説明

インクジェット記録装置

【課題】記録の際に、記録媒体の端部での記録によって、記録ヘッドと記録媒体との間の距離の変化することが抑えられたインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、記録ヘッドに形成された吐出口列を形成する複数の吐出口が、吐出口の形成された位置によって前記吐出口列の配列された配列方向に沿って二つに分割されて、第1の記録ヘッドと第2の記録ヘッドとを有している。そして、第1の記録ヘッドと第2の記録ヘッドのうち、記録媒体の前記搬送方向の端部への記録が行われる際に、先に使用される第1の記録ヘッドからのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量を小さくする。そして、後に使用される第2の記録ヘッドからのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、特に記録媒体の端部での記録によって記録媒体が変形し、記録ヘッドと記録媒体との距離の変化することが抑えられるように記録制御の行われるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、記録ヘッドからインク滴が記録媒体に吐出されることで記録が行われる。このとき、記録媒体のインクが吐出された部分では、繊維層にインクが浸透することで繊維層が膨張する。このため、記録媒体が湾曲したり、また波打つように変形したりする場合がある。これにより、記録ヘッドにおける吐出口の形成されている面と記録媒体の記録面との間の距離が一定でなくなる場合がある。この記録媒体の変形が大きくなると、記録ヘッドと記録媒体とが接触するおそれがある。特に、インクジェット記録装置では、複数の記録ヘッドを搬送方向に繋ぎ合わせる等して記録ヘッドを長尺化させることがある。記録ヘッドが長尺化されたインクジェット記録装置では、一回の記録ヘッドの走査による記録可能な領域が長くなる。そのため、記録の行われる際の記録データによっては、記録媒体へのインクの打ち込み量が大きくなり、記録媒体へのインクの浸透量が増加する等して、記録媒体の変形が大きくなる場合がある。これによって、記録媒体と記録ヘッドとが接触する可能性が高まる。
【0003】
記録ヘッドと記録媒体との間の接触を回避するために、例えば特許文献1には、記録媒体の搬送方向の下流側の記録ヘッドを、上流側の記録ヘッドよりも記録媒体から離間した位置に配置したインクジェット記録装置が提案されている。このように記録ヘッドが配置されることで、上流側の記録ヘッドからのインクが記録媒体に打ち込まれることによって記録媒体が変形しても、記録媒体が記録ヘッドに接触することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−195060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたインクジェット記録装置では、上流側の記録ヘッドと下流側の記録ヘッドとで、記録ヘッドと記録媒体との間の距離(紙間距離)が異なる。従って、上流側の記録ヘッドと、下流側の記録ヘッドとの間で、インク滴の着弾精度に差が生じる。記録ヘッドの一部の吐出口からのインク吐出のみインク滴の着弾精度が低下すると、記録画像にムラや筋等が発生し、画像品位が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、記録の際に、記録媒体の端部での記録によって、記録ヘッドと記録媒体との間の距離の変化することが抑えられたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インクを吐出する吐出口が配列されて吐出口列の形成された記録ヘッドを有し、記録媒体を搬送させながら、前記記録ヘッドが記録媒体の搬送される搬送方向に交差する主走査方向へ走査を行いつつ、記録媒体にインクを吐出して記録を行い、前記記録ヘッドは所定の記録領域に対して複数回走査を行うことで記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドに形成された吐出口列を形成する複数の吐出口が、吐出口の形成された位置によって前記吐出口列の配列された配列方向に沿って二つの吐出口群に分割され、前記二つの吐出口群のうち、記録媒体の前記搬送方向の端部への記録が行われる際に、先に使用される第1の吐出口群からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量が、後に使用される第2の吐出口群からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量よりも小さくなるように、記録を制御する第1の制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録媒体の端部への記録の際に、記録媒体の変形によって記録ヘッドと記録媒体との間の距離が変化することを抑えることができるので、記録画像の品質が低下することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の要部の構成について模式的に示した平面図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置における記録ヘッドの周辺部について模式的に示した断面図である。
【図3】図2の記録ヘッドを記録媒体側から見て模式的に示した平面図である。
【図4】図1のインクジェット記録装置における制御系の構成について示したブロック図である。
【図5】図1のインクジェット記録装置によって記録媒体の端部に記録を行う際の記録制御のフローについて示したフローチャートである。
【図6】図3の記録ヘッドにおいて記録媒体の端部への記録の際に用いられる吐出口の領域について説明するための説明図である。
【図7】図1のインクジェット記録装置によって記録媒体の端部への記録が行われる際に、それぞれの記録ヘッドの領域によるパスごとの記録率について説明するための説明図である。
【図8】図1のインクジェット記録装置によって記録媒体の先端部への記録が行われる際の、それぞれのパスごとに使用される記録ヘッドの領域と記録媒体との間の位置関係について説明するための説明図である。
【図9】図1のインクジェット記録装置によって記録媒体の後端部への記録が行われる際の、それぞれのパスごとに使用される記録ヘッドの領域と記録媒体との間の位置関係について説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置によって記録媒体の端部に記録を行う際の記録制御のフローについて示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100の主要部について模式的に示した平面図である。図2は、同様に、第1実施形態に係るインクジェット記録装置100の記録ヘッド3、10の周辺部について模式的に示した断面図である。インクジェット記録装置100は、記録ヘッド3、10から記録媒体へインクを吐出することで記録を行う。
【0012】
搬送ユニット1は、回転駆動される搬送ローラ11と、搬送ローラ11に従動して回転する従動ローラ12とを有している。記録媒体が搬送ローラ11と従動ローラ12との間に挟まれた状態で搬送ローラ11が回転駆動されることによって、記録媒体が搬送方向に沿って搬送される。搬送ローラ11は、搬送モータ102によって駆動されている。
【0013】
インクジェット記録装置100には、記録媒体としてのロール紙4が装着されている。ロール紙への記録ヘッドによる画像の記録が行われると、インクジェット記録装置100はそこでロール紙の切断を行うことができる。従って、ロール紙の切断のタイミングを調節することで、記録媒体の長さを所望の長さとすることができる。
【0014】
記録ヘッド3、10は、キャリッジ2に搭載され、キャリッジ2が移動することで記録ヘッド3、10が走査を行う。本実施形態では、キャリッジ2内で、二つの記録ヘッド3、10が、記録媒体の搬送方向に並べられている。第1の記録ヘッド(第1の吐出口群)3には、インクを吐出する吐出口が配列されて吐出口列が形成されている。また、第2の記録ヘッド(第2の吐出口群)10には、第1の記録ヘッド3に形成された吐出口列が配列された配列方向と同じ方向に吐出口が配列されて、吐出口列が形成されている。記録媒体を搬送させながら、第1の記録ヘッド3及び第2の記録ヘッド10が、記録媒体の搬送される搬送方向に交差する主走査方向に走査を行いつつ、記録媒体にインクを吐出して記録が行われる。また、本実施形態では、第1の記録ヘッド3及び第2の記録ヘッド10は、所定の記録領域に対して複数回走査を行うことで記録が行われる。すなわち、本実施形態のインクジェット記録装置は、マルチパス形式のインクジェット記録装置である。本実施形態では、記録ヘッド3、10に形成された吐出口列を形成する複数の吐出口は、吐出口列の配列された配列方向に沿って、二つの吐出口群に分割されている。これら二つの吐出口群のそれぞれが記録ヘッドとして機能し、第1の記録ヘッド3及び第2の記録ヘッド10としてインクを吐出して記録媒体に記録を行う。本実施形態では、記録ヘッド3、10は、所定の記録領域に対してそれぞれ走査を行うことで記録を行う。二つの記録ヘッド3、10における吐出口列は、主走査方向にずれた状態で記録媒体の搬送方向に接続されている。二つの記録ヘッド3、10が隣接する繋ぎ部の吐出口同士のピッチは、それぞれの記録ヘッド3、10におけるピッチと同じ長さとなるように、二つの記録ヘッド3、10のそれぞれの吐出口列が配列されている。
【0015】
本実施形態では、第1の記録ヘッド3及び第2の記録ヘッド10がそれぞれ同じ個数の吐出口を有するように、それぞれの記録ヘッド3、10が形成されている。従って、それぞれの記録ヘッド3、10に、吐出口列を形成する吐出口が、吐出口列の配列方向に沿って2等分されている。本実施形態では、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10は、吐出口の数、配列、ピッチの長さ等、同一の特性を有する記録ヘッドである。
【0016】
本実施形態では、キャリッジ2には、記録媒体の搬送方向の上流側に第1の記録ヘッド3が搭載され、下流側に第2の記録ヘッド10が搭載されている。キャリッジ2は、X方向に沿って配置されたガイド軸5に沿って移動可能に支持されている。また、キャリッジ2には、ガイド軸5と略平行に移動する無端ベルト6が取り付けられている。キャリッジが主走査方向への移動を行う際には、無端ベルト6がキャリッジモータの駆動力により往復移動を行い、無端ベルトの移動に伴ってキャリッジ2が往復移動を行う。
【0017】
インクジェット記録装置100における記録領域に対応する位置には、記録媒体Sを支持するためのプラテン7が、記録ヘッドのインク吐出面と対向するように設けられている。プラテン7の下方(Z方向)には、記録媒体Sをプラテン7に吸着させるための吸引装置としての、ファン8及びファン8を駆動させるためのファンモータが取り付けられている。
【0018】
図3は、キャリッジに搭載された状態の記録ヘッドにおける吐出口の形成された吐出面について、記録媒体の方から見た平面図である。第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10は、X方向及び、Y方向へそれぞれ所定量ずらしてキャリッジ2に搭載されている。第1の記録ヘッド3及び第2の記録ヘッド10のそれぞれには、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する吐出口列9K、9C、9M、9Yが備えられている。それぞれの記録ヘッドに形成された吐出口は、Y方向に一定のピッチPを有して整列されるように配置されている。Y方向における吐出口のピッチは、1200dpi(ドット/インチ)で、各吐出口列には、1280個の吐出口が配列されている。また、前述したように、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10のY方向の繋ぎ部における吐出口ピッチP´は、各吐出口列における吐出口の間のピッチPと同一ピッチ(P=P´)である。
【0019】
本実施形態のインクジェット記録装置100では、記録ヘッド3、10におけるインク流路内のそれぞれには、発熱素子(電気熱変換体)が備えられている。発熱素子を選択的に通電して、その発熱素子から熱エネルギーを発生させることにより、インク流路内のインクが加熱されて膜沸騰により発泡し、そのときの発泡エネルギーによって吐出口からインク滴が吐出される。本実施形態におけるインクジェット記録装置100は、記録媒体の搬送方向に交差する方向へ記録ヘッド3、10が走査しながら記録を行うシリアルスキャン形式のインクジェット記録装置である。本実施形態のインクジェット記録装置100は、搬送ユニット1によって記録媒体SをY方向へ間欠的に搬送すると共に、記録ヘッドを記録媒体の搬送方向(Y方向)と直交する方向(X方向)へと往復移動させる。インクジェット記録装置100は、上述したように、ガイド軸5によってキャリッジ2が主走査方向に移動自在にガイドされている。キャリッジ2は、キャリッジモータ103及びその駆動力を伝達する無端ベルト6により、ガイド軸5によってガイドされた状態で主走査方向に往復移動される。インクジェット記録装置100は、記録ヘッド3、10を主走査方向に移動させつつ、記録媒体のプリント領域に向かってインクを吐出させる記録動作と、その記録幅に対応する距離だけ記録媒体を副走査方向に搬送する搬送動作と、を繰り返す。これらの記録動作と搬送動作とを相互に行うことによって、記録媒体上に順次画像が記録される。なお、本実施形態の記録ヘッドは発熱素子によりインク内で膜沸騰を発生させて発泡させ、インク滴を吐出する方式としたが、本発明はこれに限定されない。圧電素子を変形させ、これによって記録ヘッド内部の液体を吐出する形式の記録ヘッドがインクジェット記録装置に適用されても良く、また、他の形式の記録ヘッドが本発明のインクジェット記録装置に適用されても良い。
【0020】
図4には、本実施形態におけるインクジェット記録装置100の制御系の構成について説明するためのブロック図が示されている。インクジェット記録装置100は、I/F(インターフェース)300を介して、ホストPC200に接続されている。ホストPC200から送信される各種データ及び制御信号が、インクジェット記録装置100の記録制御部(CPU)101に入力される。記録制御部101は、入力された制御信号等によって各種処理を実行する。搬送モータ102は、モータドライバ104からの信号に応じて搬送ローラ11を回転駆動させる。キャリッジモータ103は、モータドライバ105によりキャリッジ2を往復移動する。記録ヘッドの数に応じて複数設けられるヘッドドライバ106は、記録ヘッドを駆動しインクの吐出制御を行う。さらに、インクジェット記録装置100には、温湿度センサ107、ヘッドZ位置センサ108等、各種センサが設けられており、これらの情報は、記録制御部101に入力される。
【0021】
次に、本実施形態におけるインクジェット記録装置100の記録動作について説明する。ロール紙4は、搬送経路を通り搬送ユニット1まで案内された後、搬送ユニット1からプラテン7へ送り出される。記録媒体がプラテン7上に到達すると、そこで記録媒体はプラテン7の下部のファン8の駆動によってプラテン7上に吸着される。プラテン7に吸着された記録媒体Sは、記録ヘッド3、10からインク滴の吐出が行われ画像が形成される。本実施形態では、記録媒体Sをプラテン7に吸着したまま、記録動作と複数回の所定ピッチの搬送動作とを繰り返し、記録が行われる。このとき、それぞれの記録ヘッド3、10に形成された吐出口列の吐出口は複数の吐出口ごとに分割され、分割されたブロックごとにインク滴を吐出して記録が行われる。通常は、記録ヘッド3、10のそれぞれで、使用される吐出口が均等に分割されて複数の吐出口を有するブロックが形成され、分割されたブロックごとに吐出口からインク滴が吐出される。このように、ブロックごとに分割記録が行われることで、吐出口のピッチ誤差による筋や濃度ムラが記録画像に生じることを回避できる。
【0022】
記録の指示があるとロール紙4は、プラテン7に案内され、プラテン7で吸着されながら、所定ピッチで副走査方向へ搬送される。そして、記録ヘッドの吐出口から記録媒体Sに対して画像データに基づいてインク滴が吐出される。1回目のパスが終了すると、記録媒体Sは、プラテン7に密着されたまま所定ピッチ搬送され、再度、記録ヘッドの吐出口から画像データに基づいてインク滴が吐出される。以上の動作を指定されたパス数だけ繰り返すことで、記録媒体Sに全体の記録画像が形成される。
【0023】
本実施形態の記録制御では、記録ヘッドに形成された複数の吐出口が形成された位置によって複数の領域に分割され、記録媒体の所定領域に対して、分割されたそれぞれの領域の吐出口から複数回に亘ってインク吐出の行われる分割記録が行われる。このように分割記録が行われる場合において、記録媒体Sの先端部分及び後端部分に画像形成する際、第1の記録ヘッド3から吐出されるインク吐出量が、第2の記録ヘッド10から吐出されるインク吐出量よりも少なくなるように記録が制御される。つまり、本実施形態では、二つの記録ヘッド3、10のうち、先に使用される第1の記録ヘッド3からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量が、後に使用される第2の記録ヘッド10からのものよりも小さくなるように、記録が制御される。本実施形態では、記録制御部101が、記録媒体における搬送方向の端部への記録が行われる際に、インクジェット記録装置100による記録を制御する制御手段(第1の制御手段)として機能する。このように記録が制御されるので後述するように、記録媒体の変形し易い先端部分及び後端部分において前述の制御を実施することで、第1の記録ヘッド3から吐出されたインクによって記録媒体Sが変形してしまうことが抑制される。
【0024】
以下、フローチャートに従い、本実施形態の記録制御の制御フローについて説明する。図5は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100の制御フローである。記録が開始されると、ステップ401でユーザーが選択した紙種を判定する。本実施形態では、インクを吸収することで変形の大きい普通紙及び、比較的薄いコート紙を対象として制御が行われ、その他の種類の記録媒体が用いられる場合には、本発明の記録制御は行われずに通常の記録動作が行われる。しかしながら、本発明の記録制御が行われる対象としての記録媒体は、普通紙、薄いコート紙に限られるものではない。その他の記録媒体が用いられるときにも、本発明の記録制御が行われても良い。
【0025】
ステップ401で対象外の記録媒体の紙種が用いられている場合には、制御のフローはステップ403に移行し、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の記録率が均一に設定されたマスクを選択して記録が実行される。ここで、記録率は、記録媒体の単位面積当たりの、記録媒体へ打ち込まれるインクの吐出量のことを言うものとする。ステップ401で、本実施形態の記録制御の対象となる紙種の記録媒体が選択されている場合には、フローはステップ402へ移行し、ユーザーが選択した記録パス数(N)を判定する。
【0026】
ステップ402で、パス数NがN=3以下と判定された場合には、パス数が本発明の対象外と判断して、フローがステップ403へ移行し、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の記録率が均一に設定されたマスクが選択されて記録が実行される。そこでフローはステップ417に移行し、全てのパスを通して、記録率が均一に設定されたマスクが用いられて記録が行われる。また、ステップ402で、パス数NがN=4以上と判定された場合には、ステップ404へ移行し、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の記録率が異なるように設定された不均一マスクを選択して用紙先端から記録が開始される。
【0027】
ここで、インクジェット記録装置100による記録媒体の先端部への記録について説明する。ステップ405で、先端部への記録について記録制御が開始される。次いで、ステップ406で1パスごとに記録データを読み出して、そのパスの分の記録が行われる。このとき、パス数nが1パス〜N/2パス(第1の記録ヘッド使用)までのインク吐出量が、(N/2+1)パス目〜Nパス目(第2の記録ヘッド使用)までのインク吐出量より少なくなるように制御を行う。従って、1パス〜N/2パスまでのインクの消費量が、(N/2+1)パス〜Nパス目までのインクの消費量より少なくなるように制御が行われる。1パス分の記録処理が終了すると、先端部分の記録が終了する(ステップ407)。続いて、ステップ408へ移行して、記録媒体が搬送方向へ搬送されることで記録ヘッド3を副走査方向へシフトさせる。
【0028】
続いて、フローがステップ409へ移行し、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の記録率が均一に設定された均一マスクを選択して、記録媒体における搬送方向両端部以外の中央部への記録を実行する。続いて、ステップ410で、中央部への記録について記録制御が開始される。次いで、ステップ411で中央部におけるそれぞれのパスごとの記録データを読込み、記録データの読み取られたパスごとに記録を行う。パスごとの記録処理が中央部のパス数の分繰り返され、中央部への記録が終了すると、記録媒体が搬送方向へ搬送されることで記録ヘッドが副走査方向へシフトされる。ここまでで、記録媒体の先端部から後端部の手前までの画像が形成されたことになる。
【0029】
ここで、記録媒体の先端部とは、記録媒体のうち、搬送方向下流側の端部であって、記録ヘッド3、10が一回の走査で記録を行うことのできる範囲の部分のことを言うものとする。また、記録媒体の後端部とは、記録媒体のうち、搬送方向上流側の端部であって、記録ヘッド3、10が一回の走査で記録を行うことのできる範囲の部分のことを言うものとする。
【0030】
本実施形態では、往復走査する記録ヘッド3、10の往方向の走査回数と復方向の走査回数が異なると、そこで記録による濃度が異なってしまい、記録画像の品質が低下する可能性があることから、通常、パス数Nについては、偶数の値が用いられることが多い。そのため、通常、N/2パス、(N/2+1)パスについては整数の値となる。しかしながら、パス数Nは、奇数の値が用いられても良い。そのような場合には、N/2パス、(N/2+1)パスについては、整数にはならない。従って、その場合には、少数点以下の桁については、切り上げられても良いし、切捨てられても良い。
【0031】
続いて、フローがステップ412へ移行して、記録媒体の搬送を行い、記録ヘッド3による記録媒体上への記録領域を、搬送方向へ相対的にシフトさせる。続いて、フローがステップ413へ移行し、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の記録率が異なるように設定された不均一マスクを選択して用紙後端部の記録を開始する(ステップ414)。続いて、ステップ415で、後端部への記録について記録制御が開始される。
【0032】
次いで、ステップ416でパスごとに記録データを読み出して、読み出されたパスごとの記録が行われる。このとき、1パス目〜N/2パス目(第1の記録ヘッド使用)までのインク吐出量が、(N/2+1)パス目〜Nパス目(第2の記録ヘッド使用)までのインク吐出量より少なくなるように制御を行う。1パス分の記録処理(nパス目)が終了すると、次のパス(n+1パス目)の記録が行われる。これをNパス分繰り返すことで、記録媒体の先端部への記録を終える。記録媒体の先端部に対する記録を終えると、記録媒体における先端部及び後端部以外の、記録媒体の中央部に対する記録が行われる。記録媒体の中央部への記録では、パスごとに記録の行われる画素が均等に配分されたマスクが用いられて記録が行われる。中央部への記録を終えると、次に記録媒体における後端部への記録が行われる。
【0033】
記録媒体における後端部への記録では、先端部への記録と同様に、1パス目〜N/2パス目(第1の記録ヘッド使用)までのインク消費量が、(N/2+1)パス目〜Nパス目(第2の記録ヘッド使用)までのインク消費量より少なくなるように制御が行われる。記録媒体の後端部分の記録が終了すると、画像全体が記録され、記録が終了する。本実施形態では、パス数N=4以上を対象に制御を実行しているが、本発明ではこれに限定されるものではなく、N=2、3で制御を実行して構わない。
【0034】
以上のように、本実施形態では、記録媒体の変形し易い先端部及び後端部への記録において、第1の記録ヘッド3のインク吐出量が第2の記録ヘッド10のインク吐出量より少なくして画像を形成する。しかしながら、本発明は、これに限らず、先端部又は、後端部のどちらか一方のみに上記の記録制御を実施して構わない。すなわち、不均一マスクの適応範囲を用紙の先端及び後端に制限することで、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の寿命に格差が生じることを防止する。さらに、不均一マスクを使用することによる画像ムラの発生する確率を低減する。
【0035】
次に、実際の画像形成手順について、所定領域への記録を4パス記録によって行う4パス分割記録(N=4)を例に説明する。図6は、4パス分割記録の場合における吐出口分割を示した平面図である。図7は、4パス分割記録の場合におけるnパス目の記録データ及び全体画像を示している。第1の記録ヘッド3、第2の記録ヘッド10の吐出口列は、吐出口長さが4パスになるように均等に分割されている(3a=3b=10a=10b)。画像500は、記録率100%の記録が終了した全体画像である。全体画像を形成する手順として、まず、1パス目で記録率10%の画像500aを記録する。次いで、記録ヘッドを副走査方向に1パス分移動し、2パス目の記録率20%の画像500bを記録する。ここまでが、第1の記録ヘッド3による記録であり、全体像500の30%を記録したことになる。次いで、記録ヘッドを副走査方向に1パス分移動し、3パス目の記録率40%の画像500cを記録する。さらに、記録ヘッドを1パス分移動して、4パス目の記録率30%の画像500dを記録する。以上により、4パス分割記録による全体画像が形成される。すなわち、第1の記録ヘッド3では、記録率30%の画像を形成し、第2の記録ヘッド10では記録率70%の画像を形成したことになる。本実施形態では、画像の記録率を上記のように設定したが、本発明はこれに限定されず、記録媒体の端部で全体画像を形成するまでに消費する第1の記録ヘッド3のインク吐出量が、第2の記録ヘッド10のインク吐出量より少なければよい。
【0036】
記録媒体の先端部への記録において、4パス分割記録(N=4)が行われる場合について図8を参照してさらに具体的に説明する。ここでは、記録媒体の先端部における搬送方向の最も先端側の部分の領域Aに着目して記録動作について説明する。記録媒体の先端部に記録が行われる際には、まず図8(a)に示されるように、記録ヘッド3、10が記録媒体の先端部に近接する位置に配置される。そこから図8(b)に示されるように、記録媒体が第1の記録ヘッド3の半分の長さに相当する長さだけ搬送方向へ搬送される。記録媒体が記録ヘッド3、10に対してこのように搬送されると、記録ヘッド3、10は主走査方向に移動しながら、第1の記録ヘッド3における記録媒体の搬送方向上流側の位置から記録媒体に向けてインクを吐出して第1の記録ヘッド3により記録が行われる。このとき、第1の記録ヘッド3における上流側の半分の領域に相当する分の吐出口が用いられて、領域Aに対してのみ記録が行われる。本実施形態では、ここでの記録が領域Aに対する1パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が10%となるように記録が行われる。
【0037】
そこで第1の記録ヘッド3の半分の長さに相当する分の記録が行われると、そこから記録媒体が第1の記録ヘッド3の半分の長さに相当する分だけ搬送方向へ搬送される。記録ヘッド3、10と記録媒体との位置関係が図8(c)に示されるように記録媒体の先端の位置が第1の記録ヘッド3の下流側の先端に対応した部分に位置した関係になると、領域Aに対して第1の記録ヘッド3における搬送方向下流側の部分により記録が行われる。このとき、記録ヘッド3、10が主走査方向に移動しながら、記録ヘッド3の下流側の部分から記録媒体にインクが吐出されて、第1の記録ヘッド3により記録が行われる。ここでの記録は領域Aに対する2パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が20%となるように記録が行われる。
【0038】
第1の記録ヘッド3の下流側の部分による領域Aへの記録が終わると、そこから記録媒体が第2の記録ヘッド10の半分の長さに相当する分だけ搬送方向へ搬送される。図8(d)に示されるように、記録ヘッド3、10と記録媒体との位置関係が、記録媒体の先端が第2の記録ヘッド10の中央部に対応した部分に位置する関係になると、領域Aに対して第2の記録ヘッド10における搬送方向上流側の部分により記録が行われる。ここでの記録は領域Aに対する3パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が40%となるように記録が行われる。
【0039】
第2の記録ヘッド10の上流側の部分による領域Aへの記録が終わると、そこから記録媒体が第2の記録ヘッド10の半分の長さに相当する分だけ搬送方向へ搬送される。図8(e)に示されるように、記録媒体の先端が第2の記録ヘッド10の下流側の端部に対応した部分に位置すると、領域Aに対して第2の記録ヘッド10における搬送方向下流側の部分により記録が行われる。ここでの記録は領域Aに対する4パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が30%となるように記録が行われる。
【0040】
記録媒体の先端部における最も先端側に位置した領域Aに対して、このように1パス目の記録率10%、2パス目の記録率20%、3パス目の記録率40%、4パス目の記録率30%によって記録が行われる。このように、記録媒体の搬送方向の先端部への記録が行われる際に、先に使用される第1の記録ヘッド3からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量が、後に使用される第2の記録ヘッド10からのものより小さくなるように記録が制御される。すなわち、4回の走査で所定の記録領域への記録が行われる際に、1回目から2回目までの走査で、第1の記録ヘッド3によるインク吐出によって記録が行われ、3回目から4回目までの走査で、第2の記録ヘッド10によるインク吐出によって記録が行われる。このとき、1回目から2回目までの走査で吐出されるインクの量が、3回目から4回目までの走査で吐出されるインクの量よりも少なくなるように、記録が制御される。このように、本実施形態では、所定の記録領域をN回の走査で記録が行われるときに、1回目から(N/2)回目までの走査で、第1の記録ヘッド3によるインク吐出が行われる。また、(N/2+1)回目からN回目までの走査で、第2の記録ヘッド10によるインク吐出が行われる。そして、1回目から(N/2)回目までの走査で吐出されるインクの量が、(N/2+1)回目からN回目までの走査で吐出されるインクの量よりも少なくなるように、記録が制御される。本実施形態では、記録制御部101が、記録を制御する制御手段(第1の制御手段、第2の制御手段)として機能する。
【0041】
記録媒体の後端部についても、記録媒体の先端部と同様な記録が行われる。記録媒体の後端部への記録について、図9を参照して説明する。記録媒体の後端部に記録が行われる際には、まず図9(a)に示されるように、第1の記録ヘッド3の上流側の部分が記録媒体の後端部に対応する位置に配置される。そこから図9(b)に示されるように、記録媒体が第1の記録ヘッド3の半分の長さに相当する長さだけ搬送方向へ搬送される。記録媒体が記録ヘッド3、10に対してこのように搬送されると、記録ヘッド3、10は主走査方向に移動しながら、第1の記録ヘッド3における搬送方向上流側の部分から記録媒体に向けてインクを吐出して第1の記録ヘッド3により記録が行われる。このとき、第1の記録ヘッド3における上流側の半分の領域に相当する分の吐出口が用いられて、最も後端に位置する領域Bに対してのみ記録が行われる。本実施形態では、ここでの記録が領域Bに対する1パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が10%となるように記録が行われる。
【0042】
そこで第1の記録ヘッド3の半分の長さに相当する分の記録が行われると、そこから記録媒体が第1の記録ヘッド3の半分の長さに相当する分だけ搬送方向へ搬送される。記録ヘッド3、10と記録媒体との位置関係が図9(b)に示されるように記録媒体の後端の位置が第1の記録ヘッド10の中央部に対応した部分に位置した関係になると、領域Bに対して第1の記録ヘッド3における搬送方向下流側の部分により記録が行われる。このとき、記録ヘッド3、10が主走査方向に移動しながら、第1の記録ヘッド3の下流側の部分から記録媒体にインクが吐出されて、第1の記録ヘッド3により記録が行われる。ここでの記録は領域Bに対する2パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が20%となるように記録が行われる。
【0043】
第1の記録ヘッド3の下流側の部分による領域Bへの記録が終わると、そこから記録媒体が第2の記録ヘッド10の半分の長さに相当する分だけ搬送方向へ搬送される。図9(c)に示されるように、記録ヘッド3、10と記録媒体との位置関係において、記録媒体の後端部が第2の記録ヘッド10の上流側の先端部に対応した部分に位置した関係になる。記録ヘッド3、10と記録媒体との位置関係が、このような位置関係になると、領域Bに対して第2の記録ヘッド10における搬送方向上流側の部分により記録が行われる。ここでの記録は領域Bに対する3パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が40%となるように記録が行われる。
【0044】
第2の記録ヘッド10の上流側の部分による領域Bへの記録が終わると、そこから記録媒体が第2の記録ヘッド10の半分の長さに相当する分だけ搬送方向へ搬送される。図9(d)に示されるように、記録媒体の後端部が第2の記録ヘッド10の搬送歩行中央部に対応した部分に位置すると、領域Bに対して第2の記録ヘッド10における搬送方向下流側の部分により記録が行われる。ここでの記録は領域Bに対する4パス目の記録となるので、ここでの記録における記録率が30%となるように記録が行われる。
【0045】
第2の記録ヘッド10による記録が終わると、図9(e)に示されるように、記録媒体が記録ヘッド3、10に対応した位置を通過して、記録媒体が記録ヘッド3、10を抜ける。これにより、記録ヘッド3、10による記録領域Bへの記録を終え、記録媒体への記録を終える。
【0046】
なお、ここでは、記録ヘッド3、10によって一度の走査で記録可能な記録媒体の先端部のうち、最も先端の領域A及び一度の走査で記録可能な後端部のうち、最も後端の領域Bについて説明している。しかしながら、本実施形態では、記録媒体における一度の走査で記録可能な記録媒体の先端部のうち、最も先端側の領域A以外の部分についても、本発明の記録制御によって記録が行われる。すなわち、一度の走査で記録可能な記録媒体の先端部のうち、最も先端側の領域A以外の部分について、走査ごとに記録率が変化するマスクが用いられて記録が行われる。また、記録媒体における一度の走査で記録可能な記録媒体の後端部のうち、最も後端側の領域B以外の部分についても、本発明の記録制御によって記録が行われる。すなわち、一度の走査で記録可能な記録媒体の後端部のうち、最も後端側の領域B以外の部分について、走査ごとに記録率が変化するマスクが用いられて記録が行われる。
【0047】
一度の走査で記録可能な記録媒体の先端部のうち、最も先端側の領域A以外の部分については、領域Aについての記録が行われた後に、順次記録が行われていく。本実施形態のように4パス記録によって記録が行われる場合には、一度の走査で記録可能な記録媒体の先端部は4回の走査で記録が行われる。また、一度の走査で記録可能な記録媒体の後端部のうち、最も後端側の領域B以外の部分についても、領域Bへの記録が行われる前に、順次記録が行われることになる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、記録媒体の端部へ分割記録を実行する際に、第1の記録ヘッド3のインク吐出量を第2の記録ヘッド10のインク吐出量より少なくして画像が形成される。従って、第2の記録ヘッド10からのインク吐出よりも先に、第1の記録ヘッド3からのインク吐出によって記録が行われる際に、インク吐出量が比較的少なく抑えられる。そのため、変形し易い記録媒体の先端部に対して第1の記録ヘッド3によって記録が行われる際に、過度に吐出量の多いインク吐出によって記録が行われることで記録媒体を変形させることを抑えることができる。従って、第1の記録ヘッド3によるインク吐出が行われた後に、既に第1の記録ヘッド3によって記録の行われた領域に第2の記録ヘッド10が移動したときに、記録媒体が変形することで、記録媒体と第2の記録ヘッド10とが接触することが抑えられる。これにより、画像が記録された記録媒体の記録面と記録ヘッド3、10とが接触することが抑えられるので、接触によって記録画像の品質が低下することを抑えることができる。
【0049】
また、先行する第1の記録ヘッド3による記録により記録媒体が変形することで第2の記録ヘッド10と記録媒体との間の距離が一定でなくなった状態のまま、第2の記録ヘッド10によって記録が行われることを抑えることができる。従って、第2の記録ヘッド10と記録媒体との間の距離が一定でないことによって記録画像にムラが生じ、記録画像の品質が低下してしまうことを抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上述のように記録率を変化させる領域が、記録媒体の先端部及び後端部に制限されている。そのため、記録媒体の端部以外の領域へ記録が行われる際には、それぞれの走査の間で記録率が均一になるようなマスクが用いられる。従って、記録データに応じ、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10とから、ほぼ均等にインクの吐出が行われて記録が行われる。これにより、記録媒体への記録工程の全体で考慮したときに、第1の記録ヘッド3からのインク吐出と、第2の記録ヘッド10からのインク吐出との間で、インク吐出の頻度の差が小さく抑えられる。従って、インクジェット記録装置が長期に亘って用いられたときに、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10との間でインク吐出のために発熱素子の駆動された回数の差が小さい。そのため、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10との間で、寿命に差が生じることが抑えられる。従って、それぞれの記録ヘッド3、10をそれぞれより長期間に亘って有効に使用することができ、インクジェット記録装置としての耐用期間を長くすることができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、1回目のパスから4回目のパスまで、それぞれのパスでの記録の際の記録率が変化している。これにより、特定のパスで記録率の高い記録が行われることが抑えられ、特定のパスにおける記録で濃度が高くなることで、記録画像に画像ムラの発生することが低減される。
【0052】
なお、本実施形態では、2個の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置であるが、本発明ではこれに限られるものではなく、記録ヘッドは、単数又は、3個以上でも構わない。すなわち、使用するヘッド数に関係なくNパス分割記録とした場合において、1パス目〜N/2パス目までに消費するインク吐出量が、(N/2+1)パス目〜Nパス目までに消費するインク吐出量より少なくするように制御すればよい。
【0053】
また、本実施形態では、記録画像の形式に関係なく、記録媒体の端部への記録が行われるときに本発明が適用される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、記録媒体の搬送方向の端部に余白が形成されずに記録の行われる縁無し記録が行われるときに、本発明の記録制御が適用されることとされても良い。記録媒体の搬送方向端部に余白が形成されて記録が行われる場合、余白の大きさによっては記録媒体の搬送方向に記録が行われない場合もある。そのような場合に本発明の記録制御が適用されても、効果が得られない場合もある。従って、そのような場合には、本発明の記録制御が行われないようにされても良い。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第二実施形態に係るインクジェット記録装置における記録制御について説明する。なお、上記第一実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
第2実施形態の記録制御は、第1実施形態の記録制御と比較して、使用環境条件(湿度)による判定を追加して制御を実行する点で異なる。本実施形態のインクジェット記録装置は、記録ヘッド3、10の周辺部における湿度を検出することが可能な温湿度センサ107(湿度検出手段)を有している。図10は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置の制御フローである。第2実施形態では、ステップ402でユーザーが選択したパス数がN=4以上と判定された場合に、フローがステップ700へ移行し、使用環境湿度が30%以下であるかの判定が行われる。
【0056】
記録が開始され、ステップ401で対象用紙と判定され、ステップ402で記録パス数N=4以上と判定されると、ステップ700へ移行する。ステップ700では、温湿度センサ107によって記録ヘッド周辺の湿度が測定され、インクジェット記録装置が置かれている使用環境湿度が30%以下であるかを判定する。湿度が30%以上と判定された場合には、本発明による記録制御の対象外として、フローがステップ403へ移行する。そこで、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の記録率が均一に設定されたマスクが選択されて記録が実行される。また、ステップ700で、湿度が30%以下と判定された場合には、フローがステップ404へ移行し、本発明の記録制御が実行される。そこで、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の記録率が異なるように設定された不均一マスクが選択され、記録が実行される。以降の制御フローは、第1実施形態の制御フローと同様である。
【0057】
以上のように、本実施形態では、所定の湿度より低い場合にのみに、第1の記録ヘッド3からのインク吐出量を第2の記録ヘッド10からのインク吐出量より少なくして画像を形成する。すなわち、湿度センサによって検出された記録ヘッド3、10の周辺部における湿度が、所定の閾値以下であるときに、第1の記録ヘッド3からのインク吐出量が第2の記録ヘッド10からのインク吐出量よりも小さくなるように、記録が制御される。このように、第2実施形態では、本発明による記録制御が適応される範囲が低湿度環境(湿度30%以下)に制限される。これにより、湿度が30%より高い環境の下では、第1の記録ヘッド3によるインク吐出の記録率と第2の記録ヘッド10によるインク吐出の記録率との間で、差を設ける記録制御は行われない。もともと、湿度の高い環境では、記録媒体の端部に記録を行ったとしても、記録を行う前に既に記録媒体が水分を含んでいることから、記録媒体は変形し難い。そのため、第1の記録ヘッド3によるインク吐出の記録率と第2の記録ヘッド10によるインク吐出の記録率との間に差を設けたとしても、そのことによる効果は得難い。むしろ、第1の記録ヘッド3によるインク吐出の記録率と第2の記録ヘッド10によるインク吐出の記録率との間に差を設けることで、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10との間で、発熱素子の駆動の回数に差が生じる。これによって、インクジェット記録装置が長期に亘って使用されたときに、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッドとの間で寿命に差が生じてしまう。従って、本実施形態では、記録ヘッド3、10の周囲の湿度が高いときには、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッドとの間で記録率に差が生じないようにする。これにより、第1の記録ヘッド3と第2の記録ヘッド10の寿命に格差が生じることを抑えることができる。従って、それぞれの記録ヘッド3、10を寿命まで有効に使用することができ、インクジェット記録装置としての耐用期間を長くすることができる。
【符号の説明】
【0058】
3 第1の記録ヘッド
10 第2の記録ヘッド
100 インクジェット記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する吐出口が配列されて吐出口列の形成された記録ヘッドを有し、記録媒体を搬送させながら、前記記録ヘッドが記録媒体の搬送される搬送方向に交差する主走査方向へ走査を行いつつ、記録媒体にインクを吐出して記録を行い、前記記録ヘッドは所定の記録領域に対して複数回走査を行うことで記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドに形成された吐出口列を形成する複数の吐出口が、吐出口の形成された位置によって前記吐出口列の配列された配列方向に沿って二つの吐出口群に分割され、前記二つの吐出口群のうち、記録媒体の前記搬送方向の端部への記録が行われる際に、先に使用される第1の吐出口群からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量が、後に使用される第2の吐出口群からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量よりも小さくなるように、記録を制御する第1の制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1の吐出口群及び前記第2の吐出口群がそれぞれ同じ個数の吐出口を有するように、前記吐出口列を形成する前記吐出口が2等分され、
前記第1の制御手段は、前記所定の記録領域をN回の走査で記録が行われるときに、1回目から(N/2)回目までの走査で、前記第1の吐出口群によるインク吐出を行い、(N/2+1)回目からN回目までの走査で、前記第2の吐出口群によるインク吐出を行い、1回目から(N/2)回目までの走査で吐出されるインクの量が、(N/2+1)回目からN回目までの走査で吐出されるインクの量よりも少なくなるように記録を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
記録媒体の前記搬送方向の前記端部に余白が形成されずに記録の行われる縁無し記録が行われるときに、前記第1の制御手段は、前記第1の吐出口群からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量が、前記第2の吐出口群からのインク吐出による単位面積当たりのインク吐出量よりも小さくなるように、記録を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドの周辺部における湿度を検出することが可能な湿度検出手段を有し、
前記湿度検出手段によって検出された前記記録ヘッドの周辺部における湿度が、所定の閾値以下であるときに、前記第1の制御手段は、前記第1の吐出口群からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量が、前記第2の吐出口群からのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量よりも小さくなるように、記録を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
インクを吐出する吐出口が配列されて吐出口列の形成された第1の記録ヘッドと、前記第1の記録ヘッドに形成された吐出口列が配列された配列方向と同じ方向に吐出口が配列されて吐出口列の形成された第2の記録ヘッドとを有し、記録媒体を搬送させながら、前記第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドが、記録媒体の搬送される搬送方向に交差する主走査方向に走査を行いつつ、記録媒体にインクを吐出して記録を行い、前記第1の記録ヘッド及び第2の記録ヘッドは所定の記録領域に対してそれぞれ走査を行うことで記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記第1の記録ヘッドと前記第2の記録ヘッドのうち、記録媒体の前記搬送方向の端部への記録が行われる際に、先に前記第1の記録ヘッドからインク吐出が行われ、後に前記第2の記録ヘッドからインク吐出が行われるときに、前記第1の記録ヘッドからのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量が、前記第2の記録ヘッドからのインク吐出による記録媒体の単位面積当たりのインク吐出量よりも小さくなるように、記録を制御する第2の制御手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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