説明

インスリン投与の支援のための栄養指標の推定

個人に摂取された食事の栄養指標を推定するための装置を開示する。この装置は使用者による食事摂取の前後に測定された使用者の少なくとも生理指標と使用者に投与された医薬の少なくとも投与量の入力値を得るように構成された処理手段を具備している。入力値に基づき、この装置は得られた少なくとも一の入力値から食事の栄養指標を決定し、決定された推定値を表す出力を生成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物治療の管理のための装置、技術及び方法に関する。特に本発明は、個人に摂取された食事の栄養指標を見積もるための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者が自己治療が必要な状況の際、現状における投与量を決定できることがしばしば望まれる。これは例えばインスリン依存型糖尿病罹患者の場合である。したがって、本明細書の引用はほとんどインスリン投与による糖尿病治療に関するものである。しかしながら、本明細書に記載の装置や方法の他の使用法も可能である。
【0003】
糖尿病は少なくとも二の異なる病気の慣用名であり、一は免疫系を介した膵臓のβ細胞の特異的な破壊を特徴とし(インスリン依存型糖尿病(IDDM)又は1型糖尿病)、もう一はインスリン感受性(インスリン耐性)及び/又はβ細胞の機能欠損を特徴とする(インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)又は2型糖尿病)。
【0004】
1型糖尿病の主な治療は失われたインスリン分泌機能の代用を具備し、これに対して2型糖尿病の治療はより複雑である。より具体的には、2型糖尿病の初期の治療において幾つかの異なる種類の医薬、例えば、β細胞の活性を刺激する医薬(例えば、スルホニル尿素/メグリチナイド)だけでなく、インスリン感受性を増加させる(シグリタゾン)、肝糖放出を減少させる(例えば、メトホルミン)又は腸管からの糖の取り込みを減少させる(α−グルコシターゼ阻害剤)医薬が用いられることがある。しかし、上記悪化はβ細胞刺激因子が結局該細胞を刺激しなくなるという事実を反映しており、患者は糖調節を改善するために単独の治療又は経口医薬と組み合わせたインスリン治療を受けなければならない。
【0005】
現在、日常のインスリン治療には二の主な様式があり、一は注射とインスリン注射ペンを含み、もう一は注射ポンプを含む。注射とインスリン注射ペンは使いやすく比較的安価であり、通常一日何回かの、例えば3から4回又はそれ以上、注射を含む。通常、注射は食事と一緒に行う。
【0006】
インスリン注射ペン又は注射ポンプを用いた適切なインスリン投与を維持するために、ほとんどの糖尿病患者は多かれ少なかれ頻繁に、好ましいインスリン治療を維持するために血糖値を測定する必要がある。血糖値の測定はランセットで採血した少量の血液を用いて糖測定器により行われうる。従来の糖測定システムは通常使用者に指示された通り読み取りを行い、測定値が危険な水準(例えば、高血糖又は低血糖症状)にある場合に警告を提供しうる。
【0007】
インスリンや他の医薬を用いた自己治療の場合、患者は食事の直前のボーラス投与だけでなく、食間に摂取された食物を相殺するために医薬の定期的な「バックグラウンド」投与を行う必要がありうる。正確な投与量は、特にボーラス投与の場合、多くの異なる因子に依存し、故に患者が即座に正確な投与量を推測又は計算することは困難である。
【0008】
上記の正確な投与量の計算の難しさによって、患者は現状に関係する何らかの特別な状況を考慮することなく、平均的な投与量を採用する結果になる。このような平均的な投与量が特定な時間における特定な患者のための医薬の正確な必要量に一致することは滅多に無いので、これは不利益である。例えば、食事摂取に関連する特性、例えば栄養組成、を推定することによって現状を考慮した場合でも、誤った見積もりが頻繁に生じ、投与量を不正に計算する結果になる。
【0009】
運搬された投与量が必要な投与量よりも少なかった場合、不十分な医薬が患者に運搬される。これは医薬がインスリンの場合、患者が高血糖に苦しむ結果になり得、従って、長期間に及ぶ合併症のリスクを増加させる。他方、運搬された投与量が必要な投与量よりも多かった場合、過剰の医薬が患者に運搬される。これは医薬がインスリンの場合、低血糖に苦しむ結果になり得、従って関連する既知の予後に苦しむリスクがある。
【0010】
更にインスリン投与の場合、推定された食事の栄養組成、特に食事の炭水化物含有量がインスリンの正確な投与量を正確に計算するための非常に重要な因子である。炭水化物含有量の見積もりにおける何らかの不確定性はインスリンの必要な投与量の推定値の決定をより不正確にする結果になり得る。不幸なことに、食事を正確に評価できる患者はほとんどいない。この難しさは以前より認められ、投与量の計算を改善する試みが何度かなされている。
【0011】
Graff、Gross、Juth、Charlsonは集中的なインスリン治療を受けている患者がどの程度の精度で炭水化物の見積もりをしているか調べた[1]。彼らは平均として、炭水化物の含有量を、朝食については8.5%(−93%から+100%)過大評価し、昼食については−28%(−97%から+43%)、夕食については−23%(−95%から+80%)及び間食については−5%(−96%から+122%)過小評価することを見出した。被験者の一回分の食事量の推定値を(被験者のそれぞれの報告された標的血糖値、インスリン感受性及びインスリンの炭水化物に対する割合を用いて計算された)正確な一回分の食事量と比較した場合、被験者は平均としてインスリンの必要量を、食前の血糖値が60mg/kgの場合に0.8±3.74IU及び食後の血糖値が標的値の場合に0.7±4.7IU過大評価した。グラフらはこれらの結果は食事中の炭水化物の見積もりが極めて不正確でることを示唆すると結論付けた。研究は64人の患者について行われ、35人が1型、29人が2型の糖尿病であった。別の研究では、正常の患者が報告した食事量は正確な量の90%であるのに対し、肥満の1型患者が報告した食事量は66%であることが示されている[2]。
【0012】
米国特許出願第2004/180810号明細書では、食事とインスリンの投与量の管理する方法を開示している。患者は食事に何枚のトーストが出る予定であるか理解しており、それに合わせてインスリンを投与する。食後、患者は予定通りにシステムが機能しているか確かめるために血糖値を測定する。もし血糖が予定通りに反応しない場合、炭水化物の推定値が間違いであり得る。米国特許出願第2005/065760号明細書では、使用者がインスリン投与量を決定できるように導く方法が開示されている。米国特許出願第2003/114836号明細書では、使用者が摂取された炭水化物を見積もる方法を十分に理解したことを示した後に、炭水化物の消費量を元に一回の投与量を見積もる評価器について開示している。米国特許出願第2006/272652号明細書では、糖尿病患者を教育するための仮想患者ソフトウェアシステムが開示されている。選定された患者モデルでは使用者がしばしば患者が摂取した炭水化物のグラム量を過大評価及び過小評価することが考慮されている。国際公開第00/10628号パンフレットは外部注射装置に関する。使用者は単回投与量の推定情報を、インスリン感受性、炭水化物の見積もり及び等を理解するために利用することができる。国際公開第00/10628号パンフレットでは、患者の将来の血糖値を予測し、標的範囲外に予測値があった場合に是正活動を推奨する糖尿病管理システムが開示されている。
【0013】
国際公開第01/91633号パンフレットでは、計算された炭水化物の摂取量から血糖値を操作する方法が開示されている。より具体的には、該方法は観察された血糖値と摂取された炭水化物の量を元に炭水化物感受性についての個別の因子を計算する工程を含む。計算された因子を元に理想の糖変動をもたらす炭水化物量の推定値を標的及び開始時の血糖値から計算することができる。
【0014】
従って、食事に含まれる正確な炭水化物量及びそれが正確なインスリン投与量に与える影響を見積もることが困難であると認められる場合であっても、使用者が医薬の投与に関する食事の栄養指標、例えば炭水化物量、を見積もる正確さを改善することを支援する方法や装置がやはり必要である。
【発明の開示】
【0015】
本発明の開示において、一若しくは複数の上記目的を扱うか、又は発明を実施するための形態からだけではなく、下記開示からも明らかな目的を扱う実施形態及び上位概念について記載する。
【0016】
このように、第一の態様では、本発明は栄養指標を見積もるための装置を提供し、該装置は(1)生理指標の少なくとも第1と第2の測定値及び少なくとも使用者に投与された医薬の投与量を示す入力値を得るようにされ、(2)得られた少なくとも入力値から第1と第2の食事間に使用者に摂取された食事の栄養指標の推定値を決定するようにされ、(3)決定された推定値を示すように構成された装置である。
【0017】
従って、本明細書に記載された装置の実施態様は、食事に含まれる炭水化物量のような関連する食事指標を正確に見積もる使用者の能力を改善する。糖尿病に関して、ほとんどの患者が食事量を過小評価するが、摂取された食事に含まれる炭水化物の量はインスリン投与量の計算に大きな影響を与えるので、食事量の誤った見積もりは深刻な問題であり、インスリン投与量を誤る大きな原因である。更に、本明細書に記載された通り食事量の推定値の是正はより正確な食事量の見積もりとインスリン投与量の計算を得るための生理学的モデルに用いることができる。
【0018】
これらの因子、即ち、食事量の推定値は使用者に依存しているという事実とそれが計算されたインスリンの量に大きく関わるという事実は、改善された支援により食事量を見積もろうとする使用者を有利にする。
【0019】
更に、本明細書に記載された方法や装置は医薬の一回の投与量又は複数回の投与量を使用者特異的な、個別の様式で計算することを容易にする。
【0020】
更に、本明細書に記載された方法や装置は医薬の一回の投与量又は複数回の投与量の計算を1回又は複数回の医薬を投与された患者の行動を変化させるために適応させることを容易にする。
【0021】
一回又は複数回の医薬の投与は、例えば、皮下又は静脈送達のような、例えば、注射器や注入器を用いて行われる、医薬の液体投与であっても良い。例えば、注射ペン若しくは針の無い注射器、鼻内噴霧、経口(例えば、錠剤の形態や液体の形態)等の適した方法、これらのような注射装置を用いて、医薬は投与され得る。本明細書に記載の装置は、注射装置、パッチ注入ポンプのような注入装置等の最適な薬剤送達装置の一部を構成するか又は接続され得る。
【0022】
入力値はそれぞれ個別の変数に依存する様々な方法で得られる。従って、入力値は関連する変数値を測定及び/又は保存するように構成された別の装置から直接装置の入力手段に供給され得るか、又は装置は測定手段を具備し得、この場合、関連する入力値は測定により直接得られても良い。その代わりに、又はそれに加えて、幾つかの変数は使用者によって手動で入力されても良い。付加的な入力値は自動的に装置によって生成され得る、及び/又は元から設定されても良い、即ち、それらは最初から入力されても良く、通常不変であるか又は少なくとも滅多に変わらない。
【0023】
従って、入力値は測定、手動で値を入力する、例えば赤外線又は電磁波通信手段のような有線又は無線の通信装置を用いたデータ転送、計算、又は内部保存手段からのデータの読み取りで得られても良い。
【0024】
生理指標の第1と第2の測定の入力値は通常食事摂取の前後に測定される。これらの値は、それぞれ食事摂取の前と後に即時又は個別の時間内に測定され得る。生理指標は更に繰り返し又は断続的に食事摂取の前後の時間に渡って測定されても良い。
【0025】
同様に、使用者に投与された少なくとも投与量の入力値は、装置の入力手段から直接得られても良く、装置の適切なユーザーインターフェイス等の適切な方法によって使用者に手動で入力されても良い。
【0026】
例えば、使用者がインスリン投与量及び/又は類似物の投与量の情報を手動で入力するために、ダイヤル、押しボタン等の適切な手段のような、使用者の入力を受けるための使用者入力手段を装置は具備し得る。その代わりに、又はそれに加えて、装置は、医薬の投与量を伝達するための適切な出力手段を具備する薬物送達手段から直接投与量を得ても良い。食事摂取の周辺の事前に決められた時間、例えば食事摂取の前に薬物は投与され得る。
【0027】
糖尿病の場合、測定された生理指標は本技術分野で周知の適切な方法によって測定され得る使用者の血糖値であり得る。同様に、糖尿病の場合、医薬はインスリン、インスリンアナログ、及び/又はその他の糖尿病治療薬である。この場合、医薬は例えば吸入型インスリン又は注射型インスリンであっても良い。その代わりに、別の種類の血糖値又はインスリン感受性を制御するための医薬、例えばGLP−1類似ホルモン又は経口医薬であっても良い。
【0028】
その代わりに、抗凝血性治療のための一回又は複数回の投与であっても良い。この場合、医薬はワルファリン又はフェンプロクモンであり得る。フェンプロクモンはビタミンKの拮抗薬で血液凝固因子の合成を阻害することにより、凝結を阻害する。抗凝結性治療の間、患者は採血し装置で分析することによって医薬を管理する。これによって、次回の投与量が計算される。投与量が大きすぎる場合、凝結が殆ど起きず、従って危険な出血を引き起こす。投与量が小さすぎる場合、血栓を引き起こす。必要な投与量は患者の食物に含まれるビタミンKの量に依存している。キャベツ類の生成物が多く寄与している。
【0029】
一般的に、医薬はペプチド、タンパク質、ホルモン、生物学的誘導又は活性物質、ホルモン及び遺伝子基剤、その他の栄養剤及び(例えば調合された)固形又は液体状の薬剤を含む。本明細書では、発明を実施するための形態において、インスリンの使用について記載している。
【0030】
通常、使用者は食前に血糖値を測定し得、測定された血糖値と明示的又は暗示的な摂取された食事中の炭水化物量の推定値を元にインスリンの投与量を決定し、食前に決定された投与量を投与する。
【0031】
食事の栄養指標は得られた少なくとも入力値、即ち、食事摂取の前後に測定された少なくとも生理指標及び医薬の投与量、を元に決定される。従って、使用者は摂取された食事の実際の栄養成分についてのフィードバックが提供される。これは同様に、使用者自身の医薬投与量の計算の元になる食事の栄養内容物の推測又は予想の改善を容易にする。従って、本明細書に記載の装置は、使用者の適切な薬物治療の長期間の改善を容易にする。食事に含まれる炭水化物量は栄養指標の一例である。糖尿病に関する医薬の投与量の計算に関して炭水化物量は特に重要である。
【0032】
幾つかの実施態様において、使用者の生理学的モデル、例えば測定された生理指標に基づく投与量と食事の栄養成分の影響に関する生理学的処理のモデル化のための生理学的モデルから栄養成分の推定値を決定する。生理学的モデルが使用者特的なモデルの際、特定の使用者のためのより正確な推定値が決定され得る。例えば、生理学的モデルは、それぞれの使用者のために決定され得、装置に保存された一又は複数のモデル変数を含み得る。生理学的モデルは、食事摂取後の生理指標の値を、食事摂取前の少なくとも生理指標の値と、使用者に投与された医薬の投与量と、及び食事の栄養指標の推定値と、から予測するための生理学的予想モデルであっても良い。栄養指標の推定値はこのような予想モデルに基づき、食事の栄養指標の異なる予備的な推定値を決定するため、食事摂取後の生理指標の予想値を繰り返し計算し、食事摂取後の生理指標の実際の測定値と、対応する食事摂取後の生理指標の予想値とが、最も一致する結果になる栄養指標の値として、栄養指標の推定値を決定することにより決定される。
【0033】
栄養指標の推定値が、生理指標の推定値と食後の生理指標の測定値との違いが閾値よりも小さくなる値として決定された際、特に正確な推定値が提供される。例えば、このような推定値は栄養指標の推定値に関する予想値と測定値の差を最小にするための何らかの適切な数値最小化アルゴリズムを用いて決定される。
【0034】
装置は決定された推定値を表す、使用者が検知可能な出力を生成する出力装置を更に具備する。例えば装置は決定された推定値又は決定された推定値から導出された出力を使用者に表示するためのディスプレイ又はその他の使用者が検知可能な出力、例えば印刷、聴覚出力又はこれらの類似物を提供する出力装置を具備する。出力は何らかの適切な方法、例えば、絶対的又は相対的な内容として、以前に入力された推定値と比較した際の妥当性として、例えば「適切」及び「不適切」に対応する二の信号として、又は二以上の可能な値若しくは連続した尺度に対応する偶数の値として、栄養指標の推定値を示す。
【0035】
その代わりに、又はそれに加えて、装置は決定された推定値又はそれに関して導出された値を別の装置又はシステム、例えばパソコンのようなデータ処理システムに伝達するデータ伝達装置を具備する。データ伝達装置の例は有線又は無線の装置、例えば、シリアルインターフェース、USBインターフェース、ブルートゥースのような短距離高周波インターフェース、赤外線インターフェース、又は類似物を含む。他の例では、メモリーカード、メモリースティック、ディスケット、その他の除去可能な保存媒体を具備する。従って、複数回の食事の推定値は更なる分析、例えば個人の健康管理、のために別の装置又はシステムに伝達される。
【0036】
装置は医薬の種類、食事の種類(例えば、「昼食」、「夕食」、「間食」等)、生理指標を測定した時間、医薬を投与した時間、食事を摂取した時間、及び/又はこれらの類似物、のような付加的な入力値を得るように更に構成されることが望ましい。幾つかの値は付加的な入力値、例えば生理学的モデルの入力値として、栄養指標を見積もる際に役立つ。その代わりに、又はそれに加えて、これらの付加的な入力値の幾つかは、栄養指標の推定値と関連して装置に保存される、及び/又は更なる分析のために別の手段に伝達される。
【0037】
幾つかの実施態様では、処理手段は、栄養指標の予備的な推定値を表す入力値又は栄養指標の予備的な推定値から導出された値を受け取るように更に構成される。従って、装置は食事摂取後の生理指標の測定値に更に基づいて装置により決定された第2の推定値と予備推定値の乖離を表す出力を生成する。最終的に、使用者は最初の推定値の正確さを示され、使用者の推定を徐々に改善することを容易にする。
【0038】
装置が各推定値からの乖離を出力するために、予備的な推定値が入力される。その代わりに、装置は乖離が予め決定された枠を超えた場合にのみ乖離を出力する。その代わりに、又はそれに加えて、装置は複数回の食事又はある種の複数回の食事の平均又は傾向を決定し、従って、任意の乖離の影響、見積もりの決定の不正確さ、又は「ノイズ」の原因となるその他のエラー源を減少する。
【0039】
ある種の食事は、例えば「朝食」、「昼食」等として特定の型又は種類の食事として表される食事である。その代わりに、又はそれに加えて、ある種の食事は一日の予め決められた時間に摂取された食事であり、予め決められた時間内の栄養指標の予備的な推定値を持つ食事であり、及び/又はこれらの類似物である。従って、使用者は、例えば、昼食、高炭水化物量の食事等のようなある種の食事を正確に評価/見積もりする使用者の能力を示す有益なフィードバックを提供される。
【0040】
その代わりに、又はそれに加えて、入力された予備的な推定値は栄養指標の推定値の連続計算の初期値として使用される。
【0041】
処理手段が、食事摂取の前に使用者によって測定された使用者の生理指標の少なくとも入力値を元に、医薬の一回の投与量又は複数回の投与量を計算するように構成された場合、装置は投与量/ボーラス投与量計算機として、又は使用者に投与された投与量の適切性に関するフィードバックを使用者に提供する監視装置として使用されるように提供される。幾つかの実施態様では、投与量の計算は栄養指標の予備的な推定値を表す入力値に更に基づく。
【0042】
医薬の一回又は複数回の投与量は、一又はそれ以上の入力変数を元に計算される。従って、一回又は複数回の医薬の投与量はできるだけ現実に即した薬剤治療を受ける患者の像を元に計算される。故に、計算された一回又は複数回の投与量は、特定の時間の特定の患者の薬物治療の必要性に適合する可能性がより高く、即ち、より高度に調節された計算が提供される。
【0043】
更に、異なる入力値、例えば、手動によるもの、元から設定されたもの、自発的に得られたもの、又はその他の様式で得られたもののように、様々な方法で得られた入力値の比較により、通常の行動様式における変化を明らかにし、故に、このような変化は一回又は複数回の投与量が計算される際に考慮される。
【0044】
装置は医薬のボーラス投与量を計算するように構成され、即ち、医薬の一回又は複数回の投与量がボーラス投与量として計算される。本明細書では、「ボーラス投与量」なる用語は、短期間に送達された一回の投与量という意味で解釈される。これは、例えば、食事摂取に関連して期待される血糖値の上昇を相殺するために投与される過剰量のインスリンである。
【0045】
本発明の実施態様は異なる方法で実施され、上記の装置及び以下の、更なる方法、システム、手段、及び生産手段を含み、それぞれが、最初に述べた装置に関連する、一又は複数の利益又は利点を生じ、それぞれが、最初に述べた装置に関連する、及び/又は独立請求項に開示されたように記載された実施態様に相当する、一又は複数の実施態様を有する。
【0046】
更なる態様において、栄養指標を見積もるための方法が提供され、該方法は(1)少なくとも第1と第2の使用者の生理指標の測定値を表す入力値を得、(2)得られた少なくとも入力値から、第1と第2の測定間に使用者に摂取された食事の栄養指標の推定値を決定し、(3)決定された推定値を表す出力を生成する工程を具備する。該方法は、上記に記載された、対応する装置についての代替法、実施例及び実施態様に応じて修正される。
【0047】
上記及び下記に記載の方法の特徴は、少なくとも一部はソフトによって実行され、コンピュータが実行可能な命令のような、プログラムコード手段の実行によって起動する、データ処理手段又はその他の処理手段に基づいて実行される。特に、上記の用語は、一般的な又は特定の目的をプログラム可能なマイクロ素子、デジタルシグナルプロセッサー(DSP)、集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FGPA)、特別な目的の電子回路等、又はそれらの組み合わせを含む。
【0048】
従って、一態様によれば、コンピュータプログラムプロダクトは、コンピュータプログラムが、データ処理システムで実行されると、データ処理システムが本明細書記載の方法の工程を実行する起動するように構成されたコンピュータプログラム手段を有する。
【0049】
本明細書で用いられてるように、「医薬」なる用語は、医薬を含むエアロゾル化可能な何らかの形態を含む。それぞれの医薬は、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリン類自体、GLP−1、GLP−1アナログ)、ホルモン、生物学的誘導又は活性物質、ホルモン及び遺伝子ベース剤、栄養剤等を含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下では、図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
【図1】医薬の投与を監視するための装置の例のブロック図を示す。
【図2】医薬の投与を監視するための処理の例の全体の工程系統図を示す。
【図3】医薬の投与を監視するための処理の別の例の全体の工程系統図を示す。
【図4】1型糖尿病患者の糖代謝の生理学的モデルを示す。
【図5】生理学的モデルから得られた予測された結果の例を示す。 図面において、類似の構造は主として類似の参照番号により識別される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は医薬の投与を監視するための装置の一例であるブロック図を示す。全体が100と表記された装置は、入力値を受けるための一又は複数の入力手段101と、処理手段102と、メモリー103と、一又は複数の出力手段104とを具備する。
【0052】
入力手段101は装置の使用者が、食事の炭水化物量の推定値(「Carbsin」)、血糖値の測定値、医薬の投与量(「投与量」)等のようなデータを入力することを可能にするユーザーインターフェースを具備する。ユーザーインターフェースはデータ入力に適した、押しボタン、ダイヤル、キーボード、タッチスクリーン、及び/又はこれらの類似物のような、何らかの手段を具備する。任意で、入力手段101は、血糖値を測定する手段、薬剤送達手段、データ処理手段、及び/又はその類似物のような他の手段からデータを直接受けるための一又は複数のデータインターフェースを更に具備する。データインターフェース。このようなデータインターフェースの例は、例えば、シリアルインターフェース、USBインターフェース、赤外線インターフェース、ブルートゥースのような短距離高周波インターフェース、局地ネットワークインターフェース、携帯通信インターフェース、及び/又はこれらの類似物を含む。
【0053】
装置の入力手段101に直接供給される、又は装置の一部である測定手段から得られた入力値は、血糖値の測定値を含む。装置は患者が一回又は複数回の医薬の投与を受けるために糖量を測定する手段と協働するようにされ、糖量測定の結果が装置の入力手段を通じて直接得られる。糖量は、例えば血糖値であり、これは通常、血糖血測定装置で測定される。或いは、糖量は血漿糖量であり、これは血漿から実質連続的に、例えば、連続糖監視(CGM)手段によって測定される。同様に、インスリンの送達された又は計算された投与量を、それぞれ、インスリン注射ペン若しくはインスリンペン、又は投与量計算機から受け取る。このような入力値の更なる例は、現在の活動水準に限定されず、以前の特定の期間に渡って測定された一又は複数の測定変数の発展型も含む。例えば、装置100は患者に付加又は着用された加速度計を更に具備する、又はデータを受け取るように構成される。加速度計は前記患者の活動水準に関連する情報を入力手段を通じて装置に提供するように構成される。或いは、入力手段は装置の一部でない加速度計と協働するように構成される。
【0054】
一又は複数の測定された変数の発展型が入力手段に供給された場合、このような情報は、好ましくは、例えば、以前の測定に関係する情報、手動で入力された値、又は以前に計算された値が保存された外部のコンピュータのような、内部又は外部記録手段から引き出される。
【0055】
手動で入力される値は、別の装置によって測定された値、又は使用者によって推定された値である。測定値は、上記のように定義された何らかの値を含み、この場合の唯一の違いは、入力手段に直接数値を入力する代わりに、使用者が手動で入力することである。推定値は例えば、次回の食事の成分及び/又は量、例えば、炭水化物量(「Carbsin」)の推定値、次回のアルコール摂取、又はある期間の活動水準、例えば、患者のある期間の活動水準が、例えば、何らかの種類の運動により、著しく増加するような場合に関連する。
【0056】
自動で発生する値は、好ましくは、装置が即時利用できる情報のみを元に、装置が得ることのできる種類の、即ち、装置に更なる情報を提供する必要がない値である。例えば、装置は時計やその他の種類の時間測定器を提供され、従って、装置は、日、週、月といった時間を「知る」。故に、「時間」は自発的な値の一例である。患者の通常の行動様式に関連する情報を組み合わせることのできるこの種の情報を元に、装置は、食事摂取量、活動水準の推定値、装置が注入手段である場合のカテーテルの寿命、患者の年齢等のような、種々の入力値の生成を可能にする。装置が測定手段を具備する、又は測定手段に接続される場合、測定値も自発的な値と見なされる。更に、血糖値の測定データの受け取りの時間、インスリン投与量のデータ、及び/又は炭水化物の推定値も、装置に直接記録され、本明細書に記載の生理学的予想モデルに使用される。
【0057】
元から設置された値は、患者の通常の行動様式を含み、患者に特異的な一回又は複数回の医薬の投与を受る患者に特異的であり、通常時間の関数として変化しないか又はわずかに変化する。このような値を含む例は、人種、性別、初期年齢、医学的状況、例えば、ある種の糖尿病、標的糖水準、例えば、標的血糖値水準(BGtarget)、一又は複数の炭水化物対インスリン比率(CIR)、一又は複数のインスリン感受性因子(ISF)、通常の食物摂取の時間関数、通常の活動水準の時間関数、体重、ボディマス指数等に限定されない。これらの値の幾つかが不変であることは自明である。これは、例えば、人種と性別の場合である。「初期年齢」の値は、装置が最初に設置され、患者が医薬の一回又は複数回の投与を受けた際の年齢である。装置は、患者の現在の年齢を、最初に入力された年齢と、時間/日付に関する情報とを組み合わせることにより、自動的に発生させることが可能である。しかし、幾つかの値は、時間をかけて非常にゆっくり変化する。これは、例えば、体重、ボディマス指数、通常の食事摂取及び通常の活動水準の場合である。従って、いかなる場合においても、装置が利用可能な値を、現実に即した値に保証するために、変化が生じた際に、これらの値を調節することが可能であるようにすべきである。
【0058】
患者の「通常の行動様式」は患者の活動水準及び/又は食事摂取に関連する情報を含み、時間の関数としての一定の変化、例えば、日常の様々な生活習慣に基づく食事摂取、平日と週末の食事の変化、一日及び/又は一週間の生活水準の変化等を含む。
【0059】
例えば、「通常の食事摂取様式」は、例えば、日、週等の時間関数として、食事摂取量の推定値に関する情報を含む。「通常の食事摂取様式」は一日における習慣的な食事の回数と、それぞれの食事が通常に摂取される際に要した時間と食事間の時間と、及び/又は、例えば、それぞれの食事における炭水化物量のような、栄養成分を表す変数のような一又は複数の値とを特定する。
【0060】
同様に、「通常の活動水準」は、例えば、日、週等の時間関数として、活動水準の推定値に関する情報を含む。従って、「活動水準」は、患者が通常、月曜日から金曜日は自転車で職場を往復し、毎週火曜の午後4時から午後6時は運動教室に参加すること等を特定する。
【0061】
装置は生成した入力値と、受け取った入力値と、元から設定された入力値とを自動的に比較するように構成される。このように、装置は得られた情報を様々な方法で比較することが可能であり、従って、患者が受けた薬剤治療の状況を、できるだけ現実に即した像として得ることができる。
【0062】
処理手段102は、一般的な又は特定の目的をプログラム可能なマイクロ素子、デジタルシグナルプロセッサー(DSP)、集積回路(ASIC)、特別な目的の電子回路等、又はそれらの組み合わせを含む。特に、処理手段は、処理手段は、以下に図2から5と関連して記載された監視処理を行うため、例えば、プログラムコードによって適切にプログラムされ、メモリーに保存され、メモリー103から読み込まれる。
【0063】
メモリー103はプログラムコード、及び、生理学的モデルのモデル変数、受け取った入力データ、及び/又は栄養指標の推定値、及び/又は、その他の装置から発生した出力のようなデータを保存する何らかの適切な媒体を具備する。適切な媒体の例は、ランダムメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、フラッシュメモリー、EPROM,EEPROM、及び/又はこれらの類似物である。メモリー103は例えば、RAM、ROM及びフラッシュメモリーのような、一又は複数のメモリー手段を具備する。
【0064】
出力手段104は装置100によって計算された出力、特に以前に摂取された食事中の炭水化物量の推定値(「Carbsout」)を出力するディスプレイ又はその他の適切な出力手段を具備する。その代わりに、又はそれに加えて、出力手段104は、健康管理センターのデータ処理システム、標準のコンピュータ、及び/又はこれらの類似物のような他の装置やシステムに、データを直接伝達するために、一又は複数のデータインターフェースを具備する。データインターフェースの適切な例は入力装置101と関連して記載される。装置100は同様又は異なるデータインターフェースを、それぞれ、入力及び出力手段として用いることが望ましい。その他の使用者が検知可能な出力信号を提供する手段は、ディスプレイ、LED若しくはその他の可視装置、振動因子、又は電子筋シミュレーション(EMS)。
【0065】
例えば、装置100は手持ち又は着用装置として実施される。例えば、装置100は適切にプログラムされた一般目的の電子処理装置、例えば、携帯末端、携帯情報末端(PDA)、適切にプログラムされた手持ちコンピュータ、として実施される。或いは、装置100は、特定の目的の薬物治療監視手段であり、例えば、血糖値測定装置、薬剤送達装置、及び/又はその類似物のような、他の装置からデータを直接受けるために、一又は複数のデータ伝達インターフェースを具備する。幾つかの実施形態においては、装置は統合的な装置であり、薬剤送達手段及び/又は血糖値測定手段及び/又はボーラス投与量計算装置及び/又は類似物を具備する。
【0066】
本明細書に記載の監視装置、例えば、図1に示された装置、の運用は図2から5に関連して記載され、引き続き図1に関連して記載される。
【0067】
図2はインスリン投与をモニターするための方法の例のフロー図である。該方法の実施態様は装置100の演算装置102によって実施されうる。
最初の工程S201では、装置100は、食事摂取前の使用者のBGレベルを示すBG測定値(BGprior)を入力インターフェース101を介して受ける。グルコース量が測定されたとき、その結果は、データ伝達チャンネルを経由して入力装置に伝達されうるか、又はマニュアルで入力されうる。あるいは、測定装置が装置100の一部を形成しうる。該装置100は摂取される食事の炭水化物量の推定値を示す入力値(Carbsin)を入力インターフェース101を介して更に受け取る。該方法はメモリー103に受け取った値を保存する。
【0068】
工程S202では、該方法は食事摂取に関連して使用者に投与されるボーラスインスリン用量を計算する。計算は、メモリー103から取り出される次のパラメータに基づくことができる。
「Carbs」は、食物摂取に関連するパラメータである。「Carbs」は、食事中の炭水化物の総グラム量、つまり食事の炭水化物量の受け入れた推定値として表すことができる。「Carbs」は好ましくはその用量を受ける人が摂取しようとしている食事中に含まれる炭水化物量の推定値である。使用者自身が推定をマニュアルで実施することができる。しかしながら、装置が、食事に関して使用者によって送達される情報から予備的な推定値を計算することができるようにしてもよい。かかる情報には、食物のタイプ、例えば「野菜」、「魚」、「パスタ」、「肉」等、各食物タイプの重量等々が含まれうる。
【0069】
「CIR」は特定の食物摂取に対応する医薬の量に関するパラメータである。特に。「CIR」(インスリンに対する炭水化物の比)は特定の量の食物に応じて必要とされる薬剤の量を反映する個人的な関係である。医薬が糖尿病の治療のためのインスリンである場合、CIRパラメータは好ましくは何グラムの炭水化物が速効型インスリンの一単位に対応するかの尺度でありうる。このパラメータは好ましくはメモリー103に保存される。しかしながら、CIRパラメータは時刻に依存し得、よって、時間の周期関数の形で保存されうる。多くの人の場合、CIRの値は時刻に依存し、女性の場合、月経周期に対する生理にも依存する。装置の初期設定時に、その人に対するパラメータの既知の値を入力し、該装置は、とりわけそれに基づいて、任意の与えられた時間で使用する値を示唆しうる。これは、例えば既知の値によって滑らかな曲線を形成/補間することによって得ることができる。例えば、ある人は、朝食のCIRが5g/IUインスリンであり、その日の残りのCIRが8g/IUインスリンであることを知っている場合がある。この文脈で、「朝食」は正午までに摂取されるその日の最初の食事として理解されなければならない。多くの女性は月経の直前はインスリンに対して感受性が低い。従って、ある人の場合、予想される月経の3日前はCIR値が通常よりおよそ20%少なく、つまり上に与えた例では、朝食CIRは4g/IUインスリンであり、その日の残りのCIRは6.4g/IUインスリンであることが知られている場合がある。CIRに対してただ一つの値が最初に知られている場合は、装置がその日の他の期間に対する値を示唆する補助をしうる。例えば、ある人のCIR値が午後2時に10g/IUインスリンであることが測定されている場合がある。そのとき、装置は、その日の任意の他の時間におけるCIRを、朝食CIRの8g/IUインスリンと10g/IUインスリンを使用して示唆しうる。
【0070】
BGcurrentとBGtargetはそれぞれ現在のBGレベルとターゲットBGレベルを反映するパラメータである。BGcurrentは、その用量の医薬を受ける人の現在のBGレベルを反映し、好ましくはBGレベルの測定値である。BGcurrentは、好ましくは上述の装置に供給される。BGtargetは、その用量の医薬を受ける人のBGレベルの所望される標的値を反映する。よって、BGtargetは、所定の人に対して一定値であり得、その場合、当該人に対してひとたび決定されたときに最初に設定しておき、メモリー103に保存しておくのが有利である。あるいは、BGtargetは、例えばその日中の、及び/又はより長い時間スケールでの、BGの標的値の変動を反映し、例えば女性の月経から生じる変動を反映する、時間の周期関数である。例えば、BGtargetは昼間は4−8mM、就寝時は6−8mMであり、ある種の運動を実施する直前は6−10mMでありうる。更に、その人が妊娠している場合、例えば食事摂取前の4−5mMのように、若干低い標的値を選ぶことができる。従って、BGcurrent−BGtargetなる用語は、現在のBGレベルと所望のターゲットBGレベルの差であり、よって可能な必要とされる修正を反映している。
【0071】
「ISF」は医薬感受性に関するパラメータである。「ISF」(インスリン感受性係数)は、特定の用量の医薬のBGレベルに対する影響を記述する個人的関係である。医薬が糖尿病の治療のためのインスリンである場合、ISFパラメータは、一単位のインスリンが如何に大きいBGレベル低下を生じせしめるか(例えばmM/IUで測定して)を記述しうる。パラメータISFはメモリー103に保存されうる。ISF及びCIR値は一定として保存されうるが、プロファイルとして、つまりその日の時間の関数として、保存されてもよい。
【0072】
「IOB(Insulin On Board)(インスリン作用期間)」は、過去に送達された用量から尚も存在している医薬の量に関するパラメータである。しかしながら、食事に関連していない医薬の残りの量の部分のみが考慮されるべきである。よって、尚もまた作用期間にある食事に対抗する尚も作用期間にある医薬は考慮されるべきではなく、つまり食事によって「無効」にされる。IOBパラメータは、好ましくは数種のパラメータ、例えば医薬用量サイズ、医薬のタイプ(例えば、速効型又は遅効型)、年齢、肥満度指数、疾患又は症状のタイプ(例えばI型又はII型糖尿病)、人種、時刻、カテーテルの使用寿命(注入装置の場合)、カテーテル挿入の解剖学的部位、月経期の時間、近接過去又は近未来における運動量、トレーニング状態、時間帯の変化、ストレス、アルコール摂取等の関数である。これらの因子の全てが、医薬が体によって如何に速く摂取されるかについて影響を持っている。よって、有利には、IOBが、多くの入力パラメータ値に応答して、及び/又はここで記載される二以上の入力パラメータの比較に応答して計算されうる。
【0073】
よって、少なくともCIR、ISF及びIOBパラメータは個人的パラメータとみなすことができる。本文脈において、「個人的パラメータ」なる用語は、例えば年齢、性別、人種、薬物に対する感受性、食物吸収等々のような特定の人の一又は複数の特定の特徴を反映するパラメータを意味するものと解釈されるべきである。少なくともCIR、ISF及びIOBパラメータはまた適応性パラメータとみなすことができる。本文脈において、「適応性パラメータ」なる用語は、装置に供給される入力パラメータ値に応答して装置によって変更又は調節することができるパラメータを意味するものと解釈されるべきである。適応性パラメータの例は、上述した「活動レベル」である。上に与えた例では、予想される活性レベル(トレーニングクラスに出席する)は加速度計からの入力データに応答して変更される。
上記のパラメータは、別法では、異なった装置に入力され、及び/又は使用されうることが理解されるであろう。例えば、炭水化物量は別法では「BE」(「Broteinheiten」)、「KE」(「Kohlenhydrateinheiten」)等で測定されうる。
【0074】
上記パラメータに基づき、用量は、食物摂取と食物吸収の関係を反映させる期間、所望の目的に対する送達医薬の影響を反映する期間、及び過去に送達された用量から尚も存在している医薬量を反映する期間に基づいて計算される。特に、該方法は、次の式からボーラスインスリンを計算しうる:

ここで、「インスリン」は計算された用量であり、残りのパラメータは上述したパラメータである。よって、上記の式は、工程S201において装置によって受け入れられるパラメータに基づいて、及び/又はメモリー103から取り出される保存パラメータ、例えば年齢、性別、CIR等に基づいて計算される。
【0075】
インスリン用量を計算するための他の方法を使用してもよいことが理解される。例えば、一代替法では、パラメータ「carbs」に、その用量又は一連の用量の医薬を受けるヒトが如何に速く特定の食物を吸収するのかを反映する「食物速度指標(Food Speed Index)」(FSI)を乗じることができる。このパラメータは食事の組成、特に液体、脂肪及び繊維の量に依存する。例えば「遅い」、「中程度」又は「速い」を選択する形で、又は推定された数として、使用者が入力することができるのが好ましいであろう。遅く吸収される食物の例は、比較的大なる脂肪量持つ食物タイプ、又は複合炭水化物である。速く吸収される食物の例はキャンディ又はコーンフレークである。遅く吸収される食物の場合、FSIパラメータは1より小さくなり、速く吸収される食物では、FSIパラメータは1より大きく、FSIパラメータは好ましくは0.6から1.4の間の範囲である。従って、FSIパラメータは、摂取される炭水化物の種類並びにBGレベルに対する予想される影響を考慮に入れるために「Carbs」パラメータを減少させるか又は増加させる。FSIパラメータを推定することができない場合は、それを1に設定することができ、「Carbs」パラメータによって示される炭水化物量は吸収の点で平均的である、つまり「遅い」又は「速い」ではなく「中程度」であると仮定する。
【0076】
入力パラメータの少なくとも一つは用量又は一連の用量の医薬を受ける人の活動レベルに関係しうる。かかる入力パラメータには、限定されるものではないが、正常な活動レベルに対して本来設定されたスケジュール、加速度計によって測定される実際の活動レベル、及びマニュアル操作で入力される推定活動レベルが含まれうる。ヒトの活動レベルを考慮に入れることは、特に医薬が糖尿病の治療のためのものである場合、活動レベルが必要とされる医薬の量に大きな影響を持つので、有益である。
【0077】
ある人々は計算をしばしば省略してしまい、「昨日と同様」との仮定に基づいて自身のインスリン投薬量をむしろベースにする場合がある。ボーラス計算機は明記された係数を入力として持ち、予め設定された換算係数に基づき計算を実施する。現在のBGをBG計から自動的に移すことができ、ターゲットBG、CIR及びISFがメモリーに保存されるので、入力されなければならない唯一のものは食事中の炭水化物量の推定値になる。
【0078】
次の工程S203では、該方法は食事摂取後の使用者のBGレベルを示すBG測定値(BGafter)を受ける。BG測定は、BGレベルに対する摂取される食事及び食事に関連して投与されるインスリンの影響が測定可能である食事後の適当な時点で実施することができる。例えば、BG測定は、食事摂取後の予め決められた時間、例えば食事摂取後の1/2時間と2時間の間に、実施することができる。
【0079】
次の工程S204では、該方法は、食事摂取前のBG測定値、投与されたインスリン用量及び摂取された食事の炭水化物量の推定値に基づいて、適切な生理学的モデルを使用して、食事摂取後の予め決められた時間における期待される/予想されるBG値(BGpred)を計算する。特に、該方法は、BGレベルの実際の食事後の測定が実施された時間に対して期待される/予想されるBGレベルを計算しうる。例えば、測定の時間は測定したBGレベルと共に入力されうる(又は他の装置から受け入れられる)。あるいは、装置は、測定値の入力/受け入れの時間を記録し、この時間を測定時間の近似値として使用することができる。
【0080】
生理学的な予測モデルを、当該分野で知られているような様々な方法で構築することができ、幾つかのモデルが文献で報告されている。研究では、食事推定値が統計的には予測される食事後BGレベルと測定される食事後BGレベルとの間の差の主要な源であることが示されている(例えばKildegaard J, Randlov J, Poulsen JU, Hejlesen OK. : The impact of non-model related variability on BG prediction, Diabetes Technology and Therapeutics, 2007を参照)。よって、週間の炭水化物摂取量が逸脱し、特に例えば一週間のような所定の期間にわたってしかりであれば、不正確な炭水化物推定値がこの逸脱の起こりうる原因である。
【0081】
生理学的モデルの例は、Berger[3]のインスリンモデルと、Lehmann[4]の食事モデルと、Bergman[5]の最小モデルを組み合わせることによって構築することができる。よって、有用な食事推定フィードバックは比較的簡単なモデルに基づいて可能になる。より包括的なモデルはより精確な結果を、特に正常なBG範囲の外で、付与しうる。例えば、最小モデルは、正常なBG範囲外の全体の単純化であるとして受け入れられている[6]。
【0082】
図4は、1型糖尿病の患者に対するグルコース恒常性の生理学的コンパートメントモデルの例を示す。該モデルは6のコンパートメント401−506を含んでいる。コンパートメントの4つは微分方程式によって直接記述することができる。これらは血漿インスリンPI(402)、インスリン作用IA(403)、BG(404)及び腸グルコース量Ggut(406)である。皮下インスリン量SC(401)及び胃グルコース量ST(405)は誘導できるが、現在の文脈では主な興味はない。それらは、より多くのインスリンが注射され又は炭水化物が食された場合に更新される現在の量を数学的に保存するために使用される。肝臓(407)は以下の式(E3)でモデル化され、正の寄与と負の寄与の双方の役割を果たす。
【0083】
該モデルは、一又は複数の時点での一又は複数の食事の炭水化物量、インスリン注射又は注入の量、タイプ及び時間及びBG値についての情報を入力として受け取る。使用者の生理学的値(BG、腸量、血漿インスリン)をついで新しい値が入力されるまで又は食事摂取後の測定BG値が得られた時間に対応する予め決められた時間まで、一又は複数回の工程で前方へ各コンパートメントをモデル化する多くの微分方程式を反復することによりシミュレートする。
【0084】
また図2において、該方法は、多くの異なった食事推定値をシミュレートすることによって食事の炭水化物量の最も良く適合する推定値(Carbsout)を決定するように、炭水化物量の異なった入力推定値に対して予測されたBGレベルを例えば反復して計算することができる。例えば、該方法は、予測BG値と測定BG値の間の差を最小にするように最小化法を実施することができる。ある実施態様では、該方法は元々受け取った推定値に基づいて予想されるBG値を最初に計算し、測定値に対する差異が予め決められた閾値よりも大きい場合のみ反復計算を実施することができる。
【0085】
該装置はある範囲の入力パラメータに対して予め計算された予測値の検索表をそこに保存していてもよいことは理解されるであろう。よって、予想されたBG値の計算は、例えば検索表中の値を補間することによって、予め計算された値の全部又は一部に基づくことができる。
あるいは、他の非生理学ベースの方法、例えばBG差、摂取インスリン、CIR及びISFでトレーニングされたニューラルネットワークを、予想されるBGの計算に使用することができる。
【0086】
あるいは、他の生理学的モデル、例えばBG差、摂取インスリン、CIR及びISFに基づくルールベースモデルを用いることができる。例えば、上述のインスリンボーラスの計算のためのアルゴリズムを反転させ、未知の食事推定値を用いて使用してもよい。特に、上記の式(E0)を用いて、食事摂取後の実際の測定値に等しいターゲットBG値(BGtarget)を生じる食事の炭水化物量を計算するために使用してもよい。 かかるルールベースモデルはまた検索表を使用して実施することもできる。しかしながら、より綿密な予測用生理学的モデルの利点は、他の係数(運動等)を含めることができ、CGMデータを用いても作動することである。
【0087】
工程S205では、炭水化物量(Carbsin)の元々の推定値に基づく計算された予想BG値(BGpred)を食事摂取後の測定されたBG値(BGafter)と比較する。例えば予め決められた閾値よりも大きいような、大きな差がある場合、該方法は工程S206で継続し、例えば出力インターフェース104を経由して使用者の元々の推定値(Carbsin)と工程S204において計算された推定値(Carbsout)を使用者に示すことによって、使用者に差異と実際の推定値を示す出力を発生させる。あるいは又は加えて、該方法は、場合によっては食事に関連する更なる情報、例えば食事の時間、食事のタイプ、推定のベースとなった入力パラメータ等々と共に元々の推定値(Carbsin)と計算された推定値(Carbsout)を保存しうる。この場合、該方法は複数の食事又は複数の同じタイプの食事に対して差異の移動平均を計算することができる。もし平均差が予め決められた閾値よりも大きいならば、該方法は、平均して使用者が、計算された平均差によって食事の炭水化物量を過小評価又は過大評価する傾向があることを使用者に示す出力を発生しうる。あるいは又は加えて、該方法は、例えば炭水化物量を推定する場合使用者の傾向及び/又はパターン精度を検出するために、計算された推定値について他の解析工程を実施しうることが理解される。あるいは又は加えて、該方法は、上述したような適切なデータ出力インターフェース104を介して外部システムに、場合によっては上述のような更なる情報と共に、元々の推定値と計算された推定値を伝達しうる。例えば、装置100は、推定値が計算された各時点でこれらのデータを外部システムに伝達しうる。あるいは、該装置は、該データを保存し、複数の食事に対して収集されたデータを外部システムに伝達しうる。従って、使用者、健康管理者等は使用者が如何にして炭水化物推定値、よってインスリン治療法を改善しうるかについての推奨に達するように該データを分析しうる。
【0088】
装置100は、改善されたインスリン投与において使用者を支援するための更なる機能を更に実施してもよい。例えば、該装置は炭水化物の一日の総摂取量を追跡し続け、そのサイズ、活動レベル(既知の場合)及び年齢のヒトに対して推奨される日常摂取量と比較してもよい。活動レベルは例えば心拍数モニター又はペン又はポンプのような投薬装置の加速度計又はCGM又はスティックベースのBGモニターのような測定装置、又は使用者によって実施される他の装置から推定することができる。使用者によって報告される一日の総炭水化物摂取量と推奨された摂取量の間に大きな相違がある場合、使用者は食事推定値を調節するようにアドバイスされうる。例えば、一日15%の差異を閾値とすることができる。同様に、使用者が一週間にわたって例えば5%より多く期待される一日の炭水化物摂取量から逸脱している場合、使用者に警告が発せられ、体重又は活動レベルの変化が問われうる。
【0089】
図3は、インスリン投与のモニター方法の他の例のフロー図を示す。図3の例は、図3の例では、該方法は、他の入力値からボーラスを計算すると言うよりもむしろ更なる入力値としてインスリンのボーラス投与を受ける点を除いて、図2の方法と同様である。従って、この例では、該方法は食事摂取前の使用者のBGレベルを示すBG測定値(BGprior)、摂取される食事の炭水化物量の推定値(Carbsin)、及び投与されるボーラスインスリンの用量サイズ(「ボーラス」)を最初の工程S301において受ける。例えば、装置100は、ボーラス計算機から又は装置100とは別個の薬剤デリバリー装置、例えばインスリンペン又はインスリンポンプから直接ボーラス用量サイズを受け取りうる。あるいは、使用者は、例えば使用者がボーラス値をマニュアルで又は決定されたボーラス値を直接伝達するためのデータ伝達インターフェースを持たない装置を用いて決定した状況において、ボーラス値を装置100にマニュアルで入力しうる。従って、図3の例では、該方法は、ボーラス計算に有用な更なる入力値を受ける必要がない場合がある。しかしながら、これらの値の幾つかは、工程S204で使用される生理学的モデルへの入力としてまた使用される。残りの工程S203からS206は図2の例におけるようにして実施される。
【0090】
生理学的モデルの実施例
生理学的モデルを、Berger[3]のインスリンモデルと、Lehmann[4]の食事モデルと、Bergman[5]の最小モデルを組み合わせることによって構築した。よって、有用な食事推定フィードバックは比較的簡単なモデルに基づいて可能になる。このモデルは正常血糖範囲内のBG変化を成功裏にモデル化している。コンパートメントモデルは図4に示されるように6のコンパートメントを含む。
コンパートメントの4つは微分方程式によって直接記述することができる。これらは血漿インスリンPI(402)、インスリン作用IA(403)、BG(404)及び腸グルコース量Ggut(406)である。皮下インスリン量SC(401)及び胃グルコース量ST(405)は誘導できるが、現在の文脈では主な興味はない。
【0091】
図4に示されるコンパートメントモデルの例をここで記載する。関連する方程式は表1に記載されるパラメータを用いて以下に説明される。
外来性インスリン摂取の薬物動態モデル[3]:

ここで、sは、吸収の経時変化において観察されたS字状変化(sigmoidicity)、tは分で表される時間である。T50は、注射されたインスリン用量の50%が吸収されることを可能にする時間間隔である。該パラメータ用量はインスリンの注射された用量である。パラメータkは一次消失定数である。パラメータaは吸収時間の用量依存性である。パラメータbはインスリン吸収時間の消失である。
【0092】
グルコース消失の薬物動態モデル[5]:

ここで、pはインスリンの作用速度であり、pは経皮内インスリン輸送である。

ここで、Ginは腸から血液へ吸収されるグルコースであり、pは自身の利用に対するグルコースの効果であり、Gは基底グルコース吸収であり、VGはグルコースの分布体積である。

ここで、BGCはBG濃度である。
【0093】
食事摂取モデル[4]:

ここで、Gemptは胃内容排出速度であり、kgabsは腸から血液へのグルコース吸収の速度定数である。

【0094】
これらは次のアルゴリズムによって計算することができる:

ここで、Gmax geは、腸からのグルコース吸収が最大である期間であり、Chは食事の炭水化物量であり、Vmax geは胃内容排出の最大速度であり、Tasc geとTdes geは胃内容排出曲線の上行枝と下行枝の相対長さである。

ここで、Chcritは胃内容排出の最大速度に到達させない食事量である。

ここで、tは食事摂取からの時間である。

全ての含まれるパラメータは1型糖尿病の平均的なヒトに従って調節した。本実施例の目的に対して、多くの刊行された文献[7]−[9]において特定されたパラメータを使用した:

一定のBGレベルを維持するために、[7]に見出されるように、一定の基底グルコース吸収量Gbxを式(E3)に加えて、基底インスリン量Iとバランスさせた。
このモデルは、食事の炭水化物量、インスリン注射又は注入の量、タイプ及び時間及びBG値についての情報を取り込む。使用者の生理学的値(BG、腸量、血漿インスリン)をついで新しい値が入力されるまで一回の工程で前方へモデルの微分方程式を反復することによりシミュレートする。
上記モデルを、BG値を予測した後、測定したBG値に一致させるように食事量を調節するために使用した。該例では、使用者は時間0で50グラムの炭水化物の摂取をするが、40グラムを報告するだけである。使用者は時間0で12単位のインスリンアスパルトを注射する。
図5は、得られたシミュレーションしたBGを示している。初期のシミュレートBGは破線501で示している。時間t=250分で、使用者の実際のBGの測定を、十字502によって示されるように実施した。該アルゴリズムは時間t=250分でのシミュレートBG値503と測定されたBG値502の間の差を検出する。この差に応答して、該アルゴリズムは、BGシミュレート曲線を測定BGに一致させるために最新の食事の炭水化物量を示すモデル入力値を調節する。得られた新しいシミュレートBG曲線を実線504で示す。シミュレートされた曲線504を生じる食事の調節された炭水化物量をついで将来の食事の推定のためのガイダンスとして使用者に報告することができる。
【0095】
幾つかの実施態様を詳細に記載し示したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、次の特許請求の範囲に記載の主題事項の範囲内で他の形で実施することもできる。
例えば、本発明は糖尿病のインスリン治療及び食事の炭水化物量の推定に関して主として記載した。しかしながら、更なる又は代替の栄養パラメータ、例えば脂肪量、タンパク質量、ビタミン量等が、他のタイプの医薬及び/又は他のタイプの生理学的パラメータに対して関連していることが理解される。
例えば、ここに記載の方法は、入力として食事の推定又はボーラス投与サイズを用いないで、異なった時間における二つの測定したBG量が測定間のある時間で入力として使用される場合にそれをまた使用することができるように変更することができる。このような場合、予想されるBG量が後で実際に測定されたBGとは予め定められた閾値よりも大きいレベルで逸脱するならば、モデルは2つの測定間の仮定の食事の対応する炭水化物量を決定することができる。ついで、使用者には得られた推定炭水化物量が知らされ、対応するインスリンボーラスなしに食事又は間食を摂った可能性について質問される。生理学的モデルを使用する場合、より高い精度が、開始BG量とその内部の変数の双方に関してより正確な出発点を有している場合に達成される。
【0096】
ここに記載される方法の実施態様は、幾つかの異なった部材を具備するハードウェアによって、及び/又は少なくとも部分的には適切にプログラムがなされたマイクロプロセッサによって実施することができる。幾つかの手段を列挙している装置の請求項では、これらの手段の幾つかはハードウェアの一つの同じ部材、成分又は品目によって実施化することができる。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載され、又は異なった実施態様に記載されているという単なる事実が、これらの手段のある組合せを有利には使用することはできないことを示しているものではない。
【0097】
本明細書において使用される場合「含む/含んでいる」なる用語は、述べられた特徴、整数、工程又は成分の存在を特定するが、一又は複数の他の特徴、整数、工程、成分又はそのグループの存在又は付加を排除していないことが強調されなければならない。
【0098】
好ましい実施態様の上記説明においては、異なった成分に対して記載された機能を提供するための異なった構造及び手段は、本発明の概念が熟練した読者に明らかな程度に記載した。異なった成分に対する詳細な構造及び仕様は、本明細書に記載した線に沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象と考えられる。
【0099】
引用した文献:
[1] Graff MR, Gross TM, Juth SE, Charlson J: How well are individuals on intensive insulin therapy counting carbohydrates? Diabetes Res Clin Pract 50:S238-2000,
[2] Alemzadeh R, Goldberg T, Fort P, Recker B, Lifshitz F: Reported dietary intakes of patients with insulin-dependent diabetes mellitus: limitations of dietary recall. Nutrition 8:87-93, 1992
[3] Berger M, Rodbard D: Computer simulation of plasma insulin and glucose dynamics after subcutaneous insulin injection. Diabetes care 12:725-736, 1989
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[7] Furler SM, Kraegen EW, Smallwood RH, Chisholm DJ: Blood glucose control by intermittent loop closure in the basal mode: computer simulation studies with a diabetic model. Diabetes care 8:553-561, 1985
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理手段(102,103)と入力手段(101)を具備する栄養指標を見積もる装置において、
− 使用者の少なくとも生理指標の第1及び第2の測定値と使用者に投与される医薬の少なくとも投与量を表す入力値を得、
− 少なくとも得られた入力値から第1及び第2の測定間に使用者によって摂取された食事の栄養指標の推定値を決定し、
− 決定された推定値を表す出力を生成するように構成された装置(100)。
【請求項2】
医薬が使用者の少なくとも生理指標に影響を及ぼす医薬を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
医薬が糖尿病の治療薬を含み、生理指標が糖量である請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
決定された推定値を表す、使用者が検知可能な出力を生成する出力装置(104)を更に備える請求項1から3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
処理手段が、栄養指標の予備的な推定値若しくは栄養指標の予備的な推定値から導出された値を表す入力値を、更に受け取るように構成された請求項1から3の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
処理手段が、栄養指標の決定された推定値と、受け取った予備的な推定値間の偏差を表す出力を、受け取った入力値から更に生成するようにされた請求項5に記載の装置。
【請求項7】
処理手段が、複数の食事摂取に対応する各々の決定された推定値と、各々の受け取った予備的な推定値間の偏差を算出し、算出された偏差から全体偏差を決定するように更に構成された請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
処理手段が、得られた入力値と生理学的モデルから栄養指標の推定値を決定するようにされた請求項1から7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
生理学的モデルが使用者特異的なモデルである請求項8に記載の装置。
【請求項10】
生理学的モデルが、食前の生理指標の少なくとも一の値と、使用者に投与される医薬の投与量と、推定された食事の栄養指標とから食後の生理指標の値を予測するための生理学的予測モデルである請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
処理手段が、予測された生理指標の値と食後に測定された生理指標の値の差が閾値よりも小さくなる栄養指標の値として栄養指標の推定値を決定するように構成された処理手段が請求項10に記載の装置。
【請求項12】
栄養指標が炭水化物含量である請求項1から11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
処理装置が、使用者が食事を摂取する前に測定された、少なくとも使用者の生理指標の入力値を元に、医薬の1回の投与量又は連続した投与量を計算するように更に構成された請求項1から12の何れかに記載の装置。
【請求項14】
使用者の糖量の測定手段と協働するように構成され、糖量の測定手段から糖量の測定結果を得るための入力装置を具備する請求項8又は9に記載の装置。
【請求項15】
栄養指標を見積もる方法において、
− 使用者の生理指標の少なくとも第1と第2の測定値と使用者に投与された医薬の少なくとも一の投与量を表す入力値を得、
− 得られた少なくとも一の入力値から第1と第2の測定間に使用者によって摂取された食事の栄養指標の推定値を決定し、
− 決定された推定値を表す出力を生成する工程を具備する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−535045(P2010−535045A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518609(P2010−518609)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059458
【国際公開番号】WO2009/016050
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】