説明

インクレス再画像形成可能な印刷用紙および方法

【課題】コスト削減及び刊行問題を減らす使用可能な印刷用紙を提供する。
【解決手段】画像形成可能な印刷用紙は、紙基板と前記紙基板に塗布又は含浸されてなる画像形成層とを有し、画像形成層は画像形成層組成物により形成され、画像形成層組成物は、溶媒またはポリマーバインダー中に溶解または分散されているアルコキシ置換ジアリールエテンフォトクロミック材料を含み、画像形成層組成物は、無色の状態と着色した状態の間で可逆的転移を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、再画像形成可能な紙へのインクレス印刷のための基板、方法、および装置を対象とする。より詳しくは、複数の実施形態において、本開示は、熱と光によって画像形成が可能でありかつ消去が可能である、例えば溶媒またはポリマーバインダー中に分散しているアルコキシ置換ジチエニルエテンを含むような組成物であって、無色の状態と着色状態の間で可逆的転移を示す組成物を利用するインクレスの再画像形成可能な印刷用紙を対象とする。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、インクの小滴を基板上に画像に沿って噴出することによって画像が形成されるよく確立されたマーケットおよびプロセスである。インクジェットプリンタは、家庭およびビジネス環境において幅広く使用されており、特にそのインクジェットプリンタの低コストのおかげで家庭環境において使用されている。インクジェットプリンタは、広範な被印刷物例えば標準的な事務用紙、透明紙、および印画紙などに白黒の文字から写真画像に至るまで、高品質の画像を形成することを一般に可能にする。
【0003】
しかしながら、低いプリンタコストにもかかわらず、交換用のインクジェットカートリッジのコストは高く、時にはプリンタそれ自体のコストより高いことがあり得る。これらのカートリッジは頻繁に交換しなければならず、したがって、インクカートリッジの交換コストはインクジェット印刷に関する消費者の主要な不平の種である。したがって、インクカートリッジ交換コストの削減は、インクジェット印刷のユーザにとって大きな改良である。
【0004】
さらに、多くの紙の文書は、読まれた後は直ちに廃棄される。紙はあまり高価ではないとはいえ、廃棄される紙文書の量は膨大であり、これら廃棄される紙文書の処分は、相当なコストおよび環境問題を引き起こす。それにより、所望の画像を含むための新たな媒体、およびそのような媒体を調製し使用するための方法を提供することに対する要求が存在し続けている。その態様においては、再使用可能なこと、コストと環境問題を減らすことが望ましく、それはまた、エンドユーザにとって日常的に受け入れられ、使用および保存が容易である媒体を提供する柔軟であって紙のようであることが望ましい。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3961948号
【非特許文献1】「Dithienylethenes with a Novel Photochromic Performance」、J.Org.Chem.、2002年、67、4574〜4578頁
【非特許文献2】Chem.Lett.、2002年、572頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
過渡的な画像形成および保存に対しては入手可能な技術が存在するが、それらは一般に、紙の代用品としてのほとんどの用途に対しては決して望ましい結果は提供しない。例えば、代わりとなる技術としては、液晶ディスプレイ、電気泳動画像媒体、およびジリコン(gyricon)画像媒体が挙げられる。しかしながら、これらの代替技術は、多くの事例において、所望の再画像形成の可能性は提供するものの、従来の紙の外観および感触を有する文書は提供することができない。
【0007】
可逆性または非可逆性の光誘導性色変化を受ける材料であるフォトクロミック材料を用いる画像形成技術は知られており、例えば米国特許第3961948号は、有機のフィルム形成性バインダー中に少なくとも1つのフォトクロミック材料の分散体を含有するフォトクロミック画像形成層の可視光により誘発される変化に基づく画像形成方法を開示している。
【0008】
これらおよびその他のフォトクロミック(あるいは再画像形成可能なまたは電気的な)紙は、それらが、何回も再使用して画像および書類を一時的に保存することができる画像形成媒体を提供することができるために望ましい。例えば、フォトクロミック系媒体についての応用としては、再画像形成可能な書類、例えば電子ペーパー書類などが挙げられる。再画像形成可能な書類は、ユーザが望む間は情報を保存することを可能にし、その後はその情報は消去させることができ、あるいは再画像形成可能な書類を、画像形成システムを用いて異なる情報により再画像化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、複数の実施形態において、熱と光によって画像形成と消去の両方が可能であり、溶媒またはポリマーバインダー中に分散しているアルコキシ置換ジアリールエテンを含む組成物であって、無色の状態と着色状態の間で可逆的転移を示す組成物を利用する再画像形成可能な紙を提供することにより、これらおよびその他の必要性に対処する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
大まかには、様々な例示的な実施形態において、溶媒またはポリマーバインダー中に分散しているアルコキシ置換ジアリールエテンであるフォトクロミック材料を含むような、熱と光によって画像形成が可能であり、消去が可能である組成物(組成物は、無色の状態と着色状態の間で可逆転移を示す)を用いて形成されるインクレスの再画像形成可能な紙が提供される。画像形成層を第1の刺激、例えばUV光照射にさらすことによって、フォトクロミック材料の無色状態から着色状態への転換が引き起こされる。同様に、その画像形成層を第2の刺激、例えば可視光照射と任意選択の熱にさらすことによって、フォトクロミック材料の着色状態から無色状態への転換が引き起こされる。
【0011】
複数の実施形態において、画像形成媒体は、適当な紙基板材料に塗布または含浸された、または第1と第2の基板材料(すなわち、紙基板材料と上塗り層)の間に挟まれているすなわちラミネートされている画像形成層を一般に含む。その画像形成層は、溶媒またはポリマーバインダー中に分散しているアルコキシ置換ジアリールエテンであり、着色状態において増大した熱安定性を提供する改良されたフォトクロミックおよびサーモクロミック材料を含む。
【0012】
画像形成層は、任意の適当なフォトクロミック材料および溶媒またはポリマーバインダーを含むことができる。例えば、フォトクロミック材料および溶媒またはポリマーバインダーは、フォトクロミック材料が溶媒またはポリマーバインダー中に溶解または分散されたとき、そのフォトクロミック材料がその透明な状態であるように選択する。しかしながら、そのフォトクロミック材料は、第1の刺激、例えば紫外光にさらされたとき、そのフォトクロミック材料は異性体化して、より極性の着色した形態となる。この色の変化は、逆転させることができ、それ故、様々な手段、例えば異性化反応を逆転させる可視光および/または熱などの第2の刺激を加えることによって、画像を「消去」し、フォトクロミック紙をブランクの状態に戻すことができる。着色した状態で、画像は、2日以上、例えば1週間以上または1カ月以上の期間、見え続けることができ、フォトクロミック紙のさらなる有用性を提供する。
【0013】
複数の実施形態において、フォトクロミック材料は、溶媒またはポリマーバインダー中に分散しているアルコキシ置換ジアリールエテンであり、そこでこのフォトクロミック材料は、無色の状態と着色した状態の間の可逆転移を示す。フォトクロミック材料の様々な典型的な実施形態は、可逆的な転移が2つより多い形態の間で起こることが可能な場合には、3つ以上の形態の間の化学種の可逆的転移を含み得る。複数の実施形態のフォトクロミック材料は、それぞれが可逆的に相互転換できる形態を有する1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の異なるタイプのフォトクロミック材料から構成させることができる。本明細書で使用される用語「フォトクロミック材料」とは、それらの一時的な異性体の形態にかかわらず、フォトクロミック材料の特定の種のすべての分子を指す。
【0014】
複数の実施形態において、再画像形成可能な紙は、また一般に、溶媒またはポリマーバインダー中に分散または溶解されているフォトクロミック材料の溶媒またはポリマーバインダーの混合物を、その混合物が適当な紙基板材料上に塗布されているか、第1と第2の基板材料(その材料の一方は紙である)の間に挟まれた状態で含む。必要に応じて、その混合物は、基板材料上、または第1と第2の基板材料の間に、例えばその溶媒混合物をマイクロカプセルの中に入れるなどして、さらに押し込むことができる。
【0015】
文献に現れる圧倒的大多数のジチエニルエテンフォトクロームが、2−チエニル位においてアルキル基(一般的にはメチル)により置換される。これらの化合物は、UV光で急速に着色し、可視光で脱色し、両方の状態において熱的に安定な発色団である。2−チエニルメチルジチエニルエテンにより代表されるこれらの化合物は次のように表すことができる:
【化1】


しかしながら、メチル基がアルコキシ基によって置換されている2−チエニルアルコキシ置換ジチエニルエテンは、着色状態の可視光に対する長期間にわたる安定性が増し、一方で同時に熱脱色に対する障壁を低下させることが見出されている。
【0016】
したがって、実施形態において使用するのに適する置換されたジアリールエテンは、以下の一般式[I]により表すことができる:
【化2】


式[I]において、Xは、独立して、H;ハロゲン、例えば塩素、フッ素、臭素など;1から約20または約40個までの炭素原子の直鎖または分枝、置換または非置換のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなどであり、置換はハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば酸素基、窒素基など)などを含むことができるものを表す。
【化3】


式[II]において、Xは、SまたはOを表す。
【化4】


【化5】


式[IV]において、Xは、S、OまたはC=Oを表し、Yは、O、CHまたはC=Oを表す。
【化6】


式[V]において、Yは、CHまたはC=Oを表す。
【化7】


式[VI]において、Xは、CHまたはNを表す。
【化8】


式[VII]において、Yは、CHまたはC=Oを表す。
【0017】
一般式[I]〜[VII]において、R、Rは、それぞれ独立して、置換アルキル基、非置換アルキル基、直鎖アルキル基、分枝アルキル基を含むアルキル基(ここで、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などがそのアルキル基に存在していてもいなくてもよい)、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、アリール基、置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基(ここで、ヘテロ原子が、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分に存在していてもいなくてもよい)から選択され、Rは、置換アルキル基、非置換アルキル基、直鎖アルキル基、分枝アルキル基を含むアルキル基(ここで、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などがそのアルキル基に存在していてもいなくてもよい)を表し、Aは、下に示す置換基[a]または[b]または[c]を表し、Bは、下に示す置換基[d]または[e]または[f]を表す。
【化9】

【0018】
置換基[a]〜[c]において、Rは、フェニル、ナフチルなどおよび置換または非置換の複素環式芳香族基を含むアリールオキシ基;アルコキシ基または置換アルコキシ基であって、アルコキシ基のアルキル部分が、1から約20個または約40個までの炭素原子の直鎖、分枝または環状の置換または非置換のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなどを表し、置換は、ハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば酸素基、窒素基など)などを含むことができ、Rは、アリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいアルキルアリール基、シアノ基、カルボン酸基あるいは不飽和アルケン基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、Rは、アルキル基およびアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であって、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいものを表し、Uは、OまたはSを表す。
【0019】
置換基[d]〜[f]において、Rは、フェニル、ナフチルなどおよび置換または非置換の複素環式芳香族基を含むアリールオキシ基;またはアルコキシ基または置換アルコキシ基であって、アルコキシ基のアルキル部分が、1から約20個または約40個までの炭素原子の直鎖、分枝または環状の置換または非置換のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなどを表し、置換は、ハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば酸素基、窒素基など)などを含むことができ、Rは、アリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいアルキルアリール基、シアノ基、カルボン酸基あるいは不飽和アルケン基を表し、R10は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、Rは、アルキル基およびアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であって、ヘテロ原子がそのアルキルアリール基のアルキル部分またはそのアルキルアリールのアリール部分に存在していてもいなくてもよいものを表し、Zは、OまたはSを表す。
【0020】
一定の実施形態において、式[I]〜[VII]の置換ジアリールエテンは、RとRが同じアルコキシを含有する置換基であるような化合物である。この場合、アルキル基または置換アルキル基は4個以上の炭素原子を含有することが必要である。これは本願についての適切な熱に基づく環開裂反応時間に対する必要条件である。しかしながら、他の実施形態においては、RとRのアルコキシ置換基は異なるアルコキシ置換基であり得る。この場合も同様に、そのアルコキシ基の少なくとも1つまたは両方のいずれかが、4個以上の炭素原子を含有することが望ましい。
【0021】
2−チエニルアルコキシを含有しているジアリールエテンは、それらの着色した状態において、アルキル置換されているジアリールエテンなど他の置換ジアリールエテンより可視光に対して長時間にわたってより安定である。同時に、そのアルコキシ置換は、着色した状態から無色の状態に戻る熱脱色すなわち逆異性化に対する障壁を低下させる。これらは再使用可能な紙書類媒体に対する重要な特性であり、フォトクロームのアルコキシ含有ジチエニルエテンの種類に非常に特有であることが見出された。例えば、特に無人で残される情報の安全性に関係するようなあるユーザにとっては、約1日で再画像形成可能な書類が自動的に消去することは有益である。しかしながら、他のユーザにとっては、自動的に消去することは、そのユーザは消去時間/速度を過ぎたコントロールを有さないために不利である。これらの後のユーザは、書類が印刷された画像を必要な長さだけ(例えば、数日から数週間以上にわたって)表示し、次にユーザが決心するとき、情報が、同じ紙のシートに新たな情報をリプリントする間に消去される「オンデマンドで消去する」タイプの再使用可能な書類の方を選ぶであろう。
【0022】
アルコキシ変性したジアリールエテンの特別な利点は、アルコキシ置換基の適切な選択によって熱消去に対する障壁の固有の調整を可能にすることができることである。例えば、熱消去に対する障壁は、アルコキシR基置換基の構造に基づいて、周囲温度(例えば約25〜約70℃)における長期間の熱に基づく色安定性を維持する一方で、高温(例えば約80〜約160℃)においては迅速かつ完全であるように調整することができる。熱分析および分光分析に基づいて、特定の化合物の半減期熱安定性は、最低の熱安定性のt−ブチル化合物についての30℃で約2.2時間からメトキシ化合物についての30℃で420年まで変動することを予測できる。
【0023】
したがって、いくつかの実施形態において、アルコキシ変性ジチエニルエテンフォトクロミック材料は、その着色状態からその無色の状態に適当な照射、例えば可視光単独など、にさらすことによって容易に転換させることができる。しかしながら、他の複数の実施形態においては、アルコキシ変性ジチエニルエテンフォトクロミック材料は、その着色状態からその無色の状態に適当な照射、例えば熱と組み合わせた可視光にさらすか、または熱単独にさらすことによって容易に転換させることができる。本明細書で「容易に転換される」とは、用意したフォトクロミック材料が、約30分未満、約10分未満、約1分未満、または約30秒未満の熱および/または光の適切な転換手段への暴露時間の間にその着色した状態からその無色の状態に転換され得ることを意味する。それに対して、本明細書で「容易に転換されない」とは、用意したフォトクロミック材料が、約1時間未満、例えば約1週間未満、約1年未満、または約5年未満の熱および/または光の適切な転換手段への暴露時間の間にその着色した状態からその無色の状態に転換されないことを意味する。例えば、転換に対する活性化因子として熱を使用するいくつかの実施形態において、約80〜約250℃、例えば約100〜約200℃または約100〜約160℃の温度でのフォトクロミック材料の加熱は、フォトクロミック材料を上記の時間中に着色した状態から元の無色の状態に容易に転換することができるが、約25〜約75℃の温度でのフォトクロミック材料の加熱は、フォトクロミック材料を着色した状態から元の無色の状態に容易には転換しない。
【0024】
これらのフォトクロミック材料は、かくして、置換を異にするかまたは非置換の他のジチエニルエテンを含む他のフォトクロミック材料とは、材料が、可視光単独にさらすことによっては着色状態から無色の状態に一般に容易に転換して戻ることができず、着色状態から無色の状態に転換して戻るためには、可視光ありまたはなしで適当な加熱にさらすことを必要とするという点で異なる。これは、周囲の熱を超える十分な熱が構造の再編が起こることを可能にする十分な分子格子移動を引き起こすまで着色した状態を凍結することができるために、望ましい製品を可能にする。さらに、複数の実施形態において、フォトクロミック材料は、そのフォトクロミック材料が着色状態と無色の状態の間の切り替えを起こすために、熱を加えることのみを必要とし、光の刺激は必要としない。
【0025】
画像形成材料(フォトクロミック材料)は、任意の適当なキャリア、例えば溶媒、ポリマーバインダーなどの中に溶解または分散させる。1つ以上の溶媒の混合物すなわち溶媒系も、使用することができる。さらに、より極性の溶媒も必要に応じて使用することができる。
【0026】
有機ポリマーまたは水性ポリマーのいずれかに分散可能な両方の組成物が、使用される成分によって使用することができる。例えば、水組成物に対しては、ポリビニルアルコールが適当な適用溶媒であり、ポリメチルメタクリレートが有機可溶組成物に対して適する。いくつかの実施形態において、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレンは、それらのコストおよび広範な入手の可能性の点から好適なポリマーバインダーである。ポリマーバインダーは、使用に際して、コーティングまたはフィルム形成組成物を提供する役割を有する。
【0027】
ポリマーバインダーとして、相変化物質もまた使用することができる。
【0028】
一般に、任意の有機ポリマーのほとんどを使用することができる。しかしながら、複数の実施形態において、可視画像を消去するために熱を使用するので、ポリマーは、選択された特定のアルコキシ置換ジアリールエテンフォトクロームに基づいて形成された画像を消去するために使用することができる高温に耐えることのできる熱的性質をそれが有するように選択することができる。
【0029】
複数の実施形態において、画像形成組成物は、1つの形に塗布し、使用するための別の形に乾燥させることができる。つまり、例えば、フォトクロミック材料および溶媒またはポリマーバインダーを含む画像形成組成物は、紙基板に塗布または含浸させるための溶媒に溶解または分散させ、その溶媒は乾燥した層を形成するために後で蒸発させることができる。
【0030】
一般に、画像形成組成物は、キャリアおよび画像形成材料を任意の適当な量、例えば約5〜約99.5重量パーセントのキャリア、例えば約30〜約70重量パーセントのキャリア、および約0.05〜約50重量パーセントのフォトクロミック材料、例えば約0.1〜約5重量パーセントのフォトクロミック材料を含むことができる。
【0031】
画像形成層を画像形成媒体の紙基板に塗布するためには、画像形成層組成物を任意の適当なやり方で塗布することができる。
【0032】
画像形成媒体は、少なくとも1面に画像形成層をコートまたは含浸させた支持紙基板を含むことができる。所望により、その基板は、1面だけか、または両面に画像形成層をコートまたは含浸させることができる。
【0033】
任意の適当な支持紙基板を使用することができる。
【0034】
画像形成媒体中に不透明層を使用するときは、任意の適当な材料を使用することができる。例えば、白い紙のような外観が望まれる場合、その不透明層は、二酸化チタン、または酸化亜鉛、無機炭酸塩などのようなその他の適当な材料の薄いコーティングにより形成することができる。その不透明層は、他の厚さを使用することもできるが、例えば、約0.01mm〜約10mm、例えば約0.1mm〜約5mmの厚さを有することができる。
【0035】
必要に応じて、さらなる上塗り層を、塗布した画像形成層の上に塗布することもできる。
【0036】
フォトクロミック材料が、紙基板上に塗布される溶媒と混合される場合であって、かつその溶媒系が最終製品中に保持される場合、さらなる処理が必要であり得る。結果として、フォトクロミック材料が紙基板上に単に塗布される場合、被覆材料は、一般に、溶媒系を基板上の適所に拘束するためにその溶媒系の上に塗布する。つまり、例えば、その被覆材料は、基板層用として上で開示した適当な材料のいずれかのような固体層であることができる。代わりの一実施形態においては、ポリマー材料またはフィルムをフォトクロミック材料の上に塗布することができ、その場合、ポリマーフィルムは、離れた点の状態のフォトクロミック材料に浸透し、基板近くで底部と境を接し、ポリマー材料近くで側面および上面と境を接しているフォトクロミック材料のポケットすなわちセルを実質的に形成する。そのセルの高さは、以下には限定されないが、例えば、約1μm〜約1000μmであり得る。そのセルは、任意の形状、例えば、正方形、長方形、円、多角形などであり得る。これらの実施形態において、被覆材料は、フォトクロミック材料により提供されるフルカラーのコントラスト効果を提供するために、無色透明であることが有利である。
【0037】
別の実施形態においては、フォトクロミック材料を含む溶媒系は、カプセル化またはマイクロカプセル化して、得られたカプセルまたはマイクロカプセルを、上記のような紙基板上に堆積またはコートすることができる。
【0038】
その方法の態様において、本開示は、紙基板と、溶媒またはポリマーバインダー中に分散されたアルコキシ置換ジチエニルエテンを含む画像形成層とを含む画像形成媒体を提供するステップを含み、そこでその組成物は、無色の状態と着色状態との間の可逆転換を示す。個々の書込みと消去のプロセスを提供するために、画像形成は第1の刺激、例えばUV照射などを、画像形成材料に加えて色の変化を引き起こすことにより行い、消去は、第2の異なる刺激、例えばUVまたは可視光の照射および場合によって熱などを、画像形成材料に加えて色の変化を逆転させることにより行う。その他の複数の実施形態において、その消去は、可視光と熱の両方を加えるか、熱単独を加えることによって行われる。
【0039】
複数の実施形態において、加熱は、書込みおよび/または消去プロセスのいずれに対しても、光照射の前または光照射と同時に画像形成層に加えることができる。しかしながら、複数の実施形態において、加熱は書込みプロセスには必要ではなく、ということは無色から着色への色の変化を引き起こすにはUV光のような刺激で十分であり、しかし一方、消去プロセスに対しては、着色から無色への色の変化を速めるための材料の移動性を増す助けとなるために加熱することが望ましく、あるいは必要であり得る。その加熱は、その加熱が、画像形成組成物が照射または消去プロセスの間に所望の温度まで上げられる原因となる限りは、照射の前もしくは途中、または単独で適用することができる。任意の適当な加熱温度を使用することができ、例えば、使用される特定の画像形成組成物に依存する。
【0040】
異なる刺激、例えば異なる光照射の波長などを、明確な書込みおよび消去操作を提供するために適切に選択することができる。例えば、一実施形態において、フォトクロミック材料は、UV光に感受性で透明状態から着色状態への異性化を引き起こすが、着色状態から透明状態への異性化を引き起こすには可視光に感受性であるように選択する。その他の複数の実施形態において、書込みおよび消去の波長は、少なくとも約10nm、例えば少なくとも約20nm、少なくとも約30nm、少なくとも約40nm、少なくとも約50nm、または少なくとも約100nm分離させる。
【0041】
書込みプロセスにおいて、画像形成媒体は、活性化させる適切な波長を有する画像形成性の光、例えば発光ダイオード(LED)のようなUV光源に、画像に沿ったやり方でさらす。その画像形成性の光は、フォトクロミック材料が透明な状態から着色した状態に例えば異性化などして転換し、画像形成の位置で着色した画像を生じ、そのフォトクロミック材料が安定な異性体の形に異性化して画像中にロックされることを引き起こすために、フォトクロミック材料に十分なエネルギーを供給する。画像形成媒体の特定の区域に照射されるエネルギーの量は、その区域で発生する色の強さまたは色相に影響し得る。適当なフォトクロミック材料、溶媒もしくはポリマーバインダー、および照射条件が選択されたとき、画像形成媒体の特定区域で照射されるエネルギーの量の変動は、かくして、グレースケール画像の形成を可能にし、その一方で、他の適当なフォトクロミック材料の選択により、フルカラー画像の形成を可能にすることができる。
【0042】
書込みプロセスにより画像が一旦形成されると、その画像形成材料内のフォトクロミック材料の形成された安定な異性体の形が、画像中にロックされる。すなわち、新たなフォトクロミック材料の異性体の形は、周囲の熱および光に対してより安定であり、したがってより大きな長期間の安定性を示す。その画像は、それによって「凍結」または固定され、特別の第2の刺激なしでは容易に消去することはできない。複数の実施形態において、画像はロックされ、周囲の熱または光では容易には消去することができず、無色の状態に戻すためには高温およびまたは光の刺激を必要とする。画像形成基板は、かくして、長寿命の画像存続期間を示すが、所望によっては消去してさらなる画像形成サイクルのために再使用することができる。
【0043】
消去プロセスにおいては、異なる刺激、例えば異なる波長の照射光、例えば可視光が使用されること、および/またはフォトクロミック材料がキャリア物質のガラス転移点、融点、または沸点の温度またはその近くの温度まで加熱される場合を除けば、書込みプロセスが、本質的に繰り返される。例えば、その加熱は、約80〜約250℃の温度、例えば約100〜約200℃または約100〜約160℃で行うことができる。消去プロセスは、画像形成区域で前もって形成された画像を消去するために、異性化の逆転およびフォトクロミック単位の、着色した状態から透明な状態への異性化のような転換を引き起こす。消去手段は、必要に応じて、画像に向けたやり方に関するか、全体としての画像形成層全体に関するものであり得る。加熱ステップは任意的であり、一定の組成物は、光の波長などの選択された刺激にさらすだけで消去されるように準備することができ、一方、他の組成物は、場合によっては光の波長などの選択された刺激にさらすことを加えるとしても、加熱条件下のみで消去することができるように準備することができる。
【0044】
一時的な画像を形成するために使用される別々の画像形成性の光は、例えば単一波長または帯域波長のような任意の適当な所定の波長範囲を有することができる。様々な例示的実施形態において、画像形成性の光は、単一波長または狭帯域波長を有する紫外(UV)光である。例えば、UV光は、約200nm〜約475nmのUV光波長範囲、例えば、約365nmの単一波長または約360nm〜約370nmの波長帯から選択することができる。画像を形成するために、画像形成媒体は、それぞれの画像形成の光に約10ミリ秒〜約5分、特に約30ミリ秒〜約1分の範囲の時間さらすことができる。画像形成性の光は、約0.1mW/cm〜約100mW/cm、特に約0.5mW/cm〜約10mW/cmの範囲の強度を有することができる。
【0045】
消去用の光は、着色状態の異性体の可視領域における吸収スペクトルと重複する波長の強い可視光である。例えば、消去用の有用な光は、約400nm〜約800nmまたは好ましくは約500nm〜約800nmの範囲の波長を有することができる。消去に有用な可視光は、消去すべき文書の領域近くに配置されている5W〜約1000Wまたはより好ましくは約20W〜約200Wの出力を有するバルブを備えたキセノン光源から得ることができる。別の適当な消去用光源は、上で定義した光スペクトルの可視領域の波長を有するLEDである。消去用の光は、単一波長または狭帯域波長を有していることができる。
【0046】
様々な例示的実施形態において、所定の画像に対応する画像形成性の光は、例えばコンピュータまたは発光ダイオード(LED)配列スクリーンにより発生させることができ、その画像は、その媒体をLEDスクリーン上またはその近くに望ましい時間置くことによって画像形成媒体上に形成される。他の例示的実施形態においては、UVレーザビームスキャナ(ROS)(Raster Output Scanner)を使用して画像に沿ったパターンのUV光を発生させることができる。この実施形態は、例えば別の従来のやり方においては印刷された画像を発生するコンピュータによって駆動させることができるプリンタ装置に特に応用可能である。
【実施例】
【0047】
実施例1.
置換基[a]および[d]が同じであり、3個より多い炭素原子をRとRのアルコキシ置換基に有するフォトクロミック材料(3,3’−ペルフルオロシクロペント−1−エン−1,2−ジイル)ビス(2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン)を、下記のように合成した。3−ブロモ−2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェンのオクタフルオロシクロペンテンへの結合は、「Dithienylethenes with a Novel Photochromic Performance」、J.Org.Chem.、2002年、67、4574〜4578頁に記載されている手順に従って前もって形成した。
【化10】


シクロヘキシル4−オキソ−4−フェニルブタノエート:周囲温度の2Lの3つ口丸底フラスコに、ジクロロメタン(1.5L)中の4−オキソ−4−フェニルブタン酸(41g、230mmol)を加え、無色の濁りを帯びた溶液を生じさせた。DCC(47.5g、230mmol)を加え、次にシクロヘキサノール(23.05g、230mmol)を加えた。混合物を室温(RT)で3時間攪拌し、次いでDMAPを加えた(2.81g、23mmol)。その反応物を周囲温度で24時間攪拌し、溶媒を蒸留によって〜400mlまで濃縮し、その溶液を次に濾過して白色の固体を除去した。その溶液を次に濃縮し、残留物を、カラムクロマトグラフィー(SiO)によりCHCl/ヘキサンの1:3中で精製し、シクロヘキシル4−オキソ−4−フェニルブタノエートである無色の液体(56g)を得た(88%収率)。
【化11】


2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン:アルゴン下の500mLの丸底フラスコに、シクロヘキシル4−オキソ−4−フェニルブタノエート(2g、7.68mmol)および無水トルエン(125mL)中のローソン試薬(Lawesson reagent)(3.73g、9.22mmol)を加えて白色の懸濁液を生じさせた。その混合物を加熱して還流させ、それによってローソン試薬を溶解させた。その混合物を〜24時間還流させ、その時点でその混合物を冷却して濾過した。その濾液を濃縮し、SiOの短カラムにかけ、CHCl:ヘキサンの1:3でフラッシングして、2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェンである白色固体(1.4g)を得た(70%)。
【化12】


3−ブロモ−2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン:0℃に冷却した250mLの丸底フラスコに、2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン(1.071g、4.15mmol)およびCHCl(75mL)中のNBS(N−ブロモスクシンイミド)(0.738g、4.15mmol)を加えた。その混合物を攪拌して無色の溶液を生じさせた。その混合物を0℃で1時間攪拌した。その混合物をそのまま周囲温度まで温めた。周囲温度になって1時間後、その混合物を濃縮し、シリカのプラグを通すフラッシング(1:3のCHCl:ヘキサン)にかけ、3−ブロモ−2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェンである白色固体(1.25g)を得た(95%)。
【化13】


(3,3’−ペルフルオロシクロペント−1−エン−1,2−ジイル)ビス(2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン:周囲温度の火炎乾燥したアルゴン下の100mLの丸底フラスコに、無水THF(60ml)中の3−ブロモ−2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン(0.905g、2.68mmol)を加え、藤色の溶液を生じさせた。その溶液を−70℃に冷却し、n−ブチルリチウム2.5Mヘキサン(1.073ml、2.68mmol)を、2分間かけて滴下して加えた。その混合物は淡黄色に変わり、−70℃で2時間攪拌した。ペルフルオロシクロペント−1−エン(0.176ml、1.315mmol)を次に加えた。その混合物を−70℃で30分攪拌し、次いでそのまま周囲温度まで温め、1時間攪拌した。水とエーテルを加えて層分離させた。エーテル層を飽和重炭酸塩、次いで塩水(brine)で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した。エーテルを除去し、褐色の残留物をヘキサンによるカラムクロマトグラフィー(SiO)によって精製し、(3,3’−ペルフルオロシクロペント−1−エン−1,2−ジイル)ビス(2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェンであるやや緑色の固体(0.35g)を得た(20%)。
【0048】
実施例2.
置換基[a]と[d]が異なり、[a]がアルコキシ基Rに3個より少ない炭素原子を有しており、[d]がアルコキシ置換基Rに3個を超える炭素原子を有しているフォトクロミック材料(2−t−ブトキシ−3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−5−フェニルチオフェン)を下記のようにして合成した。
【化14】


2−t−ブトキシ−3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−5−フェニルチオフェン:アルゴン下の火炎乾燥した250mLの丸底フラスコに、無水THF(100ml)中の3−ブロモ−2−メトキシ−5−フェニルチオフェン(2.518g、9.36mmol)を加えて無色の溶液を生じさせた。その混合物を−70℃に冷却し、n−ブチルリチウム2.5Mヘキサン(3.93ml、9.82mmol)を滴下して加えた。その溶液を−70℃で45分間攪拌した。アルゴン下の別の火炎乾燥した500mLの3つ口丸底フラスコに、無水THF(250ml)中のペルフルオロシクロペント−1−エン(4.02ml、29.9mmol)を加え、無色の溶液を生じさせた。この混合物もまた−70℃に冷却した。45分後、黄色の3−ブロモ−2−メトキシ−5−フェニルチオフェン溶液をペルフルオロシクロペント−1−エン中に減圧下でカニューレにより注入した。その混合物を−70℃で1時間攪拌した。その混合物を半分の容積まで濃縮し、エーテルを加え、その混合物を水と次いで塩水(brine)により洗浄した。その残留物をヘキサンによるカラムクロマトグラフィー(SiO)により精製した(54%)。
【化15】


2−t−ブトキシ−3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−5−フェニルチオフェン:アルゴン下の火炎乾燥した100mLの丸底フラスコに、50mlの無水THF中の3−ブロモ−2−t−ブトキシ−5−フェニルチオフェン(0.66g、2.121mmol)(Chem.Lett.、2002年、572頁)を加え、無色の溶液を生じさせた。その混合物を次に−70℃に冷却した。n−ブチルリチウム2.5Mヘキサン(0.848ml、2.121mmol)を加え、溶液を淡黄色に変えた。その混合物を−70℃で45分間攪拌し、2〜3mlの無水THFに溶解した2−メトキシ−3−(ペルフルオロシクロペント−1−エニル)−5−フェニルチオフェン(0.811g、2.121mmol)を滴下して加えた。その混合物をそのまま−70℃で1時間攪拌し、次いでそのまま周囲温度まで温めた。その混合物をエーテルで希釈し、飽和重炭酸塩溶液で洗浄した。有機層を次いで濃縮し、得られた残留物をSiO(1:3のDCM:ヘキサン)により精製し、2−t−ブトキシ−3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−5−フェニルチオフェンである白色固体を得た(50%)。
【0049】
実施例3.
置換基[a]と[d]とが異なり、[a]および[d]が、アルコキシ置換基RおよびRに3個より多い炭素原子を有するフォトクロミック材料(2−t−ブトキシ−3−(2−(2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン−3−イル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペント−1−エニル)−5−フェニルチオフェン)を、実施例2と同様に合成した。
【化16】

【0050】
着色したフォトクロームを以下のようにして評価した。70mgのフォトクロミック材料を、トルエンに溶解したポリメタクリル酸メチル(PMMA−ポリマーバインダー)の溶液(PMMA/トルエン=20g/100ml)の3mlに溶解して作製した。その溶液を次に石英のスライド(1”×1”)に60秒間スピンコート(700rpm)し、均一なフォトクロミックフィルムを得た。その石英のスライドに30秒間照射(365nm、4mW/cm)し、紺青色のフィルムを得た。その石英のスライドを、次に、図1ならびに図2Aおよび図2Bに記載されている規定の消去条件の下で、そのフィルムが一定のレーザ信号およびUV/VIS分光側色法によって測定して無色になるまで、140℃の温度の消去装置中にセットした。
【0051】
印刷されたスライドは、可視光による照射が有りと無しとで、140℃で加熱することにより消去した。これにより、可視性の残留色がない無色の石英スライドがもたらされた。次に、そのスライドは、書込みと消去のサイクルを繰り返すことによって再び着色することができた。表1は、実施例1〜実施例3について上で記したフォトクロームの消去に対して、第1の状態(時間ゼロ、試料が着色しているとき)と時間の終点(信号が一定で最高のとき、すなわち、試料が完全に消去されている)の間の信号の半分までレーザビームから送信される信号を増加させるために必要な時間として定義される消去の半減時間を記載している。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本開示との関連で使用するための典型的な試験装置を示す図である。
【図2A】図1の装置の加熱試料保持器のさらなる詳細を示す図である。
【図2B】図1の装置の加熱試料保持器のさらなる詳細を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)により表されることを特徴とするフォトクロミック材料
【化1】


[式中:
各Xは、独立して、水素、1〜20個の炭素原子を有するアルキル鎖、臭素、塩素またはヨウ素原子を表し、
Aは、式(a)〜(c)の基を表し、
Bは、式(d)〜(f)の基を表し、
【化2】


式中:
は、アリールオキシ基、置換または非置換の複素環式芳香族基、アルコキシ基、または置換アルコキシ基(ここで、アルコキシ基のアルキル部分は、直鎖状、分枝状または環状の1から約40個の炭素原子の置換または非置換のアルキル基を表す)を表し、
は、アリール基、置換または非置換のアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分にはヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)、シアノ基、カルボン酸基、または不飽和アルケン基を表し、
は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、
は、アルキル基、アリール基、置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリールのアリール部分にヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)を表し、
は、アリールオキシ基、置換および非置換の複素環式芳香族基、またはアルコキシ基もしくは置換アルコキシ基(ここで、アルコキシ基のアルキル部分は、1から約40個の炭素原子の、直鎖状、分枝状または環状の置換または非置換のアルキル基を表す)を表し、
は、アリール基、置換または非置換のアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分にはヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)、シアノ基、カルボン酸基、または不飽和アルケン基を表し、
10は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、
11は、アルキル基、アリール基、または置換もしくは非置換のアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリールのアリール部分にはヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)を表し、
UとZは、それぞれ独立して、硫黄または酸素原子を表す]。
【請求項2】
一般式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)によって表されることを特徴とするフォトクロミック材料
【化3】

[式中:
式(II)において、Xは、SまたはOを表し、
式(IV)において、Xは、S、OまたはC=Oを表し、Yは、O、CHまたはC=Oを表し、
式(V)において、Yは、CHまたはC=Oを表し、
式(VI)において、Xは、CHまたはNを表し、
式(VII)において、Yは、CHまたはC=Oを表し、
式中:
Aは、式(a)〜(c)の基を表し、
Bは、式(d)〜(f)の基を表し、
【化4】


式中:
は、アリールオキシ基、置換または非置換の複素環式芳香族基、アルコキシ基、または置換アルコキシ基(ここで、アルコキシ基のアルキル部分は、直鎖状、分枝状または環状の1から約40個の炭素原子の置換または非置換のアルキル基を表す)を表し、
は、アリール基、置換または非置換のアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分にはヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)、シアノ基、カルボン酸基、または不飽和アルケン基を表し、
は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、
は、アルキル基、アリール基、置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリールのアリール部分にヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)を表し、
は、アリールオキシ基、置換および非置換の複素環式芳香族基、またはアルコキシ基もしくは置換アルコキシ基(ここで、アルコキシ基のアルキル部分は、1から約40個の炭素原子の、直鎖状、分枝状または環状の置換または非置換のアルキル基を表す)を表し、
は、アリール基、置換または非置換のアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分にはヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)、シアノ基、カルボン酸基、または不飽和アルケン基を表し、
10は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基、または置換アルキルアリール基を表し、
11は、アルキル基、アリール基、または置換もしくは非置換のアルキルアリール基(ここで、アルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分にはヘテロ原子が存在するかしないかのいずれかであってよい)を表し、
UとZは、それぞれ独立して、硫黄または酸素原子を表す]。
【請求項3】
画像形成層組成物を紙基板に塗布するステップを含む画像形成媒体を製造する方法であって、画像形成層組成物が、溶媒またはポリマーバインダー中に溶解または分散されているアルコキシ置換ジアリールエテンフォトクロミック材料を含み、
画像形成層組成物が、無色の状態と着色した状態の間で可逆的転移を示すことを特徴とする方法。
【請求項4】
画像を形成する方法であって、
紙基板と、溶媒またはポリマーバインダー中に溶解もしくは分散しているアルコキシ置換ジアリールエテンフォトクロミック材料を含む画像形成組成物を含む、前記紙基板上にコートされているかまたは前記紙基板中に含浸されている画像形成層と、を含む画像形成媒体を用意する工程と、
画像形成媒体を第1の波長のUV照射に、像様のやり方で暴露して可視画像を形成させる工程と、を含み、
前記画像形成組成物は、無色の状態と着色した状態の間で可逆的転移を示すことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2008−310324(P2008−310324A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153945(P2008−153945)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】