説明

インクセットおよび記録物

【課題】精細度が高くかつ金属特有の光沢感に優れた記録物の形成に好適に用いることのできるインクセットを提供すること、および、精細度が高くかつ金属特有の光沢感に優れた記録物を提供すること。
【解決手段】本発明のインクセットは、インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インクを複数種備えるものであって、前記紫外線硬化型インクジェット用インクとして、鱗片状をなし、金属粒子の表面に表面処理が施されてなる第1の粒子を含む第1のインクと、前記第1の粒子よりも表面張力が大きい第2の粒子を含む第2のインクと、を備えることを特徴とする。このうち、第1の粒子に施された表面処理は、金属粒子の表面にフッ素系化合物を含む被膜を成膜する処理であり、第2の粒子は、金属粒子の表面にリン酸エステル系化合物を含む被膜を施してなる粒子であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセットおよび記録物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属光沢を有する印刷物には、金属特有の優れた美感、質感を背景にした高い需要がある。
従来、金属光沢を有する印刷物を作製する際には、アルミニウム粒子等の金属粒子を含むインキによるグラビア印刷やスクリーン印刷等の他、金属箔を用いた箔押し印刷や熱転写印刷等が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの印刷法は、大規模または高価な装置が必要な上、印刷後に廃棄されるインキや金属箔も少なくないため、ランニングコストが高い。また、印刷時の騒音が大きい等の課題も抱えている。
さらに、これらの方法には、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難であるといった課題もある。
【0004】
他方、顔料または染料を含む組成物による記録媒体への記録方法として、インクジェット法による記録方法が用いられている。インクジェット法では、微細なパターンの形成や、曲面部への記録にも好適に適用できるという点で優れている。また、近年、インクジェット法において、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型インクジェット用インク)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、紫外線硬化型インクジェット用インクでは、顔料や染料の代わりに金属粉末を適用しようとした場合、インク中への紫外線透過率が低下するため、紫外線を長時間照射しなければならず、その間にインクが滲むなどして記録物の精細度が低下するといった問題があった。また、紫外線透過率を高めるため、インク中の金属粉末の含有率を下げると、記録物において金属特有の光沢感(高い輝度、明度)等の特性が十分に発揮されないという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−57548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、精細度が高くかつ金属特有の光沢感に優れた記録物の形成に好適に用いることのできるインクセットを提供すること、および、精細度が高くかつ金属特有の光沢感に優れた記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のインクセットは、インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インクを複数種備えるインクセットであって、
前記紫外線硬化型インクジェット用インクは、鱗片状をなし、金属粒子の表面に表面処理が施されてなる第1の粒子を含む第1のインクと、前記第1の粒子よりも表面張力が大きい第2の粒子を含む第2のインクと、を備えることを特徴とする。
これにより、精細度が高くかつ金属特有の光沢感に優れた記録物の形成に好適に用いることのできるインクセットが得られる。
【0009】
本発明のインクセットでは、前記第1の粒子に施された前記表面処理は、前記金属粒子の表面にフッ素系化合物を含む被膜を成膜する処理であることが好ましい。
これにより、第1の粒子の表面に十分な撥液性が付与され、第1の粒子の表面張力を第2の粒子よりも確実に小さくすることができる。したがって、第1のインクを用いて製造される印刷部において、金属材料が本来有している光沢感等の特性をより効果的に発揮させることができる。さらに、フッ素系化合物を含む被膜を備えた第1の粒子を用いることで、第1のインク中に表面張力の大きい重合性化合物が含まれている場合でも、第1のインクを用いて製造される記録物において、第1の粒子を印刷部の外表面付近に確実に配列(リーフィング)させることができる。
【0010】
本発明のインクセットでは、前記第2の粒子は、鱗片状をなすものであることが好ましい。
これにより、第2の粒子が吐出物の表面に配列せず、内部に分散した場合でも、これが硬化したときには十分な光沢感を呈する記録物が得られる。このため、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とを高度に両立させることができる。
【0011】
本発明のインクセットでは、前記第2の粒子は、金属粒子の表面に前記第1の粒子よりも表面張力が大きくなるよう表面処理が施されてなる粒子であることが好ましい。
これにより、金属粒子の組成は同じであっても、表面処理の種類を変えることのみで、第1の粒子と第2の粒子とを製造することができるので、粒子の挙動を細かく制御するにあたっては有用である。
【0012】
本発明のインクセットでは、前記第2の粒子に施された前記表面処理は、金属粒子の表面にリン酸エステル系化合物を含む被膜を成膜する処理であることが好ましい。
これにより、第2の粒子の表面に適度な撥液性が付与され、第2の粒子の表面は、第1の粒子に比べて表面張力の大きなものとなり、第2の粒子は吐出物中に確実に分散するものとなる。
【0013】
本発明のインクセットでは、前記第1の粒子中の前記金属粒子は、アルミニウムを主材料とするものであることが好ましい。
アルミニウムは光輝性に優れていることから、金属光沢性の特に高い記録物を製造し得るインクセットが得られる。
本発明のインクセットでは、前記第1の粒子中の前記金属粒子および前記第2の粒子中の前記金属粒子は、互いに同じ組成の金属材料で構成されていることが好ましい。
これにより、粒径が同程度であれば、第2の粒子の質量は、第1の粒子の質量と同程度となり、表面の状態に応じて吐出物内での粒子挙動を制御し易くなる。このため、表面処理の有無や種類を適宜設定することにより、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とを両立させ易くなる。
【0014】
本発明のインクセットでは、前記第1の粒子の平均粒径が500nm以上2.0μm以下であることが好ましい。
これにより、第1のインクを用いて製造される印刷部の光沢感、高級感をさらに優れたものにしつつ、第1の粒子の表面積が最適化され、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
【0015】
本発明のインクセットでは、前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物としてフェノキシエチルアクリレートを含むものであることが好ましい。
これにより、第1のインクの保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成される印刷部の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
【0016】
本発明のインクセットでは、前記第1のインクは、前記重合性化合物として、前記フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
これにより、第1のインクの保存安定性を特に優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成される印刷部の耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
【0017】
本発明のインクセットでは、前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよびアミノアクリレートの少なくとも一方を含むものであることが好ましい。
これにより、第1のインクの保存安定性をより優れたものとしつつ、形成される印刷部の耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
【0018】
本発明の記録物は、鱗片状をなし、金属粒子の表面に表面処理が施されてなる第1の粒子を含み、紫外線の照射により硬化する第1のインクと、前記第1の粒子よりも表面張力が大きい第2の粒子を含み、紫外線の照射により硬化する第2のインクとを、インクジェット方式により記録媒体上の同じ位置に付与し、紫外線を照射することにより製造されたことを特徴とする。
これにより、精細度が高くかつ金属特有の光沢感に優れた記録物を得ることができる。
【0019】
本発明の記録物は、前記第2の粒子の含有率が前記第1の粒子の含有率より大きくなるよう、前記第1のインクおよび前記第2のインクが付与されてなることが好ましい。
これにより、精細度を確保するために必要最小限の硬化性を有するとともに、美感を確保するために必要最小限の光反射性を有する記録物が得られる。すなわち、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とのバランスをより最適化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[インクセット]
ところで、従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難であるといった問題があった。また、箔押し印刷では、オンデマンド性が低く、多品種生産への対応が困難であるという問題があった。
【0021】
他方、顔料または染料を含む組成物による記録媒体への記録方法として、インクジェット法による記録方法が用いられている。インクジェット法では、微細な印刷部の形成や、曲面部への記録にも好適に適用できるという点で優れている。また、近年、インクジェット法において、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型インクジェット用インク)が用いられている。
【0022】
しかしながら、紫外線硬化型インクジェット用インクでは、顔料や染料の代わりに金属粉末を適用しようとした場合、インク中への紫外線透過率が低下するため、紫外線を長時間照射しなければならず、その間にインクが滲むなどして記録物の精細度が低下するといった問題や、紫外線透過率を高めるため、インク中の金属粉末の含有率を下げた場合には、記録物にムラが発生したり、記録物において金属特有の光沢感(高い輝度、明度)等の特性が十分に発揮されないという問題を招いていた。
【0023】
そこで、発明者は、上記のような問題を解決する目的で鋭意研究を行った結果、本発明に至った。すなわち、本発明のインクセットは、インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インク(インク)を複数種備えるものであって、第1の粒子を含む第1のインクと、第2の粒子を含む第2のインクと、を備えており、このうち、第1の粒子は、鱗片状をなし、金属粒子の表面に表面処理が施されてなるものであり、第2の粒子は、第1の粒子よりも表面張力が大きいものである。
このような第1のインクと第2のインクとを備えることにより、本発明のインクセットは、精細度が高くかつ金属特有の光沢感に優れた記録物を形成し得るものとなる。
【0024】
≪第1のインク≫
本発明のインクセットを構成する紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第1のインクは、インクジェット方式により吐出されるものであり、第1の粒子と、紫外線の照射により重合する重合性化合物とを含むものである。
<第1の粒子>
本発明のインクセットを構成する第1のインクは、上述したように、鱗片状をなし、金属粒子の表面に表面処理が施されてなる第1の粒子を多数含むものである。
【0025】
第1の粒子の形状としては、特に限定されず、略球状、鱗片状、針状等の形状が挙げられる。このうち、第1の粒子は鱗片状をなしているのが好ましい。このような形状の粒子は、インクジェット法により記録媒体上に液滴として吐出されたとき、自ずと、その主面が記録媒体の表面形状に沿うように配置されることとなる。その結果、得られた印刷部は、一定の向きに配置された金属粒子に基づいて、優れた光反射特性を有するものとなり、金属材料が本来有している金属光沢感を十分に発現したものとなる。よって、得られた印刷部は、美感、質感において特に優れたものとなる。
【0026】
本発明において鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいい、特に、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S[μm]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S[μm]に対する比率(S/S)が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは8以上である。この値としては、例えば、任意の10個の粒子について観察を行い、これらの粒子についての算出される値の平均値を採用することができる。
【0027】
第1の粒子の構成材料は、特に限定されないが、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、ハフニウム、タンタル、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマスのような金属の単体あるいはこれらの合金、混合物が挙げられる。合金としては、ステンレス鋼、真鍮、ジュラルミン、センダスト、Ni−Fe合金等が挙げられる。
【0028】
このうち、光反射特性の観点から、アルミニウムを主材料とする金属粒子が好ましく用いられる。アルミニウムは光輝性に優れていることから、金属光沢性の特に高い記録物を製造し得るインクセットが得られる。なお、主材料とは、アルミニウムの含有率が50質量%超のアルミニウム基材料であり、アルミニウム単体の他、アルミニウム系合金等を含む材料を指す。
【0029】
また、金属粒子中には、前記構成材料が60質量%以上含まれているのが好ましく、70質量%以上含まれているのが好ましい。この場合、上記の構成材料以外の成分としては、金属粒子の製造時に不可避的に混入する成分等が挙げられ、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ケイ素、リン、硫黄、ヒ素、セレン、テルル等が挙げられる。
また、第1の金属粉末は、粒子の表層と内部とで構成材料が異なっていてもよい。この場合、表層の構成材料が前述したような材料であればよく、内部の構成材料については特に限定されず、表層とは異なる金属材料の他、樹脂材料、セラミックス材料等であってもよい。一方、表層の形成には、例えば、各種蒸着法、各種めっき法等が用いられる。
【0030】
第1の粒子の平均粒径は、500nm以上2μm以下であるのが好ましく、800nm以上1.8μm以下であるのがより好ましい。これにより、第1のインクを用いて製造される印刷部の光沢感、高級感をさらに優れたものにしつつ、第1の粒子の表面積が最適化され、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。なお、本発明において、平均粒径とは、個数基準の平均粒径のことをいい、投影面積が最大となる方向から観察した際の面積Sと同一の面積を有する真円の直径の平均値のことをいう。
【0031】
第1のインク中の第1の粒子の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%3質量%以下であるのがより好ましい。これにより、第1のインクを用いて製造される印刷部の光沢感、高級感をさらに優れたものにしつつ、金属粒子による触媒作用が著しく増大するのを抑制されることとなる。この触媒作用とは、インク中に含まれる金属粒子が、インク中に含まれる重合性化合物の重合反応を促進する作用であり、重合性化合物の重合反応が進んでしまうと、保存中のインクが意図せず硬化してしまうことになるため、かかる触媒作用はできるだけ抑えられる必要がある。第1の粒子の含有量が前記範囲内であれば、かかる触媒作用を最小限に抑えることができ、前述の光沢感や高級感と保存安定性とを高度に両立し得る第1のインクが得られる。
【0032】
このような金属粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよく、例えば、インゴット等を粉砕することにより得られた粗大粉末を所望の粒径まで粉砕する粉砕法、蒸着等の気相成膜法等によりフィルム上に形成した金属膜を前記フィルムから剥離・粉砕させる方法(特に、液体中において剥離・粉砕を行い、前記液体中に分散させる方法)、化学的な造粒法等の方法により製造することができる。
【0033】
このうち、フィルム上に気相成膜法により金属膜を形成し、その後、当該金属膜を粉砕することにより得られた金属粒子が好ましく用いられる。このようにして得られた金属粒子は、金属が本来有している光沢感等をより効果的に表現するものとなる。また、各粒子間で特性のばらつきを抑制することができる。また、この方法を用いることにより、比較的薄い金属粒子であっても効率よく製造することができる。
【0034】
用いられるフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートのようなプラスチックフィルムが挙げられる。また、フィルムは、成膜面に離型剤等が付与されているものであってもよい。
また、前記粉砕は、液体中において、前記金属膜に超音波振動を付与することにより行われるものであるのが好ましい。これにより、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきの発生を抑制することができる。
【0035】
また、上記のような方法で粉砕を行う場合、前記液体としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン等のエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、アセトニトリル等の極性化合物を好適に用いることができる。このような液体よりなる群から選択される1種または2種以上を含むものを用いるのが好ましい。これにより、金属粒子の不本意な酸化等を防止しつつ、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきを特に小さいものとすることができる。
【0036】
また、各種アトマイズ法により製造された金属粉末を用いるようにしてもよい。
アトマイズ法は、溶融金属(溶湯)を水やガス等の冷却剤に衝突させ、微粉化して製造する方法である。このため、粒径の揃った金属粉末が得られる。したがって、アトマイズ法で製造された金属粉末を用いることにより、均一性の高い印刷部を製造可能な第1のインクが得られる。また、アトマイズ法では、粗大粒子が発生し難いので、第1のインクの吐出安定性をより高めることができる。
【0037】
なお、水アトマイズ法では、高温溶解した金属を水に衝突させて粉末を作ることから、水アトマイズ法により製造された粒子は、その表面が酸化し、化学的安定性の高いものとなり、水やモノマーとの反応性が低いものとなる。このため、第1のインクを用いて形成される印刷部の明度、輝度をさらに高いものとすることができ、その結果、インクセット全体として特に優れた光沢感を有する印刷部を形成することができる。また、第1のインクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
【0038】
また、金属粒子を鱗片状にするためには、アトマイズ法で金属粒子を製造した後、圧延処理を施すようにすればよい。圧延処理としては、例えば、ロール圧延、ボールミル、スタンプミル等を用いた処理が用いられる。
第1の粒子は、上述したような金属粒子の表面に表面処理が施されてなるものであり、第2の粒子より表面張力が小さいものである。このような第1の粒子は、第1のインク中の液相成分に対する撥液性が向上し、第1の粒子を印刷部の外表面付近に確実に配列(リーフィング)させることができる。その結果、記録物は金属特有の光沢感を有するものとなる。
【0039】
第1の粒子に施される表面処理としては、第1のインク中において第1の粒子の表面に撥液性を付与する処理が挙げられる。具体的には、金属粒子の表面を改質して撥液性を付与する表面改質処理、金属粒子の表面に被膜を成膜する成膜処理等が挙げられる。
このうち、金属粒子の表面に成膜される被膜の構成材料としては、第1の粒子の表面に撥液性を付与する材料であればよく、例えば、カップリング剤、リン酸エステル系化合物、カルボン酸系化合物等が挙げられる。以下、各材料について詳述する。
【0040】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられるが、特に、シリル基および炭化水素基を有するシラン化合物(シランカップリング剤)が好ましく用いられる。このような化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル―O―メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェ
ニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン等を挙げることができる。
【0041】
(リン酸エステル)
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸とアルコールとが脱水縮合することにより得られるような化学構造を有するものを用いることができる。このような化合物の具体例としては、ラウリルリン酸エステル、ラウリル−2リン酸エステル、ステアレス−2リン酸、2−(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸等を挙げることができる。
【0042】
(カルボン酸)
カルボン酸としては、炭化水素基と、カルボキシル基とを有する化合物(脂肪酸)を用いることができる。このような化合物の具体例としては、デカン酸、テトラデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸等を挙げることができる。
なお、第1のインクは、前述したように紫外線の照射により硬化するものであるが、このようなインクに金属粒子が含まれていると、金属粒子が硬化反応の触媒として機能するため、紫外線を照射しなくてもインクがゲル化し、粘度上昇等の問題を招くことによりインクの保存安定性、吐出安定性が阻害されることを本発明者は見出していた。これに対し、上述したような被膜が金属粒子の表面に成膜されることにより、かかる問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、表面に被膜が成膜された第1の粒子においては、この被膜により、金属粒子とインク中の重合性化合物との接触が防止され、インクの反応を抑える。その結果、保存安定性および吐出安定性に優れた第1のインクが得られる。
【0043】
また、金属粒子の表面に成膜される被膜は、特に分子内に少なくとも1個のフッ素原子を含有するフッ素系化合物を含むものであるのが好ましい。フッ素系化合物を用いることにより、第1の粒子の表面に十分な撥液性が付与され、第1の粒子の表面張力を第2の粒子よりも確実に小さくすることができる。したがって、第1のインクを用いて製造される印刷部において、金属材料が本来有している光沢感等の特性をより効果的に発揮させることができる。そして、フッ素系化合物を含む被膜を備えた第1の粒子を用いることで、第1のインク中に表面張力の大きい重合性化合物が含まれている場合でも、第1のインクを用いて製造される記録物において、第1の粒子を印刷部の外表面付近に確実に配列(リーフィング)させることができる。このため、重合性化合物の選択の幅が広がり、金属材料が本体有している光沢感を犠牲にすることなく、第1のインクの特性や第1のインクを用いて製造される記録物の特性(例えば、第1のインクの粘度、保存安定性、吐出安定性、記録物の耐擦性等)を容易に調整することができる。
【0044】
また、フッ素系化合物を含む被膜は、第1のインク中における第1の粒子の化学的安定性および分散安定性を十分に優れたものとし、第1のインクの保存安定性、長期間にわたる吐出安定性を十分に優れたものとすることができる。
また、前記フッ素系化合物は、特にパーフルオロアルキル構造を有するものであるのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性をさらに優れたものとし、第1のインクを用いて製造される印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
【0045】
また、前記フッ素系化合物としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を含むものであればよいが、より具体的には、例えば、上述したようなシランカップリング剤、リン酸エステル、カルボン酸が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された構造を有する化合物(フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸エステル、フッ素置換脂肪酸等)等が挙げられる。これらの化合物を用いることにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
【0046】
特に、フッ素系シラン化合物としては、下記式(A)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
SiX(3−a) (A)
(式(A)中、Rは、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、Xは、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、aは、1以上3以下の整数である。)
これにより、第1のインクの保存安定性を特に優れたものとし、第1のインクを用いて製造される印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
【0047】
式(A)中のRとしては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、さらに、分子構造に含まれる水素原子(フッ素原子で置換されていない水素原子)のうちの少なくとも一部がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基等で置換されていてもよく、炭素鎖中に−O−、−S−、−NH−、−N=等のヘテロ原子やベンゼン等の芳香族環が挟まっていてもよい。Rの具体例としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたフェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等が挙げられる。
【0048】
式(A)で表されるフッ素系シラン化合物の具体例としては、シリル基および炭化水素基を有するシラン化合物として例示した化合物が有する水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する化合物を挙げることができる。
パーフルオロアルキル構造(C2n+1)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(B)で表されるものが挙げられる。
2n+1(CHSiX(3−a) (B)
(式(B)中、Xは、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、nは、1以上14以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
【0049】
このような構造を有する化合物の具体例としては、CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF11−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OC、CF(CF−CHCH−Si(C)(OC等が挙げられる。
【0050】
また、フッ素系シラン化合物としては、上述したパーフルオロアルキル構造(C2n+1)の代わりにパーフルオロアルキルエーテル構造(C2n+1O)を有するものを用いることもできる。
パーフルオロアルキルエーテル構造(C2n+1O)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(C)で表されるものが挙げられる。
【0051】
2p+1O(C2pO)(CHSiX(3−a) (C)
(式(C)中、Xは、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上10以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
【0052】
このような構造を有する化合物の具体例としては、CFO(CFO)−CHCH−Si(OC、CFO(CO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)(CFO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)−CHCH−Si(OCH、CFO(CO)−CHCH−Si(CH)(OC、CFO(CO)−CHCH−Si(C)(OCH等が挙げられる。
【0053】
また、フッ素系リン酸エステルとしては、下記式(D)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
POR(OH)3−n (D)
(式(D)中、Rは、CF(CF−、CF(CF(CH−、CF(CF(CHO)−、CF(CFO−、または、CF(CF(CHO−であり、nは1以上3以下の整数であり、mは4以上20以下の整数であり、lは4以上20以下の整数である。)
【0054】
これにより、第1のインクの保存安定性を特に優れたものとし、第1のインクを用いて製造される印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(D)中、mは、4以上16以下の整数であるのが好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(D)中、lは、4以上16以下の整数であるのが好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
【0055】
<重合性化合物>
第1のインクは、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である重合性化合物を含むものである。このような成分を含むことにより、インクセットを用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。重合性化合物は、液状をなすものであり、第1のインクにおいて、第1の粒子を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。これにより、別途、記録物の製造過程において除去される(蒸発する)分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止することができる。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、インクセットを用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとすることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、第1のインクは、メディア対応性に優れたものとなる。
【0056】
重合性化合物としては、紫外線の照射により重合する成分であればよく、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)等を用いることができるが、第1のインクは、重合性化合物として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、第1のインクの吐出安定性を特に優れたものとする上で有利である。
【0057】
重合性化合物としてのモノマーとしては、例えば、イソボニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、PO変性ノニルフェノールアクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、EO変性2エチルヘキシルアクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、EO変性フェノールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、EO変性フェノールアクリレート、EO変性クレゾールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール300ジアクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピパレートジアクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、ポリエチレングリコール600ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1.9−ノナンジオールジアクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。中でも、4−ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0058】
特に、第1のインクは、重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートを含むものであるのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成される印刷部の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
【0059】
また、第1のインクは、重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであるのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性を特に優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の第1のインクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成される印刷部の耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
【0060】
また、第1のインクは、重合性化合物として、モノマー以外に、オリゴマーを含むものであってもよい。特に多官能のオリゴマーを含むものであるのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性を優れたものとしつつ、形成される印刷部の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。なお、本発明では、重合性化合物の中でも、分子の骨格中に繰り返し構造を有し、分子量が600以上のものをオリゴマーと呼ぶ。オリゴマーとしては、繰り返し構造がウレタンであるウレタンオリゴマー、繰り返し構造がエポキシであるエポキシオリゴマー等が好ましく用いられる。
また、第1のインクは、重合性化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよびアミノアクリレートの少なくとも一方を含むのが好ましい。これにより、第1のインクの保存安定性をより優れたものとしつつ、形成される印刷部の耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
【0061】
<その他の成分>
第1のインクは、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
【0062】
光重合開始剤は、紫外線照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記重合性化合物の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
【0063】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
【0064】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
第1のインク中における光重合開始剤の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下であるのが好ましい。光重合開始剤の含有量が前記範囲であると、紫外線硬化速度が十分大きく、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色がほとんどなくなる。
第1のインクがスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により記録物の表面が平滑になり、耐擦性が向上する。
【0066】
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
第1のインクが分散剤を含むものであると、金属粉末の分散性を優れたものとすることができ、第1のインクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0067】
また、第1のインクは、記録物の製造工程において除去される(蒸発する)有機溶剤を含まないものであるのが好ましい。これにより、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を効果的に防止することができる。
第1のインクの室温(20℃)での粘度は、20mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる。
【0068】
≪第2のインク≫
本発明のインクセットを構成する紫外線硬化型インクジェット用インクとしての第2のインクは、インクジェット方式により吐出されるものであり、第2の粒子と、紫外線の照射により重合する重合性化合物とを含むものである。
<第2の粒子>
上述したように、本発明のインクセットを構成する第2のインクは、第1の粒子よりも表面張力が大きい第2の粒子を多数含むものである。
第1の粒子よりも表面張力が大きい第2の粒子を含む第2のインクが、前記第1の粒子を含む第1のインクとともに吐出されたとき、吐出物において第1の粒子が相対的に小さい表面張力に基づいて吐出物の表面側に配列する一方、第2の粒子は相対的に大きい表面張力に基づいて第1の粒子よりも吐出物の内側に分散する。
【0069】
ここで、仮に、第2の粒子が含まれない場合、吐出物には第1の粒子しか存在せず、したがって吐出物の表面側には第1の粒子が配列する。この場合、吐出物の表面が第1の粒子で覆われることとなり、吐出物を硬化させるため紫外線を照射したとしても、その紫外線は吐出物の内部にまで届き難い。このため、吐出物の内部で硬化が進み難いという問題があった。一方、記録物においてムラを抑えるとともに金属特有の光沢感等を一定量生じさせるためには、第1のインク中に十分な割合の第1の粒子を含有させておく必要がある。したがって、第2の粒子が含まれない場合、吐出物の硬化性と記録物における光沢感という相反する特性を両立させることができなかった。
【0070】
これに対し、第2の粒子を含む第2のインクが用いられることにより、第2の粒子を入れる分、第1のインク中の第1の粒子の割合を下げることができる。なお、第1の粒子の割合を下げたとしても、第2の粒子が入れられているため、光沢感等の著しい低下が防止される。そして、前述したように、第2の粒子は、第1の粒子よりも内側に分散するため、吐出物の内部にまで紫外線が届き易くなり、吐出物の硬化性も確保することができる。そして、第2の粒子が、その構成材料や粒子形状に基づき光反射性を有している場合、これが吐出物の内部に分散していると、紫外線を吐出物の全体にわたって散乱させるため、吐出物の硬化性が特に向上する。したがって、本発明のインクセットによれば、吐出物における優れた硬化性と、記録物における優れた光沢感とを、高度に両立することができる。その結果、インクジェット法により液滴吐出されることで、精細度が高くかつ金属特有の光沢感等に優れた記録物を確実に形成することができる。
【0071】
ここで、第1の粒子や第2の粒子の表面張力とは、各粒子の表面の界面張力のうち、空気との界面に生じる界面張力である。表面張力の測定は、例えばJIS R 3257に規定されたぬれ性試験方法等により行うことができ、単位にはmN/m等が用いられる。
前述したように、第2の粒子の表面張力は第1の粒子の表面張力よりも大きければよいが、その差は5mN/m以上であるのが好ましく、7mN/m以上40mN/m以下であるのがより好ましく、10mN/m以上30mN/m以下であるのがさらに好ましい。表面張力の差を前記範囲内とすることにより、第2の粒子を含む第2のインクが吐出された際、第2の粒子は吐出物の表面に配列することなく内側に分散し、吐出物の内部における紫外線の透過性が確実に高くなる。なお、表面張力の差が前記下限値より小さい場合、第2の粒子も第1の粒子と同じように表面に配列し易くなり、吐出物の硬化性が低下するおそれがあり、一方、表面張力の差が前記下限値より大きい場合、第2の粒子の表面張力が相対的に大きくなり過ぎて、第2の粒子が沈降し易くなるおそれがある。この場合、記録物における光沢感が損なわれるおそれがある。
【0072】
第2の粒子の形状、粒径、第2のインク中の含有率、製法、第2のインクの粘度等は、第1の粒子または第1のインクと同様とされる。
このうち、第2の粒子の形状は、特に鱗片状であるのが好ましい。これにより、第2の粒子が吐出物の表面に配列せず、内部に分散した場合でも、これが硬化したときには十分な光沢感を呈する記録物が得られる。このため、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とを高度に両立させることができる。
【0073】
また、第2の粒子の構成材料は、前述した第1の粒子の構成材料と同様のものが用いられるが、特にアルミニウムを主材料とするものが好ましく用いられる。アルミニウムを主材料とする第2の粒子を用いることにより、記録物における光沢感を特に高めることができる。
なお、第2の粒子の構成材料は、第1の粒子の構成材料と同じ組成であるのが好ましい。これにより、粒径が同程度であれば、第2の粒子の質量は、第1の粒子の質量と同程度となり、表面の状態に応じて吐出物内での粒子挙動を制御し易くなる。このため、表面処理の有無や種類を適宜設定することにより、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とを両立させ易くなる。
【0074】
第2の粒子は、前述した金属材料のみで構成された金属粒子であってもよいが、各種表面処理が施されたものであってもよい。
第2の粒子に施される表面処理としては、第1の粒子よりも表面張力が大きくなるようにする処理が挙げられる。具体的には、金属粒子表面を改質する表面改質処理、金属粒子の表面に被膜を成膜する成膜処理等が挙げられる。これにより、金属粒子の組成は同じであっても、表面処理の種類を変えることのみで、第1の粒子と第2の粒子とを製造することができるので、粒子の挙動を細かく制御するにあたっては有用である。
【0075】
このうち、金属粒子の表面に成膜される被膜の構成材料としては、例えば、カップリング剤、リン酸エステル系化合物、カルボン酸系化合物等が挙げられる。これらの各材料は、第1の粒子に施される表面処理において用いられるものと同様である。
また、第2のインクは、前述したように紫外線の照射により硬化するものであるが、第1のインクと同様、インクに金属粒子が含まれていると、金属粒子が硬化反応の触媒として機能するため、紫外線を照射しなくてもインクがゲル化し、粘度上昇等の問題を招くことによりインクの保存安定性、吐出安定性が阻害される。これに対し、上述したような被膜が金属粒子の表面に成膜されることにより、かかる問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、表面に被膜が成膜された第2の粒子においては、この被膜により、金属粒子とインク中の重合性化合物との接触が防止され、インクの反応を抑える。その結果、保存安定性および吐出安定性に優れた第2のインクが得られる。
【0076】
ここで、第2の粒子の表面に成膜される被膜は、特にリン酸エステル系化合物を含むものであるのが好ましい。リン酸エステル系化合物を用いることにより、第2の粒子の表面に適度な撥液性が付与され、第2の粒子の表面は、第1の粒子に比べて表面張力の大きなものとなり、第2の粒子は吐出物中に確実に分散するものとなる。特に第1の粒子の表面に成膜される被膜がフッ素系化合物を含む場合、リン酸エステル系化合物を含む被膜を有する第2の粒子は、第1の粒子に対して前述したような範囲の表面張力差を有するものとなり、本発明の効果がより顕著なものとなる。
【0077】
上記リン酸エステル系化合物としては、リン酸とアルコールとが脱水縮合してなるエステルであればいかなる構造を有するものも用いることができる。具体的には、O=P(OH)で表わされるリン酸中の水素原子のうち、全部または一部が有機基で置換された構造である。金属粒子の表面とリン酸エステル系化合物とが反応すると、この構造において二重結合が開裂し、酸素原子を介して金属粒子の表面とリン原子とが共有結合で結ばれる。その結果、リン酸エステル系化合物は、金属粒子の表面に形成された強固な被膜を形成することができる。
【0078】
また、本発明においてリン酸エステル系化合物とは、上記構造を有する化合物のみを含むものの他、その塩のみを含むもの、これらの双方を含むものを指す。
このようなリン酸エステル系化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、脂肪酸グリセリドリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。このようなリン酸エステル系化合物であれば、前述の効果がより顕著なものとなる。
このうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのモノエステル体は、下記一般式(1)で表される。
【0079】
【化1】

[式中、Rはアルキル基、アルキレン基またはフェニル基であり、nは2〜10の整数である。]
【0080】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのジエステル体は、下記一般式(2)で表される。
【0081】
【化2】

[式中、Rはアルキル基、アルキレン基またはフェニル基であり、nは2〜10の整数である。]
【0082】
ここで、上記一般式(1)および一般式(2)において、Rのアルキル基の炭素原子数は、8〜18であるのが好ましく、12であるのがより好ましい。
このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、例えば、NIKKOL DDP−2、DDP−4、DDP−6、DDP−10、TLP−4、TCP−5、TDP−2、TDP−6、TDP−8、TDP−10(以上、日光ケミカルズ(株)製)、プライサーフ AL、A210D、A−208B、A219B(以上、第一工業製薬(株)製)、アデカコールCS−1361E(ADEKA社製)、フォスファノール RD−720(東邦化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0083】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、上記一般式(1)および一般式(2)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩等が挙げられる。
このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、例えば、NIKKOL DLP−10、DOP−8NV(以上、日光ケミカルズ(株)製)、プライサーフM−208F、M−208B(以上、第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0084】
一方、脂肪酸グリセリドリン酸エステルにおける脂肪酸グリセリドは、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ジヒドロキシ酸等の各種脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドである。このうち、不飽和脂肪酸のトリグリセリドのリン酸エステルが好ましく用いられ、リシノール酸のトリグリセリドのリン酸エステルがより好ましく用いられる。脂肪酸のトリグリセリドは、分子構造が嵩高く細長いため、分子間相互作用が強く働く。このため、脂肪酸トリグリセリドリン酸エステルが金属粒子の表面に結合されることにより、均一かつ緻密な被膜が形成される。その結果、金属粒子の表面と重合性化合物との接触頻度が抑えられることとなり、金属粒子の触媒としての機能が抑制される。その結果、光硬化型インクのゲル化を抑制することができる。また、リシノール酸は、分子鎖が長いため、前記分子間相互作用がより顕著に働く。
脂肪酸グリセリドリン酸エステルのモノエステル体は、下記一般式(3)で表される。
【0085】
【化3】

[式中、Rはリン酸とエステルを形成している脂肪酸グリセリドの残基である。]
【0086】
また、脂肪酸グリセリドリン酸エステルのジエステル体は、下記一般式(4)で表される。
【0087】
【化4】

[式中、Rはリン酸とエステルを形成している脂肪酸グリセリドの残基である。]
【0088】
なお、下記化学式(5)には、脂肪酸グリセリドの一例(リシノール酸トリグリセリド)を示す。
【0089】
【化5】

【0090】
このような脂肪酸グリセリドリン酸エステルは、例えば、脂肪酸グリセリドとオキシハロゲン化リンとを反応させ、次いで加水分解する方法、ホスフェートとオキシハロゲン化リンを反応させてピロリン酸エステルを生成させた後、加水分解する方法、脂肪族グリセリドとリン酸化物とを反応させる方法等により製造されるが、このうち脂肪族グリセリドとリン酸化物とを反応させる方法が好ましく用いられ、リン酸化物としては五酸化二リンが好ましく用いられる。この場合、脂肪族グリセリド1molに対して、五酸化二リンを0.2mol以上1mol以下の割合で反応させるのが好ましい。また、反応させる際には、脂肪族グリセリドとリン酸化物との混合物を撹拌しつつ、40℃以上120℃以下の温度で10分以上300分以下の時間加熱するのが好ましい。
【0091】
また、脂肪族グリセリドリン酸エステルの塩としては、上記一般式(3)および一般式(4)で表わされる脂肪族グリセリドリン酸エステルのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩等が挙げられる。
このような脂肪族グリセリドリン酸エステルの塩は、例えば、脂肪族グリセリドリン酸エステルと過塩基性スルホネート金属塩とを反応させる方法等により製造される。一例として、脂肪族グリセリドリン酸エステルのアルカリ金属塩を製造する場合は、過塩基性スルホネートのアルカリ金属塩が用いられる。
【0092】
<重合性化合物>
第2のインクは、第1のインクと同様、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である重合性化合物を含むものである。第2のインクに含まれる重合性化合物は、第1のインクに含まれる重合性化合物と同様である。
また、第2のインクに含まれる重合性化合物は、第1のインクに含まれる重合性化合物と同じ組成のものが好ましい。これにより、第1のインクと第2のインクとを記録媒体上の同じ位置に吐出したとき、第1のインクと第2のインクとが混和し易くなる。その結果、第1の粒子と第2の粒子とが異なる挙動を示すことにより、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とを両立する、という効果をより確実に奏することができる。
【0093】
<その他の成分>
第2のインクは、前述した第1のインクに含まれるのと同様のその他の成分を含んでいてもよい。
≪その他のインク≫
本発明のインクセットは、上述した第1のインクおよび第2のインクを備えるものであればよいが、これらに加えて、さらに、その他のインクを備えるものであってもよい。
【0094】
このようなインクとしては、それ単独で有彩色の印刷部の形成に用いることのできるインク(有彩色インク)や、着色剤および金属粉末を含まない無色インク(クリアーインク)等が挙げられる。特に、無色インクは、例えば、記録媒体の上述した第1のインクおよび第2のインクが付与された部位の上に付与することにより、印刷部の耐久性(耐擦性等)を特に優れたものとすることができたり、また、記録媒体上に予め付与しておくことにより、記録媒体に対する各インクの密着性をより高めることができる。
【0095】
[記録物]
次に、本発明のインクセットを用いて形成される記録物について説明する。
この記録物は、第1のインクおよび第2のインクを、インクジェット方式により記録媒体上に付与し、紫外線を照射することにより製造されたものである。このような記録物は、精細度が高くかつ金属特有の光沢感を有するものとなる。
【0096】
上述したように、本発明のインクセットを構成する第1のインクおよび第2のインクは、それぞれ重合性化合物を含むものであり、記録媒体に対する密着性に優れるものである。このため、これらのインクにより形成される印刷部は記録媒体に対する密着性に優れたものとすることができる。したがって、記録媒体は、いかなるものであってもよく、吸収性または非吸収性のいずれを用いてもよく、例えば、紙(普通紙、インクジェット用専用紙等)、プラスチック材料、金属、セラミックス、木材、貝殻、綿、ポリエステル、ウール等の天然繊維・合成繊維、不織布等を用いることができる。
【0097】
また、記録物の用途は、いかなるものであってもよく、例えば、装飾品やそれ以外に適用されてもよい。具体例としては、コンソールリッド、スイッチベース、センタークラスタ、インテリアパネル、エンブレム、センターコンソール、メーター銘板等の車両用内装品、各種電子機器の操作部(キースイッチ類)、装飾性を発揮する装飾部、指標、ロゴ等の表示物等が挙げられる。
【0098】
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、インクの構成成分の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
インクジェット法によるインク(インクセットを構成するインク)の吐出は、公知の液滴吐出装置を用いて行うことができる。
【0099】
インクジェット法により吐出された第1のインクおよび第2のインクは、紫外線の照射により硬化する。
紫外線源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザダイオード(UV−LD)等を用いることができる。中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザダイオード(UV−LD)が好ましい。
照射される光の波長は、200nm以上450nm以下程度であるのが好ましく、350nm以上450nm以下程度であるのがより好ましい。光の波長が前記範囲であれば、各インクの硬化時間を十分に短くしつつ、均一に硬化させることができる。
【0100】
また、照射部における照射強度は、10mW/cm以上2000mW/cm以下であるのが好ましく、20mW/cm以上1500mW/cm以下であるのがより好ましい。照射強度が前記範囲内であれば、各インクをムラなく均一に、かつ確実に硬化させることができる。なお、光照射は通常、各インクの吐出後、すぐに開始されるが、その際、照射強度を前記範囲内で低くすることにより、その分、照射時間を長くとることができる。これにより吐出された各インク中で金属粒子が配向するのに必要な時間が確保される。その結果、例えば鱗片状をなす金属粒子の主面が記録媒体の表面に沿うように配向され、パターン(印刷部)の光反射性を高めることができる。照射時間は、照射強度によって異なるものの、0.1秒以上60秒以下程度であるのが好ましく、0.5秒以上30秒以下程度であるのがより好ましい。
【0101】
また、光照射による照射エネルギー(積算光量)は、5mJ/cm以上1000mJ/cm以下であるのが好ましく、10mJ/cm以上800mJ/cm以下であるのがより好ましい。照射エネルギーが前記範囲内であれば、各インクをムラなく均一に、かつ確実に硬化させることができる。
なお、第1のインクと第2のインクは、記録媒体上の同じ位置、すなわち各インクが重なるように吐出されるのが好ましい。これにより、第1の粒子と第2の粒子とが同じ位置において異なる挙動を示し、その結果、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とを両立する、という効果をより確実に奏することができる。
【0102】
この際、吐出物の単位体積において、第2の粒子の含有率が第1の粒子の含有率より大きくなるよう、第1のインクおよび第2のインクが吐出されるのが好ましい。これにより、記録物の精細度を確保するために必要最小限の硬化性を有するとともに、記録物の美感を確保するために必要最小限の光反射性を有する記録物が得られる。すなわち、吐出物の硬化性と記録物における光沢感とのバランスをより最適化することができる。
具体的には、第2の粒子の含有率は、第1の粒子の含有率の1.1倍以上4倍以下程度であるのが好ましく、1.3倍以上3倍以下程度であるのがより好ましい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0103】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]インクセットの製造
(実施例1)
<第1のインクの製造>
まず、表面が平滑なポリエチレンテレフタレート製のフィルム(三菱樹脂社製、ダイアホイルG440E)を用意した。
【0104】
次に、このフィルムの一方の面の全体にシリコーンオイルを塗布した。
次に、シリコーンオイルを塗布した面側に、蒸着法により、Alで構成された膜を形成した。
次に、Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)を、ジエチレングリコールジエチルエーテルで構成された液体中に入れ、超音波振動を付与した。これにより、鱗片状のAl製の粒子が得られた。
【0105】
次に、上記のようにして得られたAl製の粒子を直ちにろ過により分離し、このAl製の粒子をジエチレングリコールジエチルエーテル中に、固形分濃度が5質量%となるように添加した。その後、この液体(分散液)に、フッ素系シラン化合物としての(ヘプタデカフルオロー1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランを3質量%の含有率となるように添加し、40℃で4時間攪拌して表面処理を行った。これにより、フッ素系シラン化合物で表面処理されたAl製の粒子(第1の粒子)がジエチレングリコールジエチルエーテルに分散した分散液を得た。
このようにして得られた第1の粒子の平均粒径は0.8μmであった。また、吐出された第1の粒子は、吐出物の表面に配列するような挙動を示した。
【0106】
次に、得られた第1の粒子を、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(Lambson社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV−3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp−メトキシフェノールと混合することにより、インクジェット組成物(紫外線硬化型インクジェット組成物)を得た。
【0107】
<第2のインクの製造>
まず、表面が平滑なポリエチレンテレフタレート製のフィルム(表面粗さRaが0.02μm以下)を用意した。
次に、このフィルムの一方の面の全体にシリコーンオイルを塗布した。
次に、シリコーンオイルを塗布した面側に、蒸着法により、Alで構成された膜を形成した。
【0108】
次に、Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)を、ジエチレングリコールジエチルエーテルで構成された液体中に入れ、超音波振動を付与した。これにより、鱗片状のAl製の粒子が得られた。
次に、上記のようにして得られたAl製の粒子をリン酸エステルとしてのリシノール酸トリグリセリドリン酸エステルの0.5質量%ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート溶液中に投入し、1時間攪拌することにより、リン酸エステルによる表面処理を行い、第2の粒子を得た。
このようにして得られた第2の粒子の平均粒径は0.8μmであった。また、吐出された第2の粒子は、吐出物の内部に分散するような挙動を示した。
【0109】
次に、得られた第2の粒子を、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(Lambson社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、レベリング剤としてのUV−3500(ビックケミー社製)、および、重合禁止剤としてのp−メトキシフェノールと混合することにより、インクジェット組成物(紫外線硬化型インクジェット組成物)を得た。
以上のようにして、2種のインクからなるインクセットを得た。
【0110】
なお、フッ素系カップリング剤で処理した第1の粒子の表面張力は16mN/mであった。
また、リシノール酸トリグリセリドリン酸エステルで処理した第2の粒子の表面張力は、フッ素系シランカップリング剤で処理した第1の粒子の表面張力に比べて15mN/m大きかった。
【0111】
(実施例2〜13)
第1のインクおよび第2のインクの調製に用いる原料の種類・比率を変更し、表に示すような組成にした以外は、それぞれ前記実施例1と同様にしてインクセットを製造した。
なお、実施例8では、第2の粒子のリン酸エステルとしてリノール酸トリグリセリドリン酸エステルを用いた。そして、リノール酸トリグリセリドリン酸エステルで処理した第2の粒子の表面張力は、フッ素系シランカップリング剤で処理した第1の粒子の表面張力に比べて25mN/m大きかった。
【0112】
また、実施例9では、第2の粒子のリン酸エステルとしてリノレン酸トリグリセリドリン酸エステルを用いた。そして、リノレン酸トリグリセリドリン酸エステルで処理した第2の粒子の表面張力は、フッ素系シランカップリング剤で処理した第1の粒子の表面張力に比べて10mN/m大きかった。
また、実施例10では、第2の粒子のリン酸エステルとしてオレイン酸トリグリセリドリン酸エステルを用いた。そして、オレイン酸トリグリセリドリン酸エステルで処理した第2の粒子の表面張力は、フッ素系シランカップリング剤で処理した第1の粒子の表面張力に比べて30mN/m大きかった。
【0113】
また、実施例11の第1の粒子で用いたフッ素系リン酸エステルには、CF(CF(CHO−PO(OH)を用い、その処理には、フッ素系リン酸エステルの1質量%プロパノール溶液を用いた。そして、リシノール酸トリグリセリドリン酸エステルで処理した第2の粒子の表面張力は、フッ素系リン酸エステルで処理した第1の粒子の表面張力に比べて8mN/m大きかった。
また、実施例12では、鱗片状をなす第1の粒子と、球状をなす第2の粒子と、を用いた。
【0114】
また、実施例13では、第2の粒子のリン酸エステルとしてオレイン酸トリグリセリドリン酸エステルを用いた。さらに、実施例13の第1の粒子で用いた長鎖アルキル系リン酸エステルには、CH(CH11O−PO(OH)を用い、その処理には、長鎖アルキル系リン酸エステルの1質量%ジエチレングリコールジエチルエーテル溶液を用いた。そして、長鎖アルキル系リン酸エステルで処理した第1の粒子の表面張力は24mN/mであった。また、リシノール酸ジグリセリドリン酸エステルで処理した第2の粒子の表面張力は、長鎖アルキル系リン酸エステルで処理した第1の粒子の表面張力に比べて6mN/m大きかった。
【0115】
(比較例1)
第2のインクを省略し、代わりに第1のインクを用いることで、2つの第1のインクで構成するようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクセットを製造した。
(比較例2)
第1のインクを省略し、代わりに第2のインクを用いることで、2つの第2のインクで構成するようにした以外は、前記実施例1と同様にしてインクセットを製造した。
(比較例3)
金属粉末以外の成分を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様にして各インクを調製し、インクセットを得た。なお、得られた各インクは、いずれも紫外線の照射により硬化する成分を含まないものとなる。
【0116】
<第1のインクの成分>
・実施例1と同様の第1の粒子 : 2.0質量%
・グリセリン :10.0質量%
・1,2−プロパンジオール : 5.0質量%
・界面活性剤(ビックケミー製BYK348): 0.5質量%
・イオン交換水 :残部
<第2のインクの成分>
・実施例1と同様の第2の粒子 : 2.0質量%
・グリセリン :10.0質量%
・1,2−プロパンジオール : 5.0質量%
・界面活性剤(ビックケミー製BYK348): 0.5質量%
・イオン交換水 :残部
【0117】
なお、前記各実施例および各比較例について、インクセットを構成する各インクの組成等を、表1、2にまとめて示した。表中、フェノキシエチルアクリレートを「PEA」、アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルを「VEEA」、トリプロピレングリコールジアクリレートを「TPGDA」、ジプロピレングリコールジアクリレートを「DPGDA」、N−ビニルカプロラクタムを「VC」、ベンジルメタクリレートを「BM」、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを「DMTCDDA」、アミノアクリレートを「AA」、ウレタンアクリレートを「UA」、Irgacure 819(チバ・ジャパン社製)を「ic819」、Speedcure TPO(ACETO社製)を「scTPO」、Speedcure DETX(Lambson社製)を「scDETX」、UV−3500(ビックケミー社製)を「UV3500」、p−メトキシフェノールを「pMP」、4−ヒドロキシブチルアクリレートを「HBA」、グリセリンを「GL」、1,2−プロパンジオールを「1,2PD」、BYK348(ビックケミー社製)を「BYK348」で示した。また、各インク中に含まれるそれぞれ任意の10個の金属粒子について観察を行い、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S[μm]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S[μm]に対する比率(S/S)を求め、これらの平均値を、表1、2にあわせて示した。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例のインクセットを構成する各インクの20℃における粘度は、いずれも、3mPa・s以上15mPa・s以下の範囲内の値であった。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
[2]液滴吐出の安定性評価(吐出安定性評価)
前記各実施例および各比較例のインクセットを用いて、下記に示すような試験による評価を行った。
まず、チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例のインクセットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、55%RHの環境下で、各色のインクについて、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、2000000発(2000000滴)の液滴の連続吐出を行った。その後、液滴吐出装置の運転を停止し、液滴吐出装置の流路に各インクが充填された状態で、25℃、55%RHの環境下に、120時間放置した。
【0121】
その後、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、25℃、55%RHの環境下で、3000000発(3000000滴)の液滴の連続吐出を行った。上記120時間放置した後の、液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された3000000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されていると言える。
【0122】
A:ズレ量dの平均値が0.09μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.09μm以上0.15μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.15μm以上0.18μm未満。
D:ズレ量dの平均値が0.18μm以上0.22μm未満。
E:ズレ量dの平均値が0.22μm以上。
【0123】
[3]各インクの保存安定性評価(長期安定性評価)
前記各実施例および各比較例のインクセットを構成する第1のインクについて、40℃の環境下に、30日間放置した後、目視による観察を行い、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:金属粉末の凝集・沈降が全く認められない。
B:金属粉末の凝集・沈降がほとんど認められない。
C:金属粉末の凝集・沈降がわずかに認められる。
D:金属粉末の凝集・沈降がはっきりと認められる。
E:金属粉末の凝集・沈降が顕著に認められる。
【0124】
[4]硬化性
前記各実施例および各比較例のインクセットを構成する各インクについて、エプソン製インクジェットプリンター;PM800Cへ導入し、基材として三菱樹脂(株)製、ダイアホイル G440E(厚さ38μm)を用いて、インク量wet 9g/mにて、ベタ印刷を行い、印刷後、ただちにLED−UVランプ;フォセオン社製 RX firefly(ギャップ6mm 1000mW/cm)を用いて紫外線の照射を行い、インクが硬化したか否かを確認し、以下の5段階の基準に従い、評価した。各インクは同じ位置に吐出し、その吐出量は、第1のインクと第2のインクが体積比で1:2となるように設定した。また、硬化したか否かは、綿棒にて表面をこすって、未硬化のインクが付着しないか否かで判断した。なお、下記A〜Eの照射量に該当するかどうかは、ランプを何秒照射したかによって算出できる。
【0125】
A:100mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
B:100mJ/cm以上200mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
C:200mJ/cm以上500mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
D:500mJ/cm以上1000mJ/cm未満の紫外線照射量にて硬化した。
E:1000mJ/cm以上の紫外線照射量にて硬化する。もしくはまったく硬化しない。
【0126】
[5]記録物の製造
各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、以下のようにして、記録物としてのインテリアパネルを製造した。
まず、製造直後のインクセットをインクジェット装置に投入した。
その後、ポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に、インクセットを構成する各インクを吐出した。このとき、第1のインクと第2のインクが体積比で1:2となるように設定し、各インクが同じ位置に吐出されるようにした。
【0127】
その後、365nm、380nm、395nmの波長に極大値を有するスペクトルの紫外線の照射を、照射強度180mW/cmで20秒間照射し、基材上のインクを硬化させ、記録物としてのインテリアパネルを得た。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例のインクセットを用いて、それぞれ、10個のインテリアパネル(記録物)を製造した。
【0128】
[6]記録物の評価
上記のようにして得られた各記録物について、以下のような評価を行った。
[6.1]記録物の外観評価
前記各実施例および比較例で製造した各記録物を目視により観察し、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:金属特有の質感が非常に高く、美観が極めて良好である。
B:金属特有の質感がやや高く、美観がやや良好である。
C:金属特有の質感がやや低く、美観がやや不良である。
D:金属特有の質感が低く、美観が不良である。
【0129】
[6.2]光沢度
前記各実施例および比較例で製造した各記録物の印刷部について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度が300以上。
B:光沢度が200以上300未満。
C:光沢度が100以上200未満。
D:光沢度が60以上100未満。
E:光沢度が60未満。
【0130】
[6.3]耐擦性
前記各実施例および比較例に係る記録物について、記録物の製造から48時間経過した時点で、サウザーランドラブテスターを用い、JIS K5701に準じて耐擦性試験を行い、上記[6.2]で述べたのと同様の方法により、耐擦性試験後の記録物の印刷部について、光沢度(煽り角度60°)を測定し、耐擦性試験前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
【0131】
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上20%未満。
C:光沢度の低下率が20%以上30%未満。
D:光沢度の低下率が30%以上。
これらの結果を表3に示す。
【0132】
【表3】

【0133】
表3から明らかなように、本発明のインクセットは、吐出物の硬化性が高く、かつ、光沢感等の金属特有の質感に優れた印刷部の形成に好適に用いることができた。また、本発明のインクセットを構成するインクは、液滴の吐出安定性および保存安定性に優れていた。これに対して、比較例では、特に吐出物の硬化性や記録物の光沢感といった面で満足な結果が得られなかった。
【0134】
なお、表には示していないが、第1のインクと第2のインクが体積比で1:5となるように設定し、各インクが同じ位置に吐出されるようにした。この場合、記録物の外観や光沢度がBとなったが、吐出物の硬化性はAであった。このことから、本発明によれば、吐出物の硬化性と記録物の外観とを両立し得ることが認められる。
また、金属粒子をステンレス鋼(SUS316L)に変えた場合も、アルミニウムを用いた場合と同様の結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式により吐出される紫外線硬化型インクジェット用インクを複数種備えるインクセットであって、
前記紫外線硬化型インクジェット用インクは、鱗片状をなし、金属粒子の表面に表面処理が施されてなる第1の粒子を含む第1のインクと、前記第1の粒子よりも表面張力が大きい第2の粒子を含む第2のインクと、を備えることを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記第1の粒子に施された前記表面処理は、前記金属粒子の表面にフッ素系化合物を含む被膜を成膜する処理である請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記第2の粒子は、鱗片状をなすものである請求項1または2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記第2の粒子は、金属粒子の表面に前記第1の粒子よりも表面張力が大きくなるよう表面処理が施されてなる粒子である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記第2の粒子に施された前記表面処理は、金属粒子の表面にリン酸エステル系化合物を含む被膜を成膜する処理である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記第1の粒子中の前記金属粒子は、アルミニウムを主材料とするものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項7】
前記第1の粒子中の前記金属粒子および前記第2の粒子中の前記金属粒子は、互いに同じ組成の金属材料で構成されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項8】
前記第1の粒子の平均粒径が500nm以上2.0μm以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項9】
前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物としてフェノキシエチルアクリレートを含むものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項10】
前記第1のインクは、前記重合性化合物として、前記フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項11】
前記第1のインクは、紫外線の照射により重合する重合性化合物としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよびアミノアクリレートの少なくとも一方を含むものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項12】
鱗片状をなし、金属粒子の表面に表面処理が施されてなる第1の粒子を含み、紫外線の照射により硬化する第1のインクと、前記第1の粒子よりも表面張力が大きい第2の粒子を含み、紫外線の照射により硬化する第2のインクとを、インクジェット方式により記録媒体上の同じ位置に付与し、紫外線を照射することにより製造されたことを特徴とする記録物。
【請求項13】
前記第2の粒子の含有率が前記第1の粒子の含有率より大きくなるよう、前記第1のインクおよび前記第2のインクが付与されてなる請求項12に記載の記録物。

【公開番号】特開2012−251070(P2012−251070A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124551(P2011−124551)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】