説明

インク再充填方法およびインク再充填装置

【課題】使用済みのインクカートリッジに、できるだけ簡単な作業でもって、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することができるインク再充填方法と、前記インク再充填方法を実施するためのインク再充填装置とを提供する。
【解決手段】インク再充填方法は、インクカートリッジ4の内部空間内に、再充填用のインク2を、圧をかけながら、注入口等5を通して注入する操作を、余剰のインク7が、供給口6を通して排出されると共に、排出されるインク7中に気泡が含まれなくなるまで継続して行う。インク再充填装置1は、再充填用のインク2を収容するためのインク容器3と、インク2を、圧をかけながら、インクカートリッジ4の注入口等5を通して、内部空間内に注入するためのポンプ8と、前記インクカートリッジ4との間を、配管9、10で繋いだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに着脱自在に装着されて、インクを、前記インクジェットプリンタに供給するためのインクカートリッジに、インクを再充填するためのインク再充填方法と、前記インク再充填方法を実施するために用いることができるインク再充填装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、パーソナルユースの出力デバイス等として、インクジェットプリンタが広く普及している。この種のインクジェットプリンタは、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(B)その他の色のインクを充填した、複数色の、着脱自在のインクカートリッジを装備しており、各インクカートリッジから供給される各色のインクを、インクジェットヘッドのノズルから、微細な液滴(インク滴)として吐出させて、紙等の記録媒体の表面に、各色の微小なドットを形成することによって、画像や文字等を形成するのが一般的である。
【0003】
インクカートリッジは、基本的に、充填したインクを使い切った時点で使い捨てされるのが実情であるが、インクがなくなっただけで、外観上や内部構造等に殆ど劣化のないように見える使用済みのインクカートリッジを、頻繁に交換して使い捨てにすることは、省資源や環境保護の動きに反する行為をすることになるため、インクジェットプリンタのエンドユーザーに、無用の罪悪感を抱かせることにもなりかねない。
【0004】
そこで、前記問題に対処すべく、インクカートリッジの販売店等の店頭に、回収ボックスを配置する等して、使用済みのインクカートリッジを回収して、再資源化に努める試みが、主として、インクジェットプリンタの製造メーカー等によって実施されているが、回収したインクカートリッジは、そのままの形で、インクのみ再充填して、同じインクカートリッジとして再生されることは殆どなく、部品ごとや素材ごとに分別されて、一部の部品は再利用されるものの、残部は、例えば、新たな成形材料として、あるいは燃料等として使用される、いわゆるマテリアルリサイクルに供されるのが一般的である。
【0005】
そのため、現在の再資源化の流れは、全てのインクカートリッジが使い捨てにされる場合に比べれば、省資源、環境保護の点では優れているものの、回収したインクカートリッジを、分別工場等へ搬送するために要する手間やエネルギー、あるいは、分別工場等において、分別、回収のために費やす手間やエネルギー等を考慮すると、その効果は、未だ十分ではないと言える。確かに、エンドユーザー等が正しく使用したかどうかが判らない上、回収過程等においてどのような劣化が生じたか判らない使用済みのインクカートリッジを、そのまま、インクのみ再充填して、同じインクカートリッジとして再生したのでは、品質の劣化や信頼性の低下等が懸念されるため、現状の再生方法が、現時点での最良の選択であると考えられなくもない。
【0006】
しかし、さらに一歩進めて、エンドユーザーが、自身の手で、あるいは、インクカートリッジの販売店等に併設されたサービスステーション等に依頼して、自分の使用したインクカートリッジそれ自体(自分がどのように使用したかが判っている)に、自己責任で、インクを再充填できるようにすれば、より一層の省資源化を図ることができ、また、環境保護の点でも、さらに優れた効果を得ることができると考えられる。そこで、インクカートリッジにインクを再充填するための方法や装置について、種々、検討が行われている。
【0007】
例えば、特許文献1には、ピストンとシリンダとからなる注射器型の形状をなし、前記シリンダ内に、再充填用のインクを充填したインク再充填装置を、例えば、インクカートリッジの新製時に、内部空間内にインクを注入するために使用されたインク注入口や、あるいは、内部空間内の内圧を調整するために設けられた大気連通孔等に接続した状態で、ピストンを引き出して、前記内部空間内を減圧した後、ピストンを、シリンダの方向に、大気圧によって自動的に押し込ませるか、または手で押し込むことによって、シリンダ内のインクを、内部空間内に注入して再充填することが記載されている。
【0008】
前記再充填方法は、従来の、内部空間内に、フェルト等の多孔質体を充填したインクカートリッジに対して、前記多孔質体の孔の隅々までインクを充填するために有効である。多孔質体は、内部空間内でのインクの動揺等を抑える等の目的で充填されている。しかし、近年、インクカートリッジの内部構造が、前記従来のものと比べて飛躍的に複雑化しつつあり、従来の再充填方法では、そのような新たな内部構造を有するインクカートリッジに対して、空気(気泡)の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填するのが困難になりつつあるのが現状である。
【0009】
すなわち、近年、形成画像の、より一層の高精細化、高画質化の要求に対応するため、インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインク滴が、極めて微細化される傾向にあり、それに応じて、インクカートリッジ内でのインクの流れや、内部空間内の内圧等を、より厳密に管理したり、制御したりすることが求められつつある。そこで、これらの要求に対応するため、先に説明した、内部空間内に多孔質体を充填することに代えて、前記内部空間の、注入口から、インクジェットプリンタにインクを供給するための供給口に至る、インクの流路の途中に、インクを収容するインク室を、複数個所に分けて配置したり、各インク室間を、狭隘部分等で繋いだ構造としたりすることが行われている。
【0010】
そのため、前記インクカートリッジに、従来の、注射器状の再充填装置を用いて、インクを再充填する場合には、流路中の、特に狭隘部分や、あるいはインク室内の、インクの流れが滞留する角の部分等に、空気が、気泡として残留しやすい。そこで、かかる気泡の残留を、できるだけ防止しながら、複数箇所のインク室に、まんべんなくインクが行き渡るようにするために、例えば、注入口に再充填装置を接続した状態のインクカートリッジを、再充填作業中に、インクが、注入口側から供給口側へ、設定された流路を順に流通できるように、振り子のように左右に傾けたり、途中で、何度かピストンを引き出して減圧を繰り返したりする必要があり、再充填の作業が複雑化する。
【0011】
その結果、エンドユーザー等の作業者には、再充填の作業を行うために、ある程度の熟練が求められることになり、熟練していない場合には、前記作業中に、再充填装置とインクカートリッジとの接続が外れる等して、インクが外部に漏れることによって、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるという問題を生じる。
【0012】
特許文献2には、インクカートリッジの、インクの流路のうち、できるだけ供給口に近いインク室に、外部と繋がる、気泡を抜くための排出孔を形成すると共に、注入口に、インクを充填した注射器型の再充填装置を接続した状態で、前記再充填装置のピストンを一方的に押し込むことで、前記インクを、圧をかけながら、注入口を通して内部空間内に注入する操作を、気泡を含むインクが排出孔から漏れ始めるまで、継続して行うことによって、インクを、内部空間内に再充填することが記載されている。
【0013】
前記再充填方法によれば、再充填装置を接続したインクカートリッジを、振り子のように左右に傾けたり、途中で、何度かピストンを引き出して減圧を繰り返したりする必要はなくなる。しかし、インクカートリッジの所定の位置に、正確に、排出孔を形成する必要がある上、穴あけのための工具等が必要になることから、再充填の作業が複雑になるという問題を、根本的に解決することはできない。その上、排出孔から漏れ出したインクによって、作業者の手やインクカートリッジの周囲が汚されるおそれが、従来に比べてさらに増大するという問題もある。
【0014】
特許文献3には、再充填用のインクを、圧をかけながら、注入口を通して、インクカートリッジの内部空間内に注入して充填した後、所定量のインクを、供給口を通して吸引して除去することが記載されている。また、特許文献4には、注入口から供給口に至るインクの流路上に設けられたインク室のうち、注入口側のインク室には、前記注入口を通してインクを注入して充填すると共に、供給口側のインク室には、前記供給口を通して、減圧吸引しながらインクを注入して充填することが記載されている。これらの再充填方法によれば、先に説明したように、複雑な内部構造を有するインクカートリッジに対して、空気(気泡)の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することができると考えられる。
【0015】
しかし、前記両再充填方法は、いずれも、エンドユーザーによる再充填を想定したものではなく、例えば、リサイクル工場等において、回収した使用済みのインクカートリッジにインクを再充填して再生するための方法である。そのため、回収した使用済みのインクカートリッジを、一括してリサイクル工場等に搬送して、前記いずれかの再充填方法で再生する場合には、再生したインクカートリッジに、先に説明した品質の劣化や信頼性の低下等が生じないようにするために、あらかじめ、インクカートリッジの検品や、良品、不良品の選別、あるいは部品の交換等が必要となるため、再生に要する手間やエネルギーがさらに増大するという問題を生じる。
【0016】
エンドユーザーが、自身で使用したインクカートリッジをサービスステーションに持ち込んで、そこに設置された、前記いずれかの再充填方法を実施するための装置を用いて、エンドユーザー自身の手で、もしくはサービスマンの手によって、インクを再充填する態様も考えられるが、前記両再充填方法のいずれにおいても、その実施のための装置は、真空装置を含む複雑な構造を有するとともに、複雑な駆動制御を必要とするものとなるため、サービスステーションを、現在の、使用済みインクカートリッジの回収ボックスのように、街中に数多く設置して、エンドユーザーのサービスに供することは難しい。
【0017】
さらに、エンドユーザーが、例えば、先に説明した注射器型の再充填装置等を使用して、前記両再充填方法のいずれかを実施する場合も考えられるが、注入口側での作業と、供給口側での作業とを2工程で行わなければならないため、再充填の作業が複雑で、より一層の熟練を要するものとなり、空気(気泡)の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填するのは困難である。
【特許文献1】特開平9−39263号公報
【特許文献2】特表2006−510509号公報
【特許文献3】特開2006−175855号公報
【特許文献4】特開2003−145799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、例えばエンドユーザーが、自身の手で、あるいは、サービスステーション等に依頼して、複雑な内部構造を有する使用済みのインクカートリッジであっても、できるだけ簡単な作業でもって、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することができるインク再充填方法と、前記インク再充填方法を実施するために用いることができるインク再充填装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するための、本発明のインク再充填方法は、インクが充填される内部空間と、前記内部空間内にインクを注入するための注入口と、内部空間内のインクを、インクジェットプリンタに供給するための供給口とを備えたインクカートリッジの、前記内部空間内に、インクを再充填するための方法であって、再充填用のインクを、圧をかけながら、注入口を通して内部空間内に注入する操作を、余剰のインクが、供給口を通して排出されると共に、排出されるインク中に気泡が含まれなくなるまで、継続して行うことを特徴とするものである。
【0020】
前記本発明のインク再充填方法によれば、再充填用のインクを、圧をかけながら、注入口を通して内部空間内に注入する操作を、余剰のインクが、供給口を通して排出されると共に、排出されるインク中に気泡が含まれなくなるまで、継続して行うだけで、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを、前記インクカートリッジの内部空間に、再充填することができる。そのため、複雑な内部構造を有する使用済みのインクカートリッジであっても、例えばエンドユーザーが、自身の手で、あるいは、サービスステーション等に依頼して、できるだけ簡単な作業でもって、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することが可能となる。
【0021】
なお、インクカートリッジは、注入口、および供給口に加えて、内部空間の少なくとも一部を大気に連通させる大気連通口を備えている場合があり、その場合には、再充填用のインクを、注入口に代えて、前記大気連通口を通して、前記内部空間内に注入するようにしてもよい。
【0022】
本発明のインク再充填装置は、再充填用のインクを収容するためのインク容器と、前記インク容器内のインクを、圧をかけながら、インクカートリッジの注入口または大気連通口を通して、内部空間内に注入するためのポンプと、前記インク容器とポンプとの間、およびポンプと、インクカートリッジの注入口または大気連通口との間を繋ぐための配管とを備えることを特徴とするものである。
【0023】
前記構成によれば、装置の配管を、インクカートリッジの注入口または大気連通口に接続した状態でポンプを作動させるだけで、本発明のインク再充填方法を実施することができる。すなわち、前記状態でポンプを作動させて、インク容器内のインクを、圧をかけながら、インクカートリッジの注入口または大気連通口を通して、内部空間内に注入する操作を、供給口を通して排出される余剰のインク中に気泡が含まれなくなるまで継続して行うことにより、前記インクカートリッジの内部空間に、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することができる。そのため、複雑な内部構造を有する使用済みのインクカートリッジであっても、例えばエンドユーザーが、自身の手で、あるいは、サービスステーション等に依頼して、できるだけ簡単な作業でもって、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することが可能となる。
【0024】
前記本発明のインク再充填装置は、インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを、インク容器に還流させるために、前記供給口とインク容器との間を繋ぐ配管を備えているのが好ましい。前記構成によれば、インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを、前記配管を通してインク容器に還流させて、再充填用のインクとして再使用できることから、インクの無駄をなくすることができる。その上、供給口を通して排出される余剰のインクを、外部に漏らすことなく、配管を通して、インク容器に還流させることができるため、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0025】
また、本発明のインク再生装置は、インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを収容するための余剰インク容器と、前記供給口と余剰インク容器との間を繋ぐ配管とを備えているのが好ましい。前記構成によれば、インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを、配管を通して、インク容器中のインクと混ざり合わないように、余剰インク容器に収容しながら、インク容器から、常に新しい再充填用のインクを、インクカートリッジに再充填することができる。その上、供給口を通して排出される余剰のインクを、外部に漏らすことなく、配管を通して、余剰インク容器に収容することができるため、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0026】
インクカートリッジの供給口と、インク容器または余剰インク容器との間を繋ぐための配管の、供給口との接続部には、前記接続部からの、インクの逆流による漏れを防止するための弁が設けられているのが好ましい。前記構成によれば、配管を供給口から外した際に弁の作用によって、接続部から、インクが逆流して漏れるのを防ぐことができるため、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することができる。
【0027】
ポンプと、インクカートリッジの注入口または大気連通口との間を繋ぐための配管の、前記注入口との接続部と、前記インクカートリッジの供給口と、インク容器または余剰インク容器との間を繋ぐための配管の、前記供給口との接続部とは、インクカートリッジに着脱自在に装着される装着具に、一体に保持されているのが好ましい。前記構成によれば、装着具をインクカートリッジに装着するだけで、前記両配管の接続部を、それぞれ、インクカートリッジの注入口または大気連通口、および供給口に接続した状態で固定できるため、接続の作業性、および確実性を向上することができる。そのため、インクの再充填作業を、より一層、簡略化できる上、両配管の接続部を、より確実に接続して、インクの漏れを防止して、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0028】
インクカートリッジの供給口は、インクの漏れを防止するための弁を備えている場合があり、その場合には、前記供給口と、インク容器または余剰インク容器との間を繋ぐための配管の、供給口との接続部が、前記供給口との接続状態において、前記弁を開くことができる形状に形成されているのが好ましい。前記構成によれば、配管の接続部を供給口と接続するだけで、自動的に弁が開かれるため、接続の作業性を向上することができる。そのため、インクの再充填作業を、より一層、簡略化できる上、両配管の接続部を、より確実に接続して、インクの漏れを防止して、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0029】
本発明のインク再充填装置を、例えばエンドユーザー向けとして構成する場合には、ポンプが手動ポンプであって、インク容器を構成する筐体に一体に組み込まれているのが好ましい。前記構成によれば、インク再充填装置の全体の構造、および操作を、より一層、簡略化すると共に、コンパクト化して、持ち運びや収納等を容易に行えるようにできる。そのため、複雑な内部構造を有する使用済みのインクカートリッジであっても、エンドユーザーが、自身の手で、できるだけ簡単な作業でもって、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することが可能となる。
【0030】
また、インク再充填装置が、インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを収容するための余剰インク容器を備えている場合、先に説明した、エンドユーザー向けのインク再充填装置の構造や操作等を簡略化すると共に、装置の全体をコンパクト化する効果を維持するためには、前記余剰インク容器が、筐体に一体に組み込まれているのが好ましい。かかるエンドユーザー向けのインク再充填装置の具体的な構造としては、インク容器と、余剰インク容器と、手動ポンプとが、下から上へ順に、積み重ねた状態で、筐体に一体に組み込まれていると共に、手動ポンプを駆動させるためのハンドルが、前記筐体から外方に突出させて設けられているものが挙げられる。
【0031】
本発明のインク再充填装置を、例えばサービスステーション等に設置して、エンドユーザーが持ち込んだインクカートリッジにインクを再充填するサービスに供するために用いる場合には、ポンプが電動ポンプであるのが好ましい。前記構成によれば、再充填用のインクをインクカートリッジの内部空間内に再充填する作業を、より迅速に、効率よく行うことができるため、単位時間あたりに処理できるインクカートリッジの数を増やしたり、待ち時間を短くしたりして、より多くのエンドユーザーの要望に、迅速かつ確実に対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明のインク再充填方法を実施するための、本発明のインク再充填装置1の、実施の形態の一例を示すブロック図である。図1を参照して、この例のインク再充填装置1は、再充填用のインク2を収容するためのインク容器3と、前記インク容器3内のインク2を、圧をかけながら、インクカートリッジ4の注入口(または大気連通口、以下、両者をまとめて「注入口等」と総称する場合がある)5を通して、内部空間内に注入するためのポンプ8と、前記インク容器3とポンプ8との間を繋ぐための配管9と、ポンプ8と、前記注入口等5との間を繋ぐための配管10と、前記余剰のインク7を、インク容器3に還流させるために、前記供給口6とインク容器3との間を繋ぐための配管11とを備えている。
【0033】
前記各部のうち、ポンプ8としては、従来公知の種々の、圧力の働きによってインクを送ることができるポンプが使用可能であるが、特に、チューブポンプが好ましい。チューブポンプとは、軟質樹脂やゴム等からなる弾力性のあるチューブを、通常は円筒状に形成した壁の内壁面に内接するように円弧状に配置すると共に、前記チューブの、円弧の内側に配置したローラーを、チューブを挟んで壁の内壁面に向けて押圧した状態で、壁の内壁面に沿う一方向に移動(筒状の内壁面あれば、前記筒の周方向に回転)させて、チューブを、前記ローラーの移動方向に、順次押し潰して行くことで、チューブ内の液体を、同方向に押し出すポンプである。
【0034】
前記チューブポンプは、構造が簡単で、製造したり使用したり保守したりすることが容易である上、配管9、10を、1本のチューブによって一体的に形成できるため、インク再充填装置1の、全体としての構造を簡略化することもできる。また、配管9、10内を搬送されるインクが、ポンプを構成する、チューブ以外の部材と直接に接触しないため、インクの劣化等を防止することもできる。
【0035】
配管9、10は、先に説明したチューブポンプとしての機能を確保するため、また配管10、11は、インクカートリッジ4の注入口等5、および供給口6に接続する際の、作業のしやすさを向上すること等を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、ナイロン等の軟質樹脂や、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴムによって形成するのが好ましい。また、インクが、各配管9〜11内を正しく搬送されているかどうかや、配管11を通して還流される余剰のインク7中に、気泡が含まれているか否かを、外部から容易に確認できるようにするためには、前記各配管9〜11を形成する軟質樹脂またはゴムは、透明または半透明であるのが好ましい。
【0036】
また、インク容器3は、種々の材料によって形成することができるが、特に、様々な成形方法によって、任意の形状に成形することが容易な、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の硬質樹脂によって形成するのが好ましい。また、インク容器3内のインクの残量や、配管11を通して還流された余剰のインク7中に、気泡が含まれているか否かを、外部から容易に確認できるようにするためには、前記インク容器3を形成する硬質樹脂は、透明または半透明であるのが好ましい。
【0037】
図1のインク再充填装置1を用いて、本発明のインク再充填方法によって、使用済みのインクカートリッジ4の内部空間に、再充填用のインクを再充填するためには、まず、図1に示すように、前記インクカートリッジ4の注入口等5に、配管10を接続すると共に、供給口6に、配管11を接続する。この際、一般に、注入口等5は、シールテープ等によって塞がれていることが多いため、その場合には、シールテープを剥がしたり、カッターナイフ等で孔を開けたりして配管10を接続すればよい。
【0038】
また、インクカートリッジ4が、注入口等5として、注入口と大気連通口とを備える場合には、そのいずれか一方については、シールテープで塞がれた状態を維持しながら、他方について、シールテープを剥がしたり、カッターナイフ等で孔を開けたりして配管10を接続すればよい。また、注入口と大気連通口の両方のシールテープを剥がしてしまったり、カッターナイフ等で孔を開けてしまったりした場合には、一方に配管10を接続し、他方は、新しいシールテープを貼り付けたり、栓を詰めたりして塞げばよい。
【0039】
次に、インク容器3に、再充填用のインク2を収容した状態で、ポンプ8を駆動させて、前記インク2を、圧をかけながら、配管9、10、および注入口等5を通して、インクカートリッジ4の内部空間内に注入する操作を、供給口6と配管11とを通して、インク容器3に排出される余剰のインク7中に気泡が含まれなくなるまで継続して行うと、インクカートリッジ4の内部空間内に、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することができる。
【0040】
また、図の例のインク再充填装置1では、インクカートリッジ4の供給口6を通して排出される余剰のインク7を、配管11を通してインク容器3に還流させて、再充填用のインク2として再使用できることから、インクの無駄をなくすることができる。その上、前記供給口6を通して排出される余剰のインク7を、外部に漏らすことなく、配管11を通して、インク容器3に還流させることができるため、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0041】
図2は、本発明のインク再充填方法を実施するための、本発明のインク再充填装置1の、実施の形態の他の例を示すブロック図である。図2を参照して、この例のインク再充填装置1は、インク容器3内の、図において高さ方向の途中に仕切12を設けて、前記仕切12より下の領域を、本来の、再充填用のインクを収容するためのインク容器13、仕切12より上の領域を、供給口6を通して排出される余剰のインク7を収容するための余剰インク容器14として用いると共に、供給口6と余剰インク容器14との間を、配管11で繋いでいる点が、先の、図1の例と相違している。それ以外の各部の構成は、図1の例と同様であるので、同一部材に同一符号を付して、説明を省略する。仕切12は、先に説明した理由により、インク容器3と同様の材料によって形成するのが好ましい。
【0042】
前記各部を備えた、図2の例のインク再充填装置1を用いて、本発明のインク再充填方法によって、使用済みのインクカートリッジ4の内部空間に、再充填用のインクを再充填するためには、まず、図1に示すように、前記インクカートリッジ4の注入口等5に、配管10を接続すると共に、供給口6に、配管11を接続する。次に、インク容器13に、再充填用のインク2を収容した状態で、ポンプ8を駆動させると、前記インク容器13内のインクが、圧がかけられた状態で、配管9、10、および注入口等5を通して、インクカートリッジ4の内部空間内に注入される。
【0043】
そして、この操作を、供給口6と配管11とを通して、余剰インク容器14に排出される余剰のインク7中に気泡が含まれなくなるまで継続して行うと、インクカートリッジ4の内部空間内に、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することができる。また、図の例のインク再充填装置1では、インクカートリッジ4の供給口6を通して排出される余剰のインク7を、配管11を通して、インク容器13中のインク2と混ざり合わないように、余剰インク容器14に収容しながら、常に新しい再充填用のインク2を、インク容器13から、インクカートリッジ4に再充填することができる。その上、前記供給口6を通して排出される余剰のインク7を、外部に漏らすことなく、配管11を通して、余剰インク容器14に収容することができるため、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0044】
図3は、図1、図2の例のインク再充填装置1のうち、配管11の、インクカートリッジ4の供給口6との接続部に取り付けてもよい接続部材15の一例の、内部の構造を拡大して示す断面図である。図3を参照して、図の例の接続部材15は、筒状の本体16を備えると共に、前記本体16の内部に、一枚の弁17を設けたものである。弁17は、樹脂のフィルムや薄い金属板等によって、その平面形状が、本体16の筒の内面形状と略一致する一枚の板状に形成され、かつ、その外縁の1箇所で、本体16の筒の内方に突設された環状の受部18の、図において上側の面に取り付けられて、通常は、図中に実線で示すように、自身の持つ弾性によって、その外縁の全周に亘って、受部18の上側の面に当接されて、本体16の筒を閉じている。
【0045】
図1または図2のインク再充填装置1の配管10を、インクカートリッジ4の注入口等5に接続し、かつ、配管11を、前記接続部材15を介して、前記インクカートリッジ4の供給口6に接続した状態で、ポンプ8を駆動させて、インク容器3から、再充填用のインク2を、圧をかけながら、配管9、10、および注入口等5を通して、インクカートリッジ4の内部空間内に注入して再充填すると共に、余剰のインク7を、供給口6を通して排出させると、弁17は、図3中に黒矢印で示す、排出される余剰のインク7の圧によって、同図中に破線で示すように上方に撓み変形して、接続部材15の、本体16の筒を開く。そのため、余剰のインク7は、配管11を通してインク容器3に還流されるか、または余剰インク容器14に収容される。
【0046】
余剰のインク7中に気泡が含まれなくなった時点で、ポンプ8の駆動を停止すると、図3中の、黒矢印で示すインク7の圧がなくなるため、弁17は、図中に実線で示す通常の状態に戻り、接続部材15の、本体16の筒を閉じる。そのため、この状態で、接続部材15を、インクカートリッジ4の供給口6から外しても、配管11内のインクは、図中に白矢印で示すように逆流して、外部に漏れるのを防止することができ、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することができる。
【0047】
図4は、接続部材15の他の例の、内部の構造を拡大して示す断面図である。図4を参照して、図の例の接続部材15は、筒状の本体16を備えると共に、前記本体16の内部に、二枚の弁19、19を設けたものである。それぞれの弁19は、樹脂のフィルムや薄い金属板等によって、その平面形状が、本体16の筒の内面形状を、筒の中心を通る分割線で2分割した一枚の板状に形成され、かつ、筒の内面に沿う外縁のうち、前記分割線から最も離れた1箇所で、本体16の筒の内方に突設された受部18に取り付けられて、通常は、二枚の弁19、19が、図中に実線で示すように、互いの、分割線側の先端を突き合わせた状態とされて、本体16の筒を閉じている。
【0048】
図1または図2のインク再充填装置1の配管10を、インクカートリッジ4の注入口等5に接続し、かつ、配管11を、前記接続部材15を介して、前記インクカートリッジ4の供給口6に接続した状態で、ポンプ8を駆動させて、インク容器3から、再充填用のインク2を、圧をかけながら、配管9、10、および注入口等5を通して、インクカートリッジ4の内部空間内に注入して再充填すると共に、余剰のインク7を、供給口6を通して排出させると、二枚の弁19、19は、それぞれ、図4中に黒矢印で示す、排出される余剰のインク7の圧によって、同図中に破線で示すように上方に撓み変形して、互いの突合せが解除されることによって、接続部材15の、本体16の筒を開く。そのため、余剰のインク7は、配管11を通してインク容器3に還流されるか、または余剰インク容器14に収容される。
【0049】
余剰のインク7中に気泡が含まれなくなった時点で、ポンプ8の駆動を停止すると、図4中の、黒矢印で示すインク7の圧がなくなるため、二枚の弁19、19は、図中に実線で示す通常の状態に戻り、接続部材15の、本体16の筒を閉じる。そのため、この状態で、接続部材15を、インクカートリッジ4の供給口6から外しても、配管11内のインクは、図中に白矢印で示すように逆流して、外部に漏れるのを防止することができ、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することができる。
【0050】
図5は、接続部材15のさらに他の例の、内部の構造を拡大して示す断面図である。図5を参照して、図の例の接続部材15は、筒状の本体16を備えると共に、前記本体16の内部に、ボール弁20を設けたものである。ボール弁20は、主に金属製のボールからなり、かつ、本体16の筒の内方に突設された環状の受部18の、図において上側に、自身の重みによって当接されて、前記受部18の中心の、円形の孔21を塞ぐことによって、本体16の筒を閉じている。
【0051】
図1または図2のインク再充填装置1の配管10を、インクカートリッジ4の注入口等5に接続し、かつ、配管11を、前記接続部材15を介して、前記インクカートリッジ4の供給口6に接続した状態で、ポンプ8を駆動させて、インク容器3から、再充填用のインク2を、圧をかけながら、配管9、10、および注入口等5を通して、インクカートリッジ4の内部空間内に注入して再充填すると共に、余剰のインク7を、供給口6を通して排出させると、ボール弁20は、図5中に黒矢印で示す、排出される余剰のインク7の圧によって、同図中に破線で示すように上方に持ち上げられて、孔21を開放し、それによって、接続部材15の、本体16の筒を開く。そのため、余剰のインク7は、配管11を通してインク容器3に還流されるか、または余剰インク容器14に収容される。
【0052】
余剰のインク7中に気泡が含まれなくなった時点で、ポンプ8の駆動を停止すると、図4中の、黒矢印で示すインク7の圧がなくなるため、ボール弁20は、図中に実線で示す通常の状態に戻り、孔21を閉じることで、接続部材15の、本体16の筒を閉じる。そのため、この状態で、接続部材15を、インクカートリッジ4の供給口6から外しても、配管11内のインクは、図中に白矢印で示すように逆流して、外部に漏れるのを防止することができ、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することができる。なお、図示していないが、ボール弁20は、自身の重みだけでなく、インク7の圧によって孔21を開放できるように付勢力を調整したバネ等によって、受部18の上側の面に当接されて、孔21を塞いだ状態を維持するように構成してもよい。
【0053】
図6は、図1、図2の例のインク再充填装置1と組み合わせてもよい、配管10の、注入口等5との接続部材22と、配管11の、供給口6との接続部材23とを一体に保持した状態で、インクカートリッジ4に着脱自在に装着される装着具24の一例を示す正面図である。図6を参照して、この例の装着具24は、前記接続部材22、23を一体に保持した状態で、図に示したように、インクカートリッジ4に装着された際に、前記インクカートリッジ4の、注入口等5、および供給口6を形成した主面25と平行に配置される板状の主体部26と、前記装着状態において、主体部26の、図において左側の端から、インクカートリッジ4の方向へ延設されて、前記インクカートリッジ4の側面27に形成された凸部28に嵌め合わされる第一側部29と、主体部26の、図において右側の端から、インクカートリッジ4の方向へ延設されて、前記インクカートリッジ4の側面30に当接される第二側部31とを備えている。
【0054】
前記装着具24を構成する主体部26、第一側部29、および第二側部31は、例えば、ナイロン、ポリアセタール(POM)、フッ素系樹脂、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)等の樹脂によって一体に形成される。接続部材22、23は、前記のうち主体部26と一体に形成してもよいし、別体に形成したものを、主体部26に固定して、一体に保持させるようにしてもよい。また、接続部材23内、または接続部材23と配管11との間には、先に説明した弁17等を設けて、逆流によるインク7の漏れを防止してもよい。
【0055】
前記装着具24は、図6に示すように、接続部材22を注入口等5に挿入して接続し、かつ、接続部材23を供給口6に挿入して接続すると共に、装着具24の第二側部31を、インクカートリッジ4の側面30に当接させた状態で、第一側部29を、凸部28に嵌め合わせることによって、先に説明したように、主体部26を、前記インクカートリッジ4の主面25と平行に配置した状態で、インクカートリッジ4に装着することができ、前記装着状態において、両接続部材22、23を、それぞれ、接続状態で固定できるため、接続の作業性、および確実性を向上することができる。そのため、インクの再充填作業を、より一層、簡略化できる上、両配管10、11の接続部材22、23を、より確実に接続して、接続部でのインクの漏れを防止して、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0056】
接続部材22は、例えば、注入口等5の開口形状が円形である場合、図に示すように、先端が、前記開口の開口径よりも僅かに小さく、かつ基端が、前記開口径よりも僅かに大きい上、装着具24が、図に示す装着状態とされたときに、前記注入口等5に、隙間を生じることなく圧入されて、インクの圧の漏れや、インクの漏れ等が生じるのを防止する働きをする略円錐状に形成するのが好ましい。また、接続部材23は、供給口6の開口形状が円形である場合、前記円の内径とほぼ一致する外径を有すると共に、供給口6の内奥部まで挿入される長さを有する筒状に形成するのが好ましい。
【0057】
インクカートリッジ4の供給口6が、インクの漏れを防止するための弁を備えている場合、前記供給口6に接続される接続部材23は、先に説明した供給口6との接続状態において、前記弁を開くことができる形状に形成するのが好ましい。インクカートリッジ4の供給口6に設けられる弁としては、一般に、バネ等の付勢力によって供給口6の出口方向に押圧されて、前記供給口6を塞ぐボール弁32が採用される。図7は、供給口6に挿入されて接続された状態で、前記ボール弁32を開く機能を有する接続部材23の一例を示す正面図である。
【0058】
図7を参照して、この例の接続部材23は、図6の例の場合と同様に、開口形状が円形である供給口6の、円の内径とほぼ一致する外径を有すると共に、装着具24をインクカートリッジ4に装着した状態において、供給口6の内奥部まで挿入されてボール弁32に当接して、前記ボール弁32を、バネ等の付勢力に抗して、インクカートリッジ4の内方へ押し戻すことによって、弁を開くことができる長さを有する筒状に形成されている。筒の先端面33は、当接したボール弁32を保持することができる凹球面状に形成されており、筒の、前記先端面33より、図において上側の位置には、筒内、および配管11と連通して、インクを、前記筒内に導入するための、インクの取込孔34が、筒の周方向に複数個、配設されている。
【0059】
図8は、前記機能を有する接続部材23の、他の例を示す正面図である。図8を参照して、この例の接続部材23は、取込孔34に代えて、筒の先端を切り欠いて、インクを筒内に導入するための切欠35とした点が、図7の例と相違している。筒の先端面33は、図7の例と同様に、当接したボール弁32を保持することができる凹球面状に形成されている。図9は、前記機能を有する接続部材23の、さらに他の例を示す正面図である。図9を参照して、この例の接続部材23は、筒の先端を、前記筒の軸線に対して傾斜する傾斜面36とした点が、図7、図8の例と相違している。インクは、傾斜面36に開いた、図示しない開口から、筒内に取り込まれる。
【0060】
図10は、ポンプ8としてチューブポンプ式の手動ポンプ37(図11参照)を、インク容器13、および余剰インク容器14を構成する筐体38に一体に組み込んだインク再充填装置1の一例を示す正面図である。また、図11は、図10のインク再充填装置1の左側面図、図12は、図10のインク再充填装置1の右側面図である。これらの図を参照して、インク容器13、余剰インク容器14、および手動ポンプ37は、この順に、下から上へ積み重ねた状態で、筐体38に一体に組み込まれていると共に、手動ポンプ37を駆動させるためのハンドル39が、前記筐体38から外方に突出させて設けられている。
【0061】
また、手動ポンプ37に繋がれたチューブの一方の端部が、その下の余剰インク容器14を貫通して、さらにその下の、インク容器13の底面近傍に達することで、インク容器13と手動ポンプ37との間を繋ぐための配管9とされていると共に、前記チューブの、もう一方の端部が、筐体38の側面から外方へ延設されて、手動ポンプ37と、図示しないインクカートリッジ4の注入口等5との間を繋ぐための配管10とされている。さらに、余剰インク容器14には、筐体38の側面から外方へ延設されたチューブが接続されて、前記インクカートリッジ4の供給口6と、余剰インク容器14との間を繋ぐための配管11とされている。
【0062】
前記各部を備えた、この例のインク再充填装置1を用いて、インクカートリッジ4の内部空間にインクを充填するためには、まず、インクカートリッジ4の注入口等5に、配管10を接続すると共に、供給口6に、配管11を接続する。次に、インク容器13に、再充填用のインクを収容した状態で、ハンドル39を、図12に実線の矢印で示す方向に回転させて、手動ポンプ37を駆動させると、前記インク容器13内のインクが、圧がかけられた状態で、配管9、10、および注入口等5を通して、インクカートリッジ4の内部空間内に注入される。
【0063】
そして、この操作を、供給口6と配管11とを通して、余剰インク容器14に排出される余剰のインク中に気泡が含まれなくなるまで継続して行うと、インクカートリッジ4の内部空間内に、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することができる。また、図の例のインク再充填装置1では、例えば、前記接続状態において、筐体38を手で押さえながら、ハンドル39を、もう一方の手で回転させて手動ポンプ37を駆動させるだけで、本発明のインク再充填方法を実施でき、その操作を簡略化することができる。また、インク再充填装置1の全体の構造を簡略化すると共に、コンパクト化して、持ち運びや収納等を容易に行えるようにもできる。そのため、複雑な内部構造を有する使用済みのインクカートリッジであっても、エンドユーザーが、自身の手で、できるだけ簡単な作業でもって、気泡の混入等を生じることなしに、十分な量のインクを再充填することが可能となる。
【0064】
また、インクカートリッジ4の供給口6を通して排出される余剰のインク7を、配管11を通して、インク容器13中のインク2と混ざり合わないように、余剰インク容器14に収容しながら、常に新しい再充填用のインク2を、インク容器13から、インクカートリッジ4に再充填することができる。その上、前記供給口6を通して排出される余剰のインク7を、外部に漏らすことなく、配管11を通して、余剰インク容器14に収容することができるため、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0065】
なお、図示していないが、図10〜図12の例のインク再充填装置1の、配管11の、供給口6との接続部には、逆流によるインクの漏れを防止するために、図3〜図5のいずれかに示す弁17等を組み込んでもよい。また、配管10の、注入口等5との接続部、および配管11の、供給口6との接続部は、図6に示す装着具24に一体に保持させた状態として、前記両接続部の、接続の作業性、および確実性を向上することもできる。さらに、インクカートリッジ4の供給口6が、インクの漏れを防止するためのボール弁32等を備えている場合には、配管11の、供給口6との接続部を、図7〜図9のいずれかに示す、接続された際に、前記ボール弁32等を開くことができる形状に形成するのが好ましい。
【0066】
また、余剰インク容器14を、筐体38内に一体化せず、別体として形成してもよい。その場合には、インク再充填装置1の筐体38を、さらにコンパクト化することができる。また図の大きさの筐体38を維持する場合は、インク室13の容量を大きくして、再充填できるインク量を増加させることもできる。また、インク室13を、筐体に対して着脱自在とすると、インク室13にインクを充填する手間を省くことができる上、充填時にインクが漏れて、作業者の手やインクカートリッジの周囲が、漏れたインクによって汚されるのを防止することもできる。
【0067】
本発明のインク再充填方法を、インクカートリッジの販売店等に併設したサービスステーション等において実施する場合には、例えば、図1、図2に示すインク再充填装置1のポンプ8として電動ポンプを採用するのが好ましい。これにより、再充填用のインク2をインクカートリッジ4の内部空間内に再充填する作業を、より迅速に、効率よく行うことができるため、単位時間あたりに処理できるインクカートリッジ4の数を増やしたり、待ち時間を短くしたりして、より多くのエンドユーザーの要望に、迅速かつ確実に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のインク再充填方法を実施するための、本発明のインク再充填装置の、実施の形態の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明のインク再充填方法を実施するための、本発明のインク再充填装置の、実施の形態の他の例を示すブロック図である。
【図3】図1、図2の例のインク再充填装置のうち、配管の、インクカートリッジの供給口との接続部に取り付けてもよい接続部材の一例の、内部の構造を拡大して示す断面図である。
【図4】接続部材の他の例の、内部の構造を拡大して示す断面図である。
【図5】接続部材のさらに他の例の、内部の構造を拡大して示す断面図である。
【図6】図1、図2の例のインク再充填装置のうち、配管の、注入口等との接続部材と、配管の、供給口との接続部材とを一体に保持してなり、インクカートリッジに着脱自在に装着される装着具の一例を示す正面図である。
【図7】インクカートリッジの供給口に接続された状態で、前記供給口に設けられた弁を開く機能を有する接続部の一例を示す正面図である。
【図8】前記機能を有する接続部の、他の例を示す正面図である。
【図9】前記機能を有する接続部の、さらに他の例を示す正面図である。
【図10】手動ポンプを、インク容器を構成する筐体に一体に組み込んだインク再充填装置の一例を示す正面図である。
【図11】図10のインク再充填装置の左側面図である。
【図12】図10のインク再充填装置の右側面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 インク再充填装置
2 インク
3 インク容器
4 インクカートリッジ
5 注入口等
6 供給口
7 インク
8 ポンプ
9 配管
10 配管
11 配管
12 仕切
13 インク容器
14 余剰インク容器
15 接続部材
16 本体
17 弁
18 受部
19 弁
20 ボール弁
21 孔
22 接続部材
23 接続部材
24 装着具
25 主面
26 主体部
27 側面
28 凸部
29 第一側部
30 側面
31 第二側部
32 ボール弁
33 先端面
34 取込孔
35 切欠
36 傾斜面
37 手動ポンプ
38 筐体
39 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが充填される内部空間と、前記内部空間内にインクを注入するための注入口と、内部空間内のインクを、インクジェットプリンタに供給するための供給口とを備えたインクカートリッジの、前記内部空間内に、インクを再充填するためのインク再充填方法であって、再充填用のインクを、圧をかけながら、注入口を通して内部空間内に注入する操作を、余剰のインクが、供給口を通して排出されると共に、排出されるインク中に気泡が含まれなくなるまで、継続して行うことを特徴とするインク再充填方法。
【請求項2】
インクカートリッジが、内部空間の少なくとも一部を大気に連通させる大気連通口を備えており、再充填用のインクを、注入口に代えて、前記大気連通口を通して、前記内部空間内に注入することを特徴とする請求項1に記載のインク再充填方法。
【請求項3】
再充填用のインクを収容するためのインク容器と、前記インク容器内のインクを、圧をかけながら、インクカートリッジの注入口または大気連通口を通して、内部空間内に注入するためのポンプと、前記インク容器とポンプとの間、およびポンプと、インクカートリッジの注入口または大気連通口との間を繋ぐための配管とを備えることを特徴とするインク再充填装置。
【請求項4】
インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを、インク容器に還流させるために、前記供給口とインク容器との間を繋ぐ配管を備えることを特徴とする請求項3に記載のインク再充填装置。
【請求項5】
インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを収容するための余剰インク容器と、前記供給口と余剰インク容器との間を繋ぐ配管とを備えることを特徴とする請求項3に記載のインク再充填装置。
【請求項6】
インクカートリッジの供給口と、インク容器または余剰インク容器との間を繋ぐための配管の、供給口との接続部に、前記接続部からの、インクの逆流による漏れを防止するための弁が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載のインク再充填装置。
【請求項7】
ポンプと、インクカートリッジの注入口または大気連通口との間を繋ぐための配管の、前記注入口との接続部と、前記インクカートリッジの供給口と、インク容器または余剰インク容器との間を繋ぐための配管の、前記供給口との接続部とが、インクカートリッジに着脱自在に装着される装着具に、一体に保持されていることを特徴とする請求項4または5に記載のインク再充填装置。
【請求項8】
インクカートリッジの供給口が、インクの漏れを防止するための弁を備えており、前記供給口と、インク容器または余剰インク容器との間を繋ぐための配管の、供給口との接続部が、前記供給口との接続状態において、前記弁を開くことができる形状に形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のインク再充填装置。
【請求項9】
ポンプが手動ポンプであって、インク容器を構成する筐体に一体に組み込まれていることを特徴とする請求項3に記載のインク再充填装置。
【請求項10】
インクカートリッジの供給口を通して排出される余剰のインクを収容するための余剰インク容器を備え、前記余剰インク容器が、筐体に一体に組み込まれていることを特徴とする請求項9に記載のインク再充填装置。
【請求項11】
インク容器と、余剰インク容器と、手動ポンプとが、下から上へ順に、積み重ねた状態で、筐体に一体に組み込まれていると共に、手動ポンプを駆動させるためのハンドルが、前記筐体から外方に突出させて設けられていることを特徴とする請求項10に記載のインク再充填装置。
【請求項12】
ポンプが、電動ポンプであることを特徴とする請求項3に記載のインク再充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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