説明

インク

以下を含むインク組成物:a)0.2〜11部のジエチレングリコールモノアルキルエーテル;b)20〜45部のグリセロール;c)0.5〜8部のペンタン−1,5−ジオール;d)0.5〜9部の着色剤;e)40〜70部の水;f)0〜8部の2−ピロリジノン;g)0〜3部の界面活性剤;h)いずれの場合も少なくとも5000のMWTを有するポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルを合計0〜5部;ならびに、i)0〜5部の殺生物剤;ここにおいて、部はすべて重量に基づく。インクセットも特許請求する。該インクおよびインクセットは、圧電式インクジェット印刷機にとりわけ有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、ならびにインクセットおよびとりわけ商業印刷セクターでのインクジェット印刷におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷(IJP)は、ノズルを基材と接触させることなくインクの液滴を微細ノズルに通して基材上に噴出させる、ノンインパクト印刷技術である。
卓上印刷機は一般に、家庭および小規模事務所で、例えば、家族の写真、子供の宿題、および手紙のように頁数の少ない文書を印刷するために用いられる。
【0003】
対照的に、商業印刷セクターでは、床置き型であることが多い、より大きなインクジェット印刷機が用いられる。これらの印刷機では、電話料金の請求書、水道光熱費の請求書、新聞および書籍など、大量の文書が量産される。
【0004】
商業印刷セクターで用いられる印刷機における要望は、卓上用のものとは大きく異なる。商業用刷機は長期にわたり継続的に作動するので、インクは、とりわけ安定で、印刷ヘッドを詰まらせないことが必要である。卓上印刷機とは対照的に、商業印刷セクターで用いられる印刷ヘッドは、幅広い単一配列で位置決めされることが多く、シングルパス方式で基材に印刷を施す。たとえ1つでもノズルが詰まると、膨大な数の文書に空白の筋が生じる可能性がある。対照的に、卓上印刷機は、通常、遙かに狭い印刷ヘッドを有し、複数パス方式で基材に印刷を施し、その結果、ノズルが1つ詰まってもあまり目立たない。
【0005】
商業用セクターにおけるインクジェット印刷機は並外れた速度で作動する可能性があり、例えば、Oce JetstreamTM印刷機は600×600dpiの解像度を150メートル/minの速度で印刷することができると特許請求されている。これにより、1分あたり数頁しか生産しない卓上印刷機では存在しない技術的要求が課される。印刷速度の上昇は、積み重ねた時に最終的な印刷が滲まないように、インクジェットインクが望ましくはより迅速に乾燥すべきであることを意味することが多い。しかしながら、乾燥時間がより迅速なインクでは、印刷機で頻繁に印刷が行われない間に、インクが乾燥しノズルの上を覆ってクラストが形成するリスクが上昇する。
【0006】
商業印刷セクターで用いられる基材は遙かに多様であることが多く、卓上用に用いられているものとは大きく異なることが多い。卓上用セクターでは光沢紙および特殊コート紙がしばしば用いられる。これは、個人的な写真および不定期の短い文書を印刷する場合、コストは許容される可能性があるためである。しかしながら、商業印刷セクターにおいては、例えば水道光熱費の請求書の大量印刷では、普通紙、新聞に用いられる種類の薄紙、および水性インクで効果的に印刷することが難しい可能性があるオフセット媒体など、安価な基材が必要とされる。商業印刷セクターの顧客は、インクが、非常に薄い吸収性基材から吸収性が遙かに低い基材に至る多種多様な基材に適していることを期待する。新聞に用いられるような薄い基材では、紙の至る所でインクの“毛羽立ち”に起因してドットの鮮明度が低いという問題が生じることがある。インクが薄紙を通り抜けて浸透して反対側で見えるようになる“裏抜け”も、従来のインクに伴う問題であり得る。液滴の鮮明度が良好で縁が鋭いことは、商業印刷セクターにおいて優先順位が高い。
【0007】
米国特許公報第4378564号には、染料とブチルセロソルブおよびブチルカルビトールの混合物とを含むIJPインクが開示されている。
英国特許第2423995号には、エチレングリコールモノブチルエーテル、アクリルバインダー、および所望によりジエチレングリコールモノブチルエーテルを含む水性顔料インクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許公報第4378564号
【特許文献2】英国特許第2423995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
英国特許第2423995号に開示されているものより裏抜けが少ないインクを提供することが、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に従って、
a)0.2〜11部のジエチレングリコールモノアルキルエーテル;
b)20〜45部のグリセロール;
c)0.5〜8部のペンタン−1,5−ジオール;
d)0.5〜9部の着色剤;
e)40〜70部の水;
f)0〜8部の2−ピロリジノン;
g)0〜3部の界面活性剤;
h)いずれの場合も少なくとも5000のMWTを有するポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルを合計0〜5部;ならびに
i)0〜5部の殺生物剤;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく
を含むインク組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
インクは、好ましくは2.5〜11cP、より好ましくは3〜10cP、特に3.5〜9cP、さらに特に4〜8cP、とりわけ5〜7cPの粘度を有する。粘度は、所望の場合、32℃において、例えばBrookfieldスピンドル18を60rpmで用いて、測定することができる。この粘度は、卓上での使用を意図したインクに典型的に用いられるものより若干高い。
【0012】
インクは、好ましくは20〜45、より好ましくは25〜40、特に27〜38ダイン/cmの表面張力を有する。表面張力は、所望の場合、32℃の温度で測定することができる。
【0013】
インクは、好ましくは6〜10、より好ましくは6.5〜9.5、特に6.8〜8.3のpHを有する。
本明細書では、“重量部”を、意味を変更することなく、しばしば単に“部”に省略する。
【0014】
成分a)は、組成物中に、好ましくは1〜11部、より好ましくは1.5〜10部、特に2〜5部、さらに特に2〜4部の量で存在する。
成分a)は、好ましくはジエチレングリコールモノC1−6−アルキルエーテル、特に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0015】
成分b)は、組成物中に、好ましくは22〜41部、より好ましくは24〜38部、特に25〜35部、さらに特に27〜33部の量で存在する。
成分c)は、組成物中に、好ましくは0.8〜6部、より好ましくは0.9〜5部、特に1〜4.5部、さらに特に1.4〜3.6部の量で存在する。
【0016】
組成物中に包含される成分d)の量は、インクに必要とされる色の強度にある程度依存する。しかしながら、成分d)は、典型的には0.6〜8部、より好ましくは1〜7.5部、特に1.5〜7部の量で存在する。
【0017】
好ましい着色剤は、染料、特に水溶性染料である。酸性染料および直接染料がとりわけ好ましく、例として、Colour Index Internationalに載せられている染料のすべてを挙げることができる。
【0018】
好ましい黄色着色剤は、C.I.Direct Yellow 86、132および142ならびにAcid Yellow 23、特にC.I.Direct Yellow 132である。
【0019】
好ましいマゼンタ着色剤は、C.I.Acid Red 52、式(1)のモノアゾ染料、およびそれらの混合物(遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらない)、特に、1:99〜25:75の重量比でのそれらの混合物である:
【0020】
【化1】

【0021】
[式中:
Arは、置換されていてもよいフェニルまたは置換されていてもよいナフチルであり;
は、置換されていてもよい窒素含有複素環式基であって、該複素環式基中の窒素原子との結合によりトリアジン環に付着している基であり;
は、Hであるか、または−OH、−COOHもしくは−SOHにより置換されていてもよいC1−4−アルキルであり;そして
tは0または1である]。
【0022】
は、置換されていてもよい5または6員の複素環式基であることが好ましい。Zは、第一または第二アミノ基を含まないことが、特に好ましい。さらに特に、Zは、それぞれC1−4−アルキル、カルボキシまたはスルホにより置換されていてもよいモルホリノまたはピロリジニルである。
【0023】
Arにより表される基の好ましい例としては、2−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、2−スルホフェニル、3−スルホフェニル、2−カルボキシ−4−スルホフェニル、3,4−ジメチル−6−スルホフェニル、4−アミノ−2−ヒドロキシフェニル、4−カルボキシ−2−ヒドロキシフェニル、1,5−ジスルホナフト−2−イル、1−スルホナフト−2−イル、3,6,8−トリスルホナフト−2−イル、8−ヒドロキシ−2,4−ジスルホナフト−1−イル、1−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−ジスルホナフト−2−イル、2−アミノ−8−ヒドロキシ−6−スルホナフト−1−イル、2−アミノ−8−ヒドロキシ−6−スルホナフト−7−イル、2−アミノ−8−ヒドロキシ−3,6−スルホナフト−1−イルまたは6−スルホ−インダン−5−イルが挙げられる。Arは、それぞれ−OH、−SOH、−COOH、−NH、C1−4−アルキル、C1−4−アルコキシまたはニトロの1以上により置換されていてもよいフェニルまたはナフチルであることが、特に好ましい。
【0024】
tが1である場合、式(1)の浮動(floating)スルホ基は、ナフタレン環の3または4位に付着していることが好ましい。より好ましくは、tは1であり、浮動スルホ基は3位に付着している。
【0025】
式(1)の化合物は、米国特許公報第6635747号に記載されているとおりに調製することができる。
好ましいシアン着色剤は、C.I.Direct Blue 86、C.I.Direct Blue 199およびそれらの混合物、特にC.I.Direct Blue 199である。
【0026】
好ましい黒色着色剤は、C.I.Direct Black 19、Mobay Black SP、Bayscript Black SP、Steiner Black SP、または式(2)もしくは(4)のもの(遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらない)、およびそれらの混合物である:
T−Q−N=N−L−T
式(2)
[式中:
各Tは、独立してアゾ基であり;
Qは、置換されていてもよく金属化されていてもよい1,8−ジヒドロキシナフチル基であり;そして
Lは、二価の有機リンカー基である];ならびに
【0027】
【化2】

【0028】
[式中:
は、カルボキシであり;
は、H、カルボキシ、スルホ、ハロ、ヒドロキシ、C1−4−アルコキシまたはC1−4−アルキルであり;
YおよびZは、それぞれ独立して、H、カルボキシまたはスルホであり;そして
およびRは、それぞれ独立して、Hであるか、C1−4−アルキルであるか、またはカルボキシもしくはスルホ基を持つC1−4−アルキルである]。
【0029】
Tにより表される好ましいアゾ基は、式A−N=N−[式中、各Aは、独立して、置換されていてもよいフェニルまたは置換されていてもよいナフチルである]のものである。そのような基の例は、Arに関し先に挙げている。
【0030】
式(2)において、Lは式(3)のものであることが好ましい:
−L(−G−L
式(3)
[式中:
は、単一の共有結合であるか、または置換されていてもよいフェニルもしくはナフチルであり;
は、置換されていてもよいフェニルまたはナフチルであり;
Gは、−O−、−NR−、−N=N−、−NR−CO−、−NRCONR−、−S−、−SO−、−SO−、−SONRまたはCR=CR−であり、これに関し、各Rは、独立して、HまたはC1−4−アルキルであり;そして
Xは、0、1または2である]。
【0031】
A、L、L、LおよびAr上の好ましい所望による置換基としては、ハロゲン(特にFおよびCl)、ニトロ、シアノ、−CF、−OR、−SR、−NR、−C(O)R、−C(O)OR、−SOまたは−SORか、または、−OH、−SOH、−COOH、−PO、C1−4−アルコキシもしくはヒドロキシ−C1−4−アルキレン−オキシにより置換されていてもよいC1−6−アルキルが挙げられ;
これに関し:
は、Hであるか、−OH、−SOHもしくは−COOHにより置換されていてもよいC1−6−アルキルであるか、または、C1−4−アルキル、−OH、−SOH、−COOH、−NHもしくは−NOにより置換されていてもよいフェニルであり;
およびRは、それぞれ独立して、H、−CO(C1−6−アルキル)または−CONHであるか、−OH、−SOHもしくは−COOHにより置換されていてもよいC1−6−アルキルであるか、または、C1−4−アルキル、−OH、−SOH、−COOH、−NHもしくは−NOにより置換されていてもよいフェニルであり;あるいは
およびRは、それらが付着している窒素と一緒になって、5員または6員環(好ましくはモルホリンまたはピペラジン)を形成する。
【0032】
A、L、L、LおよびAr上の特に好ましい所望による置換基としては、C1−4−アルキル、C1−4−アルコキシ、−OH、−COOH、−PO、−SOH、ニトロ、−Cl、−F、−CF、アミノおよび−COOC1−4−アルキルの1以上が挙げられる。
【0033】
式(4)の化合物は、少なくともスルホ基と同数のカルボキシ基を含有することが好ましい。
黒色着色剤は、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは1:2〜85:15、特に1:1〜80:20の重量比で、式(2)または(4)の染料の混合物を含む。
【0034】
他の黒色染料も、単独で、または式(2)および/もしくは(4)の化合物に加えて、用いることができる。
式(4)の化合物は、米国特許公報第5203912号に記載されているとおりに調製することができる。
【0035】
成分e)は、組成物中に、好ましくは44〜68部、より好ましくは45〜63部、特に46〜61部、さらに特に50〜57部の量で存在する。
成分f)は、組成物中に、好ましくは0〜7.5部、より好ましくは1〜7.2部、特に2〜7部、さらに特に3.5〜6.5部の量で存在する。
【0036】
成分g)として用いられる界面活性剤は、イオン性、より好ましくは非イオン性であることができる。アセチレングリコール活性剤が好ましく(特に2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)、例えば、Air Productsから入手可能なSurfynolTM界面活性剤、特にSurfynolTM 465、104Eおよび465である。
【0037】
成分g)は、組成物中に、好ましくは0.001〜3部、より好ましくは0.01〜3部、特に0.1〜2.5部、さらに特に0.2〜1.5部の量で存在する。
ポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルは、好ましくは8000〜50000、より好ましくは10000〜40000、特に13000〜30000、さらに特に15000〜25000のMWTを有する。
【0038】
好ましいポリアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールエーテルは、ポリ(エチレンオキシド)および/またはポリ(プロピレンオキシド)基、特にポリ(エチレンオキシド)基を含む。
【0039】
ポリ(エチレンオキシド)15000〜25000が、とりわけ好ましい。
成分h)は、組成物中に、好ましくは0.1〜5部、より好ましくは0.25〜4部、特に0.5〜3部、さらに特に0.8〜2.2部の量で存在する。
【0040】
殺生物剤の素性(identity)は重要ではなく、ProxelTM GXLがインクに一般に用いられている典型的な殺生物剤である。成分i)は、組成物中に、好ましくは0.001〜1.5部、より好ましくは0.01〜1部、特に0.01〜0.3部の量で存在する。
【0041】
上記成分に加え、該インクは、1以上のインク添加物を含んでいてもよい。IJPインクに適した好ましい添加剤は、pH調整剤および/または緩衝剤、抗コゲーション剤、レオロジー改質剤、腐敗抑制剤およびキレート化剤および染料である。そのような添加剤すべての合計量は、10重量部以下であることが好ましい。
【0042】
一態様において、インクは顔料を含まない。他の態様において、インクは、エチレングリコールモノブチルエーテルを含まない。他の態様において、インクはアクリルバインダーを含まない。
【0043】
上記のことを考慮すると、とりわけ好ましいインクは、
a)1〜11部のジエチレングリコールモノブチルエーテル;
b)22〜41部のグリセロール;
c)1.4〜3.6部のペンタン−1,5−ジオール;
d)0.6〜8部の水溶性着色剤;
e)44〜68部の水;
f)1〜7.2部の2−ピロリジノン;
g)0.001〜3部の非イオン性界面活性剤;
h)いずれの場合も8000〜50000のMWTを有するポリ(エチレン)グリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルを合計0.1〜5部;ならびに
i)0.001〜1.5部の殺生物剤;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく
を含む。このインクにおいて、粘度は3〜10cpであり、表面張力は20〜45ダイン/cmであり、pHは6〜10であることが好ましい。
【0044】
上記のことを考慮すると、とりわけ好ましいインクは、
a)2〜5部のジエチレングリコールモノブチルエーテル;
b)27〜33部のグリセロール;
c)0.8〜6部のペンタン−1,5−ジオール;
d)1.5〜7部の水溶性着色剤;
e)46〜61部の水;
f)3.5〜6.5部の2−ピロリジノン;
g)0.5〜1.5部の非イオン性界面活性剤;
h)いずれの場合も15000〜25000のMWTを有するポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルを合計0.8〜2.2部;ならびに
i)0.01〜0.3部の殺生物剤;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく
を含む。このインクにおいて、粘度は4〜8cpであり、表面張力は27〜38ダイン/cmであり、pHは6.8〜8.3であることが好ましい。
【0045】
a)〜i)の部数は合計100になることが好ましい。これは、追加的構成成分は存在する可能性がないと言うことを意図したものではなく、特定成分の互いに対する相対量を定義しているに過ぎない。
【0046】
本発明のインクは、好ましくは3部未満、より好ましくは2部未満、特に1部未満のエチレングリコールモノブチルエーテルを含み、さらに特にエチレングリコールモノブチルエーテルを含まない。
【0047】
表面張力の好ましい測定方法は、DuNouyリングの使用を含む。
インク組成物は、好ましくは10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満、特に1ミクロン未満の平均孔径を有するフィルターに通して濾過されている。
【0048】
本発明の第2の観点に従って、黄色インク、マゼンタインク、シアンインクおよび黒色インクを含むインクセットであって、各インクが独立して先に記載したとおりである、前記インクセットを提供する。
【0049】
インクセットの黄色インク、マゼンタインク、シアンインクおよび黒色インクに用いられる着色剤は、本発明の第1の観点に関し先に記載し選んだとおりであることが好ましい。
【0050】
本発明の第3の観点に従って、黄色インク、マゼンタインク、シアンインクおよび黒色インクを含むインクセットを提供する。これに関し、
(a)黄色インクは、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 132、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Acid Yellow 23、またはそれらの2以上を含む混合物、特にC.I.Direct Yellow 132を含み;
(b)マゼンタインクは、C.I.Acid Red 52、先に定義した式(1)のモノアゾ染料(遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらない)、またはそれらの混合物、特に、1:99〜25:75の重量比でのそれらの混合物を含み;
(c)シアンインクは、C.I.Direct Blue 86および/またはC.I.Direct Blue 199、特にC.I.Direct Blue 199を含み;そして
(d)黒色インクは、C.I.Direct Black 19、Mobay Black SP、Bayscript Black SP、Steiner Black SP、または式(2)もしくは(4)の染料(遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらない)、またはそれらの混合物、特に、10:90〜90:10の重量比での式(2)および(4)の染料(遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらない)の混合物を含む。
【0051】
本発明の第3の観点のインクセットにおけるC.I.Acid Red 52:式(1)のモノアゾ染料の好ましい比および式(2)の染料:式(4)の染料の好ましい比は、本発明の第1の観点に関し上記したとおりである。
【0052】
インクセットのインクは、それぞれ独立して、本発明の第1の観点に関し先に記載し選んだとおりであることが好ましい。
本発明の第4の観点に従って、本発明の第1の観点に従ったインクまたは本発明の第2もしくは第3の観点に従ったインクセットをインクジェット印刷機により基材に施用することを含む、基材上に像を印刷するための方法を提供する。
【0053】
基材は、紙、プラスチックフィルムまたは生地材料であることが好ましい。紙は、普通紙または加工紙であることができ、酸性、アルカリ性または中性の性質を有することができる。市販の紙の例としては、Xerox Acid PaperおよびXerox Alkaline紙(Xeroxから入手可能);Stora Ensoからの4CC紙(例えば、130gsm紙、特に絹)、UPM Brite紙(例えば、Chapelle Darblay UPM Brite 63 C、H 42〜52g/m、UPM Brite 65 C、H 42〜55g/m、UPM Brite 68 C、H 45〜55g/m、Kajaani UPM Brite 68 C 48.8〜55g/m、UPM Brite 68 H、G 48.8〜60g/m、UPM Brite 72 C、H、G 48.8〜60g/m、UPM Brite 76 C、H、G 48.8〜60g/m、Schongau UPM Brite 68 C、H 45〜55g/m、UPM Brite 72 C、H 45〜55g/mおよびUPM Brite 76 C、H 45〜55g/m 52gsm Brite CSWO);ならびに、SappiからのAero Gloss Sheet紙(例えば、68lb/7ptおよび83lb/9pt)およびGloss Web紙(例えば、90lb T、100lb T、68lb/7pt、73lb/8ptおよび83lb/9pt)が挙げられる。
【0054】
本発明の第5の観点に従って、それぞれチャンバーと本発明の第1の観点に従ったインクまたは本発明の第3もしくは第4の観点に従ったインクセットとを含む1以上のインク容器を含み、前記インクが1以上のチャンバー内に存在する、インクジェット印刷機を提供する。
【0055】
本発明のインクは、商業用印刷機、特に圧電式インクジェット印刷機にとりわけ有用である。それらは、ノズルを詰まらせる傾向が低く、多種多様な基材に適している。液滴の良好な鮮明度は、裏抜け率が低いことで実現することができる。これは、該インクが、軽くて薄い基材にも適していることを意味する。
【0056】
本発明を以下の実施例によりさらに例示する。ここにおいて、すべての部および百分率は、特記しない限り重量に基づく。
M1は、米国特許公法第6635747号の実施例3に記載されている染料である。
【0057】
M2は、C.I.Acid Red 52である。
Y1は、C.I.Direct Yellow 132である。
C1は、C.I.Direct Blue 199である。
【0058】
K1は、米国特許公報第7056376号の実施例2に記載されている染料である。
K2は、米国特許公報第5203912号の実施例2に記載されている染料である。
Glyは、グリセロールである。
【0059】
P15は、ペンタン−1,5−ジオールである。
2Pは、2−ピロリジノンである。
S465は、Air Productsからの界面活性剤、SurfynolTM 465である。
【0060】
PEGは、MW20000のポリ(エチレングリコール)である。
Bioは、ProxelTM GXL(殺生物剤)である。
BUCは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【実施例】
【0061】
実施例1〜4
インク1〜4は、表1に明記した成分を表示部数で混合することにより調製した。着色剤の列には、括弧内の含まれている着色剤(1以上)の部数と、1より多くの着色剤が含まれている場合はその重量比が記載されている。
【0062】
【表1】

【0063】
結果
インク1〜4の性質は表2に示すとおりであった:
【0064】
【表2】

【0065】
実施例5〜9および比較例1〜3
インク5〜9および比較インクCE1〜CE3は、表3に明記した成分を表示部数で混合することにより調製した。
【0066】
【表3】

【0067】
結果
不使用期間後にインクが商業用印刷機のノズルの上を覆ってクラストを形成しノズルを詰まらせる可能性を査定するために、エージングしたインクが静置後に再溶解する能力を、以下のように査定した。
【0068】
評価するインクを開放空気中で40℃に温め、この温度で24時間維持した。残っている残留物(0.2g)を、水(2cm)が入っている容量10cmのバイアルに量り入れた。その後、バイアルを毎分120サイクルの頻度で振とうし、残留物が再溶解するのにかかる時間を記録した。試験を繰り返し、平均値を記録した。再溶解にかかる時間が長いほど、クラストを形成しノズルを詰まらせる可能性が高いことを示す。
【0069】
【表4】

【0070】
表4から、所定の着色剤に関し、実施例が比較例より迅速に再溶解することがわかる。これは、商業用インクジェット印刷機においてノズルを詰まらせる可能性がより低いことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むインク組成物:
a)0.2〜11部のジエチレングリコールモノアルキルエーテル;
b)20〜45部のグリセロール;
c)0.5〜8部のペンタン−1,5−ジオール;
d)0.5〜9部の着色剤;
e)40〜70部の水;
f)0〜8部の2−ピロリジノン;
g)0〜3部の界面活性剤;
h)いずれの場合も少なくとも5000のMWTを有するポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルを合計0〜5部;ならびに
i)0〜5部の殺生物剤;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく。
【請求項2】
2.5〜11cPの粘度を有する、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
5〜7cPの粘度を有する、請求項1〜2のいずれか一項に記載のインク。
【請求項4】
20〜45ダイン/cmの表面張力を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク。
【請求項5】
6〜10のpHを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク。
【請求項6】
以下を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインク:
a)1〜11部のジエチレングリコールモノブチルエーテル;
b)22〜41部のグリセロール;
c)1.4〜3.6部のペンタン−1,5−ジオール;
d)0.6〜8部の水溶性着色剤;
e)44〜68部の水;
f)1〜7.2部の2−ピロリジノン;
g)0.001〜5部の非イオン性界面活性剤;
h)いずれの場合も8000〜50000のMWTを有するポリ(エチレン)グリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルを合計0.1〜5部;ならびに
i)0.001〜1.5部の殺生物剤;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく。
【請求項7】
以下を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク:
a)2〜5部のジエチレングリコールモノブチルエーテル;
b)27〜33部のグリセロール;
c)0.8〜6部のペンタン−1,5−ジオール;
d)1.5〜7部の水溶性着色剤;
e)46〜61部の水;
f)3.5〜6.5部の2−ピロリジノン;
g)0.5〜1.5部の非イオン性界面活性剤;
h)いずれの場合も15000〜25000のMWTを有するポリアルキレングリコールおよび/またはポリアルキレングリコールエーテルを合計0.8〜2.2部;ならびに
i)0.01〜0.3部の殺生物剤;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく。
【請求項8】
成分d)が、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 132、C.I.Direct Yellow 142および/またはC.I.Acid Yellow 23を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインク。
【請求項9】
成分d)がC.I.Direct Yellow 132を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク。
【請求項10】
成分d)が、C.I.Acid Red 52、式(1)のモノアゾ染料、または、遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらず、それらの混合物を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインク:
【化1】

[式中:
Arは、置換されていてもよいフェニルまたは置換されていてもよいナフチルであり;
は、置換されていてもよい窒素含有複素環式基であって、該複素環式基中の窒素原子との結合によりトリアジン環に付着している基であり;
は、Hであるか、または−OH、−COOHもしくは−SOHにより置換されていてもよいC1−4−アルキルであり;そして
tは0または1である]。
【請求項11】
成分d)が、C.I.Acid Red 52および式(1)のモノアゾ染料を1:99〜25:75の重量比で含む、請求項10に記載のインク。
【請求項12】
成分d)が、C.I.Direct Blue 86、C.I.Direct Blue 199またはそれらの混合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク。
【請求項13】
成分d)がC.I.Direct Blue 199を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク。
【請求項14】
成分d)が、C.I.Direct Black 19、Mobay Black SP、Bayscript Black SP、Steiner Black SP、または、遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらず、式(2)もしくは(4)の染料、またはそれらの混合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク:
T−Q−N=N−L−T
式(2)
[式中:
各Tは、独立してアゾ基であり;
Qは、置換されていてもよく金属化されていてもよい1,8−ジヒドロキシナフチル基であり;そして
Lは、二価の有機リンカー基である];ならびに
【化2】

[式中:
は、カルボキシであり;
は、H、カルボキシ、スルホ、ハロ、ヒドロキシ、C1−4−アルコキシまたはC1−4−アルキルであり;
YおよびZは、それぞれ独立して、H、カルボキシまたはスルホであり;そして
およびRは、それぞれ独立して、Hであるか、C1−4−アルキルであるか、またはカルボキシもしくはスルホ基を持つC1−4−アルキルである]。
【請求項15】
3部未満のエチレングリコールモノブチルエーテルを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のインク。
【請求項16】
エチレングリコールモノブチルエーテルを含まない、請求項1〜15のいずれか一項に記載のインク。
【請求項17】
黄色インク、マゼンタインク、シアンインクおよび黒色インクを含むインクセットであって、
(a)黄色インクが、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 132、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Acid Yellow 23、またはそれらの2以上を含む混合物を含み;
(b)マゼンタインクが、C.I.Acid Red 52、遊離酸の形にあるか塩の形にあるかにかかわらず請求項10で定義した式(1)のモノアゾ染料、またはそれらの混合物を含み;
(c)シアンインクが、C.I.Direct Blue 86および/またはC.I.Direct Blue 199を含み;そして
(d)黒色インクが、C.I.Direct Black 19、Mobay Black SP、Bayscript Black SP、Steiner Black SP、または請求項14で定義した式(2)もしくは(4)の染料を含む、
前記インクセット。
【請求項18】
黄色インク、マゼンタインク、シアンインクおよび黒色インクを含むインクセットであって、各インクが独立して請求項1〜16のいずれか一項で定義したとおりである、前記インクセット。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のインクまたは請求項17もしくは18に記載のインクセットをインクジェット印刷機により基材に施用することを含む、基材上に像を印刷するための方法。
【請求項20】
それぞれチャンバーと請求項1〜16のいずれか一項に記載のインクまたは請求項17もしくは18に記載のインクセットとを含む1以上のインク容器を含み、前記インクまたはインクセットが1以上のチャンバー内に存在する、インクジェット印刷機。

【公表番号】特表2013−520526(P2013−520526A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553402(P2012−553402)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050123
【国際公開番号】WO2011/104522
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(512217547)フジフィルム・イメイジング・カラランツ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】