説明

インク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット印画物

【課題】インク組成物を扱う際の作業性及びインク組成物の硬化性に優れ、かつ形成された画像の柔軟性及び基材への密着性が良好な活性光エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物を提供する。
【解決手段】(成分a)下記一般式(A)で表される単官能モノマー、(成分b)多官能モノマー、及び(成分c)チオール基を2〜4つ有する分子量250以上1000以下のチオール化合物を含有し、インク組成物中の(成分b)の含有量が50質量%以上90質量%以下である活性光エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット印画物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。これらのうち、インクジェット方式は、安価な装置で実施可能であり、且つ、必要とされる画像部のみにインクを射出して記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。
【0003】
インクジェット方式によれば、普通紙のみならずプラスチックシート、金属板など非吸水性の記録媒体にも印字可能であるが、印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっており、印字後の液滴の乾燥、硬化に要する時間が、印画物の生産性や印字画像の鮮鋭度に大きく影響する性質を有している。
インクジェット方式の一つとして、活性エネルギー線の照射により、硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。この方法によれば、インク射出後直ちに又は一定の時間後に活性エネルギー線照射し、インク液滴を硬化させることで、印字の生産性が向上し、鮮鋭な画像を形成することができる。
【0004】
ここで、特許文献1には、環状構造を有する単官能モノマー及び2官能モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが提案されている。特許文献2には、エチレン性不飽和活性エネルギー線硬化性官能基を有するオリゴマー、エチレン性不飽和単官能モノマー及び場合により追加のエチレン性不飽和多官能性成分又は連鎖移動剤を含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−50601号公報
【特許文献2】特表2010−506966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、インク組成物により形成された画像の柔軟性については何ら検討されていない。また特許文献2では、インク組成物の硬化性及び印刷された画像の基材への密着性については検討されていない。さらに上記の各技術では、インク組成物を扱う際の作業性(保護ゴム手袋の膨潤等)については未だ改良の余地がある。したがって、インク組成物を扱う際の作業性及びインク組成物の硬化性に優れ、かつ形成された画像の柔軟性及び基材への密着性が良好なインク組成物が切望されている。
【0007】
本発明は、上記の事情に照らし成されたものであり、インク組成物を扱う際の作業性及びインク組成物の硬化性に優れ、かつ形成された画像の柔軟性及び基材への密着性が良好なインク組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
項1. (成分a)下記一般式(A)で表される単官能モノマー、
(成分b)多官能モノマー及び
(成分c)下記構造式(C)で表されるチオール基を2〜4つ有する分子量250以上1000以下のチオール化合物をインク組成物中に含み、
前記インク組成物中における(成分b)の含有量が50質量%以上90質量%以下であることを特徴とするインク組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(A)中、R1aは単結合、−R−、*−R−O−、*−R−COO−又は*−R−OCO−を表す。Rはアルキレン基を表し、*は−O−との結合位置を表す。
2aは水素原子又はアルキル基を表す。
3a及びR4aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、R3a及びR4aは互いに結合して環を形成してもよい。
5a及びR6aはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R5a及びR6aは互いに結合して環を形成してもよい。
はメチン基又は酸素原子を表す。
はメチン基又は酸素原子を表す。
maは0又は1を表す。
naは0又は1を表す。
但し、Xがメチン基である場合maは1であり、Xが酸素原子である場合maは0である。また、Yがメチン基である場合naは1であり、Yが酸素原子である場合naは0である。)
【0011】
【化2】

【0012】
項2. 前記(成分b)として3官能モノマーを含有する、項1に記載のインク組成物。
項3. 前記(成分b)の総量に対する前記3官能モノマーの含有量が1質量%以上20質量%以下である、項2に記載のインク組成物。
項4. 前記(成分b)が下記一般式(B)で表される2官能モノマーを含有する、項1〜項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0013】
【化3】

【0014】
(一般式(B)において、Rb1及びRb2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rb3は炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数7〜20のアラルキレン基を表す。jb及びpbはそれぞれ独立に2または3の整数を表す。kb及びrbはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。)
項5. 前記一般式(A)におけるX及びYが酸素原子である、項1〜項4のいずれか1項に記載のインク組成物。
項6. 前記一般式(A)におけるR1aが単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、R2aが水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R3a及びR4aが水素原子又は互いに結合して環を形成しており、R5a及びR6aが水素原子又は互いに結合して環を形成しており、Xがメチン基又は酸素原子であり、Yがメチン基又は酸素原子である、項1〜項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
項7. 前記(成分a)が、下記式(A−1)、(A−2)又は(A−3)で表される化合物を含む、項1〜項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0015】
【化4】

【0016】
項8. 前記(成分a)が、前記式(A−1)で表される化合物を含む、項7に記載のインク組成物。
項9. (a1)記録媒体上に、項1〜項8いずれか1項に記載のインク組成物を吐出する工程、及び、
(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、該インク組成物を硬化させる工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
項10. 項9に記載のインクジェット記録方法により得られたことを特徴とするインクジェット印画物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インク組成物を扱う際の作業性及びインク組成物の硬化性に優れ、かつ形成された画像の柔軟性及び基材への密着性が良好なインク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット印画物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、(成分a)下記一般式(A)で表される単官能モノマー、(成分b)多官能モノマー及び(成分c)下記構造式(C)で表されるチオール基を2〜4つ有する分子量250以上1000以下のチオール化合物をインク組成物中に含み、前記インク組成物中における(成分b)の含有量が50質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。
なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0019】
【化5】

【0020】
一般式(A)中、R1aは単結合、−R−、*−R−O−、*−R−COO−又は*−R−OCO−を表す。Rはアルキレン基を表し、*は−O−との結合位置を表す。
2aは水素原子又はアルキル基を表す。
3a及びR4aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、R3a及びR4aは互いに結合して環を形成してもよい。
5a及びR6aはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R5a及びR6aは互いに結合して環を形成してもよい。
はメチン基又は酸素原子を表す。
はメチン基又は酸素原子を表す。
maは0又は1を表す。
naは0又は1を表す。
但し、Xがメチン基である場合maは1であり、Xが酸素原子である場合maは0である。また、Yがメチン基である場合naは1であり、Yが酸素原子である場合naは0である。
【0021】
【化6】

【0022】
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
【0023】
((成分a)一般式(A)で表される構造を有する単官能モノマー)
本発明では下記一般式(A)で表される構造を有する単官能モノマーを用いる。
【0024】
【化7】

【0025】
一般式(A)中、R1aは単結合、−R−、*−R−O−、*−R−COO−又は*−R−OCO−を表す。Rはアルキレン基を表し、*は−O−との結合位置を表す。
2aは水素原子又はアルキル基を表す。
3a及びR4aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、R3a及びR4aは互いに結合して環を形成してもよい。
5a及びR6aはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R5a及びR6aは互いに結合して環を形成してもよい。
はメチン基又は酸素原子を表す。
はメチン基又は酸素原子を表す。
maは0又は1を表す。
naは0又は1を表す。
但し、Xがメチン基である場合maは1であり、Xが酸素原子である場合maは0である。また、Yがメチン基である場合naは1であり、Yが酸素原子である場合naは0である。
【0026】
一般式(A)において、R1aは単結合、−R−、*−R−O−、*−R−COO−又は*−R−OCO−を表す。Rはアルキレン基を表し、*は−O−との結合位置を表す。R1aは単結合又は−R−であることが好ましい。
で表されるアルキレン基としては、直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等を表す。
前記アルキレン基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜4であることがさらに好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
なお、アルキレン基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0027】
一般式(A)におけるR1aとしては、具体的には、−CH−、−C−、−C(CH−CH−、−CHC(CHCH−、−C10−、*−CHO−、*−CO−、*−C(CH−CHO−、*−CHC(CHCHO−、*−CHCOO−、*−COCO−、*−C(CH−CH−COO−、*−CHC(CHCH−OCO−、*−C10COO−等が挙げられる。
【0028】
一般式(A)におけるR2aは水素原子又はアルキル基を表す。
2aで表されるアルキル基としては、直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を表す。
前記アルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜4であることがさらに好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
なお、アルキル基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0029】
一般式(A)におけるR3a及びR4aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、R3a及びR4aは互いに結合して環を形成してもよい。
3a及びR4aで表されるアルキル基としては、直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を表す。
前記アルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜4であることがさらに好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
なお、アルキル基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
3a及びR4aで表されるアルケニル基としては、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。
前記アルケニル基の炭素数としては1〜5であることが好ましく、1〜4であることがさらに好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
なお、アルケニル基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
3a及びR4aは互いに結合して環を形成してもよく、5〜7員環を形成することが好ましく、5〜6員環を形成することがさらに好ましく、5員環を形成することが最も好ましい。
【0030】
一般式(A)におけるR5a及びR6aはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R5a及びR6aは互いに結合して環を形成してもよい。
5a及びR6aで表されるアルキル基としては、直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を表す。
前記アルキル基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜4であることがさらに好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
なお、アルキル基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
5a及びR6aは互いに結合して環を形成してもよく、5〜7員環を形成することが好ましく、5〜6員環を形成することがさらに好ましく、5員環を形成することが最も好ましい。
【0031】
一般式(A)におけるXはメチン基又は酸素原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
【0032】
一般式(A)におけるYはメチン基又は酸素原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
【0033】
一般式(A)において、X及びYは酸素原子であることが好ましい。X及びYが酸素原子であることで、インク組成物内の極性が上がり、反応点が失活しにくくなることにより、連鎖移動を起こしながら架橋反応を好適に進行させることができるため、硬化性と延伸性等がより向上し好ましい。
【0034】
また、一般式(A)において、R1aは単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、R2aは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R3a及びR4aは水素原子又は互いに結合して環を形成し、R5a及びR6aは水素原子又は互いに結合して環を形成し、Xはメチン基又は酸素原子であり、Yはメチン基又は酸素原子であることが好ましい。
【0035】
一般式(A)で表される単官能モノマーの具体例を以下に挙げる。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0036】
【化8】

【0037】
前記一般式(A)で表される単官能モノマーとしては、下記式(A−1)、(A−2)又は(A−3)で表される化合物を含むことが好ましく、(A−1)で表される化合物を含むことが最も好ましい。
【0038】
【化9】

【0039】
本発明のインク組成物中における(成分a)の含有量は、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが最も好ましい。
【0040】
((成分b)多官能モノマー)
本発明で用いる多官能モノマーは、重合性基を2つ以上有する化合物であれば限定されない。
【0041】
本発明で用いる多官能モノマーとしては、1,9−ノナンジオールジアクリレート(1,9−NDDA)、1,6−ヘキサンジオールアクリレート(HDDA)、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパン(プロピレンオキシド変性)トリアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等のアクリルレート化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリレート化合物等が挙げられる。その他、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物も挙げられる。
また、多官能ビニルエーテルも挙げられる。多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0042】
本発明では、(成分b)多官能モノマーとして、下記一般式(B)で表される構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0043】
【化10】

【0044】
一般式(B)において、Rb1及びRb2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rb3は炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数7〜20のアラルキレン基を表す。jb及びpbはそれぞれ独立に2または3の整数を表す。kb及びrbはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。
b1及びRb2は水素原子であることが好ましい。Rb3は炭素数1〜20のアルキレン基であることが好ましい。
【0045】
前記Rb3が炭素数1〜20のアルキレン基である場合、具体的には−CH−、−C−、−C−、−C−、−C12−、−C16−、−C18−、−C1020−、−CH−CH(CH)−、−CH(cyclo−C10)CH−、1,4−trans−シクロヘキシレン基、−C1836−等を挙げることができる。これらの基は直鎖状であっても分岐していてもよく、また、環状であってもよい。
b3が炭素数1〜20のアルキレン基である場合、炭素数は2〜15であることが好ましく、5〜13であることがさらに好ましい。
【0046】
前記Rb3が炭素数6〜20のアリーレン基である場合、例えばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン等を挙げることができる。より具体的には1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、2,6−ナフチレン基を挙げることができる。
b3が炭素数6〜20のアリーレン基である場合、炭素数は6〜18であることが好ましく、6〜14であることがさらに好ましい。
【0047】
前記Rb3が炭素数7〜20のアラルキレン基である場合、例えば−CHCH−、−CHCHCHCH−、−CC(CH−等を挙げることができる。これらの基に含まれることのあるアルキル基及びアルキレン基は直鎖状であっても分岐していてもよく、また、環状であってもよい。
b3が炭素数7〜20のアラルキレン基である場合、炭素数は7〜18であることが好ましく、7〜14であることがさらに好ましい。
【0048】
kb及びrbは0〜10の整数を表し、0〜9であることが好ましく、0〜8であることがさらに好ましい。
【0049】
一般式(B)における−Cjb2jb−又は−Cpb2pb−としては、具体的には、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−などが挙げられる。
【0050】
b1及びRb2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0051】
一般式(B)において、Rb1及びRb2が水素原子であることが好ましく、Rb1及びRb2が水素原子であり、前記Rb3が炭素数1〜20のアルキレン基であることがさらに好ましく、Rb1及びRb2が水素原子であり、前記Rb3が炭素数1〜20のアルキレン基であり、kb及びrbが0であることが最も好ましい。
【0052】
一般式(B)で表される化合物として好ましく用いられる具体例を以下に示す。
【0053】
【化11】

【0054】
本発明の(成分b)多官能モノマーの総量に対する前記一般式(B)で表される化合物の含有量は50〜90質量%であることが好ましく、52〜80質量%であることがさらに好ましく、55〜70質量%であることが最も好ましい。
【0055】
本発明では(成分b)として3官能モノマーを含有することが好ましい。
3官能モノマーとしては、分子内に(メタ)アクリレート基を3つ有する化合物が好ましく用いられる。ここで、(メタ)アクリレート基とは、アクリレート基及びメタクリレート基の両者を意味する。
3官能モノマーとして好ましく用いられる具体例を以下に示す。
【0056】
【化12】

【0057】
本発明の(成分b)として3官能モノマーを含む場合、(成分b)多官能モノマーの総量に対する3官能モノマーの含有量が1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以上15質量%以下であることがもっとも好ましい。
【0058】
本発明では、(成分b)多官能モノマーとして前記一般式(B)で表される化合物及び3官能モノマーを含有することが好ましい。
さらに(成分b)多官能モノマーの総量に対する前記一般式(B)の含有量が50質量%以上90質量%以下であり、かつ前記3官能モノマーの含有量が1質量%以上20質量%以下であることが最も好ましい。
【0059】
((成分c)構造式(C)で表されるチオール基を2〜4つ有する分子量250以上1000以下のチオール化合物)
本発明のインク組成物は、下記構造式(C)で表されるチオール基を2〜4つ有する分子量250以上1000以下のチオール化合物(以下、「チオール化合物」とも称する)をインク組成物中に含む。
前記チオール化合物の分子量は250以上1000以下であり、250以上800以下であることが好ましく、250以上600以下であることがさらに好ましい。チオール化合物の分子量をこの範囲とすることで、インク組成物中のチオール基の導入量を高めることができ、形成された画像の柔軟性等を向上させることができると考えられる。
【0060】
【化13】

【0061】
前記チオール化合物は、下記一般式(C´)で表される化合物であることが好ましい。
【0062】
【化14】

【0063】
一般式(C´)中、ncは2〜4の整数を表し、Xはnc価の連結基を表す。
nc価の連結基としては、炭素数1〜10のアルカン、又は窒素原子を含む6員環を有する化合物からnc個の水素原子が除去された残基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルカンからnc個の水素原子が除去された残基であることがさらに好ましい。
前記炭素数1〜10のアルカンにはエーテル基が存在していてもよい。前記アルカンの炭素数は1〜8であることが好ましく、2〜8であることがさらに好ましい。
また、炭素数1〜10のアルカンとしては、C、CHCHCH、CHCHCHCH、C(CH、CHCHC(CHCHCH、C−O−C−O−C−O−C、C−O−C−O−C−O−C等が挙げられる。
【0064】
前記窒素原子を含む6員環を有する化合物としては、下記一般式(C−1)で表される化合物が好ましい。
【0065】
【化15】

【0066】
一般式(C−1)において、Z、Z及びZはそれぞれ独立に、メチレン基又はカルボニル基を表す。R1c、R2c及びR3cはそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0067】
、Z及びZはカルボニル基であることが好ましい。
【0068】
1c、R2c及びR3cの炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等を表す。
前記炭素数1〜5のアルキル基の炭素数は1〜4であることが好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
なお、炭素数1〜5のアルキル基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0069】
一般式(C−1)で表される化合物としては、以下の具体例を挙げることができる。
【0070】
【化16】

【0071】
前記チオール化合物としては、以下の具体例を挙げることができる。
【0072】
【化17】

【0073】
本発明のインク組成物における(成分c)の含有量は、0.1質量%以上8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましく、0.8質量%以上3.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0074】
本発明では、インクジェット記録に好適なインク組成物を鋭意検討した結果、一般式(A)で表される特定構造を有する単官能モノマー、多官能モノマー、及び構造式(C)で表される特定構造を有する化合物を含み、かつ多官能モノマーのインク組成物における含有量を特定の範囲とすることで、インク組成物を扱う際の作業性及びインク組成物の硬化性に優れ、かつ形成された画像の柔軟性及び基材への密着性(特にポリ塩化ビニル製のターポリン基材への密着性)が良好なインク組成物を得ることに成功した。
本発明の構成とすることでこのような効果が得られるメカニズムは明らかではないが、発明者は以下のように推察する。一般式(A)で表される特定構造を有する単官能モノマー及び多官能モノマーとともに、構造式(C)で表される化合物を用いることで、連鎖移動を起こしながら架橋反応を好適に進行させ、形成された画像内に架橋部位を点在させることができたため、画像全体が架橋しているものに比べて、形成された画像の柔軟性を向上させることに成功したと考えられる。
また、架橋部位を形成し得る多官能モノマーを比較的高い濃度(50質量%以上90質量%以下)で用いることにより、インク組成物の硬化性が高まり、また、一般式(A)で表される単官能モノマーが基材に浸透しやすいため、形成された画像の基材への密着性を向上させることができたと考えられる。
ただし、上記はあくまで推察であり、本発明は上記の内容に限定されない。
【0075】
(重合開始剤)
本発明のインク組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる重合開始剤としては、例えば、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、及び、(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。これら重合開始剤としては、特開2009−73945号公報に記載されているものが例示できる。
重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0076】
重合開始剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1〜25質量%であることが好ましく、0.3〜20質量%であることがより好ましく、0.5〜18質量%であることが更に好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。
また、本発明のインク組成物に後述する増感剤を用いる場合、重合開始剤の総使用量は、それぞれ、増感剤に対して、重合開始剤:増感剤の質量比で、200:1〜1:200であることが好ましく、50:1〜1:50であることがより好ましく、20:1〜1:5であることが更に好ましい。
【0077】
<アシルホスフィン化合物>
本発明のインク組成物には、前記重合開始剤として、アシルホスフィン化合物を用いることが好ましい。アシルホスフィン化合物を用いると、硬化膜の耐ブロッキング性、耐擦過性に優れるインク組成物が得られる。
【0078】
アシルホスフィン化合物を用いる場合、インク組成物全体の1〜15質量%用いることが好ましく、1〜12質量%用いることがより好ましく、1〜10質量%用いることが更に好ましい。
【0079】
アシルホスフィン化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物等を使用することができ、ビスアシルホスフィンオキシドを少なくとも用いることがより好ましい。
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物を用いる場合、インク組成物全体の0.5〜18質量%用いることが好ましい。
【0080】
アシルホスフィン化合物としては、化合物の構造中に式(3)又は式(4)の構造式を有するものが例示でき、それぞれ、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物に対応する。
【0081】
【化18】

【0082】
【化19】

【0083】
特に、アシルホスフィン化合物としては、式(5)又は式(6)の化学構造を有するものが特に好ましい。
【0084】
【化20】

【0085】
(式中、R6、R7、R8はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0086】
【化21】

【0087】
(式中、R9、R10、R11はメチル基又はエチル基を置換基として有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0088】
アシルホスフィン化合物としては、モノアシルホスフィンオキサイド化合物及びビスアシルホスフィンオキサイド化合物等を使用することができ、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することが好ましい。
モノアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のモノアシルホスフィンオキサイド化合物を使用することができる。例えば特公昭60−8047号公報、特公昭63−40799号公報に記載のモノアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、イソブチリルジフェニルホスフィンオキサイド、2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、o−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−t−ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、3−ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキサイド、アクリロイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキサイド、p−トルイルジフェニルホスフィンオキサイド、4−(t−ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、テレフタロイルビスジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、バーサトイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−メチル−シクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。
【0089】
ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、公知のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が使用できる。例えば特開平3−101686号公報、特開平5−345790号公報、特開平6−298818号公報に記載のビスアシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
具体例としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、本発明において、アシルホスフィン化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(IRGACURE 819:BASFジャパン社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(DAROCUR TPO:BASFジャパン社製、Lucirin TPO:BASF社製)などが好ましい。
【0091】
本発明のインク組成物においては、アシルホスフィン化合物を含有することが好ましく、アシルホスフィン化合物とベンゾフェノン化合物又はチオキサントン化合物とを併用するか、アシルホスフィン化合物とα−アミノケトン化合物とを併用することがより好ましい。特に好ましくは、アシルホスフィン化合物とベンゾフェノン化合物とを併用することである。上記組み合わせにより、硬化性、耐ブロッキング性に優れるインク組成物が得られる。チオキサントン化合物又はベンゾフェノン化合物を用いる場合、インク組成物全体の0.5〜4質量%用いることが好ましく、1〜3.5質量%用いることがより好ましい。
【0092】
(増感剤)
本発明のインク組成物は、特定の活性エネルギー線を吸収して、前記光酸発生剤の分解を促進させるために、増感剤を含有することが好ましい。
増感剤は、特定の活性エネルギー線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸又はカチオンを生成する。
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
−化合物類−
多核芳香族類(例えば、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン)、チオクロマン−4−オン類(例えば、チオクロマン−4−オン)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0093】
これらの中でも、本発明のインク組成物は、チオキサントン類、及び/又は、チオクロマン−4−オン類を含有することが好ましく、チオキサントン類を含有することがより好ましい。
チオキサントン類として具体的には、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、3−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノ−エチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチル−チオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、N−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、及び、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリドが好ましく例示できる。これらの中でも、2−イソプロピルチオキサントン、及び、2,4−ジエチルチオキサントンがより好ましく例示できる。
また、市販品としては、FIRSTCURE ITX(Albemarle社製)、KAYACURE DETX(日本化薬(株)製)などが好ましく例示できる。
【0094】
本発明のインク組成物における増感剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物の全質量に対し、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。
【0095】
(着色剤)
本発明のインク組成物は、着色剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる着色剤としては、特に制限はなく、顔料、油溶性染料、水溶性染料、分散染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用することができる。この中でも、着色剤としては、耐候性に優れ、色再現性に富む点から、顔料、及び/又は、油溶性染料であることが好ましく、顔料であることがより好ましい。
本発明のインク組成物に好適に用いることができる着色剤は、活性エネルギー線による硬化反応の感度を低下させないという観点からは、硬化反応である重合反応において重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
【0096】
−顔料−
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として水、液状有機化合物や不溶性の樹脂等に分散させたもの、及び、樹脂や顔料誘導体等で顔料表面を処理したもの等)も挙げられる。なお、前記顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年、朝倉書店発行)、橋本勲著「有機顔料ハンドブック」(2006年、カラーオフィス発行)、W.Herbst,K.Hunger編「Industrial Organic Pigments」(1992年、Wiley−VHC発行)、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載のものが挙げられる。
【0097】
前記有機顔料及び無機顔料としては、例えば、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。
前記黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、10、65、73、74、75、97、98、111、116、130、167、205等のモノアゾ顔料、61、62、100、168、169、183、191、206、209、212等のモノアゾレーキ顔料、12、13、14、16、17、55、63、77、81、83、97、83、124、126、127、152、155、172、174、176、214、219等のジスアゾ顔料、24、108、193、199等のアントラキノン顔料、60等のモノアゾピラゾロン顔料、93、95、128、166等の縮合アゾ顔料、109、110、139、173、185等のイソインドリン顔料、120、151、154、175、180、181、194等のベンズイミダゾロン顔料、117、150、153等のアゾメチン金属錯体顔料、138等のキノフタロン顔料、213等のキノキサリン顔料が好ましい。
【0098】
前記赤色又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド 3等のモノアゾ系顔料、193等のモノアゾレーキ顔料、38等のジスアゾ顔料、2、5、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、22、23、31、32、112、114、146、147、150、170、187、188、210、213、238、245、253、256、258、266、268、269等のナフトールAS顔料、3、4、6等のβ−ナフトール顔料、49、53、68等β−ナフトールレーキ顔料、237、239、247等のナフトールASレーキ顔料、41等のピラゾロン顔料、48、52、57、58、63、64:1、200等のBONAレーキ顔料、81:1、169、172等のキサンテンレーキ顔料、88、181等のチオインジゴ顔料、122、202(C.I.ピグメントバイオレット 19との混合物を含む)、123、149、178、179、190、224等のペリレン顔料、144、166、214、220、221、242、262等の縮合アゾ顔料、168、177、263等のアントラキノン顔料、83等のアントラキノンレーキ顔料、171、175、176、185、208等のベンズイミダゾロン顔料、207、209、262等のキナクリドン顔料、254、255、264、270、272等のジケトピロロピロール顔料、257、271等のアゾメチン金属錯体顔料が好ましい。
【0099】
前記青色又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー 25、26等のナフトールAS顔料、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1等のフタロシアニン顔料、1、24:1、56等の染付けレーキ顔料、60等のアントラキノン系顔料が好ましい。
前記緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン 1、4等の染付けレーキ顔料、7、36等のフタロシアニン顔料、8等のアゾメチン金属錯体顔料が好ましい。
【0100】
前記橙色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ 1等のモノアゾ顔料、2、3、5等のβ−ナフトール顔料、4、24、38、74等のナフトールAS顔料、13、34等のピラゾロン顔料、36、60、62、64、72等のベンズイミダゾロン顔料、15、16等のジスアゾ顔料、17、46等のβ−ナフトールレーキ顔料、19等のナフタレンスルホン酸レーキ顔料、43等のペリノン顔料、48、49等のキナクリドン顔料、51等のアントラキノン系顔料、61等のイソインドリノン顔料、66等のイソインドリン系顔料、68等のアゾメチン金属錯体顔料、71、73、81等のジケトピロロピロール顔料が好ましい。
前記褐色顔料としては、C.I.ピグメントブラウン 5等のBONAレーキ顔料、23、41、42等の縮合アゾ顔料、25、32等のベンズイミダゾロン顔料が好ましい。
前記紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット 1、2、3、27等の染付けレーキ顔料、13、17、25、50等のナフトールAS顔料、5:1等のアントラキノンレーキ顔料、19等のキナクリドン顔料、23、37等のジオキサジン顔料、29等のペリレン顔料、32等のベンズイミダゾロン顔料、38等のチオインジゴ顔料が好ましい。
【0101】
前記黒色顔料としては、C.I.ピグメントブラック 1等のインダジン顔料、7であるカーボンブラック、10であるグラファイト、11であるマグネタイト、20等のアントラキノン顔料、31、32等のペリレン顔料が好ましい。
前記白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 4である酸化亜鉛、6である酸化チタン、7である硫化亜鉛、12である酸化ジルコニウム(ジルコニウムホワイト)、18である炭酸カルシウム、19である酸化アルミニウム・酸化ケイ素(カオリンクレー)、21又は22である硫酸バリウム、23である水酸化アルミニウム(アルミナホワイト)、27である酸化ケイ素、28であるケイ酸カルシウムが好ましい。
白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
中でも前記酸化チタンは、他の白色顔料と比べて比重が小さい、屈折率が大きい、隠蔽力や着色力が大きい、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れていることから、好適に使用される。なお、前記酸化チタンに加えて他の白色顔料(上述した白色顔料以外のものであってもよい)を併用してもよい。
【0102】
酸化チタンは、特に限定されず、白色顔料として使用されている公知の酸化チタンから適宜選択して使用することができる。ルチル型二酸化チタン及びアナターゼ型二酸化チタンのいずれも使用することができるが、触媒活性能が低く、経時安定性に優れる点から、ルチル型二酸化チタンが好ましく使用される。
酸化チタンは上市されており、例えば、TIPAQUE CR60−2、Tipaque A−220(いずれも、石原産業(株)製)や、KRONOS1001、1014、1071、1074、1075、1077、1078、1080、1171、2044、2047、2056、2063、2080、2081、2084、2087、2160、2190、2211、2220、2222、2225、2230、2233、2257、2300、2310、2450、2500、3000、3025(いずれも、KRONOS社製)等が例示できる。
また、酸化チタンは、必要に応じて表面処理を行ってもよい。具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、亜鉛、ジルコニア、有機物処理が行われ、処理方法によって耐候性や親油水性が異なる。本発明においてはアルミナ、亜鉛、ジルコニア、塩基性有機物処理されたものが好ましい。
【0103】
−油溶性染料−
以下に、本発明に用いることができる油溶性染料について説明する。
本発明で使用することのできる油溶性染料とは、水に実質的に不溶な染料を意味する。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g以下であり、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下であるものを指す。従って、油溶性染料とは、所謂水に不溶性の顔料や油溶性色素を意味し、これらの中でも油溶性色素が好ましい。
【0104】
本発明に用いることができる油溶性染料のうち、イエロー染料としては、任意のものを使用することができる。例えば、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料;等が挙げられ、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0105】
本発明に用いることができる油溶性染料のうち、マゼンタ染料としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料;例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系染料等を挙げることができる。
【0106】
本発明に用いることができる油溶性染料のうち、シアン染料としては、任意のものを使用することができる。例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料あるいはカップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;インジゴ・チオインジゴ染料等を挙げることができる。
【0107】
前記の各染料は、クロモフォア(発色性の原子団)の一部が解離して初めてイエロー、マゼンタ、シアンの各色を呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0108】
以下に限定されるものではないが、好ましい具体例としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック 3,7,27,29及び34;C.I.ソルベント・イエロー 14,16,19,29,30,56,82,93及び162;C.I.ソルベント・レッド 1,3,8,18,24,27,43,49,51,72,73,109,122,132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー 2,11,25,35,38,67及び70;C.I.ソルベント・グリーン 3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ 2等が挙げられる。
これらの中で特に好ましいものは、Nubian Black PC−0850、Oil Black HBB 、Oil Yellow 129、Oil Yellow 105、Oil Pink 312、Oil Red 5B、Oil Scarlet 308、Vali Fast Blue 2606、Oil Blue BOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、NeopenYellow 075、Neopen Mazenta SE1378、Neopen Blue 808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)等である。
【0109】
−分散染料−
また、本発明においては、水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で、分散染料を用いることもできる。分散染料は一般に水溶性の染料も包含するが、本発明においては水非混和性有機溶媒に溶解する範囲で用いることが好ましい。
分散染料の好ましい具体例としては、C.I.ディスパースイエロー 5,42,54,64,79,82,83,93,99、100,119,122,124,126,160,184:1,186,198,199,201,204,224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ 13,29,31:1,33,49,54,55,66,73,118,119及び163;C.I.ディスパーズレッド 54,60,72,73,86,88,91,92,93,111,126,127,134,135,143,145,152,153,154,159,164,167:1,177,181,204,206,207,221,239,240,258,277,278,283,311,323,343,348,356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット 33;C.I.ディスパーズブルー 56,60,73,87,113,128,143,148,154,158,165,165:1,165:2,176,183,185,197,198,201,214,224,225,257,266,267,287,354,358,365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン 6:1及び9等が挙げられる。
【0110】
本発明に用いることができる着色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明において、着色剤の含有量は、着色剤の物性(比重、着色力や色味等)、インク組成物を何色組み合わせて印画物を作製するかといった条件により適宜選択することができるが、隠蔽力や着色力の点から、インク組成物全体の質量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.2〜25質量%であることがさらに好ましく、0.3〜20質量%であることが特に好ましい。
【0111】
本発明において、着色剤は、インク組成物の調製に際して、各成分とともに直接添加により配合してもよいが、予め汎用の有機溶剤(メチルエチルケトン、トルエン、ブタノール、酢酸ブチル等)あるいは本発明に使用する(成分a)又は(成分b)のような液体の媒体に添加し、分散又は溶解させた後、配合することもできる。
【0112】
本発明において、着色剤に顔料を使用する場合には、顔料と分散剤とを混合した後、(成分a)及び(成分b)の少なくとも1種に添加して分散する、又は、(成分a)及び(成分b)の少なくとも1種と分散剤とを混合した後、顔料を添加して分散することが好ましい。分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、ソルトミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。
なお、着色剤として顔料を使用する場合には、顔料粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、顔料、分散剤、媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。平均粒径が上記の範囲であると、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インク組成物の保存安定性、透明性及び硬化速度を維持することができる。
【0113】
本発明のインク組成物において、着色剤として顔料を使用する場合には、インク組成物中に安定に顔料を分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。
本発明に用いることができる分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
また、高分子分散剤の主鎖骨格は、特に制限は無いが、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格、ポリアミド骨格、ポリアミド骨格、ポリウレア骨格等が挙げられ、インク組成物の保存安定性の点で、ポリウレタン骨格、ポリアクリル骨格、ポリエステル骨格が好ましい。また、高分子分散剤の構造に関しても特に制限は無いが、ランダム構造、ブロック構造、くし型構造、星型構造等が挙げられ、同様に保存安定性の点で、ブロック構造又はくし型構造が好ましい。
【0114】
高分子分散剤としては、ビックケミー社より市販されている湿潤分散剤DISPERBYKシリーズの101、102、103、106、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、108、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、BASFジャパン社より市販されているEFKAシリーズの4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4406、4800、5010、5044、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、5244、ルーブリゾール社より市販されているSolsperseシリーズの3000、5000、11200、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、34750、35100、35200、36000、36600、37500、38500、39000、53095、54000、55000、56000、71000、楠本化成(株)より市販されているDISPARLONシリーズの1210、1220、1831、1850、1860、2100、2150、2200、7004、KS−260、KS−273N、KS−860、KS−873N、PW−36、DN−900、DA−234、DA−325、DA−375、DA−550、DA−1200、DA−1401、DA−7301、味の素(株)より市販されているアジスパーシリーズのPB−711、PB−821、PB−822、PN−411、PA−111、エアープロダクツ社より市販されているサーフィノールシリーズの104A、104C、104E、104H、104S、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、DF110D、DF110L、DF37、DF58、DF75、DF210、CT111、CT121、CT131、CT136、GA、TG、TGE、日信化学工業(株)より市販されているオルフィンシリーズのSTG、E1004、サンノプコ(株)製SNスパースシリーズの70、2120、2190、(株)ADEKAより市販されているアデカコール及びアデカトールシリーズ、三洋化成工業(株)市販されているサンノニックシリーズ、ナロアクティーCLシリーズ、エマルミンシリーズ、ニューポールPEシリーズ、イオネットMシリーズ、イオネットDシリーズ、イオネットSシリーズ、イオネットTシリーズ、サンセパラー100が挙げられる。
さらに、分散時には、分散剤に加えて、一般にシナジストと呼ばれる分散助剤(例えば、ルーブリゾール社より市販されているSolsperseシリーズの2000、5000、12000、22000、32000、36000、BASFジャパン社より市販されているEFKA6745等)や、各種界面活性剤、消泡剤を添加して、顔料の分散性、濡れ性を向上させることも好ましい。
【0115】
本発明において、顔料に対する分散剤の質量比は、インク組成物中における顔料の質量をPと、インク組成物中における分散剤の質量をDとした場合、その質量比(D/P)が、0.5<D/P≦15であることが好ましく、1≦D/P≦10であることがより好ましく、1.2≦D/P≦8であることがさらに好ましい。上記範囲であると、顔料の凝集・沈降、インク粘度上昇が生じず、保存安定性に優れるインク組成物が得られ、インク粘度が低粘度で吐出安定性にも優れるインク組成物が得られる。
【0116】
(その他の成分)
本発明のインク組成物には、必要に応じて、前記成分以外のその他の成分を添加することができる。
その他の成分としては、例えば、強増感剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物等が挙げられる。
【0117】
−強増感剤−
本発明のインク組成物は、強増感剤(「共増感剤」、又は、「強色増感剤」という場合もある。)を含有することも好ましい。本発明において強増感剤は、増感剤の活性エネルギー線に対する感度を一層向上させる、又は、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような強増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著,Journal of Polymer Society,第10巻,3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられる。
具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0118】
強増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報記載のジスルフィド化合物等が挙げられる。
具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0119】
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
本発明のインク組成物中における強増感剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.05〜4質量%であることが好ましい。
【0120】
−界面活性剤−
本発明のインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加することが好ましい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
界面活性剤としては、ポリジアルキルシロキサン類であることが好ましく、ポリエトキシ変性ポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。
インク組成物中における界面活性剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、それぞれ0.0001〜1質量%であることが好ましい。
【0121】
−紫外線吸収剤−
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0122】
−酸化防止剤−
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0123】
−褪色防止剤−
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0124】
−導電性塩類−
本発明のインク組成物には、吐出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
【0125】
−溶剤−
本発明のインク組成物には、記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
【0126】
−高分子化合物−
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子化合物の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0127】
−塩基性化合物−
塩基性化合物は、インク組成物の保存安定性を向上させる観点から添加することが好ましい。本発明に用いることができる塩基性化合物としては、公知の塩基性化合物を用いることができ、例えば、無機塩等の塩基性無機化合物や、アミン類等の塩基性有機化合物を好ましく用いることができる。
【0128】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)などを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが例示できる。
【0129】
<インク物性>
本発明においては、吐出性を考慮し、インク組成物の25℃における粘度が40mPa・s以下であることが好ましく、5〜40mPa・sであることがより好ましく、7〜35mPa・sであることが更に好ましい。
また、吐出温度(好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃)における粘度が、3〜15mPa・sであることが好ましく、3〜13mPa・sであることがより好ましい。本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体を用いた場合でも、記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避し、未硬化モノマーの低減が可能となる。さらにインク組成物の液滴着弾時におけるインクの滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
【0130】
本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では、35mN/m以下が好ましい。
【0131】
<インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印画物>
本発明のインク組成物は、インクジェット記録用として好適に使用される。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射し、インクを硬化して画像を形成する方法である。
【0132】
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、該インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明の印画物は、本発明のインク組成物を使用して得られた印画物であり、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印画物であることが好ましい。
前記吐出は、圧電素子の変形によりインク組成物を吐出するインクジェットヘッドを用いて行われることが好ましい。
また、前記吐出は、1〜10plの液滴量、かつ1,200×1,200〜4,800×4,800dpiで行われることが好ましい。
【0133】
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置が用いることができる。
【0134】
(インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成することができる公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程における記録媒体へのインクの吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは1〜10plのマルチサイズドットを、好ましくは300×300〜4,800×4,800dpi、より好ましくは1,200×1,200〜4,800×4,800dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
また、本発明のインクジェット記録方法においては、インクジェットヘッドとして、圧電素子の変形によりインク組成物を吐出するインクジェットヘッド、いわゆる、ピエゾ型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
【0135】
上述したように、本発明のインク組成物のように活性エネルギー線硬化型インク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、又は、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0136】
上記のインクジェット記録装置を用いて、本発明のインク組成物の吐出は、インク組成物を、好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0137】
次に、(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、酸やカチオンなどの開始種を発生し、その開始種の機能にカチオン重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0138】
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
【0139】
また、本発明のインク組成物の、カチオン重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0140】
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0141】
本発明のインク組成物は、このような活性エネルギー線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性エネルギー線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
【0142】
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、記録媒体表面に画像を形成することができる。
【0143】
(記録媒体)
本発明において、記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の記録媒体を使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等)がラミネートされた紙及び布(ターポリンとも称する)、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。また、本発明における記録媒体として、非吸収性記録媒体が好適に使用することができ、本発明ではプラスチックがラミネートされた紙又は布(ターポリン)が好ましく、ポリ塩化ビニル製のターポリンであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0144】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0145】
本実施例で使用した化合物を以下に記載する。
【0146】
<分散剤>
・ソルスパース36000(ルーブリゾール社製)
・ソルスパース32000(ルーブリゾール社製)
・ソルスパース2000(ルーブリゾール社製)
・ソルスパース5000(ルーブリゾール社製)
【0147】
<(成分a)一般式Aで表される単官能モノマー>
【0148】
【化22】

【0149】
CTFA(サイクリックトリメチルプロパンホルマールアクリレート、サートマー社製)
【0150】
【化23】

【0151】
FA−513(ジシクロペンタニルアクリレ−ト、日立化成工業株式会社製)
【0152】
<(成分a)以外の単官能モノマー>
【0153】
【化24】

【0154】
PEA(フェノキシエチルアクリレート、東京化成工業株式会社製)
【0155】
<(成分b)多官能モノマー>
【0156】
【化25】

【0157】
NPGPODA(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、サートマー社製)
【0158】
【化26】

【0159】
A−200(ポリエチレングリコールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
【0160】
【化27】

【0161】
1,9−NDDA(1,9−ノナンジオールジアクリレート、ダイセル・サイテック社製)
【0162】
【化28】

【0163】
EOTMPTA(トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、サートマー社製)
【0164】
<重合開始剤>
・DAROCUR TPO(BASFジャパン社製)
・IRGACURE 184(BASFジャパン社製)
【0165】
<(成分c)構造式(C)で表されるチオール基を2〜4つ有する分子量250以上1000以下のチオール化合物>
【0166】
【化29】

【0167】
MT−PE1(昭和電工社製)
【0168】
【化30】

【0169】
MT−BD1(昭和電工社製)
【0170】
【化31】

【0171】
MT−NR1(昭和電工社製)
【0172】
<シアンミルベースCの調製>
・C顔料(シアン顔料):IRGALITE BLUE GLVO (BASFジャパン社製) ・・・30質量部
・NPGPODA ・・・50質量部
・ソルスパース32000 ・・・10質量部
・ソルスパース5000 ・・・10質量部
上記の成分を撹拌し、シアンミルベースCを得た。なお、顔料ミルベースの調製は、分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散を行った。
【0173】
<マゼンタミルベースMの調製>
・M顔料(マゼンタ顔料):CINQUASIA MAGENTA RT−355D (BASFジャパン社製) ・・・30質量部
・NPGPODA ・・・50質量部
・ソルスパース32000 ・・・20質量部
上記の成分を撹拌し、マゼンタミルベースMを得た。なお、顔料ミルベースの調製は、分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散を行った。
【0174】
<イエローミルベースYの調製>
・Y顔料(イエロー顔料):NOVOPERM YELLOW H2G(クラリアント社製) ・・・30質量部
・NPGPODA ・・・50質量部
・ソルスパース2000 ・・・20質量部
上記の成分を撹拌し、イエローミルベースYを得た。なお、顔料ミルベースの調製は、分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散を行った。
【0175】
<ブラックミルベースKの調製>
・K顔料(ブラック顔料):SPECIAL BLACK 250(BASFジャパン社製) ・・・30質量部
・NPGPODA ・・・50質量部
・ソルスパース32000 ・・・20質量部
上記の成分を撹拌し、ブラックミルベースKを得た。尚、顔料ミルベースの調製は、分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで8時間分散を行った。
【0176】
<実施例1〜27、及び、比較例1〜5>
(インクの調製)
成分a、成分b、成分c、各ミルベース、重合開始剤、及び、その他の添加剤をそれぞれ下表に示す処方で混合し、高速撹拌することでインク組成物をそれぞれ得た。
【0177】
(インクジェット画像記録)
ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて、記録媒体への記録を行った。インク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱及び加温を行った。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に40℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜10plのマルチサイズドットを4,800×4,800dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はUV光を露光面照度1200mW/cmに集光し、記録媒体上にインク組成物が着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。紫外線ランプには、HAN250NLハイキュア水銀ランプ((株)ジーエス・ユアサ コーポレーション製)を使用した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。記録媒体として、ポリ塩化ビニル基材(膜厚200μm、桜井(株)社製、商品名:LLBAU、ポリ塩化ビニル製のターポリン基材)を用いた。
ここで、画像はヘッドが5往復して形成されるため、最初に打適されたインクは5往復分の露光量が照射される。1往復約300mJ/cmの露光量であるため、5往復した場合の総露光量は1500mJ/cmとなる。下記の硬化性評価では、この往復回数を制御することで評価を行った。
【0178】
(インク評価)
−作業性評価−
実施例1〜27及び比較例1〜5のインク組成物について、保護ゴム手袋(MicroFlex社製 DIAMOND GRIP PLUSTM)の膨潤率を以下の方法で測定した。
(1)ゴム手袋を3cm×3cmにカットした。
(2)カットしたものを各インク組成物5mL中に浸して室温で1時間静置した。
(3)1時間後、ゴム手袋をインク組成物中から取り出し、浸す前後での重量変化を測定し、膨潤率を測定した。ここで、膨潤率は、{(浸した後の重量−浸す前の重量)/浸す前の重量}×100により求めた。
【0179】
作業性の評価基準
1:膨潤率0%以上11%未満
2:膨潤率11%以上31%未満
3:膨潤率31%以上
【0180】
−密着性評価−
基材との密着性評価方法としてクロスハッチテスト(JIS K 5600−5−6)を行った。上記インクジェット画像記録方法に従い描画した各々の印画物に対して、クロスハッチテストを実施した。なお、評価は、JIS K5600−5−6に従い、0〜5の6段階評価とした。ここで、評価0がカットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがないことを意味する。0〜3が、実用上問題のない範囲である。
【0181】
−硬化性評価−
ヘッドを1〜5往復させて画像を形成した後、各々の画像上にポリ塩化ビニル基材(膜厚200μm、桜井(株)社製、商品名:LLBAU、塩化ビニル製のターポリン基材)をかぶせ、ポリ塩化ビニル基材の上から500g/100cmの重りを10秒間載せた。かぶせたポリ塩化ビニルを剥がし、画像が転写しないようになったヘッドの往復回数を検討することで、硬化性を評価した。
【0182】
硬化性の評価基準
評価1がもっとも優れている。
1:1往復で転写無し。
2:2往復で転写無し。
3:3往復で転写無し。
4:5往復で転写無し。
5:5往復しても転写有り。
【0183】
−柔軟性−
硬化性評価において5往復分露光照射して作製した膜5cm×2cmを延伸機械によって下記の条件で引っ張り、延伸率を測定した。
使用機械:テンシロン(島津製作所製)
条件:引張り速度 50mm/分,破断時の長さを測定し延伸率を算出。
ここで延伸率は、{(破断時の長さ−延伸前の長さ/延伸前の長さ}×100、により求めた。((例)10cmで破断した場合、{(10cm−5cm)/5cm}×100=100%延伸と算出される。)
【0184】
柔軟性の評価基準
評価1がもっとも優れており、評価1〜3が実用上問題のない範囲である。
1:延伸率80%以上
2:延伸率70%以上80%未満
3:延伸率60%以上70%未満
4:延伸率50%以上60%未満
5:延伸率50%未満
【0185】
以下の表に、各インク組成物の組成、及び、評価結果をまとめて示す。なお、各インク組成物の組成を表す各数字の単位は、質量部であり、カラーにおけるMはマゼンタ、Cはシアン、Yはイエロー、Kはブラック、Wはホワイトである。
【0186】
【表1】

【0187】
【表2】

【0188】
実施例及び比較例より、本発明のインク組成物は、作業性、密着性、硬化性及び柔軟性のいずれにも優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分a)下記一般式(A)で表される単官能モノマー、
(成分b)多官能モノマー及び
(成分c)下記構造式(C)で表されるチオール基を2〜4つ有する分子量250以上1000以下のチオール化合物
をインク組成物中に含み、
前記インク組成物中における(成分b)の含有量が50質量%以上90質量%以下であることを特徴とするインク組成物。
【化1】


(一般式(A)中、R1aは単結合、−R−、*−R−O−、*−R−COO−又は*−R−OCO−を表す。Rはアルキレン基を表し、*は−O−との結合位置を表す。
2aは水素原子又はアルキル基を表す。
3a及びR4aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、R3a及びR4aは互いに結合して環を形成してもよい。
5a及びR6aはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R5a及びR6aは互いに結合して環を形成してもよい。
はメチン基又は酸素原子を表す。
はメチン基又は酸素原子を表す。
maは0又は1を表す。
naは0又は1を表す。
但し、Xがメチン基である場合maは1であり、Xが酸素原子である場合maは0である。また、Yがメチン基である場合naは1であり、Yが酸素原子である場合naは0である。)
【化2】

【請求項2】
前記(成分b)として3官能モノマーを含有する、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記(成分b)の総量に対する前記3官能モノマーの含有量が1質量%以上20質量%以下である、請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記(成分b)が下記一般式(B)で表される2官能モノマーを含有する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化3】


(一般式(B)において、Rb1及びRb2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rb3は炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数7〜20のアラルキレン基を表す。jb及びpbはそれぞれ独立に2または3の整数を表す。kb及びrbはそれぞれ独立に0〜10の整数を表す。)
【請求項5】
前記一般式(A)におけるX及びYが酸素原子である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記一般式(A)におけるR1aが単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基であり、R2aが水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R3a及びR4aが水素原子又は互いに結合して環を形成しており、R5a及びR6aが水素原子又は互いに結合して環を形成しており、Xがメチン基又は酸素原子であり、Yがメチン基又は酸素原子である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記(成分a)が、下記式(A−1)、(A−2)又は(A−3)で表される化合物を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化4】

【請求項8】
前記(成分a)が、前記式(A−1)で表される化合物を含む、請求項7に記載のインク組成物。
【請求項9】
(a1)記録媒体上に、請求項1〜請求項8いずれか1項に記載のインク組成物を吐出する工程、及び、
(b1)吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射して、該インク組成物を硬化させる工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェット記録方法により得られたことを特徴とするインクジェット印画物。


【公開番号】特開2012−72271(P2012−72271A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217824(P2010−217824)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】