説明

インクタンク、インクジェット記録ヘッド、インクジェットヘッドカートリッジおよび該インクジェットヘッドカートリッジを有するインクジェット記録装置

【課題】 簡単かつ安価な方法で、インクに侵されないインクタンク、また、インクジェットヘッドカートリッジ、及び該インクジェットヘッドカートリッジを有するインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 インクタンクの内部のインクと接する内面にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録方式のインクタンク、インクジェットヘッドカートリッジ及び該インクジェットヘッドカートリッジを有するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置及びキャリッジに搭載されるインクジェットヘッドカートリッジについて簡単に説明する。
【0003】
図9は一般的なインクジェット記録装置100の斜視図である。図10(a)(b)はキャリッジの中のインクジェットヘッドカートリッジおよびインクタンクの斜視図である。
【0004】
図9に示すインクジェットヘッド記録装置100において、キャリッジ101は、リードスクリュー104、ガイド軸105上を不図示のキャリッジモーターと連動したリードスクリュー104が回転されることによって平行移動させられる。
【0005】
また、キャリッジ101上には、図10(a)に示すように、インクジェットヘッド102が固定され、またタンクホルダ103に沿って着脱自在のブラックインクタンク111、イエローインクタンク112、マゼンダインクタンク113、シアンインクタンク114が装着され、インクが供給される。
【0006】
インクジェットヘッド102から吐出されるインクは、インクジェットヘッド102に対向する被記録媒体、この従来例では記録用紙106に着弾し、画像を形成する。記録用紙6は不図示のモーターと連動する給紙ローラー107および排紙ローラー110と、紙押さえ板109とによって印字と連動して排紙されていく。
【0007】
図11にインクジェットヘッドカートリッジの一部の断面詳細図をしめす。
【0008】
インクジェットヘッドカートリッジは、大別してインクジェットヘッド102とタンクホルダ103を有する。インクジェットヘッド102において、201はインクジェット吐出原理に関わるヒーターなどを形成するシリコン基板、206はインクをジョイント211からシリコン基板201へと供給するインク流路、205はシリコン基板201を支えるベースプレートである。
【0009】
ブラック色のインクタンク111を例にとってインクの流れを説明すると、インクタンク111のインク供給口211よりジョイント204を介してインクがインクジェットヘッド102内に供給される。インクはインク流路206を通ってシリコン基板201へ供給されシリコン基板内のエネルギー素子(不図示)の発生するエネルギーにより記録用紙106に吐出される。
【0010】
インクジェット記録装置において、印刷のランニングコストを低減するためのひとつとして、インクタンクを交換する方式がある。
【0011】
図12(a)、図12(b)は従来のインクタンク111の斜視図であり、図12(c)は従来のインクタンク111の断面図である。
【0012】
インクタンク111は、その側面に、固定された第2の爪132と、第2の爪の反対側面に弾性的に設けられた可動レバー130に形成された第1の爪131を有する。内部には、ブラック色のインクを保持するインク吸収体136が収容され、底部にはジョイント部材137を有するインク供給口211が設けられている。
【0013】
次に、この従来のインクタンク111をインクジェットヘッドカートリッジ115のタンクホルダ203にセットする手順を図13(a)〜 図13(d)を用いて説明する。
【0014】
図13(a)に示すように、インクタンク111をタンクホルダ103に挿入する際は、インクタンク111の第2の爪132を下方に傾けて矢印Aの方向に挿入する。
【0015】
このとき、図13(b)に示すように、インクタンク111が斜め方向から装着されようとした場合、インク供給口211の外周部がヘッドカートリッジのジョイント部に当接する前に、第3の爪133がタンクホルダ103の上端部143に当たり、インク供給口211の外周部がジョイント部204に当接するのを防ぐとともに、これによって正常な装着操作が促される。
【0016】
次に、図13(c)に示すように、タンクホルダ103の図中右側側面の傾斜面に沿って挿入されることで、まず、タンクホルダ103の第2の穴242にインクタンク111の第2の爪132が係合する。
【0017】
さらに、図13(d)に示すように、インクタンク111をタンクホルダ103に押し込むことで可動レバー130が内側にたわみ、第1の爪131がタンクホルダ103の第1の穴241に係合されることで、インクタンク111はタンクホルダ103に固定される。
【0018】
この状態で、インク吸収体136に保持されているインクは、インク供給口211のジョイント部材137を介し、インクジェットヘッド202へと導入され、電気熱変換体(不図示)の発生するエネルギーにより吐出口(不図示)から吐出される。
【0019】
なお、インクタンク111を取り外す場合は、可動レバー130を内側にたわませて第1の爪131をタンクホルダ103の第1の穴241から抜くことで、タンクホルダ103からインクタンク111を容易に取り出すことができる。
【0020】
特開平11−170531号公報には、液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通し、該吐出口に液体を供給する液流路と、液体に気泡を発生させるための発熱体を具備する基板と、前記発熱体に面するように前記吐出口側を自由端として前記液流路内に設けられ、且つ該自由端が前記発熱体の面積中心より下流に位置した可動部材とを備えた液体吐出ヘッドにおいて、前記可動部材は窒化硅素、ダイヤモンド、水素化アモルファスカーボン、炭化硅素のいずれかで形成されており、前記基板上に作り込む。以上のことで、機械的および化学的な耐久性に優れ、かつ、製造コストの小さい液体吐出ヘッド用基板を提供することが開示されている。
【0021】
また、特開平11‐240153号公報には、インクジェット記録ヘッドのインクノズルの開口面であるノズル面に撥インク性皮膜としてのプラズマCVD法によるダイヤモンドライクカーボン膜(図ではDLC膜、厚さは0.5〜3μmが望ましく)を備えている。これにより、インクが付着し難い撥インク性とワイピング部材を損傷させない摺動性とワイピングに耐える耐磨耗性及び耐剥離性とインクに腐食されない耐薬品性とを有する撥インク性皮膜を備えたインクジェット記録ヘッドを提供することが開示されている。
【0022】
また、特開2000‐238263号公報には、ノズル開口に連通する圧力発生室12が画成される流路形成基板と、流路形成基板の一方面に振動板を介して設けられ且つ少なくとも下電極、圧電体層及び上電極を有する圧電素子を具備するインクジェット式記録ヘッドが開示されている。この特開2000‐238263号公報に開示されるように、この振動板が、少なくともその一部にダイヤモンド薄膜又はダイヤモンドライクカーボン薄膜から選択される何れか一方を含むことにより、振動板の強度及び剛性が向上する。これにより、振動板の強度及び剛性を向上すると共に排除体積効率を向上させることができる。
【特許文献1】特開平11−170531号公報
【特許文献2】特開平11‐240153号公報
【特許文献3】特開2000‐238263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、上記従来の構成では、長期間、インクが、インクジェットヘッドやインクタンク構成部材であるプラスチックモールドに接触された結果、プラスチックに含まれる添加物、たとえば、滑剤であるところの「ステアリンサンカルシウム」等がインク中に析出して、インクジェットヘッドのジョイント部のフィルター部を詰まらせて、インクの供給を阻害させたり、インクタンク内のインク保持部材のインクを保持する機能を低下させたり、インクを吐出する記録ヘッド部のインク吐出口を詰まらせるなどのインク吐出機能を著しく損なわせることがあった。
【0024】
そこで、本発明の目的は、簡単かつ安価な方法で、インクに侵されないインクタンク、また、インクジェットヘッドカートリッジ、及び該インクジェットヘッドカートリッジを有するインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成する為の本発明のインクタンクは、インクジェットヘッドに供給するインクを貯留したインクタンクにおいて、前記インクタンクの内部のインクと接する内面にダイヤモンドライクカーボンの膜が形成されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明のインクタンクは、インクジェットヘッドに供給するインクを貯留するためのインクタンクにおいて、前記インクタンクの内部のインクと接する内面にダイヤモンドライクカーボンの薄膜が形成されていることを特徴とする。
【0027】
前記インクタンクは、インクを外部に供給可能なインク供給口を有し、インクジェットヘッドからは着脱可能なように、タンクホルダに着脱自在に保持されるものであることが好ましい。
【0028】
また、前記インクタンクはインクを貯溜可能なインク収容室とインク保持部材を収容したインク保持部材収容室を有し、インクを外部に供給可能なインク供給口を有し、前記インク収容室とインク保持部材収容室とは互いに連通路により連通されているものであることが好ましい。
【0029】
また、本発明のインクジェットヘッドカートリッジは、前記インクタンクを着脱自在に保持可能なタンクホルダと、インクタンクから供給されるインクの吐出を行うインクジェット記録ヘッド部と、を有することが好ましい。
【0030】
また、本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出して被記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドにおいて、前記インクが接触するインク流路の内側にダイヤモンドライクカーボンの膜が形成されていることを特徴とする。
【0031】
また、本発明のインクジェットヘッドカートリッジは、前記インクジェット記録ヘッドと、インクジェットヘッドに供給するインクを貯留したインクタンクを着脱自在に保持可能なタンクホルダと、を有することが好ましい。
【0032】
また、本発明のインクジェット記録装置は、前記インクジェットヘッドカートリッジを着脱自在に保持し、被記録媒体の面に沿って往復移動可能に支持されたキャリッジを有し、インクを吐出する電気信号に基づいて、前記インクジェットヘッドカートリッジの前記インクジェット記録ヘッド部からインクを吐出して前記被記録媒体に記録を行うものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
以上、説明した本発明によれば、簡単かつ安価な方法で、インクに侵されないインクタンク、また、インクジェットヘッドカートリッジ、及び該インクジェットヘッドカートリッジを有するインクジェット記録装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、発明を実施するための形態としての具体的な実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0035】
図1から図7は、本発明の第1の実施例を説明するための図である。
【0036】
図1は、タンクの斜視図である。
【0037】
図2は、タンクの横断面図である。
【0038】
図3は、タンクの箱の内側、インクに接触する部分にDLC膜400aを形成する過程を説明する図である。
【0039】
図4、図5及び図6は、本発明のタンクの組立て手順を説明する横断面図である。
【0040】
図7(a)、(b)、(c)及び(d)は、本発明のタンクの組立て手順のうちの吸収体の挿入工程を詳細に説明する斜視図である。
【0041】
本発明のインクタンク30の内部構造について、図2を用いて説明する。
【0042】
本実施の形態のインクタンク30は、上部で大気連通口120を介して大気に連通し、一方下部でインク供給口140Aに連通し、内部に負圧発生部材としての吸収体320を収容する液体保持部材収容室340と、液体のインクを収容する実質的に密閉されたインク収容室360とに隔壁380でもって仕切られている。そして、液体保持部材収容室340とインク収容室360とはインクタンク30の底部付近で隔壁380に形成された連通路415を介してのみ連通されている。
【0043】
液体保持部材収容室340を形成するインクタンク30の上壁30Uには,内部に突出する形態で複数個のリブ420が一体に形成され、液体保持部材収容室340に圧縮状態で収容される吸収体320と当接している。しかして、上壁30Uと吸収体320上面との間にエアバッファ室440が形成されている。吸収体320は熱圧縮ウレタンフォームで形成されており、後述するように所定の毛管力を発生すべく、圧縮状態で液体保持部材収容室340内に収容されている。この所定の毛管力を発生する為の吸収体320のポアサイズの絶対値は、使用するインクの種類、インクタンク30の寸法、記録ヘッド1の吐出口形成面(水頭差H)等により異なる。
【0044】
また、インク供給口140Aを形成しているインク供給筒140内には、円柱状のジョイント部材460が配置されている。ジョイント部材460は、例えば、ポリプロピレンのフェルトにより形成され、それ自体は外力により容易に変形しないものである。ジョイント部材460は、吸収体320を局所的に圧縮するよう吸収体320に押し込まれた状態に保持されている。このために、インク供給筒140の端部には、ジョイント部材460の周辺に当接するフランジが形成されている。
【0045】
このような構成のインクタンクにおいては、記録ヘッド1(不図示)により吸収体320のインクが消費されると、インク収容室360からインクが隔壁380の連通路415を通じて液体保持部材収容室340の吸収体320に供給される。この時、インク収容室360内は減圧されるが、大気連通口120から液体保持部材収容室340を経由した空気が隔壁380の連通路415を通じてインク収容室360に入り、インク収容室360内の減圧は緩和される。したがって、記録ヘッド1によりインクが消費されてもその消費量に応じてインクが吸収体320に充填され、吸収体320は一定量のインクを保持し、記録ヘッド1に対する負圧をほぼ一定に保つので、記録ヘッド1へのインク供給が安定する。その後、インク収容室360内のインクを消費すると、吸収体320内のインクが消費されていく。
【0046】
したがって、このようなインクタンクはインク収容室360のインクが減少していく様子をユーザーが目視で確認することができる。そして、インク収容室360内のインクを消費したことをユーザーに知らせタンクを交換させることで、インク切れの心配をすることなく記録装置を使用することが可能となる。
【0047】
次に、図3を用いて、本発明におけるインクタンクにダイヤモンドライクカーボン膜400a(以下、DLC膜という)を形成させる手順を具体的に説明する。
【0048】
図3は、本発明に係るダイヤモンドライクカーボン膜形成装置(以下、本DLC膜形成装置という)の概略構造図である。
【0049】
図3において、601は、反応容器、602は反応ガス供給手段、603a,603bは放電手段、604は希ガス類元素供給手段、605は真空ポンプ、606a,606b,606cはボンベ、607a,607b,607cは流量制御弁、608a,608bはノズル、609a,109bは高周波電源、612は磁界発生手段である。
【0050】
このうち反応容器601は、被成膜物である箱部材400に対応した断面形状をしており、また、この箱部材400を出し入れ出来るよう上方で分割され、この分割によって出来る半分体同士が分離・結合自在となっている。さらに、反応容器101には真空ポンプ605が接続されており、この真空ポンプ105を作動させることにより、反応容器101の内部を真空状態とすることが出来る。
【0051】
上記反応容器601内に反応ガス(水素ガス及びメタンガス)を供給するための反応ガス供給手段602は、水素ガス及びメタンガスがそれぞれ高圧充填されたボンベ606a,607bと、このボンベ606a,607bそれぞれに対応した流量制御弁607a,607bとを備えている。
【0052】
さらに、この反応ガス供給手段602は、箱部材400の内部空間に挿入可能な軸状のノズル608a,608bを有する。このノズル608a,608bは中空状のものであって、反応ガスは、その先端側から反応容器内(すなわち箱部材400の内部空間)に供給されるようになっている。このノズル608a,608bは、次に詳述する放電手段603における、一方側の電極としても機能する。
【0053】
上記反応容器601や反応ガス供給手段602と共に、本DLC膜形成装置を構成する放電手段603a,603bは、反応ガス供給手段602によって反応容器内601内(箱部材400の内部空間)に供給された反応ガスに放電処理を施すためのものである。この放電手段603は、高周波電源609と、この高周波電源609に接続された電極とを具備してなる。電極のうち片方は、上述したように反応ガス供給手段602のノズル108a,108bであるが、もう一方の電極として、ここでは、反応容器601を使用している。ちなみに、反応容器601及びノズル608a,608bは、両方とも金属材料(ステンレス鋼)で構成されており、高周波電源609a,609bに対して電気的に接続することで、電極として利用しているのである。
【0054】
さて、本DLC膜形成装置は、上記構成要素に加えて、希ガス類元素供給手段604を有する。この希ガス類元素供給手段604は、反応容器内601内にガス状の希ガス類元素を供給するものであり、ガス状の希ガス類元素が充填されたボンベ606cと、このボンベ606cに対応した流量制御弁607cとを備える。流量制御弁607cを通過したガス状の希ガス類元素は、反応ガスと同様、上記ノズル608a,608bの基端側に導入される。この結果、本DLC膜形成装置では、放電手段603a,603bによる放電処理に先立って、反応ガスとともにガス状の希ガス類元素が、ノズル608a,608bの先端側から反応容器601内(箱部材400の内部空間)に供給される。なお、ここでは、希ガス類元素として、クリプトンを使用している。
【0055】
さらに、本DLC膜形成装置は磁界形成手段612を有する。すなわち、反応容器601の外側には、磁界形成手段(コイル)612が設けられており、この磁界形成手段612の作用によって、反応容器601内に磁界を形成されるようになっている。なお、この磁界形成手段612は、図辞していない駆動手段によって、図3中、反応容器601の外側に沿って適宜変位可能である。
【0056】
続いて、本DLC膜形成装置を使用したDLC膜の形成方法について説明する。インクタンクの箱部材の内面へのDLC膜形成に際しては、まず、反応容器601を分割し、その下側半体に箱部材400をセットする。そして、その後、反応容器601の上側半体に結合させる。これにより、図3に示す状態が得られる。
【0057】
次に真空ポンプ605を稼動させ、反応容器1の内部を真空状態とする。反応容器601の内部が所定の真空度に達したら、真空ポンプ605を停止し、反応容器601内に反応ガス供給手段602からは反応ガスを、また、希ガス類元素供給手段104からクリプトンを所定量ずつ供給する。
【0058】
以上の操作が完了したならば、次いで反応ガスへの放電処理を実施する。すなわち、高周波電源609a,609bにより電極間、つまり反応容器601とノズル608a,608bとの間に数十MHzの高周波を印加する。これと同時に磁界形成手段612を作動させ、反応容器内601に磁界を形成する。DLC膜は、こうした磁界中での放電処理によって、箱部材400の内面に形成されることになる。
【0059】
ここで、図4、図5及び図6を用いて、本発明のタンクの組立て手順を説明する。
【0060】
まず、図4に示すように、箱部材400のインク供給筒140にジョイント部材460を挿入し、吸収体320を負圧発生部材収容室340に挿入する。
【0061】
続いて、図5に示すように箱部材400を超音波溶着装置(不図示)上に装着し、蓋部材410を置き、さらに、図6に示すように、蓋部材410の上から超音波溶着ホーン500を密着させて加圧し、さらに超音波振動を加えて箱部材400と蓋部材410を溶着し結合させる。
【0062】
次に図7(a)、(b)、(c)及び(d)を用いて本発明のタンクの組立て手順のうちの吸収体の挿入工程を詳細に説明する。
【0063】
図7(a)〜図7(d)の中で、320は直方体形状をした吸収体、504は対向する第1の押圧部材、505は対向する第2の押圧部材、506は第3の押圧部材である。また第1の押圧部材504および第2の押圧部材505の表面には、吸収体320と押圧部材504,505との摩擦抵抗を低減するためのテフロン(登録商標)シート(不図示)が貼られている。インクタンク30は、概略化して、負圧発生部材収容室340とインク供給口140Aのみを表示している。
【0064】
図7(a)の位置関係から、図7(b)で示すように第1の押圧部材504および第2の押圧部材505で吸収体320を負圧発生部材収容室340の内寸よりも圧縮し、図7(c)で示すように圧縮された吸収体320を押圧部材504,505ごと負圧発生部材収容室340内に挿入し、第3の押圧部材506により押し出しながら負圧発生部材収容室340を引き出すことにより負圧発生部材収容室340内に吸収体340を挿入する。
【0065】
その際、第3の押圧部材506の押し出す速度と負圧発生部材収容室340を引き出す速度を調整することにより、吸収体320に疎密をつけて負圧発生部材収容室340に挿入することが出来る。
【0066】
ここで、さらに、インク保持部材収容室340の内側のダイヤモンドライクカーボンの膜のおかげで、摩擦係数が極めて低くなり、図7(a)、図7(b)、図7(c)及び図7(d)で説明したタンクの組立て手順のうちの吸収体の押圧部材504,505と負圧発生部材収容室340の摩擦抵抗が極めて小さいもいのとなり、より性格に吸収体320に疎密をつけて負圧発生部材収容室340に挿入することが出来る。
【0067】
ここで、インク収容室360、およびインク保持部材収容室340、インク供給筒140のインクの接触する内側の部分にはすべてダイヤモンドライクカーボンの膜が形成されているので、長期間インクが接触された状態を経験しても、インクタンクを形成するモールド部材に含まれる数々の添加物がインク中に析出してくることはない。
【0068】
なお、本実施例では、インク収容室と負圧発生部材収容室の2つの部屋を有するインクタンクに対して、ダイヤモンドライクカーボン膜を形成するようにしたが、たとえば、従来例で示した、インクタンク111の室内すべてが負圧発生部材136で構成されるインクの内部や、インクタンクの室内すべてがインクのみのインク収容室で構成されるインクタンクの内部に、すなわちインクが接している部分の内壁面にダイヤモンドライクカーボン膜を形成してもよい。
【実施例2】
【0069】
次に、図8を用いて、本発明の第2の実施例におけるインクジェットヘッドのインク流路部材にダイヤモンドライクカーボン膜(以下、DLC膜という)を形成させる手順を具体的に説明する。
【0070】
図8は、本発明に係るダイヤモンドライクカーボン膜形成装置(以下、本DLC膜形成装置という)の概略構造図である。
【0071】
図8において、インクジェットヘッド102のインク流路206の内壁へのDLC膜形成装置の構成は、第1の実施例の図3中で示したものと同様である。
【0072】
ただ、この反応ガス供給手段602は、インク流路206の内部空間に挿入可能な軸状のノズル608a有する。このノズル608aは中空状のものであって、反応ガスは、その先端側から反応容器内(すなわちインク流路206)に供給されるようになっている。
【0073】
このうち反応容器601は、被成膜物であるインクジェットヘッド102に対応した断面形状をしており、また、このインクジェットヘッド102を出し入れ出来るよう上方で分割され、この分割によって出来る半分体同士が分離・結合自在となっている。
【0074】
続いて、本DLC膜形成装置を使用したDLC膜206aの形成方法について説明する。インクタンクの箱部材の内面へのDLC膜形成に際しては、まず、反応容器601を分割し、その下側半体にインク流路部材206をセットする。そして、その後、反応容器601の上側半体に結合させる。これにより、図8に示す状態が得られる。
【0075】
次に真空ポンプ605を稼動させ、反応容器601の内部を真空状態とする。反応容器601の内部が所定の真空度に達したら、真空ポンプ605を停止し、反応容器601内に反応ガス供給手段602からは反応ガスを、また、希ガス類元素供給手段604からクリプトンを所定量ずつ供給する。
【0076】
以上の操作が完了したならば、次いで反応ガスへの放電処理を実施する。すなわち、高周波電源609aにより電極間、つまり反応容器201とノズル608aとの間に数十MHzの高周波を印加する。これと同時に磁界形成手段612を作動させ、反応容器内261に磁界を形成する。DLC膜206aは、こうした磁界中での放電処理によって、インク流路206の内面に形成されることになる。
【0077】
以上の工程を経て製造されたインクジェットヘッドにおいては、インク流路206の内側の部分にはすべてダイヤモンドライクカーボンの膜が形成されているので、長期間インクが接触された状態を経験しても、インク流路を形成するモールド部材に含まれる数々の添加物がインク中に析出し、インク吐出ノズルを詰まらせるなどの性能の低下をひきおこすことはない。
【0078】
なお第1の実施例では、インクタンク単体の内壁面に対してダイヤモンドライクカーボンの膜を形成した例を示し、第2の実施例では、インクジェットヘッドにおけるインク流路内に対してダイヤモンドライクカーボンの膜を形成した例を示したが、インクジェットヘッドとインクタンクが一体となった、一体型インクジェット記録ヘッドのインク貯留部とヘッド部のインク流路内にダイヤモンドライクカーボンの膜を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】インクタンクの斜視図である。
【図2】インクタンクの横断面図である。
【図3】ダイヤモンドライクカーボン膜形成装置(DLC膜形成装置)の概略構造図である。
【図4】本発明のタンクの組立て手順を説明するための横断面図である。
【図5】図4に引き続き、本発明のタンクの組立て手順を説明するための横断面図である。
【図6】図5に引き続き、本発明のタンクの組立て手順を説明するための横断面図である。
【図7】本発明のタンクの組立て手順のうち吸収体の挿入工程を詳細に説明するための斜視図である。
【図8】ダイヤモンドライクカーボン膜形成装置(DLC膜形成装置)の概略構造図である。
【図9】インクジェット記録装置100の斜視図である。
【図10】インクジェットヘッドカートリッジおよびインクタンクの斜視図である。
【図11】インクジェットヘッドカートリッジの一部を示す断面図である。
【図12】図12(a)及び(b)は従来のインクタンクの斜視図である。図12(c)は断面図である。
【図13】従来のインクタンクをタンクホルダに装着する様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 インクジェットヘッド(記録ヘッド)
30 インクタンク
30U 上壁
31 可動レバー
32 第1の爪
33 第2の爪
34 第3の爪
36 インク供給口
37 ジョイント部材
40 タンクホルダ
41 ジョイント
43 第2の穴
44 第3の穴
46 第1の穴
100 インクジェット記録装置
101 キャリッジ
102 インクジェットヘッド
103 タンクホルダ
104 リードスクリュー
105 ガイド軸
106 記録用紙
107 給紙ローラー
108 排紙ローラー
109 紙押さえ板
111 ブラックインクタンク
112 イエローインクタンク
113 マゼンダインクタンク
114 シアンインクタンク
130 可動レバー
131 第1の爪
132 第2の爪
133 第3の爪
136 インク吸収体
137 ジョイント部材
120 大気連通口
140 インク供給筒
140A インク供給口
180 プリズム
201 シリコン基板
204 ジョイント
205 ベースプレート
206 インク流路
206a DLC膜
211 インク供給口
241 第1の穴
242 第2の穴
320 吸収体
340 負圧発生部材収容室
360 インク収容室
380 隔壁
400 箱部材
400a DLC膜
410 蓋部材
415 連通口
420 リブ
440 エアバッファ室
460 ジョイント部材
500 溶着ホーン
504 第1の押圧部材
505 第2の押圧部材
506 第3の押圧部材
601 反応容器
602 反応ガス供給手段
603a,603b 放電手段
604 希ガス類元素供給手段
605 真空ポンプ
606a,606b,606c ボンベ
607a,607b,607c 流量制御弁
608a,608b ノズル
609a,109b 高周波電源
612 磁界発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに供給するインクを貯留したインクタンクにおいて、
前記インクタンクの内部のインクと接する内面にダイヤモンドライクカーボンの膜が形成されていることを特徴とするインクタンク。
【請求項2】
インクジェットヘッドに供給するインクを貯留するためのインクタンクにおいて、
前記インクタンクの内部のインクと接する内面にダイヤモンドライクカーボンの膜が形成されていることを特徴とするインクタンク。
【請求項3】
前記インクタンクは、インクを外部に供給可能なインク供給口を有し、インクジェットヘッドからは着脱可能なようにタンクホルダに着脱自在に保持されることを特徴とする請求項1または2に記載のインクタンク。
【請求項4】
前記インクタンクはインクを貯溜可能なインク収容室とインク保持部材を収容したインク保持部材収容室を有し、インクを外部に供給可能なインク供給口を有し、前記インク収容室とインク保持部材収容室とは互いに連通路により連通されていることを特徴とする請求項3に記載のインクタンク。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクタンクを着脱自在に保持可能なタンクホルダと、インクタンクから供給されるインクの吐出を行うインクジェット記録ヘッド部を有することを特徴とするインクジェットヘッドカートリッジ。
【請求項6】
インクを吐出して被記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドにおいて、前記インクが接触するインク流路の内側にダイヤモンドライクカーボンの膜が形成されていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット記録ヘッドと、インクジェットヘッドに供給するインクを貯留したインクタンクを着脱自在に保持可能なタンクホルダと、を有することを特徴とするインクジェットヘッドカートリッジ。
【請求項8】
請求項5または7に記載のインクジェットヘッドカートリッジを着脱自在に保持し、被記録媒体の面に沿って往復移動可能に支持されたキャリッジを有し、インクを吐出するための電気信号に基づいて、前記インクジェットヘッドカートリッジの前記インクジェット記録ヘッド部からインクを吐出して前記被記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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