説明

インストルメントパネル

【課題】見栄えがよく、かつ、インストルメントパネルの表面形態が自動車のフロントガラス面に映り込むことが極めて少なく、運転に支障が生じないようにするのに好適なインストルメントパネルの提供。
【解決手段】インストルメントパネルの上面の略水平面部のうちフロントガラス面側から少なくとも半分の領域面が模様状絞に形成され、かつ、前記模様状絞の凸部面の少なくとも一部に突状20が形成され、前記凸部面を含む1つの領域の突状20と該領域とは異なる領域における突状22が異なる方向を示すインストルメントパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルに係り、見栄えがよく、かつ、インストルメントパネルの表面形態が自動車のフロントガラス面に映り込むことが極めて少なく、運転に支障が生じないようにするのに好適なインストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルは、運転者等から見て触感、見栄えがよく、所謂高級感を呈することが望まれており、このため、種々の工夫が施されておる。一方、運転面からは、インストルメントパネルのフロントガラス面側に位置する略水平面部の形態がフロントガラス面に映ると、運転者は運転席から前方の景色を明瞭に認識することが困難となり、運転に支障を来すことがある。
【0003】
このような弊害を解消するためにインストルメントパネルを改善することが望まれている。従来、フロントガラス面側に位置する略水平面部の形態がフロントガラス面に映ることを防止する面から、前記インストルメントパネルの表面を艶消し加工することが報告されている。(特開2006−282052号公報)
【0004】
しかしながら、インストルメントパネルの表面を艶消し加工すると、フロントガラス面側に位置するインストルメントパネルの略水平面部の形態がフロントガラス面に映ることを防止することはできるが、運転者等から見て触感、見栄えがよく、所謂高級感を呈することができない。
【0005】
【特許文献1】特開2006−282052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記した問題点を解決し、見栄えがよく、かつ、インストルメントパネルの表面形態が自動車のフロントガラス面に映り込むことが極めて少なく、運転に支障が生じないようにすることができるインストルメントパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記した問題点を解決するために下記の構成からなる。
すなわち、本発明のインストルメントパネルは、以下の構成からなる。
<1> インストルメントパネルの上面の略水平面部のうちフロントガラス面側から少なくとも半分の領域面が模様状絞に形成され、かつ、前記模様状絞の凸部面の少なくとも一部に突状が形成され、前記凸部面を含む1つの領域の突状と該領域とは異なる領域における突状が異なる方向を示すことを特徴とするインストルメントパネルである。
<2> 前記インストルメントパネルの上面の略水平面部とインストルメントパネルの運転席側に位置する略傾斜部との接続領域部が前記略水平面部から前記略傾斜部にかけてパターンが徐々に変化した除変領域面からなる前記<1>に記載のインストルメントパネルである。
<3> インストルメントパネルの上面の略水平面部の領域面が模様状絞に形成され、前記模様状絞は断面が任意形状の多数の柱状部を有し、該柱状部の上面に突状が形成され、1つの領域内の柱状部の上面に形成された突状と、他の領域内の柱状部の上面に形成された突状が異なる方向を示す前記<1>又は<2>に記載のインストルメントパネルである。
<4> 前記インストルメントパネルの上面の略水平面部の領域面は断面が任意形状の多数の柱状部を有し、該柱状部の上面に突状が形成され、前記インストルメントパネルの上面の略水平面部とインストルメントパネルの運転席側に位置する略傾斜部との接続領域部が前記略水平面部から前記略傾斜部にかけて前記柱状部の高さが次第に低くなっている前記<2>に記載のインストルメントパネルである。
<5> 前記接続領域部が前記略水平面部から前記略傾斜部にかけて前記突状の高さが次第に低くなっており、かつ、皮絞パターンが深くなっている前記<4>に記載のインストルメントパネルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インストルメントパネルの上面の略水平面部のうちフロントガラス面側から少なくとも半分の領域面が模様状絞に形成され、かつ、前記模様状絞の凸部面の少なくとも一部に突状が形成され、前記凸部面を含む1つの領域の突状と該領域とは異なる領域における突状が異なる方向を示すので、インストルメントパネルの略水平面部は光を乱反射し、自動車のフロントガラス面にインストルメントパネルの略水平面部の表面形態が映りにくくなる。したがって、運転に支障が生じない。また、インストルメントパネルの略水平面部は、模様状絞が形成されているので、インストルメントパネルの略水平面部は見栄えの良い状態を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、自動車内のインストルメントパネルの配置状態を示し、図2は凸型真空成形する前の シートにおけるインストルメントパネル部分の絞形成領域を示している。
図において、インストルメントパネル表面は、インストルメントパネルのフロントガラス16に最も近い領域であって略水平面部10と、運転者側の前記略水平面部10に対して傾斜している略傾斜部14と、略水平面部10と略傾斜部14と間に位置する接続部12からなっている。
【0010】
略水平面部10の表面形態は、最もフロントガラス16に映りやすい領域であるが、本実施の形態においては、略水平面部10は、図3(A)に示す構造を有している。図3(A)は、略水平面部10の一部を拡大して示すもので、略水平面部10の表面は多数の円形形状の柱状部18が形成されており、それぞれの円形形状の表面には、図3(B)に示すように複数の突状部20が設けられている。突状部の形成方向は、1つの領域では一定であり、他の領域では前記形成方向と異なる方向となっている。なお、乱反射させるためには、1つの領域はできるだけ小さい方が好ましい。
【0011】
図3(A)においては、円形形状の柱状部18の群が形成された三角領域では、突状20が一定の方向を示し、この三角領域以外の他の領域では、突状22の方向が任意の方向を示している。突状20が一定の方向を示す領域は、三角領域に限らず、四角領域、その他の多角領域等であってもよい。
【0012】
略傾斜部14は、触感、見栄えのよい絞として皮絞パターンとなっており、接続部12は、略水平面部10と略傾斜部14との除変領域面となっている。ここにいう除変領域面とは、略水平面部10のパターンから略傾斜部14のパターンが徐々に変化したパターンが形成された領域面であることを意味し、インストルメントパネルにおいて急激な絞パターンの変化がないため、インストルメントパネル全体の見栄えが優れている。
【0013】
徐変領域面としては、略水平面部10の表面は水平断面が任意形状の多数の柱状18を有し、柱状18の上面に突状20が形成され、略水平面部10と略傾斜部14との接続部12は略水平面部10から略傾斜部14にかけて前記突状20及び/又は多数の円形形状等の柱状部18の高さが次第に低くなっていくものが好ましい。また、略水平面部10と略傾斜部14との接続部12は、略傾斜部14の皮絞パターンを略傾斜部14から略水平部に向けて浅く設けることが好ましい。
とすることもできる。
【0014】
上記した実施の形態であるインストルメントパネルにおいては、略水平面部10は、多数の円形状が形成された模様が形成されており、見栄えが良く、また、突状20の形成方向は所定の領域では一定であり、他の領域では前記形成方向と異なる方向と異なる任意の方向となっているため、略水平面部10に入射される光は乱反射される。この結果はフロントガラス面にインストルメントパネルの表面形状がそのまま映ることがない。したがって、運転者は運転席から前方の景色を明瞭に認識することができ、運転に支障を生じることが無い。
【0015】
本発明において、略水平面部10は、多数の平面断面が円形形状のパターンに限定されるものでなく、任意の形状を採用することができる。例えば、平面断面が3角形状、4画形状・・、その他の多角形状、楕円形状、その他任意の図形形状の柱状部を採用することもでき、これらの柱状部の表面に突状が形成されたものであってもよく、模様の見栄えの点から任意の形状を選定することができる。
【0016】
また、本発明において、多数の平面断面が円形形状面上に形成される複数の直線状の突状20の代わりに平面断面が円形形状以外の模様状絞に凸面部に乱反射が可能な形状を採用することができる。すなわち、複数の直線状の突状の変わりに「く」字状の突状、弧状、曲線状等の任意の形状の突状を採用することもできる。これらの突状の場合、1つの領域の突状の大部分の方向性が他の領域の突状の大部分の方向性と異なる方向性を有する部分を有することが望ましい。
【0017】
略水平面部10は、全面が上記した表面形態を有することが望ましいが、必ずしも全面に上記した表面形態を有する必要はなく、略水平面部10のうちフロントガラス側から少なくとも半分が上記した表面形態を有することが好ましく、より好ましくは略水平面部10のうちフロントガラス面側から少なくとも2/3以上、さらに好ましくは略水平面部10の全面が上記した表面形態を有することが望ましい。
【0018】
インストルメントパネル自体のグロス値の規格値は、1.3〜1.6を上限とするが、本発明のインストルメントパネルは、略水平面部10は、上記した表面形態を維持しつつ、グロス値が60°で1以下、好ましくは0.7以下であることが望ましく、85°で1.5以下、好ましくは1,2以下あることが望ましい。
【0019】
本発明のインストルメントパネルは、ロール・エンボス法、フラットエンボス法によって作製することができる。ロール・エンボス法においては、例えば、略水平面部と略傾斜部と接続領域部がそれぞれ所定に形状が彫刻された、径700mm、長さ1680mmのエンボスロールで幅1200mmの合成樹脂シートに連続的に絞押した後、2000mmの長さにそれぞれカットし、その後、凸型真空成形によって製造することができる。
【0020】
フラットエンボス法においては、例えば、略水平面部と略傾斜部と接続領域部がそれぞれ所定に形状が彫刻された絞板を用いて縦1200mm、横2000mmの合成樹脂シートに絞押した後、凸型真空成形によって製造することができる。略水平面部の表面形態をより忠実に表現するにはフラットエンボス法が好適である。
【実施例】
【0021】
<実施例>
インストルメントパネルの略水平面部に相当するサンプルを作製し、これらのサンプルを実車のインストルメントパネルの略水平面部のフロントガラス側の面に戴置した。また、実車のフロントガラスの車外面を黒い布で覆い、運転席側からみたときのフロントガラスへのインストルメントパネル面形態の映り込み具合を目視し、下記の5段階で評価した。また、サンプル表面のグロス60°及び85°について測定し、その結果を示した。
【0022】
サンプル1〜5は各々図4〜図8の写真で示す通りである。
サンプル1:図3に示す表面形態を有し、図3(A)における突状が一定の方向を示す三角の領域が均一に配置されており、これらの三角の領域の1辺が10mmの大きさを有する。(図4:実施例1)
サンプル2:サンプル1の模様を1/7に縮小した柄模様からなる。(図5:実施例2)
サンプル3:柄模様の突部面に突状が形成され、これらの突状がランダムに種々の方向を向いている柄模様からなる。(図6:比較例1)
サンプル4:皮の柄模様の凸部面に細かな凹凸が入った柄からなる。(図7:比較例2)
サンプル5:皮の柄模様の凸部面には何も模様が入っていない。(図8:比較例3)
【0023】
<評価>
1:インストルメントパネル面形態がフロントガラス面に全く映っていない。
2:インストルメントパネル面形態がフロントガラス面に弱く映っている。
3:インストルメントパネル面形態がフロントガラス面に部分的に映っている。
4:インストルメントパネル面形態がフロントガラス面に少し強く映っている。
5:インストルメントパネル面形態がフロントガラス面にはっきり映っている。
【0024】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0025】
表1の結果から、サンプル4,5ではインストルメントパネル面形態がフロントガラス面に少し強く映っているが、サンプル3ではインストルメントパネル面形態がフロントガラス面に部分的に映っているが、サンプル1及びサンプル2ではインストルメントパネル面形態がフロントガラス面に弱く映っているのみであり、グロス値はインストルメントパネルのグロス値の規格値を満たしている。
したがって、サンプル1及びサンプル2は、窓映り低減に対し効果があることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】自動車内のインストルメントパネルの絞形成領域を示すための説明図である。
【図2】凸型真空成形する前の シートにおけるインストルメントパネル部分の絞形成領域をための説明図である。
【図3】(A)は、略水平面部10の一部を拡大して示す平面図、(B)は(A)の縦断面図である。
【図4】サンプル1の拡大写真(倍率:2倍)である。
【図5】サンプル2の拡大写真(倍率:2倍)である。
【図6】はサンプル3の拡大写真(倍率:5倍)である。
【図7】サンプル4の拡大写真(倍率:3倍)である。
【図8】サンプル5の拡大写真(倍率:3倍)である。
【符号の説明】
【0027】
10 略水平面部
12 接続部
14 略傾斜部
16 フロントガラス
18 柱状部
20 突状
22 突状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの上面の略水平面部のうちフロントガラス面側から少なくとも半分の領域面が模様状絞に形成され、かつ、前記模様状絞の凸部面の少なくとも一部に突状が形成され、前記凸部面を含む1つの領域の突状と該領域とは異なる領域における突状が異なる方向を示すことを特徴とするインストルメントパネル。
【請求項2】
前記インストルメントパネルの上面の略水平面部とインストルメントパネルの運転席側に位置する略傾斜部との接続領域部が前記略水平面部から前記略傾斜部にかけてパターンが徐々に変化した徐変領域面からなる請求項1に記載のインストルメントパネル。
【請求項3】
インストルメントパネルの上面の略水平面部の領域面が模様状絞に形成され、前記模様状絞は断面が任意形状の多数の柱状部を有し、該柱状部の上面に突状が形成され、1つの領域内の柱状部の上面に形成された突状と、他の領域内の柱状部の上面に形成された突状が異なる方向を示す請求項1又は請求項2に記載のインストルメントパネル。
【請求項4】
前記インストルメントパネルの上面の略水平面部の領域面は断面が任意形状の多数の柱状部を有し、該柱状部の上面に突状が形成され、前記インストルメントパネルの上面の略水平面部とインストルメントパネルの運転席側に位置する略傾斜部との接続領域部が前記略水平面部から前記略傾斜部にかけて前記柱状部の高さが次第に低くなっている請求項2に記載のインストルメントパネル。
【請求項5】
前記接続領域部が前記略水平面部から前記略傾斜部にかけて前記突状の高さが次第に低くなっており、かつ、皮絞パターンが深くなっている請求項4に記載のインストルメントパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−18238(P2010−18238A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182793(P2008−182793)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(390023009)共和レザー株式会社 (17)
【Fターム(参考)】