用紙Pが順次給紙される。
【0138】
給紙部12では、給紙台30に積載された用紙Pを上から順に1枚ずつサッカー装置32で給紙する。サッカー装置32から給紙された用紙Pは、給紙ローラ対34を介して1枚ずつフィーダボード36の上に載置される。
【0139】
フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36に備えられたテープフィーダ36Aによって送りが与えられて、フィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。この際、順次給紙される用紙Pは、互いに重なることなく1枚ずつフィーダボード36の上を滑りながら給紙ドラム40へと搬送される。また、その搬送過程でリテーナ36Bによって上面がフィーダボード36に向けて押し付けられる。これにより、凹凸が矯正される。
【0140】
フィーダボード36の終端まで搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接された後、給紙ドラム40に受け渡される。これにより、傾きを発生させることなく、一定の姿勢で用紙Pを給紙ドラム40に給紙することができる。
【0141】
給紙ドラム40は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持することにより用紙Pを受け取り、用紙Pを処理液付与部14に向けて搬送する。
【0142】
処理液付与部14に搬送された用紙Pは、給紙ドラム40から処理液付与ドラム42へと受け渡される。
【0143】
処理液付与ドラム42は、回転しながら用紙Pの先端をグリッパ40Aで把持して受け取り、用紙Pを処理液乾燥処理部16に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液付与ドラム42によって搬送される過程で表面に塗布ローラ44Aが押圧当接され、表面に処理液が付与(塗布)される。
【0144】
表面に処理液が付与された用紙Pは、処理液付与ドラム42から処理液乾燥処理ドラム46に受け渡される。
【0145】
処理液乾燥処理ドラム46は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pを画像記録部18に向けて搬送する。用紙Pは、この処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ユニット50から送風される熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。これにより、処理液中の溶媒成分が除去され、用紙Pの表面(画像記録面)にインク凝集層が形成される。
【0146】
処理液の乾燥処理が施された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52に受け渡される。
【0147】
画像記録ドラム52は、回転しながら用紙Pの先端を把持して受け取り、用紙Pをインク乾燥処理部20に向けて搬送する。用紙Pは、この画像記録ドラム52によって搬送される過程でインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって表面にC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が打滴され、画像が記録される。また、その搬送過程で記録された画像が、インラインセンサ58によって読み取られる。この際、用紙Pは、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。そして、この吸着保持された状態で画像の記録、及び、記録された画像の読み取りが行われる。これにより、高精度に画像を記録することができるとともに、高精度に画像の読み取りを行うことができる。
【0148】
画像が記録された用紙Pは、画像記録ドラム52からチェーングリッパ64に受け渡される。
【0149】
チェーングリッパ64は、走行するチェーン64Cに備えられたグリッパ64Dで用紙Pの先端を把持して、用紙Pを受け取り、排紙部24に向けて搬送する。
【0150】
用紙Pは、このチェーングリッパ64による搬送過程で、まず、インクの乾燥処理が施される。すなわち、第1水平搬送経路70Aに設置されたインク乾燥処理ユニット68から表面に向けて熱風が吹き当てられる。これにより、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、ガイドプレート72によって裏面を吸着保持されながら搬送され、バックテンションが付与される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、乾燥処理することができる。
【0151】
乾燥処理が終了した用紙P(インク乾燥処理部20を通過した用紙P)は、次いで、UV照射処理が施される。すなわち、傾斜搬送経路70Bに設置されたUV照射ユニット74から表面に向けて紫外線が照射される。これにより、画像を構成するインクが硬化し、画像が用紙Pに定着する。この際、用紙Pは、ガイドプレート72によって裏面を吸着保持されながら搬送され、バックテンションが付与される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら、定着処理することができる。
【0152】
UV照射処理が終了した用紙P(UV照射処理部22を通過した用紙P)は、排紙部24に向けて搬送され、排紙部24においてグリッパ64Dから開放されて、排紙台76の上にスタックされる。
【0153】
以上一連の動作により画像の記録処理が完了する。上記のように、給紙部12から用紙Pが連続的に給紙されるので、各部では、この連続的に給紙される用紙Pを連続的に処理して、画像の記録処理が行われる。
【0154】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェット記録装置10によれば、画像が記録された用紙Pを画像記録部18からチェーングリッパ64で受け取り、そのチェーングリッパ64による搬送過程でインクの乾燥処理、UV照射処理が行われる。チェーングリッパ64は、用紙の搬送経路の設定に自由度があり、インク乾燥処理ユニット68及びUV照射ユニット74を高密度に配置することができる。これにより、画像が記録された後の用紙Pを短時間で効率よく乾燥処理でき、インクが用紙Pに浸透する前に乾燥させることができる。これにより、用紙Pの変形を抑えることができる。同様に、UV照射処理時も短時間で効率よく処理することができる。
【0155】
また、画像記録用の搬送手段(本例では画像記録ドラム52)とは別の搬送手段(本例ではチェーングリッパ64)で乾燥処理、UV照射処理を行うので、乾燥処理時やUV照射処理時に発生する熱で画像記録用の搬送手段の温度が上昇するのを抑えることができる。これにより、インクジェットヘッドに結露が生じたり、ノズルの乾燥が促進されたりするのを有効に防止することができる。
【0156】
また、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、乾燥処理及びUV照射処理を行うに際して、用紙Pにバックテンションを付与しながら行う構成としているので、用紙Pの変形を抑えて乾燥処理及びUV照射処理することができる。
【0157】
さらに、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、画像記録部18にインラインセンサ58を設置し、画像記録直後に記録画像の読み取りを行う構成としているので、画像の記録結果に基づく吐出不良等の検出を迅速に行うことができる。これにより、吐出不良等が検出された場合の対応を迅速に行うことができ、損紙の発生を効果的に抑制することができる。
【0158】
また、画像記録ドラム52に保持された状態(画像記録時と同じ状態)で画像を読み取る構成としているので、高精度に画像の読み取りを行うことができる。すなわち、画像記録ドラム52から用紙Pを取り外した後に画像の読み取りを行うと、用紙の状態が変化し、高精度に画像の読み取りを行うことができなくなるおそれがあるが、画像記録ドラム52に保持した状態で画像の読み取りを行うことにより、用紙Pの状態を変化させずに、画像を読み取ることができ、高精度に画像の読み取りを行うことができる。特に、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持して搬送するので、高精度に画像の読み取りを行うことができる。
【0159】
《その他の実施の形態》
上記実施の形態では、インク乾燥処理部20において、用紙Pの表面に熱風を吹き当てて乾燥処理する構成としているが、いわゆるヒータ(たとえば、赤外線ヒータ)からの輻射で用紙Pを加熱して乾燥処理する構成とすることもできる。また、この加熱による乾燥処理と、熱風による乾燥とを併用することもできる。
【0160】
なお、加熱に用いる熱源として、水性UVインクの顔料又は染料のみを加熱する熱源を用いることにより、用紙Pを加熱することによって生じる用紙Pの変形を抑えることができる。たとえば、NIRランプ(近赤外線ランプ)やIR−LEDを熱源として用いることができる。
【0161】
また、UV照射処理部22のUV照射ユニット74に使用するUVランプは、水銀ランプ、メタルハイドライドランプ、LED等を用いることができるが、オゾンレスタイプのものを使用することが好ましい。これにより、有害なオゾンの発生を防ぐことができる。
【0162】
また、オゾンレスタイプのUVランプを使用した場合には、そのUVランプで発生する熱をインク乾燥処理部20に排熱し、乾燥処理に供させることが好ましい。これにより、消費電力を抑えて、効率よく乾燥処理を行うことができる。この場合、たとえば、UV照射処理部22で発生する熱をダクトを介してインク乾燥処理部20に送風する構成(たとえば、ファンで送風)とすることができる。
【符号の説明】
【0163】
10…インクジェット記録装置、12…給紙部、14…処理液付与部、16…処理液乾燥処理部、18…画像記録部、20…インク乾燥処理部、22…UV照射処理部、24…排紙部、30…給紙台、32…サッカー装置、32A…サクションフット、34…給紙ローラ、34A、34B…ローラ、36…フィーダボード、36A…テープフィーダ、36B…リテーナ、36C…コロ、38…前当て、40…給紙ドラム、40A…グリッパ、42…処理液付与ドラム、42A…グリッパ、44…処理液付与ユニット、44A…塗布ローラ、44B…処理液槽、44C…汲み上げローラ、46…処理液乾燥処理ドラム、46A…グリッパ、48…用紙搬送ガイド、50…処理液乾燥処理ユニット、52…画像記録ドラム、52A…グリッパ、54…用紙押さえローラ、56C、56M、56Y、56K…インクジェットヘッド、58…インラインセンサ、59…接触防止板、60…ミストフィルタ、62…ドラム冷却ユニット、62A…ダクト、64…チェーングリッパ、64A…第1スプロケット、64B…第2スプロケット、64C…チェーン、64D…グリッパ、66…バックテンション付与機構、68…インク乾燥処理ユニット、70A…第1水平搬送経路、70B…傾斜搬送経路、70C…第2水平搬送経路、72…ガイドプレート、74…UV照射ユニット、76…排紙台、100…システムコントローラ、102…通信部、104…画像メモリ、110…搬送制御部、112…給紙制御部、114…処理液付与制御部、116…処理液乾燥制御部、118…画像記録制御部、120…インク乾燥制御部、122…UV照射制御部、124…排紙制御部、130…操作部、132…表示部、P…用紙(記録メディア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉の記録メディアの表面に水性インクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部と、
表面に画像が記録された前記記録メディアを前記画像記録部から受け取り、先端を把持して前記記録メディアを搬送するチェーングリッパと、
前記チェーングリッパによって搬送される前記記録メディアに対して乾燥処理を施す乾燥処理部と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記画像記録部で使用する前記水性インクがUV硬化型の水性インクであり、前記チェーングリッパによって搬送される前記記録メディアに対して前記乾燥処理後にUV照射処理を施すUV照射処理部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記チェーングリッパよって搬送される前記記録メディアにバックテンションを付与するバックテンション付与手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記バックテンション付与手段は、
前記チェーングリッパによる前記記録メディアの搬送経路に沿って配設され、前記チェーングリッパによって搬送される前記記録メディアの裏面が摺接されるとともに、前記記録メディアの摺接面に多数の吸引穴を有するガイドプレートと、
前記ガイドプレートの前記吸引穴から空気を吸引して、前記ガイドプレートの前記摺接面上を摺接される前記記録メディアの裏面を吸引する吸引手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記乾燥処理部は、
加熱及び/又は熱風により前記記録メディアに乾燥処理を施す乾燥処理手段と、
排気手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記乾燥処理部は、前記水性インクの顔料又は染料のみを加熱する熱源を用いて前記記録メディアに乾燥処理を施すことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記UV照射処理部のUV光源で発生する熱を前記乾燥処理部に排熱する排熱手段を更に備えることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記UV照射処理部は、オゾンレスタイプの光源を使用することを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記乾燥処理部と前記UV照射処理部とが、前記チェーングリッパの内部に配設されることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記画像記録部は、
前記記録メディアを周面に吸着保持して搬送する搬送ドラムと、
前記搬送ドラムによって搬送される前記記録メディアの表面に前記水性インクを吐出して画像を記録するインクジェットヘッドと、
を備え、前記チェーングリッパは、前記搬送ドラムから前記記録メディアを受け取ることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記画像記録部は、前記インクジェットヘッドによって前記記録メディアの表面に記録された画像を読み取る画像読取手段を更に備えることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記画像記録部は、前記インクジェットヘッドと前記画像読取手段との間にミストフィルタを更に備えることを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記画像記録部は、前記搬送ドラムを冷却する冷却手段を更に備えることを特徴とする請求項10から11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記記録メディアの表面に前記水性インク中の色材を凝集させる機能を有する処理液を付与する処理液付与部と、
前記処理液が付与された前記記録メディアに乾燥処理を施す処理液乾燥処理部と、
を備え、前記画像記録部は、前記処理液乾燥処理部で乾燥処理が施された前記記録メディアを受け取り、前記水性インクを用いてインクジェット方式で画像を記録することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−28140(P2013−28140A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167276(P2011−167276)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】