説明

インク吐出部のクリーニング装置

【課題】インク吐出部に固着したインクを効率よく除去し、インクの吐出不良を改善することができる、インク吐出部のクリーニング装置を提供する。
【解決手段】本発明は、前記インク吐出部の表面のインクを掻き取るための第1ブレード部材と、前記インク吐出部の表面を水溶性有機溶剤によって洗浄するための洗浄液ローラと、前記水溶性有機溶剤によって洗浄された前記インク吐出部の表面を水によって洗浄するための水ローラと、この水ローラによって洗浄された前記インク吐出部の表面の液体を掻き取るための第2ブレード部材と、前記第1ブレード部材、前記洗浄液ローラ、前記水ローラおよび前記第2ブレード部材を支持したケーシングと、を備え、前記ケーシングは、前記インク吐出部の表面の長手方向に沿って移動可能であり、前記第1ブレード部材、前記洗浄液ローラ、前記水ローラおよび第2ブレード部材は、前記ケーシングの移動に伴って、この順で前記インク吐出部の表面に接触するように配置されている、インク吐出部のクリーニング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置のインク吐出部のクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置にはインクジェットカラープリンタのように、インクを記録媒体としての用紙に吐出することで用紙に画像を形成する方式の装置が存在する。このような画像形成装置では画像を形成可能な画像形成部と、画像が表面に形成される用紙を収納する用紙収納部と、画像形成部に用紙を搬送する用紙搬送部と、表面に画像が形成された用紙を排出可能な用紙排出部とを備えている。この画像形成装置では用紙収納部に収納された用紙が用紙搬送部によって画像形成部に搬送され、画像情報に基づいた画像が用紙上に形成される。そして画像形成部で用紙上に画像が形成された用紙は用紙排出部に排出される。
【0003】
ここで画像形成部は、例えば、特許文献1に示されているように用紙にインクを吐出可能なインク吐出部と、インク吐出部をクリーニングするクリーニング装置とを有している。画像形成動作時にはインク吐出部から用紙にインクが吐出され、クリーニング装置によってインクの吐出部がクリーニングされる。このクリーニング装置は弾性部材によって形成されたクリーニングブレードと、湿潤させられた多孔質弾性体とを備えている。このクリーニング装置ではクリーニングの際に多孔質弾性体によってインク吐出部の表面のインクを吸収し、その後クリーニングブレードによってインク吐出部の表面をワイピングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−361879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクリーニング装置では多孔質弾性体によってインク吐出部のインクを吸収した後、クリーニングブレードによってインク吐出部の表面をワイピング、すなわちインク吐出部の水分などを掻き取っている。しかし、多孔質弾性体によってインクを吸収しきれなかった場合には、洗浄効率が悪くなり、インク吐出部に付着し乾燥したインクによってインク吐出部の撥水性が低下する。このようにインク吐出部の撥水性が低下することによって画質が低下する。
【0006】
また、インクに含有する樹脂成分がインク吐出部に付着した状態ではインクの吐出が制御しにくくなることによっても画質が低下するおそれがある。特に長尺ラインヘッドの場合はインク付着量がシリアルヘッドに比べて多いため、インクの除去が十分でないと画質が低下するおそれが大きい。つまり、インクがインク吐出部に付着して乾燥することで、インク吐出部に設けられたインク吐出用の孔の周囲で樹脂成分が固化し、この状態でインクを吐出すると固化した樹脂成分と吐出されたインクが接触するなどして、正常なインクの吐出が妨げられてしまい画質が劣化する恐れがある。
【0007】
従って、本発明の課題は、インク吐出部に固着したインクを効率よく除去し、インクの吐出不良を改善することができる、インク吐出部のクリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)インク吐出部からインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置におけるインク吐出部のクリーニング装置であって、
前記インク吐出部の表面のインクを掻き取るための第1ブレード部材と、
前記インク吐出部の表面を水溶性有機溶剤によって洗浄するための洗浄液ローラと、
前記水溶性有機溶剤によって洗浄された前記インク吐出部の表面を水によって洗浄するための水ローラと、
この水ローラによって洗浄された前記インク吐出部の表面の液体を掻き取るための第2ブレード部材と、
前記第1ブレード部材、前記洗浄液ローラ、前記水ローラおよび前記第2ブレード部材を支持したケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記インク吐出部の表面の長手方向に沿って移動可能であり、前記第1ブレード部材、前記洗浄液ローラ、前記水ローラおよび第2ブレード部材は、前記ケーシングの移動に伴って、この順で前記インク吐出部の表面に接触するように配置されている、
ことを特徴とする、インク吐出部のクリーニング装置。
(2)前記洗浄液ローラおよび水ローラが、いずれも弾性歯車である、(1)記載のインク吐出部のクリーニング装置。
(3)前記水溶性有機溶剤は溶解度パラメータ(SP値)が7〜14である、(1)または(2)に記載のインク吐出部のクリーニング装置。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のクリーニング装置を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄工程前にインク吐出部の表面のインクを掻き取り、さらにインク吐出部の表面を水溶性有機溶剤によって洗浄することでインク吐出部で固化したインクを効率よく除去できるため、インクの吐出不良を改善することができる。また、インク吐出部の表面に残った水溶性有機溶剤を水によって洗浄除去することによって、インク吐出部表面の撥水性を回復させ、画質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略正面図である。
【図2】昇降装置による搬送ベルトの上下方向への移動を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るクリーニング装置の断面図である。
【図4】図3のクリーニング装置の平面図である。
【図5】クリーニング装置の移動機構の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るクリーニング装置の断面図である。
【図7】図6のクリーニング装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
(画像形成装置)
本発明に係るカラー画像形成装置としてのインクジェットプリンタ1を図1に示す。図1はインクジェットプリンタ1の構成を模式的に示す概略正面図である。このインクジェットプリンタ1は、図示しない外部のコンピュータなどに接続されており、このコンピュータから送信された画像情報に基づいて画像形成可能な装置であって、画像形成部2と、用紙収納部3と、用紙搬送部4と、昇降装置7と、排出部5とを備えている。
【0012】
画像形成部2は画像情報に基づいて画像を形成する部分であって、インクジェットヘッド21を備えている。インクジェットヘッド21は後述する用紙搬送部4の用紙搬送ベルト42の上側に4つ並べて配置されており、用紙に画像情報に基づいてインクを吐出する部分である。また、各インクジェットヘッド21はそれぞれ異なる色のインクを収納しており、収納しているインクを吐出可能なインク吐出部211(図3参照)を有している。さらにインクジェットヘッド21は一方向(紙面に直交する方向)に延びた部材であって、略直方体状の部材である。インク吐出部211は、用紙と対向するように配置されたインク吐出面212(図3参照)を有しており、並べて配置された複数のインク吐出用の孔が設けられている。インク吐出面212は、前後方向に長い長方形の形状を有している。なお、ここでいう「前後方向」とは図1において紙面に垂直な方向を意味しており、図1の紙面に垂直な方向において手前側を「前方」、奥側を「後方」とする。
【0013】
用紙収納部3は、画像を形成する用紙を収納可能な部分であって、インクジェットプリンタ1の下部に配置されている。また、用紙収納部3は用紙供給側の先端部上方に、用紙搬送部4に用紙を供給するための用紙供給ローラ31を有している。
【0014】
用紙搬送部4は用紙収納部3の用紙を画像形成部2に搬送し、画像形成部2で表面に画像が形成された用紙を排出部5に搬送するための部分である。この用紙搬送部4は、用紙を搬送するための複数のローラ41と、搬送ベルト42とを備えている。搬送ベルト42は、インクジェットヘッド21の下側に配置されており、両端に搬送ベルト42を循環させるためのローラ44,45が配置された無端ベルトである。
【0015】
昇降装置7は、用紙搬送部4の搬送ベルト42の下方に配置されており、搬送ベルト42を上下に昇降させるための装置である。昇降装置7は、一対の偏心カム71,72を有している。一対の偏心カム71,72のうち図1において左側に位置する第1偏心カム71は、軸部73を中心に回転可能に設けられており、図示しないモータによって回転駆動される。第1偏心カム71には複数のベアリング74が設けられており、第1偏心カム71は、ベアリング74を介してベルト支持部材43を支持している。なお、図1では、ベアリング74の1つのみに符号を付して他は省略している。図1において右側に位置する第2偏心カム72は、第1偏心カム71と同様の構造であり、第1偏心カム71と図6における左右方向に対象な形状を有している。
【0016】
図1は搬送ベルト42が上昇した状態を示しており、この状態から、一対の偏心カム71,72が内側向きに回転することにより、搬送ベルト42が下降する(図2参照)。昇降装置7は画像形成部2によって用紙上に画像を形成する際には、搬送ベルト42を図1に示す上昇状態として、インクジェットヘッド21と用紙との間に、印刷に好適な間隙(本実施例では約1mm)を設ける。また、昇降装置7は搬送ベルト42上で発生したジャムの処理を行う際や、後述するクリーニング装置22によるインクジェットヘッド21の洗浄を行う際には、搬送ベルト42を図2に示す下降状態として、インクジェットヘッド21と用紙との間の間隙を広げる。
【0017】
排出部5は画像形成部2で画像が形成された用紙を排出するための部分であって、インクジェットプリンタ1の上部に配置されている。排出部5は複数のローラ51を備えており、画像形成部2で画像が形成された用紙は用紙搬送部4の搬送ベルト42および排出部5のローラ51によって搬送され、排出口52から機外へ排出される。
【0018】
(クリーニング装置の構成)
図3及び図4はクリーニング装置22の全体概略図である。図3はクリーニング装置22の断面図であり、図4はその平面図である。このクリーニング装置22はインク吐出面212を洗浄するための装置であって、インクジェットヘッド21の長手方向(図3および図5の矢印A1参照)に移動可能となっている。なお、画像形成時にはインク吐出を阻害しないようにインクジェットヘッド21の長手方向端部より外側に退避している。クリーニング装置22は各インクジェットヘッド21に対応して設けられており、廃インクタンク226kに接続されている。さらにクリーニング装置22は移動機構8(図5参照)によってインク吐出面212に沿って矢印A1の方向に移動される部分であって、第1ブレード部材221と、洗浄液ローラ222と、水ローラ223と、第2ブレード部材224と、規制板225a、225bと、ケーシング226とを備えている。
【0019】
第1ブレード部材221はインク吐出面212のインクを掻き取るための部材であって、一方向(紙面に直交する方向すなわちインク吐出面212の短手方向)に延びる板状の部材である。また、第1ブレード部材221は紙面に直交する方向の長さがインク吐出面212の短手方向の長さと略同一である。また第1ブレード部材221はケーシング226の移動方向先端側に配置されており、上側先端がインク吐出面212よりも少し高い位置に配置されている。第1ブレード部材221は弾性変形可能な素材、例えばEPDM、フッ素ゴムなどによって形成されており、インク吐出面212の短手方向に沿うように配置されている。
【0020】
洗浄液ローラ222はインク吐出面212を後述する水溶性有機溶剤によって洗浄するための部材であって、第1ブレード部材221に隣接して配置されている。つまり、ケーシング226の移動方向に関して第1ブレード部材221の次に配置されている。洗浄液ローラ222は紙面に直交する方向の長さがインク吐出面212の短手方向の長さと略同一である。また、洗浄液ローラ222は洗浄液ローラ回転軸222aと、第1多孔質部材222bとを有している。洗浄液ローラ回転軸222aは中空状の軸部材であって、図1の紙面に直交する方向に延びる部材である。洗浄液ローラ回転軸222aは内部に水溶性有機溶剤が収納可能であり、水溶性有機溶剤を収容した洗浄液タンク222dに接続されている。また、洗浄液ローラ回転軸222aは軸方向に延びる洗浄液通過用スリット222cを有しており(回転軸の両端部は除く)、内部の洗浄液を第2多孔質部材222bに供給可能である。なお、洗浄液通過用スリット222cに代えて多数の細孔を洗浄液ローラ回転軸222aに設けても良い。また、洗浄液ローラ回転軸222aはケーシング226に固定されている。第1多孔質部材222bは洗浄液ローラ回転軸222aの周囲に配置された多孔質部材、例えばスポンジである。また第2多孔質部材222bは該部材中で最も高さ位置が高い位置が第1ブレード部材221の先端の高さ位置とほぼ同じ位置に位置するように配置されている。第1多孔質部材222bは洗浄液ローラ回転軸222aに対して回転可能に設けられており、クリーニング装置22が移動して第1多孔質部材222bがインク吐出面212に接触することにより、図1において反時計回りに回転する。
なお、洗浄液通過用スリット222cに代えて、複数の貫通孔を用いてもよい。
【0021】
水ローラ223は、水溶性有機溶剤によって洗浄されたインク吐出面212を水によって洗浄するための部材であって、ケーシング226の移動方向に沿って洗浄液ローラ222の次に配置されている。水ローラ223は紙面に直交する方向の長さがインク吐出面212の短手方向の長さと略同一である。また、水ローラ223は水ローラ回転軸223aと、第2多孔質部材223bとを有している。水ローラ回転軸223aは中空状の軸部材であって、内部に水を収納可能である。また水ローラ回転軸223aは水通過用スリット223cを有しており、内部の水を第1多孔質部材223bに供給可能である。さらに、水ローラ回転軸223aは紙面に直交する方向に延びる部材であって、ケーシング226に固定されており、図4に示す水タンク223dに接続されている。第2多孔質部材223bは水ローラ回転軸223aの周囲に配置された多孔質の部材、例えばスポンジであって、水ローラ回転軸223aに対して回転可能に設けられている。また第2多孔質部材223bは該部材中で最も高さ位置が高い位置と、第1ブレード部材221の上側先端の高さ位置とがほぼ同じ位置に位置するように配置されており、クリーニング装置22が移動して第2多孔質部材223bがインク吐出面212に接触することにより、図3において反時計回りに回転する。
なお、水通過用スリット223cに代えて、等間隔に配置された複数の貫通孔であってもよい。
【0022】
第2ブレード部材224はインク吐出面212の液体、例えばインクや水、洗浄液などを掻き取るための部材であって、一方向(紙面に直交する方向)に延びる板状の部材である。第2ブレード部材224は紙面に直交する方向の長さがインク吐出面212の短手方向の長さと略同一である。また、第2ブレード部材224はケーシング226において移動方向後端側に配置されており、上側先端がインク吐出面212よりも少し高い位置に配置されている。さらに第2ブレード部材224は弾性変形可能な素材、例えば、EPDM、フッ素ゴムなどによって形成されている。
【0023】
規制板225aは洗浄液ローラ222の第1多孔質部材222bの一部に、規制板225bは水ローラ223の第2多孔質部材223bの一部にそれぞれ接触している。第1多孔質部材222bおよび第2多孔質部材223bは規制板225aおよび225bと接触することによって圧縮され、これにより、第1多孔質部材222bおよび第2多孔質部材223bに吸収された液体が絞り出される。従って、第1多孔質部材222bおよび第2多孔質部材223bのうちインク吐出面212に接触した部分が、第1多孔質部材222bおよび第2多孔質部材223bが回転することによって移動して規制板225aおよび225bに接触することにより、インクを含む水や洗浄液が第1多孔質部材222bおよび第2多孔質部材223bから絞り出される。また、規制板225aおよび225bは図1に示すように断面台形の柱状部材であって、上側の面積が下側の面積よりも小さくなっている。
【0024】
ケーシング226は第1ブレード部材221と、洗浄液ローラ222と、水ローラ223と、第2ブレード部材224と、規制板225a、225bを支持する部材であって、第1ブレード部材221や洗浄液ローラ222などが配置される配置部226aと、廃液を集める廃液だまり部226bとを有している。配置部226aは底面226cと、第1ブレード部材側壁面226dと、第2ブレード部材側壁面226eと、第1側壁226fと、第2側壁226gとを有している。底面226cは第1ブレード部材221、第2ブレード部材224、洗浄液ローラ222及び水ローラ223の下方に配置された板状の部分であって、第1ブレード部材221、洗浄液ローラ222、水ローラ223、第2ブレード部材224に対応した位置にそれぞれ液体が通過可能な孔h1〜h4を有している。
【0025】
第1ブレード部材側壁面226dは第1ブレード部材221の移動方向前側、すなわち図1の右側に配置されており、第1ブレード部材221を固定する為の第1固定部材226iが配置されている。この第1固定部材226iは上方高さ位置が第1ブレード部材側壁面226dの上方高さ位置よりも低く、第1ブレード部材221で掻き取ったインクがケーシング226の外にこぼれにくくなっている。第2ブレード部材側壁面226eは第2ブレード部材224の移動方向後側、すなわち図1の左側に配置されており、第2ブレード部材224を固定する為の第2固定部材226jが配置されている。この第2固定部材226jは上方高さ位置が第2ブレード部材側壁面226eの上方高さ位置よりも低く、第2ブレード部材224で掻き取ったインクなどがケーシング226の外にこぼれにくくなっている。
【0026】
第1側壁226fは第1ブレード部材側壁面226dの一端と第2ブレード部材側壁面226eの一端とを結ぶように配置されている部分であって、洗浄液タンク222dから洗浄液を洗浄液ローラ222に供給するためのパイプが接続可能な孔、および水タンク223dから水を水ローラ223に供給するためのパイプが接続可能な孔が設けられている。また第2側壁226gは第1側壁226fに対向して設けられた部分であって、第1側壁226fとともに水ローラ回転軸223aと洗浄液ローラ回転軸222aとを支持している。廃液だまり部226bは配置部226aの下方に設けられた部分であって、底面226cに設けられた孔h1〜h4を通過した水やインク、洗浄液などを一時的に収納する部分である。また廃液だまり部226bは廃インクタンク226kに接続されている。なお、後述の移動支持部材85に水タンク223d、洗浄液タンク222dおよび廃インクタンク226kが、クリーニング装置22が配置されている面とは反対の面に着脱自在に取り付けられている。
【0027】
図5に示す移動機構8はクリーニング装置22をインクジェットヘッド21の長手方向に移動させるための機構である。なお、図5は移動機構8の構成を模式的に示す概略平面図である。移動機構8は一対のレール部材81、82と、一対のスライダー83、84と、移動支持部材85と、複数のプーリー86a〜86eと、駆動モータ87と、これらの部材を支持するフレーム体(図示せず)とを備える。一対のレール部材81、82は前後方向に延びた細長い形状を有しており、左右方向に距離を隔てて互いに平行に配置されている。一対のスライダー83、84はそれぞれレール部材81、82に沿ってスライド移動可能に設けられている。
【0028】
移動支持部材85は板材を屈曲して形成されており、一対のレール部材81、82間に亘って設けられている。移動支持部材85は一対のスライダー83、84に固定されており、スライダー83、84がレール部材81、82に沿って移動することによって前後(矢印A1またはA2方向)に移動する。移動支持部材85の上面の前側部分には、複数のクリーニング装置22が固定されている。また、クリーニング装置22の後方にはインクジェットヘッド21のインク吐出面212に対応した複数のキャップ部材89が設けられている。なお、図5ではキャップ部材89の1つにのみ符号を付して他は省略している。キャップ部材89は待機状態においてインク吐出面212を覆って蓋をするための部材であり、これによりインクの乾燥や劣化を防止することができる。
【0029】
複数のプーリー86a〜86eには第1プーリー86aから第5プーリー86eまでの5つのプーリーがあり、それぞれ回転可能に設けられている。第1プーリー86aおよび第2プーリー86bはレール部材81を間に挟んでレール部材81の前方および後方に配置されている。第1プーリー86aおよび第2プーリー86bには一端がスライダー83の前端に固定され、他端がスライダー83の後端に固定されたベルト88aが掛け渡されている。第3プーリー86cおよび第4プーリー86dはレール部材82を間に挟んでレール部材82の前方および後方に配置されている。第3プーリー86cおよび第4プーリー86dには一端がスライダー84の前端に固定され他端がスライダー84の後端に固定されたベルト88bが掛け渡されている。また、第3プーリー86cは駆動モータ87によって回転駆動される。第5プーリー86eは駆動モータ87によって回転駆動される図示しないギアを介して駆動モータ87からの回転を伝達されることにより、第3プーリー86cと逆方向に回転する。第5プーリー86eと第1プーリー86aとには無端ベルト88cが掛け渡されている。
【0030】
この移動機構8では第3プーリー86cが駆動モータ87によって図5における反時計回りに回転駆動されると、ベルト88bが駆動され、スライダー84が前方へ移動する。また、これと同時に第5プーリー86eが時計回りに駆動されることにより、無端ベルト88cおよびベルト88aが駆動され、スライダー83が前方へ移動する。これにより移動支持部材85と共にクリーニング装置22が前方へ移動する(矢印A1参照)。なお、駆動モータ87が上記とは逆方向に駆動されると、移動支持部材85およびクリーニング装置22は後方(矢印A2参照)へ移動する。
【0031】
(インク)
インクジェットプリンタ1に使用するインクには、従来より使用されるインクジェットプリンタ用インクがいずれも使用可能である。このインクは、着色剤(主として顔料)、樹脂、溶剤などを主要成分とし、必要に応じて、脱水剤や酸化防止剤などの各種添加剤をも含有したものである。前記樹脂としては特に制限されないが、例えばポリスチレン、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミドなどの重合体および共重合体、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、これら樹脂の溶解度パラメータ(以下、SP値という)は一般に7〜14の範囲であるが、これに限定されるものではない。樹脂は、一般にインク総量に対して1〜20重量%程度含有される。
溶剤としては、通常、水単独、または水に水溶性有機溶剤を添加した水性媒体が使用される。インクには、さらに界面活性剤や防腐防カビ剤などが含有されていてもよい。
【0032】
(水溶性有機溶剤)
洗浄液として使用する水溶性有機溶剤としては、樹脂との相溶性が良いものが好ましく、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、n−ヘキサノール、1,3−ブタンジオール、へキシレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ピロリドン、グリセリンなどのアルコール系、エーテル系などが挙げられる。
【0033】
特にインクに含有される樹脂のSP値に近似したSP値を有する水溶性有機溶剤を使用するのが、固化した樹脂を溶解させるうえで好ましい。具体的には、インクにはSP値が7〜14の樹脂が一般に使用されるので、水溶性有機溶剤はSP値が14以下であるのが好ましく、12以下であるのがより好ましい。また、水溶性有機溶剤は、樹脂とのSP値の差が小さいほど良く溶解するため、樹脂と水溶性有機溶剤のSP値の差が0.5以内であることが好ましい。好ましい水溶性有機溶剤を例示すると、例えばエタノール(12.4)、イソプロピルアルコール(11.0)、n−ヘキサノール(10.2)、1,3−ブタンジオール(13.9)、へキシレングリコール(11.8)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(8.5)、2−ピロリドン(13.8)などが挙げられる(括弧内の数値はそれぞれの有機溶剤のSP値である)。
【0034】
このような水溶性有機溶剤である洗浄剤を用いれば、インクジェットヘッド21のインク吐出部211に固着したインクの樹脂成分を除去することができるため、インクの吐出不良を改善することができる。
【0035】
(クリーニング方法)
インクジェットヘッド21のインク吐出部211を洗浄する際には、第1ブレード部材221がインク吐出面212の長手方向の一端部に接触している状態から、クリーニング装置22が移動機構8によってインク吐出面212の長手方向に移動する。なお、洗浄動作の開始前において、クリーニング装置22はインクジェットヘッド21の後方に待避しており(図5参照)、洗浄動作の開始により前方へ移動する。これによりケーシング226がインク吐出面212の長手方向の他端部まで移動させられる。この移動によって第1ブレード部材221、洗浄液ローラ222、水ローラ223、第2ブレード部材224の順にインク吐出部211に接触していく。
【0036】
このとき第1ブレード部材221によってインク吐出部211のインクが掻き取られる(インク掻き取り工程)。なお、第1ブレード部材221によって掻き取られたインクは孔h1を通って廃液だまり部226bへ入り、その後パイプを通って廃インクタンク226kで回収される。
【0037】
次に、第1ブレード部材221によってインクが掻き取られた部分に洗浄ローラ222が摺接し、この部分が水溶性有機溶剤によって洗浄される(第1の洗浄工程)。洗浄液は洗浄液タンク226kからパイプ、洗浄液ローラ回転軸222aの中空部分および洗浄液通過用スリット222cを経由して洗浄ローラ222に供給される。洗浄ローラ222の第2多孔質部材222bのうちインク吐出面212と接触した部分は回転することによって移動して規制板225aに接触し、これによりインク吐出面212から回収されたインクを含む洗浄液が第1多孔質部材222bから絞り出される。絞り出された洗浄液は孔h2を通って廃液だまり部226bへ入り、その後パイプを通って廃インクタンク226kで回収される。
【0038】
さらに水溶性有機溶剤(洗浄液)によって洗浄された部分に水ローラ223が摺接し、この部分が水によって洗浄される(第2の洗浄工程)。水は水タンク223dからパイプ、水ローラ回転軸222aの中空部分および水通過用スリット223cを経由して水ローラ223に供給される。水ローラ223の第2多孔質部材223bのうちインク吐出面212と接触した部分は回転することによって移動して規制板225bに接触する。これによりインク吐出面212から回収されたインクを含む水が第2多孔質部材223bから絞り出される。絞り出された洗浄液は孔h3を通って廃液だまり部226bへ入り、その後パイプを通って廃インクタンク226kで回収される。
【0039】
その後、第2ブレード部材224によってインク吐出部211のインク吐出面212のインク、洗浄液および水が掻き取られる(液体掻き取り工程)。第2ブレード部材224によって掻き取られた前記液体は、孔h4を通って廃液だまり部226bへ入り、その後パイプを通って廃インクタンク226kで回収される。
【0040】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態を説明するが、第1の実施形態と重複する説明は省略することがある。
図6及び図7は第2実施形態に係るクリーニング装置(以下、第2クリーニング装置6とする)の全体概略図である。図4は第2クリーニング装置6の断面図であり、図5はその平面図である。この第2クリーニング装置6はインク吐出面212を洗浄するための装置であって、第2クリーニング装置6の幅W2(図5の紙面に垂直な方向の長さ、図4参照)はインク吐出面212の短手方向の幅よりも広い。また、第2クリーニング装置6は各インクジェットヘッド21に対応して設けられており、廃インクタンク66nに接続されている。さらに第2クリーニング装置6は第1実施形態と同様の移動機構によってインク吐出面212に沿って図5の矢印A1の方向に移動される部分であって、第3ブレード部材61と、第1弾性歯車62と、第2弾性歯車63と、第4ブレード部材64と、規制板65a、65bと、第2ケーシング66とを備えている。
【0041】
第3ブレード部材61はインク吐出面212のインクを掻き取るための部材であって、一方向(紙面に直交する方向)に延びる板状の部材である。第3ブレード部材61は紙面に直交する方向の長さがインク吐出面212の短手方向の長さと略同一である。また第3ブレード部材61は第2ケーシング66の一端に配置されており、上側先端がインク吐出面212よりも少し高い位置に配置されている。さらに第3ブレード部材61は弾性変形可能な素材、例えばEPDM、フッ素ゴムなどによって形成されている。
【0042】
第1弾性歯車62はインク吐出面212を水溶性有機溶剤によって洗浄するための部材であって、第2ケーシング66の移動方向A1に沿って第3ブレード部材61の次に配置されている。第1弾性歯車62は紙面に直交する方向の長さがインク吐出面212の短手方向の長さと略同一である。また、第1弾性歯車62は第1回転軸62aと、第1弾性体部材62bとを有している。第1回転軸62aは紙面に直交する方向に延びる部材であり、第2ケーシング66に固定されている。第1弾性体部材62bは第1回転軸62aの周囲に配置された筒状部62cと、筒状部62cから放射状に配置された羽根部62dとを有している。羽根部62dにはスポンジなどの多孔質部材が設けられており、洗浄液を吸収可能となっている。また第1弾性体部材62bは該部材中で最も高さ位置が高い位置が第3ブレード部材61の上側先端の高さ位置とほぼ同じ位置に位置するように配置されている。第1弾性体部材62bは第1回転軸62aに対して回転可能に設けられており、第2クリーニング装置6が移動して羽根部62dがインク吐出面212に接触することにより、反時計回りに回転する。
【0043】
第2弾性歯車63はインク吐出面212を水によって洗浄するための部材であって、第2ケーシング66の移動方向A1に沿って第1弾性歯車62の次に配置されている。第2弾性歯車63は紙面に直交する方向の長さがインク吐出面212の短手方向の長さと略同一である。また、第2弾性歯車63は、第2回転軸63aと、第2弾性体部材63bとを有している。第2回転軸63aは、紙面に直交する方向に延びる部材であり、第2ケーシング66に固定されている。第2弾性体部材63bは第2回転軸63aの周囲に配置された筒状部63cと、筒状部63cから放射状に配置された羽根部63dとを有している。羽根部63dにはスポンジなどの多孔質部材が設けられており、水を吸収可能である。また第2弾性体部材63bは該部材中で最も高さ位置が高い位置が第4ブレード部材64の上側先端の高さ位置とほぼ同じ位置に位置するように配置されている。第2弾性体部材63bは第2回転軸63aに対して回転可能に設けられており、第2クリーニング装置6が移動して羽根部63dがインク吐出面212に接触することにより、反時計回りに回転する。
【0044】
第4ブレード部材64はインク吐出面212の液体、例えばインク、水および洗浄液などを掻き取るための部材であって、一方向(紙面に直交する方向)に延びる板状の部材である。また第4ブレード部材64は、第2ケーシング66の第3ブレード部材61が配置されている側端部の逆側端部に配置されており、上側先端がインク吐出面212よりも少し高い位置に配置されている。さらに第4ブレード部材64は弾性変形可能な素材、例えばEPDM、フッ素ゴムなどによって形成されている。
【0045】
規制板65a、65bは第2ケーシング66の底面66cから上側に突出する板状の部分であり、第1及び第2弾性歯車62、63の羽根部62d、63dに接触するように設けられている。規制板65a、65bは第1弾性歯車62、第2弾性歯車63が回転する際に羽根部62d、63dに接触し、さらに羽根部62d、63dを押圧することによって、羽根部62d、63dに吸収されたインク、水および洗浄液を絞り出すことができる。
【0046】
第2ケーシング66は第3ブレード部材61と、第1弾性歯車62と、第2弾性歯車63と、第4ブレード部材64と、規制板65a、65bとを支持する部材であって、第3ブレード部材61や第1弾性歯車62などが配置される配置部66aと、廃液を集める廃液だまり部66bとを有している。配置部66aは底面66cと、第3ブレード部材側壁面66dと、第4ブレード部材側壁面66eと、第1側壁66fと、第2側壁66gとを有している。
【0047】
底面66cは第3及び第4ブレード部材61、64や第1及び第2弾性歯車62、63の下方に配置された板状の部分であって、第3ブレード部材61、第1弾性歯車62、第2弾性歯車63および第4ブレード部材64に対応した位置にそれぞれ液体が通過可能な孔h5〜h8を有している。さらに底面66cには第3ブレード部材61が配置されているスペースと第1弾性歯車62が配置されているスペースと第2弾性歯車63が配置されているスペースと第4ブレード部材64が配置されているスペースとを仕切る仕切突出部66iが形成されている。
【0048】
第3ブレード部材側壁面66dは第3ブレード部材61の移動方向前側、すなわち図6の右側に配置されており、第3ブレード部材61を固定する為の第3固定部材66jが配置されている。この第3固定部材66jは上方高さ位置が第3ブレード部材側壁面66dの上方高さ位置よりも低く、第3ブレード部材61で掻き取ったインクが第2ケーシング66の外にこぼれにくくなっている。第4ブレード部材側壁面66eは第4ブレード部材64の移動方向後側、すなわち図6の左側に配置されており、第4ブレード部材64を固定する為の第4固定部材66kが配置されている。この第4固定部材66kは上方高さ位置が第4ブレード部材側壁面66eの上方高さ位置よりも低く、第4ブレード部材64で掻き取ったインクが第2ケーシング66の外にこぼれにくくなっている。
【0049】
第1側壁66fは第3ブレード部材側壁面66dの一端と第4ブレード部材側壁面66eの一端とを結ぶように配置されている部分であって、洗浄液タンク66qから水溶性有機溶剤を第1弾性歯車62に供給するためのパイプが接続可能な孔91、および水タンク66pから水を第2弾性歯車63に供給するためのパイプが接続可能な孔92が設けられている。第2側壁66gは第1側壁66fに対向して設けられた部分であって、第1側壁66fとともに第1及び第2弾性歯車62、63を支持している。廃液だまり部66bは配置部66aの下方に設けられた部分であって、底面66cに設けられた孔h5からh8を通過した水、インクおよび洗浄液などを一時的に収納する部分である。また廃液だまり部66bは廃インクタンク66nに接続されている。
【0050】
(クリーニング方法)
インクジェットヘッド21のインク吐出部211の洗浄の際には第3ブレード部材61がインク吐出部211の長手方向の一端に接触している状態からインク吐出部211の長手方向の他端まで第2ケーシング66が矢印A1方向に移動させられる。この移動によって第3ブレード部材61、第1弾性歯車62、第2弾性歯車63、第4ブレード部材64の順にインク吐出部211に接触していく。
【0051】
このとき第3ブレード部材61によってインク吐出部211のインクが掻き取られる(インク掻き取り工程)。第3ブレード部材61によって掻き取られたインクは、孔h5を通って廃液だまり部66bへ入り、その後パイプを通って廃インクタンク66nで回収される。
【0052】
そして、第3ブレード部材61によってインクが掻き取られた部分に第1弾性歯車62が摺接し、この部分が水溶性有機溶剤によって洗浄される(第1の洗浄工程)。ここでは孔91から供給された洗浄液が第1弾性歯車62によって吸収され、第1弾性歯車62の洗浄液を含む部分が回転移動してインク吐出面212に接触することにより、インク吐出面212が洗浄される。インク吐出面212を洗浄することでインクを含むようになった水溶性有機溶剤は、第1弾性歯車62がさらに回転して規制板65aに接触することで第1弾性歯車62から絞り出され、孔h6を通って廃液だまり部66bへ入り、その後パイプを通って廃インクタンク66nで回収される。なお、孔91から過剰に供給された水溶性有機溶剤も孔h6から排出されるが、水溶性有機溶剤の無駄を低減するために、貯留される水溶性有機溶剤の液面位置を検出するセンサを設け、該センサによって検出された液面位置によって水溶性有機溶剤の供給量を制御してもよい。
【0053】
次に、水溶性有機溶剤によって洗浄された部分に第2弾性歯車63が摺接し、この部分が水によって洗浄される(第2の洗浄工程)。ここでは孔92から供給された水が第2弾性歯車63に吸収され、第2弾性歯車63の水を含む部分が回転移動してインク吐出面212に接触することでインク吐出面212が洗浄される。インク吐出面212を洗浄することでインクを含むようになった水は、第2弾性歯車63がさらに回転して規制板65bに接触することで第2弾性歯車63から絞り出され、孔h7を通って廃液だまり部66bへ入り、その後パイプを通って廃インクタンク66nで回収される。なお、孔92から過剰に供給された水も孔h7から排出されるが、水の無駄を低減するために、貯留される水の水位を検出するセンサを設け、該センサによって検出された水位によって水の供給量を制御してもよい。
【0054】
その後、第4ブレード部材64によってインク吐出部211のインク吐出面212のインク、洗浄液および水が掻き取られる(液体掻き取り工程)。第4ブレード部材64によって掻き取られた液体は孔h8を通って排出される。その他は第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0055】
(他の実施形態)
(a)クリーニング装置を移動させる移動機構は上記の実施形態のものに限られず、上記と異なる機構のものが利用されてもよい。また、クリーニング装置を固定し、インクジェットヘッドを移動させる移動機構のものであってもよい。
(b)上記の実施形態では用紙上に画像が形成されているが、用紙以外の画像形成対象物に画像を形成する画像形成装置において上記のクリーニング装置が適用されてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
(顔料分散液の作成)
顔料として、C.I.ピグメントレッド122を30重量%、スチレン−アクリル系樹脂(ジョンソン社製の「ジョンクリル61」)を30重量%、グリセリンを10重量%、イオン交換水を35重量%の割合で混合し、0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ボールミルにて平均粒子径が100nmになるまで分散させて顔料分散液を作成した。なお、使用した上記スチレン−アクリル系樹脂のSP値は8〜12である。また、平均粒子径の測定は、顔料分散液をイオン交換水にて5倍に希釈した後、動的光散乱式粒径分布測定装置「LB−550」(HORIBA社製)を用いて行った。
【0058】
(インクの作成)
次に、界面活性剤であるアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物(日信化学工業社製の「オルフィンE1010」)を0.5重量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを5重量%、2−ピロリドンを5重量%、上記顔料分散液を20重量%、水を69.5重量%の割合で混合し、充分に攪拌した後に、孔径5μmのフィルターを使用してろ過し、インクを作成した。
【0059】
(クリーニング)
25℃、50%RH環境下において、インクが充填されたインクジェットヘッドのインク吐出面を空気中にさらした状態で1週間放置し、その後、水溶性有機溶剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値8.5)を用いて、第一の実施形態のクリーニング方法によってインク吐出面のクリーニングを行った。クリーニング後、インク吐出面を加圧してパージし、前記クリーニング方法と同様の方法によって再度クリーニングを行った。
【0060】
[実施例2]
洗浄剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテルに代えて2−ピロリドン(SP値13.8)を用いた他は、実施例1と同様にしてクリーニングを行った。
【0061】
[実施例3]
洗浄剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテルに代えてグリセリン(SP値18.1)を用いた他は、実施例1と同様にしてクリーニングを行った。
【0062】
[実施例4,5]
顔料としてC.I.ピグメントレッド122を30重量%、アクリル系樹脂(東亜合成社製の「アクリルポリマーT540」)を30重量%、グリセリンを10重量%、イオン交換水を35重量%の割合で混合して顔料分散液を作成した他は、実施例1と同様にしてインクを作成した。ついで、洗浄用の水溶性有機溶剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテルおよび2−ピロリドンをそれぞれ用いた他は、実施例1と同様にしてクリーニングを行った。なお、使用した上記アクリル系樹脂のSP値は8〜12である。
【0063】
[実施例6]
洗浄液としてグリセリン(SP値18.1)を用いた他は、実施例4,5と同様にしてクリーニングを行った。
【0064】
[比較例1]
洗浄液として水(SP値23.4)のみを用いた他は、実施例1と同様にしてクリーニングを行った。
[比較例2]
洗浄液として水(SP値23.4)のみを用いた他は、実施例4,5と同様にしてクリーニングを行った。
【0065】
(評価試験および評価方法)
前記クリーニングを終えた後、インクジェットヘッドの駆動周波数を20kHz、ノズル吐出面と記録媒体間の距離を1.0mm、記録媒体の搬送速度を847mm/secにて、光沢紙に1ドット1スペースの縦線を印画し、インクの不吐出の確認を行った。さらに線幅を測定し、線幅誤差が±20未満であるか否かについて確認を行った。これらの結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、比較例1および比較例2はいずれもインクの不吐出が生じていた。これに対して、実施例1〜4はいずれもインクの不吐出が生じていなかった。
【符号の説明】
【0068】
1 インクジェットプリンタ(画像形成装置)
2 画像形成部
3 用紙収納部
4 用紙搬送部
7 昇降装置
5 排出部
22 クリーニング装置
21 インクジェットヘッド
211 インク吐出部
212 インク吐出面
221 第1ブレード部材
222 洗浄液ローラ
223 水ローラ
224 第2ブレード部材
6 第2クリーニング装置
61 第3ブレード部材
62 第1弾性歯車
63 第2弾性歯車
64 第4ブレード部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク吐出部からインクを吐出させて画像を形成する画像形成装置におけるインク吐出部のクリーニング装置であって、
前記インク吐出部の表面のインクを掻き取るための第1ブレード部材と、
前記インク吐出部の表面を水溶性有機溶剤によって洗浄するための洗浄液ローラと、
前記水溶性有機溶剤によって洗浄された前記インク吐出部の表面を水によって洗浄するための水ローラと、
この水ローラによって洗浄された前記インク吐出部の表面の液体を掻き取るための第2ブレード部材と、
前記第1ブレード部材、前記洗浄液ローラ、前記水ローラおよび前記第2ブレード部材を支持したケーシングと、
を備え、
前記ケーシングは、前記インク吐出部の表面の長手方向に沿って移動可能であり、前記第1ブレード部材、前記洗浄液ローラ、前記水ローラおよび第2ブレード部材は、前記ケーシングの移動に伴って、この順で前記インク吐出部の表面に接触するように配置されている、
ことを特徴とする、インク吐出部のクリーニング装置。
【請求項2】
前記洗浄液ローラおよび水ローラが、いずれも弾性歯車である、請求項1記載のインク吐出部のクリーニング装置。
【請求項3】
前記水溶性有機溶剤は溶解度パラメータ(SP値)が7〜14である、請求項1または2に記載のインク吐出部のクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のクリーニング装置を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−153152(P2012−153152A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118656(P2012−118656)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2008−42635(P2008−42635)の分割
【原出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】