説明

インク充填装置

【課題】インク顔料の濃度や分散性が安定したインクをインクカートリッジに供給できるインク充填装置を提供する。
【解決手段】インクタンク2に貯留されたインクが、上流管31、下流管32を介して切替三方弁4の入力端41に送り込まれる。切替三方弁4において、第二流路が形成されている場合、送り込まれたインクは、第二出力端43から流出してインクタンク2に戻される。この場合にインクは攪拌され、インク中のインク顔料は均一に分散される。切替三方弁4において、第一流路が形成されている場合、送り込まれたインクは第一出力端42から流出してインクカートリッジ50に供給される。よって、インク顔料が均一に分散したインクをインクカートリッジ50に供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置のインクカートリッジにインクを再充填するインク充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙やTシャツなどの印刷媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。インクジェットプリンタには、インクを収容するインクカートリッジが着脱可能であり、このインクカートリッジからインクが記録ヘッドに供給される。
【0003】
ところで、インクカートリッジは、収容されるインクが使いきられた時点で、捨てられるのが一般的であるが、環境保護の観点から、インクカートリッジにインクを再充填して再利用する要望があった。インクカートリッジにインクを再充填する方法としては、インク袋のインク供給口にインク注入針を挿入して基台に載置する工程と、押圧板によりインク袋を圧縮しながら吸引により前記インク袋に残留しているインクをインク供給口から排出するインク排出工程と、インク供給口からインク袋に規定量のインクを注入するインク注入工程とからなるインク再充填方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3666601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなインク再充填方法では、インクカートリッジに補充するインクを、インクカートリッジよりも容量の大きいインクタンクに貯留しておく。しかしながら、特許文献1に記載のインク再充填方法では、インク顔料として酸化チタンのような比重の大きいインク顔料を用いた場合、インクタンク内でインク顔料が沈降してしまう可能性があった。この場合、インク顔料の濃度や分散性が安定しないインクがインクカートリッジに充填されてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、インク顔料の濃度や分散性が安定したインクをインクカートリッジに充填できるインク充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第一の態様に係るインク充填装置は、インクジェットプリンタのインクカートリッジにインクを充填するインク充填装置であって、前記インクカートリッジにインクを充填する場合に前記インクカートリッジに接続し、前記インクカートリッジにインクを供給するインクカートリッジ供給部と、インクを貯留するインクタンクと、前記インクタンクに一端部が接続する第一接続管と、入力端、第一出力端、および第二出力端を有し、前記入力端が前記第一接続管の前記一端部とは反対側の他端部に接続し、前記入力端から前記第一出力端に向かう第一流路と、前記入力端から前記第二出力端に向かう第二流路とを互いに切り替え可能な切替三方弁と、前記切替三方弁の前記第一出力端に一端部が接続し、前記インクカートリッジ供給部に他端部が接続する第二接続管と、前記切替三方弁の前記第二出力端に一端部が接続し、前記インクタンクに他端部が接続する第三接続管と、前記第一接続管に設けられ、前記インクタンクに貯留されたインクを前記切替三方弁の前記入力端に送り込む送液ポンプとを備えている。
【0008】
本態様に係るインク充填装置では、インクタンクに貯留されたインクが、第一接続管を介して切替三方弁の入力端に送り込まれる。切替三方弁において、第一流路が形成されている場合、入力端に送り込まれたインクは、第二接続管を介して、インクカートリッジに供給される。切替三方弁において、第二流路が形成されている場合、入力端に送り込まれたインクは、第三接続管を介してインクタンクに戻される。つまり、切替三方弁において、第一流路と第二流路とを互いに切り替えることにより、インクタンクに貯留されたインクをインクカートリッジに充填する充填動作を行うか、インクタンクに戻す循環動作を行うかを選択することができる。
【0009】
循環動作の過程で、インクタンクに貯留されたインクは攪拌される。そのため、例えば、インクタンクに貯留されるインクが比重の大きいインク顔料を含有する場合であっても、循環動作の過程でインク顔料は分散される。よって、インクカートリッジにインク顔料の濃度や分散性が安定したインクを充填できる。
【0010】
また、本態様に係るインク充填装置は、前記インクカートリッジへのインクの充填を指示する充填指示手段と、前記インクカートリッジ内のインク量を検出するインク量検出手段と、前記充填指示手段によりインクの充填が指示された場合、前記切替三方弁を第一流路に切り替え、前記インク量検出手段によりインクカートリッジ内のインクが所定量になったことが検出された場合、前記切替三方弁を第二流路に切り替えるか、または送液ポンプの駆動を停止する制御手段を更に備えていてもよい。
【0011】
この場合、充填指示手段がインクカートリッジへのインクの充填を指示する。インク量検出手段が、インクカートリッジ内のインク量を検出する。充填指示手段によりインクの充填が指示された場合、制御手段が、切替三方弁を第一流路に切り替える。この場合、切替三方弁に供給されたインクは、第二接続管を介して、インクカートリッジ供給部に供給される。インクカートリッジ供給部に、インクカートリッジが接続されている場合は、インクカートリッジにインクが供給される。
【0012】
また、切替制御手段は、インク量検出手段により、インクカートリッジ内のインクが所定量になったことが検出された場合、前記切替三方弁を第二流路に切り替えるか、または送液ポンプの駆動を停止する。そのため、インクカートリッジ内のインクが所定量になった場合には、インクカートリッジ内へのインクの供給が停止される。そのため、適正な量のインクをインクカートリッジに供給できる。
【0013】
また、本態様に係るインク充填装置は、前記第一接続管もしくは前記第二接続管に設けられ、インク中の溶存気体を除去する脱気手段をさらに備えていてもよい。
【0014】
この場合には、インクカートリッジに脱気がなされたインクが供給される。インクジェットプリンタの記録ヘッドに供給されるインク中に溶存気体が含まれていると、インクジェットプリンタの印刷動作時に、記録ヘッドからインクが吐出されない所謂「ピン抜け」が生じてしまう。本態様にかかるインク充填装置によれば、溶存気体のない、脱気がなされたインクをインクカートリッジに供給することができる。
【0015】
また、本態様に係るインク充填装置において、前記脱気手段は、内部にインクを流通させる中空糸の束である中空糸束と、前記中空糸の外部を減圧させる減圧手段とを備えていてもよい。
【0016】
この場合、減圧手段が中空糸の外部を減圧すると、中空糸の内部と外部とで圧力差が発生し、中空糸の内部を流れるインク中の溶存気体が中空糸の外部に移動する。よって、インク中の溶存気体を簡単かつ確実に除去することができる。
【0017】
また、本態様に係るインク充填装置は、前記第一接続管に設けられ、インク中の溶存気体を除去する脱気手段と、前記充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、前記脱気手段に脱気動作を開始させる脱気開始制御手段と、前記充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、前記送液ポンプに送液動作を開始させる送液開始制御手段とを備え、前記制御手段は、前記脱気手段の脱気動作時間が第一所定時間経過し、且つ前記送液ポンプの送液動作時間が第二所定時間経過した場合に、前記切替三方弁を前記第一流路に切り替えてもよい。
【0018】
この場合、脱気手段が、インク中の溶存気体を除去する。脱気開始制御手段が、充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、脱気手段に脱気動作を開始させる。送液開始制御手段が、充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、送液ポンプに送液動作を開始させる。すると、脱気手段よりも下流側には、脱気がなされたインクが流れる。制御手段は、脱気手段の脱気動作時間が第一所定時間経過し、前記送液ポンプの送液動作時間が所定時間経過した場合に、切替三方弁を前記第一流路に切り替える。そのため、脱気手段と切替三方弁との間の脱気されていないインクが、脱気されたインクに置換された後に、切替三方弁において、流路を第一流路に切り替えることができる。言いかえれば、切替三方弁の入力端に、脱気されたインクが供給される状態となった後で、流路を第一流路に切り替えることができる。そのため、インクカートリッジには脱気されたインクを確実に供給することができる。
【0019】
また、本態様に係るインク充填装置は、前記脱気手段は、内部にインクを流通させる中空糸の束である中空糸束と、前記中空糸の外部を減圧させる減圧手段とを備え、前記脱気開始制御手段は、前記充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、前記減圧手段を駆動し、前記送液開始制御手段は、前記減圧手段の駆動時間が第三所定時間に到達した場合に、前記送液ポンプによる送液動作を開始させ、前記制御手段は、前記減圧手段の動作時間が前記第一所定時間経過し、且つ前記送液ポンプの送液動作時間が前記第二所定時間経過した場合に、前記切替三方弁を前記第一流路に切り替えてもよい。
【0020】
この場合、脱気開始制御手段は、充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、減圧手段を駆動する。すると、中空糸の外部が減圧される。送液開始制御手段は、減圧手段の駆動時間が第三所定時間に到達した場合に、送液ポンプによる送液動作を開始させる。そのため、中空糸の外部が所定圧以下に減圧された後に、中空糸の内部をインクが流通する。そのため、中空糸の内部を流れるインクを確実に脱気することができる。
【0021】
脱気手段よりも下流側には、完全に脱気がなされたインクが流れる。制御手段は、脱気手段の脱気動作時間が第一所定時間経過し、前記送液ポンプの送液動作時間が所定時間経過した場合に、切替三方弁を前記第一流路に切り替える。そのため、脱気手段と切替三方弁との間の脱気されていないインクが、脱気されたインクに置換された後に、切替三方弁において、流路を第一流路に切り替えることができる。言いかえれば、切替三方弁の入力端に、脱気されたインクが供給される状態となった後で、流路を第一流路に切り替えることができる。そのため、インクカートリッジには脱気されたインクを確実に供給することができる。
【0022】
また、本態様に係るインク充填装置は、前記インクタンクに貯留されるインクの残量を検出するインク残量検出手段と、前記インク残量検出手段によって検出されたインク残量が所定量未満である場合に、前記送液ポンプの駆動を禁止する禁止手段とをさらに備えていてもよい。
【0023】
この場合には、インク残量検出手段が前記インクタンクに貯留されるインクの残量を検出する。禁止手段が、インク残量検出手段によって検出されたインク残量が所定量未満である場合に、送液ポンプの駆動を禁止する。そのため、インクタンクの内部にインクが貯留されていないにもかかわらず、送液ポンプ7が駆動することがない。よって、インクカートリッジに空気が供給されることがない。
【0024】
また、本態様に係るインク充填装置は、前記第一接続管の中間部と前記第三接続管の中間部とに接続されるバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記第一接続管側から付与される圧力が所定圧未満の場合には閉塞し、前記付与される圧力が前記所定圧以上の場合には開放する圧力制御弁とをさらに備えていてもよい。
【0025】
圧力制御弁は、第一接続管側から付与される圧力が所定圧以上の場合には開放して、バイパス管を開通させる。すると、第一接続管内のインクの一部は、切替三方弁を流通することなく、バイパス管を介して、第三接続管に向けて流れる。インク流路の流路抵抗が大きくなった場合、流路抵抗が大きくなった箇所よりもインクの流れる方向の上流側では、インクを供給するインク供給管の内圧が高くなる。この場合でも第一接続管のインクを、切替三方弁に流通させることなく第三接続管に逃すので、切替三方弁やインクカートリッジ供給部おいてにインク圧が所定圧以上になることがない。切替三方弁やインクカートリッジ供給部に所定圧以上の内圧がかからないので、切替三方弁や、インクカートリッジ供給部においてインクが漏れ出たり飛び散ることがない。
【0026】
また、本態様に係るインク充填装置において、前記インク量検出センサは、静電容量センサであってもよい。静電容量センサは、検出精度が高く、繰り返して使用しても再現性の高いセンサであるため、インクカートリッジに空気が供給されることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インク充填装置1の構成図である。
【図2】脱気モジュール11の構成図である。
【図3】インクカートリッジ50が装着された状態のカートリッジ装着部16の縦断正面図である。
【図4】操作パネル20の正面図である。
【図5】インク充填装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】ROM102の記憶エリアの概念図である。
【図7】RAM103の記憶エリアの概念図である。
【図8】インク充填装置1で行われるインク充填循環処理のフローチャートである。
【図9】充填処理のフローチャートである。
【図10】循環処理のフローチャートである。
【図11】インク充填装置201の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るインク充填装置1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態のインク充填装置1は、インクジェットプリンタのインクカートリッジ50にインクを再充填するものである。まず、図1を参照して、インク充填装置1の構成について説明する。
【0029】
インク充填装置1は、インクを貯留するインクタンク2を備えている。インクタンク2には、上流管31の一端部が接続されている。上流管31の途中には、インクタンク2内のインクを上流管31に流通させる送液ポンプ7が設けられている。上流管31の他端部は、インク中の溶存気体を除去する脱気モジュール11の入口に接続されている。脱気モジュール11には、減圧ポンプ12が接続されている。
【0030】
脱気モジュール11の出口には、下流管32の一端部が接続されている。下流管32の他端部には、切替三方弁4の入力端41が接続されている。切替三方弁4は、入力端41、第一出力端42、および第二出力端43を有している。切替三方弁4は、入力端41から第一出力端42に向かう第一流路と、入力端41から第二出力端43に向かう第二流路とを互いに切り替えることができる。
【0031】
切替三方弁4の第一出力端42には、第二接続管5の一端部が接続されている。第二接続管5の他端部には、インクカートリッジ50の栓部材56に接続されるインクカートリッジ供給部51が設けられている。インクカートリッジ供給部51は、中空状に形成された導出針59を備えている。導出針59は、先端部の側部に孔を備える。インクカートリッジ50にインクを供給する場合には、導出針59がインクカートリッジ50の栓部材56に突き刺さる。この状態で、インクが導出針59の孔からインクがインクカートリッジ50に供給される。
【0032】
インクカートリッジ供給部51の近傍には、インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51に接続したことを検出するカートリッジセンサ114と、インクカートリッジ50の内部のインク量が所定量になったことを検出するカートリッジ内インク量センサ115とが設けられている。
【0033】
第二出力端43には、第三接続管6の一端部が接続している。第三接続管6の他端部には、インクタンク2が接続される。
【0034】
また、インク充填装置1は、下流管32の中間部から分岐して、第三接続管6の中間部に合流するバイパス管8を備えている。このバイパス管8の下流管32と接続する一端側には、圧力制御弁9が設けられている。圧力制御弁9は、下流管32側から所定圧以上の圧力が加えられると開放して、バイパス管8を開通させる。すると、下流管32を流れるインクの一部は、切替三方弁4を流通せずに、バイパス管8を流通する。
【0035】
インクタンク2は、重量センサであるインクタンクセンサ116を備えたインクタンク載置部に載置されている。インクタンクセンサ116は、インクタンク2の重量が所定以下になると検出信号を送信する。つまり、インクタンク2の内部に貯留されたインクの残量が所定量以下になると、検出信号を送信する。
【0036】
次に、図2を参照して、脱気モジュール11について説明する。脱気モジュール11は、円筒状の外部に対して密閉された容器13と、容器13の内部に配置され、内部にインクを流通させる複数の中空糸14とを備える。中空糸14の一端部は上流管31にそれぞれ接続され、他端部は下流管32にそれぞれ接続されている。容器13には、減圧ポンプ12が接続される。減圧ポンプ12は、容器13の内部の空気を吸引して、容器13の内部を減圧させる。これにより、中空糸14の内部と外部とで圧力差が発生し、中空糸14の内部を流れるインク中の溶存気体が中空糸14の外部に移動する。このようにして、インク中の溶存気体が除去される。
【0037】
また、容器13と減圧ポンプ12との間には、ドレンセパレータ17が設けられている。ドレンセパレータ17は、中空糸14からインクが漏れ出た場合に、漏れ出たインクが減圧ポンプ12に引き込まれる前にインクを捕獲する。
【0038】
次に、図3を参照して、インクカートリッジ50について説明する。なお、図3における上方、下方、左方、右方を、夫々、インクカートリッジ50の上方、下方、左方、右方とする。図3に示すように、インクカートリッジ50は、略直方体のケーシング53と、ケーシング53内に配置され、インクを収容するインク袋55とを備える。インク袋55は右端部に開口部を備え、開口部には略円筒状の口栓57が挿入されている。口栓57の右端部には、弾性部材からなる栓部材56が挿入されている。ケーシング53は、右側壁に開口部531を備え、上壁に、左右方向に延びるスリット532を備えている。栓部材56は、開口部531からケーシング53の外部に露出している。導出針59が栓部材56に突き刺さることにより、インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51に接続される。
【0039】
次に、図3を参照して、インクカートリッジ50がインク充填装置1に接続される構造について説明する。インク充填装置1は、インクカートリッジ50が装着されるカートリッジ装着部16を備えている。図3における上方、下方、左方、右方を、夫々、カートリッジ装着部16の上方、下方、左方、右方とする。カートリッジ装着部16は、インクカートリッジ50が載置される水平な載置台18と、この載置台18の右部から上方に垂直に立上がりインクカートリッジ50の右端部が当接される当接板19と、この当接板19の上端部から水平方向に延びインクカートリッジ50の上面を受ける上板61と、インクカートリッジ50の幅方向(図3における紙面手前および奥行方向)に対向する両側面部をガイドする一対の側板(図示省略)を備えて構成される。当接板19からは導出針59が左方に突出している。
【0040】
つまり、カートリッジ装着部16は、図3における左部において開口しており、インクカートリッジ50はその開口部分から矢印H方向に差込まれることによりカートリッジ装着部16に装着される。また、インクカートリッジ50を矢印H方向とは反対方向に引出せば、カートリッジ装着部16から取外すことができる。インクカートリッジ50をカートリッジ装着部16に装着すると、導出針59がインクカートリッジ50の栓部材56に突き刺さる。
【0041】
次に、図3を参照して、インクカートリッジ50内のインク量を検出する機構について説明する。カートリッジ装着部16には、インク量検出装置15が設けられている。インク量検出装置15は、上板61の上方に配置された検知レバー62、及びカートリッジ内インク量センサ115から構成されている。上板61の右端部の略中央部には支持片64が突設されており、検知レバー62は、その右端部において支持片64に回動可能に支持されている。検知レバー62は、その左部に略三角形状の当接片65を有しており、上板61には当接片65が通過可能な窓部66が設けられている。
【0042】
また、上板61の左部には、略垂直に立ち上がる垂直壁30が設けられている。その垂直壁30にカートリッジ内インク量センサ115が固定されている。カートリッジ内インク量センサ115は、例えば透過型のフォトインタラプからなる。カートリッジ内インク量センサ115は、発光素子(図示外)と、検出片部69の移動軌跡を挟んで発光素子に対向する受光素子(図示外)とを備える。
【0043】
インクカートリッジ50が、カートリッジ装着部16に装着されると、当接片65がインクカートリッジ50のスリット532に挿入される。当接片65の下端が、インクカートリッジ50内のインク袋55の上面に当接する。インク袋55に収容されたインク量が多くなると、インク袋55の上面の高さが高くなり、当接片65の位置が上がり、検知レバー62が支持片64を中心として回動する。本実施形態においては、カートリッジ内インク量センサ115は、検知レバー62の先端の検出片部69が発光素子と受光素子との間に配置されていない場合には、インクカートリッジ50内のインク量が満量ではないと検出する。検知レバー62の先端の検出片部69が発光素子と受光素子との間に配置されている場合には満量であると検出する。
【0044】
次に、図4を参照して、インク充填装置1の操作パネル20について説明する。インク充填装置1には、操作パネル20が設けられている。操作パネル20には、電源ボタン29と、モード切替ボタン28と、動作開始ボタン25とが設けられている。モード切替ボタン28は、インク充填装置1で行われる充填動作と循環動作とを互いに切り替えるためのボタンである。動作開始ボタン25は、インク充填装置1に、後述する充填動作または循環動作を開始させるためのボタンである。
【0045】
また、操作パネル20には、循環ランプ26と、充填ランプ27とが設けられている。充填ランプ27が点灯した状態で動作開始ボタン25が押下されると、充填動作が開始される。また、操作パネル20には、インクカートリッジ供給部51に接続されたインクカートリッジ50の内部のインクが所定量に達している場合に点灯する準備完了ランプ23と、充填動作または循環動作中に点灯する動作中ランプ24と、エラー表示ランプ21、22とが設けられている。エラー表示ランプ21は、インクカートリッジ供給部51にインクカートリッジ50が接続されていない状態で、充填動作が指示された場合に点灯する。エラー表示ランプ22は、インクタンク2に貯留されたインク残量が所定量以下になった場合に点灯する。
【0046】
次に、図1を参照して、上記構造を備えるインク充填装置1の動作について説明する。インク充填装置1の行う動作には、インクタンク2に貯留されたインクを、上流管31、下流管32、および第二接続管5を介してインクカートリッジ50に充填する充填動作と、上流管31、下流管32、および第三接続管6を流通させてインクタンク2に戻す循環動作とがある。
【0047】
充填動作について説明する。充填動作では、切替三方弁4において、入力端41から第一出力端42に向かう第一流路が形成される。送液ポンプ7が駆動すると、インクタンク2に貯留されたインクが、上流管31、下流管32を介して切替三方弁4の入力端41に送り込まれる。入力端41に送り込まれたインクは、第一出力端42から流出し、第二接続管5を介してインクカートリッジ50に供給される。充填動作は、作業者によって操作パネル20のモード切替ボタン28および動作開始ボタン25が操作されることにより開始される。
【0048】
循環動作について説明する。循環動作では、切替三方弁4において、入力端41から第二出力端43に向かう第二流路が形成される。送液ポンプ7が駆動すると、インクタンク2に貯留されたインクが、上流管31、下流管32を介して切替三方弁4の入力端41に送り込まれる。入力端41に送り込まれたインクは、第二出力端43から流出し、第三接続管6を介してインクタンク2に戻る。循環動作において、インクタンク2に貯留されたインクは、攪拌されるので、インク中のインク顔料が均一に分散する。循環動作は、インク充填装置1の電源が投入されてから、所定時間T1が経過する毎に行われる。
【0049】
次に、図5を参照して、インク充填装置1の電気的構成について説明する。インク充填装置1の制御構成では、制御基板上に形成される制御回路部100が核となっている。制御回路部100は、CPU101、ROM102、RAM103、及び入出力インタフェース105を備え、これらはバス120によって相互に接続されている。
【0050】
CPU101は、インク充填装置1全体の制御を司る。ROM102は、CPU101が実行する各種の制御プログラム等を記憶する。RAM103は、データを一時的に記憶する。
【0051】
入出力インタフェース105には、駆動回路106、駆動回路107、駆動回路108が接続されている。駆動回路106は、送液ポンプ7を駆動させる。駆動回路107は、切替三方弁4を駆動させる。駆動回路108は、減圧ポンプ12を駆動させる。
【0052】
また、入出力インタフェース105には、センサ入力回路109、センサ入力回路110、センサ入力回路111が接続されている。センサ入力回路109には、カートリッジセンサ114からの検出信号が入力される。センサ入力回路110には、カートリッジ内インク量センサ115からの検出信号が入力される。センサ入力回路111には、インクタンクセンサ116からの検出信号が入力される。
【0053】
また、入出力インタフェース105には、操作パネル制御回路112と、計時装置113とが接続される。操作パネル制御回路112は、操作パネル20からの入力を受け付けるとともに、操作パネル20にデータを出力する。
【0054】
次に、図6を参照して、ROM102の記憶エリアについて説明する。ROM102には、各種プログラムを記憶するプログラム記憶エリア1021と、プログラムの実行に必要な所定値を記憶する所定値記憶エリア1022と、その他の情報記憶エリア1023とが少なくとも設けられている。プログラム記憶エリア1021には、本発明に係るインク充填循環プログラムが少なくとも記憶されている。
【0055】
次に、図7を参照して、RAM103の記憶エリアについて説明する。RAM103には、計時装置147による各種計測時間を記憶する計測時間記憶エリア1031と、循環処理において送液ポンプ7が駆動した回数を駆動回数Nとして記憶する駆動回数記憶エリア1032とが少なくとも設けられている。計測時間記憶エリア1031には、充填処理において計測される計測時間を記憶する充填情報記憶エリア(図示省略)と、循環処理において計測される循環処理情報記憶エリア(図示省略)とが設けられている。
【0056】
次に、図8から図10を参照して、インク充填装置1で行われるインク充填循環処理について説明する。図8に示すように、操作パネル20の電源ボタン29が押下されると、CPU101がROM102に記憶されたインク充填循環プログラムに従って、インク充填循環処理を実行する。
【0057】
まず、初期化処理がなされる(S11)。具体的には、RAM103の計測時間記憶エリア1031に記憶された各種計測時間が0とされる。また、切替三方弁4において入力端41から第二出力端43に向かう第二流路が形成される。次に、計時装置113による計測が開始される(S13)。計測された時間は、計測時間t1としてRAM103の計測時間記憶エリア1031に記憶される。次に、充填動作を行う指示がなされたか否かが判断される(S15)。操作パネル20のモード切り替えボタン28、および動作開始ボタン25が操作されて充填動作を行う指示がなされると(S15:YES)、充填処理が行われる(S21)。
【0058】
図9を参照して、充填処理について説明する。まず、初期化処理がなされる(S30)。具体的には、計測時間記憶エリア1031の充填情報記憶エリア(図示省略)に記憶された各種計測時間が0とされる。そして、インクカートリッジ供給部51にインクカートリッジ50が接続されているか否かが判断される(S31)。カートリッジセンサ114によって、インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51に接続されていることが検出されなかった場合(S31:NO)、操作パネル20のエラー表示ランプ21が点灯され(S59)、充填処理を終了する。
【0059】
カートリッジセンサ114によって、インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51に接続されていることが検出された場合(S31:YES)、接続されたインクカートリッジ50の内部のインク量が満量であるか否かが判断される(S33)。カートリッジ内インク量センサ115によって、インクカートリッジ50内のインクが満量であることが検出された場合(S33:YES)、インクカートリッジ50に、さらにインクを供給する必要がない。よって、準備完了ランプ23が点灯され(S61)、充填処理を終了する。
【0060】
カートリッジ内インク量センサ115によって、インクカートリッジ50内のインクが満量であることが検出されない場合(S33:NO)、インクカートリッジ50の内部にインクを供給する必要がある。この場合には、動作中ランプ24が点灯されて、減圧ポンプ12が駆動される(S35)。減圧ポンプ12は、脱気モジュール11の容器13の内部の空気を吸引する。これにより、容器13に配置された中空糸14の外部が負圧状態となって、中空糸14の内部のインクに溶存する気体が外部に移動し、インクが脱気される。そして、計時装置113による計測が開始され、計測された時間は、計測時間t2としてRAM103の計測時間記憶エリア1031に記憶される。この計測時間t2は、減圧ポンプ12の駆動時間に相当する。
【0061】
次いで、RAM103に記憶された計測時間t2が、ROM102の所定値記憶エリア1022に記憶された所定時間T2に到達したか否かが判断される(S37)。所定値記憶エリア1022には、減圧ポンプ12が容器13の内部を十分に減圧するために必要な時間が所定時間T2として記憶されている。計測時間t2が所定時間T2に到達していなければ(S37:NO)、容器13の内部の圧力は十分に下がっていない。この場合には、S37の処理が繰り返される。
【0062】
計測時間t2が所定時間T2に到達していれば(S37:YES)、脱気モジュール11の容器13の内部の圧力は十分に下がっている。この場合、送液ポンプ7が駆動されて(S39)、インクタンク2に貯留されたインクが、上流管31を介して、脱気モジュール11に送り込まれる。このように、容器13の内部の圧力が十分に下がってから、脱気モジュール11にインクが送り込まれるので、脱気モジュール11においてインクは確実に脱気される。
【0063】
次に、計時装置113による計測が開始され、計測された時間は、計測時間t3としてRAM103の計測時間記憶エリア1031に記憶される。計測時間t3は、送液ポンプ7の駆動時間に相当する。次いで、RAM103に記憶された計測時間t3が、ROM102に記憶された所定時間T3に到達したか否かが判断される(S41)。所定値記憶エリア1022には、脱気モジュール11から流出したインクが、下流管32の上流側端部から下流側端部まで移動するために必要な時間が所定時間T3として記憶されている。計測時間t3が所定時間T3に到達していなければ(S41:NO)、下流管32には、未だ脱気がなされていないインクが流通している。この場合には、S41の処理が繰り返される。
【0064】
計測時間t3が所定時間T3に到達していれば(S41:YES)、下流管32を流れるインクは完全に脱気されたインクであるので、入力端41に流入するインクは、完全に脱気されたインクである。この場合、駆動回路107によって、切替三方弁4の流路が第二流路から第一流路に切り替えられる(S43)。すると、入力端41に流入したインクは第一出力端42から流出し、第二接続管5およびインクカートリッジ供給部51を介して、インクカートリッジ50に充填される。よって、完全に脱気されたインクをインクカートリッジ50に充填することができる。そして、計時装置113による計測が開始され、計測された時間は、計測時間t5としてRAM103の計測時間記憶エリア1031に記憶される。計測時間t5は、インクカートリッジ50へのインク充填時間に相当する。
【0065】
次に、不測の事態によるインク充填中のカートリッジ外れを検出するためにインクカートリッジ供給部51にインクカートリッジ50が接続されているか否かが判断される(S45)。インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51に接続されていない場合、インクカートリッジ供給部51にインクが供給されるとインクが漏れ出てしまう。そのため、カートリッジセンサ114によって、インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51に接続されていることが検出されなかった場合(S45:NO)、操作パネル20においてエラー表示ランプ21が点灯され(S63)、動作中ランプ24が消灯する。
【0066】
この場合、送液ポンプ7が停止されて(S51)、インクのインクカートリッジ供給部51への供給が停止する。減圧ポンプ12が停止されて(S53)、インクの脱気が停止する。切替三方弁4の流路が第一流路から第二流路に切り替えられ(S57)、充填処理を終了する。これにより、充填処理の途中で、インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51から取り外された場合、インクの充填動作を停止できるので、インクカートリッジ供給部51からインクが漏れ出ることがない。
【0067】
一方、カートリッジセンサ114によって、インクカートリッジ50がインクカートリッジ供給部51に接続されていることが検出された場合(S45:YES)、インクタンク2に貯留されたインクの残量が所定量以上であるか否かが判断される(S47)。インクタンクセンサ116によって検出されたインク残量が、予めROM102に記憶された所定量以上でないと判断された場合(S47:NO)、インクカートリッジ供給部51にインクではなく空気が供給される可能性がある。この場合、操作パネル制御回路112によって操作パネル20のエラー表示ランプ22が点灯され(S65)、動作中ランプ24が消灯する。そして、S51〜57の処理が行われ、充填処理を終了する。このように、インクタンク2に貯留されたインクの残量所定量以下の場合に、インクカートリッジ供給部51へのインクの供給を停止するので、インクカートリッジ50に空気が混入することがない。
【0068】
インクタンクセンサ116によって検出されたインク残量が、予めROM102に記憶された所定量以上であると判断された場合(S47:YES)、インクタンク2には十分な量のインクが貯留されているので、インクカートリッジ50に安定してインクを供給できる。この場合、接続されたインクカートリッジ50の内部のインク量が満量であるか否かが判断される(S49)。
【0069】
カートリッジ内インク量センサ115によって、インクカートリッジ50内のインクが満量であることが検出されない場合(S49:NO)、インクカートリッジ50の内部にインクを供給する必要がある。この場合には、まず、RAM103の計測時間記憶エリア1031に記憶された計測時間t5が、ROM102に記憶された所定時間T5に到達しているか否かが判断される(S67)。所定値記憶エリア1022には、空のインクカートリッジ50を満量にするために必要なインク充填時間が所定時間T5として記憶されている。上述のように、計測時間t5は、S43において、インクカートリッジ50へのインク充填が開始されてからの経過時間(インク充填時間)に相当する。
【0070】
計測時間t5が所定時間T5に到達している場合(S67:YES)、十分なインク充填時間が経過しているにもかかわらず、インクカートリッジ50内のインク量は満量に達していない。この場合には、インク充填装置1のいずれかに故障が生じている可能性があるので、操作パネル20において、エラー表示ランプ21、22が点灯され(S69)、動作中ランプ24が消灯する。そして、S51〜S57の処理が行われ、充填処理が終了する。計測時間t5が所定時間T5に到達していなければ(S67:NO)、S45に戻り、処理が繰り返される。これにより、インク充填時間が、所定時間T5に到達するまでは、インクカートリッジ50へのインクの充填が継続する。
【0071】
一方、カートリッジ内インク量センサ115によって、インクカートリッジ50内のインクが満量であることが検出された場合(S49:YES)、インクカートリッジ50に、さらにインクを供給する必要がない。この場合には、操作パネル20の動作中ランプ24が消灯され、S51〜57の処理が行われ、充填処理を終了する。このように、インクカートリッジ50内に満量のインクが貯留されていると判断された場合に、インクカートリッジ50へのインクの供給を停止するので、インクカートリッジ50に適正な量のインクを供給することができる。
【0072】
図8に示すインク充填循環処理では、充填処理が終了すると(S21)、電源がオフされたか否かが判断される(S19)。操作パネル20の電源ボタン29が押下されて、電源がオフされた場合には(S19:YES)、処理を終了する。一方、電源ボタン29がオフされない場合(S19:NO)、S15に戻り、処理が繰り返される。
【0073】
S15において、充填指示がなされていないと判断されなかった場合(S15:NO)、RAM103に記憶された計測時間t1が、ROM102に記憶された所定時間T1に到達しているか否かが判断される(S17)。計測時間t1が所定時間T1に到達していれば(S17:YES)、循環処理が行われる(S23)。
【0074】
図10を参照して、循環処理について説明する。循環処理では、まず、初期化処理がなされる(S80)。具体的には、計測時間記憶エリア1031の循環処理情報記憶エリア(図示省略)に記憶された計測時間t6が0とされる。
【0075】
次に、送液ポンプ7が駆動され(S81)、操作パネル20の動作中ランプ24が点灯される。送液ポンプ7が駆動されると、インクタンク2に貯留されたインクが、上流管31、下流管32を介して切替三方弁4の入力端41に供給される。切替三方弁4においては、第二流路が形成されているので、入力端41に供給されたインクは、第二出力端43から流出し、第三接続管6を介してインクタンク2に戻る。
【0076】
そして、計時装置113による計測が開始され(S82)、計測された駆動時間は、計測時間t6としてRAM103の計測時間記憶エリア1031に記憶される。この計測時間t6は、S81において送液ポンプ7が駆動されてからの経過時間に相当する。そして、RAM103に記憶された計測時間t6が、ROM102に記憶された所定時間T6に到達しているか否かが判断される(S83)。上述のように、循環動作においては、送液ポンプ7が間欠的に駆動する。ROM102の所定値記憶エリア1022には、間欠的に駆動する送液ポンプ7の1回の駆動時間が所定時間T6として記憶されている。計測時間t6が所定時間T6に到達していれば(S83:YES)、送液ポンプ7が一旦停止される(S85)。
【0077】
次に、RAM103の駆動回数記憶エリア1032に記憶された駆動回数Nが1加算される(S89)。そして、駆動回数記憶エリア1032に記憶された駆動回数Nが、ROM102に記憶された最大駆動回数Mに到達しているか否かが判断される(S91)。ROM102の所定値記憶エリア1022には、循環処理における間欠動作の間欠回数が最大駆動回数Mとして記憶されている。駆動回数Nが最大駆動回数Mに到達していないと判断されると(S91:NO)、引き続いて循環処理が行われる。
【0078】
具体的には、RAM103に記憶された計測時間t6が、ROM102に記憶された所定時間T7に到達しているか否かが判断される(S87)。ROM102の所定値記憶エリア1022には、間欠的に駆動する送液ポンプ7の1回の駆動時間および停止時間を加算した時間が、所定時間T7として記憶されている。計測時間t6が所定時間T7に到達していなければ(S87:NO)、S87の処理が繰り返される。この場合、送液ポンプ7の駆動が停止された状態が継続している。計測時間t6が所定時間T7に到達していれば(S87:YES)、S80に戻り、処理が繰り返される。
【0079】
駆動回数Nが最大駆動回数Mに到達していると判断されると(S91:YES)、駆動回数記憶エリア1032に記憶された駆動回数Nが0とされて(S93)、操作パネル20の動作中ランプ24が消灯され、処理を終了する。
【0080】
このようにして、循環処理では、ポンプ駆動時間がT6、停止時間が(T7−T6)、循環動作回数がMの間欠的な循環動作が行われる。送液ポンプ7が駆動して、インクが上流管31、下流管32、および第三接続管6を流通して、インクタンク2に戻ることにより、上流管31、下流管32、第三接続管6及びインクタンク2内のインクは、静止状態から攪拌状態になる。また、インクの流通を間欠的に行うことにより、インクタンク2内や、上流管31、下流管32、第三接続管6内のインクの乱れを大きくすることができる。よって、インク顔料の分散性を良好にできる。例えば、インクタンク2に貯留されるインクが比重の大きいインク顔料を含有する場合であっても、循環処理が行われる毎に、インク顔料は分散されるので、インク中におけるインク顔料の分散性を良好に保つことができる。また、循環処理は所定時間T1が経過するごとに行われるので、作業者がわざわざ作業を行わなくても確実にインク中のインク顔料を分散させることができる。
【0081】
図8に示すインク充填循環処理では、循環処理が終了すると(S23)、計測時間記憶エリア1031に記憶された計測時間t1が0とされる(S25)。そして、計時装置113による計測が再開され(S27)、計測された時間が、計測時間t1として計測時間記憶エリア1031に記憶される。そして、電源がオフされたか否かが判断される(S19)。操作パネル20の電源ボタン29が押下されて、電源がオフされた場合には(S19:YES)、処理を終了する。一方、電源ボタン29がオフされない場合(S19:NO)、S15に戻り、処理が繰り返される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のインク充填装置1によれば、インクタンク2に貯留されたインクが、上流管31、下流管32を介して切替三方弁4の入力端41に送り込まれる。切替三方弁4において、第一流路が形成されている場合、入力端41に送り込まれたインクは第一出力端42から流出し、第二接続管5を介して、インクカートリッジ50に供給される。切替三方弁4において、第二流路が形成されている場合、入力端41に送り込まれたインクは第二出力端43から流出し、第三接続管6を介してインクタンク2に戻される。つまり、切替三方弁4において、第一流路と第二流路とを互いに切り替えることにより、インクタンク2に貯留されたインクをインクカートリッジ50に充填する充填動作を行うか、インクタンク2に戻す循環動作を行うかを選択することができる。
【0083】
循環動作の過程で、インクタンク2に貯留されたインクは攪拌される。そのため、例えば、インクタンク2に貯留されるインクが比重の大きいインク顔料を含有する場合であっても、循環動作の過程でインク顔料は分散される。よって、インクカートリッジ50にインクを充填する充填動作時には、インクカートリッジ50にインク顔料の濃度や分散性が安定したインクを供給できる。
【0084】
また、インク充填装置1は、下流管32の中間部から分岐して、第三接続管6の中間部に合流するバイパス管8を備えている。このバイパス管8には、下流管32と接続する一端側に、圧力制御弁9が設けられている。圧力制御弁9は、下流管32側から加えられる圧力が所定圧以上の場合には開放し、所定圧未満の場合には閉塞する。つまり、下流管32の内圧が第三接続管6の内圧よりも所定圧以上高い場合には、圧力制御弁9が開放して、バイパス管8を開通させる。すると、下流管32内のインクの一部は、切替三方弁4を流通することなく、バイパス管8を介して、第三接続管6に向けて流れる。
【0085】
例えば切替三方弁4近傍で、インクがスムーズに流れない閉塞が生じ、下流管32を流れるインクのインク圧が高くなった場合に、圧力制御弁9が開放して、バイパス管8を開通させる。下流管32のインクの一部を、切替三方弁4に流通させることなく第三接続管6に逃すので、切替三方弁4やインクカートリッジ供給部51おいてにインク圧が所定圧以上になることがない。そのため、インクの流通経路において閉塞状態が生じた場合であっても、切替三方弁4やインクカートリッジ供給部51に所定圧以上の内圧がかからないので、切替三方弁4とインク供給管との接続部やインクカートリッジ供給部51においてインクが漏れ出たり飛び散ることがない。
【0086】
尚、本発明は、上記第一実施の形態のインク充填装置1に限られず各種の変形が可能である。たとえば、本実施形態においては、インクタンク2内のインク残量を検出するインクタンクセンサ116は重量センサであったが、静電容量センサであってもよい。静電容量センサは、インクタンク2の下段に設けられていても良いし、上流管31のインクの流れる方向の上流側端部に設けられていても良い。この静電容量センサは、インクタンク2、もしくは上流管31の静電容量に基づき、インクタンク2内のインク残量が所定量以上であるか否かを検出する。
【0087】
例えば、このようなインクタンクセンサ116が、インクタンク2の下段に設けられていた場合、インクタンク2内のインク残量が所定量以上の場合には、インクタンクセンサ116は、インクの静電容量を検出する。インク残量が所定量以下になると、インクタンクセンサ116は、空気の静電容量を検出する。インクと空気との静電容量は異なるので、インクタンク2に貯留されたインクの液面が、インクタンクセンサ116よりも下方になったことを検出することができる。よって、インクタンク2内に貯留されるインク残量が所定量以下になったことを検出することができる。静電容量センサは、検出精度が高く、繰り返して使用しても再現性の高いセンサであるため、インクカートリッジ50に空気が供給されることを確実に防止できる。
【0088】
また、本実施形態では、図6に示す充填処理において、インクカートリッジ50内のインクが所定量に達していると判断された場合(S49)、送液ポンプ7の駆動が停止された(S51)。しかし、送液ポンプ7の駆動を停止せずに、切替三方弁4における流路を第一流路から第二流路に切り替えてもよい。この場合であっても、インクカートリッジ50へのインクの供給は停止される。
【0089】
また、図11に示すように、第二接続管5を途中で分岐させて、インクの流れる方向の下流側端部に、それぞれ弁52、及びインクカートリッジ供給部51を設けてもよい。インクカートリッジ供給部51の近傍には、それぞれカートリッジセンサ114を設けておく。カートリッジセンサ114により、インクカートリッジ50が接続されたことが検出され、インクカートリッジ50内のインク量がFULLでないことが検出された場合に、対応する弁52が開く。このようなインク充填装置201によれば、一度に複数のインクカートリッジ50にインクを供給することができる。
【0090】
また、本実施形態においては、インク中の溶存気体を除去する方法として、インクを中空糸14の内部に流通させるとともに、減圧ポンプ12によって中空糸14の外部を減圧する方法を用いたが、インク中の溶存気体を除去する方法はこの方法に限定されない。また,流路の途中に異物を捕捉するためのフィルタを設けても何ら問題ない。
【0091】
本実施形態における上流管31、下流管32が、本発明の「第一接続管」に相当する。本実施形態における減圧ポンプ12が、本発明の「減圧手段」に相当する。本実施形態における操作パネル20が、本発明の「充填指示手段」に相当する。本実施形態におけるカートリッジ内インク量センサ115が、本発明の「インク量検出手段」に相当する。図9に示すS43およびS57の処理を行うCPU101が、本発明の「制御手段」に相当する。本実施形態における図9に示すS37の処理を行うCPU101が、本発明の「脱気開始制御手段」に相当する。図9に示すS39の処理を行うCPU101が、本発明の「送液開始制御手段」に相当する。図9に示すS47およびS51の処理を行うCPU101が、本発明の「禁止手段」に相当する。所定時間T2が、本発明の「第一所定時間」に相当する。所定時間T2と所定時間T3とを加算した時間が、本発明の「第二所定時間」に相当する。所定時間T3が、本発明の「第三所定時間」に相当する。
【符号の説明】
【0092】
1 インク充填装置
2 インクタンク
4 切替三方弁
5 第二接続管
6 第三接続管
7 送液ポンプ
8 バイパス管
9 圧力制御弁
10 脱気手段
11 脱気モジュール
12 減圧ポンプ
14 中空糸
15 インク量検出装置
20 操作パネル
29 電源ボタン
31 上流管
32 下流管
41 入力端
42 第一出力端
43 第二出力端
50 インクカートリッジ
51 インクカートリッジ供給部
115 カートリッジ内インク量センサ
116 インクタンクセンサ
147 計時装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタのインクカートリッジにインクを充填するインク充填装置であって、
前記インクカートリッジにインクを充填する場合に前記インクカートリッジに接続し、前記インクカートリッジにインクを供給するインクカートリッジ供給部と、
インクを貯留するインクタンクと、
前記インクタンクに一端部が接続する第一接続管と、
入力端、第一出力端、および第二出力端を有し、前記入力端が前記第一接続管の前記一端部とは反対側の他端部に接続し、前記入力端から前記第一出力端に向かう第一流路と、前記入力端から前記第二出力端に向かう第二流路とを互いに切り替え可能な切替三方弁と、
前記切替三方弁の前記第一出力端に一端部が接続し、前記インクカートリッジ供給部に他端部が接続する第二接続管と、
前記切替三方弁の前記第二出力端に一端部が接続し、前記インクタンクに他端部が接続する第三接続管と、
前記第一接続管に設けられ、前記インクタンクに貯留されたインクを前記切替三方弁の前記入力端に送り込む送液ポンプと
を備えたことを特徴とするインク充填装置。
【請求項2】
前記インクカートリッジへのインクの充填を指示する充填指示手段と、
前記インクカートリッジ内のインク量を検出するインク量検出手段と、
前記充填指示手段によりインクの充填が指示された場合、前記切替三方弁を第1流路に切り替え、前記インク量検出手段によりインクカートリッジ内のインクが所定量になったことが検出された場合、前記切替三方弁を第2流路に切り替えるか、または送液ポンプの駆動を停止する制御手段と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のインク充填装置。
【請求項3】
前記第一接続管もしくは前記第二接続管に設けられ、インク中の溶存気体を除去する脱気手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のインク充填装置。
【請求項4】
前記脱気手段は、
内部にインクを流通させる中空糸の束である中空糸束と、
前記中空糸の外部を減圧させる減圧手段と
を備えたことを特徴とする請求項3に記載のインク充填装置。
【請求項5】
前記第一接続管に設けられ、インク中の溶存気体を除去する脱気手段と、
当該充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、前記脱気手段に脱気動作を開始させる脱気開始制御手段と、
前記充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、前記送液ポンプに送液動作を開始させる送液開始制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記脱気手段の脱気動作時間が第一所定時間経過し、且つ前記送液ポンプの送液動作時間が第二所定時間経過した場合に、前記切替三方弁を前記第一流路に切り替えることを特徴とする請求項2に記載のインク充填装置。
【請求項6】
前記脱気手段は、内部にインクを流通させる中空糸の束である中空糸束と、前記中空糸の外部を減圧させる減圧手段とを備え、
前記脱気開始制御手段は、前記充填指示手段によってインクの充填が指示された場合に、前記減圧手段を駆動し、
前記送液開始制御手段は、前記減圧手段の駆動時間が第三所定時間に到達した場合に、前記送液ポンプによる送液動作を開始させ、
前記制御手段は、前記減圧手段の動作時間が前記第一所定時間経過し、且つ前記送液ポンプの送液動作時間が前記第二所定時間経過した場合に、前記切替三方弁を前記第一流路に切り替えることを特徴とする請求項5に記載のインク充填装置。
【請求項7】
前記インクタンクに貯留されるインクの残量を検出するインク残量検出手段と、
前記インク残量検出手段によって検出されたインク残量が所定量未満である場合に、前記送液ポンプの駆動を禁止する禁止手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインク充填装置。
【請求項8】
前記第一接続管の中間部と前記第三接続管の中間部とに接続されるバイパス管と、
前記バイパス管に設けられ、前記第一接続管側から付与される圧力が所定圧未満の場合には閉塞し、前記付与される圧力が前記所定圧以上の場合には開放する圧力制御弁と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のインク充填装置。
【請求項9】
前記インク量検出センサは、静電容量センサであることを特徴とする請求項7に記載のインク充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−73201(P2011−73201A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225330(P2009−225330)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】