説明

インクセット、画像形成方法

【課題】白色画像の彩度を詳細な範囲で表現することができるインクセットを提供すること。
【解決手段】複数の白色インクを有するインクセットであって、前記インクセットは、第1白色インクと、該第1白色インクとは分光反射率比が異なる第2白色インクと、を備え、前記分光反射率比は、前記複数の白色インク毎に記録媒体上に形成された画像のL値が72の場合において測定される分光反射率のうち、波長430nmにおける分光反射率(R1)と、波長680nmにおける分光反射率(R2)と、の比率(R1/R2)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、ならびにこれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色の色材を含有する白色系インクを吐出するインクジェット記録装置について知られている。この白色系インクは、彩度が0である事が理想的であり、彩度が1違うだけでも視認される色は大きく異なってくる。このため白色系インクは他のカラーインクと比較しても一層厳密に彩度の調整が求められている。
【0003】
ところで、白色インクを用いて記録された白色画像は白色インクに用いる色材の種類等によって色相が異なる場合がある。そのため、白色インクを用いて所望の彩度を有する白色画像を得るために、あらかじめ白色インクにシアン等の色材を添加したり、白色インクに粒径の異なる白色の色材を添加したりすることが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−235153号公報
【特許文献2】特開2003−313481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、白色インクに別の色材を添加する方法や、白色インクに粒子径の異なる色材を添加する方法では、彩度の再現範囲が狭く、厳密な彩度の制御が求められる白色インクにおいて、より細かい範囲内で彩度をコントロールすることが困難であった。
【0006】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、白色画像の彩度を詳細な範囲で表現することができるインクセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明に係るインクセットの一態様は、
複数の白色インクを有するインクセットであって、
前記インクセットは、第1白色インクと、該第1白色インクとは分光反射率比が異なる第2白色インクと、を備えている。
【0009】
適用例1に記載のインクセットによれば、反射率比の異なる白色インクを有しているので、画像の彩度を詳細な範囲で表現することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1において、
前記第1白色インクと、前記第2白色インクとは、互いに異なる色材が添加されていることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第1白色インクの前記分光反射率比と前記第2白色インクの前記分光反射率比との差は、0.14以上であることができる。
【0012】
適用例3に記載のインクセットによれば、彩度の表現範囲を広げることができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記第1白色インクの前記分光反射率比は、1.25以上であり、前記第2白色インクの前記分光反射率比は、1.1以下であることができる。
【0014】
適用例4に記載のインクセットにおいて、分光反射率比が1.25以上の第1白色インクは、青みがかった色相を備え、かつ、彩度の高い白色画像を記録することができる。また、分光反射率比が1.1以下の第2白色インクは、黄みがかった色相を備え、かつ、彩度の低い白色画像を記録することができる。これにより、連続的でなめらかな階調表現が実現できるとともに、表現できる色相や彩度の範囲が広くなる。
【0015】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記第1白色インクは、二酸化チタン粒子を含むことができる。
【0016】
[適用例6]
適用例5において、
前記二酸化チタン粒子の平均粒子径d50は、280nm以上440nm以下であることができる。
【0017】
適用例6に記載のインクセットは、青みの色相が強い白色画像を記録することができる。
【0018】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか1例において、
前記第2白色インクは、中空構造を有する粒子を含むことができる。
【0019】
[適用例8]
本発明に係る画像形成方法の一態様は、
液滴吐出装置を用いた画像形成方法であって、
記録媒体上に適用例1ないし適用例7のいずれか1例に記載のインクセットに備えられた第1白色インクを液滴として吐出する工程と、
前記記録媒体上に適用例1ないし適用例7のいずれか1例に記載のインクセットに備えられた第2白色インクを液滴として吐出する工程と、
を含む。
【0020】
適用例8に記載の画像形成方法は、画像の彩度を詳細な範囲で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】反射率測定用サンプルAおよびBの分光反射率分布を示す図。
【図2】反射率測定用サンプルCおよびDの分光反射率分布を示す図。
【図3】反射率測定用サンプルEないしGの分光反射率分布を示す図。
【図4】反射率測定用サンプルA〜Gの分光反射率比および彩度(C)の相関を示す図。
【図5】白色インクAおよび白色インクBの打ち込み比毎にduty値を上昇させた場合における彩度(C値)の変化を示す図。
【図6】白色インクAおよび白色インクBの打ち込み比毎にduty値を上昇させた場合における彩度(C値)の表現範囲を示す図。
【図7】白色度(L値)が70以上を示す範囲における彩度(C値)の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0023】
1.インクセット
本発明の一実施形態に係るインクセットは、複数の白色インクを有するインクセットであって、前記インクセットは、第1白色インクと、該第1白色インクとは分光反射率比が異なる第2白色インクと、を備えている。
【0024】
本発明において「分光反射率比」とは、複数の白色インク毎にL値が72になるように記録媒体上に形成された画像の分光反射率を測定した場合における、波長430nmにおける分光反射率(R1)と、波長680nmにおける分光反射率(R2)と、の比率(R1/R2)のことをいう。なお、本発明において「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
【0025】
白色インクを用いて記録媒体上に形成された画像は、上記の分光反射率比(R1/R2)が高いと、彩度が高くなる傾向にある。一方、上記の分光反射率比(R1/R2)が低いと、白色インクを用いて記録媒体上に形成された画像は、彩度が低くなる傾向にある。本発明におけるインクセットは、第1白色インクと、第1白色インクとは反射率比の異なる第2白色インクと、を少なくとも備える。このように、インクセットに備えられた白色インクの反射率比が異なると、インク間で彩度が異なる。したがって、インクセットが異なる反射率比の第1白色インクおよび第2白色インクを備えていると、これらの白色インクの吐出比率等を変化させることにより、白色画像の連続的でなめらかな階調表現が可能となり、詳細な範囲で彩度を変化させることができる。
【0026】
これに対して、白色インクとカラーインクとを用いて白色画像の色相や彩度を変化させようとすると、カラーインクによって色相や彩度が大きく変化するので、連続的でなめらかな階調表現が困難になり、得られる画像に粒状感が目立つ場合がある。ここで、カラーインクとは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等の色材を含むものをいう。
【0027】
ここで、本発明における彩度とは、色の鮮やかさの度合いを示すものであり、CIE(Commission International de l’Eclairage:国際照明委員会)によって定められたCIE(1976)L色空間(以下、「L表色系」ともいう。)におけるCを表す指標である。具体的には、彩度(c値)が高いと鮮やかさが高いことを示し、彩度(C値)が低いと鮮やかさが低いことを示す。
【0028】
本実施形態における第1白色インクと第2白色インクとは、互いに異なる色材が添加されているのことが好ましい。これによって、互いの分光反射率比が異なりやすくなり、彩度の再現範囲が広がるようになる。
【0029】
本実施形態における第1白色インクの分光反射率比と第2白色インクの分光反射率比との差は、0.14以上であることが好ましく、0.14以上0.40以下であることがより好ましい。0.14以上であると彩度の再現範囲が広がるが、0.40を超えると両者の彩度差が大きくなりすぎて良好な白色度を有する白色画像を形成しにくくなる場合がある。
【0030】
本実施形態における第1白色インクの分光反射率比は、1.25以上であることが好ましく、1.25以上1.50以下であることがより好ましい。第1白色インクの分光反射率比が1.25以上であると、青みがかった色相を備えた白色画像が得られ、かつ、彩度の高い白色画像を得ることができる。一方、第1白色インクの分光反射率比が1.25未満であると、得られる白色画像の青みが低減する場合がある。また、第1白色インクの分光反射率比が1.50を超えると、得られる白色画像の白色度が低下する場合がある。一方、第2白色インクの分光反射率比は、1.1以下であることが好ましく、1.0以上1.1以下であることがより好ましい。第2白色インクの分光反射率比が1.1以下であると、黄みがかった色相を備える白色画像が得られ、かつ、彩度の低い白色画像を得ることができる。一方、第2白色インクの分光反射率比が上記範囲外であると、得られる白色画像の黄みが低減する場合がある。
【0031】
このように、分光反射率比が1.25以上の第1白色インクは、青みがかった色相を備え、かつ、彩度の高い白色画像を記録することができる。また、分光反射率比が1.1以下の第2白色インクは、黄みがかった色相を備え、かつ、彩度の低い白色画像を記録することができる。したがって、このような白色インクを備えたインクセットを用いると、連続的でなめらかな階調表現が実現できるとともに、表現できる色相や彩度の範囲が広くなる。
【0032】
なお、インクセットが分光反射率比の異なる白色インクを2種類備えている例を説明したが、これに限定されず、インクセットが3種類以上の反射率比の異なる白色インクを備えていてもよい。これにより、より連続的な階調表現を可能にしたり、色相や彩度の表現範囲をさらに広げることができる。
【0033】
本発明において白色インク毎の分光反射率比を求めるためには、白色インク毎にL値が72になるように記録媒体上に形成された白色画像を用いる。Lとは、L表色系における明度を表す指標である。本明細書におけるL値は、白色度の指標として用いており、L値が大きいほど白色度に優れていることを示す。L値は、JISZ8722に規定されている分光測光器を用いた分光測色方法に準じて測定される分光立体角反射率を基に、JISZ8729にしたがって算出することができる。具体的には、本発明におけるL値は、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、D50光源、観測視野2°の条件下において測定される分光立体角反射率を基に算出することができる。なお、分光測光器による分光立体角反射率の測定では、測定誤差を低減する観点から黒色台紙を用いて行うことが好ましい。
【0034】
黒色台紙は、記録媒体上に形成された画像の分光立体角反射率の測定時において、記録媒体上に白色画像が記録された面とは反対側の面を覆うためのものである。これにより、記録媒体上に記録された白色画像の分光立体角反射率の測定誤差を低減することができる。
【0035】
黒色台紙は、例えば、インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上にブラックインクを吐出させることにより形成することができる。黒色台紙用の記録媒体としては、普通紙、マット紙、光沢紙、ガラス、塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、基材にプラスチックや受容層をコーティングしたフィルム等が挙げられる。
【0036】
本発明においてL値が72になるように記録媒体上に形成された白色画像の分光反射率は、上述したL値の測定と同様に、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて測定することができる。
【0037】
複数の白色インク毎に記録媒体上に白色画像を形成する方法としては、例えば、インクセットをインクジェット記録装置(後述)に搭載して、ヘッドから白色インクを記録媒体上に吐出することにより行うことができる。
【0038】
白色画像を記録するために用いる記録媒体としては、例えば、普通紙、マット紙、光沢紙、ガラス、塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、基材にプラスチックやインク受容層をコーティングしたフィルム等が挙げられる。
【0039】
本実施形態にかかるインクセットは、複数の白色インクの他に、さらに一または複数の他のインクを備えたインクセットとしてもよい。インクセットに備えることができる他のインクとしては、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のカラーインク、ブラックインク、ライトブラックインク等が挙げられる。
【0040】
1.1.白色インク
本実施形態に係るインクセットは、第1白色インクと、第1白色インクとは反射率比の異なる第2白色インクと、を少なくとも備える。以下、本実施形態に係る第1白色インクおよび第2白色インク(以下、単に「白色インク」ともいう。)に含有可能な成分について説明する。
【0041】
1.1.1.白色顔料
白色インクは、白色顔料を含有することができる。白色顔料としては、例えば、金属酸化物粒子、中空構造を有する粒子等が挙げられる。白色インクは、白色顔料を1種類含んでいてもよいし2種類以上含んでいてもよい。
【0042】
白色顔料の含有量(固形分)は、白色インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。白色顔料の含有量が上記範囲を超えると、インクジェット記録装置に用いた場合においてヘッドの目詰まり等が発生する場合がある。一方、上記範囲未満であると、記録される画像の白色度等の色濃度が不足する傾向がある。
【0043】
なお、本願において「白色インク」とは、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に、duty100%以上で吐出されたインクの明度(L)および色度(a、b)が、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測した場合に、
70≦L≦100
−4.5≦a≦2
−6≦b≦2.5
の範囲を示すインクのことをいう。
【0044】
なお、本明細書において、「duty値」とは、下式で算出される値である。
【0045】
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
【0046】
(1)金属酸化物粒子
白色インクは、白色顔料として金属酸化物粒子を含有することができる。金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、白色度に優れているという観点から、二酸化チタンを粉末状にした二酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0047】
金属酸化物粒子の平均粒子径d50は、30nm以上600nm以下であることが好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径d50が上記範囲を超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、また、インクジェット記録装置に適用した場合において、ヘッドの目詰まり等が発生する場合がある。一方、金属酸化物粒子の平均粒子径d50が上記範囲未満であると、白色度が不足する傾向にある。
【0048】
また、白色顔料として二酸化チタン粒子を用いる場合において、二酸化チタン粒子の平均粒子径d50は、280nm以上440nm以下であることが好ましい。これにより、青みがかった色相を有する白色画像を容易に得ることができる。特に、二酸化チタン粒子の平均粒子径d50が小さくなるにつれて、得られる白色画像の色相は、青みが増す傾向にある。そのため、第1白色インクに含まれる二酸化チタン粒子と、第2白色インクに含まれる二酸化チタン粒子と、の粒子径が異なるインクセットを用いると、より連続的な階調表現が可能となる。
【0049】
二酸化チタン粒子としては、市販されているものを用いることができ、例えば、超微粒子酸化チタンTTOシリーズ(株式会社石原産業製)や、微粒子酸化チタン(テイカ株式会社製)が挙げられる。
【0050】
平均粒子径d50は、例えば、粒径加積曲線を用いて測定される。粒径加積曲線とは、インク等の液体中に分散された粒子について、粒子の直径および当該粒子の存在数を求めることができる測定を行った結果を統計的に処理して得られる曲線の一種である。粒径加積曲線は、粒子の直径を横軸に取り、粒子の質量(粒子を球と見なしたときの体積、粒子の密度、および粒子数の積)について、直径の小さい粒子から大きい粒子に向かって積算した値(積分値)を縦軸に取ったものである。そして、粒径d50とは、粒径加積曲線において、縦軸を規格化(測定された粒子の総質量を1と)したときに、縦軸の値が50%(0.50)となるときの横軸の値、すなわち粒子の直径のことをいう。金属酸化物粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA−EX150」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0051】
(2)中空構造を有する粒子
白色インクは、白色顔料として中空構造を有する粒子を含有することができる。中空構造を有する粒子としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている粒子を好ましく用いることができる。
【0052】
中空構造を有する粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、例えば以下のような公知の方法を適用することができる。中空構造を有する樹脂の調製方法としては、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空構造を有する粒子のエマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0053】
中空構造を有する粒子の平均粒子径(外径)(d50)は、200nm以上1000nm以下であることが好ましく、400nm以上800nm以下であることがより好ましく、600nm以上800nm以下であるとことが特に好ましい。中空構造を有する粒子の外径が上記範囲内にあれば、白色インク中の分散を良好に保つことができ、また、記録媒体に付着された際に、白色度が良好な画像を得ることができる。一方、外径が1000μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、インクジェット記録装置に適用した場合にヘッドの目詰まりなどが発生する場合がある。一方、外径が200nm未満であると、白色度が低下する場合がある。また、中空構造を有する粒子の内径(すなわち、上述したコアの外径)は、100nm以上800nm以下程度が適当である。中空構造を有する粒子の平均粒子径d50は、金属酸化物粒子の平均粒子径d50と同様の方法で測定することができる。
【0054】
なお、中空構造を有する粒子の平均粒子径(外径)(d50)が600nm以上800nm以下であると、黄みがかった色相を有する白色画像を容易に得ることができる。特に、中空構造を有する粒子の平均粒子径d50が大きくなるにつれて、得られる白色画像の色相の黄みが増す傾向にある。そのため、第1白色インクに含まれる中空構造を有する粒子と、第2白色インクに含まれる中空構造を有する粒子と、の粒子径が異なるインクセットを用いると、より連続的な階調表現が可能となる。
【0055】
また、上述したように、二酸化チタン粒子の平均粒子径d50が280nm以上440nm以下であると、青みがかった色相を有する白色画像を容易に得ることができる。そのため、第1白色インクに含まれる白色顔料として平均粒子径d50が280nm以上440nm以下の二酸化チタン粒子を用い、第2白色インクに含まれる白色顔料として平均粒子径d50が600nm以上800nm以下の中空構造を有する粒子を用いると、色相の異なる組み合わせのインクセットを容易に得ることができる。これにより、色相の表現範囲を容易に広げることができる。
【0056】
1.1.2.樹脂成分
白色インクは、水溶性および/または非水溶性の樹脂成分を含有することができる。該樹脂成分は、白色インクを固化させて白色インク固化物を記録媒体上に強固に定着させたり、白色インク中において白色顔料を分散保持させたりすることができる。樹脂成分は、インク中に溶解された状態またはインク中に分散された状態のいずれの状態であってもよい。
【0057】
樹脂成分としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を有するモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0058】
上記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、上記樹脂成分の中和当量以上であれば特に制限はない。
【0059】
上記樹脂成分の分子量は、重量平均分子量として1,000以上100,000以下の範囲内であることが好ましく、3,000以上10,000以下の範囲内であることがより好ましい。分子量が上記範囲内であることにより、白色顔料の水中での安定的な分散が得られ、またインクに適用した際の粘度制御等がしやすい。
【0060】
以上述べた樹脂成分としては市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0061】
樹脂成分の含有量(固形分)は、白色インクの全質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。樹脂成分の含有量がこの範囲内であると、白色インクを固化・定着させたり、白色顔料の分散性を向上できるという観点から好ましい。
【0062】
1.1.3.有機溶媒
白色インクは、有機溶媒を含有することができる。白色インクには、複数種の有機溶媒が含有されていてもよい。白色インクに用いる有機溶媒としては、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0063】
1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類は、記録媒体に対する白色インクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、記録媒体上に優れた画像を形成することができる。1,2−アルカンジオール類の含有量は、白色インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0064】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類は、白色インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を防止する作用を有する点から好ましく用いることができる。多価アルコール類の含有量は、白色インクの全質量に対して、2質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0065】
ピロリドン誘導体として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体は、樹脂成分の良好な溶解剤として作用することができる。ピロリドン誘導体の含有量は、白色インクの全質量に対して、3質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0066】
1.1.4.界面活性剤
白色インクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等が挙げられる。
【0067】
シリコン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。より詳しくは、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。シリコン系界面活性剤は、記録媒体上で白色インクの濃淡ムラや滲みを生じないように均一に広げる作用を有している点で好ましく用いることができる。シリコン系界面活性剤の含有量は、白色インクの全質量に対して、0.1質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。
【0068】
アセチレングリコール系界面活性剤として、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、DF110D、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、他の界面活性剤と比較して、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する。アセチレン系界面活性剤の含有量は、白色インクの全質量に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0069】
1.1.5.水
本実施形態に係る白色インクは、水を50%以上含有する、いわゆる水系インクであってもよい。水系インクは、非水系(溶剤系)インク(例えば、印刷物に用いるインクとしては特開2007−16103号)に比べて、印刷ヘッドに用いられているピエゾ素子や、印刷媒体に含まれる有機バインダー等への反応性が弱く、溶かしてしまう、腐食するといった不具合が少ない。また、非水系(溶剤系)インクでは、用いた溶剤が高沸点・低粘度であると、乾燥時間が非常にかかるという問題も生ずる。さらに、溶剤系インクに比べて水系インクは臭いも非常に抑えられており、半分以上が水であるので環境にも良いという利点がある。
【0070】
1.1.6.その他の成分
白色インクは、さらに、pH調整剤、ポリオレフィンワックス、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。これらの材料を添加すると、白色インクの有する特性をさらに向上させる点から好ましい。
【0071】
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0072】
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンまたはその誘導体から製造したワックスおよびそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、市販されているものを利用することができ、具体的には、ノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、AQUACER593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を用いることができる。ポリオレフィンワックスを白色インクに添加すると、画像の耐擦性を向上できるという観点から好ましい。ポリオレフィンワックスの含有量は、白色インクの全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上1質量%以下である。
【0073】
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
【0074】
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0075】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0076】
1.1.7.白色インクの物性
白色インクをインクジェット記録装置に用いる場合において、白色インクの20℃における粘度は、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。白色インクの20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルから白色インクの液滴が適量吐出され、液滴の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。白色インクの粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、白色インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
【0077】
2.液滴吐出装置
本実施形態に係る液滴吐出装置は、上述した複数の白色インクを有するインクセットを備える。本実施形態に係る液滴吐出装置は、上述した白色インクを液滴として吐出できるものであれば特に限定されない。以下、液滴吐出装置として、インクジェット記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置を用いた例について説明する。
【0078】
インクジェット記録装置は、インクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジ、インクカートリッジなどを備えたものを例示できる。上述した複数の白色インクを有するインクセットは、インクカートリッジに収容され、インクジェット式記録ヘッドに搭載することができる。
【0079】
インクジェット式記録ヘッドの方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に記録情報信号を偏放射線電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく記録情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と記録情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を記録情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。
【0080】
インクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。
【0081】
3.画像形成方法
本実施形態に係る画像形成方法は、液滴吐出装置を用いた画像形成方法であって、記録媒体上に前述したインクセットに備えられた第1白色インクを液滴として吐出する工程と、前記記録媒体上に前述したインクセットに備えられた第2白色インクを液滴として吐出する工程と、を含む。第1白色インクおよび第2インクについては、上記「1.インクセット」で説明したものと同様であるので、説明を省略する。以下、上述したインクジェット記録装置を用いた場合の画像形成方法の一例について説明する。
【0082】
まず、インクジェット式記録ヘッドから、第1白色インクの液滴を記録媒体上に吐出させた後、第2白色インクの液滴を記録媒体上に吐出させる。なお、第1白色インクと第2白色インクの吐出タイミングは、特に限定されず、第2白色インクを吐出した後に第1白色インクを吐出してもよいし、第1白色インクと第2白色インクとを同時に吐出してもよい。また、記録媒体上に吐出される第1白色インクおよび第2白色インクは、液滴重量や、打ち込み比を変化させることによって、得られる画像が所望の色相や彩度になるように調整することができる。このようにして、所望の色相や彩度を有する白色画像を記録媒体上に形成することができ、画像の彩度を詳細な範囲で調整することができる。
【0083】
なお、第1白色インクおよび第2白色インクの両方を吐出させて、白色画像を形成する方法について示したが、所望の色相を有する画像が1つの白色インクで再現できる場合には、1つの白色インクを用いて画像を形成すればよい。
【0084】
4.実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
4.1.白色インクの調製
白色インクの調製に用いた材料は、以下の通りである。
【0086】
・中空構造を有する粒子a(アクリルスチレン系中空樹脂、製品名:SX8782(D)、JSR株式会社製、平均粒子径d50:700nm)
・中空構造を有する粒子b(アクリルスチレン系中空樹脂、製品名:SX8782(D)、JSR株式会社製、平均粒子径d50:600nm)
・二酸化チタン粒子a(平均粒子径d50:280nm)
・二酸化チタン粒子b(平均粒子径d50:300nm)
・二酸化チタン粒子c(平均粒子径d50:360nm)
・二酸化チタン粒子d(平均粒子径d50:400nm)
・二酸化チタン粒子e(平均粒子径d50:440nm)
・スチレン−アクリル酸共重合体
・1,2−ヘキサンジオール
・グリセリン
・トリエタノールアミン
・シリコン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−348」)
・超純水
(1)白色インクA
表1に示す配合量で、中空構造を有する粒子a、スチレン−アクリル酸共重合体、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、トリエタノールアミン、シリコン系界面活性剤および超純水を混合撹拌して、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、白色インクAを得た。
【0087】
(2)白色インクB
中空構造を有する粒子aを二酸化チタン粒子aに換えた以外は、上記の白色インクAと同様にして、白色インクBを得た。
【0088】
(3)白色インクC
中空構造を有する粒子aを二酸化チタン粒子bに換えた以外は、上記の白色インクAと同様にして、白色インクCを得た。
【0089】
(4)白色インクD
中空構造を有する粒子aを二酸化チタン粒子cに換えた以外は、上記の白色インクAと同様にして、白色インクDを得た。
【0090】
(5)白色インクE
中空構造を有する粒子aを二酸化チタン粒子dに換えた以外は、上記の白色インクAと同様にして、白色インクEを得た。
【0091】
(6)白色インクF
中空構造を有する粒子aを二酸化チタン粒子eに換えた以外は、上記の白色インクAと同様にして、白色インクFを得た。
【0092】
(7)白色インクG
中空構造を有する粒子aを、二酸化チタン粒子aおよび中空構造を有する粒子bに換えた以外は、上記の白色インクAと同様にして、白色インクGを得た。
【0093】
【表1】

【0094】
4.2.分光反射率比の評価
(1)分光反射率の測定用サンプルの作成
白色インクA〜Gをインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「PX−G930」)の専用カートリッジのインク室にそれぞれ充填した。そして、インクカートリッジをプリンターに装着し、記録媒体(「OHPシート」コクヨ株式会社製)に対してベタパターン画像の記録を行った。記録は、解像度1440×1440dpiで、ベタパターン画像のL値が72になるようにduty値を変化させることによって調整した。このようにして、分光反射率の測定用サンプルA〜Gを得た。なお、得られた記録物は、目視観察では白色を呈した。
【0095】
(2)分光反射率の測定
分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、D50光源、視野角2度の条件の下、分光反射率の測定用サンプルA〜GのL値を測定して、各サンプルのL値が72であることを確認した。また、L値が72における各サンプルのC値を併せて測定した。
【0096】
次に、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、D50光源、観測視野2°の条件の下、測定波長範囲380nm以上730nm以下における分光反射率を測定した。得られた分光反射率の値を基にして、分光反射率の測定用サンプルA〜G毎に上述した分光反射率比を算出した。
【0097】
なお、上記の分光測光器を用いた測定は、サンプルの測定面とは反対側の面を黒色台紙で覆って行った。黒色台紙は以下のように作成した。まず、フォトブラックインク(ICBK33、セイコーエプソン株式会社製)をインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「PX−G930」)の専用カートリッジのブラックインク室に充填して、インクカートリッジをプリンターに装着した。次いで、プリンターに接続されたPCのソフトウェア上の画像入力データを「(R,G,B)=(0,0,0)」、「色補正なし」の条件に設定した。そして、記録媒体(「写真用紙<光沢>」セイコーエプソン株式会社製)に対してベタパターン画像の記録を行った。記録は、解像度1440×1440dpiで、100%dutyで行った。このようにして得られた黒色台紙を分光測光器を用いた測定に使用した。なお、黒色台紙を用いた場合は、白色台紙を用いた場合に比べてL値は低い値を示すこととなる。
【0098】
4.3.白色インクの打ち込み比毎の彩度評価
(1)彩度評価用サンプルの作成
白色インクAおよび白色インクBを用いて、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名「PX−G930」)の専用カートリッジのインク室にそれぞれ充填した。そして、インクカートリッジをプリンターに装着し、記録媒体(「OHPシート」コクヨ株式会社製)に対して、白色インクAおよび白色インクBの打ち込み比毎にduty値を変化させて、彩度評価用サンプルを形成した。
【0099】
なお、記録媒体に対する白色インクAと白色インクBとの打ち込み比(白色インクA:白色インクB)は、100:0(以下、「比率1」ともいう。)、75:25(以下、「比率2」ともいう。)、50:50(以下、「比率3」ともいう。)、25:75(以下、「比率4」ともいう。)、0:100(以下、「比率5」ともいう。)、とした。
【0100】
(2)彩度の測定
分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、得られた彩度評価用サンプル毎にL値およびC値を測定した。なお、このときの測定条件は、「4.2.分光反射率比の評価」と同様にした。
【0101】
4.4.評価結果
4.4.1.分光反射率の測定結果
図1〜図3は、反射率測定用サンプルA〜Gの分光反射率分布図を示すものである。また、表2は、反射率測定用サンプル毎の430nmにおける分光反射率、680nmにおける分光反射率、分光反射率比、および彩度(C)の測定結果を示すものである。また、図4は、反射率測定用サンプルA〜Gの分光反射率比と彩度(C)との相関を示す図である。図4に示すように、分光反射率比が高いほど、彩度(C)が高いことがわかる。
【0102】
【表2】

【0103】
また、得られた反射率測定用サンプルA〜Gを目視にて色相を判定したところ、反射率比が高いほど青みがかった色相を備えており、反射率比が低いほど黄みがかった色相を備えていることが確認できた。特に、反射率比が1.25以上である反射率測定用サンプルB〜Fは、青みの強い色相を備えた白色画像であった。また、反射率比が1.1以下である反射率測定用サンプルAは、黄みの強い色相を備えた白色画像であった。
【0104】
以上の分光反射率比の測定結果から、複数の白色インクをインクセットとして組み合わせる場合において、白色インク間の反射率比の差が大きい程、彩度や色相の表現範囲を広げられることが示された。
【0105】
4.4.2.彩度評価用サンプルの測定結果
図5は、各比率を維持したままduty値を上昇させた場合における、C値の変化を表したものである。これによって1つの白色インク(例えば白色インクA、比率1のみ)しか備えていない場合は、広い範囲の彩度が再現出来ないことがわかる。一方、2つの白色インク(例えば白色インクAおよび白色インクB)を持ったインクセットであれば、duty値を調整するとさらに広い範囲の彩度が調整可能になる事が示された。また、打ち込み率も調整できる場合はさらに非常に広い範囲の彩度が表現出来ることも示された。
【0106】
図6は、白色インクAおよび白色インクBの打ち込み比毎にduty値を上昇させた場合における彩度(C値)の表現範囲を示すものである。図6において、横軸は白色度(L値)を示すものであり、縦軸は彩度(C値)を示すものである。なお、白色インクを用いた記録において、白色度(L値)とduty値は比例関係にあり、duty値を高くすると白色度(L値)も比例して高くなる。
【0107】
特定のduty値(L値)を設定して白色インクを単独で用いて白色画像を形成すると、彩度を1点でしか表現できない。一方、インクセットとして複数の白色インクを有していると、特定のduty値(もしくはL値)を設定しても、白色インク毎の打ち込み比を変えることにより白色インクの彩度を変化させることができる。具体的には、白色インクAおよび白色インクBを備えたインクセットを用いて白色インクの打ち込み比を変化させると、図6における比率2〜比率4の曲線上の彩度を表現できることが確認できた。このことから、白色インクAと白色インクBとの打ち込み比を細かく変化させると、比率1の曲線と比率5の曲線に挟まれた領域の彩度を表現できることが示された。このように、反射率比の異なる2種類以上の白色インクを備えたインクセットは、彩度を詳細な範囲で表現できることが示された。
【0108】
さらに、記録媒体に対する白色インクAと白色インクBとの打ち込み比35:65(以下、「比率6」ともいう。)、60:40(以下、「比率7」ともいう。)、90:10(以下、「比率8」ともいう。)を加え、白色度(L値)が70以上を示す範囲においての彩度の変化を図7に示す。この結果より、彩度約8.2から約2.2の範囲を8つの比率パターンによりほぼ全て表現することが可能となり、黒色台紙を用いて白色度(L値)が70以上を示す非常に困難な条件化でも、さらに打ち込み比を調整することにより詳細に彩度を表現出来ることが示された。
【0109】
一方、白色インクBを100%dutyで記録媒体に記録し、それに対してライトシアンインク(ICLC55、セイコーエプソン社製)をduty1%、2%、3%で打ち込みを行い、黒色台紙を用いて白色度と彩度を測定した。この結果を表3に示す。また、duty値を1%上げていくことによる彩度(C値)の変化率を表3に併せて示した。この結果から明らかな通り、濃度の薄いライトシアンインク(Lc)をduty1%刻みで用いても、彩度(C値)を0.3前後刻みでしか表現が出来ず、満足のいく結果ではなかった。
【0110】
【表3】

【0111】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の白色インクを有するインクセットであって、
前記インクセットは、第1白色インクと、該第1白色インクとは分光反射率比が異なる第2白色インクと、を備えているインクセット。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1白色インクと、前記第2白色インクとは、互いに異なる色材が添加されている、インクセット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1白色インクの前記分光反射率比と前記第2白色インクの前記分光反射率比との差は、0.14以上である、インクセット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記第1白色インクの前記分光反射率比は、1.25以上であり、前記第2白色インクの前記分光反射率比は、1.1以下である、インクセット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記第1白色インクは、二酸化チタン粒子を含む、インクセット。
【請求項6】
請求項5において、
前記二酸化チタン粒子の平均粒子径d50は、280nm以上440nm以下である、インクセット。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記第2白色インクは、中空構造を有する粒子を含む、インクセット。
【請求項8】
液滴吐出装置を用いた画像形成方法であって、
記録媒体上に請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクセットに備えられた第1白色インクを液滴として吐出する工程と、
前記記録媒体上に請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクセットに備えられた第2白色インクを液滴として吐出する工程と、
を含む、画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−17383(P2012−17383A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154650(P2010−154650)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】