説明

インク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キット

【課題】単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業性を向上する。
【解決手段】インク充填用治具300は、インクカートリッジ10のカートリッジケース103の開口部104と係合して、中空針からなる充填用ノズル部材403を有する充填器400とノズル挿通路126との相対位置を決める第1位置決め部301及び第2位置決め部302と、第1、第2位置決め部301、302で位置決めされた状態でピニオン133と係合し、供給口部125を開口部104に対向する供給位置に移動させるラック303とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。
【0003】
液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0004】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出する装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること、すなわち、液体吐出装置)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは二次元画像に限らず、3次元画像(立体画像)も含まれる。
【0005】
このような画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、例えば記録ヘッドを搭載したキャリッジ上に、記録ヘッドにインクを供給するサブタンク(バッファタンク、ヘッドタンクとも称される。)を搭載し、メインのインクカートリッジ(メインタンクとも称される)を画像形成装置本体(以下、単に「装置本体」という。)側に着脱自在に装着し、サブタンクに装置本体側のインクカートリッジからインクを補充供給するようにしたものが知られている。
【0006】
インクカートリッジとしては、例えば、供給口部とインク充填口部を有する保持部材を備えたインク袋を、分割されたカートリッジケースに収納し、保持部材をカートリッジケースの保持手段にて保持したものが知られている(特許文献1)。
【0007】
また、ヘッド一体型インクカートリッジとして、インク吐出ノズルを含むインク吐出部と、温度に応じて吐出ノズルをキャッピングしたり、開放したりするシャッタ部材を備えて、シャッタ部材をインク吐出部からの吐出方向と直交する方向にスライドさせることで、インク吐出部を開閉するようにしたものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3919734号公報
【特許文献2】特開平6−06−328718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように装置本体に対してインクカートリッジを着脱自在に装着する画像形成装置においては、インクカートリッジが使用済みになると、ユーザによってインクカートリッジの交換が行われる。この場合、使用済みインクカートリッジの供給口部から装置本体側のインク吸引用ノズル部材(中空針)が抜かれるときに供給口部にインクが付着することがあり、当該供給口部のインクで手やその他の部材が汚れないように取り扱う必要がある。
【0010】
一方、新規のインクカートリッジを包装部材から取り出して装置本体に装着するとき、ユーザがインクカートリッジの供給口部に触れることなどで供給口部に異物や脂が付着するおそれがあり、このまま装置本体に装着されると、インク供給経路内に異物や脂などが侵入して、滴吐出不良を生じされることになる。
【0011】
このように、従来のインクカートリッジにあっては、特に、使用済みインクカートリッジの交換作業における取り扱いが面倒であり、滴吐出不良を生じるおそれがあるという課題がある。
【0012】
そこで、カートリッジケース内に収納されたインク収容手段は、画像形成装置本体側の供給用ノズル部材(インク吸引用ノズル部材)がカートリッジケースの開口部を介して挿通される供給口部が、供給用ノズル部材を挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動可能に保持され、画像形成装置本体に挿入するときに供給口部を供給位置に移動させ、画像形成装置本体から抜き出すときに供給口部を遮蔽位置に移動させる移動手段を備えている構成とすることで、インクカートリッジの取り扱い性を向上し、また滴吐出不良を生じさせるおそれを低減することができる。
【0013】
このような構成のインクカートリッジを使用する場合、単体ではインク収容手段の供給口部が外部から遮蔽された遮蔽位置にあるので、インク収容手段にインクを充填することが難しくなる。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明に係るインク充填用治具は、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するときに使用するインク充填用治具であって、
前記カートリッジケースと係合して、充填用ノズル部材を有する充填手段の位置を決める位置決め部と、
前記位置決め部で位置決めされた状態で前記移動手段と係合し、前記供給口部の少なくとも一部を前記供給位置に移動させる係合部と、を備えている
構成とした。
【0016】
ここで、前記充填用ノズル部材を有する充填手段を保持する保持部を備えている構成とできる。
【0017】
また、前記位置決め部は、前記カートリッジケースに設けられた前記移動手段に対向する溝部に嵌め込まれる構成とできる。
【0018】
また、前記係合部は、前記移動手段を構成するピニオンに噛み合うラックを有している構成とできる。
【0019】
また、前記係合部は、前記移動手段を構成するカム部材に当接するカムを有している構成とできる。
【0020】
本発明に係るインク充填装置は、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填装置であって、
本発明に係るインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に弾性部材を介して進退可能に保持され、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、を備えている
構成とできる。
【0021】
本発明に係るインク充填方法は、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填方法であって、
本発明に係るインク充填用治具を用いて、前記供給口部を前記供給位置に移動させ、
充填手段の充填用ノズル部材を前記供給口部に挿通して充填を行う
構成とした。
【0022】
本発明に係るインク充填キットは、
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填キットであって、
本発明に係るインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に保持可能であって、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、
前記インク充填用治具と前記充填手段を収納した収納手段と、を備えている
構成とした。
【0023】
ここで、前記収納手段には充填用インクが収納されている構成とできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るインク充填用治具によれば、カートリッジケースと係合して、充填用ノズル部材を有する充填手段の位置を決める位置決め部と、位置決め部で位置決めされた状態で移動手段と係合し、供給口部の少なくとも一部を供給位置に移動させる係合部とを備えている構成としたので、インクカートリッジに治具を装着したときに供給口部が供給位置に移動し、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができるようになり、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0025】
本発明に係るインク充填装置によれば、本発明に係るインク充填用治具と充填手段を備えている構成としたので、インクカートリッジに治具を装着して供給口部を供給位置に移動させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0026】
本発明に係るインク充填方法によれば、本発明に係るインク充填用治具をインクカートリッジに装着して供給口部を供給位置に移動させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なう構成としたので、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性が向上する。
【0027】
本発明に係るインク充填キットによれば、本発明に係るインク充填用治具と、インク充填用治具に保持可能であって、供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、インク充填用治具と充填手段を収納した収納手段とを備えている構成としたので、インクカートリッジに治具を装着して供給口部を供給位置に移動させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットを使用してインクを充填可能なインクカートリッジを備える画像形成装置の一例を示す外観斜視説明図である。
【図2】同画像形成装置の機構部の概要を示す側面模式的説明図である。
【図3】同じく要部平面説明図である。
【図4】本発明に係るインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットを使用してインクを充填可能なインクカートリッジの第1例の外観斜視説明図である。
【図5】同じく異なる状態を示す外観斜視説明図である。
【図6】同じく部分正断面説明図である。
【図7】同インクカートリッジのインク袋の側面説明図である。
【図8】図7の平面説明図である。
【図9】図7の底面説明図である。
【図10】同インク袋の袋本体を構成するアルミラミネートフィルムの説明図である。
【図11】図6のA−A線に沿う要部断面説明図である。
【図12】インク袋のカートリッジケースへの保持構造の説明に供するカートリッジケースの第1ケースの要部斜視説明図である。
【図13】同じくインクカートリッジの要部平断面説明図である。
【図14】図7のB−B線に沿う要部断面説明図である。
【図15】同インクカートリッジの付勢手段の一例を示す斜視説明図である。
【図16】インクカートリッジをカートリッジ装填部内の挿入スロットに差し込んだときの平断面説明図である。
【図17】同インクカートリッジを同挿入スロットに奥まで装着したときの平断面説明図である。
【図18】インクカートリッジを装置本体の挿入スロットに固定する構成の一例の説明に供する挿入スロットの側面説明図である。
【図19】インクカートリッジの第2例の供給口部の部分斜視説明図である。
【図20】同インクカートリッジをカートリッジ装填部内の挿入スロットに差し込んだときの平断面説明図である。
【図21】同インクカートリッジを同挿入スロットに奥まで装着したときの平断面説明図である。
【図22】インクカートリッジの第3例の要部平断面説明図である。
【図23】インクカートリッジの第4例のインク袋の分解側面説明図である。
【図24】同インク袋のボス部分の拡大説明図である。
【図25】インクカートリッジの第5例のインク袋の要部斜視説明図である。
【図26】インクカートリッジの第6例の要部平断面説明図である。
【図27】本発明に係るインク充填用治具の第1実施形態の斜視説明図である。
【図28】同治具をインクカートリッジに装着してインク充填を行うときの作用説明に供する斜視説明図である。
【図29】同じく要部平断面説明図である。
【図30】同じく要部平断面説明図である。
【図31】本発明に係るインク充填用治具の第2実施形態の斜視説明図である。
【図32】本発明に係るインク充填装置の一例を示す斜視説明図である。
【図33】本発明に係るインク充填キットの一例を示す説明図である。
【図34】本発明に係るインク充填キットの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係るインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットを使用してインクを充填可能なインクカートリッジを備える画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の外観斜視説明図である。
この画像形成装置は、シリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1と、装置本体1に装着したまま所定の用紙補給位置(図2の位置)まで引出し可能な給紙カセット2と、給紙カセット2の蓋部材を兼ね、装置本体1に揺動可能に装着されて給紙カセット2の上方を開閉可能な排紙トレイ3とを備えている。給紙カセット2は装置本体1内に給紙する用紙がストックされ、排紙トレイ3には画像が記録(形成)された用紙がストックされる。さらに、装置本体1の前面の一端部側には、本発明に係るインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0030】
次に、画像形成装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0031】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0032】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。
【0033】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される本発明に係るインクカートリッジである各色のインクカートリッジ10y、10m、10c、10k(区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)から、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色のインクが補充供給される。
【0034】
一方、給紙カセット2の用紙積載部(底板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部(給紙手段)として、底板41上の用紙42を1枚ずつ分離給送する給紙ローラ43及び給紙ローラ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(フリクションパッド)44を備え、この分離パッド44は給紙ローラ43側に付勢されている。
【0035】
そして、この給紙カセット2から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0036】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0037】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0038】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0039】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。
【0040】
また、この維持回復機構81の下方側には維持回復動作のうちの空吐出受け84に対する空吐出及びワイパ部材83の清掃によって空吐出受け84から生じる廃液を収容するための交換されない第1廃液タンク90を、維持回復機構81の側方側にはカートリッジ装填部4の下側に装置本体の前面側から交換可能な第2廃液タンク91を、それぞれ備えている。インクカートリッジ10及び第1廃液タンク91は、装置本体1の前面の共通のカバーを開くことで、装置本体前面側から交換することができるため、低コスト化を図れる。
【0041】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0042】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙カセット2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0043】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0044】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0045】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0046】
次に、本発明に係るインク充填用治具、インク充填装置、インク充填方法、インク充填キットを使用してインクを充填可能なインクカートリッジの第1例について図4ないし図6を参照して説明する。なお、図4は同インクカートリッジの外観斜視説明図、図5は同じく異なる状態を示す外観斜視説明図、図6は同じく部分正断面説明図である。
このインクカートリッジ10は、インクを収容するインク収容手段であるインク袋102と、インク袋102を収納したカートリッジケース103とを有している。カートリッジケース103は、インク袋102からのインク供給方向と平行な面で2分割された第1ケース103Aと第2ケース103Bとで構成され、前面側(インクカートリッジの前面側とは、インクカートリッジの着脱方向で装置本体1に挿入するときに前面となる側の意味であり、前面の反対側を背面という。)に開口部104が形成されている。なお、開口部104は第1ケース103Aと第2ケース103Bとを組み合わせたときに形成されるものであるが、単にカートリッジケース103の開口部104というときにはケースとして組みあがった状態にあることを前提とする(以下同様とする)。
【0047】
ここで、インク袋102について図7ないし図11をも参照して説明する。なお、図7は同インク袋の側面説明図、図8は図7の平面説明図、図9は図7の底面説明図、図10は同インク袋の袋本体を構成するアルミラミネートフィルムの説明図、図11は図6のA−A線に沿う要部断面説明図である。
【0048】
インク袋102は、アルミラミネートフィルムからなる略四角形状の可撓性を有するインク収容部材である袋状部(袋本体)121と、この袋状部121に融着や溶着などで固着された樹脂製の連結部材122を有する。なお、袋本体121の側面形状は矩形状に限るものではなく、例えば略円形状、略楕円形状などとすることもできるし、特定の形状でなくとも良い。
【0049】
袋本体21は、図10に示すように、LDPE130a上にドライラミネーション130b、アルミ膜130c、ドライラミネーション130d、PA301eを順次積層した構造のアルミラミネートフィルム130を用いて(これに限定するものではない。)、3枚のアルミラミネートフィルム130の周囲(図7ないし9に斜線を施した領域)を互いに、また内2枚のアルミラミネートフィルム130は連結部材122に溶着して袋状に形成したものである。
【0050】
この袋本体121は、全体として可撓性を有しているので、インクの使い残しが極めて少なくなる。また、ここでは、アルミラミネートフィルムから袋本体121を形成しているが、材質はこれに限るものではない。ただし、少なくともアルミラミネートフィルムを含む部材で形成することが好ましい。
【0051】
連結部材122には、例えばポリアセタールから形成され、袋本体121内にインクを充填するときに用いる内部に通孔が形成されたインク充填用の筒状開口部(インク充填口部)123が一体的に成形され、このインク充填口部123は途中を融かすこと(熱カシメ)で内部の通孔を封止している。
【0052】
また、連結部材122には、袋本体121内のインクを装置本体1に供給(補給)するために、装置本体1側の供給用ノズル部材(インク吸引用ノズル部材)が挿通される供給口部125が一体的に成形されている。
【0053】
この供給口部125には、図11に示すように、内部にインク供給路となり、供給用ノズル部材(インク吸引用ノズル部材)である後述する中空針201が挿通される(挿入されて通される)ノズル挿通路126が形成され、このノズル挿通路126の前面側にはブチルゴムなどの弾性部材からなる封止部材127が、例えば径方向及び軸方向に圧縮されて圧入され、装置本体1側の中空針201が刺し込まれていないときにはノズル挿通路126の開口を封止し、装置本体1側の中空針201が封止部材127を貫通してノズル挿通路126内に刺し込まれる(挿通される)ことでインク供給が可能になる。
【0054】
この封止部材127の前面側には封止部材127の抜け落ちを防止する係止部材128が装着されている。この係止部材128は、前述した装置本体1側の中空針201が挿通される開口128aが形成され、4つの脚部128bを供給口部125の座繰り孔に食い込ませることで供給口部125の最前面に保持している。係止部材127は例えばステンレスなどの金属板を打ち抜いて成型したものである。
【0055】
また、供給口部125の側面には、図11に示すように、情報格納手段であるRFID(非接触IC、ICタグ)129が取付けられている。RFID129は、ICタグにアンテナが埋め込まれ、カートリッジケース103を介して装置本体1側の送受信部(タグリーダー)と無線通信を行って情報の送受し、予め格納された情報の読み出し、装置本体1側から受信した情報の書込み更新を行うことができる。RFID129に格納する情報としては、インクに関する情報、例えばインクの生産ロット、製造年月日、生産工場名、使用期限(保証月数)など、インクカートリッジ10に関する情報、例えば、装着された装置本体での印字枚数、装着された装置本体ごとの装着期間、インクの算出残量、インクエンド履歴(インクエンドのフラグが立った回数)、工場での再充填回数等がある。
【0056】
このように情報格納手段をインクカートリッジに設ける場合、カートリッジケースではなく、インク収容手段側に設けることで管理が容易になる。つまり、カートリッジケースに情報格納手段を設けた場合には、インク収容手段(あるいは供給口部)の使用履歴と一対一の情報を格納するためには、カートリッジケースとインク収容手段との一体管理が必要になり、カートリッジケースだけを交換したような場合にはそれに合わせて情報格納手段も付け替えなければならないという不都合がある。これに対して、情報格納手段をインク収容手段側に設けることで、常にインク収容手段と情報格納手段とを一体管理することができる。
【0057】
そして、インク袋102の供給口部125は、カートリッジケース103に対して、インク供給路となるノズル挿通路126(正確には、ノズル挿通路126の開口を封止し、装置本体1側の中空針201が刺通される封止部材127である)が、カートリッジケース103の開口部104に対向する供給位置(第1位置:図5の位置)と、カートリッジケース103の内壁面に対向して外部から遮蔽される遮蔽位置(第2位置:図4の位置)との間で移動可能(ここでは回動可能)にカートリッジケース103に保持されている。このとき、カートリッジケース103の一部、この例では、第2ケース103Bの一部103Ba(図4参照)が供給口部125を外部から遮蔽する遮蔽手段(これを「遮蔽手段103Ba」と表記する。)を兼ねている。
【0058】
この場合、インク袋102は、袋本体121と供給口部125との間で屈曲する(図7ないし図9に示す線C−Cの位置で屈曲する)ことにより、袋本体121は供給口部125の回動に追従することができる。つまり、アルミラミネートフィルム製の袋本体121とポリアセタール製(回動の際の摺動性が良い)の連結部材121が接着又は溶着されている部分の端面では剛性が極端に弱くなるので応力が集中して屈曲することが可能であり、この屈曲しやすさによって、供給口部125の回動動作に袋本体121が追従することできる。
【0059】
そこで、インク袋102のカートリッジケース103への保持構造について図12ないし図15をも参照して具体的に説明する。なお、図12はカートリッジケースの第1ケースの要部斜視説明図、図13はインクカートリッジの要部平断面説明図、図14は図7のB−B線に沿う要部断面説明図、図15は付勢手段の一例を示す斜視説明図である。
【0060】
インク袋102の供給口部125には、下側面に2つの鍔状の据え置き部131が設けられ、上側には軸部132が設けられ、軸部132には回動手段(移動手段)となるピニオン133が周面の一部に形成されている。このピニオン133は、軸部132の全周にわたって形成することもできるが、上述したように供給口部125のノズル挿入路126が封止部材127を介して開口部104に対向する位置とカートリッジケース103内に収納される位置との間で回動するに必要な範囲で形成すればよい。
【0061】
そして、供給口部125の下側据え置き部131は、図6及び図12に示すように、カートリッジケース103に形成した台座部135上に据え置かれ、周面を台座部135に形成された規制部136にて規制されて、回動可能(移動可能)に保持されている。このとき、カートリッジケース103の台座部135は供給口部125の高さ方向の位置を決めている。一方、供給口部125の上側軸部132は、図6、図12及び図13に示すように、カートリッジケース103に形成された上側リブ137にて回動可能(移動可能)に保持されている。
【0062】
これにより、インク袋102の供給口部125は、ノズル挿通路126の開口が封止部材127を介してカートリッジケース103の開口部104に対向する供給位置(図5の位置)とカートリッジケース103の内壁面に対向する遮蔽位置(図4の位置)との間で回動可能にカートリッジケース103に保持される。
【0063】
さらに、供給口部125は、図14に示すように、カートリッジケース103との間に介装されたばね部材138にてカートリッジケース103の内壁面(遮蔽手段103Ba)に対向する遮蔽位置(図4の位置)に付勢されている。ばね部材138は、図15に示すように、コイルばねで形成され、一方の係止部138aを図14に示すように供給口部125の一方の据え置き部131に係止され、他方の係止部138bは、図14に仮想線で示す状態から実線図示の位置に捻られた状態でカートリッジケース103の第2ケース103Bに形成された突起部139に係止されている。
【0064】
このばね部材138による付勢力に抗するために、カートリッジケース103の第1ケース103Aと第2ケース103Bとは、少なくとも、インク袋102の供給口部125の上下方向の所要の位置をねじ141、141にて固定している。
【0065】
つまり、上述したようにコイルばね部材138の係止部138bを一方のケース(ここでは、第2ケース103Bとしている。)に係止すると、第2ケース103Bにはばね部材138による復元力が加わり、第2ケース103Bが歪むおそれがある。そこで、図12に示すように、第1ケース103Aに第2ケース103B側からセルフタップねじ141をねじ込むボス部142が設けられ、ネジ141、141で供給口部125の近傍をねじ止め固定することで、第1ケース103Aと第2ケース103Bとが強固に固定され、コイルばね部材138による復元力によって第2ケース103Bが歪むことを防止できる。
【0066】
なお、カートリッジケース103の第1ケース103Aと103Bとの固定は、上記ネジ141による部分以外では、例えば、図示しないが、一方のケースの合わせ面である外周に複数のスナップフィット爪を配置し、他方のケースにそれらの爪の対向位置に、当該爪が係合する係止孔を備えることで行っているが、これに限るものではない。
【0067】
また、カートリッジケース103の一方のケース(この例では第1ケース103A)に、装置本体1に対して着脱するときのガイド部144、145、146を一体に設けている。ガイド部145と146との位置関係で当該インクカートリッジ10の色を示す識別ガイド部を構成し、異なる色の装填部に装着されないように(誤装着を生じないように)している。
【0068】
さらに、カートリッジケース103の第1ケース103Aには、図12に示すように、後述するように、供給口部125のピニオン133に噛み合う装置本体1側のラック202が進入可能な溝150を形成している。この溝の150の外壁側端面より、ピニオン133の歯面が突出しないように構成することで、ユーザが不用意にこの溝150の面側を床面等の周囲のものと摺るようなことをしても、供給口部125が回動させられて、封止部材127面が露出することはない。また、溝150の後端150aは、後述する進退自在のラック202をインクカートリッジ10の装着時に当接させ、装着の際にインクカートリッジ10の移動にかかわらず、ラック202とノズル供給口部125との位置関係を相対的に固定させる位置決め面としての作用を有している(以下「位置決め面150a」と表記する。)。
【0069】
次に、上記第1例のインクカートリッジが着脱自在に装着される装置本体1側のカートリッジ装填部4の構成について図16及び図17をも参照して説明する。なお、図16はインクカートリッジをカートリッジ装填部内の挿入スロットに差し込んだときの平断面説明図、図17はインクカートリッジを同挿入スロットに奥まで装着したときの平断面説明図である。
【0070】
まず、カートリッジ装填部4の1つのインクカートリッジ10が着脱自在に装着される挿入スロット200内の奥部には、インクカートリッジ10を装着したときに、供給口部125の封止部材127に刺し込まれてノズル挿通路126内に達する供給用ノズル部材(インク吸引用ノズル部材)である中空針201が配置されている。この中空針201は前述した供給ポンプユニット24の供給ポンプに接続され、供給ポンプが作動することでインクカートリッジ10のインク袋102内のインクが中空針201を通じて装置本体1側に吸引供給される。
【0071】
また、挿入スロット200の側部壁面には、インクカートリッジ10の移動手段であるピニオン133に噛み合うラック202が、インクカートリッジ10の着脱方向に沿って進退可能に保持されている。そして、このラック202は、挿入スロット200の奥面200aとの間に介装した圧縮ばね203によって押し出し方向(インクカートリッジ10を抜き出す方向;取出す方向)に付勢されて、初期位置(インクカートリッジ10が装着されていない状態の位置)では挿入スロット200に設けたストッパ部200bに押付けられている。
【0072】
ここで、圧縮ばね203の付勢力(抗力)は、インクカートリッジ10の供給口部125を回動させるときの摺動負荷とねじりコイルバネ138の復元力との合力よりも大きく設定されている。これにより、ピニオン133とラック202が噛合うと、インクカートリッジ10の挿入に伴ってラック202が移動するよりも先にノズル供給口部125が回動を開始できるようにしている。
【0073】
また、挿入スロット200の側部壁面には、インクカートリッジ10を装着したときに、インクカートリッジ10の供給口部125に設けた情報格納手段(RFIC)129と通信を行うタグリーダ209が配置されている。
【0074】
以上のように構成した第1例に係るインクカートリッジ10の装置本体1のカートリッジ装填部4に対する着脱について前記図16及び図17をも参照して説明する。
まず、インクカートリッジ10を装置本体1に装着する前の状態では、図16及び前述した図4に示すように、インクカートリッジ10の供給口部125はカートリッジケース103内に収納された状態、すなわち供給口部125のノズル挿通路126(封止部材127)が遮蔽手段103Baで外部と遮蔽された状態(遮蔽位置の状態)になっている。
【0075】
したがって、インクカートリッジ10を装着するときに、ユーザが供給口部125に触って供給口部125の封止部材127前面(中空針201が刺さる部分)に異物や脂などが付着することが防止され、異物などがインク供給経路内に侵入して滴吐出不良を生じさせるおそれが低減する。
【0076】
そして、図16に示すように、インクカートリッジ10をカートリッジ装填部4の挿入スロット200内に矢示D方向(セット方向)に挿入すると、インクカートリッジ10の供給口部125のピニオン133がラック202と噛み合う。
【0077】
このとき、上述したように圧縮ばね203の付勢力(抗力)によってラック202は移動しないので、インクカートリッジ10が矢示D方向に挿入されるに従って供給口部125が矢示E方向に回動を開始し、ラック202がインクカートリッジ10の位置決め面150aに当接することで、供給口部125の回動が停止する。この状態で、供給口部125のノズル挿通路126(封止部材127)がカートリッジケース103の開口部104に対向する、つまり、装置本体1側の中空針201に対向する供給位置になる。
【0078】
さらに、インクカートリッジ10がセット方向(矢示D方向)に押し込まれると、ラック202がインクカートリッジ10の位置決め面150aに当接しているので、ラック202は圧縮ばね203の付勢力に抗して矢示F方向にインクカートリッジ10と共に移動し、インクカートリッジ10の供給口部125のノズル挿通路126と中空針201の対向関係が維持されたままインクカートリッジ10が挿入スロット200内に侵入する。
【0079】
そして、図17に示すように、インクカートリッジ10の供給口部125のノズル挿通路126の封止部材127を、装置本体1側の中空針201が貫通して、袋本体121に通じてインクが重点されているノズル挿通路126内に達し、これによりインクカートリッジ10から装置本体1へのインク供給が可能な状態になる。
【0080】
ここで、インクカートリッジ10のピニオン133に噛み合う装置本体1側のラック202が移動可能な構成としていることで、中空針201が封止部材127に刺さる以前から中空針201とインクカートリッジ10の供給口部125との相対的関係を適正な関係に位置決めすることができ、中空針201が斜めに刺さることで針先と供給口部125の封止部材127でない部分との衝突を防止することができる。
【0081】
また、インクカートリッジ10を装置本体1から取り出すときには、図17に示す矢示G方向にインクカートリッジ10を抜き出すことにより、中空針201がインクカートリッジ10の供給口部125の封止部材127から抜け、更にラック202が圧縮ばね203の付勢力でインクカートリッジ10の位置決め面150aに当接したままインクカートリッジ10の抜き出しに連れて移動し、ラック202がストッパ部200bに当接する。
【0082】
さらに、インクカートリッジ10が矢示G方向に抜き出されることで、ラック202とピニオン133との噛み合いによってインクカートリッジ10の供給口部125が装着時とは逆方向に回動されて、供給口部125はカートリッジケース103内に収納された状態、すなわち遮蔽手段103Baで外部と遮蔽された状態になり、その後インクカートリッジ10はカートリッジ装填部4から取り出される。
【0083】
使用済みのインクカートリッジ10を交換するときや、使用途中のインクカートリッジ10を取り出すとき、インクカートリッジ10をカートリッジ装填部4から取り出した状態ではインクカートリッジ10の供給口部125はカートリッジケース103内に収納された状態、すなわち遮蔽手段103Baで外部と遮蔽された状態になっているので、供給口部125の封止部材127表面(前面)にインクが付着していても、当該インクがユーザの手やその他の箇所に転移することが防止され、取り扱いが容易になる。
【0084】
また、インクカートリッジ10を挿入スロット200に装着したとき、供給口部125が回動することで、図17に示すように、RFID129が装置本体1側のタグリーダ209に対向するので、送受信が可能になる。ICにアンテナを内蔵するタイプの情報格納手段は、送受信距離に制約があり、数センチのレベルでの送受信が可能である。
【0085】
この例では、インクカートリッジ10のカートリッジケース103側面の近傍に隣接して装置本体1側のタグリーダ209を配置しており、ICタグ(RFID129)がインクカートリッジ10のセット時に回転して近づくことで、至近距離で通信を行うことが可能になり、無線通信を良好に行うことができる。また、インクカートリッジ10を装着していないとき(未セット時)には、RFID129は比較的大きなクリアランスがあるカートリッジケース103内の長手方向奥側に向かうようになるので、仮にインクカートリッジ10を落としてカートリッジケース103が撓むようなことがあっても衝撃が伝播することなく、衝撃に対する耐性が高められている。
【0086】
なお、この例では、インクカートリッジ10のセット時と未セット時における供給口部125の回動角は約40度に設定してあるが、ラック202とピニオン133の噛合い歯数を多くしてより回転角を90度近傍にまですれば、RFID129がほぼセット方向の反対側のケース内空洞側を向き、衝撃に対する耐性をより高めることができる。
【0087】
次に、インクカートリッジ10を装置本体1の挿入スロット200に固定する構成について図18を参照して説明する。なお、図18は挿入スロットの側面説明図である。
上述したようにラック202を圧縮ばね203で外方向(インクカートリッジを抜き出す方向)に向けて付勢している関係で、インクカートリッジ10を挿入スロット200内に挿入したとき、圧縮ばね203の付勢力がラック202を介してインクカートリッジ10に作用し、インクカートリッジ10を外に押し出す方向の力が作用する。
【0088】
そこで、図18に示すように、装置本体1の挿入スロット200内の底部に樹脂製の撓むことが可能なロック部材210を備えている。このロック部材210は、インクカートリッジ10に係合する係止部210aと、係止部210aから装置本体1前面側に向かって立ち下がるスロープ部210bとを有している。
【0089】
そして、インクカートリッジ10を挿入スロット200内に押し込むときには、ロック部材210のスロープ部210bがカムの作用をして、ロック部材210を押し下げながらインクカートリッジ10を挿入することができ、インクカートリッジ10を挿入スロット200内に装着したときには、ロック部材210の係止部210aがインクカートリッジ10の背面に係合して、インクカートリッジ10の飛び出しが防止される。
【0090】
また、インクカートリッジ10を挿入スロット200から取出すときには、ロック部材210を破線図示のように押し下げることによって圧縮ばね203の付勢力でインクカートリッジ10が自動的に所要量だけ飛び出すので、インクカートリッジ10の取出しが容易になる。
【0091】
このように、インクカートリッジを、インク収容部材内のインクを吸引する画像形成装置本体側の供給用ノズル部材(インク吸引用ノズル部材)が、カートリッジケースに設けられた開口部を介して挿通される供給口部は、カートリッジケースの開口部に対向してノズル部材を挿通可能な供給位置とカートリッジケースの内壁面に対向して外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動(回動)可能にカートリッジケースに保持されて、画像形成装置本体に挿入するときに供給位置に、画像形成装置本体から抜き出すときに遮蔽位置に回動される構成とすることで、インクカートリッジが装置本体に装着されていない状態では供給口部がカートリッジケース内に収納され、インクカートリッジの取り扱い性が向上し、滴吐出不良を生じさせるおそれも低減する。
【0092】
また、画像形成装置にこのようなインクカートリッジを着脱自在に装着することで、インクカートリッジの交換作業における取り扱い性が向上し、また供給口部に異物などが付着して内部に侵入し、滴吐出不良を生じるおそれも低減する。
【0093】
次に、インクカートリッジ及び画像形成装置本体の第2例について図19ないし図21を参照して説明する。なお、図19は同インクカートリッジの供給口部の部分斜視説明図、図20はインクカートリッジをカートリッジ装填部内の挿入スロットに差し込んだとき(インクカートリッジ側のカム部材と装置本体側のスライダカムとが当接する直前)の平断面説明図、図21はインクカートリッジを同挿入スロットに奥まで装着したときの平断面説明図である。
【0094】
ここでは、前記第1例のインクカートリッジ10の供給口部125に設けた移動手段(回動手段)としてのピニオン133に代えて、図19に示すように、カム面163aを有するカム部材163を供給口部125に一体的に設けている。その他の構成は前記実施形態と同様である。
【0095】
一方、図20及び図21に示すように、装置本体1の挿入スロット200内には、インクカートリッジ10の供給口部125のカム部材163のカム面163aに当接する当接カム面222aを形成した当接カム部材であるスライダカム222を、前記実施形態のラック202と同様に圧縮ばね203でインクカートリッジ10を抜き出す方向に付勢して進退可能に配置している。その他の構成は前記第1例と同様である。
【0096】
このように構成したので、図20に示す状態から、インクカートリッジ10をカートリッジ装填部4の挿入スロット200内に矢示D方向(セット方向)に押し込むと、インクカートリッジ10の供給口部125のカム部材163のカム面163aがスライドカム222の当接カム面222aに当接する。
【0097】
このとき上述したように圧縮ばね203の付勢力(抗力)によってスライダカム222は移動しないので、インクカートリッジ10が矢示D方向に挿入されるに従ってノズル供給口部125が矢示E方向に回動を開始し、スライダカム222がインクカートリッジ10の位置決め面150aに当接することで、供給口部125の回動が停止し、供給口部125の封止部材127がカートリッジケース103の開口部104に対向する、つまり、装置本体1側の中空針201に対向する供給位置になる。
【0098】
さらに、インクカートリッジ10がセット方向(矢示D方向)に押し込まれると、スライダカム222がインクカートリッジ10の位置決め面150aに当接しているので、スライダカム222は圧縮ばね203の付勢力に抗して矢示F方向にインクカートリッジ10と共に移動し、インクカートリッジ10の供給口部125のノズル挿通路126と中空針201の対向関係が維持されたままインクカートリッジ10が挿入スロット200内に侵入する。
【0099】
そして、図20に示すように、インクカートリッジ10の供給口部125の封止部材127を装置本体1側の中空針201が貫通して袋本体121に通じるノズル挿通路126内に達し、これによりインクカートリッジ10から装置本体1へのインク供給が可能な状態になる。
【0100】
また、インクカートリッジ10を装置本体1から取り出すときには、図20に示す矢示G方向にインクカートリッジ10を抜き出すことにより、中空針201がインクカートリッジ10の供給口部125の封止部材127から抜け、更にスライダカム222が圧縮ばね203の付勢力でインクカートリッジ10の位置決め面150aに当接したままインクカートリッジ10の抜き出しに連れて移動し、スライダカム222がストッパ部200bに当接する。
【0101】
さらに、インクカートリッジ10が矢示G方向に抜き出されることで、スライダカム222の当接カム面222aとカム部材163との当接によってインクカートリッジ10の供給口部125が装着時とは逆方向に回動されて、供給口部125のノズル連通路126の開口を封止する封止部材127はカートリッジケース103内に収納された状態、すなわち遮蔽手段103Baで外部と遮蔽された状態(遮蔽位置)になり、その後インクカートリッジ10はカートリッジ装填部4から取り出される。
【0102】
このようにして、前記第1例のインクカートリッジ及び画像形成装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
次に、インクカートリッジの第3例について図22を参照して説明する。なお、図22は同インクカートリッジの要部平断面説明図である。
ここでは、供給口部125に形成したノズル挿通路126に設ける中空針201が刺通される封止部材127を、ノズル挿通路126の奥側の袋本体121との連通部分に圧入している。この場合、ノズル挿通路126は中空針210が挿通される通路となるだけであり、インク供給路を兼ねない。
【0104】
このように構成することで、封止部材127への異物などの付着をより確実に防止できるとともに、中空針201を抜いたときに封止部材127に付着するインクが他の箇所に転移することもより確実に防止できる。
【0105】
次に、インクカートリッジの第4例について図23及び図24を参照して説明する。なお、図23は同インクカートリッジのインク袋の分解側面説明図、図24は同インク袋のボス部分の拡大説明図である。
ここでは、インク袋102の連結部材122にノズル挿通路126を有するボス部171を形成し、このボス部171に封止部材127を圧入などで挿入し、ボス部171外周に係止したキャップ部材172にて封止部材127を保持している。そして、このボス部171の外周部に、ボス部171とは別体で構成した、前記第1実施形態と同様な据え置き部131、軸部132及びピニオン133を形成した移動手段である回動部材174を固定して、全体として供給口部を構成している。
【0106】
次に、インクカートリッジの第5例について図25を参照して説明する。なお、図25は同インクカートリッジのインク袋の要部斜視説明図である。
ここでは、インク袋102の連結部材122にインク供給方向と直交する方向から封止部材127を嵌め込む封止部材受け部175を形成し、この封止部材受け部175に図示しないが前記第4例と同様に別体で形成された移動手段としての回動部材を嵌め込んで供給口部を構成している。
【0107】
封止部材127は角形状に形成されて両側面に凹溝127aが設けられ、封止部材受け部175には凹溝127aに嵌り込む凸状部175aが形成されている。
【0108】
これにより、封止部材127が中空針201の抜き差しによって抜け落ちることが確実に防止される。また、前記第1、第2、第4例のようにノズル挿通路の開口に封止部材127を係止保持する部材を必要とせず、構成が簡単になる。さらに、封止部材受け部175の奥側に封止部材127を取付けるようにすれば、前記第3例と同様に、封止部材127への異物などの付着、封止部材127に付着するインクの転移もより確実に防止できる。
【0109】
次に、インクカートリッジの第6例について図26を参照して説明する。なお、図26は同インクカートリッジの要部平断面説明図である。
ここでは、インク袋102の供給口部125は、固定部分125Aと回動部分である回動部材185とで構成され、固定部分125Aはカートリッジケース103A、103Bに形成した係止リブ181に係止されて固定され、また、供給口部125内には係止リブ182にて封止部材127が係止されている。
【0110】
そして、供給口部125の固定部分125Aの前面に中空針201が挿通されるノズル挿通路126が形成された移動手段である回動部材185が回動可能にカートリッジケース103に保持されている。この供給口部125の一部である回動部材185は、前記第第1例の供給口部125と同様な構成の前記第4例と同様な、据え置き部131、軸部132及びピニオン133を一体的に形成した独立した部材であり、ノズル挿通路126がカートリッジケース103の開口部(前述した開口部104)に対向する供給位置と、カートリッジケース103の遮蔽手段103Baに対向する遮蔽位置との間で回動する。
【0111】
ここで、供給口部125の封止部材127は回動部材185の周面に圧接されている。そして、インクカートリッジ10を装置本体1に装着するときに、回動部材185が回動することによって、その周面を封止部材127が摺擦しながら相対移動し、回動部材185のノズル挿通路126が封止部材127と対向する。これによって、装置本体1側の中空針201は、ノズル挿通路126を介して封止部材127に刺通できる状態になる。
【0112】
また、インクカートリッジ10を装置本体1から取り外すときには、回動部材185が図26の状態に戻り、回動部材185のノズル挿通路126が封止部材127と対向しなくなる。このようにして、前記第1例と同様な作用効果を得ることができる。
【0113】
また、この構成にあっては、供給口部全体が回動(移動)しないので、インク収容手段のインク収容部材は袋状部材に限らず、樹脂製や金属製などのハード容器で構成することもできる。
【0114】
次に、本発明に係るインク充填用治具の第1実施形態について図27ないし図30を参照して説明する。なお、図27は同実施形態の治具の斜視説明図、図28は同治具をインクカートリッジに装着してインク充填を行うときの作用説明に供する斜視説明図、図29は同じく要部平断面説明図、図30は同じく要部平断面説明図である。
【0115】
このインク充填用治具300は、前記第1例などのピニオンを含む移動手段を備えているインクカートリッジ10用の治具である。このインク充填用治具300は、インクカートリッジ10のカートリッジケース103に係合して、中空針からなる充填用ノズル部材403を有する充填手段としての注射器状の充填器400とノズル挿通路126との相対位置を決める第1位置決め部301及び第2位置決め部302と、第1、第2位置決め部301、302で位置決めされた状態で移動手段としてのピニオン133と係合し、供給口部125(前記第4例では回動部材185になる)を開口部104に対向する供給位置に移動させる係合部としてのラック303とを備えている。
【0116】
この治具300は、ポリスチレン等の樹脂製で、平面形状で略コ字状に形成され、2つの嵌め込み部300a、300bは開き方向に弾性を有し、カートリッジケース103の厚みより若干狭い間隔で形成されている。これにより、インクカートリッジ10のカートリッジケース103を嵌め込み部300a、300a間で挟んで固定できる。なお、治具300の嵌め込み部300a、300aをカートリッジケース103に嵌め込んだときの弾性力は、供給口部125がねじりコイルはね138の作用によって戻ろうとする力よりも強く設定されており、冶具300が自然に外れないようにしている。
【0117】
第1位置決め部301は、カートリッジケース103の移動手段であるピニオン233と対向する溝150に嵌り込む形状に形成され、第1位置決め部301が溝150に嵌合することで治具300のカートリッジケース103に対する縦方向(カートリッジ使用状態での垂直方向)の位置が決まる。そして、治具300は、上述したように嵌め込み部300a、300aでカートリッジケース103を挟み込んでいるので、カートリッジケース103に対する横方向(カートリッジ使用状態での水平方向)に位置が定まる。
【0118】
第2位置決め部302は、カートリッジケース103の外形状に略倣うR形状の凹部302aを有し、この第2位置決め部302にて治具300の装着方向の位置が定まる。
【0119】
また、この治具300は、図28に示すように、充填器400の充填用ノズル部材403の根元の円筒部402が嵌め込まれることで、充填器400を保持するとともに、充填器本体401と円筒部402との段差部が当接することでノズル部材400の刺し込み量を規定する筒状の保持部305が一体に設けられている。充填器400の円筒部402を治具300の保持部305に挿入することで、筒状保持部304の底部と充填器本体401との段差部が突き当たり、充填用ノズル部材403が供給口部125のノズル挿通路127内で止まり、インク袋102まで到達せず、インク袋102が損傷することが防止される。
【0120】
充填手段としての充填器400は、上述したように、容器本体401と、この容器本体401と一体の円筒部402と、充填用ノズル部材403とを備えるいわゆるシリンジと同様な構成のものである。
【0121】
上述したインク充填用治具300と充填器400によって本発明に係るインク充填装置が構成される。なお、充填手段としての充填器400として、ここでは注射器状のもの(シリンジ)を使用しているが、図示しないインクタンクにチューブなどを介してノズル部材403が連結され、インク送液ポンプによってインクタンクから充填用ノズル部材403にインクを送液するような装置を用いることもできる。
【0122】
このように構成したインク充填用治具300と充填器400を使用してインクカートリッジ10のインク袋102にインクを充填する本発明に係るインク充填方法について説明する。
まず、図29に示すように、インク充填用治具300はインクカートリッジ10のカートリッジケース103の開口部104の部分に合わせ、第1位置決め部301を溝150に嵌め合わせて同図矢示H方向に押し込むことにより、ラック303がピニオン133と噛み合うので、供給口部125が矢示J方向に回動して、図30に示すように、供給口部125がカートリッジケース103の開口部104に対向しない遮蔽位置から開口部104に対向する供給位置に移動する。
【0123】
そこで、図30に示すように、充填器400の円筒部402を治具300の保持部305に挿入することで、充填用ノズル部材403が供給口部125のノズル挿通路126内まで刺し込まれて上述したように所定の位置で止まる。その後、充填器400を操作又は作動してインクを送り込むことによって、インクカートリッジ10のインク袋102内にインクを充填することができる。
【0124】
このように、インク充填用治具は、カートリッジケースと係合して、充填用ノズル部材を有する充填手段の位置を決める位置決め部と、位置決め部で位置決めされた状態で移動手段と係合し、供給口部をカートリッジケースの開口部に対向する供給位置に移動させる係合部とを備えているので、インクカートリッジに治具を装着したときに供給口部が移動して開口部に対向し、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができるようになり、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0125】
また、インク充填装置は、上述したインク充填用治具と充填手段を備えているので、インク充填用治具をインクカートリッジに装着して供給口部を開口部に対向させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0126】
さらに、インク充填方法は、上述したインク充填用治具をインクカートリッジに装着して供給口部を開口部に対向させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうので、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0127】
次に、本発明に係るインク充填用治具の第2実施形態について図31を参照して説明する。なお、図31は同実施形態の治具の斜視説明図である。
このインク充填用治具310は、前記第2例のインクカートリッジ10に対するインク充填に使用するものであり、移動手段に係合する係合部は、供給口部125のカム163に当接して、供給口部125を遮蔽位置と供給位置との間で回動させるカム313で形成している。
【0128】
その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。また、このインク充填用治具310と充填手段によってインク充填装置が構成され、さらに、このインク充填用治具310を使用してインクカートリッジ10にインクを充填する方法もいく供給部125を移動させる手段がカムである点を除き、前記第1実施形態で説明したと同様であるので、その説明を省略する。
【0129】
次に、本発明に係るインク充填装置の他の実施形態について図32を参照して説明する。なお、図32は同実施形態の説明に供する斜視説明図である。
このインク充填装置320は、例えば前述した第1実施形態のインク充填用治具300と充填器400とをばねなどの弾性部材321を介して保持することで一体化したものである。
【0130】
ここで、先端部に設けたインク充填用冶具300によってインクカートリッジ10の供給口部125を供給位置に移動させるまで、充填器400が冶具300に近づけないようにしている。つまり、インクカートリッジ10に向けて押される冶具300は、供給口部125をねじりコイルばね138に抗しながら回動させて、最終的にカートリッジケース103の開口部104を挟んでカートリッジケース103に対する位置が決まるが、このときに発生する抵抗力、即ち弾性部材321を圧縮させる方向の力はコイルばね138を圧縮させるのに必要な力より大きくなるよう設定されている。
【0131】
このように構成することで、治具300による供給口部125の供給位置への回動が確実に終了した後に充填器400の挿通動作を行うことができ、供給口部125の回動途中で充填器400のノズル部材403が刺し込まれる事態を防止できる。
【0132】
次に、本発明に係るインク充填キットの一例について図33を参照して説明する。なお、図33は同キットの模式的斜視説明図である。
このインク充填キット330は、前述したインク充填治具300、充填器400及び充填用インクを収容したインク容器331を収納手段である収納袋332内に収納したものである。なお、充填器400のノズル部材403の先端部にはカバー333が装着されている。また、収納手段は袋状部材に限らず、単なる容器でもよい。
【0133】
このインク充填キット330を使用したインク充填方法は、前記インク充填用治具の第1実施形態で説明したと同様である。
【0134】
このように、このインク充填キットによれば、本発明に係るインク充填用治具と、インク充填用治具に保持可能であって、供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、インク充填用治具と充填手段を収納した収納手段とを備えているので、インク充填用治具をインクカートリッジに装着して供給口部を開口部に対向させ、充填用ノズル部材を供給口部に挿通してインク充填を行なうことができ、単体で供給口部が外部から遮蔽されているインクカートリッジに対するインク充填作業の作業性を向上することができる。
【0135】
次に、本発明に係るインク充填キットの他の例について図34を参照して説明する。なお、図34は同キットの模式的斜視説明図である。
このインク充填キット340は、前述したインク充填装置320のインク充填用治具300と弾性部材321を一体化した部分と、充填器400と、4色の充填用インクを収容したインク容器341y、341m、341c、341kを収納手段である収納容器342に収納したものである。
【0136】
このインク充填キット340を使用してインク充填を行うときには、充填器400を弾性部材321に嵌め込んで一体化して使用する。なお、インク充填キット340を使用したインク充填方法は、前記インク充填用治具の第1実施形態で説明したと同様である。
【符号の説明】
【0137】
1 装置本体
2 給紙トレイ
3 排紙トレイ
4 カートリッジ装填部
10 インクカートリッジ
33 キャリッジ
34 記録ヘッド
102 インク袋(インク収容手段)
103 カートリッジケース
104 カートリッジケースの開口部
121 袋本体(インク収容部材)
125 供給口部
126 ノズル挿通路
127 封止部材
133 ピニオン(移動手段)
163 カム部材(移動手段)
200 挿入スロット
201 中空針(インク吸引用ノズル部材)
202 ラック
203 圧縮ばね
222 スライダカム
300、310 インク充填用治具
301 第1位置決め部
302 第2位置決め部
303 ラック(係合部)
305 保持部
313 カム(係合部)
320 インク充填装置
330、340 インク充填キット
400 充填器
403 充填用ノズル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するときに使用するインク充填用治具であって、
前記カートリッジケースと係合して、充填用ノズル部材を有する充填手段の位置を決める位置決め部と、
前記位置決め部で位置決めされた状態で前記移動手段と係合し、前記供給口部の少なくとも一部を前記供給位置に移動させる係合部と、を備えている
ことを特徴とするインク充填用治具。
【請求項2】
前記充填用ノズル部材を有する充填手段を保持する保持部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインク充填用治具。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記カートリッジケースに設けられた前記移動手段に対向する溝部に嵌め込まれることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク充填用治具。
【請求項4】
前記係合部は、前記移動手段を構成するピニオンに噛み合うラックを有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインク充填用治具。
【請求項5】
前記係合部は、前記移動手段を構成するカム部材に当接するカムを有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインク充填用治具。
【請求項6】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填装置であって、
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に弾性部材を介して進退可能に保持され、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、を備えている
ことを特徴とするインク充填装置。
【請求項7】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填方法であって、
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のインク充填用治具を用いて、前記供給口部を前記供給位置に移動させ、
充填手段の充填用ノズル部材を前記供給口部に挿通して充填を行う
ことを特徴とするインク充填方法。
【請求項8】
インクを収容するインク収容手段と、
前記インク収容手段を収納したカートリッジケースと、
前記インク収容手段に連結され、前記画像形成装置本体側から供給用ノズル部材が挿通される供給口部と、
前記供給口部の少なくとも一部を、前記供給用ノズル部材が挿通可能な供給位置と外部から遮蔽される遮蔽位置との間で移動させる移動手段と、を備える
インクカートリッジの前記インク収容手段にインクを充填するインク充填キットであって、
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のインク充填用治具と、
前記インク充填用治具に保持可能であって、前記供給口部に挿通可能な充填用ノズル部材を有する充填手段と、
前記インク充填用治具と前記充填手段を収納した収納手段と、を備えている
ことを特徴とするインク充填キット。
【請求項9】
前記収納手段には充填用インクが収納されていることを特徴とする請求項8に記載のインク充填キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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